以下、本発明に係る高周波スイッチを例えばアンテナスイッチに適用した実施の形態例を図1〜図46を参照しながら説明する。なお、λは、スイッチの動作周波数帯の中心周波数に対応する波長で、以下の伝送路での波長を表すものとする。
第1の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第1アンテナスイッチ10Aと記す)は、図1に示すように、アンテナ接続端子14と送信端子16との間に接続された1つの第1λ/4信号伝送路18aと、アンテナ接続端子14と受信端子20との間に接続された1つの第2λ/4信号伝送路18bと、第1λ/4信号伝送路18aに対して並列に接続された第1スイッチ回路22aと、第2λ/4信号伝送路18bに対して並列に接続された第2スイッチ回路22bとを有する。なお、送信端子16と第1λ/4信号伝送路18aとの間、第1λ/4信号伝送路18aとアンテナ接続端子14との間、アンテナ接続端子14と第2λ/4信号伝送路18bとの間、第2λ/4信号伝送路18bと受信端子20との間にそれぞれキャパシタC1〜C4が直列に接続されている。このキャパシタC1〜C4は、後述するPINダイオードをオン/オフする電流を阻止するためのコンデンサで、高周波的にはショートとして働く。
第1スイッチ回路22aは、キャパシタC1と第1λ/4信号伝送路18aとの間の信号ライン(接点21a)とGND(グランド)間に接続され、1つの第1λ/4伝送路24aと第1並列共振回路26aとが第1接点a1で直列に接続された直列回路を有する。
第1並列共振回路26aは、第1接点a1とGND間に接続された1つの第1PINダイオード28aと、第1接点a1と第1制御端子Tc1間に接続された第1インダクタ30aと、第1制御端子Tc1とGND間に接続された第1キャパシタCaとを有する。この第1キャパシタCaは、第1PINダイオード28aをオン/オフする電流を阻止するためのコンデンサとして働く。
第1制御端子Tc1には、第1PINダイオード28aに順電流を流して該第1PINダイオード28aをオンにするための順バイアス電圧Vc1と、第1PINダイオード28aを逆バイアスして第1PINダイオード28aをオフにするための逆バイアス電圧Vc2が印加されるようになっている。
第2スイッチ回路22bは、上述した第1スイッチ回路22aと同様に、第2λ/4信号伝送路18bとキャパシタC4との間の信号ライン(接点21b)とGND(グランド)間に接続され、1つの第2λ/4伝送路24bと第2並列共振回路26bとが第2接点a2で直列に接続された直列回路を有する。
第2並列共振回路26bは、第2接点a2とGND間に接続された1つの第2PINダイオード28bと、第2接点a2と第2制御端子Tc2間に接続された第2インダクタ30bと、第2制御端子Tc2とGND間に接続された第2キャパシタCbとを有する。この第2キャパシタCbは、第2PINダイオード28bをオン/オフする電流を阻止するためのコンデンサとして働く。
第2制御端子Tc2には、第2PINダイオード28bに順電流を流して該第2PINダイオード28bをオンにするための順バイアス電圧Vc1と、第2PINダイオード28bを逆バイアスして第2PINダイオード28bをオフにするための逆バイアス電圧Vc2が印加されるようになっている。なお、第1制御端子Tc1に順バイアス電圧Vc1が印加される時には、第2制御端子Tc2に逆バイアス電圧Vc2が印加され、第1制御端子Tc1に逆バイアス電圧Vc2が印加される時には、第2制御端子Tc2に順バイアス電圧Vc1が印加される。第1制御端子Tc1の逆バイアス電圧Vc2と第2制御端子Tc2の逆バイアス電圧Vc2の電圧は、異なってもよい。
そして、この第1アンテナスイッチ10Aにおいては、第1λ/4信号伝送路18a、第2λ/4信号伝送路18b、第1λ/4伝送路24a及び第2λ/4伝送路24bのうち、少なくとも1つは、図2A及び図2Bに示すように、1以上の分布定数伝送ライン50と、該分布定数伝送ライン50に接続され、且つ、他端が開放端とされた1以上の分布定数伝送ライン(オープンスタブ52)とを有する複合部品54にて構成され、該複合部品54の電気長がλ/4と等価とされている。分布定数伝送ライン50の電気長はλ/4より短く設定され、オープンスタブ52の電気長は分布定数伝送ライン50の電気長と同じであってもよいし、異なっていてもよい。もちろん、λ/4より短くてもよいし、長く設定されていてもよい。
ここで、複合部品54の2つの具体例(第1複合部品54A及び第2複合部品54B)について図2A〜図10を参照しながら説明する。
先ず、第1複合部品54Aは、図2Aに示すように、第1端子φ1と第2端子φ2との間に直列接続された2つの分布定数伝送ライン(第1分布定数伝送ライン50a及び第2分布定数伝送ライン50b)と、一端が第1分布定数伝送ライン50aと第2分布定数伝送ライン50bとの間に接続され、他端が開放端とされた1つのオープンスタブ52とを有する。少なくとも第1分布定数伝送ライン50a及び第2分布定数伝送ライン50bの各電気長はそれぞれλ/4より短く設定されている。これら第1分布定数伝送ライン50a、第2分布定数伝送ライン50b及びオープンスタブ52の各電気長はそれぞれ同じにしてもよいし、異なるようにしてもよい。
第2複合部品54Bは、図2Bに示すように、第1端子φ1と第2端子φ2との間に直列接続された2つの分布定数伝送ライン(第1分布定数伝送ライン50a1及び第2分布定数伝送ライン50b1)と、一端が第1端子φ1に接続され、他端が開放端とされた第1オープンスタブ52aと、一端が第1分布定数伝送ライン50a1と第2分布定数伝送ライン50b1との間に接続され、他端が開放端とされた第2オープンスタブ52bと、一端が第2端子φ2に接続され、他端が開放端とされた第3オープンスタブ52cとを有する。この場合も、少なくとも第1分布定数伝送ライン50a1及び第2分布定数伝送ライン50b1の各電気長はそれぞれλ/4より短く設定されている。これら第1分布定数伝送ライン50a1、第2分布定数伝送ライン50b1、第1オープンスタブ52a〜第3オープンスタブ52cの各電気長はそれぞれ同じにしてもよいし、異なるようにしてもよい。
なお、下記表1に示す結線仕様に示すように、第1複合部品54A又は第2複合部品54Bを第1λ/4信号伝送路18aとして使用する場合は、図1に示すように、第1端子φ1が信号ラインの接点21aに接続され、第2端子φ2が第2コンデンサC2に接続される。以下同様である。
上述した第1複合部品54A及び第2複合部品54Bは、図3A及び図3Bに示すように、下面にアース電極58を有する誘電体基板60の上面に形成されたマイクロストリップライン62にて構成してもよいし、図4A及び図4Bに示すように、上下面にアース電極58を有する誘電体基板60の内部に形成されたストリップライン64にて構成してもよい。また、図5A及び図5Bに示すように、円筒状の同軸型誘電体共振器(第1同軸型共振器66A)や、図6A及び図6Bに示すように、角筒状の同軸型誘電体共振器(第2同軸型共振器66B)にて構成してもよい。
第1同軸型共振器66A及び第2同軸型共振器66Bは、図7に示すように、中央に軸方向に貫通孔68を有する円筒状の誘電体磁器70の外周面に外導体72が形成され、内周面(貫通孔68の内壁面)に内導体74が形成され、両端面は導体が形成されず、それぞれ開放端78とされている。
もちろん、誘電体基板60の誘電率や誘電体磁器70(図7参照)の誘電率を適宜変更することで、物理長のさらなる短縮化を図ることができる。
図3A〜図6Bの例では、第1分布定数伝送ライン50a、50a1、第2分布定数伝送ライン50b、50b1、オープンスタブ52、並びに第1オープンスタブ52a〜第3オープンスタブ52cを、それぞれ同種の構造で構成した例を示したが、要求される特性や、使用する周波数帯域に応じて、異種の構造を採用してもよい。
ここで、1つの実験例を示す。この実験例は、理想的なλ/4伝送ラインの振幅位相特性(図8参照)と、第1複合部品54Aを用いた実施例1に係る複合部品の振幅位相特性(図9参照)と、第2複合部品54Bを用いた実施例2に係る複合部品の振幅位相特性(図10参照)をみたものである。図8〜図10において、実線Aは伝送ラインの通過特性S(2,1)[dB]を示し、図9及び図19において、実線Bは反射特性S(1,1)[dB]を示し、図8〜図10において、実線Cは位相特性S(2,1)[°]を示す。
先ず、理想的なλ/4伝送ラインでは、図8に示すように、通過特性(実線Aで示す)は0dB一定、反射特性(図示せず)は無限小、位相特性(実線Cで示す)は中心周波数fcにおいて、−90°となっている。
そして、実施例1に係る複合部品(第1複合部品54A)は、第1分布定数伝送ライン50a及び第2分布定数伝送ライン50bとして、それぞれ電気長Leがλ/16(θ=22.5°)である伝送ラインを用い、オープンスタブ52として、電気長Leがλ/16(θ=22.5°)であるオープンスタブを用い、第1分布定数伝送ライン50a及び第2分布定数伝送ライン50bの各特性インピーダンスZ1を、理想的なλ/4伝送ラインの特性インピーダンスZ0より大きい値に設定し、中心周波数fc=2.14GHzにて位相特性が−90°となるようにオープンスタブ52の特性インピーダンスZ2を決める。例えば第1分布定数伝送ライン50a及び第2分布定数伝送ライン50bの各特性インピーダンスZ1を100〜140オーム程度とし、オープンスタブ52の特性インピーダンスZ2を15〜40オームから適切な値を選べば、図9のポイントm1に示すように、中心周波数fcにおいて、−90°となる位相特性となり、理想的なλ/4伝送ラインと等価な振幅位相特性を得ることができる。また、実施例1に係る複合部品の実装面積(占有面積)を考えた場合、それぞれ物理長が理想的なλ/4伝送ラインの約1/4である2つの伝送ラインに、1つのオープンスタブを付加する分の占有面積となることから、理想的なλ/4伝送ラインの占有面積に対して40〜50%程度縮小させることができる。
実施例2に係る複合部品(第2複合部品54B)は、第1分布定数伝送ライン50a1及び第2分布定数伝送ライン50b1として、それぞれ電気長Leがλ/16(θ=22.5°)である伝送ラインを用い、第1オープンスタブ52a〜第3オープンスタブ52cとして、電気長Leがλ/16(θ=22.5°)である3本のオープンスタブを用い、第1分布定数伝送ライン50a1及び第2分布定数伝送ライン50b1の各特性インピーダンスZ1を、理想的なλ/4伝送ラインの特性インピーダンスZ0より大きい値に設定し、中心周波数fc=2.14GHzにて位相特性が−90°となるように、第1オープンスタブ52a〜第3オープンスタブ52cの特性インピーダンスZ3〜Z5を決める。例えば第1分布定数伝送ライン50a1及び第2分布定数伝送ライン50b1の各特性インピーダンスZ1を80〜110オーム程度とし、第1オープンスタブ52a及び第3オープンスタブ52cの特性インピーダンスZ3及びZ5をそれぞれ50〜80オームから適切な値を選び、第2オープンスタブ52bの特性インピーダンスZ2を20〜50オームから適切な値を選べば、図10のポイントm1に示すように、中心周波数fcにおいて、−90°となる位相特性となり、理想的なλ/4伝送ラインと等価な振幅位相特性を得ることができる。また、実施例2に係る複合部品の実装面積(占有面積)を考えた場合、それぞれ物理長が理想的なλ/4伝送ラインの約1/4である2つの伝送ラインに、3つのオープンスタブを付加する分の占有面積となることから、理想的なλ/4伝送ラインの占有面積に対して20〜30%程度縮小させることができる。
