JP6868531B2 - 冷却ジャケットを備えるメカニカルシール - Google Patents

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Description

本発明は、冷却ジャケットを備えるメカニカルシールに関する。
従来、自動車、一般産業機械等の分野では、ハウジングと該ハウジングに挿通される回転軸を有する回転機器があり、ハウジングと回転軸との間に形成した軸封部をシールするメカニカルシールが知られている。このようなメカニカルシールにあっては、回転軸に固定される回転密封環とハウジングに固定される静止密封環との摺動発熱によって回転密封環及び静止密封環に変形や破損等が生じる虞があるため、回転密封環及び静止密封環の周囲を冷却することが一般的に行われている。
特許文献1に示されるメカニカルシールは、ハウジングの機外側に取付けられる側断面視略L字状に形成した環状のシールカバーと、シールカバーからハウジング内部に向けて軸方向に延びる環状筒部に溶接される別体の環状部材と、を備えた冷却ジャケットを用いて回転密封環と静止密封環との周囲の被密封流体を冷却している。具体的には、シールカバーには、環状筒部と別体の環状部材との間に形成される中空の冷却室と外部とを連通する流路が形成されており、該流路を介して冷却室に冷却流体を流入・循環させることで被密封流体を冷やすことによって回転密封環と静止密封環との周囲を冷却できるようになっている。
特開2010−216491号公報(第12頁、第1図)
しかしながら、特許文献1のメカニカルシールにあっては、冷却ジャケットは、シールカバーの環状筒部に対して別体の環状部材を溶接して構成され、軸線方向の一端側が閉塞されている構造であることから、冷却ジャケットの内部に外部からアクセスしにくく、冷却ジャケットに不具合が起きたときや、定期的なメンテナンスを行う際に、冷却ジャケット内部の点検や修理などのメンテナンスを行うことが煩雑であった。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、冷却ジャケット内部の点検や修理などのメンテナンスを行いやすい冷却ジャケットを備えるメカニカルシールを提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の冷却ジャケットを備えるメカニカルシールは、
ハウジングと回転軸との間に形成された軸封部をシールする冷却ジャケットを備えるメカニカルシールであって、
前記冷却ジャケットは、前記ハウジングの一方側に取付けられる大環状部材と前記大環状部材の内径側に着脱可能に設けられる小環状部材とによって、冷却流体が通過可能な流路と、前記回転軸の外径側に沿って配設され前記冷却流体が通過可能な冷却溝とから構成されており、
前記大環状部材に前記小環状部材を組み付けたときに、前記流路と前記冷却溝とが連通する前記冷却流体の経路が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、流路と冷却溝とは別体であり且つ着脱可能な大環状部材及び小環状部材から構成されていることから、大環状部材と小環状部材とを分解することで冷却溝に対して外部からアクセスできるため、冷却ジャケット内部の点検や修理などのメンテナンスを行いやすい。
前記冷却溝は、前記回転軸の外周に沿って連続する環状に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、冷却溝の周方向のいずれの位置であっても流路と連通させることができるため、流路と冷却溝との位置合わせを容易に行うことができる。
前記流路は前記大環状部材に設けられ、前記冷却溝は前記大環状部材の内径側に一方側から着脱可能に取付けられる小環状部材に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、冷却溝が設けられる小環状部材は、ハウジングの一方側に取付けられる大環状部材の内径側に一方側から着脱可能に取付けられることから、メカニカルシール全体を分解することなく、小環状部材のみを取外すことができる。
前記小環状部材は、前記大環状部材の一方側にネジにより固定されることを特徴としている。
この特徴によれば、簡単な構造で小環状部材を大環状部材に対し着脱することができる。
