JP5272217B2 - 重合性組成物、重合体およびプラスチックレンズ - Google Patents
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そこで本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、レンズ素材に制限を受けず、透明で耐熱性の優れた高屈折率のプラスチックレンズを製造することができる重合性組成物、重合体、およびこの重合体からなるプラスチックレンズを提供することを目的とする。
本発明によれば、重合性モノマーと金属酸化物微粒子のいずれも、互いに反応し得る官能基を有しているため互いに親和性があり、金属酸化物微粒子を重合性組成物中に均一に分散させることができる。それ故、この重合性組成物を原料として重合を行うと、金属酸化物微粒子を重合体中に均一に分散させることができる。
また、重合性モノマーよりも官能基の数が多い金属酸化物微粒子を含有させることもできるため、架橋密度をより上げることも可能となる。従って、このような金属酸化物微粒子を分散させずに重合してなる重合体自身の屈折率よりも高屈折率とすることができ、さらに、重合体の耐熱性をより向上させることが可能となる。従って、前記金属酸化物微粒子を用いると、光学的にも透明で高屈折率かつ耐熱性の高いレンズ基材を容易に製造することができる。
この発明によれば、前記した重合性モノマーや金属酸化物微粒子の有する官能基がいずれも反応性の高い官能基であるので、金属酸化物微粒子を重合体中により均一に分散させることができる。
チオウレタン樹脂やチオエポキシ樹脂は高屈折率のレンズ素材として知られているが、本発明の重合性モノマーとして使用することで、さらに高屈折率の高いレンズ基材を製造することが可能となる。
さらに、この重合体からなるプラスチックレンズのポリマーネットワーク中には、無機成分が含まれているため、すべて有機成分で構成されるプラスチックレンズよりも熱膨張率を低下させることができる。またさらに、金属酸化物微粒子の表面には、重合性モノマーが有する官能基よりも非常に多くの官能基を結合させることができるため、プラスチックレンズの架橋密度を上げて耐熱性をより向上させることが可能となる。
以下に、本発明の重合性組成物、重合体およびプラスチックレンズについて実施形態を詳細に説明する。
ここで、重合性モノマーが有する官能基としては、イソシアナート基、イソチオシアナート基、チオール基(メルカプト基)、水酸基、エポキシ基、チオエポキシ基およびエピスルフィド基から選ばれる少なくともいずれかの官能基が好適に挙げられる。
例えば、イソシアナート基を持つ重合性モノマーとしては、公知の化合物を用いることができる。イソシアナート基を持つ化合物の具体例としては、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。
なお、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、メルカプト基以外に、硫黄原子を含むポリチオールをより好ましく用いることができる。具体例としては、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス((2−メルカプトエチル)チオ)−3−メルカプトプロパン等が挙げられる。
ベースとなる金属酸化物微粒子としては、高屈折率を有する金属酸化物を好適に使用することができる。
高屈折率を有する金属酸化物微粒子として、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、Tiから選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物(これらの混合物を含む)、および/または2種以上の金属を含む複合酸化物からなる無色透明の金属酸化物微粒子が好適に用いられる。このうち、屈折率、透明性、分散安定性等の点から酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子が好ましい。
例えば、金属酸化物微粒子表面を有機ケイ素化合物で処理することで、該表面に水酸基(−OH基)を結合させることができる。この際に用いられる有機ケイ素化合物としては、単官能性シラン、二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等が挙げられる。
同様に、金属酸化物微粒子表面をメルカプト系化合物で処理することで、該表面にチオール基(−SH基)を備えさせることができる。この際に用いられるメルカプト系化合物としては、公知の化合物を用いることができる。例えば、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール等の脂肪族ポリチオール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン等の芳香族ポリチオールが挙げられる。
また、金属酸化物微粒子表面をイソシアネート系化合物で処理することで、該表面にイソシアネート基(−NCO基)を備えさせることが出来る。この際に用いられるイソシアネート系化合物としては、公知の化合物を用いることができる。例えば、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。