上述のことからもわかるように、分布定数伝送ライン50の特性インピーダンスと電気長、オープンスタブ52の特性インピーダンスと電気長を適切に設定することにより、複合部品54の電気長をλ/4に合わせること(位相特性を90°に合わせること)ができ、また、特性インピーダンスを適切に設定することができる。
ここで、第1アンテナスイッチ10Aの回路動作について図11A〜図15も参照しながら説明する。
第1スイッチ回路22aを主体に説明すると、先ず、第1制御端子Tc1に順バイアス電圧Vc1が印加されることで、第1PINダイオード28aがオンとなり、そのときの第1スイッチ回路22aの等価回路は図11Aに示すようになる。すなわち、第1λ/4伝送路24aとGND間に、等価的にインダクタンスLsと第1PINダイオード28aのオン抵抗Roが並列に接続された回路が直列に接続された形態となる。
反対に、第1制御端子Tc1に逆バイアス電圧Vc2が印加されることで、第1PINダイオード28aがオフとなり、そのときの第1スイッチ回路22aの等価回路は図11Bに示すようになる。すなわち、第1λ/4伝送路24aとGND間に、インダクタンスLsと第1PINダイオード28aの空乏層による寄生容量Cfと第1PINダイオード28aのオフ抵抗Rfによる並列共振回路が直列に接続された形態となる。
そして、この第1アンテナスイッチ10Aでは、該第1アンテナスイッチ10Aの中心周波数foと、寄生容量Cf、オフ抵抗Rf及びインダクタンスLsからなる並列共振回路の共振周波数を一致させるようにインダクタンスLsの値を設定してある。
ここで、オン抵抗Roは、一般に1オーム程度あるいはそれ以下であり、Ro<<2πfoLsとできるため、第1PINダイオード28aのオン時における中心周波数fo付近の等価回路は図12Aのように表すことができ、第1PINダイオード28aのオフ時における中心周波数fo付近の等価回路は図12Bのように表すことができる。
いま、図13に示すように、伝送線路z=LにおいてインピーダンスZ(L)の負荷で終端した場合を考える。
伝送線路の特性インピーダンスをZoとし、進行波をAe−γz、反射波をBe−γz(γは伝搬定数)とすれば、基準点zにおける電圧V(z)及び電流I(z)は以下の式で表される。
V(z)=Ae−γz+Be γz
I(z)=(A/Zo)e−γz−(B/Zo)e γz
従って、z=LにおけるインピーダンスZ(L)は以下の式で表される。
Z(L)=V(L)/I(L)
=Zo{(Ae−γL+Be γL)/(Ae−γL−Be γL)}
また、反射係数Γ(L)は以下の式(a)で示す関係がある。
Γ(L)=(Be γL)/(Ae−γL)
=(B/A)e2γL
={Z(L)−Zo}/{Z(L)+Zo} ……(a)
さらに、z=0において負荷側を見たインピーダンスZ(0)は、以下の式(b)で表される。
Z(0)=Zo{(A+B)/(A−B)} ……(b)
式(a)より、
B/A=[{Z(L)−Zo}/{Z(L)+Zo}]e−2γL
であるから、この式を式(b)に代入すれば、以下の式(c)になる。
Z(0)/Zo = {Z(L) + ZotanhγL}/{Zo + Z(L)tanhγL} ……(c)
ここで、γ=α+jβ(αは減衰定数、βはβ=2π/λで位相定数)である。
無損失線路は、α=0であり、γ=jβとなるから、式(c)は以下の式(d)に変形できる。
Z(0)/Zo = [Z(L) + jZotanβL]/[Zo + jZ(L)tanβL] ……(d)
そして、式(d)にL=λ/4を代入すると、以下の式(e)が求まる。
Z(0)/Zo=Zo/Z(L)
Z(0)=Zo2/Z(L) ……(e)
このことから、第1PINダイオード28aがオンのとき、Z(L)が1オーム程度あるいはそれ以下の低抵抗であることから、式(e)からもわかるように、第1λ/4伝送路24aの信号ライン側のインピーダンス(この場合、Z(0))は大きな値となり、理想的には開放状態となる。反対に、第1PINダイオード28aがオフのとき、Z(L)が10kオーム以上の高抵抗であることから、式(e)からもわかるように、第1λ/4伝送路24aの信号ライン側のインピーダンス(この場合、Z(0))は小さな値となり、理想的には短絡状態となる。
従って、例えば第1制御端子Tc1に順バイアス電圧Vc1が印加されて第1PINダイオード28aがオン、第2制御端子Tc2に逆バイアス電圧Vc2が印加されて第2PINダイオード28bがオフになると、図14に示すような等価回路となり、送信端子16のみがアンテナ接続端子14に高周波的には接続されることになる。これによって、送信端子16に供給された送信信号Saがアンテナ接続端子14を通じて送信されることになる。つまり、送信端子16からアンテナ接続端子14にかけての第1信号ライン34aが信号伝送側となり、受信端子20からアンテナ接続端子14にかけての第2信号ライン34bが信号遮断側となる。
上述とは反対に、第1制御端子Tc1に逆バイアス電圧Vc2が印加されて第1PINダイオード28aがオフ、第2制御端子Tc2に順バイアス電圧Vc1が印加されて第2PINダイオード28bがオンになると、図15に示すような等価回路となり、受信端子20のみがアンテナ接続端子14に高周波的には接続されることになる。これによって、アンテナにて受信した受信信号Sbがアンテナ接続端子14に供給され、該受信端子20から出力されることになる。つまり、送信端子16からアンテナ接続端子14にかけての第1信号ライン34aが信号遮断側となり、受信端子20からアンテナ接続端子14にかけての第2信号ライン34bが信号伝送側となる。
ところで、上述したように、例えば第1並列共振回路26aを設けず、第1PINダイオード28aのみを接続した場合、第1PINダイオード28aのオフ時における中心周波数fo付近の等価回路は、図12Bのようにはならず、図11Bのように、寄生容量Cfが残り、共振周波数は低域側にずれることになる。その結果、第1λ/4伝送路24aの位相特性に誤差が生じ、損失につながるという問題がある。
そこで、第1アンテナスイッチ10Aでは、第1並列共振回路26aの第1インダクタ30aの定数を調整して、第1PINダイオード28aのオフ時の第1並列共振回路26aの共振周波数と第1アンテナスイッチ10Aの中心周波数foとが同じになるようにしている。同様に、第2並列共振回路26bの第2インダクタ30bの定数を調整して、第2PINダイオード28bのオフ時の第2並列共振回路26bの共振周波数と第1アンテナスイッチ10Aの中心周波数foとが同じになるようにしている。
一方、PINダイオードのオン時の抵抗Roは、Ro<<2πfoLsであるので、これにより、図12A及び図12Bに示すように、例えば第1PINダイオード28aのオン時において、第1λ/4伝送路24aのGND側にオン抵抗Roのみが接続され、第1PINダイオード28aのオフ時において、第1λ/4伝送路24aのGND側にオフ抵抗Rfのみが接続された形態となるため、第1PINダイオード28aのオン時とオフ時の第1λ/4伝送路24aの共振周波数はずれることがない。
従って、この第1アンテナスイッチ10Aにおいては、第1λ/4伝送路24a及び第2λ/4伝送路24bの各位相特性に誤差は発生せず、スイッチ回路のオン時の通過帯域とオフ時のアイソレーション帯域を一致させることができる。つまり、アンテナスイッチとして使用する帯域において、オン時の通過損失の最小化、オフ時のアイソレーションの最大化を適切に設定することができる。結果的に、スイッチ回路に伴う伝送信号に対する損失を低減することができると共に、スイッチ回路のオフ時の減衰量を適切に確保することができる。
さらに、第1λ/4信号伝送路18a、第2λ/4信号伝送路18b、第1λ/4伝送路24a及び第2λ/4伝送路24bのうち、少なくとも1つが、図2A及び図2Bに示すように、1以上の分布定数伝送ライン50と、該分布定数伝送ライン50に接続され、且つ、他端が開放端とされた1以上の分布定数伝送ライン(オープンスタブ52)とを有する複合部品54にて構成され、該複合部品54の電気長がλ/4と等価とされているので、第1アンテナスイッチ10A自体の小型化、並びに第1アンテナスイッチ10Aを設置したシステムの小型化を図ることができる。
なお、第1アンテナスイッチ10Aにおいて、第1λ/4伝送路24a及び第2λ/4伝送路24bの各特性インピーダンスを、第1λ/4信号伝送路18a及び第2λ/4信号伝送路18bの各特性インピーダンスよりも低く設定するようにしてもよい。
これにより、第1PINダイオード28a及び第2PINダイオード28bのオフ時におけるアイソレーション、特に、アンテナ接続端子14と送信端子16間のアイソレーション又はアンテナ接続端子14と受信端子20間のアイソレーションを拡大することができ、送信時の受信信号及び受信時の送信信号を効率よく遮断することが可能となる。
反対に、第1アンテナスイッチ10Aにおいて、第1λ/4伝送路24a及び第2λ/4伝送路24bの各特性インピーダンスを、第1λ/4信号伝送路18a及び第2λ/4信号伝送路18bの各特性インピーダンスよりも高く設定してもよい。
これにより、第1PINダイオード28a及び第2PINダイオード28bのオン時における通過損失、特に、アンテナ接続端子14と送信端子16間の通過損失又はアンテナ接続端子14と受信端子20間の通過損失を最小にすることができ、送信信号及び受信信号を効率よく伝達することが可能となる。
次に、第2の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第2アンテナスイッチ10Bと記す)について図16を参照しながら説明する。
この第2アンテナスイッチ10Bは、図16に示すように、上述した第1アンテナスイッチ10Aとほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
すなわち、アンテナ接続端子14と送信端子16との間に2つの第1λ/4信号伝送路18aが接続され、アンテナ接続端子14と受信端子20との間に2つの第2λ/4信号伝送路18bが接続されている。
また、各第1λ/4信号伝送路18aに対応してそれぞれ第1スイッチ回路22aが接続され、同様に、各第2λ/4信号伝送路18bに対応してそれぞれ第2スイッチ回路22bが接続されている。
さらに、第1スイッチ回路22aの第1並列共振回路26aに複数の第1PINダイオード28aが並列に接続され、第2スイッチ回路22bの第2並列共振回路26bに複数の第2PINダイオード28bが並列に接続されている。
この場合も、第1並列共振回路26aの第1インダクタ30aの定数を調整して、第1PINダイオード28aのオフ時の第1並列共振回路26aの共振周波数と第2アンテナスイッチ10Bの中心周波数とが同じになるようにしている。同様に、第2並列共振回路26bの第2インダクタ30bの定数を調整して、第2PINダイオード28bのオフ時の第2並列共振回路26bの共振周波数と第2アンテナスイッチ10Bの中心周波数とが同じになるようにしている。