前記小環状部材には、該小環状部材と前記回転軸との間を絞る絞り部材が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、小環状部材と回転軸との間に絞り部材が設けられていることから、回転軸の振れ回りによる回転軸と小環状部材との接触を防止できる。
前記軸封部の外径側には、環状溝部が設けられており、前記環状溝部と前記冷却溝とは連通路により連通していることを特徴としている。
この特徴によれば、冷却溝と環状溝部とが連通路により連通しているため、冷却流体を循環させる1つのポンプにより軸封部の周辺と絞り部材の周辺とを冷却することができる。
本発明の実施例1におけるメカニカルシールの側断面図である。 (a)は、回転密封環の側面の部分図であり、(b)は、回転密封環の正面図である。 小環状部材、補助シール、カバーをケースに取付ける状態を示す分解図である。 メカニカルシールの第1循環経路と第2循環経路とを示す側断面図である。 本発明の実施例2におけるメカニカルシールの側断面図である。
本発明に係る冷却ジャケットを備えるメカニカルシールを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
実施例1に係る冷却ジャケットを備えるメカニカルシールにつき、図1〜4を参照して説明する。以下、図1の紙面右側を軸封装置の機内A側(被密封流体側)とし、図1の紙面左側を軸封装置の機外B側(大気側)として説明する。
図1に示されるように、本実施例1に係るメカニカルシール1は、自動車、一般産業機械等における回転機器の軸封分野において、被密封流体をシールするために用いられる。尚、本実施例における被密封流体は、高温・高圧のガスやオイルなどの流体である。
メカニカルシール1は、スタッフィングボックス2(ハウジング)と、該スタッフィングボックス2に設けられる軸孔20に挿通される回転軸3との間の軸封部をシールするために取付けられる。尚、回転軸3は、一般にステンレス鋼製等の金属製であり、回転機器がポンプの場合には、機外B側に図示しない羽根車が取付けられている。
メカニカルシール1は、スタッフィングボックス2の機内A側端面にボルト11により取付けられるケース4(大環状部材)と、回転軸3の外周面に固定されるスリーブ5と、スリーブ5に固定される回転密封環9と、回転密封環9の機内A側及び機外B側にそれぞれ配置される静止密封環6a,6bと、静止密封環6a,6bを回転密封環9に向けて付勢するスプリング8a,8bと、静止密封環6a,6b及び回転密封環9の外径側に設けられるパイプ10と、ケース4に対し取付けられる小環状部材13と、から主に構成されている。尚、ケース4及び小環状部材13は、メカニカルシールの機内A側を冷却する冷却ジャケットとして機能している。
スタッフィングボックス2は、機内A側から機外B側に凹設される環状凹部25を有する。環状凹部25の内径は軸孔20の内径よりも大径である。また、スタッフィングボックス2には、外部と環状凹部25とを連通する径方向に延びる連通路27aと、軸方向かつ外径方向に向けて斜めに延びる連通路27bと、が形成されている。この連通路27a,27bは、スタッフィングボックス2の周方向に複数独立して設けられている。
尚、スタッフィングボックス2の軸孔20の内周面と、スタッフィングボックス2の機内A側端面とには、環状の凹溝が形成されており、これら凹溝には、Oリング20a,20bがそれぞれ挿嵌されている。Oリング20aは、機外B側の静止密封環6aに対して圧接されており、Oリング20bは、ケース4の側端面43に圧接されている。尚、Oリング20a,20bの材質は、フッ素ゴム、ニトリルゴム、H−NBR、EPDM、パーフロロエラストマ等である。また、Oリングは、パッキン材等、他の二次シールであってもよい。さらに尚、後述するOリングについても同様である。
静止密封環6aは、スタッフィングボックス2の軸孔20に対し移動可能に嵌合して取付けられており、静止密封環6bは、ケース4の軸孔40に対し移動可能に嵌合して取付けられている。静止密封環6a,6bには、外径方向に延出するフランジ61a,61bと、回転密封環9に向かって軸方向に突出する環状の突出環62a,62bと、が形成されている。
