JP5274880B2 - イオン液体組成物およびそれを用いてなる合成潤滑油 - Google Patents

イオン液体組成物およびそれを用いてなる合成潤滑油 Download PDF

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Description

本発明は、イオン液体と、塩基性リン酸塩およびイミダゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物とを含有するイオン液体組成物に関するものであり、とりわけ潤滑油性能を有するイオン液体組成物に関するものである。
従来、機械装置、動力伝達装置、金属加工油、グリースなどに用いられる潤滑油としては、ポリα−オレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、シリコン等の基油の中から最も目的物性に近い種類の基油を選択し、必要に応じて組み合わせて、さらに適切な添加剤などを加えて用いられてきた。しかし、これらの潤滑油は、高温や真空度が高いといった特殊な環境下において引火または蒸発の危険性があり、より好適な潤滑油が望まれている。また、装置の高性能化、高効率化に伴い、より優れた耐酸化性、耐蒸発性や、長期間にわたって優れた潤滑性能を有する潤滑油が求められている。
これらの問題を解決する手段として、例えば、非特許文献1には、有機カチオンと無機アニオンとの組み合わせからなる化合物、いわゆるイオン液体(常温溶融塩)が潤滑油として適用できることが報告されており、現在では、上記イオン液体は、不揮発性、広い温度範囲における安定性および難燃性に優れるだけでなく、潤滑剤に求められる摩擦係数、摩擦痕径についても満足する物性を有するものもあるため、潤滑油の材料として可能性があることが知られている。
R.A.Reich et al.,Journal of the Society of Tribologists and Lubrication Engineers,July 2003,p.16−21
もっとも、一般に、イオン液体は高粘度、高比重であるものが多く、それを潤滑油等として実用化するためには、粘度の低いイオン液体を見出す必要があり、この点を中心にさらに研究することが望まれている。そこで、本発明者らは、低粘度のイオン液体を得ることを目的として研究開発を進め、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンや、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン等のハロゲン原子(特にはフッ素原子)を有するアニオン部含有のイオン液体を見出し、低粘度のイオン液体を得るに至った。
しかしながら、このハロゲン原子(特にはフッ素原子)を有するアニオン部含有のイオン液体は、期待値より耐熱性がやや低く、高温下では、場合によって着色劣化する等の問題が生じ、これに対し有効な解決手段が得られていないのが実情である。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、潤滑油等として充分に機能する程度にまで粘度が低く、かつ高温下においても着色劣化が生じない熱安定性に優れたイオン液体組成物の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、カチオン部とアニオン部とからなるイオン液体を含むイオン液体組成物であって、イオン液体がアニオン部にハロゲン原子を有するイオン液体(A)であり、このイオン液体(A)と、塩基性リン酸塩およびイミダゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物(B)とを含有し、化合物(B)の配合量が、イオン液体(A)100重量部に対して0.001〜1重量部であるイオン液体組成物を第一の要旨とし、また、上記イオン液体組成物を用いてなる合成潤滑油を第二の要旨とする。
すなわち、本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意検討を重ねた。その過程で、アニオン部にハロゲン原子を有するイオン液体(A)の加熱により、例えばハロゲン原子がフッ素原子である場合においては、該イオン液体のアニオン部から遊離したフッ化物イオン(F-)が、空気中の水〔水素イオン(H+)〕と反応してHF(酸)となり、更には、アニオン部の種類によっては、硫酸(H2SO4)やスルファミン酸(NH2SO3H)などの強酸が生成することもあり、これらの酸性物質の発生が、さらなる分解を促進し、イオン液体の耐熱性を低下させる要因になっていることを突き止めた。本発明者らは、この知見にもとづき、さらに研究を重ねた結果、塩基性リン酸塩およびイミダゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物(B)が、上記イオン液体(A)より生じる酸性物質をトラップするため、これによって上記イオン液体(A)の高温下での熱安定性が向上することを見出し本発明に到達した。すなわち、アニオン部にハロゲン原子を有するイオン液体(A)において、さらに配合剤として塩基性リン酸塩およびイミダゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物(B)を特定の割合で配合することにより、低粘度で、かつ熱安定性に優れたイオン液体組成物が得られるようになる。とりわけこのイオン液体組成物は、潤滑油に好適に用いられる。