従って、例えば第1スイッチ回路22aがオン、すなわち、複数の第1PINダイオードがすべてオンになると、第1接点a1とGND間の抵抗は、1つのオン抵抗よりも低い抵抗が接続された形となる。従って、上述した式(e)からもわかるように、第1λ/4伝送路24aにおける第1信号ライン34a側の端部のインピーダンスは、1つのオン抵抗の場合よりも高いインピーダンスとなる。すなわち、理想的な開放状態に近づくことになる。
逆に、第1スイッチ回路22aがオフ、すなわち、複数の第1PINダイオード28aがすべてオフになると、結果的に第1接点a1とGND間には高抵抗であるオフ抵抗のみが接続された形となる。従って、第1λ/4伝送路24aにおける第1信号ライン34a側の端部のインピーダンスは、上述した(e)式からもわかるように、高抵抗に応じた低いインピーダンスになる。つまり、信号伝送時のスイッチ回路の通過損失をより低減することができる。
上述の例では、第1信号ライン34aに2つの第1λ/4信号伝送路18aを直列に接続し、第2信号ライン34bに2つの第2λ/4信号伝送路18bを直列に接続した例を示したが、その他、第1信号ライン34aに3つ以上の第1λ/4信号伝送路18aを直列に接続し、第2信号ライン34bに3つ以上の第2λ/4信号伝送路18bを直列に接続するようにしてもよい。
また、上述のように、スイッチ回路を多段に配した場合、第1信号ライン34a側及び第2信号ライン34b側におけるそれぞれ少なくとも1つずつのスイッチ回路を除いて、並列共振回路を省略することも可能である。並列共振回路を省略したスイッチ回路においてはλ/4伝送路の位相特性に誤差が発生するが、λ/4伝送路の特性インピーダンスを調整することで、損失低減を図ることができると共に、回路の簡素化に有利であることから、どの構成を採用するかは、要請、仕様等に応じてすればよい。
そして、この第2アンテナスイッチ10Bにおいても、第1λ/4信号伝送路18a、第2λ/4信号伝送路18b、第1λ/4伝送路24a及び第2λ/4伝送路24bのうち、少なくとも1つが、1以上の分布定数伝送ライン50と、該分布定数伝送ライン50に接続され、且つ、他端が開放端とされた1以上の分布定数伝送ライン(オープンスタブ52)とを有する複合部品54にて構成され、該複合部品54の電気長がλ/4と等価とされているので、第2アンテナスイッチ10B自体の小型化、並びに第2アンテナスイッチ10Bを設置したシステムの小型化を図ることができる。なお、図16では、1つの第1λ/4信号伝送路18aを、図2Aに示す第1複合部品54Aにて構成した例を示す。
次に、第3の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第3アンテナスイッチ10Cと記す)について図17を参照しながら説明する。
この第3アンテナスイッチ10Cは、図17に示すように、上述した第1アンテナスイッチ10Aとほぼ同様の構成を有するが、さらに、第2λ/4信号伝送路18bと受信端子20との間に接続された1つの第3λ/4信号伝送路18cと、第3λ/4信号伝送路18cに対して並列に接続された第3スイッチ回路22cとを有する点と、第3λ/4信号伝送路18cと受信端子20との間にキャパシタC5が接続されている点で異なる。キャパシタC5も、キャパシタC1〜C4と同様に、PINダイオードをオン/オフする電流を阻止するためのコンデンサで、高周波的にはショートとして働く。
第3スイッチ回路22cは、上述した第2スイッチ回路22bと同様に、第3λ/4信号伝送路18cとキャパシタC5との間の信号ラインとGND(グランド)間に接続され、1つの第3λ/4伝送路24cと第3並列共振回路26cとが第3接点a3で直列に接続された直列回路を有する。
第3並列共振回路26cは、第3接点a3とGND間に接続された1つの第3PINダイオード28cと、第3接点a3と第2制御端子Tc2間に接続された第3インダクタ30cと、第2制御端子Tc2とGND間に接続された第3キャパシタCcとを有する。この第3キャパシタCcは、第3PINダイオード28cをオン/オフする電流を阻止するためのコンデンサとして働く。
さらに、第3スイッチ回路22cは、第3PINダイオード28cに対して、受信側終端形成用抵抗RrとコンデンサCrの直列回路が並列に接続されている。このコンデンサCrは、第3PINダイオード28cをオン/オフする電流を阻止するためのコンデンサとして働く。
そして、この第3アンテナスイッチ10Cにおいては、第1λ/4信号伝送路18a〜第3λ/4信号伝送路18c、第1λ/4伝送路24a〜第3λ/4伝送路24cのうち、少なくとも1つを、例えば図2A及び図2Bに示す複合部品54にて構成する。図17では、1つの第1λ/4信号伝送路18aを、図2Aに示す第1複合部品54Aにて構成した例を示す。
ここで、第3アンテナスイッチ10Cの回路動作について説明する。
先ず、例えば第1制御端子Tc1に順バイアス電圧Vc1が印加されて第1PINダイオード28aがオン、第2制御端子Tc2に逆バイアス電圧Vc2が印加されて第2PINダイオード28b及び第3PINダイオード28cがオフになると、図18に示すような等価回路となり、送信端子16のみがアンテナ接続端子14に高周波的には接続され、受信端子20には例えば50オームの終端抵抗Reが接続されることになる。これによって、送信端子16に供給された送信信号Saがアンテナ接続端子14を通じて送信されることになる。つまり、送信端子16からアンテナ接続端子14にかけての第1信号ライン34aが信号伝送側となり、受信端子20からアンテナ接続端子14にかけての第2信号ライン34bが信号遮断側となる。
仮に、第3スイッチ回路22cが存在しないとすると、上述したように、第2λ/4伝送路24bの信号ライン側のインピーダンスは小さな値となり、理想的には短絡状態となる。つまり、オフ時の受信側のインピーダンスが0オームとなり、全反射となるため、受信端子20に接続される受信アンプの動作が不安定になる場合がある。
しかし、この第3アンテナスイッチ10Cでは、第3スイッチ回路22cを接続するようにしたので、上述したように、オフ時の受信側のインピーダンスが終端抵抗Reの値、例えば50オームとなって、他の回路とインピーダンスの整合をとることができ、受信端子20に接続される受信アンプの動作を安定にさせることができる。
上述とは反対に、第1制御端子Tc1に逆バイアス電圧Vc2が印加されて第1PINダイオード28aがオフ、第2制御端子Tc2に順バイアス電圧Vc1が印加されて第2PINダイオード28b及び第3PINダイオード28cがオンになると、上述した図15に示すような等価回路となり、受信端子20のみがアンテナ接続端子14に高周波的には接続されることになる。これによって、アンテナにて受信した受信信号Sbがアンテナ接続端子14に供給され、該受信端子20から出力されることになる。つまり、送信端子16からアンテナ接続端子14にかけての第1信号ライン34aが信号遮断側となり、受信端子20からアンテナ接続端子14にかけての第2信号ライン34bが信号伝送側となる。このため、受信時において、受信側終端形成用抵抗Rrによる影響はない。
さらに、第1λ/4信号伝送路18a〜第3λ/4信号伝送路18c、第1λ/4伝送路24a〜第3λ/4伝送路24cのうち、少なくとも1つを、複合部品54にて構成するようにしたので、第3アンテナスイッチ10C自体の小型化、並びに第3アンテナスイッチ10Cを設置したシステムの小型化を図ることができる。
この場合も、第1λ/4伝送路24a、第2λ/4伝送路24b及び第3λ/4伝送路24cの各特性インピーダンスを、第1λ/4信号伝送路18a、第2λ/4信号伝送路18b及び第3λ/4信号伝送路18cの各特性インピーダンスよりも低く設定するようにしてもよいし、反対に、高く設定してもよい。
また、図19に示す第4の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第4アンテナスイッチ10Dと記す)のように、アンテナ接続端子14と送信端子16との間に2つの第1λ/4信号伝送路18aを接続し、アンテナ接続端子14と受信端子20との間に2つの第2λ/4信号伝送路18bと1つの第3λ/4信号伝送路18cとを接続し、各第1λ/4信号伝送路18aに対応してそれぞれ第1スイッチ回路22aを接続し、同様に、各第2λ/4信号伝送路18bに対応してそれぞれ第2スイッチ回路22bを接続し、第3λ/4信号伝送路18cに対応して第3スイッチ回路22cを接続するようにしてもよい。
さらに、この第4アンテナスイッチ10Dにおいては、第1スイッチ回路22aの第1並列共振回路26aに複数の第1PINダイオード28aが並列に接続され、第2スイッチ回路22bの第2並列共振回路26bに複数の第2PINダイオード28bが並列に接続され、第3スイッチ回路22cの第3並列共振回路26cに複数の第3PINダイオード28cが並列に接続されている。
この第4アンテナスイッチ10Dにおいても、第1λ/4信号伝送路18a〜第3λ/4信号伝送路18c、第1λ/4伝送路24a〜第3λ/4伝送路24cのうち、少なくとも1つを、複合部品54にて構成することにより、第4アンテナスイッチ10D自体の小型化、並びに第4アンテナスイッチ10Dを設置したシステムの小型化を図ることができる。なお、図19では、1つの第1λ/4信号伝送路18aを、図2Aに示す第1複合部品54Aにて構成した例を示す。
次に、第5の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第5アンテナスイッチ10Eと記す)について図20を参照しながら説明する。
この第5アンテナスイッチ10Eは、図20に示すように、上述した第3アンテナスイッチ10C(図17参照)とほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
すなわち、第1λ/4信号伝送路18aと送信端子16との間に接続された1つの第4λ/4信号伝送路18dと、該第4λ/4信号伝送路18dに対して並列に接続された第4スイッチ回路22dとを有する。
第4スイッチ回路22dは、第4λ/4信号伝送路18dとキャパシタC1との間の信号ラインとGND(グランド)間に接続され、1つの第4λ/4伝送路24dと第4並列共振回路26dとが第4接点a4で直列に接続された直列回路を有する。
第4並列共振回路26dは、第4接点a4とGND間に接続された1つの第4PINダイオード28dと、第4接点a4と第1制御端子Tc1間に接続された第4インダクタ30dと、第1制御端子Tc1とGND間に接続された第4キャパシタCdとを有する。この第4キャパシタCdは、第4PINダイオード28dをオン/オフする電流を阻止するためのコンデンサとして働く。
さらに、第4スイッチ回路22dは、第4PINダイオード28dに対して、送信用終端形成用抵抗RtとコンデンサCtの直列回路が並列に接続されている。
つまり、この第4スイッチ回路22dは、受信側の第3スイッチ回路22cと同様の構成を有する。
