JP3782690B2 - メカニカルシール装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱する摺動シール面を冷却する冷却流体の吐出手段を有するメカニカルシール装置に関する。特に、摺動シール面に冷却水を効率的に送り込んで冷却するメカニカルシール装置の技術分野に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明に係わる先行技術には、米国特許第4,290,611号明細書が存在する。図5は、この米国特許第4,290,611号の図面の図4に開示されていると共に、この特許に関連して一般に市販されているメカニカルシール製品の半断面図でもある。
【0003】
この図5に示す従来例1のメカニカルシール100は、回転軸151に取り付けられてスタフィングボックス150内にボルト160を介して装着されるように一対に構成さいされている。
このメカニカルシール100は、スタフィングボックス150の内部から軸方向外方に向かって配置された液体シール装置101と第1シールフランジ110と第2シールフランジ120と気体シール装置121とが主要な構成部品である。
【0004】
液体シール装置101は、回転軸151にスクリューソケット152を介して固着されたスリーブ153の外周面に装着されている。この回転軸151とスリーブ153との嵌合間にはOリング154が配置されており、このOリング154により嵌合間をシールしている。
この液体シール装置101は、回転シール面103を設けた回転用密封環102がU型ガスケット107とスペーサ108を介してスプリング105により弾発に押圧されている。
又、回転シール面103と接面する固定シール面113を設けた固定用密封環112は、第1シールフランジ110の内周面にOリング116を介して嵌着されている。又、固定用密封環112に固着されたピン115を介して固定用密封環112と第1シールフランジ110の内周面に設けられた溝とが係止している。
【0005】
第1シールフランジ110と結合する第2シールフランジ120の内周面内には、気体シール装置121が装着されている。この気体シール装置121は、止めねじ126を介してスリーブ153に固着されたドライブスリーブ125を設けている。このドライブスリーブ125に嵌合してスライドする第2回転用密封環122には動圧発生させる流体通路が形成された第2回転シール面123が設けられている。
この第2回転用密封環122の第2回転シール面123と密接する第2固定シール面133を設けた第2固定用密封環132は、Oリング136を介して第2シールフランジ120の内周嵌合面に嵌着されている。この第2固定シール面133には第2回転シール面123と協動して動圧を発生させる溝が周面に沿って複数設けられている。更に、第2回転用密封環122はコイルばね127を介して弾発に第2固定用密封環132側へ押圧されている。
【0006】
このメカニカルシール100は、回転軸151に組み立てられて回転軸151と共に、スタフィングボックス150の内周面156内に挿入して内装される。そして、第2シールフランジ120にはドレン128が設けられているので、気体シール装置121を設けた中間室130は、大気圧とほぼ同一の圧力に構成されている。
【0007】
上述のように構成されたメカニカルシール100では、例えば、フラッシングポート158から冷却水を噴出しても、液体シール装置101は被密封流体に満たされているので、冷却水は被密封流体と混合してしまう。このため、シール装置101の冷却効果が悪く、摺動面が発熱すると熱変形が惹起する。このシール面が熱変形した状態で摺動すると、変形した摺動面が急速に摩耗してシール面の平面度を維持することが困難になる。そして、シール面の密封能力が低下し、ついには、シール面が熱変形すると共に強度を低下させ、最後には破損することになる。
【0008】
更に、気体シール装置121が配置されている室にドレン128から冷却水を供給しても、構造的に液体シール装置は冷却できないので、各シール装置101、121ごとに冷却供給ポートを設けなければならない。このため冷却供給装置が高価に成ると共に、メカニカルシール装置が複雑になって大型になる問題がある。
