JP5261119B2 - 高周波スイッチ - Google Patents

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Description

本発明は、高周波信号を切り替える高周波スイッチに関し、特に、アンテナに接続されるアンテナスイッチ、例えばTDD(Time Division Duplex)スイッチ等に用いて好適な高周波スイッチに関する。
従来のアンテナスイッチ等の高周波スイッチとしては、例えば特許文献1記載のマイクロ波スイッチや特許文献2記載の送受信切り換え装置が知られている。
特許文献1記載のマイクロ波スイッチは、信号ラインに直列及び並列にPINダイオードを挿入し、PINダイオードに順電流を流してPINダイオードをオンとし、また、PINダイオードを逆バイアスしてPINダイオードをオフさせることにより、高周波信号を切り替えるようにしている。
特許文献2記載の送受信切り換え装置は、信号伝送ラインに、伝送ラインとそれに直列に配置されたPINダイオード等を並列に挿入してスイッチを構成した回路方式を採用している。
特許第2532122号公報 特許第2830319号公報
ところで、上述のような高周波スイッチを利用した送受信切換え方式としては、以下に示すような2種類の方式(第1送受信切換え方式及び第2送受信切換え方式)が通常使われる。
第1送受信切換え方式は、図18に示すように、送受信器100と送受信アンテナ102(又はバンドパスフィルタ104を介して)との間における送信ライン106に、送信アンプ108とアイソレータ111を接続し、送受信器100と送受信アンテナ102(又はバンドパスフィルタ104を介して)との間における受信ライン110に受信アンプ112を接続し、送信ライン106と受信ライン110との結合点に高周波スイッチ114を接続した方式である。
第2送受信切換え方式は、図19に示すように、送信ライン106に送信アンプ108を接続し、受信ライン110に受信アンプ112と高周波スイッチ114を接続し、送信ライン106と受信ライン110との結合点にサーキュレータ116を接続した方式である。
上述の高周波スイッチにおいては、切替素子として例えばPINダイオードが用いられるが、PINダイオードのアノード又はカソードは全て直流的に接地されていたため、スイッチング動作をさせる場合には、正電源と負電源を使う必要がある。
そのため、例えば上述した送受信切換え方式の回路系が、正電源を使うタイプのものであれば、新たに負電源を設置する必要があり、反対に、上述した送受信切換え方式の回路系が、負電源を使うタイプのものであれば、新たに正電源を設置する必要があり、部品点数が増加すると共に、全体の回路構成が複雑になるという問題がある。
特許文献2記載の回路は、両電源ではないが、ダイオードのオフ時に逆バイアスがかかっていないため、ダイオードの接合容量が大きい領域で使うこととなり、十分なスイッチング特性が得られないおそれがある。また、制御回路以外にトランジスタとインバータが必要で、部品点数が増加するという問題もある。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、正電源と負電源の両方を使う必要がなく、単一の電源(正電源又は負電源)で済み、ダイオードに逆バイアスをかけることで、接合容量の小さい領域で使うことができ、また、部品点数の増加、回路構成の複雑化を招くことがなく、しかも、スイッチ切換速度が低下することがない高周波スイッチを提供することを目的とする。
本発明に係る高周波スイッチは、送信端子からの送信信号を伝送させる1以上の第1信号伝送路に対して、第1PINダイオードを含む第1スイッチ回路がそれぞれ並列に接続され、受信信号を受信端子に伝送させる1以上の第2信号伝送路に対して、第2PINダイオードを含む第2スイッチ回路がそれぞれ並列に接続された高周波スイッチにおいて、前記第1スイッチ回路は、第1伝送路と1以上の前記第1PINダイオードを含む回路とが直列に接続され、且つ、前記第1PINダイオードのアノードが前記第1伝送路に接続され、前記第2スイッチ回路は、第2伝送路と1以上の前記第2PINダイオードを含む回路とが直列に接続され、且つ、前記第2PINダイオードのアノードが前記第2伝送路に接続され、各前記PINダイオードのカソードがそれぞれ高周波的に接地とされ、各前記PINダイオードのカソードに、他端が自由端とされた共振素子あるいは共振ラインが接続され、前記第1PINダイオードのアノード又はカソードのいずれか一方に、第1制御電圧が供給される第1制御端子が電気的に接続され、前記第2PINダイオードのアノード又はカソードのいずれか一方に、第2制御電圧が供給される第2制御端子が電気的に接続され、各前記PINダイオードのアノード又はカソードのいずれか他方に、一定のバイアス電圧を印加するバイアス印加手段を有することを特徴とする。
これにより、正電源と負電源の両方を使う必要がなく、単一の電源(正電源又は負電源)で済み、PINダイオードに逆バイアスをかけることで、接合容量の小さい領域で使うことができ、また、部品点数の増加、回路構成の複雑化を招くことがなく、しかも、スイッチ切換速度が低下することがない。
ところで、各前記PINダイオードのカソードに、他端が自由端とされた共振素子あるいは共振ラインの接続に代えて、図20に示すように、各前記PINダイオードのカソードと接地間にキャパシタCxを接続することが考えられる。しかし、キャパシタCxのQや寄生インダクタンスにより、十分に低インピーダンスが得られず、カソードを高周波的に接地することが困難であるという問題がある。
これに対して、本発明は、各前記PINダイオードのカソードに、他端が自由端とされた共振素子あるいは共振ラインを接続するようにしたので、このインピーダンス変換作用により、十分低いインピーダンスが得られ、カソードを高周波的に接地状態とすることができる。
そして、本発明において、前記第1制御電圧をVc1、前記第2制御電圧をVc2、前記バイアス電圧をVccとしたとき、0V<Vc1<Vcc<Vc2又は0V>Vc2>Vcc>Vc1のとき、前記第1スイッチ回路がオン、前記第2スイッチ回路がオフとなり、0V<Vc2<Vcc<Vc1又は0V>Vc1>Vcc>Vc2のとき、前記第1スイッチ回路がオフ、前記第2スイッチ回路がオンとなるようにしてもよい。
同様に、前記第1制御電圧をVc1、前記第2制御電圧をVc2、前記バイアス電圧をVccとしたとき、0V<Vc2<Vcc<Vc1又は0V>Vc1>Vcc>Vc2のとき、前記第1スイッチ回路がオン、前記第2スイッチ回路がオフとなり、0V<Vc1<Vcc<Vc2又は0V>Vc2>Vcc>Vc1のとき、前記第1スイッチ回路がオフ、前記第2スイッチ回路がオンとなるようにしてもよい。
