JP5252559B2 - 導電性ゴム部材 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真式複写機及びプリンター、またはトナージェット式複写機及びプリンター等の画像形成装置に用いられる帯電ロール、転写ロール、現像ロール、トナー供給ロール、クリーニングロール等の導電性ロール、クリーニングブレード、転写ベルトなどに特に好適な導電性ゴム部材に関する。
電子写真式複写機及びプリンターなどの画像形成装置の導電性ゴム部材は、カーボンブラック等により導電性が付与されているが、電気抵抗値のバラツキや、電気抵抗値の変化が問題となっていた。なお、導電性ゴム部材の表面の電気抵抗値のバラツキや、電気抵抗値の変化は、画像形成の際の白抜け等の原因となる。
そこで、本出願人は、カーボンブラックにより導電性を付与した弾性層表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層を設け、当該表面処理層が設けられた表面から内方に向かって電気抵抗値が漸減するように傾斜した現像ロールを提案している(特許文献1参照)。特許文献1に記載の現像ロールは、表面処理層が形成された領域のカーボンブラックのストラクチャーが表面から内方に亘って徐々に切断されて電気抵抗値が徐々に小さくなるように傾斜した傾斜抵抗層が形成されていることで、電気抵抗値のバラツキが小さい。
しかしながら、カーボンブラックを配合しない表面処理液を用いて表面処理層を形成した場合、弾性層におけるカーボンブラックのストラクチャーがイソシアネートの含浸により切断されることで、所望の電気抵抗値よりも高抵抗になってしまうことがあった。また、カーボンブラックを配合した表面処理液を用いて表面処理層を形成した場合、表面処理液によるカーボンブラックのストラクチャーの形成が均一にできずに電気抵抗値にバラツキが生じてしまうことがあった。
特開2003−202750号公報
本発明は、上述した事情に鑑み電気抵抗値のバラツキが小さく、長期間に亘って電気抵抗値が安定した導電性ゴム部材を提供することを課題とする。
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、ゴム基材に導電性を付与した導電性弾性層の表層部に、分散処理を施したカーボンブラックと、イソシアネート化合物とを含有する表面処理液を含浸させることによって形成した表面処理層を具備するものであり、前記分散処理は、分散剤による処理、又は酸・アルカリによる処理であり、荷重を100gから500gに変化させた際、各荷重下における電圧100Vで測定される電気抵抗値の最大値(R max )と最小値(R min )の比(R max /R min )が5未満であることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
本発明の第の態様は、第1の態様に記載の導電性ゴム部材において、前記分散剤は、高分子分散剤及び界面活性剤から選択される少なくとも一方であることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
本発明の第の態様は、第1又は2の態様に記載の導電性ゴム部材において、10000枚通紙後に印加電圧100Vで測定される電気抵抗値の最大値(Rmax)と最小値(Rmin)の比(Rmax/Rmin)が5未満であることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
本発明の第の態様は、第1〜の何れかの態様に記載の導電性ゴム部材において、ロール形状、ブレード形状、又はベルト形状であることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
本発明によると、分散処理を施したカーボンブラックと、イソシアネート化合物とを含有する表面処理液を含浸させることによって表面処理層を形成することにより、イソシアネート化合物と、分散処理を施したカーボンブラックとが導電性弾性層の内部まで含浸し、導電性弾性層の表層部の表面から内方に亘って導電パスが徐々に切断されると共に新たな導電パスが均一に形成され、電気抵抗値のバラツキが小さく、長期間に亘って電気抵抗値が安定した導電性ゴム部材とすることができる。
本発明の導電性ゴム部材の表層部の状態を説明する概略図である。 試験例1の測定方法を説明する図である。 試験例4の結果を示す図である。 試験例5の結果を示す図である。
符号の説明
10 導電性ロール
11 芯金
12 導電性弾性層
12A 導電性付与剤
12a 導電パス
13 表面処理層
13A カーボンブラック
13a 導電パス
13B イソシアネート化合物