【0009】
更に、本発明に関する従来例2として、特開平7−12238号公報が存在する。この公報には、図4に示すメカニカルシール100Bが開示されている。この図4は、メカニカルシールがケーシング201と回転軸202との間に装着された半断面図である。
このメカニカルシール100Bは、ボイラーの循環ポンプやミルや撹拌機等の軸封として用いられるものである。
【0010】
図4において、回転軸206は、ハウジング207に設けられた貫通孔207Aに嵌通している。この回転軸206とハウジング207との間を機内Aと機外Bとに密封に仕切るためにメカニカルシール100Bが装着されている。
このメカニカルシール100Bは、回転密封環201がスリーブ204を介して回転軸206に嵌着されて回転軸206と共に回転するように構成されている。この回転軸206と回転密封環201との嵌合間は被密封流体が漏洩しないようにOリングにより密封されている。そして、回転密封環201には回転シール面S1が設けられており、この回転シール面S1が相手の固定シール面S2と密接してシールする。
【0011】
一方、静止密封環202は、ハウジング207の部品にOリングを介して摺動自在に嵌合している。Oリングは、ハウジング207の環状溝に挿嵌されてハウジング207と静止密封環202との嵌合間を密封する。
又、静止密封環202には端面に固定シール面S2が設けられており、この固定シール面S2が回転シール面S1と摺動密接して回転中でも機内Aから機外Bへ流体が流失しないように阻止される。この固定シール面S2が回転シール面S1に圧接するように固定用密封環202の背面からスプリング203により押圧されている。
【0012】
回転軸206に嵌着したスリーブ204には内周側にパーシャルインペラ205が形成されている。又、ハウジング207にはパーシャルインペラ205の近傍から外方に冷却液流出孔207aが形成されている。
更に又、ハウジング207には、メカニカルシール100Bの近傍に貫通する冷却液流入孔207bが形成されている。そして、冷却液流出孔207aと冷却液流入孔207bとは、機外で配管により連通している。その配管には冷却器が装備されていて、メカニカルシール100Bを冷却して冷却液流出孔207aから流出する冷却液は冷却器により再冷却される。
しかし、パーシャルインペラは、スリーブの外周面に一体に形成されているために、更には、ハウジング内に形成されているために、インペラの直径を大きくすることができない。更に、回転軸206の回転数はポンプの吐出量により決められるから、回転軸206の回転数をメカニカルシール100Bの必要に応じて勝手に大きくすることができない。このため、パーシャルインペラ205の吐出量は小さく、メカニカルシール100Bを十分に冷却することができない。
【0013】
この様に構成された従来例1のメカニカルシール100Aは、各シール装置101、121ごとに冷却装置を設けて冷却用の各流体通路158、128から各シール装置へ噴射させて冷却しなければならないが、この様な構造にすると設備のコストが上昇する。更には、メカニカルシール100Aが構造的に大型になる問題がある。
又、被密封流体が、例えば、火力発電所の高温水の循環ポンプの場合の様に高温の場合には、液体シール装置を冷却するために冷却水を高温水に噴射しても液体シール装置を効率的に冷却することは困難である。
【0014】
更に、メカニカルシール100Aがタンデムシールやダブルシールのようにシール装置が2個以上配列されている場合には、1つの冷却装置で2つのシール装置を冷却することは構造的に困難になる。
【0015】
又、上述の従来例2のように、ポンプ等の回転軸206に嵌着したスリーブ204のパーシャルインペラ205を回転して冷却水を循環させ、メカニカルシール100Bを冷却する場合には、回転軸206の回転数はポンプに合わせ設定されており、パーシャルインペラ205に合わせて回転数を設定したり、更にはパーシャルインペラの直径をポンプの構造に関係なく設定することはできないから、規制されたパーシャルインペラ205の特性によりメカニカルシール100Bの冷却効果が低下する。そして、回転用、及び固定用密封環201、201のシール面S1、S2が発熱温度により変形し、更には、シール面S1、S2が破損することになる。その結果、シール能力が低下して被密封流体が漏洩することになる。
