まず、本発明に係る画像形成装置としてのプリンタの内部構造の概要について図1を基に説明する。図1は、本発明に係るプリンタの内部構造の一実施形態を説明するための正面断面視の説明図である。図1に示すように、本実施形態のプリンタ(画像形成装置)10は、箱形を呈した装置本体11と、この装置本体11の側面に対して開閉可能に付設されたカバー体19とを備えている。
前記装置本体11には、コンピュータ等の外部機器から伝送された画像情報に基づき画像を形成する画像形成部12と、この画像形成部12によって形成され、用紙Pに転写されたトナー画像に定着処理を施す定着部13と、転写用の用紙を貯留する用紙貯留部14と、画像形成部12へトナーを補給するトナー補給部15が内装されているとともに、当該装置本体11の上部に定着処理後の用紙Pが排出される用紙排出部16が形成されている。
前記装置本体11の上面適所には、用紙Pの出力条件等を入力操作するための図略の操作パネルが設けられている。この操作パネルには、図略の電源キーやスタートボタン、さらには出力条件を入力するための各種のキー等が設けられている。
前記画像形成部12は、用紙貯留部14から給紙された用紙Pにトナー画像を形成させるものであり、本実施形態では、上流側(図1における左側)から下流側へ向けて順次配設された、マゼンタ色のトナー(現像剤)を用いるマゼンタ用ユニット12Mと、シアン色のトナーを用いるシアン用ユニット12Cと、イエロー色のトナーを用いるイエロー用ユニット12Yと、ブラック色のトナーを用いるブラック用ユニット12Kとが備えられている。
そして、前記各ユニット12M,12C,12Y,12Kには、感光体ドラム121および現像装置122がそれぞれ備えられている。感光体ドラム121は、周面に静電潜像およびこの静電潜像に沿ったトナー像を形成させるためのものであり、周面に強靱で耐摩耗性に優れた極めて平滑なアモルファスシリコン層が積層され、これによってこれらの像を形成させるのに適したものになっている。そして、各感光体ドラム121は、図1において反時計方向へ向けて回転しつつ対応した現像装置122からトナーの供給を受けるようになっている。各現像装置122には、前記トナー補給部15からトナーが補給されるようになっている。
各感光体ドラム121の直下位置には帯電装置123がそれぞれ設けられているとともに、各帯電装置123のさらに下方位置には露光装置124が設けられている。そして、各感光体ドラム121は、前記帯電装置123によって周面が一様に帯電され、コンピュータ等から入力された画像データに基づく各色に対応したレーザー光が前記各露光装置124から帯電後の感光体ドラム121の周面に照射されることにより、各感光体ドラム121の周面に静電潜像が形成される。かかる静電潜像に現像装置122からトナーが供給されることにより、感光体ドラム121の周面にトナー像が形成される。
感光体ドラム121の上方位置には、当該各感光体ドラム121に当接するように駆動ローラ125aおよび従動ローラ125b間に張設された転写ベルト125が設けられている。この転写ベルト125は、各感光体ドラム121に対応して設けられた転写ローラ126によって感光体ドラム121の周面に押し付けられた状態で各感光体ドラム121と同期しながら駆動ローラ125aと従動ローラ125bとの間を周回するようになっている。
従って、転写ベルト125が周回することによりその表面に対しマゼンタ用ユニット12Mの感光体ドラム121によるマゼンタトナーのトナー像の転写が行なわれ、ついで転写ベルト125の同一位置にシアン用ユニット12Cの感光体ドラム121によるシアントナーのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれ、ついで転写ベルト125の同一位置にイエロー用ユニット12Yの感光体ドラム121によるイエロートナーのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれ、最後のブラック用ユニット12Kの感光体ドラム121によるブラックトナーのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれ、これによって転写ベルト125の表面にカラーのトナー像が形成される。この転写ベルト125の表面に形成されたカラーのトナー像が用紙貯留部14から搬送されてきた用紙Pに転写されることになる。