本発明の導電性ゴム部材は、ゴム基材に導電性を付与した導電性弾性層の表層部に、分散処理を施したカーボンブラックと、イソシアネート化合物とを含有する表面処理液を含浸させることによって形成した表面処理層を具備しており、分散処理を施したカーボンブラックと、イソシアネート化合物とが導電性弾性層の内部まで含浸し、導電性弾性層の表層部の表面から内方に亘って導電パスが徐々に切断されると共に新たな導電パスが形成されたものである。
この導電性ゴム部材について、図1を用いながら説明する。なお、図1は本発明の導電性ゴム部材の表層部の状態を説明する概略図である。
本発明にかかる表面処理液は、分散処理を施したカーボンブラックと、イソシアネート化合物と、有機溶媒とを少なくとも含有するものである。ここでいう分散処理とは、カーボンブラックの表面処理液に対する分散性を向上させる処理であり、表面処理液に含有される有機溶媒に対する分散性を向上させるだけではなく、イソシアネート化合物に対する分散性も向上させる処理である。すなわち、分散処理とは、カーボンブラックの溶媒に対する分散性、及びカーボンブラックのイソシアネート化合物に対する親和性及び分散性を向上させる処理である。分散処理を施したカーボンブラックは、従来のようにカーボンブラック同士が凝集してしまうことがなく、イソシアネート化合物及び有機溶媒に均一に分散する。
この表面処理液を導電性弾性層に含浸させると、図1(a)に示すように、表面処理液中の有機溶媒により導電性弾性層12の表層部が膨潤し、導電性弾性層12の導電性付与剤12Aの連鎖が表面から内方に亘って切断されると共に、この切断部分にイソシアネート化合物13B及びカーボンブラック13Aが均一に充填される。このとき、分散処理を施したカーボンブラック13Aは、図1(c)に示すようにイソシアネート化合物13Bに対して親和性が良好であり、カーボンブラック13A同士の凝集が妨げられる。したがって、本発明の導電性ゴム部材の表層部(表面処理層13)には、従来の未処理カーボンブラックを含有する表面処理液を用いて形成した導電性ゴム部材の表層部(表面処理層)とは異なり、イソシアネート化合物13B中にカーボンブラック13Aが均一に分散した状態でイソシアネート化合物13Bとカーボンブラック13Aが含浸する。
これにより、図1(b)に示すように、本発明の導電性弾性層12の表層部には、導電性付与剤12Aによる導電パス12aと表面処理液のカーボンブラック13Bによる導電パス13aとが形成されるが、導電パス13aは、従来のように部分的に偏って形成されることなく、均一に形成される。また、全ての導電パス(12a及び13a)の密度は、導電性弾性層12の表面側が高くなり、結果として表層部に傾斜抵抗層が設けられることになる。
導電パス13aは、凝集していないカーボンブラック13Aにより均一な状態で表層部に形成されているので、本発明の導電性ゴム部材は、電気抵抗値の局所的な上昇や低下がなく、電気抵抗値のバラツキが少ないものとなる。導電性ゴム部材は、好ましくは、10000枚通紙後においても、印加電圧100Vで測定される電気抵抗値の最大値(Rmax)と最小値(Rmin)の比(Rmax/Rmin)が5未満となるものである。
また、分散処理を施したカーボンブラック13Aは、イソシアネート化合物13Bに凝集せずに均一に分散していることにより、導電性弾性層12の内部まで含浸しやすい。このため、本発明の導電性ゴム部材の表層部(表面処理層13)は、従来の未処理カーボンブラックを含有する表面処理液を用いて形成した表層部(表面処理層13)よりも、導電パス13aが内部まで形成される。このため、本発明の導電性ゴム部材は、使用時のニップ形成により生じる表面抵抗値バラツキも抑制することができ、長期間に亘って電気抵抗値が安定したものとなる。導電性ゴム部材は、好ましくは、荷重を100gから500gに変化させた際、各荷重下における印加電圧100Vで測定される電気抵抗値の最大値(Rmax)と最小値(Rmin)の比(Rmax/Rmin)が5未満となるものである。
また、分散処理を施したカーボンブラックを含む表面処理液を用いて形成した導電性ゴム部材は、カーボンブラックの添加量の増加により電気抵抗値が急激に低下する虞がないものである。すなわち、本発明の導電性ゴム部材は、容易に所望の電気抵抗値とすることができるものである。
本発明で用いる表面処理液は、上述したように、分散処理を施したカーボンブラックと、イソシアネート化合物と、有機溶媒とを少なくとも含有するものである。
カーボンブラックは、特に限定されるものではなく、一般的に導電性ロール等の導電性付与剤として用いられるものであればよい。例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、これらは単独で使用しても、複数種類を併用してもよい。また、カーボンブラックの平均一次粒子径は、特に限定されないが、表面処理液に対する分散性を考慮すると通常5〜200nm程度が好ましく、さらに好ましくは10〜100nm程度である。