また、フランジ61a,61bには、径方向外側が切り欠かれたガイド用凹部63a,63bが周方向に複数形成されており、回止ピン65a,65bが挿嵌されている。この回止ピン65aは、スタッフィングボックス2の奥端面26に固定されており、回止ピン65bはケース4の側端面43に固定されているため、静止密封環6a,6bは回転を規制されている。
また、周知のように、スタッフィングボックス2の奥端面26には、スプリング収容凹部26aが周方向に複数穿設されており、静止密封環6aのフランジ61aとスプリング収容凹部26aとの間には、圧縮された状態でスプリング8aが配置されている。また、ケース4の側端面43には、スプリング収容凹部26bが周方向に複数穿設されており、静止密封環6bのフランジ61bとスプリング収容凹部26bとの間には、圧縮された状態でスプリング8bが配置されている。スプリング8a,8bは、周方向に所定間隔を置いて小径のスプリングを複数使用する形式、すなわちマルチスプリング型で配置されている。尚、スプリング8a,8bは、コイルスプリングの他に、ウェーブコイルスプリング等を使用してもよい。
尚、静止密封環6a,6bは、SiC、またはカーボン、その他、メカニカルシールの摺動材として用いられる材料、或いは、それらを組み合わせた材料から製作されている。また、ダイヤモンドコーティングしたSiCにより製作されてもよい。
ケース4は、環状に形成され、回転軸3が挿通される軸孔40が設けられている。ケース4は、外周面から内径方向に延び且つ側端面43を軸方向に貫通する側断面視略逆L字状の連通路47aと、径方向に貫通する略直線状の連通路47b(流路)と、連通路47bよりも機外B側に設けられ径方向に貫通する略直線状の連通路47cと、ケース4の内周面から外径方向に延び且つ側端面43を軸方向に貫通する側断面視略逆L字状の連通路47d(流路)と、を備えている。
これら連通路47a,47b,47c,47dは、互いに独立した連通路である。
ケース4の軸孔40における機外B側には、環状の凹溝が形成されており、この凹溝には、Oリング44が挿嵌される。Oリング44は、機内A側の静止密封環6bに対して圧接されている。
スリーブ5は、ステンレス鋼製等の金属製であり環状を成し、Oリングを介して回転軸3に固定されている。尚、回転軸3とスリーブ5の固定構造は問わないが、例えば図示しないセットスクリュを用いて固定されている。
また、スリーブ5は、機内A側の端部から若干機外B側にずれた位置に環状段部55が形成されている。また、スリーブ5には、環状段部55の機内A側近傍の周方向に所定間隔を置いて回止ピン56が取付けられており、この回止ピン56は、回転密封環9の複数のガイド用凹部91に挿嵌されている。
また、スリーブ5には、機内A側に位置する端部に回転密封環9を挿嵌させた状態で、ソケットボルト57によりカラー7をスリーブ5に固定している。これにより、回転密封環9が環状段部55とカラー7との間に狭持され、スリーブ5に対して固定される。
図2(a),(b)に示されるように、回転密封環9は、環状を成し、内周において周方向に所定間隔を置いて配置され外径側に凹む複数のガイド用凹部91を備え、外周において対向して内径側に凹む一対の撹拌溝92a,92bから構成される撹拌溝部92が周方向に所定間隔を置いて2等配されている。
撹拌溝92aは、図2(a)に示されるように、側面視において略長方形状の一短辺の内撹拌溝92bに対向する先端部が半円弧状とされた形状に形成され、図2(b)に示されるように、正面視において撹拌溝92bに対向する側に略直角部分が位置する略直角三角形状に形成されている。また、撹拌溝92bは撹拌溝92aと略同一形状であるためその説明を省略する。すなわち、撹拌溝92a,92bは、対向する側が内径側に深く凹んだ溝となっている。
尚、図2(b)において、ガイド用凹部91は4等配に形成されているが、これに限らず、2等配や8等配であってもよく、4等配に限定するものではない。さらに尚、撹拌溝部92は2等配に形成されているが、これに限らず、1か所のみの配置でもよく、4等配や8等配であってもよく、2等配に限定するものではない。
図1に示されるように、回転密封環9は、スリーブ5に装着するにあたり、回止ピン56をガイド用凹部91に挿嵌させることで、回止ピン56とガイド用凹部91とが当接し、装着位置の位置合わせがなされると共に、回止ピン56から回転密封環9に回転力を伝えることができる。
