JP5259463B2 - 高温用デッドエンドシール - Google Patents
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Description
デッドエンドとはシール流体が循環しないシール室の意味であり、デッドエンドシールとは、ノーフラッシング、すなわち、スタフィングボックス内にシール流体の注入あるいは排出を行わない、またはエクスターナル流体を注入しない方式のメカニカルシールのことである。
そこで、密封液が200℃を越えるような高温液において、冷却液によるフラッシングを行わないメカニカルシールとして、図5に示すようなメカニカルシール、すなわち、高温用デッドエンドシールが提案されている(以下「従来技術1」という。)。
図5に示される従来技術1の高温用デッドエンドシールは、回転軸50とハウジング51との間に形成した軸封部53に装着されて、回転軸50とハウジング51との間をシールするメカニカルシールであって、ハウジング51側に取り付けられるカラー54と、カラー54に連結されるベローズ55と、ベローズ55に連結されるリテーナ56と、リテーナ56に嵌合されるシール リング57と、回転軸50側に取り付けられるメイティングリング58と、カラー54の内周側に所定の間隔をおいて設けられた筒状のバッフルスリーブ59を備えている。
で作られたシールリング57が密封的に焼嵌めまたは圧入されている。シールリング57端面の摺動トルクは、リテーナ56→ベローズ55→カラー54に伝わり、シールカバー60にボルトで固定されたカラー54が受けている。シールリング57端面の潤滑状況の変化による円周方向の微振動(ヒステリックスリップ)はリテーナ56→ベローズ55に伝搬する。この円周方向の微振動を抑えるために、リテーナ56内周とシールカバー60にボルトで固定されたバッフルスリーブ59がリテーナ56内周部まで伸びており、バッフルスリーブ59の外径とリテーナ最内径とを円周の部分的(多くは4等配)に微小隙間に絞り、振動した際には、この微小隙間以上に振れないように制振作用を持たせている。
しかしながら、従来技術1のメカニカルシールには、次のような問題があった。
フラッシングによる冷却がないので、メカニカルシール部はハウジング51に設けられた冷却ジャケット61とメカニカルシールの静止側内周とバッフルスリーブ59外周に供給されるスチームクエンチとで冷却するが、冷却効果はハウジング51に設けられた冷却ジャケット61にほとんど依存している。ところが、冷却ジャケット61の設計により、冷却効果にばらつきがあり、冷却効果が不十分であると、メカニカルシール部の温度が十分に下がらず、その結果、例えば、シール液に揮発性留分が含まれていたりする場合のように、摺動発熱により、シール端面間で容易に揮発性留分が沸騰し、シール端面間の潤滑が乏しくなるとともに、不安定になると、シール端面が高サイクルで円周方向に微振動し、摺動トルクも高サイクルで変動し、この微振動がリテーナ56を経由してベローズ55に伝搬し、ベローズ55が高サイクルの振動(ねじり−戻り)をし、疲労破壊して高温流体が機外に流出することがあった。
この従来技術2においては、シールリングとメイティングリングとの摺動面にエアー等が噛み込むことを防止し、摺動面が損傷したり、早期に摩耗したりすることを防止できるものであるが、例えば、シール液に揮発性留分が含まれていたりする場合のように、摺動発熱により、シール端面間で容易に揮発性留分が沸騰し、シール端面間の潤滑が乏しくなるとともに、不安定になると、シール端面が高サイクルで円周方向に微振動し、摺動トルクも高サイクルで変動し、この微振動がリテーナを経由してベローズに伝搬し、ベローズが高サイクルの振動(ねじり−戻り)をし、疲労破壊して高温流体が機外に流出するという問題を解消できるものではなかった。
第1の特徴により、ハウジングに冷却ジャケットが無い場合や冷却ジャケットの冷却効果が少ない場合であっても、フラッシングを行うことなくメカニカルシール部の冷却を効果的に行えるので、デッドエンドシールを適用できる条件の範囲が拡張でき、クーラーを設置する必要がなく、クーラーで冷却した液をフラッシングしないので、ポンプ等の機器内に冷却液が流入せず、装置全体としての熱効率を向上させることができる。
また、スタフィングボックス内の容積を縮小できるので、スタフィングボックス内の熱容量が小さくなり、容易に冷却ができるようになり、メカニカルシール部近傍の温度を下げることができる。
これらの結果、メカニカルシール部は十分に冷却され、シール端面間の潤滑が良好に保持されるので、シール端面が良好な状態に保持されるばかりか、ベローズの疲労破損を防止できる。
第2の特徴により、機内側から軸封部への高温液の流入を極小に抑えることができるので、メカニカルシール部への流体による伝熱を小さく抑えることができる。
、中空円筒状の冷却ジャケットを、内周側部材および外周側部材の2つの部材を接合し、これらの部材の軸方向の両端を溶接して形成することを特徴としている。