カーボンブラックの分散処理としては、分散剤による処理や酸・アルカリによる処理が挙げられ、これら両方の処理を行ってもよい。
分散剤としては、例えば、一般的に高分子分散剤として使用されているものや、界面活性剤が挙げられ、これらは単独で用いても、併用してもよい。これらの分散剤は、窒素や酸素といった電子供与性の原子を有するもの、アミノ基やイミド基などの塩基性官能基を有するものが好ましい。窒素や酸素といった電子供与性の原子を有するもの、アミノ基やイミド基などの塩基性官能基を有するものは、イソシアネート化合物に対する親和性が良好だからである。また、分散剤の数平均分子量は500〜10万であることが好ましく、さらに好ましくは500〜5万、特に好ましくは500〜10000である。分散剤の数平均分子量がこの範囲となることで、分散処理を施したカーボンブラックが導電性弾性層の内部に含浸しやすくなるからである。数平均分子量が10万より大きくなると、導電性弾性層の内部までカーボンブラックが含浸し難くなるため好ましくない。
高分子分散剤としては、熱可塑性樹脂系分散剤及び熱硬化性樹脂系分散剤のいずれも使用することができ、熱硬化性樹脂としては、ウレタン系、アクリル系、ポリイミド系、アルキッド系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系、メラミン系、フェノール系等の樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、アクリル系、塩化ビニル系、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系、ウレタン系、ポリアミド系、ポリカーボネート系等の樹脂が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂系分散剤及び熱可塑性樹脂系分散剤のいずれにおいても、特にポリウレタン樹脂系の分散剤が好ましい。イソシアネート化合物に対する親和性が、より良好だからである。なお、ポリウレタン系樹脂とは、複数のウレタン結合を主鎖中に有する高分子化合物であり、例えば、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応して得られるものが挙げられる。
また、親水性を示すポリエチレンオキサイドと親油性を示すポリプロピレンオキサイドとの共重合からなるポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレートも好適に用いることができる。イソシアネート化合物に対する親和性が良好であり、分散性に優れるためである。なお、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレートは、重合度により数種のイソシアネート化合物との親和性を制御することが可能となる。ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレートとしては、例えば、ブレンマーPEPシリーズ(日本油脂株式会社)、ブレンマーAEPシリーズ(日本油脂株式会社)が挙げられる。
界面活性剤としては、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用できるが、ノニオン性界面活性剤やアニオン性界面活性剤が好ましい。濡れ性を向上させ、カーボンブラックの分散性および分散安定性をより向上させることができるためである。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アセチレンジオール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル変性シリコーンなどのシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
分散剤による処理の方法は、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、上述した分散剤、及び分散媒(有機溶媒)等を適宜配合して、5〜70℃程度で1〜50時間程度、撹拌混合し、分散媒に溶解した状態で分散処理を施したカーボンブラックを得る方法がある。また、カーボンブラック、分散剤、分散媒(有機溶媒)と共に、イソシアネート化合物等も配合して、攪拌混合することにより、分散処理を施したカーボンブラックと、イソシアネート化合物とを含有する表面処理液を得る方法がある。