また、本発明において、動作周波数帯の中心周波数がfo、該中心周波数foに対応する波長がλであり、前記第1スイッチ回路は、前記第1信号伝送路に対して、前記第1伝送路と1以上の前記第1PINダイオードを含む並列共振回路とが直列に接続され、前記第2スイッチ回路は、前記第2信号伝送路に対して、前記第2伝送路と1以上の前記第2PINダイオードを含む並列共振回路とが直列に接続され、前記並列共振回路は、前記PINダイオードのオフ時の共振周波数と前記中心周波数foとが同じになるように定数が設定されていてもよい。
また、本発明において、前記第1信号伝送路を構成要素として含み、少なくとも前記送信信号の反射波を検出する方向性結合器を有するようにしてもよい。
また、本発明において、少なくとも前記受信端子に接続された前記第2信号伝送路に対して並列に接続された前記第2スイッチ回路における前記第2PINダイオードに対して、終端形成用抵抗が並列に接続されていてもよい。
なお、上述した第1信号伝送路及び第2信号伝送路は、電気長を限定することなく、3λ/4信号伝送路やλ/4信号伝送路等を使用できるが、λ/4信号伝送路が小型化等の点で好ましい。
また、上述した第1伝送路及び第2伝送路は、電気長を限定することなく、3λ/4伝送路やλ/4伝送路等を使用できるが、λ/4伝送路が小型化等の点で好ましい。
また、上述した共振素子あるいは共振ラインは、電気長を限定することなく、3λ/4共振素子(あるいは共振ライン)やλ/4共振素子(あるいは共振ライン)を使用できるが、λ/4共振素子(あるいは共振ライン)が小型化等の点で好ましい。
以上説明したように、本発明に係る高周波スイッチによれば、正電源と負電源の両方を使う必要がなく、単一の電源(正電源又は負電源)で済み、PINダイオードに逆バイアスをかけることで、接合容量の小さい領域で使うことができ、また、部品点数の増加、回路構成の複雑化を招くことがなく、しかも、スイッチ切換速度が低下することがない。
以下、本発明に係る高周波スイッチを、例えばアンテナスイッチに適用した実施の形態例を図1〜図17を参照しながら説明する。なお、λは、スイッチの動作周波数帯の中心周波数に対応する波長で、以下の伝送路での波長を表すものとする。
第1の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第1アンテナスイッチ10Aと記す)は、図1に示すように、アンテナ接続端子12と送信端子14との間に接続された2つの第1λ/4信号伝送路16aと、アンテナ接続端子12と受信端子18との間に接続された2つの第2λ/4信号伝送路16bと、各第1λ/4信号伝送路16aに対してそれぞれ並列に接続された第1スイッチ回路20aと、各第2λ/4信号伝送路16bに対してそれぞれ並列に接続された第2スイッチ回路20bとを有する。
なお、送信端子14とそれに隣接する第1λ/4信号伝送路16aとの間、受信端子18とそれに隣接する第2λ/4信号伝送路16bとの間、互いに隣接する第1λ/4信号伝送路16aと第2λ/4信号伝送路16bとの接点とアンテナ接続端子12との間に、それぞれキャパシタCa〜Ccが接続されている。このキャパシタCa〜Ccは、後述するPINダイオードをオン/オフする電流や後述するバイアス端子32を介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサで、高周波的にはショートとして働く。
第1スイッチ回路20aは、1つの第1λ/4伝送路22aと1つの第1PINダイオードD1を含む回路とが直列に接続され、且つ、第1PINダイオードD1のアノードが第1λ/4伝送路22aに接続されて構成されている。
第1PINダイオードD1を含む回路は、第1PINダイオードD1のアノードとカソード間に接続された第11インダクタL11と第11キャパシタC11の直列回路を有する。この場合、第11インダクタL11がアノード側、第11キャパシタC11がカソード側となるように接続されている。第11キャパシタC11は、後述するバイアス端子32を介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサとして働く。さらに、第1PINダイオードD1のカソードとGND(グランド)間に第12インダクタL12と第12キャパシタC12の直列回路が接続され、第12インダクタL12と第12キャパシタC12との接点に第1制御端子24aが接続されている。
また、第1PINダイオードD1のカソードには、他端が自由端(抵抗が無限大)とされたλ/4共振素子26(あるいはλ/4共振ライン)が接続されている。そのため、第1PINダイオードD1のカソード側は高周波的に接地とされ、従って、第1PINダイオードD1と第11インダクタL11及び第11キャパシタC11の直列回路とを組み合わせた回路は、第1並列共振回路28aを構成することになる。第12キャパシタC12は、第1PINダイオードD1をオン/オフする電流を阻止するためのコンデンサとして働き、第12インダクタL12は、チョークコイルとして機能する。
一方、第2スイッチ回路20bは、1つの第2λ/4伝送路22bと1つの第2PINダイオードD2を含む回路とが直列に接続され、且つ、第2PINダイオードD2のアノードが第2λ/4伝送路22bに接続されて構成されている。
第2PINダイオードD2を含む回路は、第2PINダイオードD2のアノードとカソード間に接続された第21インダクタL21と第21キャパシタC21の直列回路を有する。この場合、第21インダクタL21がアノード側、第21キャパシタC21がカソード側となるように接続されている。第21キャパシタC21は、後述するバイアス端子32を介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサとして働く。さらに、第2PINダイオードD2のカソードとGND(グランド)間に第22インダクタL22と第22キャパシタC22の直列回路が接続され、第22インダクタL22と第22キャパシタC22との接点に第2制御端子24bが接続されている。
また、第2PINダイオードD2のカソードには、他端が自由端(抵抗が無限大)とされたλ/4共振素子26(あるいはλ/4共振ライン)が接続されている。そのため、第2PINダイオードD2のカソード側は高周波的に接地とされ、従って、第2PINダイオードD2と第21インダクタL21及び第21キャパシタC21の直列回路とを組み合わせた回路は、第2並列共振回路28bを構成することになる。第22キャパシタC22は、第2PINダイオードD2をオン/オフする電流を阻止するためのコンデンサとして働き、第22インダクタL22は、チョークコイルとして機能する。
さらに、この第1アンテナスイッチ10Aにおいては、2つの第2スイッチ回路20bのうち、アンテナ接続端子12寄りの第2スイッチ回路20bにバイアス回路30が接続されている。
