JP2014098053A - 合成潤滑剤 - Google Patents

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Hiroshi Honda
洋 本田
Shigetoshi Kawada
成利 川田
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Abstract

【課題】 長時間の高温かつ水分存在条件下という過酷な条件下においても安定性が高くイオン液体の分解が起こりにくく、優れた摩擦調整性能、防錆性能を安定して発揮することができる合成潤滑剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 下記一般式(1)で示されるアニオンを有するイオン液体(A)を主成分として含有し、かつ、イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)を含有することを特徴とする合成潤滑剤を用いる。
(化1)
(C2n+1SO)(CN)N …(1)
(式中、nは0〜15の整数である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、イオン液体を主成分とする合成潤滑剤に関するものであり、とりわけ高度な熱安定性、摩擦調整性能、耐腐食性能に優れるイオン液体を主成分とする合成潤滑剤に関するものである。
従来、機械装置、動力伝達装置、金属加工油、グリースなどに用いられる潤滑油としては、ポリαオレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、シリコン等の基油の中から最も目的物性に近い種類の基油を選択し、必要に応じてこれらを組合せたものが使用されており、更には、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、極圧剤、消泡剤、防錆剤、腐食防止剤などの潤滑油添加剤が複数種添加され、使用環境に合った潤滑油として使用されていた。
また、近年、装置の高性能化、高効率化に伴い、潤滑剤には更なる高耐酸化性、高耐蒸発性、長期間にわたって安定した潤滑性能を発揮しうる潤滑剤が求められており、かかる問題を解決する手段として、特定の有機カチオンと無機アニオンの組合せからなるイオン液体(常温溶融塩)が潤滑剤として使用できることが報告されており、イオン液体は蒸気圧が極めて低く、広い温度範囲で液体として存在し、安定性および難燃性に優れるだけでなく、粘度指数が高いため潤滑油の新しい材料として可能性のあることが知られていた(非特許文献1参照)。
これらイオン液体を用いた潤滑油については、潤滑油に求められる性能の中でも、耐酸化性、粘度指数、流動点に関してはイオン液体自体の分子設計による改良で調節・改善できるものであったが、上記以外の性能に関しては、イオン液体自体の改良により発揮させることは困難であったため、各種既存の添加剤を使用することが考えられていた。
例えば、特許文献1には、イミダゾリウムリン酸エステル塩が、イオン液体に摩擦調整性能、防錆性能を付与することが可能であり、イオン液体に添加しても溶解または分散され、イオン液体、特に粘度が低く潤滑剤用途に有用であるフッ素系のイオン液体の基油としての性能を阻害することのない潤滑油添加剤として記載されている。
R.A.Reich et al., Journal of the Society of Tribologists and Lubrication Engineers, July 2003, p.16-21
特開2011−174050号公報
しかしながら、特許文献1に記載の合成潤滑剤は摩擦調整性能、防錆性能に優れるものの、より長時間の高温かつ水分存在条件下という過酷な条件下においては、潤滑剤を機械に適用した場合、イミダゾリウムリン酸エステル塩を添加剤として用いた場合であっても、イオン液体の安定性が十分でなく、錆が発生する場合があり、改善の余地があることが判明した。
そこで、本発明ではこのような長時間の高温かつ水分存在条件下という過酷な条件下においても、安定性が高くイオン液体の分解が起こりにくく、高度な摩擦調整性能、防錆性能を安定して発揮することができる合成潤滑剤の提供を目的とするものである。
しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、従来のイミダゾリウムリン酸エステル塩添加剤合成潤滑剤において、主成分として用されていたフッ素原子含有イオン液体として、下記一般式(1)で示されるような特定のフッ素系官能基とシアノ基を有するアニオンを有するイオン液体を使用することにより、上記のような過酷な条件下であっても摩擦調整性能、防錆性能を安定して発揮するという顕著な効果を有する合成潤滑剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
(化1)
(C2n+1SO)(CN)N …(1)
(式中、nは0〜15の整数である。)
即ち、本発明の要旨は、上記一般式(1)で示されるアニオンを有するイオン液体(A)を主成分として含有し、かつ、イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)を含有することを特徴とする合成潤滑剤に関するものである。
本発明の合成潤滑剤を用いれば、長時間の高温かつ水分存在条件下にて使用するような場合においても、安定性が高くイオン液体の分解が起こりにくく、優れた摩擦調整性能、防錆性能を安定して発揮するという顕著な効果を得ることができるものである。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の合成潤滑剤は、下記一般式(1)で示されるアニオンを有するイオン液体(A)(以下、「イオン液体(A)」と略すことがある。)を主成分として含有し、かつ、イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)を含有するものである。
(化2)
(C2n+1SO)(CN)N …(1)
(式中、nは0〜15の整数である。)
なお、本発明におけるイオン液体とは、常温(25℃)において液体状態にあり、カチオン部とアニオン部からなるイオン性物質のことを示す。
本発明において、上記イオン液体(A)を「主成分とする」合成潤滑剤とは、通常、イオン液体(A)を50重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上含有する合成潤滑剤を示すものである。
<イオン液体(A)の説明>