上述したカーボンブラックの酸・アルカリによる処理とは、酸処理及びアルカリ処理のうち少なくとも一方の処理を行うことを指し、酸処理とアルカリ処理の両方を行ってもよい。酸処理としては、例えば、カーボンブラックを、高温雰囲気下で空気と接触させて反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、高温下での空気酸化後に低温下でオゾン酸化する方法、カーボンブラックを、硝酸や過酸化水素水等の酸性溶液に浸漬させる液相酸化処理方法などが挙げられる。また、アルカリ処理としては、例えば、水酸化ナトリウムやアミン等のアルカリ性溶液に浸漬させる方法が挙げられる。なお、アルカリ処理は、イソシアネート化合物に対する親和性の点からより好ましい。このため、酸処理とアルカリ処理の両方を行う場合は、酸処理のあとにアルカリ処理をするのが好ましい。
カーボンブラックの分散処理として、分散剤による処理、及び酸・アルカリによる処理の両方を行う場合は、カーボンブラックに酸・アルカリによる処理を行った後に、分散剤を添加するのが好ましい。酸・アルカリによる処理を行うことにより、分散剤に対する親和性・分散性が高まるためである。
イソシアネート化合物としては、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート(TODI)などのイソシアネート化合物、および前記記載の多量体および変性体、ポリオールとイソシアネートからなるプレポリマー等を挙げることができる。
また、表面処理液には、アクリルフッ素系ポリマー、アクリルシリコーン系ポリマー、及びポリエーテル系ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーを含有させてもよい。
ここで、ポリエーテル系ポリマーは、有機溶剤に可溶であるのが好ましく、また、活性水素を有して、イソシアネート化合物と反応して化学的に結合可能なものが好ましい。好適には、水酸基を有するのが好ましく、ポリオール又はグリコールを挙げることができる。また、ポリエーテル系ポリマーは、アリル基を有しているのが好ましい。さらに、ポリエーテル系ポリマーは、数平均分子量が300〜1000であることが好ましい。これは表面処理層に弾性を付与するために好ましいからである。また、このポリエーテルは両末端を備えたものより片末端のみのものの方が望ましい。
このようなポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル、ポリアルキレングリコールジメチルエーテル、アリル化ポリエーテル、ポリアルキレングリコールジオール、ポリアルキレングリコールトリオール等を挙げることができる。
このように表面処理液にポリエーテル系ポリマーを添加することで、表面処理層の柔軟性や強度が向上し、その結果、所望の導電性ゴム部材の表面が摩耗したり、当接する感光体表面等を傷つけたりする虞がなくなる。
表面処理液に用いられるアクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーは、所定の溶剤に可溶でイソシアネート化合物と反応して化学的に結合可能なものである。アクリルフッ素系ポリマーは、例えば、水酸基、アルキル基、又はカルボキシル基を有する溶剤可溶性のフッ素系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。また、アクリルシリコーン系ポリマーは、溶剤可溶性のシリコーン系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸シロキサンエステルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。
また、表面処理液中のアクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーは、イソシアネート化合物100質量部に対し、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーの総量を2〜30質量部となるようにするのが好ましい。2質量部より少ないとカーボンブラック等を表面処理層中に保持する効果が小さくなる。一方、ポリマー量が多すぎると、帯電ロールの電気抵抗値が上昇し放電特性が低下するという問題や、相対的にイソシアネート化合物が少なくなって有効な表面処理層が形成できないという問題がある。
有機溶媒は、イソシアネート化合物を溶解できるものであれば特に限定されないが、分散剤との親和性が高いものが好ましい。例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン等が挙げられる。
また、表面処理液に用いられるカーボンブラックは、イソシアネート化合物に対して、分散処理を施す前の状態で55質量%以下であるのが好ましい。カーボンブラックが多すぎると、脱落、物性低下等の問題が生じたり、電気抵抗値が上昇しやすくなる虞があり、好ましくないからである。
導電性弾性層は、ゴム基材に導電性付与剤を配合することで導電性を付与したものである。かかるゴム基材は、用途に応じて選定すればよく、例えば、ポリウレタン、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレンゴム(SBR)、これらのブレンド等を挙げることができる。