【0016】
また、この従来例2の冷却方法では、メカニカルシール100Bが並列にダブルに配置された構成の場合に、このパーシャルインペラ205では、2つのメカニカルシール100Bをこの1つのパシャルインペラ205で冷却することは、困難になる。そして、液体側のシール装置の摺動発熱を冷却することが困難になるから、密封環201、202を破損させ、或いは、シール能力を低下させて被密封流体を漏洩させることになる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のような問題点に鑑み成されたものであって、その発明が解決しようとする技術的課題は、冷却用流体をシール装置へ効果的に循環させて冷却することにある。更に、メカニカルシールがタンデム型シールであっても、ダブル型シールであっても同一の冷却水でシール装置を同時に冷却を可能にすることにある。
【0018】
又、回転軸の回転数が小さくとも、効率的にシール装置を冷却できるようにし、ポンピングリングをポンプ等の装置の回転軸に利用できるようにすることにある。
【0019】
更に、シール装置の冷却装置の設備費を安価にし、しかも、ポンピングリングの加工を容易にし、更にはハウジングに取付可能なシールフランジに内装できるような小型にすることにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述のような技術的課題を解決するために成されたものであって、その技術的解決手段は以下のように構成されている。
【0021】
請求項1に係わる本発明のメカニカルシール装置は、回転軸とハウジングとの間で機内側の被密封流体をシールするために軸方向へ並列に配置された第1シール装置と第2シール装置とを少なくとも有するメカニカルシール装置であって、前記ハウジングに形成されて前記第1シール装置の前記被密封流体側と反対側の面を流れる流体用の流体通路と、前記流体通路に連通する流体室を前記第1シール装置と前記第2シール装置との間の前記ハウジングに形成する通路空間面と、前記通路空間面内に配置されて外周面を有すると共に前記回転軸と連結する内周面を有するポンピングリングと、前記流体室に連通して前記ポンピングリングから前記第2シール装置側へ流出する前記流体を排出する排出孔とを具備し、前記ポンピングリングには前記流体通路に連通する流入口と前記第2シール装置側と連通する流出口とを有して前記流体を前記第2シール装置側へポンピングするポンピング孔と、前記外周面に形成された吐出テーパ面とを有し、且つ前記吐出テーパ面は前記通路空間面に設けたテーパ状絞り面と間隙を有して対向し、前記流体通路側の流体を前記ポンピングリングの回転時に前記第2シール装置側へ吐出させる吐出手段に構成したものである。
【0022】
請求項1に係わる本発明のメカニカルシール装置では、ポンピング孔は、小径のポンピングリングの内部にでも設けることができるので、ポンピングリングの直径を小型にすることができる。このため、メカニカルシール装置全体の径方向を小さくできる効果を奏する。
しかも、ポンピング孔は、流体通路から流れる流体の軸方向の流れとほぼ同一方向に構成されているから、流体の流れに沿ってポンピングの能力が大きくなる。一方、ポンピング孔は孔によるポンピング作用であるから、他の大型の吐出手段に比較して大きなポンピング作用は期待できなくとも、このポンピングリングには、ポンピング孔の他に周速度の大きい吐出テーパ面による吐出手段が設けられているから、流体通路から流れてくる流体を、第2シール装置側へ効果的に吐出させることが可能になる。
さらに、ポンピングリングの外周面と通路空間面とは非接触状態にした吐出手段に構成されているから、耐久性のないゴム材製のシールリングでポンピングリングの外周面側の間隙をゴム材製のシールリングによりシールする必要もない。したがって、密封環のみによりシールできるので、メカニカルシール装置の耐久能力が飛躍的に向上できる。また、吐出 テーパ面には、径方向へ突出するインペラーなどを必要としないから、メカニカルシール装置が大径になるのを防止できる。そして、各シール装置を軸方向へ向かって連続に冷却して摺動するシール面の摩耗と、シール面のシール能力の低下が防止できる効果を奏する。