また、回転密封環9を、スリーブ5に挿入すると、内周側の環状段部96(図2(b)参照)とスリーブ5の外周面とで形成される側断面視略逆コ字状の環状溝90aが形成され、この環状溝90aにOリング90bが挿嵌されている。
また、回転密封環9は、スリーブ5に固定された状態であるとき、その両側面が静止密封環6a,6bの突出環62a,62bに当接することで、摺動面が形成されている。
尚、回転密封環9は、SiC、またはカーボン、その他、メカニカルシールの摺動材として用いられる材料、或いは、それらを組み合わせた材料から製作されている。また、ダイヤモンドコーティングしたSiCにより製作されてもよい。
パイプ10は、ステンレス鋼により形成されており、静止密封環6a,6b及び回転密封環9が挿通される軸孔100が形成されており、略円筒状を成している。また、パイプ10は、軸方向の両端にOリング101が取付けられており、機外B側のOリング101は、スタッフィングボックス2の奥端面26に圧接され、機内A側のOリング101は、ケース4の側端面43に圧接されている。尚、パイプ10は、ステンレス鋼に限らず、他の金属や強化樹脂などで形成されていてもよい。金属により形成されると熱伝導性かつ強度に優れるから好ましい。
スタッフィングボックス2、静止密封環6a,6b、回転密封環9及びケース4により形成される中間室Mは、パイプ10に区画されることにより、パイプ10の外径側に冷却室C(環状溝部)が、パイプ10の内径側に液室Rが形成されている。冷却室Cは、一方が連通路27aに連通し他方が連通路47dを介して凹溝13cに連通しており、液室Rは、連通路27b、連通路47aに連通している。
図1及び図3に示されるように、小環状部材13は、ステンレス鋼により形成されており、ケース4の軸孔40に挿通可能な挿通部13aと、挿通部13aの機内A側の端縁から外径方向に環状に突出するフランジ13bと、を備えている。挿通部13aには、外径方向(ケース4側)に向けて開口する凹溝13c(冷却溝)が環状に連続して形成されており、凹溝13cは、ケース4に取付けられた状態において連通路47bと連通路47dとに連通している。また、凹溝13cの機内A側及び機外B側には、Oリング16が配置されており、ケース4と小環状部材13とが密封状に接続されている。尚、小環状部材13は、ステンレス鋼に限らず、他の金属や強化樹脂などで形成されていてもよい。金属により形成されると熱伝導性かつ強度に優れるから好ましい。
また、小環状部材13には、機内A側から機外B側に向けて凹設される環状溝部13eが形成されており、小環状部材13の軸孔13dよりも大径である。この環状溝部13eには、環状の絞り部材14が配置されており、フランジ13bに対して環状のカバー15が取付けられている。これにより環状溝部13e内から絞り部材14が機内A側に抜け出すことが防止されている。また、カバー15には、機外B側に向けて突出する突起部15aが周方向に複数設けられており、突起部15aが絞り部材14の凹部14aに挿入されていることで絞り部材14の周方向の回動が規制されている。尚、本実施例における絞り部材14は、軸の振れ回りにより回転軸3と小環状部材13とが直接接触することを防止し、また、小環状部材13と回転軸3との間から機内A側に流体が漏れることを防止し、また、異物が進入することを防止する部材である。
次いで、小環状部材13、絞り部材14、カバー15をケース4に取付ける形態を図3に基づいて説明する。図3に示されるように、小環状部材13のフランジ13bには、軸方向に貫通する貫通孔13fが周方向に複数形成されているとともに、カバー15には、軸方向に貫通する貫通孔15bが周方向に複数形成されている。また、ケース4の側端面46には、ネジ孔48が軸孔40の外径側の周方向に複数形成されている。小環状部材13の環状溝部13eに絞り部材14を挿嵌した状態で、挿通部13aをケース4の軸孔40に挿入し、カバー15の貫通孔15b及び小環状部材13の貫通孔13fにボルト12(ネジ)を挿通してケース4のネジ孔48に対して緊締することにより、小環状部材13、絞り部材14、カバー15がケース4に取付けられる。
これまで、メカニカルシール1の構造・組立について説明してきたが、これより、図4を用いて、メカニカルシール1の使用態様について説明する。