本発明における下記一般式(1)で示されるアニオンを有するイオン液体(A)は、アニオン部が下記一般式(1)で示されるような特定のアニオンであることが必要である。
(化3)
(C2n+1SO)(CN)N …(1)
(式中、nは0〜15の整数である。)
上記一般式(1)で示されるアニオンを有するイオン液体(A)の融点および粘度は、上記一般式(1)中の炭素数nに依存する。上記nとしては、通常0〜15、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜4である。例えば具体的には、(FSO)(CN)N、(CFSO)(CN)N、(CSO)(CN)N、(CSO)(CN)N、(CSO)(CN)Nなどが挙げられる。本発明の合成潤滑剤は、その粘度を上記nを変化させることで調節することが可能である。かかるnは、潤滑剤を用いる機器の使用条件に合わせて適宜選択すればよい。
中でも特に低温領域でも安定な潤滑剤を得る場合には、nの値が小さいものを用いるのが好ましい。上記nとしては、通常0〜5、好ましくは1〜3、特に好ましくはn=1である(CFSO)(CN)N−のアニオンである。
かかるアニオンを製造する方法としては、公知の製造方法が用いられ、例えば特開2007-119467記載の方法が挙げられる。
イオン液体(A)のカチオン部は、イオン液体のカチオン部として用いられる公知一般のカチオン部であればよい。
かかるカチオンの中でも、窒素数1〜3個の5〜6員環化合物のオニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオンおよび第四級ホスホニウムカチオンからなる群より選択される有機カチオンを有することが好ましい。
窒素数1〜3個の5〜6員環化合物のオニウムカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン等の5員環化合物のオニウムカチオンや、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン等の6員環化合物のオニウムカチオンを挙げることができる。これらの中でも、イミダゾリウムカチオンが、融点が低く液状になりやすい点で好ましい。
上記イミダゾリウムカチオンとしては、例えば、下記一般式(a1)の構造を有するものをあげることができる。
Figure 2014098053
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜16の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アシル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基であって、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アシル基の中にN、S、Oより選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、共役または独立した二重結合または三重結合を含んでいてもよい。)
上記置換基R〜Rがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アシル基の場合、炭素数は1〜16であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましい。これらの置換基は直鎖でも分岐構造を有していてもどちらでもよいが、炭素数が多すぎると、側鎖の分子間相互作用が働くため粘度が増加する傾向がある。
上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アシル基は、N、S、およびOより選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、含有するヘテロ原子の数は特に限定されるものではない。また、共役、または独立した二重結合または三重結合を含んでいてもよく、これらの不飽和結合数も特に限定されるものではない。
このようなアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等があげられる。また、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等があげられる。さらに、アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基等があげられ、アルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等、アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基等、また、アミノ基としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等があげられる。産業上の有用性を考慮すると、酵素による分解を受け易くして生分解性を高めることができる点からアルコキシル基、アシル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基等が好ましい。
上記式(a1)で示されるイミダゾリウムカチオンとしては、具体的には、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン等のジアルキルイミダゾリウムカチオン;3−エチル−1,2−ジメチル−イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−イソプロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン等のトリアルキルイミダゾリウムカチオン等をあげることができる。
これらイミダゾリウムカチオンの中でも、合成の容易さの点から、1,3−二置換イミダゾリウムカチオン、1,2,3−三置換イミダゾリウムカチオンが好ましく用いられ、特には1,3−二置換イミダゾリウムカチオンが好ましく用いられる。これらの誘導体における置換基は、同一でも異なっていてもよく、多重結合または分岐があってもよい。
前記置換基としては、上記一般式(a1)における置換基と同様であり、かかる中から適宜選択して用いられる。