本発明は、カチオン部とアニオン部とからなるイオン液体を含むイオン液体組成物であって、イオン液体がアニオン部にハロゲン原子を有するイオン液体(A)であり、このイオン液体(A)と、塩基性リン酸塩およびイミダゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物(B)とを含有するイオン液体組成物である。このように、ハロゲン含有アニオン部を有するイオン液体に、塩基性リン酸塩およびイミダゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物を配合し、化合物(B)の配合量が、イオン液体(A)100重量部に対して0.001〜1重量部であると、低粘度で優れた熱安定性を有するようになる。
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
本発明のイオン液体組成物は、イオン液体を含むイオン液体組成物であって、アニオン部にハロゲン原子を有するイオン液体(A)(以下、「イオン液体(A)」と略すことがある)と、塩基性リン酸塩およびイミダゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物(B)(以下、「化合物(B)」と略すことがある)とを含有し、化合物(B)の配合量が、イオン液体(A)100重量部に対して0.001〜1重量部となるものである。ここで本発明におけるイオン液体とは、0〜150℃の範囲の一定温度において液体を保持するカチオン部およびアニオン部からなるイオン性物質のことを表す。
本発明で用いられるイオン液体(A)のアニオン部に関しては、上記のようにハロゲン原子を有するアニオンであれば、特に限定されるものではなく、一般的なイオン液体で使用されるアニオンを用いることが可能である。また、アニオンが含有するハロゲン原子の種類に関しても特に限定されるものではないが、特にはフッ素原子が好ましく用いられる。
このようなフッ素原子を有するアニオンとしては、例えば、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、(トリフルオロアセチル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン等のイミドアニオン類、ヘキサフルオロホスフェートアニオン等のホスフェートアニオン類、テトラフルオロボレートアニオン等のボレートアニオン類等があげられる。中でも、イミドアニオン類を用いることが好ましく、特にはビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンが、水への溶解性が低い点、つまり大気開放下での水の吸湿性がほとんどない点で好ましい。
上記ハロゲン原子を有するアニオン部は、互いに同じ種類であってもよいし、異なるものであってもよいが、アニオン部が同一である場合、多種類のアニオン部を有する場合と比較し、製造上も有利であるため、特には、同じ種類のアニオン部であることが好ましい。
本発明で用いられるイオン液体(A)のカチオン部としては、特に限定されるものではなく、一般的なイオン液体で使用されるカチオンが用いられる。かかるカチオン類としては、例えば、ヘテロ環式化合物のカチオン類、特には1〜5個のヘテロ原子を含む1〜5員環のヘテロ環式化合物のカチオン類、殊にはヘテロ原子として窒素原子を含む1〜5個のヘテロ原子を含む1〜5員環のヘテロ環式化合物のカチオン類などがあげられ、中でもイミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン等が好ましい。また、鎖状の第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオンを用いることも好ましい。これらの中でも、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオンが好ましく、特にはイミダゾリウムカチオンを用いることが、粘度が低い点で好ましい。
上記イミダゾリウムカチオンとしては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムイオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムイオン等のジアルキルイミダゾリウムイオン、3−エチル−1,2−ジメチル−イミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−イソプロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン等のトリアルキルイミダゾリウムイオン等があげられる。
上記ピロリジニウムカチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピロリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−ペンチルピロリジニウムイオン、N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−オクチルピロリジニウムイオン、N−デシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−ドデシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−プロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−イソプロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン等があげられる。