そして、各感光体ドラム121の図1における左方位置には当該感光体ドラム121の周面の残留トナーを除去して清浄化するクリーニング装置127が設けられている。クリーニング装置127によって清浄化処理された感光体ドラム121の周面は、新たな帯電処理のために帯電装置123へ向かうことになる。
クリーニング装置127で感光体ドラム121の周面から取り除かれた廃トナーは、所定の経路を通って図略のトナー回収ボトルに回収され、貯留される。
画像形成部12の図1における右方位置には、前記亜19の左面に沿うように上下方向に延びた用紙搬送路111が形成されている。この用紙搬送路111には、適所に搬送ローラ対112が設けられ、用紙貯留部14から繰り出された用紙は、この搬送ローラ対112の駆動で駆動ローラ125aに掛け回されている転写ベルト125へ向けて搬送される。
かかる用紙搬送路111には、駆動ローラ125aと対向した位置に転写ベルト125の表面と当接した第2転写ローラ113が設けられ、用紙搬送路111を搬送されつつある用紙Pが転写ベルト125と第2転写ローラ113とに押圧挟持されることによって転写ベルト125上のトナー像が当該用紙Pに転写される。
前記定着部13は、画像形成部12で転写された用紙上のトナー像に対し定着処理を施すものであり、後述する定着装置20を備えている。定着装置20は、前記第2転写ローラ113の直上位置に設けられ、前記転写ベルト125と第2転写ローラ113との間のニップ部を通過することにより転写ベルト125のトナー像が転写された状態で定着部13へ供給された用紙Pは、この定着装置20で定着処理が施される。
定着処理の完了したカラー画像付の用紙Pは、定着部13の上部から延設された排紙搬送路114を通って装置本体11の頂部に設けられた用紙排出部16の排紙トレイ161へ向けて排出されることになる。
前記用紙貯留部14は、装置本体11内における露光装置124より下方位置に挿脱可能に装着された用紙トレイ141を備えている。用紙トレイ141には用紙束が貯留される。
かかる用紙トレイ141は、上面が全面開口の箱体を備えて構成され、複数枚の用紙Pが積層されてなる用紙束P1が貯留可能になっている。かかる用紙トレイ141に貯留された用紙束P1の最上位の用紙Pは、下流端(図1における右端)の上面が用紙束P1からピックアップローラ142の駆動で用紙搬送路111へ向けて繰り出されるようになっており、1枚ずつ繰り出され用紙Pは、搬送ローラ対112の駆動で用紙搬送路111を通って画像形成部12における第2転写ローラ113と転写ベルト125との間のニップ部へ向けて送り込まれる。
前記トナー補給部15には、画像形成部12の各ユニット12M,12C,12Y,12Kにそれぞれ対応して4台のトナーカートリッジ151(マゼンタ用カートリッジ151M、シアン用カートリッジ151C、イエロー用カートリッジ151Yおよびブラック用カートリッジ151K)が設けられている。そして、各ユニット12M,12C,12Y,12Kの現像装置122には、残量が少なくなると対応した各カートリッジ151M,151C,151Y,151Kからトナーが補給されるようになっている。
前記カバー体19は、閉止姿勢S1(図1に実線で表示)と開放姿勢S2との間で姿勢変更することにより画像形成部12、定着部13および用紙貯留部14の図1における右面側に対して開閉可能とされている。かかるカバー体19は、普段、閉止姿勢S1に姿勢設定され、これによって画像形成部12の図1における右面との間に用紙貯留部14からの用紙を第2転写ローラ113へ向けて搬送するための用紙搬送路111が形成される。
そして、搬送ローラ対112や定着部13で紙詰りが発生したときカバー体19が開放され(すなわち、閉止姿勢S1から開放姿勢S2へ姿勢変更され)、これによって外部に露出した画像形成部12および定着部13から詰まった用紙を容易に取り除くことができる。