図4に示されるように、メカニカルシール1の使用時には、冷却水F1(冷却流体)がケース4の外部に設けられる循環装置(図示略)により連通路47bに導入される。この循環装置は、ポンプや熱交換器などから構成されている。尚、冷却流体は、冷却水に限られず、例えばスチームでもよい。
連通路47bに導入された冷却水F1(黒矢印)は、小環状部材13の凹溝13cに流入し、その後、連通路47dを介して冷却室Cに流入する。尚、冷却室Cに流入した冷却水F1は、スタッフィングボックス2の連通路27aから前記循環装置に流出する。つまり、連通路47b,47d、凹溝13c、冷却室C、連通路27aは、冷却水F1を循環させる第1の循環経路を構成している。
また、メカニカルシール1の使用時には、ケース4の外部から供給されたシーラントF2(白実線矢印)が連通路47aから液室Rを経由して連通路27bに向かって循環される。これにより、万が一、機内A側に位置する静止密封環6bと回転密封環9との間から液室R内に被密封流体が流出しても、シーラントF2に該被密封流体は回収される。つまり、連通路47a、液室R、連通路27bは、シーラントF2を循環させる第2の循環経路を構成している。
このように、冷却水F1が小環状部材13の凹溝13cに流入することにより、小環状部材13の近傍が冷却されるため、メカニカルシールの機内A側の温度上昇を抑制して、静止密封環6b及び回転密封環9の摺動面が高温になるのを防止できる。また、冷却水F1が冷却室Cに流入することによりパイプ10の近傍が冷却され、これによりシーラントF2が冷却されるため、静止密封環6a,6bと回転密封環9との摺動による温度上昇を抑制して、静止密封環6a,6b及び回転密封環9の変形や破損を防止できる。
さらに、冷却水F1は、凹溝13cを経由した後、冷却室Cに流入することから、メカニカルシールが縦型の場合(機内A側が鉛直下方に配置される場合)、鉛直下方から鉛直上方に向かって冷却水F1を流すことになるため、確実に各部を冷却しつつ冷却水F1を流すことができる。
液室R内のシーラントF2は、回転密封環9に形成された複数の撹拌溝部92により撹拌されるため、シーラントF2の循環が促進され、除熱効率が高められている。
また、撹拌溝部92は、対向する一対の撹拌溝92a,92bから構成されているため、回転軸3の回転方向にかかわらず撹拌することができる。尚、撹拌溝92a,92bの形状は上述した形状に限らず、例えば周知のスパイラル形状等であってもよい。要するに、液室R内のシーラントF2を撹拌できる形状であればよい。
また、万が一、機内A側に位置する静止密封環6bと回転密封環9との間からシーラントF2の漏出が発生した場合には、漏出流体F3(破線白矢印)は、連通路47aから外部に回収されるため、漏出流体F3が機内A側に流出することが防止される。
尚、シーラントF2を循環させるメカニカルシール1について説明してきたが、液室RにシーラントF2を封入し循環させないシーラント封入型のメカニカルシールであってもよい。さらに尚、パイプ10及びシーラントF2の構成を省略し、中間室Mに冷却水F1を循環させるようにしてもよい。
これまで説明してきたように、実施例1におけるメカニカルシール1は、冷却水F1が通過可能な流路としての連通路47b,47dがケース4に設けられており、冷却水F1が流入可能な冷却溝としての凹溝13cが小環状部材13に設けられており、別部材であるケース4と小環状部材13とを組み立てることにより、連通路47bと凹溝13cとが連通する経路(第1の循環経路)が形成される構造であることから、ケース4と小環状部材13とを分解することで凹溝13cに対して外部からアクセスできるようになり、冷却ジャケット内部の点検や修理などのメンテナンスを行いやすい。
また、凹溝13cは、回転軸3の周方向に連続するように環状に形成されていることから、凹溝13cの周方向のいずれの位置であっても連通路47b,47dと連通させることができるため、凹溝13cが周方向に複数に分割された形態に比べて、連通路47b,47dと凹溝13cとの位置合わせを容易に行うことができる。さらに、回転軸3の周方向に亘って均一に冷却することができる。
また、凹溝13cは、小環状部材13の外径方向に向けて開口するとともに、凹溝13cの両側面は軸線方向に略直交しているため、凹溝13cに段部や屈曲部が形成されている場合や蟻溝状に形成されている場合に比べて、凹溝13c内の清掃などのメンテナンスを行いやすい。