このバイアス回路30は、第1スイッチ回路20aの第1PINダイオードD1及び第2スイッチ回路20bの第2PINダイオードD2の各アノードに、一定のバイアス電圧Vccを印加する回路であり、この例では、第2スイッチ回路20bの第21インダクタL21と第21キャパシタC21との接点とGND(グランド)間に接続された第3インダクタL3と第3キャパシタC3の直列回路と、第3インダクタL3と第3キャパシタC3との接点に接続されたバイアス端子32とを有する。第3キャパシタC3は、バイアス端子32を介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサとして働く。また、第3インダクタL3は、バイアス端子32に供給された直流電流を第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2の各アノードに供給するためのチョークコイルとして機能する。これにより、バイアス端子32に一定のバイアス電圧Vccを印加することによって、第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2の各アノードは、一定のバイアス電圧Vccが印加されることになる。
そして、第1制御端子24aには第1制御電圧Vc1が印加され、第2制御端子24bには第2制御電圧Vc2が印加されるようになっている。
従って、バイアス電圧Vcc、第1制御電圧Vc1、第2制御電圧Vc2の大小関係が
0V<Vc1<Vcc<Vc2又は0V>Vc2>Vcc>Vc1
のとき、第1スイッチ回路20aがオン、第2スイッチ回路20bがオフとなる。
反対に、バイアス電圧Vcc、第1制御電圧Vc1、第2制御電圧Vc2の大小関係が
0V<Vc2<Vcc<Vc1又は0V>Vc1>Vcc>Vc2
のとき、第1スイッチ回路20aがオフ、第2スイッチ回路20bがオンとなる。
以下の説明では、第1制御電圧Vc1について、0V<Vc1<Vcc又は0V>Vcc>Vc1である場合を第1順方向電圧といい、第2制御電圧Vc2について、0V<Vc2<Vcc又は0V>Vcc>Vc2である場合を第2順方向電圧という。同様に、第1制御電圧Vc1について、0V<Vcc<Vc1又は0V>Vc1>Vccである場合を第1逆方向電圧といい、第2制御電圧Vc2について、0V<Vcc<Vc2又は0V>Vc2>Vccである場合を第2逆方向電圧という。
次に、第1アンテナスイッチ10Aの回路動作について図2A〜図7を参照しながら説明する。
第1スイッチ回路20aを主体に説明すると、先ず、バイアス端子32にバイアス電圧Vccが印加されることで、第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2の各アノードにバイアス電圧Vccが印加されることになる。
この状態で、第1制御端子24aに、第1制御電圧Vc1として第1順方向電圧が印加されることで、第1PINダイオードD1がオンとなり、そのときの第1スイッチ回路20aの等価回路は図2Aに示すようになる。すなわち、第1λ/4伝送路22aとGND間に、等価的にインダクタンスLaと第1PINダイオードD1のオン抵抗Roが並列に接続された回路が直列に接続された形態となる。
反対に、第1制御端子24aに、第1制御電圧Vc1として第1逆方向電圧が印加されることで、第1PINダイオードD1がオフとなり、そのときの第1スイッチ回路20aの等価回路は図2Bに示すようになる。すなわち、第1λ/4伝送路22aとGND間に、インダクタンスLaと第1PINダイオードD1の空乏層による寄生容量Cfと第1PINダイオードD1のオフ抵抗Rfによる並列共振回路が直列に接続された形態となる。
そして、この第1アンテナスイッチ10Aでは、該第1アンテナスイッチ10Aの中心周波数foと、寄生容量Cf、オフ抵抗Rf及びインダクタンスLaからなる並列共振回路の共振周波数を一致させるようにインダクタンスLaの値を設定してある。
ここで、オン抵抗Roは、一般に1オーム程度あるいはそれ以下であり、Ro<<2πfoLaとできるため、第1PINダイオードD1のオン時における中心周波数fo付近の等価回路は図3Aのように表すことができ、第1PINダイオードD1のオフ時における中心周波数fo付近の等価回路は図3Bのように表すことができる。
いま、図4に示すように、伝送線路z=LにおいてインピーダンスZ(L)の負荷で終端した場合を考える。
伝送線路の特性インピーダンスをZoとし、進行波をAeγ、反射波をBeγ(γは伝搬定数)とすれば、基準点zにおける電圧V(z)及び電流I(z)は以下の式で表される。
V(z)=Aeγ+Be γ
I(z)=(A/Zo)eγ−(B/Zo)e γ
従って、z=LにおけるインピーダンスZ(L)は以下の式で表される。
Z(L)=V(L)/I(L)
=Zo{(Aeγ+Be γ)/(Aeγ−Be γ)}
また、反射係数Γ(L)は以下の式(a)で示す関係がある。
Γ(L)=(Be γ)/(Aeγ
=(B/A)eγ
={Z(L)−Zo}/{Z(L)+Zo} ……(a)
さらに、z=0において負荷側を見たインピーダンスZ(0)は、以下の式(b)で表される。
Z(0)=Zo{(A+B)/(A−B)} ……(b)
式(a)より、
B/A=[{Z(L)−Zo}/{Z(L)+Zo}]e−2γ
であるから、この式を式(b)に代入すれば、以下の式(c)になる。
Z(0)/Zo = {Z(L) + ZotanhγL}/{Zo + Z(L)tanhγL} ……(c)
ここで、γ=α+jβ(αは減衰定数、βはβ=2π/λで位相定数)である。
無損失線路は、α=0であり、γ=jβとなるから、式(c)は以下の式(d)に変形できる。
Z(0)/Zo = [Z(L) + jZotanβL]/[Zo + jZ(L)tanβL] ……(d)
そして、式(d)にL=λ/4を代入すると、以下の式(e)が求まる。
Z(0)/Zo=Zo/Z(L)
Z(0)=Zo2/Z(L) ……(e)
このことから、第1PINダイオードD1がオンのとき、Z(L)が1オーム程度あるいはそれ以下の低抵抗であることから、式(e)からもわかるように、第1λ/4伝送路22aの信号ライン側のインピーダンス(この場合、Z(0))は大きな値となり、理想的には開放状態となる。反対に、第1PINダイオードD1がオフのとき、Z(L)が10kオーム以上の高抵抗であることから、式(e)からもわかるように、第1λ/4伝送路22aの信号ライン側のインピーダンス(この場合、Z(0))は小さな値となり、理想的には短絡状態となる。
従って、例えば第1制御端子24aに、第1制御電圧Vc1として第1順方向電圧が印加されて第1PINダイオードD1がオン、第2制御端子24bに、第2制御電圧Vc2として第2逆方向電圧が印加されて第2PINダイオードD2がオフになると、図5に示すような等価回路となり、送信端子14のみがアンテナ接続端子12に高周波的に接続されることになる。これによって、送信端子14に供給された送信信号Saがアンテナ接続端子12を通じて送信されることになる。つまり、送信端子14からアンテナ接続端子12にかけての第1信号ライン34aが信号伝送側となり、受信端子18からアンテナ接続端子12にかけての第2信号ライン34bが信号遮断側となる。
