JP2010168544A - 合成潤滑剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】イオン液体からなる潤滑油の実用化のためには欠かすことのできない、摩擦調整性能、防錆性能を付与することが可能であり、イオン液体に添加しても溶解または分散し、イオン液体の基油としての性能を阻害することのない潤滑油添加剤の提供することを目的とする。
【解決手段】 イオン液体(A)を主成分とする合成潤滑剤であって、複素環式化合物(B)を含有してなることを特徴とする合成潤滑剤
【選択図】なし

Description

本発明は、潤滑性能の調整機能を有する添加剤を含有した、イオン液体を主成分とする合成潤滑剤に関するものであり、とりわけ摩擦調整性能、防錆性能に優れる添加剤を含有するイオン液体を主成分とする合成潤滑剤に関するものである。
従来、機械装置、動力伝達装置、金属加工油、グリースなどに用いられる潤滑油としては、ポリαオレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、シリコン等の基油の中から最も目的物性に近い種類の基油を選択し、必要に応じてこれらを組合せたものが使用されており、更には、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、極圧剤、消泡剤、防錆剤、腐食防止剤などの潤滑油添加剤が複数種添加され、使用環境に合った高性能潤滑油として使用されていた。
また、近年、特定の有機カチオンと無機アニオンの組合せからなるイオン液体(常温溶融塩)が潤滑剤として使用できることが報告されており、イオン液体は蒸気圧が極めて低く、広い温度範囲で液体として存在し、安定性および難燃性に優れるだけでなく、粘度指数が高いため潤滑油の新しい材料として可能性のあることが知られていた(非特許文献1参照)。
これらイオン液体を用いた潤滑油については、潤滑油に求められる性能の中でも、耐酸化性、粘度指数、流動性の点に関してはイオン液体自体の分子設計による改良で調節・改善できるものであったが、上記以外の性能に関しては、イオン液体自体の改良により発揮させることは困難であったため、各種既存の添加剤を使用することが考えられていた。
しかしながら、これら既存の添加剤はイオン液体には溶解しないものも多く、イオン液体を主成分とする合成潤滑剤においても実際に使用可能な潤滑油添加剤は得られていないのが現状であったため、このことが、イオン液体を潤滑油として実用化する際の障害となっていた。
R.A.Reich et al., Journal of the Society of Tribologists and Lubrication Engineers, July 2003, p.16-21
そこで、本発明ではこのような背景下において、イオン液体からなる合成潤滑剤の実用化のためには欠かすことのできない、摩擦調整性能、防錆性能を付与することが可能であり、イオン液体に添加しても溶解または分散し、イオン液体の基油としての性能を阻害することのない潤滑油添加剤を配合してなる合成潤滑剤の提供を目的とするものである。
しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定の化合物を含有させることにより、イオン液体を主成分とする合成潤滑剤に、摩擦調整性能、防錆性能を与えられることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の要旨は、イオン液体(A)を主成分とする合成潤滑剤であって、更に複素環式化合物(B)を含有してなることを特徴とする合成潤滑剤である。
本発明によれば、イオン液体を主成分として含むイオン液体潤滑剤組成物に複素環式化合物を加えることにより、低揮発性、広範囲の温度安定性、高粘度指数といったイオン液体の特性を保持したまま、摩擦係数、潤滑剤組成物が接する材料の磨耗量および材料の発錆を低減させることができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の潤滑油は、イオン液体(A)を主成分とし、更に複素環式化合物(B)を含有してなるものである。
なお、本発明におけるイオン液体とは、常温(25℃)において溶融状態にあり、カチオン部とアニオン部からなるイオン性物質のことを示す。
イオン液体(A)のカチオン部としては、通常のイオン液体に用いられるカチオンを用いることができるが、中でも、窒素数1〜3個の5乃至6員環化合物のオニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオンおよび第四級ホスホニウムカチオンからなる群より選択される有機カチオンを有することが好ましい。
窒素数1〜3個の5乃至6員環化合物のオニウムカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピロリジニウム等の5員環化合物のオニウムカチオンや、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウム等の6員環化合物のオニウムカチオンを挙げることができる。これらの中でも、イミダゾリウムカチオンが、融点が低く液状になりやすい点で好ましい。
上記イミダゾリウムカチオンとしては、例えば、下記一般式(2)の構造を有するものを挙げることができる。
Figure 2010168544
(式(2)中、置換基R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜16の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アシル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基であって、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アシル基の中にN、S、Oより選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、共役または独立した二重結合または三重結合を含んでいてもよい。)