このようなカバー体19は、用紙搬送路111および排紙搬送路114に沿うように図1における正面視の形状が逆S字状に形成されているとともに、下端部が装置本体11の所定のフレームに支持された支持軸191回りに回動可能とされ、この支持軸191回りに正逆回動することで閉止姿勢S1と開放姿勢S2との間で姿勢変更し得るようになっている。
なお、カバー体19には、その内部に第2転写ローラ113を通過した用紙Pを反転させた後、用紙搬送路111へ戻して裏面側にも印刷処理を施すための両面印刷用の反転搬送路が設けられているが、その説明は省略する。
図2は、定着装置20の一実施形態を示す分解斜視図であり、図3は、その組み立て斜視図である。また、図4は、図3のIV−IV線断面図である。なお図2〜図4においてX−X方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
まず、図2に示すように、定着装置20は、プリンタ10の装置本体11の所定のフレームに固定される開放型の筐体21と、この筐体21の前方位置に装着される定着ローラ(加熱部材)30と、筐体21の後方位置で前記定着ローラ30に対向配置される加圧ローラ(加圧部材)40と、前記カバー体19の開閉動作に連動して前記加圧ローラ40を定着ローラ30に対し加圧した加圧状態T1(図4参照)と、この加圧状態T1を解除した解除状態T2との間で状態変化させる状態変化機構50とを備えている。
前記筐体21は、左右方向一対の略矩形状を呈する側板22と、これら一対の側板22の前縁部間に架設された前方架設板23と、同後部における下縁部間に架設された左右方向に細長い後方架設板24と、この後方架設板24から前上方へ向けて延設された台座板25とを備えている。
前記各側板22には、前記定着ローラ30を装着するための後部から前方に向けて先下がりに傾斜した傾斜長孔221が穿設されている。かかる各傾斜長孔221に定着ローラ30の左右の端部が嵌め込まれることによって定着ローラ30が定着装置20に装着される。
前記台座板25は、前記後方架設板24の前縁部から立設された立設板251と、この立設板251の上縁部から前方に向かって延設された水平板252とからなっている。水平板252には、左右の縁部からそれぞれ立設されたブラケット板253が設けられている。これら一対のブラケット板253は、後述のV字アーム51を支持するためのものである。
前記定着ローラ30は、用紙Pに熱を伝達することによる加熱処理でトナー像の用紙Pへの定着処理を施すものであり、内部にハロゲンランプ等の熱源としての通電発熱体が装着された、例えばアルミニウム合金等の金属製の軸筒31と、この軸筒31に同心で一体回転可能に外嵌された、あるいは軸筒31と当初から一体的に形成された、例えばアルミニウム合金等の金属製の定着ローラ本体32とを備えている。
定着ローラ本体32は、周面部分の厚み寸法が可能な限り薄く設定され、これによって
熱源からの熱がその周面に迅速に伝熱されることでプリンタ10の立ち上がり時の立ち上がり速度が速くなるようになされている。
前記軸筒31は、両端部が定着ローラ本体32の両端部からそれぞれ所定寸法だけ外方に向かって突設され、これらの外方に突出した部分が各側板22の傾斜長孔221に嵌め込まれることにより、定着ローラ30が筐体21に装着される。
また、軸筒31の一方の端部(図2に示す例では左方の端部)には同心で一体回転可能にギヤ33(図3)が外嵌されている。そして、図略の駆動モータからの駆動力がこのギヤ33を介して伝達されることにより、定着ローラ30が筒心回りに駆動回転する。
前記加圧ローラ40は、定着ローラ30との間で用紙Pを押圧挟持するためのものであり、状態変化機構50の後述する押圧板52によって前方に向けて押圧され得るようになっており、図4に示すように、前記状態変化機構50の所定の動作によりカバー体19の開閉動作に連動して用紙Pを定着ローラ30の周面に向けて加圧する加圧状態T1と、当該加圧を解除する解除状態T2(図4に二点鎖線で表示)との間で状態変化するようになされている。
かかる加圧ローラ40は、各端部が一対の側板22の各傾斜長孔221にそれぞれ遊嵌される、例えばアルミニウム合金等の金属製の軸筒41と、この軸筒41に同心で一体回転可能に外嵌された、例えばシリコンゴム製の弾性筒体42と、この弾性筒体42の周面に積層された、例えばフッ素樹脂等からなる被覆層43とを備えている。
