実施の形態1.
図1は実施の形態1を示す図で、電動機100の断面図である。図1に示すように、電動機100は、モールド固定子200と、回転子120と、モールド固定子200の軸方向一端部(開口部側)に取り付けられる金属製のブラケット130とを備える。
電動機100は、例えば、回転子120に永久磁石を有し、インバータで駆動されるブラシレスDCモータである。
モールド固定子200の軸方向一端部(開口部側)から回転子120が挿入され、モールド固定子200とブラケット130で、回転子120の軸受(後述する)を保持するようにブラケット130がモールド固定子200に圧入されて、電動機100が完成する。
先ず、電動機100を構成するモールド固定子200について、説明する。図2乃至図5は実施の形態1を示す図で、図2はモールド固定子200の斜視図、図3はモールド固定子200の開口部212と反対側の平面図、図4はモールド固定子200の開口部212側の平面図、図5は図3のA−A断面図である。
モールド固定子200は、固定子組立300(後述する)をモールド樹脂250(熱硬化性樹脂)で一体に成形したものである。モールド固定子200は、軸方向一端部(図5の右側)が開口していて、回転子120が挿入される開口部212(図4、図5)が形成されている。
モールド固定子200の軸方向他端部(図5の左側)には、回転子120のシャフト123の径より若干大きい孔211(図2、図3、図5)が開けられている。
モールド固定子200は、基板90(後述する)等が取り付けられ、強度的に弱い部品を含む固定子組立300(後述する)を一体に成形するため低圧成形が望ましい。そこで、成形樹脂には不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。
モールド固定子200のモールド樹脂250(熱硬化性樹脂)によるモールド成形時の位置決め(軸方向)は、固定子400(後述する)の外周付近に設けられる絶縁部3の複数個の金型押え部3a(図2)が、上型及び下型の金型に押えられることでなされる。径方向の位置決めは、固定子鉄心1の内周面が金型に嵌合することでなされる。そのため、モールド固定子200の内周部に、固定子鉄心1のティース1aの先端部が露出している(図示せず)。固定子400の絶縁部3、固定子鉄心1については後述する。
後述する基板90は固定子400(後述する)に固定されているが、成形圧力により変形する可能性があるので、上型に設けた複数の基板押え突起(図示せず)で基板90を押さえ、変形を抑制する。そのため、モールド固定子200の基板90側の軸方向端面に、複数個の凹部215が表出する。また、基板90の径方向の位置ずれが起こる可能性があるので、固定子鉄心1の内周部が嵌合する金型に設けた基板位置決め突起(図示せず)に基板90の内周側の円弧93(後述する)を嵌合させ、基板90の径方向の位置ずれ抑制する。そのため、図4に示すモールド固定子200の開口部212に、基板位置決め突起(図示せず)に押さえられた基板90の一部が露出する。なお、従来は基板位置決め突起(図示せず)が略120度ごと3個であったが、本実施の形態では略90度ごと4個としたので、本実施の形態の180度より大きくした内周側の円弧93(後述する)に、基板位置決め突起(図示せず)が確実に3点で嵌合するので、安定した径方向の位置決めがなされ、品質が確保される。また、従来の内周側に略円形の穴を有する基板の穴に、基板位置決め突起(図示せず)が4点で嵌合し安定した径方向の位置決めがなされるので、本実施の形態と従来の両方を金型交換等の段取りなしで製造することができ、加工コストの低減が図れる。
次に、図6乃至図8を参照しながら、回転子120について説明する。但し、本実施の形態は、後述する固定子組立300に特徴があるので、回転子120については、簡単に説明する。図6乃至図8は実施の形態1を示す図で、図6は回転子120の断面図、図7は回転子樹脂組立120−1の断面図、図8は負荷側から見た回転子樹脂組立120−1の側面図である。
図6に示すように、回転子120は、回転子樹脂組立120−1と、負荷側転がり軸受け121aと、反負荷側転がり軸受け121bとを備える。
図7に示すように、回転子樹脂組立120−1、は、ローレット123aが施されたシャフト123、リング状の回転子の樹脂マグネット122(回転子のマグネットの一例)、リング状の位置検出用樹脂マグネット125(位置検出用マグネットの一例)、そしてこれらを一体成形する樹脂部124で構成される。
リング状の回転子の樹脂マグネット122と、シャフト123と、位置検出用樹脂マグネット125とを、縦型成形機により射出された樹脂部124で一体化する。このとき、樹脂部124は、シャフト123の外周に形成される、中央筒部124g(回転子の樹脂マグネット122の内側に形成される)と、回転子の樹脂マグネット122を中央筒部124gに連結する、シャフト123を中心として半径方向に放射状に形成された軸方向の複数のリブ124j(図8参照)を有する。リブ124j間には、軸方向に貫通した空洞124k(図8参照)が形成される。
尚、図7に示すように、樹脂部124には、位置検出用樹脂マグネット125の内径を保持する金型の内径押さえ部124a、位置検出用樹脂マグネット125を金型(下型)にセットしやすくするためのテーパ部124b、樹脂成形時の樹脂注入部124cが樹脂成形後に形成される。
樹脂部124に使用される樹脂には、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の熱可塑性樹脂が用いられる。これらの樹脂に、ガラス充填剤を配合したものも好適である。
シャフト123の反負荷側(図7で右側)には、反負荷側転がり軸受け121bが取り付けられる(一般的には、圧入による)。また、ファン等が取り付けられるシャフト123の負荷側(図7で左側)には、負荷側転がり軸受け121aが取り付けられる。
負荷側転がり軸受け121a及び反負荷側転がり軸受け121bは、公知の転がり軸受けであり詳細な説明は省略するが、シャフト123に圧入される内輪121a−1と、モールド固定子200の軸受け支持部214(図5参照)で支持される外輪121a−2と、内輪121a−1と外輪121a−2との間で転動する転動体121a−3とを備える。転動体121a−3には、球又はころが用いられる。
負荷側転がり軸受け121aの内輪121a−1、外輪121a−2、転動体121a−3は転がり軸受け用鋼製で導電性なので、内輪121a−1、外輪121a−2、転動体121a−3は絶縁されない(導通する)。
反負荷側転がり軸受け121bの内輪121b−1、外輪121b−2、転動体121b−3は、転がり軸受け用鋼製で負荷側転がり軸受け121aと同様に導電性である。
図9は実施の形態1を示す図で、固定子組立300を基板90側から見た斜視図である。図9に示すように、リード線口出し部品80が組付けられたリード線61が半田付けされ、電子部品を実装した基板90が、3本の基板取付けピン70により固定子400に組み付けられ、固定子組立300が形成される。図9には、3個の電源端子4が基板90を貫通して外側に突出している。また、1個の中性点端子5が絶縁部(後述する)に挿入されている。
図10は実施の形態1を示す図で、固定子400に基板90を取付ける直前の状態を示す斜視図である。図10に示すように、固定子400の絶縁部(後述する)に設けた基板取付けピン70、電源端子4を、基板90に設けたそれぞれに対応した基板取付けピン用孔91、電源端子用孔98に挿入できるよう固定子400と基板90の位置を決める。
基板取付けピン70に設けた受け台70aに基板90が当接するよう組付け、基板90から突出した基板取付けピン70を熱融着等で変形させ、基板90を固定する。
二つの電源端子4(図9の右側の二つ)の間に、一つの基板取付けピン70が配置され、リード線口出し部品80の両側に二つの基板取付けピン70が配置される構成にしたので、3点で基板90が固定子400に固定され、基板90の取付けの品質が確保できる。
