JP2005124038A - 分布結合形方向性結合器 - Google Patents

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Abstract

【課題】結合度および方向性を向上した分布結合形方向性結合器を提供する。
【解決手段】方向性結合器とLPFを兼用するためにその対称性が崩れた分布結合形方向性結合器において、副線路SLの両終端インピーダンスZg、ZLの少なくともいずれかを調整することにより、アンテナからの反射高周波信号RaRFが副線路SLのモニタ側に漏洩した漏洩高周波信号LeRFを最小にすることで課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、分布結合形の方向性結合器に関するものである。
携帯電話等の移動無線機や周回衛星を使用する衛星電話機などの無線通信装置には、送受信機とアンテナを接続する方向性結合器がその整合性のモニタあるいは送信出力の安定化等のために方向性結合器が多用されている。これらの無線通信装置に対する軽薄短小あるいはコスト低減のユーザニーズに応えるために、方向性結合器に対する多機能化並びに小形化の要求が高まっている。このような小形化/低コスト化のために特許文献1に示すように、送信機から出力された高周波送信信号の高調波を除去して歪の少ない高周波送信信号をアンテナから送信し、かつ高周波送信信号のレベルをモニタして送信機に帰還しその送信出力一定に保つために方向性結合器とLPF(低域通過フィルタ)とを兼用したフィルタ兼用方向性結合器が特許文献2に示すように提案されている。
特開平10−290108号公報
しかし、このような方向性結合器においては、線間結合した2つの分布定数線路の線路インピーダンスが主線路側と副線路側とで異なる、あるいは主線路の両端に接続されたフィルタ構成回路の影響で結合線路インピーダンスが乱れる(部分的に変化する)などのいわゆる方向性結合器の4端子における対称性が崩れるという欠点を生じる。また方向性結合器のサイズを小さくするため、線間結合した分布定数線路を直線線路からメアンダ線路のような折り返し形状の線路にすると主線路と副線路との線間結合が部分的に変化して上記の対称性がやはり崩れるという欠点があった。さらに、副線路側の両端の終端インピーダンスを構成する回路素子がセラミック積層体基板の形状制限等から周囲に存在する他の回路素子・伝送線路等と十分な距離を保つことができずに両者の電磁的結合を生じて、実際上にて設計条件の終端インピーダンスからずれる可能性もある。このように様々な原因により方向性結合器の対称性が崩れると副線路の結合出力、(例えばモニタ側の第3端子に生じるモニタ高周波信号)が所期値から変化したり、その反対側端子に生じる漏洩出力(第4端子に生じる漏洩高周波信号)が増大したりする問題が発生する。本発明の課題は、この結合出力を適切にし、かつ漏洩出力を解消する性能の優れた分布結合形方向性結合器を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記課題を解決するために、線間結合する2つの分布定数線路を用いた分布結合形方向性結合器において、
第1分布定数線路の第1端子に第1特性インピーダンスの第1伝送線路を接続し、第1端子の反対側にある第2端子に第1特性インピーダンスを有する第2伝送線路を接続した主線路と、
第1分布定数線路に対向して配置された第2分布定数線路の第1端子側にある第3端子に第2終端インピーダンスを接続し、第3端子の反対側にある第4端子に第3終端インピーダンスを接続した副線路とで構成され、
第1特性インピーダンスが2つの分布定数線路の有する第4結合線路インピーダンスに整合するように設定されると共に、主線路の第1端子に入力した高周波信号が副線路の第3端子に伝達される結合度が変化し、かつ副線路の第4端子に漏洩する漏洩高周波信号が減少するように、2つの第2終端インピーダンスと第3終端インピーダンスとの少なくともいずれかがインピーダンス調整部を有することを特徴とする。
上記本発明の分布結合形方向性結合器は、主線路の両端に接続される第1伝送線路と第2伝送線路の両伝送線路の特性インピーダンスを主線路と副線路をなす2つの線間結合した分布定数線路の第4結合線路インピーダンスに整合する。併せて副線路に接続された第2終端インピーダンスと第3終端インピーダンスの少なくとも何れか一方を調整することにより、分布結合形方向性結合器の対称性が崩れた等の原因に伴う副線路の結合度および方向性を適正化し、副線路の漏洩高周波信号を減少させるようにする。送信機とアンテナの間に接続された分布結合形方向性結合器が、送信機からアンテナへの送信出力である送信高周波信号を適切にモニタし、そのモニタ高周波信号を送信機に帰還して送信出力を所定レベルになるように出力制御する。このとき、アンテナで反射した反射高周波信号(あるいは近接した交信対象無線通信装置が送信した電波をこのアンテナで受信した受信高周波信号)が、副線路のモニタ側に漏洩することを防止して送信機の出力制御を安定にする。即ち、主線路から副線路の反射検出側(例えば第3端子)に入力した反射検出高周波信号がモニタ側(例えば第4端子)に漏洩し、その漏洩高周波信号が高周波モニタ信号に重畳して送信機の出力制御を変動させることを解消する。このように副線路の終端インピーダンスを調整して、主線路と副線路の結合度および方向性を最適化することにより、送信機の出力制御の性能を向上させることができる。