上記置換基R〜Rがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アシル基の場合、炭素数は1〜16であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましい。これらの置換基は直鎖でも分岐構造を有していてもどちらでもよいが、炭素数が多すぎると、側鎖の分子間相互作用が働くため粘度が増加する傾向がある。
上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アシル基は、N、S、およびOより選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、含有するヘテロ原子の数は特に限定されるものではない。また、共役、または独立した二重結合または三重結合を含んでいてもよく、これらの不飽和結合数も特に限定されるものではない。
このようなアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等があげられる。また、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等があげられる。さらに、アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基等があげられ、アルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等、アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基等、また、アミノ基としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等があげられる。産業上の有用性を考慮すると、酵素による分解を受け易くして生分解性を高めることができる点からアルコキシル基、アシル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基等が好ましい。
上記式(2)で示されるイミダゾリウムカチオンとしては、具体的には、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムイオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムイオン等のジアルキルイミダゾリウムイオン;3−エチル−1,2−ジメチル−イミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−イソプロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン等のトリアルキルイミダゾリウムイオン等をあげることができる。
これらイミダゾリウムカチオンの中でも、合成の容易さの点から、1,3−二置換イミダゾリウムカチオン、1,2,3−三置換イミダゾリウムカチオンが好ましく用いられる。これらの誘導体における置換基は、同一でも異なっていてもよく、多重結合または分岐があってもよい。
前記置換基としては、上記一般式(2)における置換基と同様であり、かかる中から適宜選択して用いられる。
上記ピロリジニウムカチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピロリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−ペンチルピロリジニウムイオン、N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−オクチルピロリジニウムイオン、N−デシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−ドデシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−プロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−イソプロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン等をあげることができる。
上記ピリジニウムカチオンとしては、例えば、N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−プロピルピリジニウムなどの炭素数1〜16のアルキル基により置換されたピリジニウムカチオン等をあげることができる。
上記ピペリジニウムカチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピペリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−ペンチルピペリジニウムイオン、N−ヘキシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−オクチルピペリジニウムイオン、N−デシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−ドデシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−エチルピペリジニウムイオン、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−エチル−N−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−エチル−N−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン等をあげることができる。