上記ピロリジニウムカチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−ペンチルピロリジニウムカチオン、N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−オクチルピロリジニウムカチオン、N−デシル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−ドデシル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−(2−プロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−(2−イソプロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムカチオン等をあげることができる。
上記ピリジニウムカチオンとしては、例えば、N−メチルピリジニウムカチオン、N−エチルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン、N−プロピルピリジニウムカチオンなどの炭素数1〜16のアルキル基により置換されたピリジニウムカチオン等をあげることができる。
上記ピペリジニウムカチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピペリジニウムカチオン、N−エチル−N−メチルピペリジニウムカチオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムカチオン、N−ブチル−N−メチルピペリジニウムカチオン、N−メチル−N−ペンチルピペリジニウムカチオン、N−ヘキシル−N−メチルピペリジニウムカチオン、N−メチル−N−オクチルピペリジニウムカチオン、N−デシル−N−メチルピペリジニウムカチオン、N−ドデシル−N−メチルピペリジニウムカチオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムカチオン、N−(2−メトキシエチル)−N−エチルピペリジニウムカチオン、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムカチオン、N−メチル−N−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウムカチオン、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムカチオン、N−エチル−N−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウムカチオン、N−エチル−N−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムカチオン等をあげることができる。
また、本発明では、上記窒素数1〜3個の5〜6員環化合物のオニウムカチオンの他にも、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオンが用いられる。
上記四級アンモニウムカチオンとしては、例えば、N,N,N,N−テトラメチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチルブチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチルペンチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチルヘキシルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチルオクチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチルドデシルアンモニウムカチオン、N−エチル−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムカチオン、N−エチル−N,N−ジメチルブチルアンモニウムカチオン、N−エチル−N,N−ジメチルヘキシルアンモニウムカチオン、2−メトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムカチオン、2−エトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムカチオン、2−プロポキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムカチオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムカチオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルブチルアンモニウムカチオン等をあげることができる。
上記第四級ホスホニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン等の炭素数1〜16のアルキル基により置換された第四級ホスホニウムカチオン等があげられる。
上記一般式(1)で示されるアニオンと上記カチオンとを組み合わせて得られるイオン液体(A)の中でも、下記一般式(a2)で示されるイオン液体(A1)であることが、融点が低いイオン液体が得られるので、潤滑剤の使用温度範囲を広げられる点で好ましい。
Figure 2014098053


(一般式(a2)中、
R1は、置換基を有していてもよい炭素数2〜4のアルキル基、R3は、置換基を有していてもよい炭素数4〜16のアルキル基、R4およびR5は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基である。)
イオン液体(A)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、用いる有機カチオンのハロゲン化塩と上記アニオンのアルカリ金属塩とを用いてアニオン交換反応により得ることができる。ハロゲン化塩のハロゲンとしては、塩素または臭素があげられる。アルカリ金属塩のアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムなどがあげられる。
<イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)の説明>
本発明におけるイミダゾリウムリン酸エステル塩(B)としては、イミダゾリウムカチオンとリン酸エステルアニオンからなる塩であればよい。かかるイミダゾリウムリン酸エステル塩(B)は、常温(25℃)において液体または固体状態にある。このイミダゾリウムリン酸エステル塩(B)を潤滑剤添加剤として用いた場合に、金属表面との親和性が高まり、金属表面の摩擦面上に安定して吸着される(留まる)ことが可能となる。