また本発明の分布結合形方向性結合器は、第1特性インピーダンスをZ0とし、第4結合線路インピーダンスが2つの分布定数線路の偶モード結合における偶モード線路インピーダンスZ0 eと、分布定数線路の奇モード結合における奇モード線路インピーダンスZ0 oとで表されるとき、第1特性インピーダンスZ0が偶モード線路インピーダンスZ0 eと奇モード線路インピーダンスZ0 oとの相乗平均に等しく設定され、かつ第2終端インピーダンスをZg、第3終端インピーダンスをZLとし、この2つの終端インピーダンスZg、ZLの少なくともいずれかを調整してZgZL=Z0 eZ0 oの関係を満たすことにより副線路の第4端子に生じる漏洩高周波信号を最小とするように構成することもできる。
このように構成すると、主線路の両端に接続される第1伝送線路と第2伝送線路の両伝送線路の特性インピーダンスZ0を主線路と副線路とが形成する偶モード結合における偶モード線路インピーダンスZ0 eと奇モード結合における奇モード線路インピーダンスZ0 oとの相乗平均に等しく[Z0=(Z0 eZ0 o)1/2------(50)]するので、両伝送線路の特性インピーダンスを主線路と副線路をなす第4結合線路インピーダンスに精確に整合する。その結果、副線路上のモニタ高周波信号を安定かつ最適レベルにすることができる。また、副線路の第3端子に接続された第2終端インピーダンスZgとその第4端子に接続された第3終端インピーダンスZLとのいずれか一方を調整して、副線路のモニタ側(例えば第4端子)に主線路から漏洩する漏洩高周波信号を最小値の零にすることができる。これは、その方向性D{アンテナからの反射高周波信号を第3端子に結合した反射検出高周波信号の電力をP3とし、それが第4端子に生じた漏洩高周波信号の電力をP4=0としたときに方向性はD=10log10(P4/P3)------(51)で定義される}をD=−∞として、その方向性を最良にする。このことは漏洩高周波信号が零となり、モニタ高周波信号に対する反射高周波信号の影響を解消して送信機の送信制御を安定・最適にすることができる。この分布結合形方向性結合器の対称性が崩れた[偶モード線路インピーダンスZ0 e、奇モード線路インピーダンスZ0 oが目標値/設定値から変化して前記(50)が成立しない]場合においても、具体的には主線路の両端に各導体電極を接続して接地コンデンサをそれぞれに形成してこの主線路をLPF(π形の低域フィルタ)に兼用する場合等、前記の2つの終端インピーダンスZg、ZLの何れか一方または両方を調整して漏洩高周波信号を零にする[詳細は後述の(433)参照]ことができる。
また本発明の分布結合形方向性結合器は、複数の誘電体層と複数の導体層を交互に積層し、その第1主表面である導体層と第2主表面である導体層との少なくともいずれかがグランド面導体を形成し、かつ誘電体層を厚さ方向に貫通するビア導体、または積層方向に隣接する導体層上に形成された導体パターン間の電磁結合によって、複数の導体層を電気的に接続する積層体基板を備え、
第1分布定数線路および第2分布定数線路は同一の導体層上に形成された隣接する2つの導体パターンまたは、厚さ方向に隣接する2つの導体層上にそれぞれ形成された導体パターンから構成され、それぞれが主線路、副線路とされるように構成することもできる。このようにすると主線路と副線路を構成する2つの線間結合した分布定数線路はセラミックを誘電体(比誘電率εr=5〜20)とするセラミック積層体基板上にストリップラインまたはマイクロストリップラインとして形成される。その結果、主線路と副線路間の電磁結合を安定向上させると共に、その線路波長λgが(λ:自由空間の波長)略λg≒λ/(εr)1/2------(52)と小さくなり、この分布結合形方向性結合器を小形に構成することができる。併せて、温度・湿度・機械的振動/衝撃等の耐環境性能において高信頼性を得ることができる。また、このセラミック積層体基板の第1主表面(最表面)および第2主表面(最裏面)をGND(接地)導体面で覆うこと、可能であればさらにその側周面全体を金属導体膜で覆うことで、分布結合形方向性結合器からの不要輻射並びに周辺回路とこの分布結合形方向性結合器との電磁干渉等のEMC(Electromagnetic Compatibility)性能を向上させることができる。
また本発明の分布結合形方向性結合器は、主線路および副線路がその線路長が共に1/4波長である2つのエッジ結合ストリップラインで構成してもよい。
このようにすると、同一面上に平行する2つのストリップラインの中心導体において、両中心導体の左右方向の間隔Sを変えることにより偶モード線路インピーダンスZ0 eおよび奇モード線路インピーダンスZ0 oを自由かつ大幅に変化(図11参照)することが可能である。また、その線路長を1/4波長にしているので主線路と副線路間の結合度βが電気長θ[後述の(57)参照]の変化に対して最大になる。第2終端インピーダンスZgと第3終端インピーダンスZLが共に第1伝送線路の特性インピーダンスZ0に等しくなる、即ち方向性結合器が対称性をなす場合には、その結合度βの最大値をCとすると、C=(Z0 e−Z0 o)/(Z0 e+Z0 o)------(53)で[後述の(482)参照]与えられる。このため、その結合度を目的に合わせて自由且つ高精度に設定することができる。特にストリップラインは中央導体の上下をグランド面導体で覆っているので周辺回路との電磁干渉に対して主線路と副線路間の結合は極めて安定であり、かつEMC性能に優れている。