前記軸筒41は、側板22に設けられた前記傾斜長孔221に遊嵌された状態で後述する押圧板52の装着溝521に嵌め込まれる。
そして、このような加圧ローラ40は、加圧状態T1に状態設定されることにより、その周面が用紙Pを介して定着ローラ30の周面を加圧し、これによって弾性筒体42が圧縮弾性変形することになる。
前記状態変化機構50は、前記筐体21の台座板25(図2)に設けられた一対のブラケット板253にそれぞれ支持され、かつ、カバー体19の開閉動作によって動作するV字状を呈したV字アーム(動作体)51と、前縁部で前記加圧ローラ40の軸筒41を押圧する押圧板52と、これらV字アーム51および押圧板52間に張設されたコイルスプリング(付勢部材)53とを備えている。
前記各V字アーム51は、上方に向かって延びる第1アーム511と、この第1アーム511の基端部(下部)から前方に向けて突設された第2アーム512とを備えている。
一方、前記各ブラケット板253には連結軸(支軸)54が貫通されている。そして、前記各V字アーム51は、それぞれの基端部が前記各ブラケット板253を貫通した連結軸54の各端部にそれぞれ同一位相で固定され、これによって連結軸54回りに一体回動可能になっている。
また、前記各第2アーム512の前端には、当該前端が互いに反対方向に向けて折り曲げられることによって形成した前記コイルスプリング53の一方の端部(前端部)を係止するための係止突起513が設けられている。
前記各押圧板52には、各前縁部が後方に向かってそれぞれ凹設されることによって形成された、前記軸筒41の各端部に外嵌される装着溝521がそれぞれ設けられていると
ともに、各後縁部が互いに反対方向に向けて折り曲げられることによって形成された、前記コイルスプリング53の他方の端部(後端部)を係止するための係止突起522がそれぞれ設けられている。
また、各押圧板52には、前端下縁部から下方に向けて突設された回動阻止突片523がそれぞれ設けられている。各回動阻止突片523には、各後縁部に前方へ向かって凹設された回動阻止凹部524がそれぞれ設けられている。一方、筐体21の各側板22には、前記回動阻止突片523と対応した位置に回動阻止凹部524を外嵌させるためのストッパ222がそれぞれ突設されている。これによって装着溝521が軸筒41に外嵌され、かつ、回動阻止凹部524がストッパ222に外嵌した押圧板52は、軸筒41回りの回動が阻止される。
そして、V字アーム51の係止突起513と、押圧板52の係止突起522との間には、前記コイルスプリング53が伸長状態で張設され、これによってV字アーム51と押圧板52とは、それらの係止突起513,522が互い接近する方向に向けて付勢されるようになっている。従って、第2アーム512が前方に向くようにV字アーム51が加圧姿勢U1(図4に実線で表示)に姿勢設定されたときには、伸長したコイルスプリング53の付勢力で加圧ローラ40の軸筒41は、押圧板52によって前方に向けて押圧される。これにより加圧ローラ40は、その弾性筒体42が定着ローラ30の周面に押圧当接して弾性変形した加圧状態T1になる。
これに対し、V字アーム51が加圧姿勢U1から連結軸54回りに時計方向に向けて略90°回動されることにより解除姿勢U2(図4に二点鎖線で表示)に姿勢変更されたときには、V字アーム51の第2アーム512の係止突起513が押圧板52の係止突起522へ接近するため、コイルスプリング53の付勢力が弱くなり、これによって加圧ローラ40は、図4に二点鎖線で示すように、その弾性筒体42の弾性変形が解消された解除状態T2になる。
そして、本実施形態においては、V字アーム51が加圧姿勢U1に姿勢設定された状態で、コイルスプリング53の中心線L1は、連結軸54の軸心Oの下方を通る一方、V字アーム51が解除姿勢U2に姿勢設定された状態で、コイルスプリング53の中心線L2は、連結軸54の軸心Oの上方を通るように、V字アーム51、押圧板52およびコイルスプリング53の相対的な位置関係が設定されている。
従って、V字アーム51が加圧姿勢U1に設定されたときには、V字アーム51は、連結軸54回りに反時計方向へ向かう付勢力をコイルスプリング53から受け、これによってV字アーム51の加圧姿勢U1は安定した状態で維持される。