【0023】
請求項2に係わる本発明のメカニカルシール装置は、ポンピングリングの吐出テーパ面に流体通路側の流体を第2シール装置側へ圧送する凹凸状の圧送部が形成されているものである。
【0024】
請求項2に係わる本発明のメカニカルシール装置では、吐出テーパ面に流体通路側の流体を第2シール装置側へ圧送する圧送部が形成されているから、ポンピング作用に加えて、さらに強力に流体を圧送させる効果が期待できる。
しかも、圧送部は、吐出テーパ面に沿って小さく設けるだけで、吐出テーパ面と協働してその効果が発揮できるから、メカニカルシール装置の能力の向上と共に、全体を小型にできる効果を奏する。
【0025】
請求項3に係わる本発明のメカニカルシール装置は、ポンピングリングの外周面には吐出テーパ面より第2シール装置側に絞り部を形成し、絞り部と通路空間面との間隙寸法を吐出テーパ面とテーパ状絞り面との間隙寸法より小さくして流体を吐き出す絞り手段に構成したものである。
【0026】
請求項3に係わる本発明のメカニカルシール装置では、ポンピングリングの外周面に吐出テーパ面より第2シール装置側に絞り部を形成し、絞り部と通路空間面との間隙寸法を吐出テーパ面とテーパ状絞り面との間隙寸法よりも小さくして流体を強く吐出させる絞り手段に構成したものであるから、吐出手段により吐出される流体をさらに絞り手段により吐き出すことができる効果を奏する。
【0027】
請求項4に係わる本発明のメカニカルシール装置は、ポンピングリングにポンピング孔より内周側へ設けた取付段部に第2回転用密封環を嵌着したものである。
【0028】
請求項4に係わる本発明のメカニカルシール装置では、ポンピングリングにポンピング孔より内周側へ設けた取付段部に第2回転用密封環を嵌着したものであるから、第2回転用密封環を回転軸に取り付ける取付部品を不用として、メカニカルシール装置を小型にすることが可能になる。しかも、ポンピング孔と第2シール装置を近接できるから、第2シール装置の冷却効果と共に、洗浄効果も発揮させることが可能になる。さらに、メカニカルシール装置の構造が簡単になるから、メカニカルシール装置の製作コストが低減できる効果を奏する。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる実施の形態のメカニカルシール装置1を図面に基づいて詳述する。尚、説明する各図面は、特許用の概念図ではなく、実験データを基にした寸法関係が正確な設計図である。
【0030】
図1は、本発明に係わるメカニカルシール装置1を装置本体(スタフィングボックス)60と回転軸70の外面にカートリッジとして装着した断面図である。又、図2は、図1のメカニカルシール装置1を回転軸70に嵌合した装置本体60の内方側から軸方向へ見た側面図である。
【0031】
図1は、本発明に係わる第1実施の形態のメカニカルシール装置1である。この図1のメカニカルシール装置1は、全体構成として、装置本体60の外面61にボルト63を介してシールフランジ30が取り付けられている。尚、装置本体(スタフィングボックス)60とシールフランジ30を合わせてハウジングとする。
一方、回転軸70に嵌着したスリーブ53の外周面にシールカラー50を嵌合してセットスクリュー51により両者を回転軸70に固定されている。そして、複数のセットプレート55をシールフランジ30の側面にボルト59により取り付けるとともに、セットプレート55の溝56とシールカラー50の環状凸部37とを係合してシールフランジ30とシールカラー50とを位置決めし、その後にシールカラー50を回転軸70に固定状態に取り付ける。
【0032】
装置本体60に取り付けられるシールフランジ(取付部品)30は、図2に示すように、環状の円板を成すと共に、円板の側面周方向に沿って4等配に取付孔45が設けられている。このシールフランジ30は、取付孔45を介してボルト63により装置本体60に取り付けられる。
【0033】
このシールフランジ30の内周面には、第1固定用密封環3と第2固定用密封環21を取り付ける第1取付部31と第2取付部42とが設けられている。更に、第1取付部31と第2取付部42との間に流体が通る通路空間面32が設けられていると共に、第1取付部31の外周側に保持面33が形成されている。