また本発明の分布結合形方向性結合器は、主線路および副線路がその線路長が共に1/4波長である2つのブロードサイド結合ストリップラインで構成してもよい。このようにすると、同一中心線上にあって上下に並行する2つのストリップラインの中心導体において、両中心導体の上下方向の間隔Sを変えることにより偶モード線路インピーダンスZ0 eおよび奇モード線路インピーダンスZ0 oを自由かつ大幅に変化(図12参照)することが可能である。また、その線路長を1/4波長にしているので主線路と副線路間の結合度βが電気長θの変化に対して最大最大になる。第2終端インピーダンスZgと第3終端インピーダンスZLが共に第1伝送線路の特性インピーダンスZ0に等しくなる、即ち方向性結合器が対称性をなす場合には、その結合度βの最大値をCとすると、C=(Z0 e−Z0 o)/(Z0 e+Z0 o)------(53)で与えられる。このため、その結合度を目的に合わせて自由且つ高精度に設定することができる。特にストリップラインは中央導体の上下をグランド面導体で覆っているので周辺回路との電磁干渉に対して主線路と副線路間の結合は極めて安定であり、かつEMC性能に優れている。
また本発明の分布結合形方向性結合器は、導体層上に形成された第1分布定数線路が主線路およびフィルタの構成要素であるインダクタとを兼用し、第1分布定数線路の第1端子および前記第2端子にはグランド面導体との間にそれぞれにキャパシタを形成する電極導体が接続されてπ形のローパスフィルタを構成し、
副線路は導体層に対して厚さ方向に隣接した別導体層上に第2分布定数線路として形成され、
第2分布定数線路の第3端子に接続された終端インピーダンスZgは、第3端子に導通する導体層上に形成された導体電極とグランド面導体との間で形成されるキャパシタと、第3端子に導通するビア導体または第3端子に導通する導体層上に形成された導体パターンからなるインダクタと、第3端子とグランド面導体の間に接続された抵抗とから構成されるようにしてもよい。
このようにすると、送信機出力の高調波歪を除去するために、方向性結合器の主線路をインダクタンスに兼用してπ形LPF(Low Pass Filter:ローパスフィルタ:低域通過フィルタともいう)を形成し、このLPFと方向性結合器を一体的に構成するセラミック積層体基板を小形・廉価にすることができる。さらに、第3端子の第2終端インピーダンスZgを同時にそのセラミック積層体基板に一体成形することができて、分布結合形方向性結合器の結合度ならびに方向性を安定且つ高精度に調整することが可能である。
また本発明の分布結合形方向性結合器は、2つの終端インピーダンスZg、ZLを偶モード線路インピーダンスZ0 eと奇モード線路インピーダンスZ0 oに対して、|ZgZL−Z0 eZ0 o|/{(Z0 e+Z0 o)Zg}≦0.03------(54)の関係を満たすように構成することが好ましい。このようにするとその方向性DはD=10log10(P4/P3)=20log10|V4/V3|=20log10[|(ZgZL−Z0 eZ0 o)|/{(Z0 e+Z0 o)Zg}]-----(55)[詳細は後述の(453)参照]で与えられるので、量産における製品の特性の分散[印刷・加工・焼成工程等における各回路要素のバラツキ]を考慮して、(54)の条件を(55)に適用することでD≦20log10(0.03)≒−30(dB)の関係式が得られる。その結果、方向性Dが-30dB以下の優れた性能を有する本発明の分布結合形方向性結合器を、その量産製品に対して達成することが可能である。
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の分布結合形方向性結合器の最良形態を説明する。本発明の分布結合形方向性結合器(以後、本方向性結合器を「ACDDC」という、ACDDC:Adjustable Coupled Distribution Directional Coupler)1は図1に示すように、導体層CL1〜CL4と比誘電率εrを有する誘電体層DL1〜DL3とが交互に積層されたセラミック積層体基板10で構成される。各誘電体層DL(DL1、DL2、DL3)は比誘電率εrを有する誘電体材料で形成され、誘電体材料にはアルミナ含有量を98%以上としたアルミナ質セラミックス、ムライト質セラミックス、窒化アルミニウムセラミックス、窒化珪素セラミックス、炭化珪素セラミックスおよびガラスセラミックス等、高周波領域において誘電損失が小さい材質が適用される。また、各導体層CL(CL1、CL2、CL3、CL4)には分布定数線路やコンデンサの電極、あるいはグランド面が金属導体で形成され、金属導体の材質としては、例えばセラミック誘電体層の材質としてガラスセラミックスを用いる場合には、Ag、Au、Cuのいずれかを主成分とするものを使用することができる(「主成分」とは、最も質量含有率の高い成分のことである)。具体的には、Ag系[Ag単体、Ag−金属酸化物(Mn、V、Bi、Al、Si、Cu等の酸化物)、Ag−ガラス添加、Ag−Pd、Ag−Pt、Ag−Rh等]、Au系(Au単体、Au−金属酸化物、Au−Pd、Au−Pt、Au−Rh等)、Cu系(Cu単体、Cu−金属酸化物、Cu−Pd、Cu−Pt、Cu−Rh等)等の低抵抗材料から選ばれる導体を用いる。
以下、本発明のACDDC1を構成する上記セラミック積層体基板10の製造方法について概説する。まず、誘電体層DLとなるべきセラミックグリーンシートを用意する。該セラミックグリーンシートは、セラミック誘電体層の原料セラミック粉末(例えば、ガラスセラミック粉末の場合、ホウケイ酸ガラス粉末とアルミナ等のセラミックフィラー粉末との混合粉末)に溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、ブロムクロロメタン、エタノール、ブタノール、プロパノール、トルエン、キシレンなど)、結合剤[アクリル系樹脂(例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート)、セルロースアセテートブチレート、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなど]、可塑剤(ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、ジメチルフタレート、フタル酸エステル、ポリエチレングリコール誘導体、トリクレゾールホスフェートなど)、解膠剤[脂肪酸(グリセリントリオレートなど)、界面活性剤(ベンゼンスルホン酸など)、湿潤剤(アルキルアリルポリエーテルアルコール、ポチエチレングリコールエチルエーテル、ニチルフェニルグリコール、ポリオキシエチレンエステルなど]などの添加剤を配合して混練し、ドクターブレード法等によりシート状に成形したものである。