本実施の形態の特徴部分である基板90について説明する前に、本実施の形態の他の一つの特徴部分である固定子400について説明する。図11は実施の形態1を示す図で、固定子400を結線側から見た斜視図である。
本実施の形態では、12スロット/8極の電動機の固定子400について説明する。この電動機の固定子400は、以下に示す点に特徴がある。尚、図11の符号で、以下で説明のないものは、後述する。
(1)固定子鉄心1のスロット数が12(固定子鉄心1は、12個のティース1aを有する);
(2)巻線2は、三相のシングルY結線で、極数は8極である。巻線2は、12個のティース1aの夫々に巻回される集中巻方式である;
(3)固定子鉄心1は、厚さが0.1〜0.7mm程度の電磁鋼板を帯状に打ち抜き、これらをかしめ、溶接、接着等で積層して形成される。帯状の固定子鉄心1(後述する)は、12個のティース1aを有する;
(4)帯状の固定子鉄心1に、巻線2と固定子鉄心1との間の絶縁となる絶縁部3が施される。絶縁部3は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂を用いて、固定子鉄心1と一体に成形される。但し、絶縁部3を成形後、ティース1aに組付けてもよい。その場合は、絶縁部3は結線側と反結線側とに分割され、それぞれをティース1aの軸方向両端部から挿入して絶縁部3を構成する。絶縁部3は、ティース1a毎に設けられる。従って、ここでは、12個の絶縁部3を備えることになる;
(5)帯状の固定子鉄心1に絶縁部3を施したら、次に絶縁部3の一方の軸方向端部(結線側)の所定の箇所に、三個の電源端子4と、一個の中性点端子5を挿入する;
(6)本実施の形態は、電源端子4に、平角線を用いることを特徴とする。平角線の詳細は後述する。中性点端子5には、プレス打ち抜きによる端子を用いる;
(7)帯状の固定子鉄心1を完成後の固定子400と逆方向に曲げて、ティース1a同士の間の開口部が広くなるようにする。それにより、ティース1aに巻線2を巻回しやすくなる(後述する);
(8)一相目と二相目を連続して巻線する(渡り線を切断しない)。本実施の形態は、この点にも特徴がある;
(9)三相目を巻線する。三相目は、一相目と二相目とは異なる別のマグネットワイヤーによりコイルが形成される;
(10)巻線後の固定子鉄心1をティース1aが内側になるように正曲げする(所定の方向に曲げられて略ドーナツ状となる);
(11)固定子鉄心1の固定子鉄心突合せ部(図示せず)を溶接して、溶接部(図示せず)で固定する;
図12は実施の形態1を示す図で、固定子400を逆曲げして巻線した状態を示す斜視図である。図12に示す固定子400は、固定子鉄心1を逆曲げして巻線を完了した状態を示している。そして、固定子400を結線側の斜め上方から見ている図である。但し、巻線2の巻き始め端末、巻き終わり端末、渡り線等は、図示していない。
固定子鉄心1を逆曲げしているので、ティース1aが外側を向いている。また、隣接するティース1aの間には広い空間があり、ティース1aにマグネットワイヤーを容易に巻くことができる。
固定子鉄心1に一体成形された絶縁部3の外壁の結線側(図12の軸方向上側)の所定の箇所に、三個の電源端子4が挿入されている。
また、固定子鉄心1に一体成形された絶縁部3の外壁の結線側(図12の軸方向上側)の所定の箇所に、一個の中性点端子5が挿入されている。
さらに、絶縁部3の外壁の結線側に、各相の渡り線を、固定子鉄心1の軸方向端面からの高さを所定の位置に保持する突起8を備える。この点についても、詳細は後述する。
図13は実施の形態1を示す図で、固定子鉄心1(帯状)に絶縁部3を施し端子を取り付けた状態を示す斜視図である。図13に示すように、帯状の固定子鉄心1に一体成形により絶縁部3を形成する。但し、一体成形でなくてもよい。別部品の絶縁部3を各ティース1aに軸方向の両側から挿入する形態も可能である。
絶縁部3が一体成形により形成された帯状の固定子鉄心1に、三個の電源端子4と、一個の中性点端子5とを絶縁部3の結線側(図13では上側)に取り付ける。三個の電源端子4と一個の中性点端子5の位置については詳細は後述するが、図13において、三個の電源端子4は、左から1番目〜3番目のティース1aの絶縁部3に設けられる。また、一個の中性点端子5は、図13において、右から2番目のティース1aの絶縁部3の外壁に設けられる。
図14は実施の形態1を示す図で、固定子鉄心1(帯状)の斜視図である。図14を参照しながら帯状の固定子鉄心1の構成を説明する。本実施の形態における電動機の固定子400は、12スロットであるから、ティース1aも12個である。
帯状の固定子鉄心1は、厚さが0.1〜0.7mm程度の電磁鋼板が帯状に打ち抜かれ、かしめ、溶接、接着等で積層される。
各ティース1aの形状は、平面視で略T字である。ティース1aは、コアバック1bから略垂直に延びている。
ティース1aの先端部1a−1(コアバック1bの反対側)は、正面視で略四角形である。ティース1aの先端部1a−1は、固定子鉄心1に絶縁部3を一体成形した後も露出している。回転子120(図6)と電動機の固定子400との間は、径方向の寸法が1mm以下の空隙とする必要がある。そのため、ティース1aの先端部1a−1には絶縁部3を設けない。
隣接するティース1aは、コアバック1bが薄肉連結部1cで連結されている。そのため、帯状の固定子鉄心1は、逆曲げや正曲げを自在に行うことができる。
帯状の固定子鉄心1における両端のティース1aのコアバック1bの外側の端面であるコア端面1dは、巻線後の固定子鉄心1をティース1aが内側になるように正曲げし、固定子鉄心突合せ部(図示せず)を溶接して溶接部(図示せず)で固定する際に互いに当接する。
図15は実施の形態1を示す図で、固定子400を用いる12スロット/8極の同期電動機の断面図である。図15に示すように、12スロット/8極の同期電動機は、ティース1aの数と回転子の磁極の数の比が3:2となる同期電動機である。
この固定子400の巻線の配置は、各相の巻線をU、V、Wの順番に並べて配置し、それぞれに120°位相のずれた交流の電流を流すことにより、同期電動機を駆動する。
各ティース1aに巻かれる巻線2の巻き方向は、全て同じ方向である。
U相のコイルは、コイルU1、コイルU2、コイルU3、コイルU4で構成される。コイルU1の巻き始めは、電源端子4の一つであるU端子に接続される。コイルU4の巻き終わりは、中性点端子5(中性点)に接続される。
V相のコイルは、コイルV1、コイルV2、コイルV3、コイルV4で構成される。コイルV1の巻き始めは、電源端子4の一つであるV端子に接続される。コイルV4の巻き終わりは、中性点端子5(中性点)に接続される。V端子は、U端子が設けられるティース1aの隣のティース1a(図3の例では、U端子が設けられるティース1aの反時計方向の隣のティース1a)の絶縁部3に設けられる。
W相のコイルは、コイルW1、コイルW2、コイルW3、コイルW4で構成される。コイルW1の巻き始めは、電源端子4の一つであるW端子に接続される。コイルW4の巻き終わりは、中性点端子5(中性点)に接続される。W端子は、V端子が設けられるティース1aの隣のティース1a(図15の例では、V端子が設けられるティース1aの反時計方向の隣のティース1a)の絶縁部3に設けられる。
図16は実施の形態1を示す図で、固定子400の固定子巻線の結線図である。図16の固定子400の固定子巻線の結線図に示すように、固定子400の固定子巻線は、シングルYに結線される。即ち、U相のコイルU1、コイルU2、コイルU3、コイルU4が直列に接続される。また、V相のコイルV1、コイルV2、コイルV3、コイルV4が直列に接続される。さらに、W相のコイルW1、コイルW2、コイルW3、コイルW4が直列に接続される。そして、コイルU4、コイルV4、コイルW4の巻き終わりが中性点Nに接続される。