【0034】
又、シールフランジ30には、外周面に沿って等配に2〜3個の冷却用の流体通路40と、排出孔41が設けられている。この流体通路40は、外方の配管と接続可能な管用ねじ部40Aから内周面の液体シール装置(第1シール装置)2側へ連通するように形成されている。そして、この流体通路40からクエンチング液(冷却流体)が直接に各シール面6、12に注水されるように成されており、この各シール面6、12の摺動発熱を冷却すると共に、ポンピングリング47のポンピング孔48を通って第2シール装置20に於ける第2固定用密封環21の第2シール面22の近傍に達して排出孔41から流出する。そして、クエンチング液により第1及び第2固定用密封環3、21及び第1及び第2回転用密封環10、23などの摺動する各シール面6、12、22、24が冷却される。
【0035】
又、シールフランジ30の内周面には、第1取付部31が設けられている。この第1取付部31には固定ピン35が設けられており、この固定ピン35が第1固定用密封環3の係合溝7に係止して第1固定用密封環3を回動しないように保持している。
又、シールフランジ30には、内周面に保持面33が設けられており、この保持面33にパッキン5の固着部5Bが密封に嵌着されている。
【0036】
更に、シールフランジ30の外周面には、等配に4個の冷却用の流体通路40が設けられており、この流体通路40は内周面の第1取付部31側近傍へ貫通していると共に、第1固定用密封環3の背面及びパッキン5の背面に流体が通じるように通路空間面32が形成されている。又、この流体通路40が内周面へ貫通した開口の1部を塞ぐようにしてシールフランジ30の嵌合面38に流体ガイド環46が嵌着している。そして、止めねじ等により流体ガイド環46はシールフランジ30に係止される。この流体ガイド環46は、クエンチング液を第1固定用密封環3の第1シール面6の近傍やパッキン5の背面へ導入するように外周に案内面が形成されている。
【0037】
又、シールフランジ30には、内周に通路空間面32が設けられており、この通路空間面32内をクエンチング液が通るように形成されている。そして、シールフランジ30に設けられた流体通路40と同じ様な形状の排出孔41が他方に設けられており、この排出孔41は通路空間面32内を介して流体通路40と連通している。そして、流体通路40から導入されたクエンチング液は、通路空間面32内を通過して排出孔41から排出される。
【0038】
第1固定用密封環3は、第1シール面6を端面に形成されており、その背面に周方向等配に係合溝7が形成されている。更に、第1固定用密封環3の背面には周方向に等配の複数のばね座が設けられており、各ばね座に各々スプリング9が着座して第1固定用密封環3を弾発に第1シール面6方向へ押圧している。又、第1固定用密封環3の外周面には、パッキン5と密接する段部に形成された接合面3Aと支持面3Bとが設けられている。この第1固定用密封環3は、炭化珪素、カーボン、セラミックなどの材質により構成されている。
【0039】
又、第1相対シール面12を設けた第1回転用密封環10の内周側段部13は、スリーブ53のフランジ53Aの外周角部に密封嵌着している。この第1回転用密封環10は、スリーブ53に設けられた固定ピン52に係止溝11が係止して回動が阻止されている。更に、第1回転用密封環10はスナップリング53Bにより軸方向が固定されている。この第1回転用密封環10は、炭化珪素、カーボン、その他セラミックなどの材質により構成されている。
【0040】
パッキン5はゴム材製で円板状のリングに形成されている。このパッキン5には外周に固着部5Bが設けられていると共に、内周がシールリップ部5Aに形成されている。そして、固着部5Bはシールフランジ30の保持面33に嵌着されている。
更に、このパッキン5の固着部5Bは、カバープレート43により側面から保持されていると共に、パッキン5の被密封流体側を内方のシールリップ部5A側へほぼ半分までカバープレート43により覆われている。そして、被密封流体の圧力が直接パッキン5に作用しないようにカバープレート43により保護している。
【0041】