そして、このセラミックグリーンシート上に導体層CL(接地導体GNDを含む)である導体パターンあるいは電極導体を金属粉末を使用して所定の形状に形成する。この金属粉末形状はCuまたはAgを主成分とする金属粉末のペーストを用いて公知のスクリーン印刷法により形成される。金属粉末のペーストは、金属粉末に、エチルセルロース等の有機バインダと、ブチルカルビトール等の有機溶剤を適度な粘度が得られるように配合・調整したものである。導体層の金属粉末形状を形成したら、その上に別のセラミックグリーンシートを重ね、さらに金属粉末形状印刷/セラミックグリーンシート積層の工程を繰り返し、セラミック積層体基板10となるべきグリーン積層体を得る。なお、導体層間を接続するビアを形成する場合は、セラミックグリーンシートのビア形成位置にドリル等を用いて穿孔しておき、ここに金属ペーストを充填するようにする。上記のグリーン積層体は、個々のセラミック積層体基板製品(本発明のACDDC1)の導体層金属粉末形状が所定配置・配列にて連続的に複数形成されたものであり、これをカッターを用いて切断線に沿って切断・分離することにより、各々個別にセラミック積層体10となるべき分離グリーン積層体が得られる。これを焼成することにより、図1に示すような、セラミック積層体基板10、即ちACDDC1が得られる。
次にACDDC1の最良実施形態1の構成および作用について図1の構成並びに図2の等価回路を参照しながら、特に各導体層CL1、CL2、CL3上に形成される導体パターン及び導体電極の形状を中心に、その構成と等価回路を対比させて順番に説明する。セラミック積層体基板10の第1主表面(最上面)MS1となる第1導体層CL1にはその大半を覆う接地導体GND(グランド面導体)が形成され、また第2主表面(最下面)MS2となる第4導体層CL4にはその全面を覆う接地導体GNDが形成されている。これによって、これらの導体層CL1とCL4は、ACDDC1が扱う高周波信号に対する接地面GNDとして働く。第3導体層CL3にはACDDC1の主線路MLとなる分布定数線路DCL1が形成されその両端には、送信機出力の送信高周波信号の高調波歪を除去するLPF(Low Pass Filter)をこの主線路ML上に構成するために、接地コンデンサCA、CBのそれぞれの電極導体ME1AとME2Aが形成されている。なお主線路MLの両側には線路がそれぞれに形成され、その線路の1つは送信機に導通する第2伝送線路に接続する第2端子T2を有し、他の線路はアンテナに導通する第1伝送線路に接続する第1端子T1を有する。上記電極導体ME1AとME2Aはそれに対向する第4導体層CL4の接地導体GNDおよび、その間に挟まれた誘電体層DL3によってそれぞれの接地コンデンサCA、CBを構成する。また第1伝送線路、第2伝送線路の第1特性インピーダンスは共にZ0になっている。
第2導体層CL2には分布定数線路DCL1に対向する位置に、分布定数線路DCL2が形成されACDDC1の副線路SLとして動作する。この副線路SLの両側には同様に線路がそれぞれに形成され、その線路の1つはアンテナからの反射波を検出する第3端子T3を有し、他の線路は送信機に、その送信出力の送信高周波信号をモニタしたモニタ高周波信号を帰還する第4端子T4を有する。なおこのモニタ高周波信号を受ける送信機側の入力インピーダンス、それを伝送する線路の特性インピーダンス等で定まる第4端子T4の第3終端インピーダンスをZLとする。この第3端子T3に導通する接地コンデンサCgの電極導体ME3Aが形成され、さらに第3端子T3と第1導体層CL1上に形成されたランドLA1とを導通するビア導体Viaが形成されている。この電極導体ME3Aとそれに対向する第1導体層CL1の接地導体GNDおよび、その間に挟まる誘電体層DL1によって接地コンデンサCgが構成される。第1導体層上のランドLA1と接地導体GNDの間には、負荷抵抗Rgをなすチップ抵抗ChRが接続され、さらにインダクタLgを形成する導体パターンMPLが接続されている。本ACDDC1を適用する無線通信装置の機種、新旧等によっては、アンテナからの反射波を検出する第3端子T3が使用されなくなっており、ACDDC1の結合度、方向性などの特性調整あるいはその最適化[後述の(409)、(453)を参照]を目的としてその第2終端インピーダンスZgを、これらの抵抗Rg、インダクタンスLgおよび接地コンデンサCgで構成する。具体的には第2終端インピーダンスZgは、1/Zg=(1/Rg)+jωCg+(1/jωLg)------(56)で表される。なお、第2終端インピーダンスZgは、インダクタンスLgとコンデンサCgを並列接続する代わりに直列接続した等価回路構成としてもよい。また主線路MLとして機能する分布定数線路DCL1および副線路SLとして機能する分布定数線路DCL2は後述のブロードサイド結合ストリップ線路を構成し、第4結合線路インピーダンスはZDC、線路長はle、電気長はθになっている。ここで電気長θはθ=2πle/λg、(但しλg:線路波長)------(57)で定まる。この主線路MLおよび副線路SLの線路長leをle=λg/4に選んで、1/4波長線路として構成し、主線路MLと副線路SL間の結合度βを最大に設定することも可能である。また、最良実施形態1では主線路MLと副線路SLの両分布定数線路の中心導体の形状をメアンダ(Meander)等の折り返し形状にして分布結合形方向性結合器の形状を小形にしているが、中心導体を直線形状にして方向性結合器の対称性を向上することもできる。