第3の特徴により、スタフィングボックス内にメカニカルシール外周の全周にわたって中空円筒状の冷却ジャケットを容易に形成することができる。
第4の特徴により、中空円筒状の冷却ジャケットを既存のシールカバーを利用して配設することができ、構造を簡単化できる。さらに、冷却媒体の出入口を既存のシールカバーを利用して設けることができるとともに、出入口の位置を円周方向の任意の位置に設定することができる。
第5の特徴により、冷却媒体として水を用いる場合、水が下方から上方に向けて移動する際に水中に含まれるエアーおよびカルキを抜くことができる。
第6の特徴により、冷却媒体が入口から出口にショートパスして流れることが防止されるため、冷却効果を向上させることができる。
(1)メカニカルシール部の外周に位置するハウジング内面に沿うように中空円筒状の冷却ジャケットを配設することにより、ハウジングに冷却ジャケットが無い場合や冷却ジャケットの冷却効果が少ない場合であっても、フラッシングを行うことなくメカニカルシール部の冷却を効果的に行えるので、デッドエンドシールを適用できる条件の範囲が拡張でき、クーラーを設置する必要がなく、クーラーで冷却した液をフラッシングしないので、ポンプ等の機器内に冷却液が流入せず、装置全体としての熱効率を向上させることができる。
また、スタフィングボックス内の容積を縮小できるので、スタフィングボックス内の熱容量が小さくなり、容易に冷却ができるようになり、メカニカルシール部近傍の温度を下げることができる。
これらの結果、メカニカルシール部は十分に冷却され、シール端面間の潤滑が良好に保持されるので、シール端面が良好な状態に保持されるばかりか、ベローズの疲労破損を防止できる。
(4)中空円筒状の冷却ジャケットの一端をシールカバーに接続するとともに冷却媒体の出入口をシールカバーに設けることにより、寸法等に応じて、中空円筒状の冷却ジャケットを既存のシールカバーを利用して配設することが可能である。さらに、冷却媒体の出入口の位置を円周方向の任意の位置に設定することができる。
(6)中空円筒状の冷却ジャケット内に形成された冷却媒体の収容室に、冷却媒体の入口と出口との短絡を防止するフローガイドを設けることにより、冷却媒体が入口から出口にショートパスして流れることが防止されるため、冷却効果を向上させることができる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る高温用デッドエンドシールの全体を説明する正面断面図である。
図1において、参照符号1は、石油精製、石油化学および製鉄化学等において200℃を越えるような高温液、たとえば、石油精製プラントの減圧蒸留設備の熱油を扱う機器、例えば、ポンプ等における軸封部のハウジング、参照符号2はハウジング1にボルト3等の固定手段により装着されるシールカバーである。また、図中左側が機内側、図中右側が大気側(機外側)である。
なお、本発明において、シールリング9のリテーナ8による保持構造を、上記したラップジョイントによらず、シールリング9の外周側をリテーナ8の内周側に嵌合させた公知の固定環構造であってもよいことはもちろんである。
なお、本例ではハウジング1に既存の冷却ジャケット12が設けられている場合を示しているが、新たに設ける必要はない。
また、スタフィングボックス13の奥(機内側)にはスロートブッシュ14が取り付けられており、機内側から軸封部5に流入するシール液に対し絞りを形成している。
ベローズ7は、打抜き加工等によって波形環状に形成した金属製のダイアフラム板を複数枚一列に並べて、隣接するダイアフラム板の外径部間及び内径部間をガス溶接等によって交互に連結して、全体を蛇腹筒状に形成したものであって、一端がカラー6側にガス溶接等によって一体に連結されるようになっている。
リテーナ8、ベローズ7およびカラー6を溶接により一体物として製作後、これらの全表面に特殊窒化クロムや窒化チタンなどの10μm以下の厚みの耐食・耐摩耗性のイオンプレーティングを均一に施工する。これにより、リテーナ8、ベローズ7およびカラー6の全表面が均一な耐食性をもつので、耐食性の低い材料で構成されていても、イオンプレーティングの耐食性が全体の耐食性となり、材料選定の制限が大幅に少なくなる。
シールリング9は両端面にラッピング仕上げされたシール端面を持っており、シールリング9とリテーナ8とは分離した構造となっており、リテーナ8のシールリング9側端面もラッピング仕上げされたシール端面を持ち、両者の密封は、ラッピング面を合わせて密封するラップジョイント構造を採用している。シールリング9とリテーナ8とは分離した構造となっているため、高温雰囲気でもメイティングリング10と摺動するシールリング9のシール端面の平面度は、熱膨張差による影響を受けないので、密封性が保たれる。また、リテーナ8自体の圧力変形や熱変形にも影響されることがない。さらに、焼嵌めや圧入、その後の熱処理などの特殊工程の必要がなく、それに伴いジグ類も不要となるので、コスト低減および工数低減が図れる。また、シールリング9の交換が容易となる。