又、パッキン5は、固着部5Bが保持面33に固着されていると共に、シールリップ部5Aが第1固定用密封環3の外周面に形成された段部状の接合面3Aに密封嵌合して第1固定用密封環3を第1シール面6方向へシールリップ部3Aの弾性力で弾発している。
このパッキン5の材質は、パーフロロエラストマ、フッ素ゴム、ニトリルゴム、EPDM、ポリエステル系エラストマーなどが用いられる。
【0042】
シールカラー50は、一端にフランジ50Aを設けた円管状に形成されている。又、スリーブ53も、一端にフランジ部53Aを設けた円管状に形成されている。そして、シールカラー50とスリーブ53とは互いのフランジ50Aとフランジ部53Aを反対側にしてスリーブ53にシールカラー50を嵌合している。このスリーブ53を回転軸70にOリングを介して密封に嵌着すると共に、セットスクリュー51によりシールカラー50とスリーブ53とが回転軸70に固定されている。そして、第1回転用密封環10の内周面は、前述したようにスリーブ53のフランジ部53AにOリングを介して密封嵌合している。
【0043】
カバープレート43は、断面L型を成して環状に形成されている。そして、カバープレート43の外周面は、スタフィングボックス60の被密封流体側の内周面62に嵌着すると共に、シールフランジ30の取付の位置決めをする。このカバープレート43は大気側の外部からボルト44により固定できるように成されている。
そして、カバープレート43は環状を成してパッキン5の固着部5Bが移動しないように保持すると共に、パッキン5の被密封流体側に於ける内方中間までカバーする内径に形成されて被密封流体の圧力が作用しないようにしている。
【0044】
シールフランジ30の通路空間面32内の流体室15には、ポンピングリング47の内周面が回転軸70にOリングを介して一体に嵌着されている。このポンピングリング47には、ポンピング孔48が設けられており、このポンピング孔48は、ポンピングリング47における上流側の流入口48Aから下流側の流出口(吐出口)48Bへ向って外方へ傾斜している。更に、ポンピングリング47の周方向へ沿って等配にポンピング孔48が配置されている。
そして、ポンピング孔48は、ポンピングリング47の回転時に、液体シール装置2側のクエンチング液を排出孔41の方向へポンピング作用をする。又、ポンピングリング47の内周に設けられた凹部57Aは、シールカラー50の管状端部の凸部57Bと凹凸係合部57に係止して、ポンピングリング47と回転軸70とが一体に回転するように構成されている。
【0045】
ポンピングリング47の外周角部には吐出テーパ面47Aが形成されている。この吐出テーパ面47Aと対向する通路空間面32にはテーパ状絞り面32Aが形成されている。この吐出テーパ面47Aとテーパ状絞り面32Aとの協動作用により吐出手段を構成する。そして、クエンチング液を効率的に第2シール装置へ圧送する。
更に、ポンピングリング47の吐出テーパ面47Aより第2シール装置20側に絞り部16を形成し、この絞り部16と通路空間面32との間を近接させ、この両面の間隙Hを吐出手段を構成する間隙よりも小さくし、絞り手段に構成している。この絞り部16によりクエンチング液は、強く吐出される。
【0046】
次に、シールフランジ30の流体室15の機外方向には、第2シール装置20が設けられている。
この第2シール装置20は、クエンチング液が外部に流出しないようにシールするものである(又、被密封流体の補助的シールの役目もする)。第2シール装置20には、第2固定用密封環21が設けられている。この第2固定用密封環21は、端面に第2シール面22が形成されており、シールフランジ30の内周面の嵌合面36とOリングを介して移動自在に嵌合している。そして、第2取付部42に取り付けられる第2固定用密封環21は、外周のフランジに設けられた係合溝25と第2取付部42の固定ピン27とが係止して回動しないように保持されている。又、第2固定用密封環21は、第2取付部42に着座した第2スプリング28により背面から第2シール面22方向へ押圧されている。
【0047】