例えば、重合体としてチオウレタン樹脂を製造する場合には、イソシアナート基またはイソチオシアナート基を持つモノマーと、メルカプト基を持つモノマー、さらにはこれらの少なくともいずれかの官能基を有する金属酸化物微粒子を混合する。そして、ウレタン樹脂用の硬化触媒を添加、混合し、加熱により重合硬化を行うことによって目標とする屈折率を有するチオウレタン樹脂を製造できる。硬化触媒の具体例としては、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ジブチル錫ジクロライド、ジメチル錫ジクロライド等が挙げられる。
また、エピスルフィド基と反応可能な官能基としては、水酸基、メルカプト基、1級または2級アミノ基、カルボキシル基などが挙げられる。
また、このレンズ基材に対して、必要に応じて、プライマー層、ハードコート層、反射防止層および防汚層が形成され、所望のプラスチックレンズとなる。以下、簡潔にこれらの各層についても説明する。
プライマー層は、レンズ基材の最表面に形成され、レンズ基材と後述するハードコート層双方の界面に存在して、レンズ基材とハードコート層双方への密着性を発揮する性質を有し、表面処理膜全体の耐久性を向上させる役割を担う。さらに外部からの衝撃吸収層としての性質も併せ持ち、耐衝撃性を向上させる性質も有する。
このようなプライマー層としては、極性を有する有機樹脂ポリマーと、酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子とを含むコーティング組成物を用いて形成されることが好ましい。
ハードコート層は、レンズ基材表面に形成されたプライマー層上に形成される。ハードコート層は、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子と、下記式(1)で示される化合物(B成分)とを含むコーティング組成物を用いて形成されることが好ましい。 R1R2 nSiX1 3−n (1)
(式中、R1は、重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、nは0または1である。)
ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子を使用することで、耐候性や耐光性がより向上し、また屈折率はアナターゼ型の結晶よりもルチル型の結晶の方が高いので、比較的屈折率の高い金属酸化物微粒子(複合微粒子)が得られる。
反射防止層は、ハードコート層上に形成される。形成される反射防止層は、ハードコート層の屈折率よりも0.10以上低い屈折率を有し、かつ50nm〜150nmの層厚の、無機薄層、有機薄層の単層または多層で構成される。無機薄層の材質としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、Ta2O5、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、MgF2、WO3等の無機物が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。プラスチックレンズの場合は、低温で真空蒸着が可能なSiO2、ZrO2、TiO2、Ta2O5が好ましい。また、多層層構成とした場合は、最外層はSiO2とすることが好ましい。
を用いてもよい。
有機薄層の材質は、プラスチックレンズやハードコート層の屈折率を考慮して選定され、真空蒸着法の他、スピンコート法、ディップコート法などの量産性に優れた塗装方法で成層することができる。
以上のように、レンズ基材上にプライマー層、ハードコート層および反射防止層が形成されたプラスチックレンズには、さらにプラスチックレンズ表面の撥水撥油性能を向上させる目的で、反射防止層上にフッ素を含有する有機ケイ素化合物からなる防汚層を形成することが好ましい。フッ素を含有する有機ケイ素化合物としては、例えば、特開2005−301208号公報や特開2006−126782号公報に記載されている含フッ素シラン化合物合物を好適に使用することができる。
〔実施例1〕
レンズ製造用の原料モノマーとして、m−キシレンジイソシアナートを40質量部、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンおよび5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンからなる混合モノマーを40質量部、紫外線吸収剤として商標名「SEESORB701」(シプロ化成工業製)を1.2質量部、内部離型剤として商標名「ゼレックUN」(Stepan社製)を0.1質量部添加し、混合した後、十分に撹拌して、完全に分散させた原料組成物中に、表面にイソシアナート基(−NCO)を有する酸化チタンを主成分とする金属酸化物微粒子を20質量部の濃度で添加したところ、均一に分散させることができた。
次に、触媒としてジブチル錫ジクロライドを0.01質量部添加し、室温で十分に撹拌して均一液とした。ついでこの重合性組成物を5mmHgに減圧して攪拌しながら30min脱気を行った。そして、この組成物を、2枚のガラス型を用いて、粘着テープで保持した鋳型中に注入し、大気重合炉中で30℃から120℃まで24時間かけて昇温を行い、重合硬化させた。その後、型よりレンズを取り外し、120℃で1時間加熱してアニール処理を行い、レンズAを得た。