上述とは反対に、第1制御端子24aに、第1制御電圧Vc1として第1逆方向電圧が印加されて第1PINダイオードD1がオフ、第2制御端子24bに、第2制御電圧Vc2として第2順方向電圧が印加されて第2PINダイオードD2がオンになると、図6に示すような等価回路となり、受信端子18のみがアンテナ接続端子12に高周波的に接続されることになる。これによって、アンテナにて受信した受信信号Sbがアンテナ接続端子12に供給され、該受信端子18から出力されることになる。つまり、送信端子14からアンテナ接続端子12にかけての第1信号ライン34aが信号遮断側となり、受信端子18からアンテナ接続端子12にかけての第2信号ライン34bが信号伝送側となる。
ところで、上述したように、例えば第1並列共振回路28aを設けず、第1PINダイオードD1のみを接続した場合、第1PINダイオードD1のオフ時における中心周波数fo付近の等価回路は、図3Bのようにはならず、図2Bのように、寄生容量Cfが残り、共振周波数は低域側にずれることになる。その結果、第1λ/4伝送路22aの位相特性に誤差が生じ、損失につながるという問題がある。
そこで、第1アンテナスイッチ10Aでは、第1並列共振回路28aの第11インダクタL11の定数を調整して、第1PINダイオードD1のオフ時の第1並列共振回路28aの共振周波数と第1アンテナスイッチ10Aの中心周波数foとが同じになるようにしている。同様に、第2並列共振回路28bの第21インダクタL21の定数を調整して、第2PINダイオードD2のオフ時の第2並列共振回路28bの共振周波数と第1アンテナスイッチ10Aの中心周波数foとが同じになるようにしている。
一方、PINダイオードのオン時の抵抗Roは、Ro<<2πfoLaであるので、これにより、図3A及び図3Bに示すように、例えば第1PINダイオードD1のオン時において、第1λ/4伝送路22aのGND側にオン抵抗Roのみが接続され、第1PINダイオードD1のオフ時において、第1λ/4伝送路22aのGND側にオフ抵抗Rfのみが接続された形態となるため、第1PINダイオードD1のオン時とオフ時の第1λ/4伝送路22aの共振周波数はずれることがない。
従って、この第1アンテナスイッチ10Aにおいては、第1λ/4伝送路22a及び第2λ/4伝送路22bの各位相特性に誤差は発生せず、スイッチ回路のオン時の通過帯域とオフ時のアイソレーション帯域を一致させることができる。つまり、アンテナスイッチとして使用する帯域において、オン時の通過損失の最小化、オフ時のアイソレーションの最大化を適切に設定することができる。結果的に、スイッチ回路に伴う伝送信号に対する損失を低減することができると共に、スイッチ回路のオフ時の減衰量を適切に確保することができる。
さらに、この第1アンテナスイッチ10Aにおいては、バイアス電圧Vcc、第1制御電圧Vc1及び第2制御電圧Vc2として、いずれも正電圧に設定し、又は負電圧に設定することができることから、正電源と負電源の両方を使う必要がなく、単一の電源(正電源又は負電源)で済み、第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2に逆バイアスをかけることで、接合容量の小さい領域で使うことができ、また、部品点数の増加、回路構成の複雑化を招くことがない。
また、第1アンテナスイッチ10Aでは、第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2のカソードに、他端が自由端(抵抗が無限大)とされたλ/4共振素子26(あるいはλ/4共振ライン)を接続するようにしている。これにより、以下のような効果を得ることができる。
例えばλ/4共振素子26(あるいはλ/4共振ライン)の接続に代えて、図20に示す比較例に係るアンテナスイッチ200のように、第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2のカソードとGND(グランド)間にキャパシタCxを接続することが考えられる。しかし、キャパシタCxのQや寄生インダクタンスにより、十分に低インピーダンスが得られず、第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2のカソードを高周波的に接地することが困難であるという問題がある。
これに対して、第1アンテナスイッチ10Aは、第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2の各カソードに、他端が自由端とされたλ/4共振素子26(あるいはλ/4共振ライン)を接続するようにしたので、このインピーダンス変換作用により、十分低いインピーダンスが得られ、カソードを高周波的に接地状態とすることができる。
なお、上述の例では、第1スイッチ回路20aに第1並列共振回路28aを設け、第2スイッチ回路20bに第2並列共振回路28bを設けるようにしたが、その他、これら第1並列共振回路28a及び第2並列共振回路28bを省略して、第1PINダイオードD1の各カソードにそれぞれ第1制御端子24aを接続し、第2PINダイオードD2の各カソードにそれぞれ第2制御端子24bを接続するようにしてもよい。この場合、構成の簡単化を図ることができる。
次に、第1アンテナスイッチ10Aの各種変形例について図7〜図16を参照しながら説明する。
第1変形例に係るアンテナスイッチ10Aaは、図7に示すように、上述した第1アンテナスイッチ10Aとほぼ同様の構成を有するが、各第1スイッチ回路20aにおいて、複数の第1PINダイオードD1がそれぞれ並列に接続され、各第2スイッチ回路20bにおいて、複数の第2PINダイオードD2がそれぞれ並列に接続されている点で異なる。
この場合も、第1並列共振回路28aの第11インダクタL11の各定数を調整して、第1PINダイオードD1のオフ時の第1並列共振回路28aの共振周波数と、アンテナスイッチ10Aaの中心周波数とが同じになるようにしている。
同様に、第2並列共振回路28bの第21インダクタL21の各定数を調整して、第2PINダイオードD2のオフ時の第2並列共振回路28bの共振周波数と、アンテナスイッチ10Aaの中心周波数とが同じになるようにしている。
従って、例えば第1スイッチ回路20aがオン、すなわち、複数の第1PINダイオードD1がすべてオンになると、第1λ/4伝送路22aとGND間の抵抗は、1つのオン抵抗よりも低い抵抗が接続された形となる。従って、上述した式(e)からもわかるように、第1λ/4伝送路22aにおける第1信号ライン34a側の端部のインピーダンスは、1つのオン抵抗の場合よりも高いインピーダンスとなる。すなわち、理想的な開放状態に近づくことになる。
逆に、第1スイッチ回路20aがオフ、すなわち、複数の第1PINダイオードD1がすべてオフになると、結果的に第1λ/4伝送路22aとGND間にはそれぞれ高抵抗であるオフ抵抗のみが接続された形となる。従って、第1λ/4伝送路22aにおける第1信号ライン34a側の端部のインピーダンスは、上述した(e)式からもわかるように、高抵抗に応じた低いインピーダンスになる。つまり、信号伝送時のスイッチ回路の通過損失をより低減することができる。
次に、第2変形例に係るアンテナスイッチ10Abについて図8及び図9を参照しながら説明する。