これに対し、V字アーム51が解除姿勢U2に設定されたときには、V字アーム51は、連結軸54回りに時計方向へ向かう付勢力をコイルスプリング53から受け、これによってV字アーム51の解除状態T2は安定した状態で維持される。
このような状態変化機構50において、各V字アーム51における第1アーム511の先端には、互いに反対方向に向けて突設された操作突片(操作部)55がそれぞれ設けられている。これらの操作突片55は、カバー体19の開閉動作に連動してV字アーム51に姿勢変更を行わせるものである。
図5は、閉止姿勢S1に姿勢設定された状態のカバー体19を裏面側から見た部分斜視図である。図5では、図示の都合上、状態変化機構50の右側のみを示すとともに、筐体21を描くのを省略している。なお、図5におけるXおよびYによる方向表示は、図2の
場合と同様(Xは左右方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))である。
図5に示すように、カバー体19の裏面側には、前記操作突片55に対応した位置に、カバー体19を閉止するとき、解除姿勢U2に姿勢設定されていた当該操作突片55を前方に向けて押圧して加圧姿勢U1へ姿勢変更させる押圧板(動作体押圧板)192と、カバー体19を開放するとき加圧姿勢U1に姿勢設定されていた操作突片55を元の解除姿勢U2へ戻す戻し突片193とが設けられている。
前記押圧板192は、カバー体19の天板から垂下されており、開放されていたカバー体19が閉止される直前に解除姿勢U2に姿勢設定されているV字アーム51の係止突起513と干渉するように設置位置および長さ寸法が設定されている。
前記戻し突片193は、前記押圧板192より若干前方位置でカバー体19の天板から垂下されており、V字アーム51が加圧姿勢U1に姿勢設定された状態で必要かつ十分に操作突片55と干渉し得るようにカバー体19の天板からの垂下長が設定されている。
これらによって押圧板192と戻し突片193との間には、V字アーム51が加圧姿勢U1に姿勢設定された状態で操作突片55を収容し得る収容隙間194が形成されている。
図6および図7は、状態変化機構50の作用を説明するための説明図であり、図6は、カバー体19が閉止姿勢S1に姿勢設定されることによりV字アーム51が加圧姿勢U1に姿勢設定され、これによって加圧ローラ40が加圧状態T1に設定された状態、図7は、カバー体19が開放姿勢S2へ向けて開放操作されることにより、V字アーム51が解除姿勢U2に姿勢変更され、これによって加圧ローラ40が解除状態T2に変化された状態をそれぞれ示している。なお、図7および図8においては、当該作用の説明に必要な部品のみを記載し、筐体21等のその他の部材については記載を省略している。
まず、図6に示すように、カバー体19が閉止姿勢S1に姿勢設定されることによりV字アーム51が加圧姿勢U1に姿勢設定され、これによって加圧ローラ40が加圧状態T1に設定されているときには、V字アーム51の第1アーム511先端に設けられた操作突片55は、カバー体19の押圧板192と戻し突片193との間の収容隙間194に嵌り込み、かつ、コイルスプリング53の付勢力で戻し突片193に当接した状態になっている。
そして、このときには、第2アーム512の先端の係止突起513と、コイルスプリング53の後端の係止突起522との間に張設されたコイルスプリング53は伸長状態になっているため、この付勢力によりV字アーム51は、コイルスプリング53の中心線L1が連結軸54の軸心より下方に位置していることにより連結軸54回りに反時計方向へ向かう付勢力を付与され、これによって収容隙間194内の操作突片55が戻し突片193に当止した状態になっている。
また、このときには、押圧板52がコイルスプリング53の付勢力によってストッパ222による回り止め状態で前方に向かって押圧され、これによって軸筒41が押圧板52の装着溝521に支持されている加圧ローラ40が定着ローラ30の周面に押圧当止してその部分が圧縮弾性変形した状態になっている。
このような状態で定着ローラ30が駆動回転され、加圧ローラ40がこの定着ローラ30の駆動回転に従動して回転し、これら定着ローラ30と加圧ローラ40との間の当接位