上記ピペリジニウムカチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピペリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−ペンチルピペリジニウムイオン、N−ヘキシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−オクチルピペリジニウムイオン、N−デシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−ドデシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−エチルピペリジニウムイオン、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−エチル−N−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−エチル−N−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン等があげられる。
上記ピリジニウムカチオンとしては、例えば、N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−プロピルピリジニウム等の炭素数1〜16のアルキル基により置換されたピリジニウムカチオン等があげられる。
上記第四級アンモニウムカチオンとしては、例えば、N,N,N,N−テトラメチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルプロピルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルブチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルペンチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルヘプチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルオクチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルデシルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルドデシルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルブチルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルヘキシルアンモニウムイオン、2−メトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、2−エトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、2−プロポキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルブチルアンモニウムイオン等があげられる。
上記第四級ホスホニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム等の炭素数1〜16のアルキル基により置換された第四級ホスホニウムカチオン等があげられる。
上記カチオン部は、互いに同じ種類であってもよいし、異なるものであってもよいが、カチオン部が同一である場合、多種類のカチオン部を有する場合と比較し、製造上も有利であるため、特には、同じ種類のカチオン部であることが好ましい。
これらのカチオンを、上記ハロゲン原子を有するアニオンとともに用いることにより、イオン液体の粘度を大きく低減することができ、合成潤滑油として好適となる。
本発明で用いるイオン液体(A)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、イオン交換法またはメタセシス反応などの公知の方法を適用することができる。例えば、上記カチオン部のハロゲン化塩と、上記アニオン部のアルカリ金属塩とを用いて、アニオン交換反応により得ることができる。ハロゲン化塩のハロゲンとしては、塩素または臭素等があげられる。アルカリ金属塩のアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等があげられる。
本発明で用いられる塩基性リン酸塩およびイミダゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物(B)としては、液体と固体のどちらであってもよく、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記塩基性リン酸塩としては、例えば、リン酸水素2カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水アンモニウム等があげられる
上記イミダゾール系化合物としては、通常、炭素数1〜30、好ましくは1〜25、特には1〜20のイミダゾール系化合物が用いられ、例えば、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−オクチルイミダゾール、1−ドデシルイミダゾール等があげられる。これらが用いられるのは、沸点が高く揮発しにくいからである。
また、上記化合物(B)としては、0.01M水溶液の、もしくはそれ未満の濃度で飽和水溶液となった場合には飽和水溶液の、20℃におけるpHが、特に6〜13であることが好ましく、さらには7〜12であることが好ましい。上記pHの範囲外にある化合物を、上記化合物(B)に代えて配合すると、熱安定性に劣る傾向がみられる。
基性リン酸塩およびイミダゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物(B)の配合量としては、前記のように、イオン液体(A)100重量部(以下「部」と略す)に対して、0.001〜1部の範囲である好ましくは0.01〜1部である。上記化合物(B)の配合量が少なすぎると耐熱性に劣、逆に、多すぎると溶解しない上記化合物(B)が潤滑性能を阻害する。