このアンテナスイッチ10Abは、図8に示すように、上述した第1アンテナスイッチ10Aとほぼ同様の構成を有するが、第1λ/4信号伝送路16aを構成要素の1つとし、送信信号の反射波を検出する方向性結合器36を有する点で異なる。
この方向性結合器36は、上述した第1λ/4信号伝送路16aと、該第1λ/4信号伝送路16aに対向して配置されたλ/4線路38と、該λ/4線路38の一端に接続された反射波出力端子40と、λ/4線路38の他端に接続された終端抵抗42とを有する。なお、終端抵抗42の他端は接地とされている。
ここで、方向性結合器36の動作原理について図9を参照しながら説明する。先ず、方向性結合器36の第1端φ1〜第4端φ4について以下のように定義する。すなわち、第1λ/4信号伝送路16aの送信端子14側の端部を第1端φ1、第1λ/4信号伝送路16aのアンテナ接続端子12側の端部を第2端φ2、λ/4線路38の送信端子14側の端部を第3端φ3、λ/4線路38のアンテナ接続端子12側の端部を第4端φ4とする。
このとき、方向性結合器36の第1端φ1に、送信端子14からの送信信号による進行波電力Paが加えられると、第2端φ2に進行波が現れ、第3端φ3に進行波電力Paに比例した電力dPaの電波(信号)が現れる。そして、アンテナで反射が発生して、方向性結合器36の第2端φ2に反射波電力Pbが加わると、第1端φ1に反射波が現れ、第4端φ4に反射波電力Pbに比例した電力dPbの電波(信号)が現れる。つまり、方向性結合器36の第4端φ4につながる反射波出力端子40から反射波電力Pbに比例した信号が出力されることになり、反射波を検出することが可能となる。
すなわち、送信信号の出力時に、アンテナで反射が生じた場合、方向性結合器36の反射波出力端子40から反射波に比例した信号を取り出すことができ、反射波を検出することが可能となる。この場合、第1λ/4信号伝送路16aにλ/4線路38を対向して配置するだけでよいため、部品点数を増加させることなく、送信信号の反射波を検出することができる。
このように、第2変形例に係るアンテナスイッチ10Abにおいては、1つのアンテナスイッチであっても、送信信号の反射波を検出することができることから、反射波検出機能付きの送信システムあるいは送受信システムの部品点数の低減、サイズの小型化をより促進することができ、製造コストの低廉化、伝送ロスの低減化も図ることができる。
次に、第3変形例に係るアンテナスイッチ10Acは、図10に示すように、上述した第2変形例に係るアンテナスイッチ10Abとほぼ同様の構成を有するが、方向性結合器36が以下のように構成されている点で異なる。
すなわち、方向性結合器36は、第1λ/4信号伝送路16aと、該第1λ/4信号伝送路16aに対向して配置されたλ/4線路38とを有し、第3端φ3(λ/4線路38の送信端子14側端部)に進行波出力端子44が接続され、第4端φ4(λ/4線路38のアンテナ接続端子12側端部)に反射波出力端子40が接続されている。
これにより、方向性結合器36の第3端φ3につながる進行波出力端子44から進行波電力Pa(図9参照)に比例した信号が出力され、方向性結合器36の第4端φ4につながる反射波出力端子40から反射波電力Pbに比例した信号が出力されることになり、送信信号の反射波及び進行波を検出することができる。
次に、第4変形例に係るアンテナスイッチ10Adは、図11に示すように、上述した第2変形例に係るアンテナスイッチ10Abとほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
すなわち、例えばアンテナ接続端子12寄りの第1λ/4信号伝送路16aを構成要素の1つとし、送信信号の反射波を検出する第1方向性結合器36aと、送信端子14寄りの第1λ/4信号伝送路16aを構成要素の1つとし、送信信号の進行波を検出する第2方向性結合器36bとを有する。
第1方向性結合器36aは、上述した第1λ/4信号伝送路16aと、該第1λ/4信号伝送路16aに対向して配置された第1λ/4線路38aと、該第1λ/4線路38aの一端(第4端φ4)に接続された反射波出力端子40と、第1λ/4線路38の他端(第3端φ3)に接続された第1終端抵抗42aとを有する。
第2方向性結合器36bは、上述した第1λ/4信号伝送路16aと、該第1λ/4信号伝送路16aに対向して配置された第2λ/4線路38bと、該第2λ/4線路38bの一端(第3端φ3)に接続された進行波出力端子44と、第2λ/4線路38bの他端(第4端φ4)に接続された第2終端抵抗42bとを有する。なお、第1終端抵抗42a及び第2終端抵抗42bの各他端は接地とされている。
この場合、第2方向性結合器36bの第3端φ3につながる進行波出力端子44から進行波電力Pa(図9参照)に比例した信号が出力され、第1方向性結合器36aの第4端φ4につながる反射波出力端子40から反射波電力Pbに比例した信号が出力されることになるため、送信信号の反射波及び進行波を検出することができる。
しかも、反射波出力端子40に接続されるモニタ回路(反射波検出回路)の特性と、進行波出力端子44に接続されるモニタ回路(進行波検出回路)の特性が異なっていても、各モニタ回路の特性に、第1方向性結合器36a及び第2方向性結合器36bの出力特性をそれぞれ独立に設定することができるため、方向性結合器の設計の自由度を上げることができる。
次に、第5変形例に係るアンテナスイッチ10Aeについて図12を参照しながら説明する。
このアンテナスイッチ10Aeは、図12に示すように、上述した第1アンテナスイッチ10Aとほぼ同様の構成を有するが、受信端子18に隣接する第2スイッチ回路20bの第21インダクタL21に対して、受信側終端形成用抵抗Rrが並列に接続されている点で異なる。
ここで、第2スイッチ回路20bの動作を主体に説明すると、第2スイッチ回路20bは、第2制御端子24bに、第2制御電圧Vc2として第2順方向電圧が印加されることで、第2PINダイオードD2がオンとなり、そのときの第2スイッチ回路20bの等価回路は図13Aに示すようになる。すなわち、第2λ/4伝送路22bとGND間に、等価的にインダクタンスLaと第2PINダイオードD2のオン抵抗Roと受信側終端形成用抵抗Rrが並列に接続された回路が直列に接続された形態となる。
反対に、第2制御端子24bに、第2制御電圧Vc2として第2逆方向電圧が印加されることで、第2PINダイオードD2がオフとなり、そのときの第2スイッチ回路20bの等価回路は図13Bに示すようになる。すなわち、第2λ/4伝送路22bとGND間に、インダクタンスLaと第2PINダイオードD2の空乏層による寄生容量Cfと第PINダイオードD2のオフ抵抗Rfと受信側終端形成用抵抗Rrによる並列共振回路が直列に接続された形態となる。
この場合も、アンテナスイッチ10Aeの中心周波数foと、寄生容量Cf、オフ抵抗Rf及びインダクタンスLaからなる並列共振回路の共振周波数を一致させるようにインダクタンスLaの値を設定してある。