従って、例えば第1制御端子Tc1に順バイアス電圧Vc1が印加されて第1PINダイオード28a及び第4PINダイオード28dがオン、第2制御端子Tc2に逆バイアス電圧Vc2が印加されて第2PINダイオード28b及び第3PINダイオード28cがオフになると、図18に示すような等価回路となり、送信端子16のみがアンテナ接続端子14に高周波的に接続され、受信端子20には例えば50オームの終端抵抗が接続されることになる。この場合、オフ時の受信側のインピーダンスが終端抵抗Reの値、例えば50オームとなって、他の回路とインピーダンスの整合をとることができ、受信端子20に接続される受信アンプの動作を安定にさせることができる。
上述とは反対に、第1制御端子Tc1に逆バイアス電圧Vc2が印加されて第1PINダイオード28a及び第4PINダイオード28dがオフ、第2制御端子Tc2に順バイアス電圧Vc1が印加されて第2PINダイオード28b及び第3PINダイオード28cがオンになると、図21に示すような等価回路となり、受信端子20のみがアンテナ接続端子14に高周波的に接続され、送信端子16には例えば50オームの終端抵抗Reが接続されることになる。この場合、オフ時の送信側のインピーダンスが終端抵抗Reの値、例えば50オームとなって、他の回路とインピーダンスの整合をとることができる。
そして、この第5アンテナスイッチ10Eにおいても、第1λ/4信号伝送路18a〜第4λ/4信号伝送路18d、第1λ/4伝送路24a〜第4λ/4伝送路24dのうち、少なくとも1つを、複合部品54にて構成することにより、第5アンテナスイッチ10E自体の小型化、並びに第5アンテナスイッチ10Eを設置したシステムの小型化を図ることができる。なお、図20では、1つの第1λ/4信号伝送路18aを、図2Aに示す第1複合部品54Aにて構成した例を示す。
次に、第6の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第6アンテナスイッチ10Fと記す)について図22を参照しながら説明する。
この第6アンテナスイッチ10Fは、図22に示すように、上述した第3アンテナスイッチ10Cとほぼ同様の構成を有するが、第1スイッチ回路22a〜第3スイッチ回路22cの構成が以下の点で異なる。
すなわち、第1スイッチ回路22aは、第1λ/4伝送路24aとGND間に第1PINダイオード28aと第1キャパシタCaとの直列回路が接続され、第1PINダイオード28aと第1キャパシタCaとの接点に第1制御端子Tc1が接続されて構成されている。
第2スイッチ回路22bは、第2λ/4伝送路24bとGND間に第2PINダイオード28bと第2キャパシタCbとの直列回路が接続され、第2PINダイオード28bと第2キャパシタCbとの接点に第2制御端子Tc2が接続されて構成されている。
第3スイッチ回路22cは、第3λ/4伝送路24cとGND間に第3PINダイオード28cと第3キャパシタCcとの直列回路が接続され、第3PINダイオード28cと第3キャパシタCcとの接点に第2制御端子Tc2が接続され、さらに、第3PINダイオード28cのカソードとGND間に受信側終端形成用抵抗Rrが接続されて構成されている。
従って、例えば第1制御端子Tc1に順バイアス電圧Vc1が印加されて第1PINダイオード28aがオン、第2制御端子Tc2に逆バイアス電圧Vc2が印加されて第2PINダイオード28b及び第3PINダイオード28cがオフになると、図17に示すような等価回路となり、送信端子16のみがアンテナ接続端子14に高周波的に接続され、受信端子には例えば50オームの終端抵抗Reが接続されることになる。この場合、オフ時の受信側のインピーダンスが終端抵抗Reの値、例えば50オームとなって、他の回路とインピーダンスの整合をとることができ、受信端子20に接続される受信アンプの動作を安定にさせることができる。
上述とは反対に、第1制御端子Tc1に逆バイアス電圧Vc2が印加されて第1PINダイオード28aがオフ、第2制御端子Tc2に順バイアス電圧Vc1が印加されて第2PINダイオード28b及び第3PINダイオード28cがオンになると、図15に示すような等価回路となり、受信端子20のみがアンテナ接続端子14に高周波的には接続されることになる。
この第6アンテナスイッチ10Fでは、第1PINダイオード28aのオフ時における中心周波数fo付近の等価回路は、図12Bのようにはならず、図11Bのように、寄生容量Cfが残り、これにより、共振周波数が低域側にずれてしまい、性能的には第3アンテナスイッチ10Cよりも劣ることになるが、構造が簡単であることから、性能よりも小型化、低コストを望む場合に有効である。
そして、この第6アンテナスイッチ10Fにおいても、第1λ/4信号伝送路18a〜第3λ/4信号伝送路18c、第1λ/4伝送路24a〜第3λ/4伝送路24cのうち、少なくとも1つを、複合部品54にて構成することにより、第6アンテナスイッチ10F自体の小型化、並びに第6アンテナスイッチ10Fを設置したシステムの小型化を図ることができる。図22では、1つの第1λ/4信号伝送路18aを、図2Aに示す第1複合部品54Aにて構成した例を示す。
次に、第7の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第7アンテナスイッチ10Gと記す)について図23を参照しながら説明する。
この第7アンテナスイッチ10Gは、図23に示すように、上述した第1アンテナスイッチ10A(図1参照)とほぼ同様の構成を有するが、第1λ/4信号伝送路18aを構成要素の1つとし、送信信号の反射波を検出する方向性結合器36を有する点で異なる。
この方向性結合器36は、上述した第1λ/4信号伝送路18aと、該第1λ/4信号伝送路18aに対向して配置されたλ/4線路38と、該λ/4線路38の一端に接続された反射波出力端子40と、λ/4線路38の他端に接続された終端抵抗42とを有する。なお、終端抵抗42の他端は接地とされている。
ここで、方向性結合器36の動作原理について図24を参照しながら説明する。先ず、方向性結合器36の第1端φ1〜第4端φ4について以下のように定義する。すなわち、第1λ/4信号伝送路18aの送信端子16側の端部を第1端φ1、第1λ/4信号伝送路18aのアンテナ接続端子14側の端部を第2端φ2、λ/4線路38の送信端子16側の端部を第3端φ3、λ/4線路38のアンテナ接続端子14側の端部を第4端子φ4とする。
このとき、方向性結合器36の第1端φ1に、送信端子16からの送信信号による進行波電力Paが加えられると、第2端φ2に進行波が現れ、第3端φ3に進行波電力Paに比例した電力dPaの電波(信号)が現れる。そして、アンテナで反射が発生して、方向性結合器36の第2端φ2に反射波電力Pbが加わると、第1端φ1に反射波が現れ、第4端φ4に反射波電力Pbに比例した電力dPbの電波(信号)が現れる。つまり、方向性結合器36の第4端φ4につながる反射波出力端子40から反射波電力Pbに比例した信号が出力されることになり、反射波を検出することが可能となる。
そして、この第7アンテナスイッチ10Gにおいては、第1λ/4信号伝送路18a、第2λ/4信号伝送路18b、第1λ/4伝送路24a及び第2λ/4伝送路24bのうち、少なくとも1つを、複合部品にて構成する。
このとき、第1λ/4信号伝送路18a、第2λ/4信号伝送路18b、第1λ/4伝送路24a及び第2λ/4伝送路24bのうち、少なくとも1つを複合部品にて構成する場合は、例えば図2A及び図2Bに示す複合部品54にて構成してもよい。図23では、1つの第1λ/4信号伝送路18aを、図2Aに示す第1複合部品54Aにて構成した例を示す。
また、第1λ/4信号伝送路18aを複合部品にて構成する場合は、第1λ/4信号伝送路18aとλ/4線路38とで構成される方向性結合器36自体を、図25に示す第3複合部品54C又は図26に示す第4複合部品54Dにて構成してもよいし、上述したように、第1λ/4信号伝送路18aのみを図2に示す複合部品54にて構成してもよい。
第3複合部品54Cは、図25に示すように、第1端子φ1と第2端子φ2との間に直列接続された第1分布定数伝送ライン50a及び第2分布定数伝送ライン50bと、一端が第1分布定数伝送ライン50aと第2分布定数伝送ライン50bとの間に接続され、他端が開放端とされた1つのオープンスタブ52mとを有する第1複合部80aと、第3端子φ3と第4端子φ4との間に直列接続された第3分布定数伝送ライン50c及び第4分布定数伝送ライン50dと、一端が第3分布定数伝送ライン50cと第4分布定数伝送ライン50dとの間に接続され、他端が開放端とされた1つのオープンスタブ52nとを有する第2複合部80bとを有する。
第4複合部品54Dも、図26に示すように、第1複合部80a及び第2複合部80bを有する。第1複合部80aは、第1端子φ1と第2端子φ2との間に直列接続された第1分布定数伝送ライン50a1及び第2分布定数伝送ライン50b1と、一端が第1端子φ1に接続され、他端が開放端とされた第1オープンスタブ52aと、一端が第1分布定数伝送ライン50a1と第2分布定数伝送ライン50b1との間に接続され、他端が開放端とされた第2オープンスタブ52bと、一端が第2端子φ2に接続され、他端が開放端とされた第3オープンスタブ52cとを有する。第2複合部80bは、第3端子φ3と第4端子φ4との間に直列接続された第3分布定数伝送ライン50c1及び第4分布定数伝送ライン50d1と、一端が第3端子φ3に接続され、他端が開放端とされた第4オープンスタブ52dと、一端が第3分布定数伝送ライン50c1と第4分布定数伝送ライン50d1との間に接続され、他端が開放端とされた第5オープンスタブ52eと、一端が第4端子φ4に接続され、他端が開放端とされた第6オープンスタブ52fとを有する。
第3複合部品54C(及び第4複合部品54D)において、第1分布定数伝送ライン50aと第3分布定数伝送ライン50c(第1分布定数伝送ライン50a1と第3分布定数伝送ライン50c1)は互いに近接し、且つ、平行に配置されて、1つの第1分布定数伝送ライン対(第1分布定数伝送ライン対57a)を構成している。同様に、第2分布定数伝送ライン50bと第4分布定数伝送ライン50d(第2分布定数伝送ライン50b1と第4分布定数伝送ライン50d1)は互いに近接し、且つ、平行に配置されて、1つの分布定数伝送ライン対(第2分布定数伝送ライン対57b)を構成している。そして、この第3複合部品54C及び第4複合部品54Dを用いる場合は、第1端子φ1が図23に示す信号ラインの接点21aに接続され、第2端子φ2が第2コンデンサC2に接続され、第3端子φ3が終端抵抗42に接続され、第4端子φ4が反射波出力端子40に接続される。
上述した第3複合部品54C及び第4複合部品54Dは、図27A及び図27Bに示すように、下面にアース電極58を有する誘電体基板60の上面に互いに近接して平行に形成された第1マイクロストリップライン62a及び第2マイクロストリップライン62bにて構成してもよいし、図28A及び図28Bに示すように、上下面にアース電極58を有する誘電体基板60の内部に互いに近接して平行に形成された第1ストリップライン64a及び第2ストリップライン64bにて構成してもよい。