又、第2固定用密封環21と対向して密接する第2回転用密封環23には、第2相対シール面24が形成されている。この第2相対シール面24は、第2固定用密封環21の第2シール面22と密封に接触する。更に、第2回転用密封環23の外周面は、ポンピングリング47の取付段部47A1にOリングを介して嵌着している。又、第2回転用密封環23は、ポンピングリング47に固着した固定ピン49と係止溝26とが係止している。そして、第2回転用密封環23はポンピングリング47と連結して回転軸70と共に回動するように構成されている。 この第2固定用密封環21及び回転用密封環23は、炭化珪素、カーボン、その他のセラミックスなどの材質から製作される。
【0048】
第2シール装置20の外方には、クエンチング液を第2シール装置側へ流すための凸状の案内堰部17がシールフランジ30に設けられている。この案内堰部17は、円板リング、又はスナップリング等をシールフランジ30に設けた溝に嵌着状態に取り付けられる。そして、ポンピング孔48から吐出されるクエンチング液を案内堰部17により第2シール装置20側へ流出させて第2シール装置20を冷却し、その後に排出孔41から流出させる。そして、この排出されたクエンチング液は、配管の途中で冷却器Rにより冷却されると共に、供給ポンプMにより又流体通路40へ圧送される。
【0049】
図3は本発明の第2実施の形態を示すメカニカルシール装置の要部断面図である。
図3のメカニカルシール装置は、図1に示すメカニカルシール装置1とほぼ同様に構成されている。相違する点は、ポンピングリング47の外周に設けられた吐出テーパ面47Aに断面が台形状ねじの圧送部47Bが形成されている。そして、クエンチング液を第2シール装置20側へ強力に圧送する。
この圧送部47Bの実施例としては、テーパ状絞り面32Aに同様な形状の圧送部47Bを形成することもできる。更には、吐出テーパ面47Aとテーパ状絞り面32Aとの両面に圧送部47Bを形成しても良い。この圧送部47Bは断面3角形、断面4角形の凹凸部に形成しても良い。又は、テーパ方向に溝を形成しても良い。そして、凹凸部は軸方向へねじ状に連続し、溝は周方向に等配に配設される。
【0050】
このポンピングリング47は、第1シール装置2と第2シール装置20との間の流体室15に設けられていると共に、シールフランジ30に設けられた流体通路40と排出孔41との連通する途中に配設されている。そして、被密封流体とは混合しない冷却されたクエンチング液により冷却されるから、複数のシール装置を効率的に、しかも、連続に冷却することが可能になる。
【0051】
【発明の効果】
本発明に係わるメカニカルシール装置によれば、以下のような効果を奏する。
【0052】
請求項1に係わる本発明のメカニカルシール装置によれば、ポンピングリングに流体通路側の内径側の流入口から外方へ傾斜するポンピング孔を有するので、流体を吐出させて軸方向へ配置されたシール装置を効果的に冷却できる。このために、シール装置を効率的に冷却して、シール装置の摺動時の摩擦に伴う発熱によりシール装置のシール面の損傷、更にはシール能力の低下が防止できる効果を奏する。
しかも、ポンピング孔は、ドリル加工で可能であるから、加工が簡単であり、製作コストを低減する効果が期待できる。
しかも、1つのポンピングリングで軸方向へ並列する2つのシール装置を連続して強力に冷却する効果が可能になる。
【0053】
請求項2に係わる本発明のメカニカルシール装置によれば、ポンピングリングの吐出テーパ面に設けた圧送部によって第2シール装置側へ流体を吐出させることが可能になる。その結果、シール装置を効果的に冷却できる効果を奏する。さらに、圧送部は吐出テーパ面に設けているから、ポンピングリングの径方向を小型にして、メカニカルシール装置全体の径方向を小型にすることが可能になる。
【0054】
請求項3に係わる本発明のメカニカルシール装置によれば、ポンピングリングの外周に設けた絞り手段によって、さらに流体を第2シール装置側へ圧送することが可能なる。その結果、軸方向へ配置されたシール装置が効率的に冷却できる効果を奏する。
【0055】
請求項4に係わる本発明のメカニカルシール装置によれば、小型化を可能にしたポンピングリングにおけるポンピング孔の内周側に第2回転用密封環を取付可能にしたので、全体のメカニカルシール装置を小型にできる効果を奏する。さらに、ポンピングリングに設けたポンピング孔と第2回転用密封環を近接させることによって、第2シール装置の冷却効果と共に、洗浄効果を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる第1実施の形態のメカニカルシール装置をシールフランジと回転軸との間に装着した断面図である。