また、本発明では、上記窒素数1〜3個の5乃至6員環化合物のオニウムカチオンの他にも、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオンが用いられる。
上記四級アンモニウムカチオンとしては、例えば、N,N,N,N−テトラメチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルプロピルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルブチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルペンチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルヘプチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルオクチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルデシルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルドデシルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルブチルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルヘキシルアンモニウムイオン、2−メトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、2−エトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、2−プロポキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルブチルアンモニウムイオン等をあげることができる。
上記第四級ホスホニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム等の炭素数1〜16のアルキル基により置換された第四級ホスホニウムカチオン等があげられる。
イオン液体(A)のアニオン部に関しては、ハロゲン原子を有するアニオンであれば、特に限定されるものではなく、一般的なイオン液体で使用されるアニオンを用いることが可能である。また、アニオンが含有するハロゲン原子の種類に関しては、特にはフッ素原子が好ましく用いられ、このようなフッ素原子を有するアニオンとしては、例えば、イミドアニオン類、スルホネートアニオン類、ホスフェートアニオン類、ボレートアニオン類等があげられる。
これらアニオンの中でも、下記一般式(1)で示されるフッ素含有イミドアニオンを用いると、生成したイオン液体の水への溶解度が低く、潤滑剤としての使用目的に相応し好ましい。
[化2]
(C2n+1SO ・・・(1)

(nは、0〜15の整数)
生成するイオン液体の融点、粘度は、上記一般式(1)中のnの値により変わるため、潤滑剤を用いる機器の使用条件に合わせた鎖長の炭化水素基を選択する必要があり、低温領域での潤滑油開発を目的とする場合はnの値が小さいものを用いるのが好ましい。具体的には、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンや、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンが好ましく用いられる。
イオン液体(A)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、アニオン交換法または酸エステル法などの公知の方法を適用することができる。例えば、用いる有機カチオンのハロゲン化塩とパーフルオロアルキルスルホネートアニオンのアルカリ金属塩とを用いてアニオン交換反応により得ることができる。ハロゲン化塩のハロゲンとしては、塩素または臭素があげられる。アルカリ金属塩のアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムなどがあげられる。
複素環式化合物(B)としては、窒素、硫黄または酸素から選らばれる少なくとも1つを含む環状化合物であればよく、具体的には、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、チアゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ピロール系化合物、ピロリジン系化合物等が用いられるが、これらの中でもイミダゾール系化合物、ピロール系化合物が好ましく用いられ、更にはイミダゾ−ル系化合物が特に好ましい。
また、複素環式化合物(B)は、複素環上の置換基として、炭素数2〜20の炭化水素基を有するものであることが、適切な潤滑調整能を付与しやすい点で好ましく、特には炭素数8〜12の炭化水素基を有するものであることが、イオン液体との相溶性に優れる点で好ましい。かかる炭化水素基としては、具体的には、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基などのアルケニル基などを挙げることができ、上記アルキル基には分岐構造を含むものであってもよいし、アルケニル基における二重結合の位置は任意である。
上記イミダゾール系化合物としては、具体的には、1−オクチルイミダゾール、1−ノニルイミダゾール、1−デシルイミダゾール、1−ウンデシルイミダゾール、1−ドデシルイミダゾール、1−トリデシルイミダゾール、1−テトラデシルイミダゾール、1−ペンタデシルイミダゾール、1−ヘキサデシルイミダゾールが好ましく用いられる。
複素環式化合物(B)の配合量としては、例えば、イオン液体(A)100重量部に対して、0.001〜10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.002〜5重量部、更に好ましくは0.01〜2重量部、殊に好ましくは0.05〜1重量部である。上記化合物(B)の配合量が少なすぎると潤滑油添加剤としての機能が充分に発現しにくい傾向があり、多すぎると潤滑剤中に均一に分散または溶解しなくなる傾向がみられる。