また、第3複合部品及び第4複合部品は、図29及び図30に示すように、第1分布定数伝送ライン対57a及び第2分布定数伝送ライン対57bにそれぞれ対応して設置されたケーブル84と、複数のオープンスタブ(オープンスタブ52m、52n、第1オープンスタブ52a〜第6オープンスタブ52f)にそれぞれ対応して設置された同軸型共振器66とを有する。同軸型共振器66は、上述した第1同軸型共振器66Aや第2同軸型共振器66Bを用いることができる。
ケーブル84は、図31A〜図31Cに示すように、2本の導体(第1端子φ1と第2端子φ2間に配線される第1導体82a、第3端子φ3と第4端子φ4間に配線される第2導体82b)を被覆した3種類のケーブル(第1ケーブル84A〜第3ケーブル84C)のいずれか1つで構成してもよい。
第1ケーブル84Aは、図31Aに示すように、第1導体82aと第2導体82bとがそれぞれ第1絶縁体86にて被覆され、さらに、第1導体82a及び第2導体82bのうち、それぞれ第1絶縁体86にて被覆された部分が第2絶縁体88にて被覆され、該第2絶縁体88の外周面に外部導体90が形成されて構成されている。この第1ケーブル84Aでは、第1導体82aと第2導体82b間の距離を、第1絶縁体86の厚み×2で示す距離まで自己整合的に近づけることができる。
第2ケーブル84Bは、図31Bに示すように、第2導体82bのみが第1絶縁体86にて被覆され、さらに、第2導体82bのうち、第1絶縁体86にて被覆された部分と第1導体82aが第2絶縁体88にて被覆され、該第2絶縁体88の外周面に外部導体90が形成されて構成されている。この第2ケーブル84Bでは、第1導体82aと第2導体82b間の距離を、第1絶縁体86の厚みで示す距離まで自己整合的に近づけることができる。
第3ケーブル84Cは、図31Cに示すように、第1導体82a及び第2導体82bが第2絶縁体88にて被覆され、該第2絶縁体88の外周面に外部導体90が形成されて構成されている。この第3ケーブル84Cでは、第1導体82aと第2導体82b間の距離を、自己整合的に近づけることができないため、治具等を使って、予め設定した距離だけ離間させて第2絶縁体88で被覆することとなる。
上述した第3複合部品54C及び第4複合部品54Dにおいて、第3端子φ3及び第4端子φ4間に接続されるカップルライン(第2複合部80b)側は、通常の1つの伝送ラインでもよい。この場合、カップルラインを構成する通常の伝送ラインと、第1端子φ1及び第2端子φ2間に接続される第1複合部80aとで電気長が異なることになるが、方向性結合器としては機能する。
このように、第7アンテナスイッチ10Gにおいては、1つのアンテナスイッチであっても、送信信号の反射波を検出することができることから、反射波検出機能付きの送信システムあるいは送受信システムの部品点数の低減、サイズの小型化をより促進することができ、製造コストの低廉化、伝送ロスの低減化も図ることができる。
さらに、第1λ/4信号伝送路18a、第2λ/4信号伝送路18b、第1λ/4伝送路24a及び第2λ/4伝送路24bのうち、少なくとも1つを、図2Aに示す第1複合部品54A又は図2Bに示す第2複合部品54Bにて構成するようにしたので、第7アンテナスイッチ10G自体の小型化、並びに第7アンテナスイッチ10Gを設置したシステムの小型化を図ることができる。特に、第1λ/4信号伝送路18aを複合部品にて構成する場合に、第1λ/4信号伝送路18aとλ/4線路38とで構成される方向性結合器36自体を第3複合部品54C又は第4複合部品54Dにて構成する、あるいは第1λ/4信号伝送路18aのみを第1複合部品54A又は第2複合部品54Bにて構成するようにしたので、方向性結合器36を有する第7アンテナスイッチ10Gの小型化を図ることができる。
次に、第8の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第8アンテナスイッチ10Hと記す)について、図32を参照しながら説明する。
この第8アンテナスイッチ10Hは、図32に示すように、上述した第7アンテナスイッチ10Gとほぼ同様の構成を有するが、方向性結合器36が以下のように構成されている点で異なる。
すなわち、方向性結合器36は、第1λ/4信号伝送路18aと、該第1λ/4信号伝送路18aに対向して配置されたλ/4線路38とを有し、第3端φ3(λ/4線路38の送信端子16側端部)に進行波出力端子44が接続され、第4端φ4(λ/4線路38のアンテナ接続端子14側端部)に反射波出力端子40が接続されている。
これにより、方向性結合器36の第3端φ3につながる進行波出力端子44から進行波電力Pa(図24参照)に比例した信号が出力され、方向性結合器36の第4端φ4につながる反射波出力端子40から反射波電力Pbに比例した信号が出力されることになり、送信信号の反射波及び進行波を検出することができる。
次に、第9の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第9アンテナスイッチ10Iと記す)について図33を参照しながら説明する。
この第9アンテナスイッチ10Iは、図33に示すように、上述した第7アンテナスイッチ10Gとほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
すなわち、送信端子16と第1λ/4信号伝送路18aの間に第3λ/4信号伝送路18cが接続され、受信端子20と第2λ/4信号伝送路18bの間に第4λ/4信号伝送路が接続されている。
第3λ/4信号伝送路18cに対応して第3スイッチ回路22cが接続され、第4λ/4信号伝送路18dに対応して第4スイッチ回路22dが接続されている。
さらに、第1スイッチ回路22aの第1並列共振回路26aに複数の第1PINダイオード28aが並列に接続され、第2スイッチ回路22bの第2並列共振回路26bに複数の第2PINダイオード28bが並列に接続されている。同様に、第3スイッチ回路22cの第3並列共振回路26cに複数の第3PINダイオード28cが並列に接続され、第4スイッチ回路22dの第4並列共振回路26dに複数の第4PINダイオード28dが並列に接続されている。
この場合も、第1並列共振回路26aの第1インダクタ30a及び第3並列共振回路26cの第3インダクタ30cの各定数を調整して、第1PINダイオード28aのオフ時の第1並列共振回路26aの共振周波数と、第3PINダイオード28cのオフ時の第3並列共振回路26cの共振周波数と、第3アンテナスイッチ10Cの中心周波数とが同じになるようにしている。
同様に、第2並列共振回路26bの第2インダクタ30b及び第4並列共振回路26dの第4インダクタ30dの各定数を調整して、第2PINダイオード28bのオフ時の第1並列共振回路26aの共振周波数と、第4PINダイオード28dのオフ時の第4並列共振回路26dの共振周波数と、第3アンテナスイッチ10Cの中心周波数とが同じになるようにしている。
さらに、この第9アンテナスイッチ10Iは、第1λ/4信号伝送路18aを構成要素の1つとし、送信信号の反射波を検出する第1方向性結合器36aと、第3λ/4信号伝送路18cを構成要素の1つとし、送信信号の進行波を検出する第2方向性結合器36bとを有する。
第1方向性結合器36aは、上述した第1λ/4信号伝送路18aと、該第1λ/4信号伝送路18aに対向して配置された第1λ/4線路38aと、該第1λ/4線路38aの一端(第4端φ4)に接続された反射波出力端子40と、第1λ/4線路38の他端(第3端φ3)に接続された第1終端抵抗42aとを有する。
第2方向性結合器36bは、上述した第3λ/4信号伝送路18cと、該第3λ/4信号伝送路18cに対向して配置された第2λ/4線路38bと、該第2λ/4線路38bの一端(第3端φ3)に接続された進行波出力端子44と、第2λ/4線路38bの他端(第4端φ4)に接続された第2終端抵抗42bとを有する。なお、第1終端抵抗42a及び第2終端抵抗42bの各他端は接地とされている。
この場合、第2方向性結合器36bの第3端φ3につながる進行波出力端子44から進行波電力Pa(図24参照)に比例した信号が出力され、第1方向性結合器36aの第4端φ4につながる反射波出力端子40から反射波電力Pbに比例した信号が出力されることになるため、送信信号の反射波及び進行波を検出することができる。
しかも、反射波出力端子40に接続されるモニタ回路(反射波検出回路)の特性と、進行波出力端子44に接続されるモニタ回路(進行波検出回路)の特性が異なっていても、各モニタ回路の特性に、第1方向性結合器36a及び第2方向性結合器36bの出力特性をそれぞれ独立に設定することができるため、方向性結合器の設計の自由度を上げることができる。
この第9アンテナスイッチ10Iにおいては、第1λ/4信号伝送路18a〜第4λ/4信号伝送路18d、第1λ/4伝送路24a〜第4λ/4伝送路24dのうち、少なくとも1つを、例えば図2Aに示す第1複合部品54A又は図2Bに示す第2複合部品にて構成するようにしてもよい。また、第1λ/4信号伝送路18a及び第3λ/4信号伝送路18cのうち、少なくとも1つを複合部品にて構成する場合に、第1方向性結合器36a(第1λ/4信号伝送路18aと第1λ/4線路38aとを有する)及び第2方向性結合器36b(第3λ/4信号伝送路18cと第2λ/4線路38bとを有する)のうち、少なくとも1つを、例えば図25に示す第3複合部品54C又は図26に示す第4複合部品54Dにて構成する、あるいは第1λ/4信号伝送路18a及び第3λ/4信号伝送路18cのうち、少なくとも1つを例えば図2Aに示す第1複合部品54A又は図2Bに示す第2複合部品54Bにて構成するようにしてもよい。これにより、第9アンテナスイッチ10I自体の小型化、並びに第9アンテナスイッチ10Iを設置したシステムの小型化を図ることができる。
次に、第10の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第10アンテナスイッチ10Jと記す)について図34を参照しながら説明する。
この第10アンテナスイッチ10Jは、図34に示すように、上述した第7アンテナスイッチ10Gとほぼ同様の構成を有するが、第4スイッチ回路22dが、上述した第3アンテナスイッチ(図17参照)と同様に、第4PINダイオード28dに対して、受信側終端形成用抵抗RrとコンデンサCrの直列回路が並列に接続されている点で異なる。
従って、この第10アンテナスイッチ10Jは、上述した第3アンテナスイッチ10Cと同様に、オフ時の受信側のインピーダンスが終端抵抗Reの値、例えば50オームとなって、他の回路とインピーダンスの整合をとることができ、受信端子20に接続される受信アンプの動作を安定にさせることができる。なお、受信時において、受信側終端形成用抵抗Rrによる影響はない。