導電性付与剤としては、カーボンブラック、金属粉などの電子導電性付与材、イオン導電付与材、これらを混合したもの等が挙げられ、好ましくはカーボンブラックである。カーボンブラックは、種類は特に限定されないが、例えば、ケッチェンブラック、トーカブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。また、イオン導電付与材としては、有機塩類、無機塩類、金属錯体、イオン性液体等が挙げられる。有機塩類、無機塩類としては、過塩素酸リチウム、4級アンモニウム塩、三フッ化酢酸ナトリウムなどが挙げられる。また、金属錯体としては、ハロゲン化第二鉄−エチレングリコールなどを挙げることができ、具体的には、特許第3655364号公報に記載されたジエチレングリコール−塩化第二鉄錯体などを挙げることができる。一方、イオン性液体は、室温で液体である溶融塩であり、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、特に、融点が70℃以下、好ましくは30℃以下のものをいう。具体的には、特開2003−202722号公報に記載された1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルフォニル)イミドなどを挙げることができる。
なお、導電性弾性体は、上記ゴム基材、導電性付与材に、適宜加硫剤等を配合して加熱硬化することにより成形する。
導電性弾性層に表面処理液を含浸させる方法は、導電性弾性層を表面処理液に浸漬させる方法でも、スプレー等により表面処理液を塗布させる方法でもよい。表面処理液に浸漬させる時間、スプレーで吹き付ける回数、又は表面処理液の量は適宜調節すればよい。表面処理層は、導電性弾性層に表面処理液を含浸させた後、硬化させることにより形成する。導電性弾性層の表層部に表面処理液を含浸・硬化させることにより、表面処理層は導電性弾性層と一体的に設けられる。
なお、表面処理層を形成した導電性ゴム部材は、トナー成分等の付着防止性能が大幅に向上し、また、導電性弾性層内部から表面にブリードする汚染物質をブロックするというブリード防止効果も向上し感光体等の汚染性に優れたものである。
本発明にかかる導電性ゴム部材は、例えば、電子写真式複写機及びプリンター、またはトナージェット式複写機及びプリンター等の画像形成装置に用いられる帯電ロール、転写ロール、現像ロール、トナー供給ロール、クリーニングロール等の導電性ロール、クリーニングブレード、転写ベルトなどに用いて好適なものである。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、これら実施例の説明は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されない。
(実施例1)
<導電性弾性層の形成>
エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG−102;ダイソー社製)100質量部に導電材としてトリフルオロ酢酸ナトリウム0.3質量部、酸化亜鉛(ZnO)5質量部、加硫剤として2−メルカプトイミダゾリン(アクセル−22)2質量部を配合してロールミキサーで混練りし、直径6mmの金属製シャフトの表面にプレス成形し、直径14mmに研磨加工して、シャフト表面にエピクロルヒドリンゴムからなる導電性弾性層を形成し、未処理ロール1を得た。
<カーボンブラックの分散処理>
アセチレンブラック20質量部、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(重量平均分子量1500)(表中には「分散剤A1」と記載)1.5質量部、酢酸ブチル78.5質量部を、ボールミルを用いて50℃で3時間分散混合しカーボンブラック分散液1を得た。
<表面処理層の形成>
酢酸エチル100質量部に、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)20質量部、カーボンブラック分散液1を25質量部配合し、ボールミルで3時間分散混合して表面処理液を得た。未処理ロール1を23℃に保った表面処理液に30秒間浸漬し、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱して表面処理層を形成し、実施例1の導電性ロールを得た。
(実施例2)
ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(重量平均分子量1500)の代わりに、ポリオキシエチレンアルキルアミン(重量平均分子量3000)(表中には「分散剤B」と記載)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の導電性ロールを得た。
