JP5252905B2 - 分岐脂肪酸の製造方法 - Google Patents
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これらの方法は、二つある同一の官能基の一方のみを選択的に変換する工程を含むため、収率が低いという問題があり、また、二つある同一の官能基の一方を保護基で保護して反応させる方法(非特許文献2)が報告されているが、反応工程が多く、操作が迂遠であるという問題がある。
この方法は、二種のグリニャール化合物を用いるため基質汎用性が低く製造コスト面で良好でないという問題がある。また、用いたハロカルボン酸の11−ブロモウンデカン酸は10−ウンデセン酸にHBrを付加させて製造したと考えられ、炭素数11以上のハロカルボン酸の報告やその入手方法についても記載はなく、長鎖分岐脂肪酸の製造は確立されていなかった。
i)ジオールから得られるホスホニウム塩とアルデヒドとをウィティヒ反応に付し、次いで還元し、さらに末端をカルボキシル化する方法(非特許文献4)。
この方法では、目的とするクロスカップリング反応以外にエステルとグリニャール化合物との副反応が生じ、収率の低下だけでなく副生物との分離という問題がある。
(b)これと式(3)で表わされるグリニャール化合物を反応させることを特徴とする式(4)で表される炭素数13〜26の分岐脂肪酸の製造方法に係るものである。
1.(a)工程
(a)工程は、式(1)で表される環状エステル類を酢酸溶媒中、臭化水素と反応させて式(2)で表されるブロモカルボン酸を得る反応である。
尚、その他の溶媒を酢酸と共に用いることも可能であるが、酢酸のみを溶媒とするのが好ましい。
その他の溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、メトキシエタン、t−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、デカン等の炭化水素類;t−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類;アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類及びこれらの混合物、水性溶媒等が挙げられる。
反応時間は、1〜50時間が好ましく、5〜25時間がより好ましい。
(b)工程は、(a)工程で得られた式(2)で表わされるブロモカルボン酸と式(3)で表わされるグリニャール化合物を反応(クロスカップリング反応)させて、式(4)で表わされる分岐脂肪酸を得る反応である。
金属触媒としては、例えば、銅化合物、パラジウム化合物、ニッケル化合物、亜鉛化合物、スズ化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、ロジウム化合物、ルテニウム化合物が挙げられ、円滑な炭素−炭素結合生成反応の促進の点から、銅化合物が好ましい。
II)、ジリチウムテトラクロロキュプレート等が挙げられ、このうち、ハロゲン化銅、ジリチウムテトラクロロキュプレートが好ましく、ハロゲン化銅がより好ましい。
また、ハロゲン化銅としては、臭化銅(I)、臭化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、ヨウ化銅(I)、ヨウ化銅(II)等が挙げられるが、臭化銅(I)と塩化銅(I)が好ましく、臭化銅(I)がさらに好ましい。
なお、本発明における(b)工程は、銅化合物並びに三価のリン化合物及び/又はクラウンエーテル存在下で行うことがより好ましく、銅化合物及び三価のリン化合物存在下、又は銅化合物及びクラウンエーテル存在下で行うことがさらに好ましい。
R2で表わされる炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖又は分枝鎖のいずれでもよいが、炭素数1〜4の直鎖アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
R2で表わされるメチル基又はメトキシ基を有してもよいフェニル基としては、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基が好ましい。
R3で表わされる炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖又は分枝鎖のいずれでもよいが、直鎖のものが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基がより好ましく、エチル基がさらに好ましい。
また、斯かるクラウンエーテルは、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、これらのクラウンエーテルは、ハロゲン化アルキルにナトリウムアルコキシドを反応させる等の公知のエーテル合成法によって得ることができ、市販品を用いることもできる。
溶媒は、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、メトキシエタン、t−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、デカン等の炭化水素類;t−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類及びこれらの混合物等が挙げられる。
本発明における(b)工程の反応時間は、例えば、反応時間は30分〜50時間程度である。
なお、生成物の確認は、文献既知の手法により、別途合成した標品とガスクロマトグラフィーにて比較した。
(a)工程