本発明におけるイオン液体組成物においては、必要に応じて、耐磨耗剤、防錆剤、腐食防止剤等の添加剤を含有していてもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
本発明のイオン液体組成物は、例えば、つぎのようにして製造される。例えば、イオン液体(A)と、塩基性リン酸塩およびイミダゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物(B)と、必要に応じてその他の添加剤とを適宜配合し、撹拌することにより得られる。この得られたイオン液体組成物は、イオン液体(A)に化合物(B)が溶解した溶液状態であってもよいし、イオン液体(A)に化合物(B)が分散した状態であってもよい。
上記により得られる本発明のイオン液体組成物は、疎水性であって、低粘度であり、かつ低温においても溶融状態を保ち、不揮発性、不燃性、熱安定性等の諸物性に優れるために、自動車、電気製品等の機械装置、動力伝達装置、精密機械向けの潤滑油、金属加工油や電池、キャパシタ、コンデンサーなどの電解質・電解液材料として幅広く利用可能である。中でも、特に合成潤滑油や電解液用途、とりわけ合成潤滑油用途に非常に有用である。
本発明のイオン液体組成物を合成潤滑油に用いる場合には、本発明のイオン液体組成物をそのまま潤滑油としてもよいが、必要に応じて、通常用いられる潤滑油基油を含んでいてもよく、また、必要に応じて防錆剤、流動点降下剤などの添加剤を使用することもできる。
このように、本発明の合成潤滑油においてイオン液体組成物を「用いる」とは、そのイオン液体組成物のみを使用する場合以外に、そのイオン液体組成物と他の材料とを組み合わせて使用する場合も含める趣旨であり、他の材料の使用量は、本発明の効果を妨げない程度であれば、特に限定されるものではないが、通常、イオン液体組成物の50重量%未満に設定される。
本発明の合成潤滑油の25℃での粘度は、2〜30mPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは2〜20mPa・sである。この粘度が、低すぎると、低粘度のため飛散しやすくなる傾向にあり、逆に、高すぎると、潤滑油自体の粘度に起因するエネルギーロスを生じる傾向がある。
また、本発明の合成潤滑油の動粘度が、40℃で2〜20mm/secであることが好ましく、さらに好ましくは5〜13mm/secである。また、本発明の合成潤滑油の動粘度が、100℃においては1〜10mm/secであることが好ましく、より好ましくは2〜5.5mm/secである。それぞれの温度において、動粘度が低すぎると、低粘度のため飛散しやすくなる傾向にあり、逆に、高すぎると、潤滑油自体の粘度に起因するエネルギーロスを生じる傾向がある。
合成潤滑油の粘度指数は、400以上であることが好ましく、さらに好ましくは430以上、特に好ましくは460以上である。なお、粘度指数の上限としては通常700である。ここで、粘度指数とは、温度と粘度の関係を表す指数であり、粘度指数の計算方法は、JIS K 2283(原油および石油製品の動粘度試験方法ならびに石油製品粘度指数算出方法)に規定されている方法をいう。なお、粘度指数が高いほど温度による粘度変化が小さく、潤滑油として優れていることを意味するものである。
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
イオン液体〔カチオン部:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン(EMI+)、アニオン部:ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)〕0.5gを、試験管に取り、リン酸水素2カリウム(KHPO)[キシダ化学(株)社製:特級]0.5mgを添加・撹拌し、イオン液体組成物を得た。なお、使用したKHPOを0.01M水溶液にした際の20℃におけるpHは、9.7であった。
〔実施例2〕
実施例1のリン酸水素2カリウムを、リン酸3ナトリウム(NaPO・12HO)[和光純薬(株)社製:特級]に代えた以外は、実施例1と同様に行ない、イオン液体組成物を得た。なお、使用したNaPO・12HOを0.01M水溶液にした際の20℃におけるpHは、13.4であった。
〔実施例3〕
実施例1のリン酸水素2カリウムを、リン酸水素2アンモニウム〔(NH)2HPO〕[キシダ化学(株)社製:特級]に代えた以外は、実施例1と同様に行ない、イオン液体組成物を得た。なお、使用した(NH)2HPOを0.01M水溶液にした際の20℃におけるpHは、8.3であった。
〔実施例
実施例1のリン酸水素2カリウムを、1−メチルイミダゾールに代えた以外は、実施例1と同様に行ない、イオン液体組成物を得た。添加した1−メチルイミダゾールは完全に溶解した。なお、使用した1−メチルイミダゾールを0.01M水溶液にした際の20℃におけるpHは、10.4であった。
〔実施例
実施例1のリン酸水素2カリウムを、1−オクチルイミダゾールに代えた以外は、実施例1と同様に行ない、イオン液体組成物を得た。添加した1−オクチルイミダゾールは完全に溶解した。なお、使用した1−オクチルイミダゾールを用いて0.01M水溶液を調製しようとしたが、0.01M未満の配合量で飽和水溶液となった。この飽和水溶液の20℃におけるpHは、8.8であった。
〔実施例
実施例1のリン酸水素2カリウムを、1−ドデシルイミダゾールに代えた以外は、実施例1と同様に行ない、イオン液体組成物を得た。添加した1−ドデシルイミダゾールは完全に溶解した。なお、使用した1−ドデシルイミダゾールを用いて0.01M水溶液を調製しようとしたが、0.01M未満の配合量で飽和水溶液となった。この飽和水溶液の20℃におけるpHは、7.5であった。
〔比較例1〕
イオン液体〔カチオン部:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン(EMI)、アニオン部:ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)〕0.5gを、試験管に取り、化合物(B)は配合しなかった。