(実施例3)
カーボンブラックの分散処理において、予めアルカリ処理を施したアセチレンブラックを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3の導電性ロールを得た。なお、このアセチレンブラックは、2Mの水酸化ナトリウム溶液80℃中で15分間放置した後、純水にて水洗し、120℃で4時間乾燥することで得た。
(実施例4)
カーボンブラックの分散処理において、アセチレンブラックのかわりにファーネスブラックを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例4の導電性ロールを得た。
(実施例5)
<導電性弾性層の形成>
3官能ポリエーテル系ポリオールであるGP−3000(三洋化成社製)100質量部に、トーカブラック#5500(東海カーボン社製)を4質量部およびVALCAN XC(キャボット社製)3質量部を添加し、粒度が20μm以下となる程度まで分散させ、80℃に温調した後、脱水操作を行ってA液を得た。
一方、プレポリマーアジプレンL100(ユニロイヤル社製)25質量部に、コロネートC−HX(日本ポリウレタン社製)11質量部を添加・混合し、80℃に温調してB液を得た。このA液とB液とを混合し、ゴムロールを得た。この導電性ロールの表面を研磨し、所定の外径まで調整して、未処理ロール2を得た。
<表面処理層の形成>
酢酸エチル100質量部に、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)20質量部、カーボンブラック分散液1を25質量部配合し、ボールミルで3時間分散混合して表面処理液を得た。未処理ロール2を23℃に保った表面処理液に30秒間浸漬し、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱して表面処理層を形成し、実施例5の導電性ロールを得た。
(実施例6)
カーボンブラックの分散処理において、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(重量平均分子量1500)の代わりに、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(重量平均分子量12000)(表中には「分散剤A2」と記載)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例6の導電性ロールを得た。
(実施例7)
カーボンブラックの分散処理において、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(重量平均分子量1500)の代わりに、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(重量平均分子量20000)(表中には「分散剤A3」と記載)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例7の導電性ロールを得た。
(実施例8)
カーボンブラックの分散処理において、アセチレンブラックの代わりにケッチェンブラックを用い、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(重量平均分子量1500)の代わりに、ポリエチレングリコールモノアクリレート(重量平均分子量3000)(表中には「分散剤C」と記載)を用いた以外は、実施例5と同様にして、実施例8の導電性ロールを得た。
(実施例9)
<導電性弾性層の形成>
中高ニトリルタイプのアクリロニトリルブタジエンゴム70質量部、エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG−102;ダイソー社製)30質量部に、導電材としてアセチレンブラック(電気化学社製)5質量部、過塩素酸テトラエチルアンモニウム(関東化学社製)1質量部、サブ(黒サブ純種;天満サブ化工社製)5質量部、サンセラーTET(三新化学工業社製)1.5質量部、サンセラーCZ(三新化学工業社製)1.5質量部、硫黄1.0質量部を、それぞれ添加してロールミキサーで混練りし、直径14mmに研磨加工して、シャフト表面にエピクロルヒドリンゴムからなる導電性弾性層を形成し、未処理ロール3を得た。
<表面処理層の形成>
酢酸エチル100質量部に、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)20質量部、アセチレンブラック5質量部、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−アルキルエーテル(重量平均分子量3000)(表中には「分散剤D」と記載)0.5質量部配合し、ボールミルで3時間分散混合して表面処理液を得た。未処理ロール3を23℃に保った表面処理液に30秒間浸漬し、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱して表面処理層を形成し、実施例9の導電性ロールを得た。