図17は実施の形態1を示す図で、固定子400の固定子巻線の結線方法を示す展開図である。図17の展開図により、さらに固定子巻線の結線方法を説明する。
ここでは、一相目をU相、二相目をV相、三相目をW相と呼ぶことにする。一相目のU相は、左から3番目のティース1aに最初のコイルU1が形成される。コイルU2は、左から6番目のティース1aに形成される。コイルU3は、左から9番目のティース1aに形成される。コイルU4は、左から12番目のティース1a(右側から1番目のティース1a)に形成される。コイルU1、コイルU2、コイルU3、コイルU4の巻き方向は全て同じである。
二相目のV相は、左から2番目のティース1aに最初のコイルV1が形成される。コイルV2は、左から5番目のティース1aに形成される。コイルV3は、左から8番目のティース1aに形成される。コイルV4は、左から11番目のティース1a(右側の2番目のティース1a)に形成される。コイルV1、コイルV2、コイルV3、コイルV4の巻き方向は全て同じである。
三相目のW相は、左の1番目のティース1aに最初のコイルW1が形成される。コイルW2は、左から4番目のティース1aに形成される。コイルW3は、左から7番目のティース1aに形成される。コイルW4は、左から10番目のティース1a(右側の3番目のティース1a)に形成される。コイルW1、コイルW2、コイルW3、コイルW4の巻き方向は全て同じである。
既に述べたように、コイルU1、コイルV1、コイルW1の巻き始めは、夫々電源端子4に接続される。また、コイルU4、コイルV4、コイルW4の巻き終わりは、夫々中性点端子5に接続される。
本実施の形態は、電源端子4に平角線を用いる点にも特徴がある。
図18は実施の形態1を示す図で、電源端子4の斜視図である。図18に示す電源端子4は平角線を折り曲げて形成される。平角線は、材質は銅であり、例えば錫銅合金の溶融めっきが施される。平角線は、一例では、厚さが0.5mm、幅が1.0mmである。
電源端子4は、平角線を絶縁部3の外壁に備える角穴(図示せず)に電源端子4を挿入する挿入部4bに対し略90°曲げる。所定の位置で略180°曲げて折り返し部4aを形成し、さらに、絶縁部3に挿入される挿入部4bに対してほぼ逆に伸びるように略90°曲げることにより形成される。
尚、電源端子は、例えばプレス打ち抜きによる端子製造に対して、材料のロスが無いことからコスト低減が図れる。また、電源端子4に平角線を用いる例を説明したが、平角線でなくてもよく角線であればよい。
図19は実施の形態1を示す図で、中性点端子5の正面図である。中性点端子5は、平角線ではなく、プレス打ち抜きによる端子である。所定の形状に打ち抜かれた金属板の一部を折り曲げて、第一の折り返し部5a、第二の折り返し部5bが形成されている。挿入部5dが、絶縁部3の図示しない穴に挿入される。
但し、中性点端子5に、平角線(もしくは角線)を用いてもよい。
図20乃至図23は実施の形態1を示す図で、図20は帯状の固定子鉄心1に絶縁部3を施した状態を示す正面図(但し、反結線側は省略している)、図21は図20の#1〜#4ティース1a付近の拡大図、図22は図20の#5〜#8ティース1a付近の拡大図、図23は図20の#9〜#12ティース1a付近の拡大図である。
図20乃至図23により絶縁部3が施された帯状の固定子鉄心1の構成を説明する。図20は絶縁部3が施された帯状の固定子鉄心1を水平にしてティース1a側から結線側の外壁を見ている。ティース1aは12個あるが、夫々に番号を付ける。左側から順に、#1、#2、・・・#12とする。
但し、図20は#1〜#12のティース1aの結線側全体を見ているので細かくて解りにくいので、これらを三つに分けて#1〜#4のティース1aを図21、#5〜#8のティース1aを図22、#9〜#12のティース1aを図23に拡大して示す。
絶縁部3が施された#1のティース1aには、三相目(W相)のコイルW1が形成される。図20、図21に示すように、この絶縁部3の外壁に備える角穴(図示せず)に、軸方向端面の略中央部に電源端子4が挿入されている。後述するが、電源端子4(W相)には、三相目(W相)のコイルW1の巻始めとなるマグネットワイヤーが引掛けられる。
また、#1のティース1aの絶縁部3の外壁には、一番左側に三相目巻始めからげピン60が形成されている。後述するが、三相目巻始めからげピン60に、三相目(W相)のマグネットワイヤーの端末がからげられる。
三相目(W相)は、コイルW1、コイルW2、コイルW3、コイルW4で構成されるが、これらは一本の連続したマグネットワイヤーで形成される。コイルW1→コイルW2、コイルW2→コイルW3、コイルW3→コイルW4、W4→中性点端子に渡るマグネットワイヤーを渡り線と呼ぶ。この明細書では、三相目(W相)の渡り線を、渡り線2cとする。同様に、一相目(U相)の渡り線を渡り線2a、二相目(V相)の渡り線を渡り線2bとする(後述する図24参照)。
#1のティース1aの絶縁部3の外壁には、一番右側に基板(図示せず)を組付ける基板取付けピン70を備える。また、基板取付けピン70の左側に三相目渡り線引出し部26が形成されている。#1のティース1aの絶縁部3の三相目渡り線引出し部26から、コイルW1→コイルW2の渡り線2cが固定子鉄心1の外周側に引出される。
絶縁部3が施された#2のティース1aには、二相目(V相)のV1コイルが形成される。この絶縁部3の外壁に備える角穴(図示せず)に、軸方向端面の略中央部に電源端子4が挿入されている。電源端子4には、二相目(V相)のV1コイルの巻終りとなるマグネットワイヤーが引掛けられる。
後述するが、本実施の形態では、一相目(U相)と二相目(V相)の巻線は、マグネットワイヤーを切断することなく連続している。一相目(U相)のコイルは、図20の左から右に順に形成される。また、二相目(V相)のコイルは、中性点からスタートして図20の右から左に順に形成される。従って、絶縁部3が施された#2のティース1aに形成される二相目(V相)のV1コイルは、二相目(V相)の最後に形成されるコイルとなる。そのため、#2のティース1aの絶縁部3の外壁の角穴(図示せず)に挿入される電源端子4に、二相目(V相)のV1コイルの巻終りとなるマグネットワイヤーが引掛けられるのである。
また、#2のティース1aの絶縁部3の外壁には、一番左側に二相目巻終りからげピン24が形成されている。後述するが、二相目巻終りからげピン24に、二相目(V相)のマグネットワイヤーの端末(巻終り)がからげられる。
また、#2のティース1aの絶縁部3の外壁には、一番右側に三相目渡りからげピン27が形成されている。後述するが、三相目渡りからげピン27には、三相目(W相)の渡り線2c(コイルW1→コイルW2)がからげられる。
三相目渡りからげピン27の左側が二相目渡り線入口21になっている。二相目渡り線入口21から、二相目(V相)の渡り線2b(V2→V1)が、ティース1aに引き回される。
絶縁部3が施された#3のティース1aには、一相目(U相)のU1コイルが形成される。この絶縁部3の外壁に備える角穴に、軸方向端面の略中央部に電源端子4が挿入されている。電源端子4には、一相目(U相)のU1コイルの巻始めとなるマグネットワイヤーが引掛けられる。
また、#3のティース1aの絶縁部3の外壁には、一番左側に一相目巻始めからげピン10が形成されている。後述するが、一相目巻始めからげピン10に、一相目(U相)のマグネットワイヤーの端末がからげられる。
また、#3のティース1aの絶縁部3の外壁には、右端に一相目渡り線引出し部11が形成されている。#3のティース1aの絶縁部3の一相目渡り線引出し部11から、コイルU1→コイルU2の渡り線2aが固定子鉄心1の外周側に引出される。
絶縁部3が施された#4のティース1aには、三相目(W相)のW2コイルが形成される。
#4のティース1aの絶縁部3の外壁には、中央に基板(図示せず)を組付ける基板取付けピン70を備える。また、基板取付けピン70の左側に三相目渡り線入口28が形成されている。また、基板取付けピン70の右側に三相目渡り線引出し部26が形成されている。