本発明において、イオン液体を「主成分とする」する合成潤滑剤とは、通常、イオン液体を50重量%以上含有する合成潤滑剤を示すものであり、必要に応じて、従来公知の潤滑油基油や極圧剤、油性剤などの各種添加剤を、本発明の効果を妨げない程度に含むものであってもよい。
本発明の合成潤滑剤は、例えば、イオン液体(A)と複素環式化合物(B)とを適宜配合し、撹拌する方法等により得られる。
得られたイオン液体組成物は、イオン液体(A)に複素環式化合物(B)が溶解した溶液状態であってもよいし、イオン液体(A)に複素環式化合物(B)が分散した状態であってもよい。
かくして得られるイオン液体(A)と複素環式化合物(B)からなる合成潤滑剤は、潤滑剤の使用条件等により異なるが、以下の潤滑性能を満たすものであることが好ましい。
粘度の低い潤滑剤の使用を目的とするならば、合成潤滑剤の25℃での粘度は、通常30mPa・s以下であることが好ましく、さらに好ましくは20mPa・s以下である。かかる粘度が高すぎると、潤滑油自体の粘度に起因するエネルギーロスを生じてしまう傾向がある。また、かかる粘度の下限値としては通常2mPa・sであり、粘度が低すぎると低粘度のため飛散しやすくなる傾向がある。
合成潤滑剤の粘度指数は、180以上であることが好ましく、さらに好ましくは200以上、特に好ましくは220以上である。ここで、粘度指数とは、温度と粘度の関係を表わす指数であり、粘度指数の計算方法は,日本工業規格(JIS)K2283(原油および石油製品の動粘度試験方法ならびに石油製品粘度指数算出方法)に規定されている。
なお、粘度指数が高いほど温度による粘度変化が小さく、潤滑油として優れていることを意味するものである。
潤滑油は用途により絶対粘度の高さが重要な場合や、絶対粘度より金属との接触角などの他の物性が重視される用途も考えられる。その際、必要な物性に応じて有機カチオンをイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオンから選択し、さらに必要なら置換基を変えて物性を調節する。この場合も上記粘度指数は重要視される物性である。粘度指数が低すぎると、温度による粘度の変化率が高すぎる傾向がある。
本発明の合成潤滑剤は、イオン液体のもつ優れた粘度特性を有し、不揮発性、熱安定性等の諸物性に、単独では得られなかった潤滑性、防錆性を兼ね備えているため、自動車、電気製品等の機械装置、動力伝達装置、精密機械のための潤滑油、金属加工油、特殊環境下での潤滑油として幅広く利用可能である。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
<製造例1> エチルメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(A−1)の合成
還流管をつけたフラスコに、1−メチルイミダゾール6.28g(76.5mmol)を入れた後、エチルブロミド33.01g(302.9mmol)とアセトニトリル8.20gを添加して、40℃で攪拌下8時間反応させ、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド13.41g(70.2mmol、収率91.8%)を得た。得られた1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド11.04g(57.8mmol)とビス(フルオロスルホニル)イミドのカリウム塩13.29g(60.6mmol)を20gの水中で50℃、4時間、攪拌下反応させた後、塩化メチレン50mlを加え塩化メチレン層を分取した。塩化メチレン層を水洗後、減圧乾燥することにより、エチルメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド15.85g(54.4mmol、収率94.2%)を得た。
<製造例2> エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(A−2)の合成
実施例1と同様の方法で得られた1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド11.04g(60.6mmol)とビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンのカリウム塩20.33g(63.66mmol)を20gの水−塩化メチレン中で、40℃、4時間攪拌させた。反応終了後、水層を分液漏斗により分取し、水洗後、減圧乾燥することにより、エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド22.53g(57.6mmol、収率95%)を得た。
<製造例3> メチルオクチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(A−3)の合成
製造例2の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドを1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミド16.7gに変えた以外は、製造例2と同様な方法で合成することにより目的とするメチルオクチルイミダゾリウムビス(トリスルホロメタンスルホニル)イミドを26.2g(収率91%)で得た。
<製造例4> ブチルメチルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(A−4)の合成