次にACDDC1の最良実施形態2について、図3の構成並びに図4の等価回路を参照しながら、その構成と機能について説明する。なお説明は前記の最良実施形態と同様な部分の説明は省略し、相違点を中心に行う。副線路SLの第3端子T3に導通する第3の分布定数線路DCLgが導体層CL2上に形成され、その終端はビア導体ViBによって第1導体層CL1の接地導体GNDに短絡される。この分布定数線路DCLgは線路長lg、特性インピーダンスZCのストリップラインとして構成される。また第3端子T3はビア導体ViAを導通して第1導体層CL1上のランドLA2に導通し、抵抗Rgのチップ抵抗ChRを介して接地される。このように、第2終端インピーダンスZgは終端を短絡した分布定数線路DCLgと並列抵抗Rgとで構成され、抵抗値Rgおよび分布定数線路DCLg(特性インピーダンスZC、線路長lg)を設定することでACDDC1の特性を最適化するインピーダンスに調整[後述の(409)、(453)を参照]することができる。ちなみに、分布定数線路DCLgのインピーダンスZGはZG=jZCtanθ=jZCtan(2πlg/λGC)、(但し、λGC:分布定数線路DCLgの線路波長)------(58)で定まる。よって第2終端インピーダンスZgは、1/Zg=(1/Rg)+(1/ZG)------(59)と与えられる。なお分布定数線路DCLgの終端は短絡せずに開放してもよい、この場合は(58)のjtanθ→−jcotθに置き換えるとZgが得られる。
ここで前述の最良実施形態1および最良実施形態2の主線路MLが兼用するLPFの構成と特性について簡単に説明する。図2または図4の等価回路において、主線路MLがなすインダクタンスLMとその両端の接地コンデンサCA、CBとでπ形LPFを構成し、送信機から出力された送信高周波信号TxRFの基本波を通過させ、その高調波を通過阻止、即ち除去して高調波歪の無い送信出力を第1端子T1からアンテナに供給する。なお、主線路MLおよび副線路SLの線路長leをle=λg/4に選んで、1/4波長線路として構成し、主線路MLと副線路SL間の結合度βを最大に設定することも可能である。
以下本発明のACDDC1の開発の過程で行った高周波回路解析の結果に基づいて、ACDDC1の動作と特性の要点を順次に説明し、その特徴を客観的・定量的に明らかにする。最初に、図5を用いて本発明のACDDC1の基本構成と接続方法、また解析に必要な回路条件および各部の信号名称を簡単に説明する。
分布結合形方向性結合器ACDDCは主線路MLをなす第1分布定数線路DCL1と、副線路をなす第2分布定数線路DCL2で構成され、主線路MLの第1端子T1には第1特性インピーダンスZ0を有し、アンテナAntに導通する第1伝送線路TrL1が接続され、第2端子T2には同一の第1特性インピーダンスZ0を有し、送信機Txに導通する第2伝送線路TrL2が接続されている。副線路SLの第3端子T3には第2終端インピーダンスZgが、第4端子T4には第3終端インピーダンスZLがそれぞれ接続されている。送信機Txから第2伝送線路TrL2を介して送信出力の送信高周波信号TxRFが主線路MLの第2端子T2に給電され、主線路MLを通過した送信高周波信号TxRFは第1伝送線路TrL1を介してアンテナAntに伝送されてその一部がアンテナAntで反射する。このアンテナAntからの反射波である反射高周波信号RaRFが主線路MLの第1端子T1に入力し、副線路SLに結合して反射検出高周波信号RdRFを生じる。一方、副線路SLの第4端子T4には、主線路MLの第2端子T2に入力した送信高周波信号TxRFが、主線路MLと副線路SL間で結合したモニタ高周波信号MnRFが生じる。
しかしながら、主線路MLと副線路SLがなす方向性結合器の対称性が崩れた(この対称性が崩れることを以後「対称性の変形・偏差」ともいう、例えば主線路MLの両端に接地コンデンサCA、CBが接続される等の要因に伴って、4つの端子、T1、T2、T3、T4の何れかがその終端インピーダンスと不整合になること等を表す)ときに、反射高周波信号RaRFの一部が主線路MLから副線路SLの第4端子T4に漏洩してモニタ高周波信号MnRFに重なって漏洩高周波信号LeRFが同時に生じる。ここで第3終端インピーダンスZLはモニタ高周波信号MnRFに対する、送信機Txの出力制御回路の入力インピーダンスおよびモニタ高周波信号MnRFを送信機Txに伝送する伝送線路の特性インピーダンスZm、線路長lmなどで定まる。このモニタ高周波信号MnRFはACDDC1の第4端子T4から送信機Txの自動利得制御回路Pcntなどに入力されて(以後、この入力を「帰還」ともいう)送信出力を所定レベルに保持する出力制御がなされる。しかし,前述のように何らかの要因で方向性結合器の対称性に変形・偏差を生じた場合には、モニタ高周波信号MnRFに混じって漏洩高周波信号LeRFが送信機Txに帰還されると、送信機Txの出力制御の安定性が低下する等の問題を生じる場合がある。
そこで本発明の分布結合形方向性結合器ACDDC1では副線路SLの第4端子T4に漏洩高周波信号LeRFが発生することを防止するために、副線路SLの第3端子T3の第2終端インピーダンスZgを調整(回路定数を最適化)してZgZL=Z0 eZ0 o------(60)(第4結合線路インピーダンスZDCを構成する偶モード線路インピーダンスZ0 eと奇モード線路インピーダンスZ0 oに対して)の関係を成立させ、漏洩高周波信号LeRFを零にすることが出来る[後述の(433)を参照]。