また、#4のティース1aの絶縁部3の外壁には、右端に一相目渡りからげピン12を備える。後述するが、この一相目渡りからげピン12には、コイルU1→コイルU2の渡り線2aがからげられる。
さらに、#4のティース1aの絶縁部3の外壁には、一相目渡りからげピン12の左側に切り欠き50を備える。一相目渡り線引出し部11(#3のティース1a)と、一相目渡り線入口14(後述する、例えば、#6のティース1a)と、切り欠き50は、固定子鉄心1の軸方向端面からの高さがほぼ同じとなっている。
絶縁部3が施された#5のティース1aには、二相目(V相)のV2コイルが形成される。
図22に示すように、#5のティース1aの絶縁部3の外壁には、その右端に二相目渡り線入口21を備える。また、#5のティース1aの絶縁部3の外壁には、その左端に二相目渡り線引出し部19を備える。
絶縁部3が施された#6のティース1aには、一相目(U相)のU2コイルが形成される。
#6のティース1aの絶縁部3の外壁には、中央に基板(図示せず)を組付ける基板取付けピン70を備える。基板取付けピン70の左側に、一相目(U相)の渡り線2aが入る一相目渡り線入口14を備える。
また、基板取付けピン70の右側に、一相目(U相)の渡り線2aが引出される一相目渡り線引出し部11が形成されている。#6のティース1aの絶縁部3の一相目渡り線引出し部11から、コイルU2→コイルU3の渡り線2aが固定子鉄心1の外周側に引出される。
絶縁部3が施された#7のティース1aには、三相目(W相)のW3コイルが形成される。
#7のティース1aの絶縁部3の外壁には、中央付近の左側に三相目渡り線入口28が形成されている。また、中央付近の右側に三相目渡り線引出し部26が形成されている。
また、#7のティース1aの絶縁部3の外壁には、右端に一相目渡りからげピン12を備える。後述するが、この一相目渡りからげピン12には、コイルU2→コイルU3の渡り線2aがからげられる。
絶縁部3が施された#8のティース1aには、二相目(V相)のV3コイルが形成される。
#8のティース1aの絶縁部3の外壁には、中央に基板(図示せず)を組付ける基板取付けピン70を備える。基板取付けピン70の左側に、二相目渡り線引出し部19を備える。また、基板取付けピン70の右側に、二相目渡り線入口21を備える。
絶縁部3が施された#9のティース1aには、一相目(U相)のU3コイルが形成される。
図23に示すように、#9のティース1aの絶縁部3の外壁には、中央付近の左側に一相目(U相)の渡り線2aが入る一相目渡り線入口14を形成されている。また、一相目(U相)の渡り線2aが引出される一相目渡り線引出し部11が形成されている。#9のティース1aの絶縁部3の一相目渡り線引出し部11から、コイルU3→コイルU4の渡り線2aが固定子鉄心1の外周側に引出される。
絶縁部3が施された#10のティース1aには、三相目(W相)のW4コイルが形成される。
#10のティース1aの絶縁部3の外壁には、中央に基板(図示せず)を組付ける基板取付けピン70を備える。基板取付けピン70の左側に三相目渡り線入口28が形成されている。また、基板取付けピン70の右側に三相目渡り線引出し部26が形成されている。
また、#10のティース1aの絶縁部3の外壁には、右端に一相目渡りからげピン12を備える。後述するが、この一相目渡りからげピン12には、コイルU3→コイルU4の渡り線2aがからげられる。
また、#10のティース1aの絶縁部3の外壁は、左端に二相目渡りからげピン20を備える。後述するが、この二相目渡りからげピン20には、コイルV4→コイルV3の渡り線2bがからげられる。
絶縁部3が施された#11のティース1aには、二相目(V相)のV4コイルが形成される。
#11のティース1aの絶縁部3の外壁の略中央部に備える角穴に、中性点端子5が挿入されている。
また、#11のティース1aの絶縁部3の外壁には、その右端に一相目巻終りからげピン16を備える。後述するが、一相目(U相)の巻終りが一相目巻終りからげピン16にからげられる。
また、#11のティース1aの絶縁部3の外壁には、その左端に三相目巻終りからげピン29を備える。後述するが、三相目(W相)の巻終りが三相目巻終りからげピン29に1回以上からげられた後に、中性点端子5の第二の折り返し部5bに掛けられて、さらにもう一度三相目巻終りからげピン29まで引戻し、かつ、三相目巻終りからげピン29の上部に1回以上巻付けて三相目の巻終りとなる。
絶縁部3が施された#12のティース1aには、一相目(U相)のU4コイルが形成される。
#12のティース1aの絶縁部3の外壁には、その右端に一相目巻終り引出し部15を備える。後述するが、一相目の最後となるコイルU4が形成された後のマグネットワイヤーは、一相目巻終り引出し部15より固定子鉄心1の外周側に引出される。
図24乃至図33は実施の形態1を示す図で、図24は固定子400の巻線手順を示す図((a)は一相目(U相)の巻線手順、(b)は二相目(V相)の巻線手順、(c)は三相目(W相)の巻線手順)、図25は図24(a)の一相目(U相)のコイルU1を示す拡大図、図26は図24(a)の一相目(U相)のコイルU2を示す拡大図、図27は図24(a)の一相目(U相)のコイルU3、コイルU4を示す拡大図、図28は図24(b)の二相目(V相)のコイルV4を示す拡大図、図29は図24(b)の二相目(V相)のコイルV2、コイルV3を示す拡大図、図30は図24(b)の二相目(V相)のコイルV1を示す拡大図、図31は図24(c)の三相目(W相)のコイルW1、コイルW2を示す拡大図、図32は図24(c)の三相目(W相)のコイルW3を示す拡大図、図33は図24(c)の三相目(W相)のコイルW4を示す拡大図である。
図24乃至図33により、12スロット/8極の三相巻線のシングルY結線を施す手順を説明する。巻線2は、完成後の固定子400と逆方向に曲げられた状態で施されるが、ここでは、帯状の展開図で説明する。
図24は細かくて見にくいため、図24(a)、図24(b)、図24(c)をそれぞれ三つに分けて図25〜図33に示す。
先ず、一相目、二相目、三相目を次のように定義する。一相目は固定子鉄心1の端面に最も近い高さの位置を渡り線が引回されて接続されるU相のコイルを指す。
二相目は一相目の渡り線が引回される固定子鉄心1の端面に最も近い高さの位置の外側の、次の2段目を渡り線が引回されて接続されるV相のコイルを指す。
三相目は二相目の2段目の、次の3段目を渡り線が引回されて接続されるW相のコイルを指す。
図24(a)、図25〜図27を用いて、一相目のU相の巻線手順について説明する。一相目の最初に形成されるコイルは、図24(a)で示す通り、固定子鉄心1の一方の端部(図24(a)では左端)から3番目の#3のティース1aの絶縁部3に、マグネットワイヤーが巻付けられて形成される。
図25に示すように、先ず、#3のティース1aの絶縁部3の外周側に備える一相目巻始めからげピン10にマグネットワイヤーの端末がからげられる。その後、絶縁部3の外壁に備える角穴に挿入された電源端子4の折り返し部4aに一相目の巻始め(一相目巻始め9)となるマグネットワイヤーが引掛けられる。そして、ティース1aに形成された絶縁部3に左巻き(反時計方向)に所定の回数巻付けられて、一相目のコイルU1が形成される。
「絶縁部3の外周側」という表現は、完成後の固定子400における外周側のことである。
コイルU1が形成された後に、渡り線2aが絶縁部3の外壁の一相目渡り線引出し部11より固定子鉄心1の外周側に引出される。
一相目の最初のコイルU1が形成された#3のティース1aの隣の#4のティース1a(図25では、右隣)の絶縁部3の、渡り線2aが渡ってきた側の反対側に設けられる一相目渡りからげピン12に、1回以上渡り線2aがからげられ、からげ部13を形成する。からげ部13から、渡り線2aは再び固定子鉄心1の外周側に引出される。