上記イミダゾリウムカチオンとしては、例えば、下記一般式(b1)の構造を有するものをあげることができる。
Figure 2014098053
(式中、R〜R10はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜16の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アシル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基であって、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アシル基の中にN、S、Oより選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、共役または独立した二重結合または三重結合を含んでいてもよい。)
上記置換基R〜R10がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アシル基の場合、炭素数は1〜16であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましい。これらの置換基は直鎖でも分岐構造を有していてもどちらでもよいが、炭素数が多すぎると、側鎖の分子間相互作用が働くため粘度が増加する傾向がある。
上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アシル基は、N、S、およびOより選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、含有するヘテロ原子の数は特に限定されるものではない。また、共役、または独立した二重結合または三重結合を含んでいてもよく、これらの不飽和結合数も特に限定されるものではない。
このようなアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等があげられる。また、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等があげられる。さらに、アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基等があげられ、アルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等、アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基等、また、アミノ基としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等があげられる。産業上の有用性を考慮すると、酵素による分解を受け易くして生分解性を高めることができる点からアルコキシル基、アシル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基等が好ましい。
上記式(b1)で示されるイミダゾリウムカチオンとしては、具体的には、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン等のジアルキルイミダゾリウムカチオン;3−エチル−1,2−ジメチル−イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−イソプロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン等のトリアルキルイミダゾリウムカチオン等をあげることができる。
これらイミダゾリウムカチオンの中でも、合成の容易さの点から、1,3−二置換イミダゾリウムカチオン、1,2,3−三置換イミダゾリウムカチオンが好ましく用いられ、特には1,3−二置換イミダゾリウムカチオンが好ましく用いられる。これらの誘導体における置換基は、同一でも異なっていてもよく、多重結合または分岐があってもよい。
上記リン酸エステルアニオンとしては、モノエステル構造を有するリン酸エステルアニオン、またはジエステル構造を有するリン酸エステルアニオンのどちらであってもよいが、合成の容易さからジエステル構造を有するリン酸エステルアニオンであることが好ましい。
かかるジエステル構造を有するリン酸エステルアニオンとしては、下記一般式(b2)で示されるものが好ましい。
Figure 2014098053
(式中、R11、R12はそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基である。)
上記R11、R12のアルキル基の炭素数は、通常1〜8、好ましくは1〜4である。R11とR12は同じものであってもよいし、異なるものであってもよいが、合成し易いため同じものであることが好ましい。
上記一般式(b2)で示されるリン酸エステルアニオンとしては、例えば、ジメチルホスフェートアニオン、ジエチルホスフェートアニオン、ジプロピルホスフェートアニオン、ジブチルホスフェートアニオン、ジペンチルホスフェートアニオン、ジヘキシルホスフェートアニオン、ジヘプチルホスフェートアニオン、ジオクチルホスフェートアニオン等が挙げられるが、これらの中でも、ジメチルホスフェートアニオン、ジエチルホスフェートアニオン、ジプロピルホスフェートアニオン、ジブチルホスフェートアニオンが好ましい。
本発明におけるイミダゾリウムリン酸エステル塩(B)とは、具体的には下記一般式(b3)で示される化合物であることが、低融点であり、かつ主成分となる一般式(1)で示されるアニオンを有するイオン液体(A)と相溶しやすい点で好ましい。
Figure 2014098053
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜16のアルキル基であり、R11およびR12は炭素数1〜8のアルキル基である。)
中でも、常温(25℃)にて液体であるものが主成分となる一般式(1)で示されるアニオンを有するイオン液体(A)とより相溶しやすいため、最も好ましい。常温で液体となる(b3)を得るためには、RおよびRを炭素数1〜16の範囲内で異なる炭素数のアルキル基とし、R11およびR12を炭素数1〜5のアルキル基にすることが望ましい。
上記下記一般式(2)で示される化合物として具体的には、1,3−ジメチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、