また、凹溝13cを小環状部材13の挿通部13aに外径方向に向けて開口するように設けているため、ケース4の内周面に内径方向に向けて開口するように設ける形態に比べて、凹溝13cの製造が簡単である。さらに、ケース4の内周面を略平坦に形成することができるため、ケース4の製造も簡単である。
また、小環状部材13は、スタッフィングボックス2の機内A側に取付けられるケース4の内径側に機内A側から着脱可能に取付けられることから、メカニカルシール1全体を分解することなく、小環状部材13のみを取外すことができる。具体的には、ケース4は、機内A側の静止密封環6bを保持する機能を有しているため、ケース4をスタッフィングボックス2から取外すと静止密封環6bも分解されることになるが、本実施例のメカニカルシール1は、ケース4を取外すことなく小環状部材13のみを取外すことができるため、静止密封環6a,6b及び回転密封環9のシール性に影響を与えることなく冷却ジャケット内部の点検や修理などのメンテナンスを行える。
また、小環状部材13は、ケース4の機内A側に対しボルト12により固定されるため、例えば、小環状部材13の挿通部13aに雄ネジ部を設け、ケース4の軸孔40に雌ネジ部を設け、互いに螺合させることにより小環状部材13をケース4に対して着脱可能に構成する形態等に比べて、簡単な構造で小環状部材13をケース4に対し着脱することができるようになっている。
さらに、小環状部材13のフランジ13bをケース4の側端面46に当てることによって、連通路47bに対する凹溝13cの軸方向位置が決まるため、位置決めが簡単である。
また、小環状部材13に回転軸3よりも軟質な材料(カーボンやPTFE等)からなり、最内径が小環状部材13よりも内径側に配置される絞り部材14が設けられているため、絞り部材14が回転軸と接触し、回転軸3と小環状部材13が直接接触することなく、回転軸3の振れ回りによる小環状部材13との接触を防止し、また、回転軸よりも軟質材料からなる絞り部材14が損傷することで回転軸3が損傷するのを防止することができる。尚、小環状部材13は、熱伝導性の高いステンレス鋼により形成されていることからメカニカルシールの機内A側を効率よく冷却できる。
また、凹溝13cと冷却室Cとが連通路47dにより連通しているため、冷却水F1を循環させる1つのポンプにより静止密封環6a,6b及び回転密封環9の周辺と絞り部材14の周辺とを冷却することができる。
次に、実施例2に係るメカニカルシール200につき、図5を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
図5に示されるように、実施例2におけるメカニカルシール200のケース400は、連通路47bの内径側端部に周方向に連続する凹溝401が形成されており、凹溝401は、小環状部材13の凹溝13cと連通している。このように、ケース400側に凹溝401を設け、凹溝13cと凹溝401とにより、ケース400と小環状部材13との接合部に1つの冷却溝を構成するようにしてもよい。尚、連通路47dは、凹溝401に連通しているため、冷却水F1を冷却室Cに流下させることができる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
前記実施例では、冷却ジャケットを構成する2つの部材(大環状部材及び小環状部材)のうち、一方の部材に冷却水F1を通水可能な流路が設けられ、他方の部材に回転軸3の外径側に配設される冷却溝が設けられている形態を例示したが、一方の部材に流路と冷却溝とを設け、他方の部材により冷却溝の開口を閉塞するようにしてもよい。つまり、流路が設けられる部材と別体の部材は、少なくとも冷却溝を構成する壁部の一部を有していればよい。
また、前記実施例では、冷却溝が回転軸3の外周に沿って連続する環状に形成される形態を例示したが、冷却溝は回転軸3の外周に沿って延びる略C字状に形成されてもよいし、回転軸3の外周に沿って所定間隔ずつ離間して配置されていてもよい。
また、前記実施例では、冷却ジャケットがケース4と小環状部材13とから形成される形態を例示したが、小環状部材13とスタッフィングボックス2とにより構成されていてもよい。詳しくは、例えば、スタッフィングボックス2に流路を設け、スタッフィングボックス2に小環状部材13を組み立てたときに、前記流路と凹溝13cとが連通するように構成してもよい。