図26に示すように、渡り線2aは#5のティース1aの絶縁部3の外周側を渡り、#6のティース1aの絶縁部3の外壁に設けられた一相目渡り線入口14よりティース1a(図24(a)では、左側から6番目のティース1a)まで引回され、最初のコイルU1と同様にティース1aに所定の回数左巻き(反時計方向)に巻付けられて一相目のコイルU2が形成される。
一相目のコイルU2が形成された#6のティース1aの隣の#7のティース1a(図26では、右隣)の絶縁部3の外壁の、渡り線2aが渡ってきた側の反対側に設けられる一相目渡りからげピン12に、1回以上渡り線2aがからげられ、からげ部13を形成する。からげ部13から、渡り線2aは再び固定子鉄心1の外周側に引出される。
固定子鉄心1の外周側に引出された渡り線2aは、#8のティース1aの絶縁部3の外壁の外周側を渡る。
このとき、渡り線2aは、絶縁部3の外壁の外側に設けられる突起8(例えば、図12)により相毎に固定子鉄心1の軸方向端面からの高さを所定の位置に保持されるが、一相目の渡り線2aは最も固定子鉄心1に近い1段目を引回される。
また、一相目渡り線入口14と、一相目渡り線引出し部11と、一相目渡りからげピン12横(図24(a)では左横)の絶縁部3の切り欠き50は、固定子鉄心1の軸方向端面からの高さがほぼ同じとなっている。
図27に示すように、#8のティース1aの絶縁部3の外周側を渡ってきた渡り線2aは、#9のティース1aの絶縁部3に設けられた一相目渡り線入口14よりティース1aまで引回され、コイルU2と同様にティース1aに所定の回数左巻き(反時計方向)に巻付けられて一相目のコイルU3が形成される。
一相目のコイルU3が形成された#9のティース1aの隣の#10のティース1a(図27では、右隣)の絶縁部3の外壁の、渡り線2aが渡ってきた側の反対側に設けられる一相目渡りからげピン12に、1回以上渡り線2aがからげられ、からげ部13を形成する。からげ部13から、渡り線2aは再び固定子鉄心1の絶縁部3の外壁の外周側に引出される。
固定子鉄心1の外周側に引出された渡り線2aは、#11のティース1aの絶縁部3の外壁(中性点端子5を備える)の外周側を渡る。
#11のティース1aの絶縁部3の外壁の外周側を渡ってきた渡り線2aは、#12のティース1aの絶縁部3の外壁に設けられた一相目渡り線入口14よりティース1aまで引回され、コイルU3と同様にティース1aに所定の回数左巻き(反時計方向)に巻付けられて一相目のコイルU4が形成される。
一相目の最後となるコイルU4が形成された後のマグネットワイヤーは、コイルU4が形成されるティース1aの絶縁部3の外壁に設けられた一相目巻終り引出し部15より外周側に引出される。一相目の渡り線2aが引回された方向とは逆方向(図27では左方向)に引回され、隣の#11のティース1aに設けられた絶縁部3の外壁まで引回されて一相目巻終りとなる。
以下、二相目(V相)の巻線手順について図24(b)、図28乃至図30により説明する。一相目巻終りは、隣の二相目の最初のコイルV4が形成される#11のティース1aの絶縁部3の外壁の右端に設けられた一相目巻終りからげピン16に1回以上からげられる。
コイルV4が形成される#11のティース1aの絶縁部3の外壁に設けられた中性点端子5の第一の折り返し部5aに掛けられた後、ティース1aまで引回されて、二相目巻始め18となる。
二相目の最初のコイルV4は、中性点端子5の第一の折り返し部5aに引掛けられ、マグネットワイヤーを切断することなく連続して#11のティース1aに、一相目のコイルとは逆の方向(右巻き(時計方向))に所定の回数巻付け形成される。
二相目の最初のコイルV4が形成された後に、二相目の渡り線2bが二相目渡り線引出し部19より固定子鉄心1の外周側に引出される。
一相目の渡り線2aが引回される方向とは逆の方向(図28では左方向)に渡り、隣の#10のティース1aの絶縁部3の外壁の渡り線2bが渡ってきた側の反対側に備える二相目渡りからげピン20に1回以上からげられて、からげ部51を形成する。
固定子鉄心1の外周側に引出された渡り線2bは、#9のティース1aの絶縁部3の外壁の外周側を渡る。
図29に示すように、#8のティース1a(図24(b)の右から5番目)の絶縁部3の外壁に備える二相目渡り線入口21よりティース1aまで引回される。最初のコイルV4と同様に、ティース1aに所定の回数右巻き(時計方向)に巻付けられて二相目のコイルV3が形成される。
このとき、二相目の渡り線2bは、固定子鉄心1の端面から2段目の高さ位置を引回される(突起8(図12)により、分けられる)。また、一相目と同様に、二相目渡り線入口21と、二相目渡り線引出し部19と、二相目渡りからげピン20横(図24(b)では右横)の絶縁部3の切り欠き52は、固定子鉄心1の軸方向端面からの高さがほぼ同じとなっている。
二相目のコイルV3が形成された#8のティース1aの左隣の#7のティース1aの絶縁部3の外壁の、渡り線2bが渡ってきた側の反対側に設けられる二相目渡りからげピン20に、1回以上渡り線2bがからげられ、からげ部51を形成する。からげ部51から、渡り線2bは再び固定子鉄心1の外周側に引出される。
固定子鉄心1の外周側に引出された渡り線2bは、#6のティース1aの絶縁部3の外壁の外周側を渡る。
#5のティース1aの絶縁部3の外壁に備える二相目渡り線入口21よりティース1aまで引回される。コイルV3と同様に、ティース1aに所定の回数右巻き(時計方向)に巻付けられて二相目のコイルV2が形成される。
図30に示すように、二相目のコイルV2が形成された#5のティース1aの左隣の#4のティース1aの絶縁部3の外壁の、渡り線2bが渡ってきた側の反対側に設けられる二相目渡りからげピン20に、1回以上渡り線2bがからげられ、からげ部51を形成する。からげ部51から、渡り線2bは再び固定子鉄心1の外周側に引出される。
固定子鉄心1の外周側に引出された渡り線2bは、#3のティース1aの絶縁部3の外壁の外周側を渡る。
#2のティース1aの絶縁部3の外壁に備える二相目渡り線入口21よりティース1aまで引回される。コイルV2と同様に、ティース1aに所定の回数右巻き(時計方向)に巻付けられて二相目のコイルV1が形成される。
二相目の最後となるコイルV1が形成された後のマグネットワイヤーは、コイルV1が巻かれる絶縁部3の外壁に組付けられた電源端子4の折り返し部4aに収められる。
二相目巻終り23が二相目巻終りからげピン24に巻付けられて、二相目巻終り23が形成され切断される。
このように二相目の最初に形成されるコイルV4は一相目の最後に形成されるコイルU4の隣となることから(図28参照)、巻線設備が所定の位置までの移動距離が最小となることで、加工時間の縮小が可能となり、加工コストの低減が図れる。
さらに、一相目(U相)と二相目(V相)とを切断することなく連続して引回すことが可能なことから、マグネットワイヤーを切断する工程が不要となり、さらに加工時間の縮小が可能で、加工コストの低減が図れる。
以下、三相目(W相)の巻線手順について図24(c)、図31乃至図33により説明する。三相目の最初に形成されるコイルW1は、二相目の最後となるコイルV1が形成される#2のティース1a(左から2番目)の左隣の#1のティース1aに形成される。
三相目の最初に形成されるコイルW1は、一相目と同様に三相目巻始めからげピン60にマグネットワイヤーの端末が引き回された後、三相目巻始め25が電源端子4の折り返し部4aを介して#1のティース1aに施された絶縁部3へ引回され、左巻き(反時計方向)にティース1aに所定の回数巻付けられて、コイルW1が形成される。
渡り線2cに関しては、三相目渡り線引出し部26より固定子鉄心1の外周側に引出される。そして、右隣の#2のティース1aの絶縁部3の外壁に備える二相目渡り線入口21の横に備える三相目渡りからげピン27まで引回される。三相目渡りからげピン27に1回以上からげられて、からげ部53を形成する。
固定子鉄心1の外周側に引出された渡り線2cは、#3のティース1aの絶縁部3の外壁の外周側を渡る。