第2スイッチ回路20bは、上述したように、受信側終端形成用抵抗Rrが並列に接続された形態となるが、オン抵抗Roと受信側終端形成用抵抗Rrの大小関係が、Ro<<Rrであるため、オン動作時には影響を与えない。また、オフ抵抗Rfと受信側終端形成用抵抗Rrの大小関係が、Rf>>Rrであるため、信号ライン側のインピーダンスは受信側終端形成用抵抗Rrで決定される。
具体的に説明すると、例えば第2λ/4伝送路22bの特性インピーダンスを50オームとし、受信側終端形成用抵抗Rrを50オームとしたとき、オフ抵抗Rf(例えば10kオーム)と受信側終端形成用抵抗Rrとの合成抵抗(Rf//Rr)は、49.751オームとなるから、第2λ/4伝送路22bの信号ライン側のインピーダンスは、上述の式(e)から、50×50/49.751=50.250オームで終端されることになる(終端抵抗が50.250オームとなる)。実際には、終端抵抗が例えば50オームとなるように、受信側終端形成用抵抗Rrの値を決定する。
オン時は、オン抵抗Ro=1オームとすると、オン抵抗Roと受信側終端形成用抵抗Rrとの合成抵抗(Ro//Rr)は、0.9804オームとなるから、第2λ/4伝送路22bの信号ライン側のインピーダンスは、上述の式(e)から、50×50/0.9804=2550オームとなる。
従って、例えば第1制御端子24aに、第1制御電圧Vc1として第1順方向電圧が印加されて第1PINダイオードD1がオン、第2制御端子24bに、第2制御電圧Vc2として第2逆方向電圧が印加されて第2PINダイオードD2がオフになると、図14に示すような等価回路となり、送信端子14のみがアンテナ接続端子12に高周波的に接続され、受信端子18には例えば50オームの終端抵抗Reが接続されることになる。これによって、送信端子14に供給された送信信号Saがアンテナ接続端子12を通じて送信されることになる。つまり、送信端子14からアンテナ接続端子12にかけての第1信号ライン34aが信号伝送側となり、受信端子18からアンテナ接続端子12にかけての第2信号ライン34bが信号遮断側となる。
仮に、受信側終端形成用抵抗Rrが存在しないとすると、上述したように、第2λ/4伝送路22bの信号ライン側のインピーダンスは小さな値となり、理想的には短絡状態となる。つまり、オフ時の受信側のインピーダンスが0オームとなり、全反射となるため、受信端子18に接続される受信アンプの動作が不安定になる場合がある。
しかし、この第5変形例に係るアンテナスイッチ10Aeでは、受信端子18に隣接する第2スイッチ回路20bの第21インダクタL21に受信側終端形成用抵抗Rrを並列に接続するようにしたので、上述したように、オフ時の受信側のインピーダンスが終端抵抗Reの値、例えば50オームとなって、他の回路とインピーダンスの整合をとることができ、受信端子18に接続される受信アンプの動作を安定にさせることができる。
上述とは反対に、第1制御端子24aに、第1制御電圧Vc1として第1逆方向電圧が印加されて第1PINダイオードD1がオフ、第2制御端子24bに、第2制御電圧Vc2として第2順方向電圧が印加されて第2PINダイオードD2がオンになると、図6に示すような等価回路となり、受信端子18のみがアンテナ接続端子12に高周波的に接続されることになる。これによって、アンテナにて受信した受信信号Sbがアンテナ接続端子12に供給され、該受信端子18から出力されることになる。つまり、送信端子14からアンテナ接続端子12にかけての第1信号ライン34aが信号遮断側となり、受信端子18からアンテナ接続端子12にかけての第2信号ライン34bが信号伝送側となる。このため、受信時において、受信側終端形成用抵抗Rrによる影響はない。
次に、第6変形例に係るアンテナスイッチ10Afは、図15に示すように、上述した第5変形例に係るアンテナスイッチ10Aeとほぼ同様の構成を有するが、さらに、送信端子14に隣接する第1スイッチ回路20aの第11インダクタL11に対して、送信側終端形成用抵抗Rtが並列に接続されている点で異なる。
従って、例えば第1制御端子24aに、第1制御電圧Vc1として第1順方向電圧が印加されて第1PINダイオードD1がオン、第2制御端子24bに、第2制御電圧Vc2として第2逆方向電圧が印加されて第2PINダイオードD2がオフになると、図14に示すような等価回路となり、送信端子14のみがアンテナ接続端子12に高周波的に接続され、受信端子18には例えば50オームの終端抵抗Reが接続されることになる。この場合、オフ時の受信側のインピーダンスが終端抵抗Reの値、例えば50オームとなって、他の回路とインピーダンスの整合をとることができ、受信端子18に接続される受信アンプの動作を安定にさせることができる。
上述とは反対に、第1制御端子24aに、第1制御電圧Vc1として第1逆方向電圧が印加されて第1PINダイオードD1がオフ、第2制御端子24bに、第2制御電圧Vc2として第2順方向電圧が印加されて第2PINダイオードD2がオンになると、図16に示すような等価回路となり、受信端子18のみがアンテナ接続端子12に高周波的に接続され、送信端子14には例えば50オームの終端抵抗Reが接続されることになる。この場合、オフ時の送信側のインピーダンスが終端抵抗Reの値、例えば50オームとなって、他の回路とインピーダンスの整合をとることができる。
次に、第2の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第2アンテナスイッチ10Bと記す)について図17を参照しながら説明する。
この第2アンテナスイッチ10Bは、図17に示すように、上述した第1アンテナスイッチ10Aとほぼ同様の構成を有するが、第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2のカソードにバイアス電圧Vccが印加される点で異なる。
すなわち、この第2アンテナスイッチ10Bは、送信端子14とそれに隣接する第1λ/4信号伝送路16aとの間、アンテナ接続端子12とそれに隣接する第1λ/4信号伝送路16aとの間、アンテナ接続端子12とそれに隣接する第2λ/4信号伝送路16bとの間、受信端子18とそれに隣接する第2λ/4信号伝送路16bとの間に、それぞれキャパシタCa〜Cdが接続されている。このキャパシタCa〜Cdは、後述するPINダイオードをオン/オフする電流やバイアス端子32を介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサで、高周波的にはショートとして働く。
また、2つの第1スイッチ回路20aのうち、アンテナ接続端子12寄りの第1スイッチ回路20aに第1制御回路46aが接続され、2つの第2スイッチ回路20bのうち、アンテナ接続端子12寄りの第2スイッチ回路20bに第2制御回路46bが接続されている。