(実施例10)
表面処理層の形成において、予め酸処理ならびにアルカリ処理を施したケッチェンブラックを用いた以外は、実施例9と同様にして実施例10の導電性ロールを得た。なお、このケッチェンブラックは、2Mの硝酸80℃中で15分間放置した後、純水にて水洗し、120℃で4時間乾燥し、さらに、2Mの水酸化ナトリウム溶液80℃中で15分間放置した後、純水にて水洗し、120℃で4時間乾燥することで得た。
(比較例1)
酢酸エチル100質量部に、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)20質量部、未処理のアセチレンブラック5質量部を配合し、ボールミルで3時間分散混合した表面処理液を得た。この表面処理溶液を23℃に保ったまま、未処理ロール1を30秒間浸漬後、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱して表面処理層を形成し、比較例1の導電性ロールを得た。
(比較例2)
ポリエチレングリコールモノアクリレート(重量平均分子量3000)を用いなかった以外は、実施例8と同様にして比較例2の導電性ロールを得た。
(比較例3)
<コート層の形成>
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)20質量部の代わりに、ウレタン塗料(ネオレッツR−940;楠本化成社製)を用いて30μmのコート層を形成した以外は、実施例8と同様にして比較例3の導電性ロールを得た。
(比較例4)
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-アルキルエーテル(重量平均分子量3000)を用いなかった以外は、実施例9と同様にして比較例4の導電性ロールを得た。
(試験例1)電気抵抗測定
各実施例および比較例の導電性ロール1本内における軸方向および周方向のバラツキを評価するため、図2に示すように、導電性ロールの導電性弾性層12の表面に電極の幅を2mmとしたステンレス電極51を密着し、芯金11との間のロールを回転させながらその位置における抵抗値を測定した。これを長手方向の6箇所で測定し、ロール全体の抵抗値の平均を算出した。また、ロール全体の抵抗値の最大値(Rmax)、最小値(Rmin)および最大値と最小値の比(Rmax/Rmin)を抵抗値バラツキとした。この結果を表1に示す。
(試験例2)画像評価
各実施例及び比較例の導電性ロールを帯電ロールとして、市販のレーザープリンター(LP−8600FX:EPSON社製)に実装した。このレーザープリンターを起動し、LL環境(10℃×20%RH)及びHH環境(30℃×85%RH)の下で印刷を行い、その印刷物の画像評価を行った。なお、画像が良好であった場合は○、画像が普通であった場合は△、画像が不良であった場合は×とした。「画像が不良」とは濃度ムラや劣化などが見られる状態を指す。この結果を表1に示す。
(試験例3)連続印刷試験
各実施例及び比較例の導電性ロールを帯電ロールとして、市販のレーザプリンター(LP−8600FX:EPSON社製)に実装し、HH環境(35℃×85%RH)にて10000枚連続印刷後、その印刷物の画像評価、電気抵抗値測定を行った。この結果を表1に示す。なお、画像が良好なものを○、画像が普通なものを△、画像が不良なものを×とした。なお、「画像が不良」とは濃度ムラや劣化などが見られる状態を指す。この結果を表1に示す。
(試験例4)ロールの荷重依存性
実施例8、9及び比較例2、3の導電性ロールについて、荷重を100g、200g、300g、400g、500gを変化させた際の電気抵抗値を測定した。NN環境(23℃、55%RH)下、SUS304板からなる電極部材の上に導電性ロールを置いてロールの両端に各荷重をかけた状態で、印加電圧100Vを30秒間印加した後、ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて芯金と電極部材との間の電気抵抗値を測定した。また、周方向に45°ずつ回転させて回転方向に亘って8ヶ所測定し、この結果から電気抵抗値の最大値と最小値の比(Rmax/Rmin)を算出した。この結果を表2および図3に示す。なお、実施例9においては、イソシアネート20質量部に対して、カーボンブラックの配合量を11質量部としたロールを測定した。
(試験例5)ロールのカーボンブラック添加量依存性
実施例9及び比較例4の導電性ロールについて、イソシアネート20質量部に対して、カーボンブラックの配合量を1,3,5,7,9,11質量部と変化させた際の電気抵抗値を測定した。電気抵抗値の測定は、試験例4と同様に測定し、この結果から電気抵抗値の平均を算出した。なお、測定における荷重は100gとした。この結果を表3、図4に示す。