#4のティース1a(左から4番目)の絶縁部3の外壁に備える三相目渡り線入口28よりティース1aまで引回される。そして、最初のコイルW1と同様に#4のティース1aに所定の回数左巻き(反時計方向)に巻付けられて三相目のコイルW2が形成される。
このとき、三相目の渡り線2cは、固定子鉄心1の端面より最も離れた高さ位置を渡る。三相目渡り線入口28と、三相目渡り線引出し部26とは、固定子鉄心1の端面からの高さがほぼ同じとなっている。
図32に示すように、三相目のコイルW2が形成された#4のティース1aの隣の#5のティース1aの絶縁部3の外壁の、渡り線2cが渡ってきた側の反対側に設けられる三相目渡りからげピン27に、1回以上渡り線2cがからげられ、からげ部53を形成する。からげ部53から、渡り線2cは再び固定子鉄心1の外周側に引出される。
固定子鉄心1の外周側に引出された渡り線2cは、#6のティース1aの絶縁部3の外壁の外周側を渡る。
#7のティース1aの絶縁部3の外壁に備える三相目渡り線入口28よりティース1aまで引回される。そして、コイルW2と同様に#7のティース1aに所定の回数左巻き(反時計方向)に巻付けられて三相目のコイルW3が形成される。
三相目のコイルW3が形成された#7のティース1aの隣の#8のティース1aの絶縁部3の外壁の、渡り線2cが渡ってきた側の反対側に設けられる三相目渡りからげピン27に、1回以上渡り線2cがからげられ、からげ部53を形成する。からげ部53から、渡り線2cは再び固定子鉄心1の外周側に引出される。
図33に示すように、固定子鉄心1の外周側に引出された渡り線2cは、#9のティース1aの絶縁部3の外壁の外周側を渡る。
#10のティース1aの絶縁部3の外壁に備える三相目渡り線入口28よりティース1aまで引回される。そして、コイルW3と同様に#10のティース1aに所定の回数左巻き(反時計方向)に巻付けられて三相目のコイルW4が形成される。
三相目のコイルW2、コイルW3、コイルW4が形成される絶縁部3の外壁に備える三相目渡り線引出し部26と、三相目渡り線入口28とを、一相目渡りからげピン12横に備える切り欠き50及び二相目渡りからげピン20横に備える切り欠き52とは別に設けることにより、別相の渡り線同士が接触することを回避している。
三相目の最後となるコイルW4が形成された後に、マグネットワイヤーは三相目渡り線引出し部26(図33の#10のティース1aに形成される)より引出される。
さらに、中性点端子5を備える絶縁部3の外壁の三相目巻終りからげピン29まで引回される。三相目巻終りからげピン29に1回以上からげられた後に、中性点端子5の第二の折り返し部5bに掛けられて、さらにもう一度三相目巻終りからげピン29まで引戻し、かつ、三相目巻終りからげピン29の上部に1回以上巻付けて三相目の巻終りとなり、マグネットワイヤーを切断して巻線工程を終了する。
このように三相目の最初に形成されるコイルW1は、二相目の最後に形成されるコイルV1の右隣となる。従って、巻線設備が所定の位置までの移動距離が最小となる。そのため、加工時間の縮小が可能となり、加工コストの低減が図れる。
巻線工程が終了後に、固定子鉄心1は所定の方向に曲げられて略ドーナツ状となり、固定子鉄心1の固定子鉄心突合せ部(図示せず)を溶接して、溶接部(図示せず)で固定する(図11参照)。
このとき、各相の渡り線2a,2b,2cは、絶縁部3の外周側に備える突起8(図12)により所定の位置に保持され、各相の渡り線2a,2b,2c同士が接触することがなくなるので、品質の向上が図れる。但し、図12では、渡り線2a,2b,2cは図示していない。
さらに電源端子4、中性点端子5をヒュージングすることで、マグネットワイヤーと電源端子4及び中性点端子5とを電気的に、かつ、機械的に接合することで固定子400が完成する。
一般的な固定子は、中性点端子5を相毎にそれぞれ持つ。これに対し、本実施の形態では、中性点端子5を一つで賄うことで、部品点数を削減でき、コストの低減が図れる。
ここで、電源端子4は、例えばプレス打ち抜きによる端子製造に対して、材料のロスが無いことからコスト低減が図れる。
図34乃至図36は実施の形態1を示す図で、図34は電動機100を駆動する電動機内蔵駆動回路のブロック図、図35はインバータIC140の全体の構造図、図36はICチップ144の内部構造図である。
図34において、高圧直流電源162は、商用電源を電動機100外部の全波整流回路もしくは倍電圧整流回路(図示せず)で生成される。
回転数出力が、ホール素子160の信号をインバータIC140(半導体主回路)の内部のロジック回路(図示せず)にて低圧のパルス信号に変換し、電動機100外部に出力される。
出力電圧指令入力により、低圧のアナログ信号電圧に対して、高圧直流電源162をもとに、インバータ主回路164の6個のIGBTのスイッチングパルス幅を変化させ、インバータの出力電圧を可変する。
過熱保護回路163は、過熱検知素子170(後述する:図38参照)に温度に対する抵抗特性が急峻な正特性温度抵抗素子を用い、温度を抵抗値に変換し、その出力を過電流保護端子RSに作用させ、過電流保護レベルに温度特性を持たせる。そのように構成することで、電動機100およびインバータIC140が過熱状態になった場合、出力端子141を介し電動機100に供給される電流を低下させ、電動機100の出力を制限もしくは停止して、過熱による電動機100およびインバータIC140の破壊を防ぐ。
過熱検知素子170に用いる温度特性に優れる正特性熱抵抗素子は、セラミック材料で構成されることから、インバータIC140チップ上に、正特性熱抵抗素子を構成することはできない。
また、インバータIC140チップ上に半導体を用いた過熱検知素子170を構成することも容易に考えられるが、半導体を用いた素子では温度特性が悪く、特性のばらつきを考慮し保護レベルの設計値を低めにとらなくてはならず、設計値の下限品では、電動機100の出力運転範囲が著しく従来の構成に比べ狭くなる。
また、本実施の形態では、インバータIC140は、基板90上で、銅損・鉄損等を有する発熱源である固定子400側に配置されるため、従来のインバータICが反固定子側に実装されるものに対し温度的に不利であるといった課題がある。
ここで、図35により、インバータIC140の全体構造について説明しておく。図35に示すように、インバータIC140は、以下の要素で構成される。
(1)シリコンもしくはSiC等のワイドギャップ半導体で構成されるICチップ144(半導体チップ、平面視で略四角形);
(2)ICチップ144の略四角形の対向する二辺に設けられ、ICチップ144の熱だまりとなる一対の金属ヒートスプレッダ143(金属);
(3)一対の金属ヒートスプレッダ143が設けられる二辺とは別の二辺の一辺に接続される高電圧の出力端子141;
(4)高電圧の出力端子141に対向して設けられ、別の二辺の他の一辺に接続される低圧端子142;
(5)ICチップ144上に構成される金属電極と金属リードフレーム146で構成される、出力端子141・低圧端子142との間の電気的結合をとるボンディングワイヤ145(金やアルミの金属線材で構成し、超音波溶融により金属リードフレーム146やICチップ144との間の電気的接合をとる);
(6)高熱伝導性の樹脂を材料とし、外郭を構成するICパッケージ147。
尚、近年見られる金属リードフレーム146を、直接ICチップ144と接触させ電気的結合をとるダイレクトボンディング結合を用いても良い。
ICチップ144は、板厚の厚い金属ヒートスプレッダ143上に半田付けにより電気的・熱的・機械的な結合をとる。このような構成により、ICチップ144からの発熱のうち、過渡的なものは金属ヒートスプレッダ143上に蓄積され、ICチップ144の過渡的な温度上昇を抑制する。
また、ICチップ144と強い熱的結合をもつ金属ヒートスプレッダ143と、金属リードフレーム146とは、図35に示されるよう近接配置され、高熱伝導性の樹脂であるICパッケージ147により熱的結合を持つことから、ICチップ144の定常的な発熱については、金属リードフレーム146からも、出力端子141・低圧端子142の電極を通じICチップ144外部に放熱される。