【図2】図1に示すメカニカルシール装置を装置本体の内部から見た軸方向の側面図である。
【図3】本発明に係わる第2実施の形態を示すメカニカルシール装置の要部を示す半断面図である。
【図4】従来例のメカニカルシールの断面図である。
【図5】他の従来例のメカニカルシールの状態図である。
【符号の説明】
1 メカニカルシール
2 液体シール装置
3 第1固定用密封環
3A 接合面
3B 支持面
5 パッキン
5A シールリップ部
5B 固着部
5C 補強環
6 第1シール面
7 係合溝
9 スプリング
10 第1回転用密封環
11 係合溝
12 相対シール面
13 内周側段部
15 流体室
17 案内堰部
20 第2シール装置
21 第2固定用密封環
22 第2シール面
23 第2回転用密封環
24 第2相対シール面
25 係合溝
26 係合溝
27 固定ピン
28 第2スプリング
30 シールフランジ
31 第1取付部
32 通路空間面
32A テーパ状絞り面
33 保持面
35 固定ピン
36 嵌合面
37 位置決凸部
38 嵌合面
40 流体通路
40A 管用ねじ部
41 排出孔
42 第2取付部
43 カバープレート
44 ボルト
45 取付穴
46 流体ガイド環
47 ポンピングリング
47A 吐出テーパ面
47B 圧送部
48 ポンピング孔
49 固定ピン
50 シールカラー
51 セットスクリュー
52 固定ピン
53 スリーブ
53A フランジ
53B スナップリング
55 セットプレート
56 係合溝
57 凹凸係合部
57A 凹部
57B 凸部
59 ボルト
60 装置本体(スタフィングボックス)
61 外面
62 内周面
63 ボルト
70 回転軸
M 供給ポンプ
R 冷却器
Claims (4)
- 回転軸とハウジングとの間で機内側の被密封流体をシールするために軸方向へ並列に配置された第1シール装置と第2シール装置とを少なくとも有するメカニカルシール装置であって、前記ハウジングに形成されて前記第1シール装置の前記被密封流体側と反対側の面を流れる流体用の流体通路と、前記流体通路に連通する流体室を前記第1シール装置と前記第2シール装置との間の前記ハウジングに形成する通路空間面と、前記通路空間面内に配置されて外周面を有すると共に前記回転軸と連結する内周面を有するポンピングリングと、前記流体室に連通して前記ポンピングリングから前記第2シール装置側へ流出する前記流体を排出する排出孔とを具備し、前記ポンピングリングには前記流体通路に連通する流入口と前記第2シール装置側と連通する流出口とを有して前記流体を前記第2シール装置側へポンピングするポンピング孔と、前記外周面に形成された吐出テーパ面とを有し、且つ前記吐出テーパ面は前記通路空間面に設けたテーパ状絞り面と間隙を有して対向し、前記流体通路側の流体を前記ポンピングリングの回転時に前記第2シール装置側へ吐出させる吐出手段に構成したことを特徴とするメカニカルシール装置。
- 前記ポンピングリングの吐出テーパ面には前記流体通路側の流体を前記第2シール装置側へ圧送する凹凸状の圧送部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載メカニカルシール装置。
- 前記ポンピングリングの外周面には吐出テーパ面より前記第2シール装置側に絞り部を形成し、前記絞り部と前記通路空間面との間隙を前記吐出テーパ面と前記テーパ状絞り面との間隙より小さくして前記流体を吐出させる絞り手段に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメカニカルシール装置。
- 前記ポンピングリングには前記ポンピング孔より内周側に設けた取付段部に第2回転用密封環を嵌着したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のメカニカルシール装置。
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