次に4端子の各終端インピーダンス[第1端子T1の終端インピーダンスZ0(第1伝送線路TrL1の特性インピーダンス)、第2端子T2の終端インピーダンスZ0(第2伝送線路TrL2の特性インピーダンス)、第3端子T3の第2終端インピーダンスZg、第4端子T4の第3終端インピーダンスZL]と、4端子の各入出力信号(第1端子T1の反射高周波信号RaRF、第2端子T2の送信高周波信号TxRF、第3端子T3の反射検出高周波信号RdRF、第4端子T4のモニタ高周波信号MnRF)と、主線路MLと副線路SLのなす第4結合線路インピーダンスZDC(偶モード線路インピーダンスZ0 eと奇モード線路インピーダンスZ0 oで構成される)およびその線路長le(電気長θ)の関係を導き、分布結合形方向性結合器の結合度β、方向性D等の特性を定量的に表す。先ず、前述の図5の分布結合形方向性結合器の電気的条件を図6のように纏める。以後、第1端子T1は端子1(四角内に数字1を表示)、第2端子T2は端子2(四角内に数字2を表示)、第3端子T3は端子3(四角内に数字3を表示)、そして第4端子T4は端子4(四角内に数字4を表示)で表す。ここでは反射高周波信号RaRFを2Vで表して副線路SLの第3端子T3に生じる反射検出高周波信号RdRFの電圧V3並びに第4端子T4に生じる漏洩高周波信号LeRFの電圧V4を求めることにする。送信機Tx出力の送信高周波信号TxRFに対する場合も(第4端子T4におけるモニタ高周波信号MnRFを求める場合)全く同様にして導かれる。即ち、方向性結合器は基本的に主線路ML、副線路SLの左右の端子(第1端子T1と第2端子T2、第3端子T3と第4端子T4)に対して動作・特性は全く対称性である。4つの端子の各部の電流(I1、I2、I3、I4),電圧(V1、V2、V3、V4)および入出力インピーダンス(Zi1、Zi2、Zi3、Zi4)は関係式(1)〜(10)で表せる。
また分布結合形方向性結合器の電流,電圧の関係は、図7に示すように主線路MLと副線路SLを流れる電流が同相[(101)、(102)参照]になる偶モード(Even Mode)と、図8に示すように主線路MLと副線路SLを流れる電流が逆相[(201)、(202)参照、副線路SLの電圧信号源2の極性が反転]になる奇モード(Odd Mode)に分けられ、各モードにおける電流および入力インピーダンスはそれぞれ(101)から(104)および(201)から(204)の関係式で表せる。次に副線路SLの第4端子T4に生じる漏洩高周波信号LeRFの電圧V4を導く手順を図9と図10を用いて簡単に説明する。ここで、各部の電流、電圧、インピーダンスを偶モード、奇モードを併記してZe,o、Ie,o、Ve,oのように表すと図9の[A]ように記載される。いま、4端子網の入出力端の電流、電圧をKパラメータ[A B C D]で表すと図9の[B]に示すように(301)から(305)の関係式で表すことが出来る。[B]における端子1−1´と端子2−2´は[A]における端子3−1と端子4−2に相当する。図10の[C]において副線路SL側の回路をKパラメータで表すと、Kパラメータの4つの定数A、B、C、Dは(311)から(314)で与えられ、端子3の電流I3 e,o、電圧V3 e,o(反射検出高周波信号RdRF)と端子4の電流I4 e,o、電圧V4 e,o(漏洩高周波信号LeRF)は(315)のように与えられる。先ず、端子1(即ち図6の第1端子T1)における入力インピーダンスZi1は次のように導かれる。
その入力インピーダンスZi1が終端インピーダンスZ0に等しくなるための条件としてZ0=(Z0 eZ0 o)1/2------(218)が求まる。次に端子3における電圧V3(反射検出高周波信号RdRF)を主線路MLの端子1における入射波の電圧をV(反射高周波信号RaRF)として導く。
この電圧V3は、V3=V(Zi3 e-Vi3 o)Zg/{(Zg+Zi3 e)(Zg+Zi3 o)}------(408)で与えられるので主線路MLと副線路SLの間の結合度βは、β=(Zi3 e-Vi3 o)Zg/{(Zg+Zi3 e)(Zg+Zi3 o)}------(409)と求まる。この(409)から、結合度βはZg≪Zi3 e、Zi3 o------(410)の近似条件の下において、端子3(第3端子T3)の終端インピーダンスZgに略比例することが分かる。このことは、本発明の分布結合形方向性結合器ACDDC1は第2終端インピーダンスZgを調整することにより、主線路MLと副線路SLの間の結合度βを自由に変化させる、即ち最適値に設定できる大きな特徴を有していることを示す。次に端子4(モニタ高周波信号MnRFを発生する第4端子T4)における漏洩高周波信号LeRFであるV4を導く。
漏洩高周波信号LeRFであるV4は、V4=jV{(Z0 e−Z0 o)(ZgZL−Z0 eZ0 o)ZLsinθ}/{(Zg+Zi3 e)(Zg+Zi3 o)(Z0 e+jZLtanθ)(Z0 o+jZLtanθ)cos2θ}------(433)と求まる。この(433)の式は、ZgZL=Z0 eZ0 o------(434)が成立するときは常にV4=0にできることを示す。このことは、分布結合形方向性結合器に前述の対称性の変形・偏差(対称性が崩れる)が生じた[この場合には、第4結合線路インピーダンスZDCを構成する偶モード線路インピーダンスZ0 eと奇モード線路インピーダンスZ0 oが設定値から変化する]場合に対しても、また端子4の終端インピーダンスZLが副線路SLに対して不整合になった場合においても、端子3の第2終端インピーダンスZgを調整することによって、本発明の分布結合形方向性結合器ACDDC1では漏洩高周波信号LeRFであるV4をいつでも零(または最小)に出来ることを示す。これは、本発明の最大・最良の特徴である。