図36に示すように、ICチップ144は、以下の要素で構成される。
(1)蒸着により形成されシリコンやSiC等のワイドギャップ半導体チップ上に形成される素子間や外部電極との間の電気的結合をとるためのアルミ配線;
(2)アルミ電極間や各半導体素子間の絶縁をとるための酸化シリコン膜(SiO2);
(3)PN接合等によりスイッチング素子を形成する半導体単結晶島;
(4)多結晶シリコン基板;
(5)半導体単結晶島と多結晶シリコン基板間の電気的絶縁をとるための絶縁分離層(SiO2)。
絶縁分離層は、薄膜でも絶縁性能が充分確保できる酸化シリコン(SiO2)にて構成される。絶縁分離層は、金属ヒートスプレッダ143と電気的・熱的・機会的に結合される。
また、アルミ配線は、ボンディングワイヤ145と電気的に結合される。酸化シリコン(SiO2)による絶縁分離層により、スイッチング素子等の半導体素子を構成する単結晶を、絶縁性の高い酸化シリコン薄膜により島状に分離するため同一半導体チップ上で、高圧絶縁が必要なスイッチング素子を混載する事が可能となり、通常の複数チップを、絶縁距離をとりながら複数のリードフレームに実装するICと比べ、ICパッケージを小型化できる。
また、低圧の回路も同一チップ上に構成でき、外部に制御用低圧チップや、高低圧分離のためのチップが不要となり、それらを金属リードフレーム146や基板90上の銅配線で電気的結合をとる必要がなくなり、回路全体を著しく小さくする事が可能となる。
また、外部との電気的結合をとるための電極は、アルミ配線でチップ上に構成され絶縁性能の高い酸化シリコン(SiO2)にて絶縁できるため、複数チップを金属リードフレーム146上に配置しボンディングワイヤ145で半導体チップ間の電気的結合をとるICと比べ、IC電極の配置に自由度があり、先に述べたような出力端子141と、低圧端子142の分離も非常に少ないスペースで実現可能となる。
本実施の形態では、過熱検知素子170が、インバータ主回路164の6個のIGBTと熱的に強い結合をもつ金属ヒートスプレッダ143に近接配置される(後述する)。
さらに、過熱検知素子170は、金属リードフレーム146とは、半田を介し電気的・熱的に強く結合させる構成とする。このような構成とすることで、回路損失のほとんどを発生し過熱時破壊に至る可能性のもっとも高いインバータ主回路164のIGBT(スイッチ素子)の温度を精度良く検知することができる。
さらに、本実施の形態では、インバータ主回路164の6個のIGBTが同一シリコンチップ上に酸化シリコンによる絶縁層を介し島状に配置されるため、チップ間の発熱ばらつきがあってもチップの温度は同一固体上にあるためほぼ同一となる。さらに金属ヒートスプレッダ143と強い熱的結合をもつことで温度分布は平滑化される。
後述する過熱検知素子170は、金属ヒートスプレッダ143と近接配置され強い熱的結合をもつ構成となるため、それぞれのインバータ主回路164の6個のIGBTが別チップで構成される場合における素子間の温度ばらつき分による温度検知性能の劣化を回避することができる。そのため、固定子400側にインバータIC140が配置されたことによる周囲温度アップに起因する運転範囲低下を、温度検知精度のアップでカバーすることができる。
また、素子間の温度ばらつきを検知するため複数の温度検知素子を配置する必要がなくなり低コストである。
また、過熱検知素子170間のばらつきやICチップ144−過熱検知素子170間の距離のばらつきによる検知精度低下の問題もなくすことができる。
次に、本実施の形態の最大の特徴部分である基板90について説明する。
図37乃至図40は実施の形態1を示す図で、図37は電動機100に内蔵される8個の基板90を一枚の基板母材190上に形成し部品を実装した平面図、図38は図37の1個の基板90の拡大平面図、図39は図38を裏側から見た平面図、図40は基板90の断面図である。
図37に示すように、一枚の基板母材190上に部品を実装した8個の基板90が形成される。2個の基板90が、略半円弧の内周側の円弧93(図38、図39)をクロスさせて上下に点対称に配置され、さらにその2個の基板90の組が、4列に配置される。基板90は全体が略L字形状であり、二つの略L字形状の基板90を点対称に組合せたものが複数列(ここでは、4列)、基板母材190上に形成される。
例えば、基板母材190の幅は108mm、長さは203mmである。従って、1個の基板90に要する基板母材190の面積は、108×203/8=2740.5mm2である。
図41、図42は比較のために示す図で、図41は一般的な電動機に内蔵される6個の基板790を一枚の基板母材700上に形成し部品を実装した平面図、図42は図41の1個の基板790の拡大平面図である。
図41に示すように、一般的な基板の材料取りは、一枚の基板母材700上に部品(インバータIC740、ホール素子760等(図42参照))を実装した6個の基板790が形成される。2個の基板790が上下に配置され、さらにその2個の基板790の組が、3列に配置される。
例えば、基板母材700の幅は144mm、長さは244mmである。従って、1個の基板790に要する基板母材700の面積は、144×244/6=5856mm2である。
このように、本実施の形態の基板90は、一般的な基板790に対して、1/2以下の面積の基板母材で製作することができる。本実施の形態の基板90が、一般的な基板790よりも小さくできる理由は、順次説明する。
図38乃至図40により、本実施の形態の基板90の構成について、さらに説明を行う。
図38、図39に示すように、基板90の形状は、以下の要素で構成される。
(1)外周側の円弧92;
(2)内周側の円弧93;
(3)外周側の円弧92に接続する2本の平行な第1の直線部94と第2の直線部95;
(4)第1の直線部94と内周側の円弧93を結ぶ第3の直線部96;
(5)第2の直線部95と内周側の円弧93を結ぶ第4の直線部97;
(6)基板取付けピン70に対応した基板取付けピン用孔91;
(7)電源端子4に対応した電源端子用孔98。
2本の平行な第1の直線部94と第2の直線部95とを比較すると、第1の直線部94は第2の直線部95より長く、第1の直線部94と第2の直線部95との中心線(垂直二等分線)は重ならない。また、内周側の円弧93の角度αは、180度より大きくなっている。
尚、2本の平行な第1の直線部94と第2の直線部95とは、第1の直線部94の方が第2の直線部95よりも長いとしたが、第1の直線部94と第2の直線部95の長さが同じ、または、第1の直線部94よりも第2の直線部95の方が長くても良い。
基板90の内周側の円弧93は、固定子組立300をモールド樹脂250(熱硬化性樹脂)で一体に成形したモールド固定子200の内周部に回転子120を挿入する時に、回転子120の軸受(負荷側転がり軸受け121a、反負荷側転がり軸受け121bを通すための穴である。
さらに、基板90の内周側の円弧93を180度より大きくしたので、爪状の治工具を挿入し爪を開くことで内周側の円弧93を保持することができ、自動設備による基板90の移載が可能である。
基板90の外周側の円弧92に沿って、電源端子4を挿入し半田付けされる電源端子用孔98が3個、例えば、第2の直線部95側から電源端子用孔98a(W相用)、電源端子用孔98b(V相)、電源端子用孔98c(U相用)が配置される。
固定子400の基板取付けピン70が挿入される基板取付けピン用孔91の一つは、外周側の円弧92側の電源端子4が挿入される電源端子用孔98a(W相用)と電源端子用孔98b(V相)との間に設けられる。
基板取付けピン用孔91の他の二つは、第1の直線部94側に設けられる。
基板取付けピン用孔91の一つを、外周側の円弧92側の電源端子4が挿入される電源端子用孔98a(W相用)と電源端子用孔98b(V相)との間に配置するようにしたので基板面積を小さくしても必ず3点で基板90が固定され、基板取付けの品質が確保できる。