15−ペンタデカノリド14.3g(59.5mmol)、32%臭化水素/酢酸溶液24.8g(98.0mmol、1.6eq)を、テフロン(登録商標)で保護された100mLオートクレーブに入れ、窒素置換した後、密閉し、60℃のオイルバスにつけて、16時間、攪拌した。攪拌には、マグネチックスターラーを使用した。冷却後、水14mLを加え、熱ヘキサン200mLを用い、分液ロートに移送した。イオン交換水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、n−ヘキサンで晶析することで、目的物17.4g(収率91%)を得た。
(b)工程
次に、還流冷却管、10mL滴下ロート、マグネチックスターラー、温度センサーを備えた50mLの4口フラスコに、前述の合成した15−ブロモペンタデカン酸800mg(2.5mmol)とトリフェニルホスフィン(関東化学)3.9mg(0.006eq)を入れ、減圧乾燥した。アルゴン雰囲気下、臭化銅(I)(アルドリッチ社)11mg(0.03eq)、無水テトラヒドロフラン1mLを加え、原料を溶解した。室温下、sec−ブチルマグネシウムブロミド5.5mL(3eq、1.36Nテトラヒドロフラン溶液)を、1時間で滴下した。1時間攪拌した後、1N塩酸水溶液10mLを加え、ヘキサン50mLで2回抽出した。イオン交換水10mLで2回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過、減圧濃縮して、粗生成物726mgを得た。
ガスクロマトグラフィー(カラム:アジレント社製Ultra−2、30m×0.2mm×0.33μm、DET300℃、INJ300℃、カラム温度100℃→300℃、10℃/分)で、内標にオクタデカンを用い、定量した結果、収率93%であった。15−ペンタデカノリドから全収率84%で得た。
(a)工程は下記に示す操作方法で行い、(b)工程は実施例1と同様の操作で16−メチルオクタデカン酸を製造した。
15−ペンタデカノリド14.3g(59.5mmol)、32%臭化水素/酢酸溶液24.8g(98.0mmol、1.6eq)を、テフロン(登録商標)で保護された100mLオートクレーブに入れ、窒素置換した後、密閉し、120℃のオイルバスにつけて、16時間、攪拌した。攪拌には、マグネチックスターラーを使用した。冷却後、水14mLを加え、酢酸エチル200mLを用い、分液ロートに移送した。この酢酸エチル層を、キャピラリーGCにて分析した結果、原料は消失し、目的物15−ブロモペンタデカン酸のみのピークが観測された。飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、減圧濃縮後、酢酸エチル−n−ヘキサン混合溶媒で晶析、目的物17.1g(収率90%)を得た。
上記の合成した15−ブロモペンタデカン酸を用いて実施例1と同様の操作で(b)工程を行い、16−メチルオクタデカン酸を15−ペンタデカノリドから全収率84%で得た。
(a)工程は下記に示す操作方法で行い、(b)工程は実施例1と同様の操作で16−メチルオクタデカン酸を製造した。
15−ペンタデカノリド1.0g(4.2mmol)、32%臭化水素/酢酸溶液3.3g(13.1mmol、3.1eq)を、還流冷却管、マグネチックスターラーを備えた50mL2口フラスコに入れ、60℃のオイルバスにつけて、窒素雰囲気下、16時間、攪拌した。サンプリングし、GC分析した結果、面積百分率は、目的物15−ブロモペンタデカン酸10%、原料15−ペンタデカノリド89%、副生物15−アセトキシペンタデカン酸1%であった。更に、80℃のオイルバスにて、8時間加熱、攪拌した結果、その面積百分率は、目的物31%、原料65%、副生物4%。更に、100℃のオイルバスにて、20時間加熱、攪拌した結果、その面積百分率は、目的物42%、原料52%、副生物6%。32%臭化水素/酢酸溶液3g(11.9mmol、2.8eq)を追加したのち、100℃のオイルバスにて、2時間加熱、攪拌した結果、その面積百分率は、目的物47%、原料47%、副生物6%であった。
上記の合成した15−ブロモペンタデカン酸を用いて実施例1と同様の操作で(b)工程を行い、16−メチルオクタデカン酸を15−ペンタデカノリドから全収率42%で得た。
(a)工程は実施例1と同様に行い、(b)工程は下記表1に示す銅化合物のみ、銅化合物とホスフィン、ホスファイト、又は銅化合物とクラウンエーテルを用いて、実施例1と同様の操作で16−メチルオクタデカン酸を製造した。結果を表1に示す。
実施例1に準じ、表2に示す環状エステル類とグリニャール化合物(2.5eq)を用いて、下記の化合物をそれぞれ製造した。
Claims (5)
- (a)工程を密閉下で行うものである請求項1記載の製造方法。
- 式(2)で表わされるブロモカルボン酸が12−ブロモドデカン酸、15−ブロモペンタデカン酸、又は16−ブロモヘキサデカン酸である請求項1又は2記載の製造方法。
- グリニャール化合物が、sec−ブチルマグネシウムブロミド、iso−プロピルマグネシウムブロミド、2−メチルプロピルマグネシウムブロミド、2−メチルブチルマグネシウムブロミド、3−メチルペンチルマグネシウムブロミド、3−メチルブチルマグネシウムブロミド、又は4−メチルペンチルマグネシウムブロミドである請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
- 式(4)で表わされる分岐脂肪酸が13−メチルペンタデカン酸、14−メチルペンタデカン酸、14−メチルヘキサデカン酸、15−メチルヘキサデカン酸、15−メチルヘプタデカン酸、16−メチルヘプタデカン酸、16−メチルオクタデカン酸、17−メチルオクタデカン酸、17−メチルノナデカン酸、18−メチルノナデカン酸、19−メチルエイコサン酸、19−メチルへネイコサン酸、20−メチルへネイコサン酸又は18−メチルエイコサン酸である請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
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