1−メチル−3−ノニルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−メチル−3−ウンデシルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、等のジメチルホスフェートアニオン系塩、1,3−ジエチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−ペンチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−ヘキシルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−ヘプチルメチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−オクチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−ノニルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−デシル−3−エチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、
1−エチル−3−ウンデシルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−ドデシル−3−エチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−ヘキサデシルメチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、等のジエチルホスフェートアニオン系塩、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムジプロピルホスフェート、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムジプロピルホスフェート、1,3−ジプロピルイミダゾリウムジプロピルホスフェート、1−ブチル−3−プロピルイミダゾリウムジプロピルホスフェート、1−プロピル−3−ペンチルイミダゾリウムジプロピルホスフェート、1−ヘキシル−3−プロピルイミダゾリウムジプロピルホスフェート、1−ヘプチル−3−プロピルイミダゾリウムジプロピルホスフェート、1−オクチル−3−プロピルイミダゾリウムジプロピルホスフェート、1−ノニル−3−プロピルイミダゾリウムジプロピルホスフェート、1−デシル−3−プロピルイミダゾリウムジプロピルホスフェート、1−プロピル−3−ウンデシルイミダゾリウムジプロピルホスフェート、1−ドデシル−3−プロピルイミダゾリウムジプロピルホスフェート、1−ヘキサデシル−3−プロピルイミダゾリウムジプロピルホスフェート等のジプロピルホスフェートアニオン系塩、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1、3ジブチルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1−ブチル−3−ペンチルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1−ブチル−3−ヘキシルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1−ブチル−3−ヘプチルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1−ブチル−3−オクチルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1−ブチル−3−ノニルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1−ブチル−3−デシルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1−ブチル−3−ウンデシルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1−ブチル−3−ドデシルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1−ブチル−3−ヘキサデシルイミダゾリウムジブチルホスフェート等のジブチルホスフェートアニオン系塩、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムジペンチルホスフェート、1−エチル−3−ペンチルイミダゾリウムジペンチルホスフェート、1−ブチル−3−ペンチルイミダゾリウムジペンチルホスフェート、1、3−ジペンチルイミダゾリウムジペンチルホスフェート、1−ヘキシル−3−ペンチルイミダゾリウムジペンチルホスフェート、1−ヘプチル−3−ペンチルイミダゾリウムジペンチルホスフェート、1−オクチル−3−ペンチルイミダゾリウムジペンチルホスフェート、1−ノニル−3−ペンチルイミダゾリウムジペンチルホスフェート、1−デシル−3−ペンチルイミダゾリウムジペンチルホスフェート、1−ペンチル−3−ウンデシルイミダゾリウムジペンチルホスフェート、1−ドデシル−3−ペンチルイミダゾリウムジペンチルホスフェート、1−ヘキサデシル−3−ペンチルイミダゾリウムジペンチルホスフェート等のジペンチルホスフェートアニオン系塩、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート、1−エチル−3−ヘキシルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート、1−ヘキシル−3−プロピルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート、1−ブチル−3−ヘキシルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート、1−ヘキシル−3−ペンチルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート、1、3−ジヘキシルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート、1−ヘキシル−3−ヘプチルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート、1−ヘキシル−3−オクチルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート、1−ヘキシル−3−ノニルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート、1−デシル−3−ヘキシルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート、1−ヘキシル−3−ウンデシルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート、1−ドデシル−3−ヘキシルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート、1−ヘキシル−3−ヘキサデシルイミダゾリウムジヘキシルホスフェート等のジヘキシルホスフェートアニオン系塩、等が挙げられる。