また、主線路MLと副線路SLの線路長leが1/4波長に等しく、即ち両線路の電気長θが、θ=π/2------(440)のときに、tanθ→∞となり、結合度βが最大となる場合のV3とV4の値が、(451)と(452)に求められている。この場合における方向性結合器の方向性Dは、D=10log10(P4/P3)=20og10(|V4|/|V3|)=20log10{|ZgZL−Z0 eZ0 o|/[(Z0 e+Z0 o)Zg]}------(453)と与えられる。この(453)の式は、端子3の第2終端インピーダンスZgを調整することによって、本発明の分布結合形方向性結合器ACDDC1では、方向性Dを適切な値に設定できることを表す。これもまた、本発明の大きな特徴の1つである。次に分布結合形方向性結合器のZg=ZL=Z0------(461)、すなわち基本条件(本来の理想とすべき方向性結合器の要件)におけるV3,V4および結合度βを導く。
この(461)の基本条件においては、まず漏洩高周波信号LeRFであるV4は、V4=0------(471)となり、副線路SLのモニタ高周波信号MnRFの発生する端子4には漏洩高周波信号LeRFが生じないことを示す。またこのとき、反射検出高周波信号RdRFであるV3は、V3=jV(Z0 e−Z0 o)tanθ/{2Z0+j(Z0 e+Z0 o)tanθ}------(472)と求まる。また、主線路MLから副線路SLに対する結合度βの最大値Cは、C=βmax=(Z0 e−Z0 o)/(Z0 e+Z0 o)------(482)を得る。すなわち結合度βの最大値Cは、第4結合線路インピーダンスZDCを構成する偶モード線路インピーダンスZ0 eと奇モード線路インピーダンスZ0 oとで一義的に定まることを示す。
前述の分布結合形方向性結合器ACDDC1の特性および性能に関する説明を纏めると、本発明の特徴は次のように表せる。
(1)分布結合形方向性結合器をLPFに兼用するなどの要因にて方向性結合器の対称性が崩れた場合において、副線路SLの第2終端インピーダンスZgを調整することによって、漏洩高周波信号LeRFの発生を零(あるいは最小に)にしてその方向性を−∞、すなわち最良に設定することが出来る。
(2)同様に、副線路SLの第2終端インピーダンスZgを調整することによって、主線路MLと副線路SLの間の結合度βを自由な値に設定することができるため、その結合度βを最適値に設定することができる。
(3)さらに開発過程において、結合度βと方向性Dに対する定量的な設計関係式を見出すことができたので、分布結合形方向性結合器に対する高性能且つ高精度の製品設計手法を確立すると共に、その製品の品質(特性のバラツキ等の低減など)を向上させることができる。
最後に、分布結合形方向性結合器ACDDC1を、その高周波性能が安定でかつEMC性能に優れたストリップラインで構成する場合について簡単に説明する。図11は主線路MLと副線路SLをエッジ結合ストリップラインで形成する場合について、その断面構造におけるストリップライン各部の形状・サイズを示す。さらにその詳細構造に対して、第4結合線路インピーダンスZDCを構成する偶モード線路インピーダンスZ0 eと奇モード線路インピーダンスZ0 oの関係を(501)から(506)で表す。主線路ML(例えば中心導体A)と副線路SL(例えば中心導体B)の水平方向の間隔Sを変えることによって、偶モード線路インピーダンスZ0 eおよび奇モード線路インピーダンスZ0 oを高精度かつ自由に設定できることが分かる。また、図12は主線路MLと副線路SLをブロードサイド結合ストリップラインで形成する場合について、その断面構造におけるストリップライン各部の形状・サイズを示す。さらにその詳細構造に対して、第4結合線路インピーダンスZDCを構成する偶モード線路インピーダンスZ0 eと奇モード線路インピーダンスZ0 oの関係を(601)から(604)で表す。主線路ML(例えば中心導体B)と副線路SL(例えば中心導体A)の垂直方向の間隔Sを変えることによって、偶モード線路インピーダンスZ0 eおよび奇モード線路インピーダンスZ0 oを高精度かつ自由に設定できることが分かる。
本発明の分布結合形方向性結合器の最良実施形態1を表す模式構造図。 図1の等価回路を示す図。 本発明の分布結合形方向性結合器の最良実施形態2を表す模式構造図。 図3の等価回路を示す図。 本発明の分布結合形方向性結合器の構成と接続方法ならびに各部の電気的特性を示す図。 分布結合形方向性結合器の各部の電流、電圧、入出力インピーダンスを表す図。 分布結合形方向性結合器の偶モードにおける各部の電気的特性を示す図。 分布結合形方向性結合器の奇モードにおける各部の電気的特性を示す図。 分布結合形方向性結合器の偶モードおよび奇モードに対する電気的特性をKパラメータで示す図。 分布結合形方向性結合器の副線路上の電流、電圧の詳細な関係をKパラメータで表示する図。 エッジ結合ストリップラインを使用した分布結合形方向性結合器断面形状とその第4結合線路インピーダンスZDCの関係を表す図。 ブロードサイド結合ストリップラインを使用した分布結合形方向性結合器断面形状とその第4結合線路インピーダンスZDCの関係を表す図。
符号の説明
1 分布結合形方向性結合器ACDDC
10 セラミック積層体基板
DCL1 第1分布定数線路 (ストリップライン、マイクロストリップライン、エッジ結合ストリップライン、ブロードサイド結合ストリップライン)