レンズの屈折率は、アタゴ社のアッベ屈折率計を用いてe線(波長546nm)により20℃で測定した。屈折率を測定するために、2mm厚のフラット板を製造して、測定に供した。具体的には、厚みが2mmとなる様にテープにて外周部を封止した2枚のガラス平板中に、レンズ原料となるモノマー、金属酸化物微粒子等を注入し、上述の重合条件で、重合硬化、離型およびアニール処理してフラット板を製造した。
この方法により測定したレンズAの屈折率は、1.736であった。
レンズの線膨張率は、熱機械分析装置((株)島津製作所製:TMA60)を用いて、荷重5g、針入プローブ(2mmφ)、昇温スピードが10℃/minの条件により測定した。線膨張率を測定するために、屈折率の測定と同様の2mm厚のフラット板を製造して、測定に供した。
この方法により測定したレンズAの線膨張率は4.4×10−5/℃であった。
表面にチオール基(メルカプト基 −SH)を有する酸化チタンを主成分とする金属酸化物微粒子を20質量部の濃度で添加した以外は、実施例1と同様の方法でレンズBを得た。重合性組成物の調製において、金属酸化物微粒子は均一に分散させることができた。
レンズBの屈折率は1.736であった。また、レンズBの線膨張率は4.4×10−5/℃であった。
レンズ製造用の原料モノマーとして、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドを72質量部、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンおよび5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンからなる混合モノマーを8質量部、紫外線吸収剤として商標名「SEESORB701」(シプロ化成工業製)を1.0質量部添加し、混合した後、十分に撹拌して、完全に分散させた原料組成物中に、表面にチオエポキシ基を有する酸化チタンを主成分とする金属酸化物微粒子を20質量部の濃度で添加したところ、均一に分散させることができた。
次に、触媒としてN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを0.1質量部添加し、室温で十分に撹拌して均一液とした。ついでこの重合性組成物を5mmHgに減圧して攪拌しながら30min脱気を行った。そして、この組成物を、2枚のガラス型を用いて、粘着テープで保持した鋳型中に注入し、大気重合炉中で30℃から120℃まで24時間かけて昇温を行い、重合硬化させた。その後、型よりレンズを取り外し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行い、レンズCを得た。
レンズCの屈折率は1.792であった。また、レンズCの線膨張率は6.4×10−5/℃であった。
表面にチオール基(メルカプト基)を有する酸化チタンを主成分とする金属酸化物微粒子を20質量部の濃度で添加した以外は、実施例3と同様の方法でレンズDを得た。重合性組成物の調製において、金属酸化物微粒子は均一に分散させることができた。
レンズDの屈折率は1.792であった。また、レンズDの線膨張率は6.4×10−5/℃であった。
官能基を持たない金属酸化物微粒子を20質量部の濃度で添加した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行うことを試みたが、金属酸化物微粒子が原料組成物中に均一に分散せず、沈殿してしまったため、重合硬化を断念した。
レンズ製造用の原料モノマーとして、m−キシレンジイソシアナートを50質量部、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンおよび5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンからなる混合モノマーを50質量部とし、金属酸化物微粒子を添加しない以外は、実施例1と同様の方法でレンズEを得た。
得られたレンズEの屈折率は1.667と低く、レンズEの線膨張率は8.0×10−5/℃と高かった。
Claims (3)
- 官能基を有する重合性モノマーと、官能基を有する金属酸化物微粒子とを含む重合性組成物であって、
前記重合性モノマーが、チオウレタン樹脂またはチオエポキシ樹脂製造用のモノマーであり、
前記重合性モノマーが有する官能基と、前記金属酸化物微粒子が有する官能基とが互いに反応し得るものであり、
前記重合性モノマーが有する官能基は、
イソシアナート基、イソチオシアナート基、チオール基、エポキシ基、およびチオエポキシ基(エピスルフィド基)から選ばれる少なくともいずれかの官能基であり、
前記金属酸化物微粒子が有する官能基は、イソシアナート基およびチオエポキシ基(エピスルフィド基)から選ばれる少なくともいずれかの官能基であることを特徴とする重合性組成物。 - 請求項1に記載の重合性組成物から製造されたことを特徴とする重合体組成物。
- 請求項2に記載の重合体組成物から形成されたことを特徴とするプラスチックレンズ。
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