この第10アンテナスイッチ10Jにおいても、第1λ/4信号伝送路18a、第2λ/4信号伝送路18b、第4λ/4信号伝送路18d、第1λ/4伝送路24a、第2λ/4伝送路24b、第4λ/4伝送路24dのうち、少なくとも1つを、例えば図2Aに示す第1複合部品54A又は図2Bに示す第2複合部品にて構成するようにしてもよい。また、第1λ/4信号伝送路18aを複合部品にて構成する場合に、方向性結合器36を、例えば図25に示す第3複合部品54C又は図26に示す第4複合部品54Dにて構成する、あるいは第1λ/4信号伝送路18aのみを例えば図25に示す第3複合部品54C又は図26に示す第4複合部品54Dにて構成するようにしてもよい。これにより、第10アンテナスイッチ10J自体の小型化、並びに第10アンテナスイッチ10Jを設置したシステムの小型化を図ることができる。
次に、第11の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第11アンテナスイッチ10Kと記す)について図35を参照しながら説明する。
この第11アンテナスイッチ10Kは、図35に示すように、上述した第10アンテナスイッチ10Jとほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
すなわち、第1λ/4信号伝送路18aと送信端子16との間に接続された1つの第3λ/4信号伝送路18cと、該第3λ/4信号伝送路18cに対して並列に接続された第3スイッチ回路22cとを有する。さらに、第3スイッチ回路22cは、第3PINダイオード28cに対して、送信用終端形成用抵抗RtとコンデンサCtの直列回路が並列に接続されている。つまり、この第3スイッチ回路22cは、受信側の第4スイッチ回路22dと同様の構成を有する。
従って、この第11アンテナスイッチ10Kは、上述した第5アンテナスイッチ10E(図20参照)と同様に、オフ時の受信側のインピーダンスが終端抵抗Reの値、例えば50オームとなって、他の回路とインピーダンスの整合をとることができ、受信端子20に接続される受信アンプの動作を安定にさせることができる。また、オフ時の送信側のインピーダンスが終端抵抗Reの値、例えば50オームとなることから、他の回路とインピーダンスの整合をとることができる。
さらに、この第11アンテナスイッチ10Kは、上述した第9アンテナスイッチ10I(図33参照)と同様に、送信信号の反射波及び進行波を検出することができる。
この第11アンテナスイッチ10Kにおいても、第2λ/4信号伝送路18a〜第4λ/4信号伝送路18d、第1λ/4伝送路24a〜第4λ/4伝送路24dのうち、少なくとも1つを、例えば図2Aに示す第1複合部品54A又は図2Bに示す第2複合部品54Bにして構成するようにしてもよい。また、第1λ/4信号伝送路18a及び第3λ/4信号伝送路18cのうち、少なくとも1つを複合部品にて構成する場合に、第1方向性結合器36a及び第2方向性結合器36bのうち、少なくとも1つを、例えば図25に示す第3複合部品54C又は図26に示す第4複合部品54Dにて構成する、あるいは第1λ/4信号伝送路18a及び第3λ/4信号伝送路18cのうち、少なくとも1つを例えば図2Aに示す第1複合部品54A又は図2Bに示す第2複合部品54Bにて構成するようにしてもよい。これにより、第11アンテナスイッチ10K自体の小型化、並びに第11アンテナスイッチ10Kを設置したシステムの小型化を図ることができる。
次に、第12の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第12アンテナスイッチ10Lと記す)について図36を参照しながら説明する。
この第12アンテナスイッチ10Lは、上述した第10アンテナスイッチ10J(図34参照)とほぼ同様の構成を有するが、第1スイッチ回路22a、第2スイッチ回路22b及び第4スイッチ回路22dの構成が以下の点で異なる。
すなわち、第1スイッチ回路22aは、第1λ/4伝送路24aとGND間に第1PINダイオード28aと第1キャパシタCaとの直列回路が接続され、第1PINダイオード28aと第1キャパシタCaとの接点に第1制御端子Tc1が接続されて構成されている。
第2スイッチ回路22bは、第2λ/4伝送路24bとGND間に第2PINダイオード28bと第2キャパシタCbとの直列回路が接続され、第2PINダイオード28bと第2キャパシタCbとの接点に第2制御端子Tc2が接続されて構成されている。
第4スイッチ回路22dは、第4λ/4伝送路24dとGND間に第4PINダイオード28dと第4キャパシタCdとの直列回路が接続され、第4PINダイオード28dと第4キャパシタCdとの接点に第2制御端子Tc2が接続され、さらに、第4PINダイオード28dのカソードとGND間に受信側終端形成用抵抗Rrが接続されて構成されている。
従って、この第12アンテナスイッチ10Lにおいても、オフ時の受信側のインピーダンスが終端抵抗Reの値、例えば50オームとなって、他の回路とインピーダンスの整合をとることができ、受信端子20に接続される受信アンプの動作を安定にさせることができる。なお、受信時において、受信側終端形成用抵抗Rrによる影響はない。
そして、この第12アンテナスイッチ10Lにおいても、第10アンテナスイッチ10Jと同様に、第1λ/4信号伝送路18aを構成要素の1つとする方向性結合器36を有することから、方向性結合器36の第4端φ4につながる反射波出力端子40から反射波電力Pbに比例した信号が出力されることになり、反射波を検出することが可能となる。
また、この第12アンテナスイッチ10Lにおいて、第2λ/4信号伝送路18a、第2λ/4信号伝送路18b、第4λ/4信号伝送路18d、第1λ/4伝送路24a、第2λ/4伝送路24b、第4λ/4伝送路24dのうち、少なくとも1つを、例えば図2Aに示す第1複合部品54A又は図2Bに示す第2複合部品54Bにて構成するようにしてもよい。また、第1λ/4信号伝送路18aを複合部品にて構成する場合に、方向性結合器36を、例えば図25に示す第3複合部品54C又は図26に示す第4複合部品54Dにて構成する、あるいは第1λ/4信号伝送路18aのみを例えば図2Aに示す第1複合部品54A又は図2Bに示す第2複合部品54Bにて構成するようにしてもよい。これにより、第12アンテナスイッチ10L自体の小型化、並びに第12アンテナスイッチ10Lを設置したシステムの小型化を図ることができる。
この第12アンテナスイッチ10Lでは、第1PINダイオード28aのオフ時における中心周波数fo付近の等価回路は、図12Bのようにはならず、図11Bのように、寄生容量Cfが残り、これにより、共振周波数が低域側にずれてしまい、性能的には第10アンテナスイッチ10Jよりも劣ることになるが、構造が簡単であることから、性能よりも小型化、低コストを望む場合に有効である。
次に、第13の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第13アンテナスイッチ10Mと記す)について図37を参照しながら説明する。
この第13アンテナスイッチ10Mは、従来から知られているアンテナスイッチに第1方向性結合器36a及び第2方向性結合器36bを接続した構成を有する。
すなわち、送信端子16とアンテナ接続端子14間に接続された第1λ/4信号伝送路18a及び第3λ/4信号伝送路18cと、第1λ/4信号伝送路18aに対して並列に接続された第1PINダイオード28aによる第1スイッチ回路22aと、第3λ/4信号伝送路18cに対して並列に接続された第3PINダイオード28cによる第3スイッチ回路22cとを有する。
同様に、受信端子20とアンテナ接続端子14間に接続された第2λ/4信号伝送路18b及び第4λ/4信号伝送路18dと、第2λ/4信号伝送路18bに対して並列に接続された第2PINダイオード28bによる第2スイッチ回路22bと、第4λ/4信号伝送路18dに対して並列に接続された第4PINダイオード28dによる第4スイッチ回路22dとを有する。
第1PINダイオード28a〜第4PINダイオード28dは共にカソード側が接地とされている。
また、送信側のキャパシタC1と第3λ/4信号伝送路18c間の信号ラインとインダクタンス素子L11を介して第1制御端子Tc1が接続され、第1接続端子Tc1とGND間にキャパシタC11が接続されている。同様に、受信側のキャパシタC4と第4λ/4信号伝送路18d間の信号ラインとインダクタンス素子L12を介して第2制御端子Tc2が接続され、第2接続端子Tc2とGND間にキャパシタC12が接続されている。
そして、この第13アンテナスイッチ10Mは、第1λ/4信号伝送路18aを構成要素の1つとし、送信信号の反射波を検出する第1方向性結合器36aと、第3λ/4信号伝送路18cを構成要素の1つとし、送信信号の進行波を検出する第2方向性結合器36bとを有する。
従って、第2方向性結合器36bの第3端φ3につながる進行波出力端子44から進行波電力Paに比例した信号が出力され、第1方向性結合器36aの第4端φ4につながる反射波出力端子40から反射波電力Pbに比例した信号が出力されることになるため、送信信号の反射波及び進行波を検出することができる。
このように、従来のアンテナスイッチのλ/4信号伝送路にλ/4線路を対向して配置するだけでよいため、部品点数を増加させることなく、送信信号の反射波及び進行波を検出することができるアンテナスイッチを構成することができる。
この第13アンテナスイッチ10Mにおいても、第1λ/4信号伝送路18a〜第4λ/4信号伝送路18dのうち、少なくとも1つを、例えば図2Aに示す第1複合部品54A又は図2Bに示す第2複合部品54Bにて構成するようにしてもよい。また、第1λ/4信号伝送路18a及び第3λ/4信号伝送路18cのうち、少なくとも1つを複合部品にて構成する場合に、第1方向性結合器36a及び第2方向性結合器36bのうち、少なくとも1つを、例えば図25に示す第3複合部品54C又は図26に示す第4複合部品54Dにて構成する、あるいは第1λ/4信号伝送路18a及び第3λ/4信号伝送路18cのうち、少なくとも1つを例えば図2Aに示す第1複合部品54A又は図2Bに示す第2複合部品54Bにて構成するようにしてもよい。これにより、第13アンテナスイッチ10M自体の小型化、並びに第13アンテナスイッチ10Mを設置したシステムの小型化を図ることができる。
次に、第14の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第14アンテナスイッチ10Nと記す)について図38を参照しながら説明する。
この第14アンテナスイッチ10Nは、図38に示すように、アンテナ接続端子14と送信端子16との間に接続された2つの第1λ/4信号伝送路18aと、アンテナ接続端子14と受信端子20との間に接続された2つの第2λ/4信号伝送路18bと、各第1λ/4信号伝送路18aに対してそれぞれ並列に接続された第1スイッチ回路22aと、各第2λ/4信号伝送路18bに対してそれぞれ並列に接続された第2スイッチ回路22bとを有する。
なお、送信端子16とそれに隣接する第1λ/4信号伝送路18aとの間、受信端子20とそれに隣接する第2λ/4信号伝送路18bとの間、互いに隣接する第1λ/4信号伝送路18aと第2λ/4信号伝送路18bとの接点とアンテナ接続端子14との間に、それぞれキャパシタCa〜Ccが接続されている。このキャパシタCa〜Ccは、後述するPINダイオードをオン/オフする電流や後述するバイアス端子92を介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサで、高周波的にはショートとして働く。