置(ニップ部)に画像形成部12でトナー像が転写された直後の用紙Pが供給されることにより、当該用紙Pにトナー像の定着処理が施されることになる。
ついで、閉止姿勢S1に姿勢設定されていたカバー体19を開放姿勢S2に姿勢変更させるべく開放を開始すると(すなわち、カバー体19を支持軸191(図1)回りに時計方向に向けて回動させ始めると)、カバー体19の戻し突片193がV字アーム51の操作突片55を後方に向かって押圧するため、最初はV字アーム51がコイルスプリング53の付勢力に抗して連結軸54回りに時計方向に向けて回動する。
そして、コイルスプリング53の中心線L1が連結軸54の軸心を超えて当該軸心の上側へ移動すると(図7において移動後の中心線を中心線L2と表記して移動前の中心線L1と区別している)、今度は、コイルスプリング53の付勢力は、V字アーム51を連結軸54回りに時計方向へ向かわせるように作用するため、操作突片55は、カバー体19の押圧板192の前縁面に押圧当止した状態になる。
この状態でカバー体19の開放操作が継続されると押圧板192は後方に向かって移動するため、V字アーム51は、図7に示すように、コイルスプリング53の付勢力により操作突片55が押圧板192の前縁面に摺接しながら下降しつつ連結軸54回りに時計方向に向けて回動することになる。因みに、図7では、操作突片55が押圧板192の最下端に当接した状態を示している。
そして、その後にカバー体19が完全に解放されて開放姿勢S2に姿勢設定された状態では、コイルスプリング53は、図6に示すV字アーム51が加圧姿勢U1に姿勢設定されていたときと比べて相当短くなっているため、その短くなった分だけ付勢力が弱くなっている。特に、コイルスプリング53の自然長をV字アーム51が解除姿勢U2に姿勢設定されたときの係止突起513,522間の距離と等しくしておくと、V字アーム51が解除姿勢U2に姿勢変更された状態(すなわちカバー体19が開放された状態)でコイルスプリング53の付勢力は存在しなくなる。
これによって加圧ローラ40は、定着ローラ30に対しコイルスプリング53の付勢力による加圧状態T1から、コイルスプリング53の付勢力がほとんど作用しないか全く存在しない、加圧を解除した解除状態T2へ状態変化するため、定着装置20で紙詰まりが生じたときにカバー体19を開放することによって定着ローラ30と加圧ローラ40との間に挟まっている用紙Pを容易に引き出すことが可能になる。
以上詳述したように、本実施形態に係るプリンタ10は、所定の画像形成処理によりトナー像が形成された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに対しトナー像の定着処理を施す定着装置20を備え、この定着装置20は、伝熱により用紙Pを加熱する定着ローラ30と、この定着ローラ30へ向けて用紙Pを加圧する加圧状態T1と加圧を解除した解除状態T2との間で状態変化する加圧ローラ40とを備えてなるものであり、トナー像の形成された用紙Pを定着装置20に向けて縦方向に搬送する用紙搬送路111と、この用紙搬送路111および定着装置20を覆う開閉自在のカバー体19と、このカバー体19の開閉動作に連動して加圧ローラ40を解除状態T2と加圧状態T1との間で状態変化させる状態変化機構50とが設けられ、状態変化機構50は、加圧ローラ40が加圧状態T1に設定されたときに当該加圧ローラ40を定着ローラ30に向けて付勢する一方、加圧ローラ40が解除状態T2に設定されたときに当該加圧ローラ40の定着ローラ30に対する付勢力を弱めるように配設されたコイルスプリング53を有している。
かかる構成によれば、画像形成処理によりトナー像が形成された用紙Pは、縦方向に延びた用紙搬送路111を通ってその上端に対向配置された定着装置20に導入され、ここ
で定着ローラ30と加圧状態T1に設定された加圧ローラ40との間をコイルスプリング53の付勢力により加圧されつつ定着ローラ30からの熱を得てトナー像の定着処理が施されつつ搬送され、定着処理が完了したのち排紙トレイ161へ排出される。