第1制御回路46aは、第1スイッチ回路20aの第1PINダイオードD1の各アノードに、第1制御電圧Vc1を印加する回路であり、この例では、第1スイッチ回路20aの第11インダクタL11と第11キャパシタC11との接点とGND(グランド)間に接続された第41インダクタL41と第41キャパシタC41の直列回路と、第41インダクタL41と第41キャパシタC41との接点に接続された第1制御端子24aとを有する。第41キャパシタC41は、第1制御端子24aを介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサとして働く。また、第41インダクタL41は、第1制御端子24aに供給された直流電流を第1PINダイオードD1の各アノードに供給するためのチョークコイルとして機能する。これにより、第1制御端子24aに第1制御電圧Vc1を印加することによって、第1PINダイオードD1の各アノードは、第1制御電圧Vc1が印加されることになる。
第1PINダイオードD1のカソードには、他端が自由端(抵抗が無限大)とされたλ/4共振素子26(あるいはλ/4共振ライン)が接続されているので、そのインピーダンス変換作用により、第1PINダイオードD1のカソード側は高周波的に接地とされ、従って、第1PINダイオードD1と第11インダクタL11及び第11キャパシタC11の直列回路とを組み合わせた回路は、第1並列共振回路8aを構成することになる。
同様に、第2制御回路46bは、第2スイッチ回路20bの第2PINダイオードD2の各アノードに、第2制御電圧Vc2を印加する回路であり、この例では、第2スイッチ回路20bの第21インダクタL21と第21キャパシタC21との接点とGND(グランド)間に接続された第42インダクタL42と第42キャパシタC42の直列回路と、第42インダクタL42と第42キャパシタC42との接点に接続された第2制御端子24bとを有する。第42キャパシタC42は、第2制御端子24bを介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサとして働く。また、第42インダクタL42は、第2制御端子24bに供給された直流電流を第2PINダイオードD2の各アノードに供給するためのチョークコイルとして機能する。これにより、第2制御端子24bに第2制御電圧Vc2を印加することによって、第2PINダイオードD2の各アノードは、第2制御電圧Vc2が印加されることになる。
第2PINダイオードD2のカソードには、他端が自由端(抵抗が無限大)とされたλ/4共振素子26(あるいはλ/4共振ライン)が接続されているため、第2PINダイオードD2のカソード側は高周波的に接地とされ、従って、第2PINダイオードD2と第21インダクタL21及び第21キャパシタC21の直列回路とを組み合わせた回路は、第2並列共振回路8bを構成することになる。
一方、第1スイッチ回路20aの第12インダクタL12と第12キャパシタC12との接点に接続される端子、第2スイッチ回路20bの第22インダクタL22と第22キャパシタC22との接点に接続される端子はそれぞれバイアス端子32となり、該バイアス端子32にバイアス電圧Vccが印加されることによって、第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2の各カソードにバイアス電圧Vccが印加されることになる。
この第2アンテナスイッチ10Bにおいては、第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2の各カソードにバイアス電圧Vccが印加され、第1PINダイオードD1の各アノードに第1制御電圧Vc1が印加され、第2PINダイオードD2の各アノードに第2制御電圧Vc2が印加されることから、バイアス電圧Vcc、第1制御電圧Vc1、第2制御電圧Vc2の大小関係が
0V<Vc2<Vcc<Vc1又は0V>Vc1>Vcc>Vc2
のとき、第1スイッチ回路20aがオン、第2スイッチ回路20bがオフとなる。
反対に、バイアス電圧Vcc、第1制御電圧Vc1、第2制御電圧Vc2の大小関係が
0V<Vc1<Vcc<Vc2又は0V>Vc2>Vcc>Vc1
のとき、第1スイッチ回路20aがオフ、第2スイッチ回路20bがオンとなる。
つまり、第1制御電圧Vc1について、0V<Vcc<Vc1又は0V>Vc1>Vccである場合に第1順方向電圧となり、第2制御電圧Vc2について、0V<Vcc<Vc2又は0V>Vc2>Vccである場合に第2順方向電圧となる。同様に、第1制御電圧Vc1について、0V<Vc1<Vcc又は0V>Vcc>Vc1である場合に第1逆方向電圧となり、第2制御電圧Vc2について、0V<Vc2<Vcc又は0V>Vcc>Vc2である場合に第2逆方向電圧となる。
この第2アンテナスイッチ10Bにおいても、第1アンテナスイッチ10Aと同様に、アンテナスイッチとして使用する帯域において、オン時の通過損失の最小化、オフ時のアイソレーションの最大化を適切に設定することができる。結果的に、スイッチ回路に伴う伝送信号に対する損失を低減することができると共に、スイッチ回路のオフ時の減衰量を適切に確保することができる。
また、バイアス電圧Vcc、第1制御電圧Vc1及び第2制御電圧Vc2として、いずれも正電圧に設定し、又は負電圧に設定することができることから、正電源と負電源の両方を使う必要がなく、単一の電源(正電源又は負電源)で済み、PINダイオードに逆バイアスをかけることで、接合容量の小さい領域で使うことができ、また、部品点数の増加、回路構成の複雑化を招くことがなく、しかも、スイッチ切換速度が低下することがない。
なお、第2アンテナスイッチ10Bにおいても、上述した第1変形例に係るアンテナスイッチ10Aa〜第6変形例に係るアンテナスイッチ10Afと同様の構成を採用することができる。
上述の例では、各種信号伝送路として、小型化等の点で優れる第1λ/4信号伝送路16a、第2λ/4信号伝送路16bを用いたが、3λ/4信号伝送路等を用いてもよい。また、各種伝送路として、小型化等の点で優れる第1λ/4伝送路22a、第2λ/4伝送路22bを用いたが、3λ/4伝送路等を用いてもよい。また、共振素子あるいは共振ラインとして、小型化等の点で優れるλ/4共振素子26(あるいはλ/4共振ライン)を用いたが、3λ/4共振素子(あるいは3λ/4共振ライン)等を用いてもよい。
なお、本発明に係る高周波スイッチは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