これらの中でも、イオン液体(A)への相溶性と潤滑特性の両方に優れる点で、ジエチルホスフェートアニオン系塩、ジプロピルホスフェートアニオン系塩、ジブチルホスフェートアニオン系塩を含有するものが好ましい。
本発明の合成潤滑剤におけるイミダゾリウムリン酸エステル塩(B)は、合成潤滑剤の添加剤として配合される。従ってその配合量は主成分であるイオン液体(A)よりも少ない。
より具体的には、イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)の配合量はイオン液体(A)100重量部に対して、通常0.001〜10重量部であり、さらに0.001〜5重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.01〜2重量部、殊に好ましくは0.05〜1重量部である。上記イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)の配合量が少なすぎると潤滑油添加剤としての機能が充分に発現しにくい傾向があり、多すぎると潤滑剤中に均一に分散または溶解しなくなる傾向がみられる。
<合成潤滑剤の製造方法>
本発明の合成潤滑剤は、例えば、イオン液体(A)とイミダゾリウムリン酸エステル塩(B)とを適宜配合し、必要に応じて加温して撹拌する方法等により得られる。
得られたイオン液体組成物は、イオン液体(A)にイミダゾリウムリン酸エステル塩(B)が溶解した溶液状態であってもよいし、イオン液体(A)にイミダゾリウムリン酸エステル塩(B)が分散した状態であってもよい。取り扱い性の点で好ましくは、イオン液体(A)にイミダゾリウムリン酸エステル塩(B)が溶解した溶液状態である。
また、本発明の合成潤滑剤は、本発明の効果を妨げない程度に必要に応じて上記イオン液体(A)以外のイオン液体を含んでもよい。
また、本発明の効果を妨げない程度に必要に応じて上記イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)以外の添加剤、例えば従来公知の潤滑油基油や極圧剤、油性剤などを含むものであってもよい。
粘度の低い潤滑剤の使用を目的とするならば、合成潤滑剤の25℃での粘度は、通常30mPa・s以下であることが好ましく、さらに好ましくは20mPa・s以下である。かかる粘度が高すぎると潤滑剤自体の粘度に起因するエネルギーロスを生じる傾向がある。また、かかる粘度の下限値としては通常2mPa・sであり、下限値未満になると低粘度のため飛散しやすくなる傾向がある。
本発明の合成潤滑剤は、長時間の高温かつ水分存在条件下にて使用するような場合においても、安定性が高くイオン液体の分解が起こりにくく、優れた摩擦調整性能、防錆性能を安定して発揮するという顕著な効果を得ることができるため、自動車、電気製品等の機械装置、動力伝達装置、精密機械のための潤滑剤、金属加工油、特殊環境下での潤滑剤として幅広く利用可能である。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
[イオン液体(A)の製造]
<製造例1> 1−エチル−3−メチルイミダゾリウムN−シアノトリフルオロメタンスルホニルイミド(A−1)の合成
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド 4.01g(21mmol)とN−シアノトリフルオロメタンスルホニルアミドカリウム塩 4.38g(2.0mmol)を6.5gの水中で50℃、3時間攪拌した。次いでかかる液体を分液漏斗に入れ、目的物を塩化メチレン10mlにて抽出した。水層を除去後、有機層を水1mlで10回洗った。得られた有機層を減圧濃縮することにより、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムN−シアノトリフルオロメタンスルホニルアミド(A−1)5.05g(17.8mmol、収率89%)を得た。
[その他イオン液体の製造]
<比較製造例1> 1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(A’−1)の合成
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド(日本合成化学工業(株)製)11.04g(60.6mmol)とビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンのカリウム塩20.33g(63.66mmol)を20gの水中で 40℃、4時間反応させた。水層を除去後、有機層を水 2mlで8回洗った。得られた有機層を減圧濃縮することにより、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(A’−1)22.53g(57.6mmol、収率95%)を得た。
[イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)の製造例]
下記、イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)は、WO2008−114584号公報及びFeul vol87 79−84page 2008に準じて合成した。
<製造例2> 1−ブチル−3−ドデシルイミダゾリウムジブチルホスフェート(B−1)の合成
1−ドデシルイミダゾール10.0gにトリブチル燐酸13.5gを入れ、120℃で120時間加熱した。加熱後、室温に冷却し、ヘキサン50mlで6回洗浄した。下層の1−ブチル−3−ドデシルイミダゾリウムジブチルホスフェートを真空下、60℃で乾燥し、1−ブチル−3−ドデシルイミダゾリウムジブチルホスフェート(B−1)6.5gを得た。
<実施例1>
製造例1で得られたイオン液体(A−1)100部に、イミダゾリウムリン酸エステル塩(B−1)0.5部をそれぞれ添加し、40℃に加温し充分に混合攪拌することにより、実施例1の合成潤滑剤を得た。