そして、定着装置20で紙詰りが発生し、この紙詰りを解消するべくカバー体19が開放されると、状態変化機構50は、このカバー体19の開放操作に連動して定着ローラ30に対し加圧状態T1の加圧ローラ40を、コイルスプリング53の付勢力を弱めることによって当該加圧状態T1を解除した解除状態T2に状態変化させるため、定着ローラ30と加圧ローラ40との間の詰まった用紙Pは容易に引き出され、紙詰りが解消される。
このように、状態変化機構50が有するコイルスプリング53は、加圧ローラ40が加圧状態T1に設定されたときに当該加圧ローラ40を定着ローラ30に向けて付勢する一方、加圧ローラ40が解除状態T2に設定されたときに当該加圧ローラ40の定着ローラ30に向かう付勢力を弱めるように配設されているため、従来のように、加圧ローラ40が解除状態T2に設定されたときには、コイルスプリング53の大きな付勢力に対応するべくその構造が複雑になって装置コストが嵩むというような不都合が生じることはなく、装置コストの低減化に貢献した上で、定着装置20での紙詰りの解消操作の容易性を確保することができる。
そして、状態変化機構50は、カバー体19の開閉動作に応じて所定の動作を行うV字アーム51と、このV字アーム51に連係され、かつ、カバー体19が閉止されることによりV字アーム51の動作で加圧ローラ40を定着ローラ30に向けて押圧する押圧板52とを有し、コイルスプリング53は、カバー体19が閉止された状態で押圧板52が当該コイルスプリング53の付勢力で押圧される一方、カバー体19が開放された状態でコイルスプリング53の付勢力が弱められるようにV字アーム51と押圧板52との間に張設されている。
かかる構成によれば、カバー体19を閉止することによるV字アーム51の動作で押圧板52がコイルスプリング53の付勢力により加圧ローラ40を押圧し、これによって加圧ローラ40は、定着ローラ30を加圧した加圧状態T1になる。この状態で用紙Pが定着ローラ30と加圧ローラ40との間のニップ部に供給されることにより、用紙P上のトナー像の定着処理が行われる。
これに対し、紙詰りの解消作業等のためにカバー体19を開放すると、このカバー体19の開放動作は、V字アーム51およびコイルスプリング53を介して押圧板52に伝達される。
そして、コイルスプリング53は、カバー体19が閉止された状態で押圧板52が当該コイルスプリング53の付勢力で押圧される一方、カバー体19が開放された状態でコイルスプリング53の付勢力が弱められるようにV字アーム51と押圧板52との間に張設されているため、カバー体19が開放されたときには、コイルスプリング53による加圧ローラ40への押圧板52の押圧力が弱くなっており、結果として加圧ローラ40の定着ローラ30に対する加圧状態T1が弱くなっている。従って、加圧ローラ40と定着ローラ30との間に詰まっている用紙Pは、両者間から容易に引き抜かれる。
また、V字アーム51は、加圧ローラ40が加圧状態T1に設定された状態で、基端側から上方に向けて突設された第1アーム511と、基端側から加圧ローラ40側に向けて突設された第2アーム512とを有し、かつ、基端側が用紙搬送方向と直交する用紙幅方向に延びた連結軸54回りに回動可能に軸支されている。
そして、第1アーム511には、カバー体19の開閉動作と干渉することにより操作される操作突片55が設けられ、押圧板52は、連結軸54の延びる方向と直交する方向に延び、かつ、その略中央部が連結軸54の直下に位置するように配設されおち、しかも、コイルスプリング53は、第2アーム512の先端と押圧板52における加圧ローラ40を押圧する端部と反対側の端部との間に張設されている。
さらに、V字アーム51と押圧板52とは、カバー体19が閉止されることによるV字アーム51の連結軸54回りの一方向へ向かう回動によりコイルスプリング53が押圧板52に付勢力を付与した状態で当該コイルスプリング53の中心線が連結軸54の軸心Oより下方に位置(付勢部材の中心線に対して支軸の軸心が中心線の一方側の位置)し、カバー体19が開放されることによるV字アーム51の連結軸54回りの他方向へ向かう回動によりコイルスプリング53が押圧板52に付与する付勢力が弱められた状態で当該コイルスプリング53の中心線が連結軸54の軸心Oを超えて上方(付勢部材の中心線に対して支軸の軸心が中心線の他方側の位置)へ移動するように互いの相対的な位置関係が設定されている。