製造例2の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドを1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド13.3gに変え、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンのカリウム塩をビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドのカリウム塩に変更した以外は、同様な方法で合成することにより目的とするブチルメチルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを35.3g(収率81%)で得た。
<製造例5> オクチルイミダゾール(B−1)の合成
還流管をつけたフラスコに、イミダゾール68.1g(1.0mol)を入れ、オクチルクロリド163.5g(1.1mol)とアセトニトリル136mlと炭酸カリウム207.3gを添加して、70℃で24時間還流した後、冷却、濾過を実施し、ろ液を濃縮し、真空蒸留することにより、オクチルイミダゾールを103g得た。
<製造例6> ドデシルイミダゾール(B−2)の合成
製造例5のオクチルクロリドをドデシルクロリド225.3gに変更した以外は、製造例5と同様な操作を実施し、ドデシルイミダゾール201gを得た
<製造例7> ヘキサデシルイミダゾール(B−3)の合成
還流管をつけたフラスコに、イミダゾール68.1g(1.0mol)を入れた後、ヘキサデシルクロリド287g(1.1mol)とアセトニトリル136mlと炭酸カリウム207.3gを添加し、70℃で24時間還流した。反応液を冷却後、濾過を行ないろ液を濃縮した後、残渣をアセトンで希釈し、濾過後、ろ液を濃縮することにより、ヘキサデシルイミダゾールを88g得た。
<実施例1>
上記製造例1で得られたイオン液体(A−1)100重量部に、上記製造例5で得られたオクチルイミダゾール(B−1)0.5重量部を添加し、充分に混合攪拌することにより、合成潤滑剤を得た。
<実施例2〜14>
下記表1の如き組成にてイオン液体(A)と複素環式化合物(B)を配合し、合成潤滑剤を得た。
なお、複素環化合物(B)としては、上記(B−1)〜(B−3)および、下記(B−4)〜(B−6)を使用した。
・1−n−オクチルピロール(B−4)(東京化成工業(株)製)
・3−n−オクチルピロール(B−5)(東京化成工業(株)製)
・3−n−オクチルチオフェン(B−6)(東京化成工業(株)製)
<比較例1>
実施例1において、オクチルイミダゾール(B−1)を用いなかった以外は同様にして合成潤滑剤を得た。
<比較例2>
実施例3において、オクチルイミダゾール(B−1)を用いなかった以外は同様にして合成潤滑剤を得た。
<比較例3>
実施例9において、オクチルイミダゾール(B−1)を用いなかった以外は同様にして合成潤滑剤を得た。
<比較例4>
実施例12において、オクチルイミダゾール(B−1)を用いなかった以外は同様にして合成潤滑剤を得た。
得られた合成潤滑剤について、下記潤滑性能評価および防錆性能評価を行なった。結果を[表1]に示す。
(潤滑性能評価)
・摩擦係数
潤滑油摩擦試験機(キョウシン(株)製、「KT−1203」)を用いて、下記の条件下での、摩擦係数を測定した。なお、摩擦係数の値は、下記条件での測定時間中に得られた係数データのうち、開始直後(0〜30秒間)の値を除いた平均値で示した。
<測定条件>
実験材料:3/16インチSUJ-2鋼球、SCM435軸受鋼板(φ25mmX5mm、HRC>40、Rz≒0.8(μm)
負荷荷重:0.1kgf
摩擦速度:5mm/sec
往復ストローク:5mm、
データ記録間隔:4sec
測定温度:室温〜150℃または室温〜200℃(段階的昇温)
測定時間:20分間
・磨耗体積
上記摩擦試験終了後のSUJ-2鋼球の磨耗痕径(短径:a、長径:b)から下記計算式により求めた。
磨耗体積=πa3b/32D (D:鋼球直径)
(防錆性能評価)
上記摩擦試験終了後の試験鋼板上に生じた磨耗痕上の、錆の有無を判定した。
(判定基準)
○・・・試験鋼板上の磨耗痕を拡大観察しても錆を認めない
△・・・試験鋼板上の磨耗痕を拡大観察すると錆が認められる
×・・・試験鋼板上の磨耗痕に肉眼で錆が認められる
Figure 2010168544
表1の結果より、実施例のイオン液体に複素環式化合物を添加した合成潤滑剤は、比較例の複素環式化合物を添加していない合成潤滑剤よりも摩擦性能、防錆性能の両方に優れることが分かる。
このことは、本発明の複素環式化合物は、イオン液体を主成分とする合成潤滑剤の摩擦調整剤、防錆剤として有用な化合物であることを示すものである。
本発明の潤滑剤組成物は、潤滑油の基油としてのイオン液体の特性を活かした組成物を実用化する際に必須の潤滑性能を添加剤により高めたもので、自動車、船舶、電気製品等の機械装置、動力伝達装置、精密機械、特殊環境下での潤滑油として有用である。

Claims (6)

  1. イオン液体(A)を主成分とする合成潤滑剤であって、更に複素環式化合物(B)を含有してなることを特徴とする合成潤滑剤。
  2. 複素環式化合物(B)が、イミダゾール系化合物であることを特徴とする請求項1記載の合成潤滑剤。
  3. 複素環式化合物(B)が、炭素数2〜20の炭化水素基を置換基にもつ化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の合成潤滑剤。
  4. イオン液体(A)のアニオン部が、下記一般式(1)で示されるフッ素含有イミドアニオンであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の合成潤滑剤。
    [化1]
    (C2n+1SO ・・・(1)

    (nは、0〜15の整数)
  5. イオン液体(A)のアニオン部が、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の合成潤滑剤。
  6. イオン液体(A)のカチオン部が、イミダゾリウムカチオンであることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のる合成潤滑剤。
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