第1アンテナスイッチの構成を示す回路図である。 図2Aは第1アンテナスイッチにおいて、第1PINダイオードをオンにしたときの第1スイッチ回路の等価回路を示す図であり、図2Bは第1PINダイオードをオフにしたときの第1スイッチ回路の等価回路を示す図である。 図3Aは第1PINダイオードのオン時における中心周波数付近の第1スイッチ回路の等価回路を示す図であり、図3Bは第1PINダイオードのオフ時における中心周波数付近の第1スイッチ回路の等価回路を示す図である。 伝送線路の入力側と出力側のインピーダンスの関係を説明するための図である。 第1アンテナスイッチにおいて、第1スイッチ回路をオン、第2スイッチ回路をオフにしたときの等価回路を示す図である。 第1アンテナスイッチにおいて、第1スイッチ回路をオフ、第2スイッチ回路をオンにしたときの等価回路を示す図である。 第1変形例に係るアンテナスイッチの構成を示す回路図である。 第2変形例に係るアンテナスイッチの構成を示す回路図である。 方向性結合器の動作を示す説明図である。 第3変形例に係るアンテナスイッチの構成を示す回路図である。 第4変形例に係るアンテナスイッチの構成を示す回路図である。 第5変形例に係るアンテナスイッチの構成を示す回路図である。 図13Aは第5変形例に係るアンテナスイッチにおいて、第2PINダイオードをオンにしたときの第2スイッチ回路の等価回路を示す図であり、図13Bは第2PINダイオードをオフにしたときの第2スイッチ回路の等価回路を示す図である。 第5変形例に係るアンテナスイッチにおいて、第1スイッチ回路をオン、第2スイッチ回路をオフにしたときの等価回路を示す図である。 第6変形例に係るアンテナスイッチの構成を示す回路図である。 第6変形例に係るアンテナスイッチにおいて、第1スイッチ回路をオフ、第2スイッチ回路をオンにしたときの等価回路を示す図である。 第2アンテナスイッチの構成を示す回路図である。 高周波スイッチを利用した第1送受信方式を示す説明図である。 高周波スイッチを利用した第2送受信方式を示す説明図である。 比較例に係るアンテナスイッチを示す回路図である。
符号の説明
10A、10Aa〜10Af、10B…アンテナスイッチ
12…アンテナ接続端子 14…送信端子
16a…第1λ/4信号伝送路 16b…第2λ/4信号伝送路
18…受信端子 20a…第1スイッチ回路
20b…第2スイッチ回路 22a…第1λ/4伝送路
22b…第2λ/4伝送路 24a…第1制御端子
24b…第2制御端子
26…λ/4共振素子(あるいはλ/4共振ライン)
28a…第1並列共振回路 28b…第2並列共振回路
30…バイアス回路 32…バイアス端子
36…方向性結合器 46a…第1制御回路
46b…第2制御回路 D1…第1PINダイオード
D2…第2PINダイオード

Claims (9)

  1. 送信端子からの送信信号を伝送させる1以上の第1信号伝送路に対して、第1PINダイオードを含む第1スイッチ回路がそれぞれ並列に接続され、受信信号を受信端子に伝送させる1以上の第2信号伝送路に対して、第2PINダイオードを含む第2スイッチ回路がそれぞれ並列に接続された高周波スイッチにおいて、
    前記第1スイッチ回路は、第1伝送路と1以上の前記第1PINダイオードを含む回路とが直列に接続され、且つ、前記第1PINダイオードのアノードが前記第1伝送路に接続され、
    前記第2スイッチ回路は、第2伝送路と1以上の前記第2PINダイオードを含む回路とが直列に接続され、且つ、前記第2PINダイオードのアノードが前記第2伝送路に接続され、
    各前記PINダイオードのカソードがそれぞれ高周波的に接地とされ、
    各前記PINダイオードのカソードに、他端が自由端とされた共振素子あるいは共振ラインが接続され、
    前記第1PINダイオードのアノード又はカソードのいずれか一方に、第1制御電圧が供給される第1制御端子が電気的に接続され、
    前記第2PINダイオードのアノード又はカソードのいずれか一方に、第2制御電圧が供給される第2制御端子が電気的に接続され、
    各前記PINダイオードのアノード又はカソードのいずれか他方に、一定のバイアス電圧を印加するバイアス印加手段を有することを特徴とする高周波スイッチ。
  2. 請求項1記載の高周波スイッチにおいて、
    前記第1制御電圧をVc1、前記第2制御電圧をVc2、前記バイアス電圧をVccとしたとき、
    0V<Vc1<Vcc<Vc2又は0V>Vc2>Vcc>Vc1のとき、前記第1スイッチ回路がオン、前記第2スイッチ回路がオフとなり、
    0V<Vc2<Vcc<Vc1又は0V>Vc1>Vcc>Vc2のとき、前記第1スイッチ回路がオフ、前記第2スイッチ回路がオンとなることを特徴とする高周波スイッチ。
  3. 請求項1記載の高周波スイッチにおいて、
    前記第1制御電圧をVc1、前記第2制御電圧をVc2、前記バイアス電圧をVccとしたとき、
    0V<Vc2<Vcc<Vc1又は0V>Vc1>Vcc>Vc2のとき、前記第1スイッチ回路がオン、前記第2スイッチ回路がオフとなり、
    0V<Vc1<Vcc<Vc2又は0V>Vc2>Vcc>Vc1のとき、前記第1スイッチ回路がオフ、前記第2スイッチ回路がオンとなることを特徴とする高周波スイッチ。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波スイッチにおいて、
    動作周波数帯の中心周波数がfo、該中心周波数foに対応する波長がλであり、
    前記第1スイッチ回路は、前記第1信号伝送路に対して、前記第1伝送路と1以上の前記第1PINダイオードを含む並列共振回路とが直列に接続され、
    前記第2スイッチ回路は、前記第2信号伝送路に対して、前記第2伝送路と1以上の前記第2PINダイオードを含む並列共振回路とが直列に接続され、
    前記並列共振回路は、前記PINダイオードのオフ時の共振周波数と前記中心周波数foとが同じになるように定数が設定されていることを特徴とする高周波スイッチ。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波スイッチにおいて、
    前記第1信号伝送路を構成要素として含み、少なくとも前記送信信号の反射波を検出する方向性結合器を有することを特徴とする高周波スイッチ。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波スイッチにおいて、
    少なくとも前記受信端子に接続された前記第2信号伝送路に対して並列に接続された前記第2スイッチ回路における前記第2PINダイオードに対して、終端形成用抵抗が並列に接続されていることを特徴とする高周波スイッチ。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の高周波スイッチにおいて、
    前記第1信号伝送路及び前記第2信号伝送路はそれぞれλ/4信号伝送路であることを特徴とする高周波スイッチ。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の高周波スイッチにおいて、
    前記第1伝送路及び前記第2伝送路はそれぞれλ/4伝送路であることを特徴とする高周波スイッチ。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の高周波スイッチにおいて、
    前記共振素子あるいは共振ラインはそれぞれλ/4共振素子あるいはλ/4共振ラインであることを特徴とする高周波スイッチ。
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