かかる構成によれば、カバー体19が閉止されたときには、V字アーム51の第1アーム511に設けられた操作突片55がカバー体19との干渉により移動規制された状態で第2アーム512の先端と押圧板52の後端(押圧板52における加圧ローラ40を押圧する端部と反対側の端部)との間に張設されたコイルスプリング53の付勢力により加圧ローラ40は、押圧板52を介して連結軸54回りに生じたコイルスプリング53の付勢力を付与され、これによって定着ローラ30に押圧当接した状態になっている。
この状態でカバー体19を開放していくと、第1アーム511の操作突片55がカバー体19の開放動作に誘導されて連結軸54回りに回動し、これによるV字アーム51の同回動によりその第2アーム512の先端と押圧板52の後端との間に張設されたコイルスプリング53が短くなっていき、これによってコイルスプリング53の付勢力が漸減していくため、カバー体19の開放が完了した時点では、コイルスプリング53の付勢力は弱まり、最小になっているかほとんど存在しない状態になっている。
そして、カバー体19が閉止されることによるV字アーム51の連結軸54回りの一方向へ向かう回動によりコイルスプリング53が押圧板52に付勢力を付与した状態で当該コイルスプリング53の中心線L1が連結軸54の軸心Oより下方に位置する一方、カバー体19が開放されることによるV字アーム51の連結軸54回りの他方向へ向かう回動によりコイルスプリング53が押圧板52に付与する付勢力が弱められた状態で当該コイルスプリング53の中心線L2が連結軸54の軸心Oを超えて上方へ移動するようにV字アーム51と押圧板52との間の互いの相対的な位置関係が設定されている。
従って、カバー体19が閉止されて閉止姿勢S1に設定されたとき(すなわち、コイルスプリング53の中心線L1が連結軸54の軸心Oより下方に位置したとき)には、コイルスプリング53の付勢力は、V字アーム51の第2アーム512を連結軸54回りに押圧板52の方向に向かわせるように作用し、これによってコイルスプリング53の付勢力がV字アーム51の第2アーム512を逆方向に向かわせることはなく、コイルスプリング53による加圧ローラ40への付勢力の付与状態、すなわち、加圧ローラ40の定着ローラ30に対する加圧状態T1を安定させることができる。
これに対し、閉止されていたカバー体19が開放されて開放姿勢S2に設定されたとき(すなわち、コイルスプリング53の中心線L2が連結軸54の軸心Oを超えて上方へ移動したとき)には、コイルスプリング53の付勢力は、V字アーム51の第2アーム512を連結軸54回りに押圧板52から離間する方向に向かわせるように作用し、これによってコイルスプリング53の付勢力がV字アーム51を押圧板52に向かわせることはなく、コイルスプリング53による加圧ローラ40への付勢力の付与状態を弱めることがで
きる。
このように、カバー体19が閉止されたときには、コイルスプリング53の中心線を連結軸54の軸心Oより下方に位置させる一方、カバー体19が開放されたときには、コイルスプリング53の中心線を連結軸54の軸心Oより上方に位置させることにより、簡単な構成でありながら、カバー体19の開閉状態に応じて加圧ローラ40を定着ローラ30に対し加圧を解除した解除状態T2と、加圧した加圧状態T1との間で容易に、かつ、安定した状態で切り換えることができる。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
(1)上記の実施形態においては、画像形成装置としてプリンタ10を例に挙げて説明したが、本発明は、画像形成装置がプリンタ10であることに限定されるものではなく、複写機やファクシミリ装置等であってもよい。
(2)上記の実施形態においては、加熱部材として定着ローラ30が採用されているが、本発明は、加熱部材が定着ローラ30であることに限定されるものではなく、内部に熱源が装着された加熱ローラと、加圧ローラ40に対向配置された定着ローラとの間に定着ベルトを張設したベルト方式の加熱部材であってもよい。かかるベルト方式の加熱部材が採用された場合には、加熱ローラからの熱が定着ベルトを介して用紙に伝熱されることになる。