DCL2 第2分布定数線路 (ストリップライン、マイクロストリップライン、エッジ結合ストリップライン、ブロードサイド結合ストリップライン)
TrL1 第1伝送線路
TrL2 第2伝送線路
ML 主線路
SL 副線路
T1 第1端子
T2 第2端子
T3 第3端子
T4 第4端子
Z0 第1特性インピーダンス
Zg 第2終端インピーダンス
ZL 第3終端インピーダンス
ZDC 第4結合線路インピーダンス
Z0 e 偶モード線路インピーダンス
Z0 o 奇モード線路インピーダンス
CL1、CL2、CL3、CL4 導体層
DL1、DL2、DL3 誘電体層
Via、ViA、ViB ビア導体
MS1 第1主表面
MS2 第2主表面
GND グランド面導体(接地導体)
LM 主線路を兼用したインダクタンス
CA、CB 主線路の両端に接続されたキャパシタ(接地コンデンサ)
ME1A、ME2A、ME3A 電極導体
Rg 抵抗(第2終端インピーダンスZg
Lg インダクタ(第2終端インピーダンスZg
Cg キャパシタ(第2終端インピーダンスZg
Ant アンテナ
Tx 送信機
DCLg 第3分布定数線路(第2終端インピーダンスZg
TxRF 送信高周波信号
RaRF 反射高周波信号
RdRF 反射検出高周波信号
MnRF モニタ高周波信号
LeRF 漏洩高周波信号
β 結合度
D 方向性
C 結合度βの最大値

Claims (7)

  1. 線間結合する2つの分布定数線路を用いた分布結合形方向性結合器において、
    第1分布定数線路の第1端子に第1特性インピーダンスの第1伝送線路を接続し、前記第1端子の反対側にある第2端子に前記第1特性インピーダンスを有する第2伝送線路を接続した主線路と、
    前記第1分布定数線路に対向して配置された第2分布定数線路の前記第1端子側にある第3端子に第2終端インピーダンスを接続し、前記第3端子の反対側にある第4端子に第3終端インピーダンスを接続した副線路とで構成され、
    前記第1特性インピーダンスが2つの前記分布定数線路の有する第4結合線路インピーダンスに整合するように設定されると共に、前記主線路の前記第1端子に入力した高周波信号が前記副線路の前記第3端子に伝達される結合度が変化し、かつ前記副線路の前記第4端子に漏洩する漏洩高周波信号が減少するように、2つの前記第2終端インピーダンスと前記第3終端インピーダンスとの少なくともいずれかがインピーダンス調整部を有することを特徴とする分布結合形方向性結合器。
  2. 前記第1特性インピーダンスをZ0とし、前記第4結合線路インピーダンスが2つの前記分布定数線路の偶モード結合における偶モード線路インピーダンスZ0 eと、前記分布定数線路の奇モード結合における奇モード線路インピーダンスZ0 oとで表されるとき、前記第1特性インピーダンスZ0が前記偶モード線路インピーダンスZ0 eと前記奇モード線路インピーダンスZ0 oとの相乗平均に等しく設定され、かつ前記第2終端インピーダンスをZg、前記第3終端インピーダンスをZLとし、この2つの終端インピーダンスZg、ZLの少なくともいずれかを調整してZgZL=Z0 eZ0 oの関係を満たすことにより前記副線路の前記第4端子に生じる前記漏洩高周波信号が最小となる請求項1記載の分布結合形方向性結合器。
  3. 複数の誘電体層と複数の導体層を交互に積層し、その第1主表面である導体層と第2主表面である導体層との少なくともいずれかがグランド面導体を形成し、かつ誘電体層を厚さ方向に貫通するビア導体、または積層方向に隣接する導体層上に形成された導体パターン間の電磁結合によって、複数の導体層を電気的に接続する積層体基板を備え、
    前記第1分布定数線路および前記第2分布定数線路は同一の前記導体層上に形成された隣接する2つの導体パターンまたは、厚さ方向に隣接する2つの前記導体層上にそれぞれ形成された導体パターンから構成され、それぞれが前記主線路、前記副線路とされる請求項2項に記載の分布結合形方向性結合器。
  4. 前記主線路および前記副線路はその線路長が共に1/4波長である2つのエッジ結合ストリップラインである請求項2項に記載の分布結合形方向性結合器。
  5. 前記主線路および前記副線路はその線路長が共に1/4波長である2つのブロードサイド結合ストリップラインである請求項2項に記載の分布結合形方向性結合器。
  6. 前記導体層上に形成された前記第1分布定数線路は前記主線路およびフィルタの構成要素であるインダクタとを兼用し、前記第1分布定数線路の前記第1端子および前記第2端子にはグランド面導体との間にそれぞれにキャパシタを形成する電極導体が接続されてπ形のローパスフィルタを構成し、
    副線路は前記導体層に対して厚さ方向に隣接した別導体層上に前記第2分布定数線路として形成され、
    前記第2分布定数線路の前記第3端子に接続された前記終端インピーダンスZgは、前記第3端子に導通する導体層上に形成された導体電極と前記グランド面導体との間で形成されるキャパシタと、前記第3端子に導通するビア導体または前記第3端子に導通する導体層上に形成された導体パターンからなるインダクタと、前記第3端子と前記グランド面導体の間に接続された抵抗とから構成される請求項1項ないし請求項5に記載の分布結合形方向性結合器。
  7. 2つの前記終端インピーダンスZg、ZLは前記偶モード線路インピーダンスZ0 eと前記奇モード線路インピーダンスZ0 oに対して、|ZgZL−Z0 eZ0 o|/{(Z0 e+Z0 o)Zg}≦0.03の関係を満たす請求項6に記載の分布結合形方向性結合器。
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