第1スイッチ回路22aは、1つの第1λ/4伝送路24aと1つの第1PINダイオード28aを含む回路とが直列に接続され、且つ、第1PINダイオード28aのアノードが第1λ/4伝送路24aに接続されて構成されている。
第1PINダイオード28aを含む回路は、第1PINダイオード28aのアノードとカソード間に接続された第11インダクタL11と第11キャパシタC11の直列回路を有する。この場合、第11インダクタL11がアノード側、第11キャパシタC11がカソード側となるように接続されている。第11キャパシタC11は、後述するバイアス端子92を介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサとして働く。さらに、第1PINダイオード28aのカソードとGND(グランド)間に第12インダクタL12と第12キャパシタC12の直列回路が接続され、第12インダクタL12と第12キャパシタC12との接点に第1制御端子Tc1が接続されている。
また、第1PINダイオード28aのカソードには、他端が開放端とされたλ/4共振素子94(あるいはλ/4共振ライン)が接続されている。そのため、第1PINダイオード28aのカソード側は高周波的に接地とされ、従って、第1PINダイオード28aと第11インダクタL11及び第11キャパシタC11の直列回路とを組み合わせた回路は、第1並列共振回路26aを構成することになる。第12キャパシタC12は、第1PINダイオード28aをオン/オフする電流を阻止するためのコンデンサとして働き、第12インダクタL12は、チョークコイルとして機能する。
一方、第2スイッチ回路22bは、1つの第2λ/4伝送路24bと1つの第2PINダイオード28bを含む回路とが直列に接続され、且つ、第2PINダイオード28bのアノードが第2λ/4伝送路24bに接続されて構成されている。
第2PINダイオード28bを含む回路は、第2PINダイオード28bのアノードとカソード間に接続された第21インダクタL21と第21キャパシタC21の直列回路を有する。この場合、第21インダクタL21がアノード側、第21キャパシタC21がカソード側となるように接続されている。第21キャパシタC21は、後述するバイアス端子92を介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサとして働く。さらに、第2PINダイオード28bのカソードとGND(グランド)間に第22インダクタL22と第22キャパシタC22の直列回路が接続され、第22インダクタL22と第22キャパシタC22との接点に第2制御端子Tc2が接続されている。
また、第2PINダイオード28bのカソードには、他端が開放端とされたλ/4共振素子94(あるいはλ/4共振ライン)が接続されている。そのため、第2PINダイオード28bのカソード側は高周波的に接地とされ、従って、第2PINダイオード28bと第21インダクタL21及び第21キャパシタC21の直列回路とを組み合わせた回路は、第2並列共振回路26bを構成することになる。第22キャパシタC22は、第2PINダイオード28bをオン/オフする電流を阻止するためのコンデンサとして働き、第22インダクタL22は、チョークコイルとして機能する。
さらに、この第14アンテナスイッチ10Nにおいては、2つの第2スイッチ回路22bのうち、アンテナ接続端子14寄りの第2スイッチ回路22bにバイアス回路96が接続されている。
このバイアス回路96は、第1スイッチ回路22aの第1PINダイオード28a及び第2スイッチ回路22bの第2PINダイオード28bの各アノードに、一定のバイアス電圧Vccを印加する回路であり、この例では、第2スイッチ回路22bの第21インダクタL21と第21キャパシタC21との接点とGND(グランド)間に接続された第3インダクタL3と第3キャパシタC3の直列回路と、第3インダクタL3と第3キャパシタC3との接点に接続されたバイアス端子92とを有する。第3キャパシタC3は、バイアス端子92を介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサとして働く。また、第3インダクタL3は、バイアス端子92に供給された直流電流を第1PINダイオード28a及び第2PINダイオード28bの各アノードに供給するためのチョークコイルとして機能する。これにより、バイアス端子92に一定のバイアス電圧Vccを印加することによって、第1PINダイオード28a及び第2PINダイオード28bの各アノードは、一定のバイアス電圧Vccが印加されることになる。
そして、第1制御端子Tc1には第1制御電圧Vc1が印加され、第2制御端子Tc2には第2制御電圧Vc2が印加されるようになっている。
従って、バイアス電圧Vcc、第1制御電圧Vc1、第2制御電圧Vc2の大小関係が
0V<Vc1<Vcc<Vc2又は0V>Vc2>Vcc>Vc1
のとき、第1スイッチ回路22aがオン、第2スイッチ回路22bがオフとなる。
反対に、バイアス電圧Vcc、第1制御電圧Vc1、第2制御電圧Vc2の大小関係が
0V<Vc2<Vcc<Vc1又は0V>Vc1>Vcc>Vc2
のとき、第1スイッチ回路22aがオフ、第2スイッチ回路22bがオンとなる。
以下の説明では、第1制御電圧Vc1について、0V<Vc1<Vcc又は0V>Vcc>Vc1である場合を第1順方向電圧といい、第2制御電圧Vc2について、0V<Vc2<Vcc又は0V>Vcc>Vc2である場合を第2順方向電圧という。同様に、第1制御電圧Vc1について、0V<Vcc<Vc1又は0V>Vc1>Vccである場合を第1逆方向電圧といい、第2制御電圧Vc2について、0V<Vcc<Vc2又は0V>Vc2>Vccである場合を第2逆方向電圧という。
次に、第14アンテナスイッチ10Nの回路動作について説明する。
第1スイッチ回路22aを主体に説明すると、先ず、バイアス端子92にバイアス電圧Vccが印加されることで、第1PINダイオード28a及び第2PINダイオード28bの各アノードにバイアス電圧Vccが印加されることになる。
この状態で、第1制御端子Tc1に、第1制御電圧Vc1として第1順方向電圧が印加されることで、第1PINダイオード28aがオンとなり、そのときの第1スイッチ回路22aの等価回路は図11Aに示すようになる。
反対に、第1制御端子Tc1に、第1制御電圧Vc1として第1逆方向電圧が印加されることで、第1PINダイオードD1がオフとなり、そのときの第1スイッチ回路22aの等価回路は図11Bに示すようになる。
そして、この第14アンテナスイッチ10Nでは、該第14アンテナスイッチ10Nの中心周波数foと、寄生容量Cf、オフ抵抗Rf及びインダクタンスLsからなる並列共振回路の共振周波数を一致させるようにインダクタンスLsの値を設定してある。
ここで、オン抵抗Roは、一般に1オーム程度あるいはそれ以下であり、Ro<<2πfoLsとできるため、第1PINダイオード28aのオン時における中心周波数fo付近の等価回路は図12Aのように表すことができ、第1PINダイオード28aのオフ時における中心周波数fo付近の等価回路は図12Bのように表すことができる。
このことから、第1PINダイオード28aがオンのとき、Z(L)が1オーム程度あるいはそれ以下の低抵抗であることから、式(e)からもわかるように、第1λ/4伝送路24aの信号ライン側のインピーダンス(この場合、Z(0))は大きな値となり、理想的には開放状態となる。反対に、第1PINダイオード28aがオフのとき、Z(L)が10kオーム以上の高抵抗であることから、式(e)からもわかるように、第1λ/4伝送路24aの信号ライン側のインピーダンス(この場合、Z(0))は小さな値となり、理想的には短絡状態となる。
従って、例えば第1制御端子Tc1に、第1制御電圧Vc1として第1順方向電圧が印加されて第1PINダイオード28aがオン、第2制御端子Tc2に、第2制御電圧Vc2として第2逆方向電圧が印加されて第2PINダイオード28bがオフになると、図14に示すような等価回路となり、送信端子16のみがアンテナ接続端子14に高周波的に接続されることになる。これによって、送信端子16に供給された送信信号Saがアンテナ接続端子14を通じて送信されることになる。
上述とは反対に、第1制御端子Tc1に、第1制御電圧Vc1として第1逆方向電圧が印加されて第1PINダイオード28aがオフ、第2制御端子Tc2に、第2制御電圧Vc2として第2順方向電圧が印加されて第2PINダイオード28bがオンになると、図15に示すような等価回路となり、受信端子20のみがアンテナ接続端子14に高周波的に接続されることになる。これによって、アンテナにて受信した受信信号Sbがアンテナ接続端子14に供給され、該受信端子20から出力されることになる。
この第14アンテナスイッチ10Nでは、第1並列共振回路26aの第11インダクタL11の定数を調整して、第1PINダイオード28aのオフ時の第1並列共振回路26aの共振周波数と第14アンテナスイッチ10Nの中心周波数foとが同じになるようにしている。同様に、第2並列共振回路26bの第21インダクタL21の定数を調整して、第2PINダイオード28bのオフ時の第2並列共振回路26bの共振周波数と第14アンテナスイッチ10Nの中心周波数foとが同じになるようにしている。
従って、この第14アンテナスイッチ10Nにおいては、第1λ/4伝送路24a及び第2λ/4伝送路24bの各位相特性に誤差は発生せず、スイッチ回路のオン時の通過帯域とオフ時のアイソレーション帯域を一致させることができる。つまり、アンテナスイッチとして使用する帯域において、オン時の通過損失の最小化、オフ時のアイソレーションの最大化を適切に設定することができる。結果的に、スイッチ回路に伴う伝送信号に対する損失を低減することができると共に、スイッチ回路のオフ時の減衰量を適切に確保することができる。
さらに、この第14アンテナスイッチ10Nにおいては、バイアス電圧Vcc、第1制御電圧Vc1及び第2制御電圧Vc2として、いずれも正電圧に設定し、又は負電圧に設定することができることから、正電源と負電源の両方を使う必要がなく、単一の電源(正電源又は負電源)で済み、第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2に逆バイアスをかけることで、接合容量の小さい領域で使うことができ、また、部品点数の増加、回路構成の複雑化を招くことがない。
また、第1アンテナスイッチ10Aでは、第1PINダイオードD1及び第2PINダイオードD2のカソードに、他端が開放端とされたλ/4共振素子94(あるいはλ/4共振ライン)を接続するようにしている。このλ/4共振素子94(あるいはλ/4共振ライン)のインピーダンス変換作用により、十分低いインピーダンスが得られ、カソードを高周波的に接地状態とすることができる。
そして、この第14アンテナスイッチ10Nにおいても、第1λ/4信号伝送路18a、第2λ/4信号伝送路18b、第1λ/4伝送路24a及び第2λ/4伝送路24b並びにλ/4共振素子94(あるいはλ/4共振ライン)のうち、少なくとも1つを、例えば図2Aに示す第1複合部品54A又は図2Bに示す第2複合部品Bにて構成するようにしているため、第14アンテナスイッチN自体の小型化、並びに第14アンテナスイッチ10Nを設置したシステムの小型化を図ることができる。