上記のようにして得られた実施例および比較例の各イオン液体組成物(又はイオン液体)を用い、下記の方法に従って、粘度,動粘度および粘度指数を測定・評価した。
〈粘度〉
使用機器:AR−1000型回転レオメーター(TA Instruments社製)
測定方法:装置を25℃に設定し、サンプル0.6mlを試料台に乗せ、コーンを設置し、このコーンを一定の力(20Pa)で回転させた時の粘度値を読みとった。
〈40℃および100℃における動粘度〉
また、40℃および100℃における動粘度は、上記機器、測定方法を用いて各温度における粘度値を測定した後、その値から計算することにより求めた。また、これら動粘度の値を用いて、粘度指数を計算により求めた。
この結果、実施例1〜および比較例1は、いずれも、粘度が19mPa・sであり、40℃における動粘度が9.4mPa・sであり、100℃における動粘度が4.9mPa・sであり、粘度指数は623であった。これらは、低い粘度と高い粘度指数を示すものであり、この点において合成潤滑油としての特性に優れることが分かる。なお、これらの実施例1〜および比較例1が、いずれも同じ値を示すのは、イオン液体組成物の粘度等が、イオン液体(A)の種類に依存するからである。
また、得られた実施例1〜6および比較例の各イオン液体組成物(又はイオン液体)を用い、下記の方法に従って、加熱後の着色性を測定・評価し、その結果を後記の表1に示した。
〈加熱処理後の着色性〉
各イオン液体組成物(又はイオン液体)を、試験管にとり、予め170℃に加熱した恒温槽に入れ、30分ごとに目視で着色の有無を確認した。また、潤滑油のJIS K 2540に準じて、その耐熱性(着色性)を評価した。すなわち、170℃の加熱において、12時間経過後も無着色であるものを「○」とし、4時間〜11.5時間経過後に着色が確認されたものを「△」とし、0.5〜3.5時間経過後に着色が確認されたものを「×」として評価した。
Figure 0005274880
表1の結果から分かるように、全実施例1〜のいずれも、12時間経過後においても、着色がなく無色透明のままであった。これに対し、比較例1は、1時間という短時間で黄色に着色し、1.5時間経過後においては、褐色に変色しており、高温下での熱安定性に劣ることが分かる。
また、実施例1および比較例1のイオン液体組成物(又はイオン液体)について、下記の方法に従って、熱重量分析測定を行なった。比較例1の測定結果を図1に、実施例1の測定結果を図2に示す。
〈熱分解性〉
使用機器:Thermogravimetric Analyzer(TGA−7)(パーキンエルマー社製)
測定条件:上記熱重量分析測定装置を用い、30〜550℃までの重量変化(熱分解性)を測定した。試料の初期重量は約12mgとし、アルミパンを用いて空気中、昇温速度10℃/分で測定した。
化合物(B)を含有していない比較例1は、図1に示されるように、190℃付近から熱分解により重量減少が生じているのに対し、イオン液体(A)と化合物(B)とを含有する実施例1は、図2に示されるように、245℃付近から熱分解により重量減少が生じている。このように、実施例1は、比較例1に比べ、熱分解開始温度が約50℃も高温側にシフトし、熱安定性が大幅に向上したことが分かる。
上記結果から明らかなように、イオン液体(A)と、塩基性リン酸塩およびイミダゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物(B)とを含有し、化合物(B)が特定割合で配合される本発明のイオン液体組成物は、高い熱安定性を有するようになる。また、これにより、本発明のイオン液体組成物は、潤滑油に好適に用いられるようになる。
比較例1のイオン液体の熱重量分析測定の結果である。 実施例1のイオン液体組成物の熱重量分析測定の結果である。

Claims (5)

  1. カチオン部とアニオン部とからなるイオン液体を含むイオン液体組成物であって、イオン液体がアニオン部にハロゲン原子を有するイオン液体(A)であり、このイオン液体(A)と、塩基性リン酸塩およびイミダゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物(B)とを含有し、化合物(B)の配合量が、イオン液体(A)100重量部に対して0.001〜1重量部であることを特徴とするイオン液体組成物。
  2. 上記イオン液体(A)のハロゲン原子を有するアニオン部が、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ヘキサフルオロホスフェートおよびテトラフルオロボレートからなる群から選ばれた少なくとも1つである請求項1記載のイオン液体組成物。
  3. 上記イオン液体(A)のカチオン部が、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、ピロリジニウムカチオンおよびピペリジニウムカチオンからなる群から選ばれた少なくとも1つである請求項1または2記載のイオン液体組成物。
  4. 上記化合物(B)から選ばれるイミダゾール系化合物が、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−オクチルイミダゾール、1−ドデシルイミダゾールからなる群から選ばれた少なくとも1つである請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオン液体組成物。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載のイオン液体組成物を用いてなる合成潤滑油。
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