また、図37に示すように、基板90は、一枚の基板母材190に複数個、ここでは8個配置されて製造される。図37において上下に配置される2個の基板90が、内周側の略半円弧の内周側の円弧93(図38、図39)をクロスさせて上下に点対称に配置される。
また、図37において上下に配置される2個の基板90の一方の基板90の第1の直線部94と、他方の基板90の第2の直線部95とが略一直線に揃うように配置される。
さらに、図37において上下に配置される2個の基板90の一方の基板90の第2の直線部95と、他方の基板90の第1の直線部94とが略一直線に揃うよう配置される。
図37において上下に配置される2個の基板90を1組とし、複数組(ここでは、4組)を基板母材190に配置して打ち抜き、各基板90を分離する。
基板母材190に基板90を、このように配置することで、図37において上下に配置される2個の基板90の一方の基板90の内周側の円弧93と、第3の直線部96との部位が、他方の基板90の内周側の円弧93と組合され、一方の基板90の内周側の円弧93を形成する母材の廃却部が他方の基板90の一部となる。
また、図37において上下に配置される2個の基板90の組が、第1の直線部94と、第2の直線部95とが略一直線に揃うように配置されるので、基板母材190の廃却部をできるだけ少なく、効率的に配置でき直材コストを低減できるだけでなく、一枚の基板母材190からでより多く基板90を1度に生産できるので、加工コストも低減できる。
さらに、従来の電動機の駆動回路では、フロー半田を用い基板に電子部品を結合させる場合、半田槽の半田が貫通穴を通して吹き上がることを防止するため、半田工程前に貫通穴をふさいだり、半田工程後にふさぐための板をはずしたりしていが、本実施の形態では円形の貫通穴がなくなることで、前記工程が削減でき加工コストが低減できる。
次に、基板90に実装される電子部品等の配置について説明する。図38に示すように、インバータIC140が、基板90の外周側の円弧92に沿って形成されている電源端子用孔98付近に配置される。このとき、インバータIC140の向きは、出力端子141が電源端子用孔98b(V相)に対向するような向きである。従って、出力端子141に対向する低圧端子142は、内周側の略半円弧の内周側の円弧93に対向する。
また、一対の金属ヒートスプレッダ143は、一方の金属ヒートスプレッダ143(図38では、右側)が第2の直線部95と対向する。
一方の金属ヒートスプレッダ143(図38では、右側)に対向する他方の金属ヒートスプレッダ143(図38では、左側)の近傍に、過熱検知素子170が配置される。
インバータIC140の金属ヒートスプレッダ143の近傍に配置される過熱検知素子170は、インバータIC140内部のICチップ144の過熱を検知する。金属ヒートスプレッダ143により、ICチップ144の過渡熱を平滑化し内部素子の熱破壊を防ぐとともに、インバータIC140外部の近傍に配置される過熱検知素子170に内部温度を精度良く伝達し、定常熱による過熱を精度良く検知することが可能となり、発熱源となるIGBT(図34)やフリーホイルダイオード(図示せず)やチャージポンプダイオード(図示せず)等の高圧スイッチング素子が一つのシリコンチップ内に集中配置され、さらに発熱源である固定子400の近傍に置かれたことによる高温時の電動機100の運転範囲が狭くなるのを防いでいる。
特に単体のIGBT(600V耐圧クラスで1.6V)よりON電圧が高い(同2.0V)ことから定常損失が大きく、IGBTの温度上昇破壊防止のための運転範囲制限によるモータの出力低下が課題となる、1チップのインバータIC140を用いた駆動回路内蔵モータ(電動機100)では、下記の効果が著しく高い。
(1)金属ヒートスプレッダ143により、ICチップ144の過渡熱を平滑化し内部素子の熱破壊を防ぐ点;
(2)金属ヒートスプレッダ143により、インバータIC140外部の近傍に配置される過熱検知素子170に内部温度を精度良く伝達し、定常熱による過熱を精度良く検知することが可能となる点。
図40に示すように、基板90の固定子400側の面が、電子部品の実装面である。この実装面に、インバータIC140が面実装される。インバータIC140の出力端子141は、固定子400の電源端子4に銅箔180及びスルーホール181を介して電気的に接続している。
インバータIC140の低圧端子142は、過熱検知素子170に銅箔180を介して電気的に接続している。
ホール素子160(3個)が、基板90の固定子400側の実装面に、実装されている。
基板90の固定子400の反対側の面には、インバータIC140の熱を放熱される、所定の表面積を有する銅箔180が、スルーホール181を介してインバータIC140が面実装されている銅箔180に接続している。そのように構成することにより、温度が固定子400側よりも低い、基板90の固定子400の反対側の面の所定の表面積を有する銅箔180から、インバータIC140の熱を放熱することができる。
基板90の固定子400の反対側の面には、リード線口出し部品80が設けられる。リード線口出し部品80は、基板90に係り止めされる。リード線61は、ピンを介して基板90に半田付けされる。
本実施の形態の基板90は、以下に示す構成により、従来基板より基板面積を小さくすることが可能となっている。
(1)中性点結線を基板90上で行わず、折り返し巻と中性点端子5で中性点結線を行う;
(2)ICチップ144上に複数の高圧素子を集積したインバータIC140を用いパッケージを小型化した場合の過渡熱と定常熱について、金属ヒートスプレッダ143により、ICチップ144の過渡熱を平滑化し内部素子の熱破壊を防ぐとともに、金属ヒートスプレッダ143により、インバータIC140外部の近傍に配置される過熱検知素子170に内部温度を精度良く伝達し、定常熱による過熱を精度良く検知することが可能となったこと;
(3)電源端子4を平角線で形成する(従来のプレス打ち抜き端子と比較して、電源端子4の断面積が小さくなるため、電源端子用孔98が従来より小さくなる。
図43は実施の形態1を示す図で、電動機100の製造工程を示す図である。図43を参照しながら、電動機100の製造工程について説明する。
(1)ステップ1:基板母材190に電子部品(インバータIC140、ホール素子160、過熱検知素子170等)を実装し多数個(例えば、8個)取りの基板90を製造する。
(2)ステップ2:多数個(例えば、8個)取りの基板90を打ち抜き1個毎に分離する。併せて、リード線61とリード線口出し部品80を組立る。
(3)ステップ3:リード線61を基板90に半田付けする。併せて、固定子400を製造する。
(4)ステップ4:リード線61を半田付けした基板90を固定子400に組付け固定し、固定子組立300を製造する。
(5)ステップ5:固定子組立を熱硬化性樹脂で一体に成形し、モールド固定子200を製造する。併せて、回転子120、ブラケット130等を製造する。
(6)ステップ6:電動機100を製造する。モールド固定子200の軸方向一端部(開口部側)から回転子120が挿入され、モールド固定子200とブラケット130で、回転子120の軸受(後述する)を保持するようにブラケット130がモールド固定子200に圧入されて、電動機100が完成する。
図43に示す製造工程で電動機100を製造することで、本実施の形態の電動機100を効率よく得ることができる。
図44は実施の形態1を示す図で、空気調和機600の構成を示す図である。図44に示すように、空気調和機600は、室内に設置される室内機610と、室外に設置される室外機620とで構成される。
室内機610は、室内に調和空気を送風する送風機(図示せず)を備える。室内機610の送風機に、本実施の形態の電動機100を用いることで、安価で、生産性がよく、品質が優れた向上した空気調和機600を得ることが出来る。