<比較例1>
比較製造例1で得られたイオン液体(A’−1)100部に、イミダゾリウムリン酸エステル塩(B−1)0.5部を添加し、40℃に加温し充分に混合攪拌することにより、合成潤滑剤を得た。
<比較例2>
製造例1で得られたイオン液体(A−1)に何も添加剤を加えず合成潤滑剤として用いた。
<比較例3>
比較製造例1で得られたイオン液体(A’−1)に何も添加剤を加えず合成潤滑剤として用いた。
上記実施例1、比較例1〜3で得られた合成潤滑剤について、下記の摩擦調整能試験、防錆性能試験および熱安定性試験を行なった。結果は下記の表1に示す。
●摩擦調整性能試験
<摩擦係数>
潤滑油摩擦試験機(キョウシン株式会社製、「KT−1203」)を用いて、下記の条件下での、摩擦係数を測定した。なお、摩擦係数の値は、下記条件での測定時間中に得られた全係数データのうち、測定初期(0−30秒)の値を除いた平均値で示した。
[測定条件]
実験材料:3/16インチSUJ−2鋼球、SCM435軸受鋼板(φ25mmX5mm、HRC>40、Rz≒0.8(μm)
負荷荷重:0.1kgf
摩擦速度:5mm/sec
往復ストローク:5mm、
データ記録間隔:4sec
測定温度:室温〜200℃(段階的昇温)
測定時間:20分間
<磨耗体積>
上記摩擦試験終了後のSUJ-2鋼球の磨耗痕径(短径:a、長径:b)から下記計算式により求めた。
磨耗体積=πab/32D (D:鋼球直径)(単位:μm
[判定基準]
◎・・・4,000μm未満
○・・・4,000μm以上10,000μm未満
△・・・10,000μm以上〜20,000μm未満
×・・・20,000μm以上
●熱安定性試験
市販のスラストベアリング(材質SUJ−2、型番51120:小西製作所)をアセトンに浸漬して超音波洗浄器で洗い、防錆油を除去して乾燥した。これに合成潤滑剤30μL及び純水10μLを添加し、100℃の恒温機中で外部接続のモーターにより200rpmで10時間回転させた。14時間放置放冷後、再び純水10μLを添加し、恒温機中同じ条件下での回転させ、この操作を繰返した。100℃での回転時間の総計が60時間に達した後、ベアリングを純水10mL中に浸漬し、1分間超音波洗浄器にて抽出処理を行った。
得られた水溶液中に含まれるイオンをイオンクロマトで分析し、潤滑剤の主成分を構成する陰イオンの面積%を安定性の指標とした。また、超音波洗浄器で抽出操作を行った後のベアリングは直ぐに取り出して乾燥し、外観から防錆性を評価した。
Figure 2014098053

実施例1、比較例1〜3の合成潤滑剤の潤滑性能評価を行った結果を表1に示す。この結果より、イミダゾリウムリン酸エステル塩を含有する合成潤滑剤において、主成分のイオン液体のアニオンがN−シアノトリフルオロメタンスルホニルアミドである実施例1のイオン液体にイミダゾリウムリン酸エステル塩を添加した合成潤滑剤は、比較例1のビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドをアニオンとするイオン液体と同じく優れた摩擦調整性能を有するが、その摩擦係数は比較例1の14%も低くなり、磨耗体積は比較例1の42%も減少し、さらに優れた摩擦調整性能を有することがわかる。
熱安定性試験においては、錆が出やすい材質であるSUJ−2を用い、室温で潤滑剤に33%相当量の水を加え、100℃10時間の加熱、14時間の放冷を繰返すことで錆が出やすい条件とし、ベアリングに発生する錆の様子を観察した。
かかる結果の陰イオンピーク面積は、値が大きいほど主成分のイオン液体のアニオンが熱分解しなかったことを意味するが、比較例1が81%であったのに対し、実施例1は89%と非常に優れていた。また、このときの外観についても、比較例1は錆が発生したのに対して、本発明の合成潤滑剤を用いた実施例1は錆が発生しないという優れた効果が得られた。
本発明の合成潤滑剤は、長時間の高温かつ水分存在条件下という過酷な条件下においても安定性が高くイオン液体の分解が起こりにくく、優れた摩擦調整性能、防錆性能を安定して発揮することができるため、自動車、船舶、電気製品等の機械装置、動力伝達装置、精密機械、特殊環境下での潤滑剤として有用である。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で示されるアニオンを有するイオン液体(A)を主成分とする合成潤滑剤であり、かつ、イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)を含有することを特徴とする合成潤滑剤。
    (化1)
    (C2n+1SO)(CN)N …(1)
    (式中、nは0〜15の整数である。)
  2. 下記一般式(1)で示されるイオン液体(A)のカチオン部がイミダゾリウムカチオンであることを特徴とする請求項1記載の合成潤滑剤。
    (化2)
    (C2n+1SO)(CN)N …(1)
    (式中、nは0〜15の整数である。)
  3. イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)のイミダゾリウムカチオンが、1,3−二置換イミダゾリウムカチオンであることを特徴とする請求項1または2いずれか記載の合成潤滑剤。
  4. イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)のリン酸エステルアニオンが、ジエステル構造を有するリン酸エステルアニオンであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の合成潤滑剤。
  5. イミダゾリウムリン酸エステル塩(B)が、下記一般式(b3)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の合成潤滑剤。
    Figure 2014098053
    (式中、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜16のアルキル基であり、R11およびR12は炭素数1〜8のアルキル基である。)
  6. 下記一般式(1)で示されるアニオンを有するイオン液体(A)100重量部に対するイミダゾリウムリン酸エステル塩(B)の含有量が、0.01〜10重量部であることを特徴とする合成潤滑剤。
    (化4)
    (C2n+1SO)(CN)N …(1)
    (式中、nは0〜15の整数である。)
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