Figure 0005252559
Figure 0005252559
Figure 0005252559
(試験結果のまとめ)
数平均分子量が3000以下の分散剤により処理を行ったカーボンブラックを用いた実施例1〜5及び8〜9の導電性ロールは、いずれも10000枚通紙後においても画像評価は良好であった。また、実施例1〜5及び8〜9の導電性ロールは、10000枚通紙後の抵抗値バラツキが2.3以下と小さかった。分散剤の数平均分子量が12000以上の分散剤により処理を行った実施例6及び7の導電性ロールは、10000枚通紙後の画像評価は普通であったが十分に使用できるものであり、抵抗値バラツキも小さかった。酸・アルカリ処理を行ったカーボンブラックを用いた実施例10は、画像評価が良好であり、抵抗値バラツキが小さかった。
これに対し、未処理のカーボンブラックを用いた比較例1の導電性ロールは、カーボンブラックの分散状態が悪く、導電パスが良好に形成できなかったためか、実施例1〜7の導電性ロールに比べて電気抵抗値が高かった。また、10000枚通紙後の電気抵抗値は上昇し、抵抗値バラツキも大きかった。未処理のカーボンブラックを用いた比較例2、4の導電性ロールも同様に、カーボンブラックの分散状態が悪く、導電パスが良好に形成できなかったためか実施例8、9の導電性ロールに比べて電気抵抗値が高く、10000枚通紙後の電気抵抗値のバラツキが大きかった。
また、実施例8〜9及び比較例2〜3の導電性ロールの荷重依存性を確認したところ、実施例8及び9の導電性ロールは荷重による電気抵抗値のバラツキは小さかったものの、比較例2は、荷重による電気抵抗値のバラツキが大きくなった。分散剤による処理を行ったカーボンブラックを用いてコート層を形成した比較例3の導電性ロールは、荷重依存性は小さかったものの、10000枚通紙後の抵抗値バラツキが大きく、そのロール表面にはワレの発生が見られた。
これより、ゴム基材に導電性を付与した導電性弾性層の表層部に、分散処理を施したカーボンブラックと、イソシアネート化合物とを含有する表面処理液を含浸させることによって形成した表面処理層を具備する導電性ロールは、電気抵抗値のバラツキが小さく、長期間に亘って電気抵抗値が安定したものとなることがわかった。
また、実施例9の導電性ロールについて、カーボンブラック添加量依存性を確認したところ、カーボンブラック添加量増加に伴う電気抵抗値の低下は緩やかであった。また、カーボン添加量を11質量部とした場合において、荷重依存性を確認したところ、電気抵抗値のバラツキは小さかった。
一方、比較例4について、カーボン添加量依存性を確認したところ、カーボンの添加量が5質量部から7質量部に変わったところで、急激な電気抵抗値の低下(パーコレーション現象)が見られた。なお、カーボン添加量を9質量部、11質量部とした際の電気抵抗値は、測定限界のため計測できなかった。
これより、分散処理を施したカーボンブラックの添加量を増加しても導電性ロールの電気抵抗値を急激に低下する虞がないため、導電性ロールを容易に所望の電気抵抗値とすることができることがわかった。また、分散剤を配合することにより、カーボンブラックの添加量を増加しても、導電性ロールの電気抵抗値を急激に低下する虞がないため、導電性ロールを容易に所望の電気抵抗値とすることができることがわかった。

Claims (4)

  1. ゴム基材に導電性を付与した導電性弾性層の表層部に、分散処理を施したカーボンブラックと、イソシアネート化合物とを含有する表面処理液を含浸させることによって形成した表面処理層を具備するものであり、前記分散処理は、分散剤による処理、又は酸・アルカリによる処理であり、荷重を100gから500gに変化させた際、各荷重下における電圧100Vで測定される電気抵抗値の最大値(R max )と最小値(R min )の比(R max /R min )が5未満であることを特徴とする導電性ゴム部材。
  2. 請求項1に記載の導電性ゴム部材において、前記分散剤は、高分子分散剤及び界面活性剤から選択される少なくとも一方であることを特徴とする導電性ゴム部材。
  3. 請求項1又は2に記載の導電性ゴム部材において、10000枚通紙後に印加電圧100Vで測定される電気抵抗値の最大値(Rmax)と最小値(Rmin)の比(Rmax/Rmin)が5未満であることを特徴とする導電性ゴム部材。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の導電性ゴム部材において、ロール形状、ブレード形状、又はベルト形状であることを特徴とする導電性ゴム部材。
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