なお、上述の例では、第1スイッチ回路22aに第1並列共振回路26aを設け、第2スイッチ回路22bに第2並列共振回路26bを設けるようにしたが、その他、これら第1並列共振回路26a及び第2並列共振回路26bを省略して、第1PINダイオード28aの各カソードにそれぞれ第1制御端子Tc1を接続し、第2PINダイオード28bの各カソードにそれぞれ第2制御端子Tc2を接続するようにしてもよい。この場合、構成の簡単化を図ることができる。
次に、第14アンテナスイッチ10Nの各種変形例について図39〜図45を参照しながら説明する。
すなわち、図39に示す第1変形例に係るアンテナスイッチ10Naのように、λ/4共振素子94(あるいはλ/4共振ライン)の接続に代えて、第1PINダイオード28a及び第2PINダイオード28bのカソードとGND(グランド)間にキャパシタCxを接続するようにしてもよい。
図40に示す第2変形例に係るアンテナスイッチ10Nbのように、第2アンテナスイッチ10B(図16参照)と同様に、各第1スイッチ回路22aにおいて、複数の第1PINダイオード28aをそれぞれ並列に接続し、各第2スイッチ回路22bにおいて、複数の第2PINダイオード28bをそれぞれ並列に接続するようにしてもよい。
図41に示す第3の変形例に係るアンテナスイッチ10Ncのように、第7アンテナスイッチ10G(図23参照)と同様に、第1λ/4信号伝送路18aを構成要素の1つとし、送信信号の反射波を検出する方向性結合器36を有するようにしてもよい。
図42に示す第4の変形例に係るアンテナスイッチ10Ndのように、第8アンテナスイッチ10H(図32参照)と同様に、方向性結合器36におけるλ/4線路38の第3端φ3に進行波出力端子44を接続し、第4端φ4に反射波出力端子40を接続するようにしてもよい。
図43に示す第5の変形例に係るアンテナスイッチ10Neのように、第9アンテナスイッチ10I(図33参照)と同様に、一方の第1λ/4信号伝送路18aを構成要素の1つとし、送信信号の反射波を検出する第1方向性結合器36aと、他方の第1λ/4信号伝送路18aを構成要素の1つとし、送信信号の進行波を検出する第2方向性結合器36bとを有するようにしてもよい。
図44に示す第6の変形例に係るアンテナスイッチ10Nfのように、第3アンテナスイッチ10C(図17参照)と同様に、受信端子20に近い第2スイッチ回路22bの第2PINダイオード28bに対して、受信側終端形成用抵抗RrとコンデンサCrの直列回路を並列に接続するようにしてもよい。
図45に示す第7の変形例に係るアンテナスイッチ10Ngのように、第5アンテナスイッチ10E(図20参照)と同様に、受信端子20に近い第2スイッチ回路22bの第2PINダイオード28bに対して、受信側終端形成用抵抗RrとコンデンサCrの直列回路を並列に接続し、送信端子16に近い第1スイッチ回路22aの第1PINダイオード28aに対して、送信用終端形成用抵抗RtとコンデンサCtの直列回路を並列に接続するようにしてもよい。
次に、第15の実施の形態に係るアンテナスイッチ(以下、第15アンテナスイッチ10Pと記す)について図46を参照しながら説明する。
この第15アンテナスイッチ10Pは、図46に示すように、上述した第14アンテナスイッチ10Nとほぼ同様の構成を有するが、第1PINダイオード28a及び第2PINダイオード28bのカソードにバイアス電圧Vccが印加される点で異なる。
すなわち、この第15アンテナスイッチ10Pは、送信端子16とそれに隣接する第1λ/4信号伝送路18aとの間、アンテナ接続端子14とそれに隣接する第1λ/4信号伝送路18aとの間、アンテナ接続端子14とそれに隣接する第2λ/4信号伝送路18bとの間、受信端子20とそれに隣接する第2λ/4信号伝送路18bとの間に、それぞれキャパシタCa〜Cdが接続されている。このキャパシタCa〜Cdは、後述するPINダイオードをオン/オフする電流やバイアス端子92を介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサで、高周波的にはショートとして働く。
また、2つの第1スイッチ回路22aのうち、アンテナ接続端子14寄りの第1スイッチ回路22aに第1制御回路98aが接続され、2つの第2スイッチ回路22bのうち、アンテナ接続端子14寄りの第2スイッチ回路22bに第2制御回路98bが接続されている。
第1制御回路98aは、第1スイッチ回路22aの第1PINダイオード28aの各アノードに、第1制御電圧Vc1を印加する回路であり、この例では、第1スイッチ回路22aの第11インダクタL11と第11キャパシタC11との接点とGND(グランド)間に接続された第41インダクタL41と第41キャパシタC41の直列回路と、第41インダクタL41と第41キャパシタC41との接点に接続された第1制御端子Tc1とを有する。第41キャパシタC41は、第1制御端子Tc1を介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサとして働く。また、第41インダクタL41は、第1制御端子Tc1に供給された直流電流を第1PINダイオード28aの各アノードに供給するためのチョークコイルとして機能する。これにより、第1制御端子Tc1に第1制御電圧Vc1を印加することによって、第1PINダイオード28aの各アノードは、第1制御電圧Vc1が印加されることになる。
第1PINダイオード28aのカソードには、他端が開放端とされたλ/4共振素子94(あるいはλ/4共振ライン)が接続されているので、そのインピーダンス変換作用により、第1PINダイオード28aのカソード側は高周波的に接地とされ、従って、第1PINダイオード28aと第11インダクタL11及び第11キャパシタC11の直列回路とを組み合わせた回路は、第1並列共振回路26aを構成することになる。
同様に、第2制御回路98bは、第2スイッチ回路22bの第2PINダイオード28bの各アノードに、第2制御電圧Vc2を印加する回路であり、この例では、第2スイッチ回路22bの第21インダクタL21と第21キャパシタC21との接点とGND(グランド)間に接続された第42インダクタL42と第42キャパシタC42の直列回路と、第42インダクタL42と第42キャパシタC42との接点に接続された第2制御端子Tc2とを有する。第42キャパシタC42は、第2制御端子Tc2を介して供給される直流電流を阻止するためのコンデンサとして働く。また、第42インダクタL42は、第2制御端子Tc2に供給された直流電流を第2PINダイオード28bの各アノードに供給するためのチョークコイルとして機能する。これにより、第2制御端子Tc2に第2制御電圧Vc2を印加することによって、第2PINダイオード28bの各アノードは、第2制御電圧Vc2が印加されることになる。
第2PINダイオード28bのカソードには、他端が開放端とされたλ/4共振素子94(あるいはλ/4共振ライン)が接続されているため、第2PINダイオード28bのカソード側は高周波的に接地とされ、従って、第2PINダイオード28bと第21インダクタL21及び第21キャパシタC21の直列回路とを組み合わせた回路は、第2並列共振回路26bを構成することになる。
一方、第1スイッチ回路22aの第12インダクタL12と第12キャパシタC12との接点に接続される端子、第2スイッチ回路22bの第22インダクタL22と第22キャパシタC22との接点に接続される端子はそれぞれバイアス端子92となり、該バイアス端子92にバイアス電圧Vccが印加されることによって、第1PINダイオード28a及び第2PINダイオード28bの各カソードにバイアス電圧Vccが印加されることになる。
この第15アンテナスイッチ10Pにおいては、第1PINダイオード28a及び第2PINダイオード28bの各カソードにバイアス電圧Vccが印加され、第1PINダイオード28aの各アノードに第1制御電圧Vc1が印加され、第2PINダイオード28bの各アノードに第2制御電圧Vc2が印加されることから、バイアス電圧Vcc、第1制御電圧Vc1、第2制御電圧Vc2の大小関係が
0V<Vc2<Vcc<Vc1又は0V>Vc1>Vcc>Vc2
のとき、第1スイッチ回路22aがオン、第2スイッチ回路22bがオフとなる。
反対に、バイアス電圧Vcc、第1制御電圧Vc1、第2制御電圧Vc2の大小関係が
0V<Vc1<Vcc<Vc2又は0V>Vc2>Vcc>Vc1
のとき、第1スイッチ回路22aがオフ、第2スイッチ回路22bがオンとなる。
つまり、第1制御電圧Vc1について、0V<Vcc<Vc1又は0V>Vc1>Vccである場合に第1順方向電圧となり、第2制御電圧Vc2について、0V<Vcc<Vc2又は0V>Vc2>Vccである場合に第2順方向電圧となる。同様に、第1制御電圧Vc1について、0V<Vc1<Vcc又は0V>Vcc>Vc1である場合に第1逆方向電圧となり、第2制御電圧Vc2について、0V<Vc2<Vcc又は0V>Vcc>Vc2である場合に第2逆方向電圧となる。
この第15アンテナスイッチ10Pにおいても、第14アンテナスイッチ10Nと同様に、アンテナスイッチとして使用する帯域において、オン時の通過損失の最小化、オフ時のアイソレーションの最大化を適切に設定することができる。結果的に、スイッチ回路に伴う伝送信号に対する損失を低減することができると共に、スイッチ回路のオフ時の減衰量を適切に確保することができる。
また、バイアス電圧Vcc、第1制御電圧Vc1及び第2制御電圧Vc2として、いずれも正電圧に設定し、又は負電圧に設定することができることから、正電源と負電源の両方を使う必要がなく、単一の電源(正電源又は負電源)で済み、PINダイオードに逆バイアスをかけることで、接合容量の小さい領域で使うことができ、また、部品点数の増加、回路構成の複雑化を招くことがなく、しかも、スイッチ切換速度が低下することがない。
そして、この第15アンテナスイッチ10Pにおいても、第1λ/4信号伝送路18a、第2λ/4信号伝送路18b、第1λ/4伝送路24a及び第2λ/4伝送路24b並びにλ/4共振素子94(あるいはλ/4共振ライン)のうち、少なくとも1つを、例えば図2Aに示す第1複合部品54A又は図2Bに示す第2複合部品54Bにて構成するようにしているため、第15アンテナスイッチP自体の小型化、並びに第15アンテナスイッチ10Pを設置したシステムの小型化を図ることができる。
なお、第15アンテナスイッチ10Pにおいても、上述した第1変形例に係るアンテナスイッチ10Na〜第7変形例に係るアンテナスイッチ10Ngと同様の構成を採用することができる。
上述した第1アンテナスイッチ10A〜第15アンテナスイッチ10P(各種変形例を含む)においては、動作周波数帯の中心周波数foを主体に説明したが、実際には、動作周波数帯域に含まれる各周波数で、上述した効果があることはもちろんである。
なお、本発明に係る高周波スイッチは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。