大気側に位置するシールカバー2の内周部と回転軸4外周部との間には、クエンチシール21が設けられて、クエンチング液供給孔35からバッフルスリーブ17側に供給されるクエンチング液をシールしている。22は、クエンチシール21のホルダーであって、シールカバー2にボルト23によって固定されている。
また、リテーナ8の内周部には、1個または複数個の切り欠き29を設け、クエンチング液供給孔35から供給され、バッフルスリーブ17によってシール面16に誘導されてきたクエンチング液の通路を形成している。このため、クエンチング液は、バッフルスリーブ17によりシール面16に誘導され、シール面16からの微小な漏れ液を洗浄排出するが、その際、リテーナ8およびシールリング9内周の切り欠きがクエンチング液の通路を形成することになり、クエンチング液を停滞することなく流すことができる。
また、本例では、内周側部材30−1はシールカバー2と一体に形成され、断面が略L字型をしている。外周側部材30−2は、内周側部材30−1と同じく断面が略L字型であって内周側部材30−1の蓋の役割をしており、ハウジング1の内周面に沿うように配設されており、内周側部材30−1との間に冷却媒体であるスチーム(温度約120℃程度)あるいは水が流れることのできる中空円筒状の冷却室31を有するように形成されている。
図3は、本発明の実施の形態2に係る高温用デッドエンドシールの全体を説明する正面断面図である。
本実施の形態2に係る高温用デッドエンドシールは、基本構造は実施の形態1と同じであり、図3において、図1と同じ符号は図1の場合と同じ部材を指している。以下、実施の形態1と相違する部分について主に説明する。
図4は、図3のB−B断面図を示したものであり、フローガイド39は、2枚の遮蔽板を一定間隔をもって配置するようにして構成され、冷却媒体の収容室31の右端に設けられた冷却媒体の入口38−1から冷却媒体をガイドするように左端側に向けて延びており、左端側の冷媒通路40を残して冷却媒体を左右に分流するように形成されている。このように、フローガイド39を設けることにより、冷却媒体が入口から出口にショートパスして流れることが防止されるため、冷却効果を向上させることができる。
2 シールカバー
3 ボルト
4 回転軸
5 軸封部
6 カラー
7 ベローズ
8 リテーナ
9 シールリング
10 メイティングリング
11 リテーナ
12 冷却ジャケット
13 スタフィングボックス
14 スロートブッシュ
15 ガスケット
16 シール面
17 バッフルスリーブ
18 段部
19 ガスケット
20 パッキン
21 クエンチシール
22 ホルダー
23 ボルト
24 段部
25 段部
26 ケース
27 切り欠き
28 雄型の歯部
29 切り欠き
30 冷却ジャケット
30−1内周側部材
30−2外周側部材
31 冷却室
32 溶接部
33 溶接部
34 立ち上がり壁
35 クエンチング液供給孔
36 ガスケット
37 Oリング
38 冷却媒体の出入口
39 フローガイド
40 冷媒通路
41 絞り部
Claims (5)
- ハウジングと回転軸との間に形成した軸封部に装着されて、ハウジングと回転軸との間をシールするメカニカルシールであって、シールリングと、該シールリングに対向摺接するメイティングリングとを具備し、前記シールリングおよびメイティングリングの一方がハウジングに装着されたシールカバーに支持され、他方が回転軸とともに回転するメカニカルシールにおいて、メカニカルシール部の外周に位置するハウジング内面に沿うように中空円筒状の冷却ジャケットを配設し、メカニカルシール部の外周と中空円筒状の冷却ジャケット内周との間に絞り部が形成されることを特徴とする高温用デッドエンドシール。
- 中空円筒状の冷却ジャケットを、内周側部材および外周側部材の2つの部材を接合し、これらの部材の軸方向の両端を溶接して形成することを特徴とする請求項1記載の高温用デッドエンドシール。
- 中空円筒状の冷却ジャケットの一端をシールカバーに接続するとともに冷却媒体の出入口をシールカバーに設けることを特徴とする請求項1または2記載の高温用デッドエンドシール。
- 中空円筒状の冷却ジャケットの下方に冷却媒体の入口を、上方に冷却媒体の出口を配設することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高温用デッドエンドシール。
- 中空円筒状の冷却ジャケット内に形成された冷却媒体の収容室に、冷却媒体の入口と出口との短絡を防止するフローガイドを設けることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の高温用デッドエンドシール。
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