また、前記実施例では、小環状部材13がケース4の軸孔40に挿入された状態で取付けられる形態を例示したが、小環状部材13は、ケース4の機外B側の側端面43に取付けられてもよい。
また、前記実施例では、1つの経路(第1の循環経路)で凹溝13cと冷却室Cに冷却水F1が循環する形態を例示したが、これに限られず、凹溝13cと冷却室Cとを別々の経路を用いて冷却水F1を循環させるようにしてもよい。
また、前記実施例において、凹溝13cの径方向断面積の異なる小環状部材13を複数用意しておけば、容量の異なる冷却ジャケットとすることができ汎用性に優れる。
また、前記実施例1〜3ではダブル型のメカニカルシールについて説明したが、メカニカルシールの型式はこれに限られず、例えばシングル型のメカニカルシールであってもよいし、タンデム型のメカニカルシールであってもよい。
1 メカニカルシール
2 スタッフィングボックス(ハウジング)
3 回転軸
4 ケース(大環状部材)
6a,6b 静止密封環
9 回転密封環
12 ボルト(ネジ)
13 小環状部材
13c 凹溝(冷却溝)
14 絞り部材
27b 連通路(流路)
47d 連通路
131 小環状部材
131c 連通路(流路)
200,300 メカニカルシール
400 ケース(大環状部材)
401 凹溝(冷却溝)
410 ケース(大環状部材)
411 凹溝(冷却溝)
A 機内
B 機外
C 冷却室(環状溝部)
F1 冷却水(冷却流体)

Claims (5)

  1. ハウジングと回転軸との間に形成され、回転軸に対し固定された回転密封環及び、該回転密封環の機内側及び機外側にそれぞれ配置されて前記回転密封環との間にそれぞれ摺動面を形成する一対の静止密封環からなる軸封部と、該軸封部をシールする冷却ジャケットと、を備えるメカニカルシールであって、
    前記冷却ジャケットは、前記ハウジングの一に取付けられる大環状部材と前記大環状部材の内径側に着脱可能に設けられる小環状部材とによって、冷却流体が通過可能な冷却流路と、前記回転軸の外径側に沿って配設され前記冷却流体が通過可能な冷却溝とから構成されており、
    前記ハウジング、前記一対の静止密封環、前記回転密封環及び前記大環状部材により中間室が形成され、該中間室はさらにパイプによって、外径側の冷却室と内径側のシーラント室に区分され、
    前記大環状部材に前記小環状部材を組み付けたときに、前記冷却流路と前記冷却溝とが連通する第1冷却経路が形成され
    前記大環状部材には、シーラントが通過可能な第1シーラント経路が、前記第1冷却経路とは独立して、形成されており、
    前記冷却室には、前記ハウジングに形成された第2冷却経路が連通し、前記シーラント室には、前記ハウジングに形成された第2シーラント経路が連通し、
    前記小環状部材と共に前記大環状部材が前記ハウジングに取付けられたときに、前記第1冷却経路が前記冷却室に連通して、前記第1冷却経路、前記冷却室及び前記第2冷却経路により、冷却循環経路が形成されるとともに、
    前記第1シーラント経路が前記シーラント室に連通して、前記第1シーラント経路、前記シーラント室及び前記第2シーラント経路により、シーラント循環経路が形成されることを特徴とする冷却ジャケットを備えるメカニカルシール。
  2. 前記冷却溝は、前記回転軸の外周に沿って連続する環状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却ジャケットを備えるメカニカルシール。
  3. 前記冷却流路は前記大環状部材に設けられ、前記冷却溝は前記大環状部材の内径側に着脱可能に取付けられる前記小環状部材に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の冷却ジャケットを備えるメカニカルシール。
  4. 前記小環状部材は、前記大環状部材にネジにより固定されることを特徴とする請求項3に記載の冷却ジャケットを備えるメカニカルシール。
  5. 前記小環状部材には、該小環状部材と前記回転軸との間を絞る絞り部材が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の冷却ジャケットを備えるメカニカルシール。
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