JP5246854B2 - 有機無機複合ゲル - Google Patents

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Description

本発明は、イオン液体のゲルに関するものであり、該ゲルは十分な強度と良好な伸張性を併せ持ち、高屈折柔軟材料、イオン導電体、イオン輸送体、分離膜、摺動材料、衝撃吸収剤などとして様々な分野で利用される。
イオン液体は常温付近で液状である塩で、不揮発性、難燃性、高いイオン伝導性などの性質を示すことから近年特に注目されている材料である。この高い機能性を有するイオン液体をゲルとすることは工業的に有効である(特許文献1、非特許文献1など)。例えば、高いイオン伝導性と難燃性という性質から、リチウムイオン電池、太陽電池、或いは燃料電池用の電解液として用途が注目されている。しかし、これら電解液として使用する際、イオン液体が液体であることから液漏れの問題があり、ゲルとして使用することが求められている。
イオン液体をゲル化する方法はいくつか開示されている。特許文献1ではイオン液体と金属塩を混合し撹拌することによりイオン液体をゲル化する方法が開示されているが、この方法で形成されたゲルはイオン液体の流動性を無くしたもので、ゲルとしても機械的強度が乏しいものであった。また、糖脂質やコレステロール誘導体などの低分子化合物がイミドゾリウム系のイオン液体をゲル化することが報告されている(非特許文献1など)。しかし、これらのゲルは変形に対して非常に脆く、材料としての使用領域が限定されるという問題があった。また、イソプロピルアクリルアミドとイミダゾリウム系イオン液体のゲルについても開示されている(特許文献2)。しかし、この方法で得られたゲルも十分な伸張性が見られず、非常に脆く、材料としての使用できる領域が限定されるという問題があった。また、ポリイソプロピルアクリルアミドとポリエチレングリコールのトリブロックポリマーとイオン液体とのゲルについて開示されている(非特許文献2)。非常に強いゲルが得られたと記載されているが、弾性率も数KPa程度、伸張性も高々100%程度であり、特性的にも十分なものでは無かった。
不揮発性、難燃性、イオン伝導性などイオン液体が有する機能的性質を十分に発揮させて、種々の用途で使用可能にするためには、ゲル自身が使用に耐えるだけの十分な強度、弾性や柔軟性、伸縮性を有する必要があった。
一方、ラジカル重合性モノマーの重合体と粘土鉱物とが複合化して形成された三次元網目中に水を含有する有機無機ナノコンポジット型の水性ゲルに関する技術が開示されている(特許文献3、非特許文献3など)。該有機無機ナノコンポジット型ゲルは、十分な強度と高い伸縮性を合わせ持つことからソフトマテリアルとしてのゲル材料の新たな展開を開くことができうる材料として注目されている。しかしながら、該有機無機ナノコンポジット型ゲル中にイオン液体を包含させる技術に関しては報告されていない。
特開2007−250473号広報 特開2006−306912号広報 特開2002−53629号広報 イオン性液体 開発の最前線と未来、監修 大野弘幸、シーエムシー出版、2003年. Yiyong He, Timothy P. Lodge, Chemical Communication, page 2732-2734, (2007). Kazutoshi Haraguchi, Toru Takehisa, Advanced Materials, Vol. 14, No. 16, page 1120-1124, (2002).
本発明の目的は、材料として十分な強度と伸びを併せ持つ、イオン液体を含有するゲルを提供することにある。
本発明者らは、ラジカル重合性モノマーの重合体と粘土鉱物からなる3次元網目内にイオン液体を含有するゲルが上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)とが複合化して形成された三次元網目の中にイオン液体(C)が包含されている有機無機複合ゲルを提供するものである。
本発明により得られる有機無機複合ゲルは、高機能性液体であるイオン液体を含有するものであり、高屈折率、難燃性、高いイオン伝導性、不揮発性、摺動性などの機能的性質を有するゲルである。更に、本発明のゲルは十分な強度、弾性、柔軟性、伸張性、伸縮性などを有する。したがって、電気・電子材料、光学材料、土木・建築材料、医薬・医療材料などとして、広い分野で有用な材料として使用可能である。
ところで、イオン液体は、水や有機溶媒などに比べて高い屈折率を有し、また、金属イオンなどの高屈折率材料を比較的容易に溶解することができる。水の屈折率は1.333であり、プラスチックレンズとして有名なポリメタクリル酸メチルは1.491、一般的な光学ガラスは1.43程度である。一方、ゲルなどのソフトマテリアルは一般的に屈折率が低いため、本発明の有機無機複合ゲルにより高屈折率の透明ソフトマテリアルを提供することが可能であるならば、高機能なインテリジェント材料を提供することが可能である。そのような応用例として、本発明の有機無機複合ゲルを用いたレンズがあり、該レンズを自在に伸張、伸縮させることにより人口の眼球と同じ働きをする材料を提供することが可能となる。
また、前記特許文献3、非特許文献3に記載された有機無機ナノコンポジット型の水性ゲルはゲル中の水分が徐々に乾燥するため、所期の特性を長期間維持し難い問題があるが、本発明の有機無機複合ゲルは揮発性の低いイオン液体を包含しているのでそのような問題が生じない。なお、揮発性の低い溶媒としては、イオン液体以外にジメチルアセトアミドやN−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒やジメチルスルホキシドなどが最も代表的な親水性溶媒としてあげられるが、これらの親水性溶媒を前記有機無機ナノコンポジット型ゲルのゲル化溶媒とした場合、ゲルとは呼べない程までに著しく強度が低下し、場合によっては流動性が生じてしまう。反対に、疎水性の不揮発溶媒として代表的なシリコン油や不揮発性炭化水素系オイル、或いはデカリンなどをゲル化溶媒として用いた場合、蝋のように固くなり、柔軟性、伸縮性は全く失われてしまう。このように有機無機ナノコンポジット型ゲルにおいては、ゲル化溶媒の種類を変えると有機無機複合ゲルの力学的特性が失われる場合がある。しかしながら、イオン液体を用いた本発明の有機無機複合ゲルにおいては、有機無機ナノコンポジット型の水性ゲルが有する力学的特性を維持しながら、該水性ゲルが抱える乾燥の問題を解決することができる。揮発性の弱い親水性溶媒であるアミド系溶媒やジメチルスルホキシドなどで十分な強度を持つゲルが得られない理由について、明確には判らないが、該溶媒は恐らくは水素結合性が強いためにゲルの架橋点として働く粘土やポリマーと強く相互作用するために、粘土とポリマーとの相互作用を低下させることが原因と推測される。粘土やポリマーとの相互作用が非常に弱い不揮発性疎水性溶媒の場合は、ゲル中で固体化したような状態となる理由については不明である。一方、イオン液体はイオン性の液体で極性を有することから粘土やポリマーと程良く相互作用し、粘土とポリマーとの相互作用を損なわず良好なゲルを形成すると考えられ、力学的特性を維持したゲルが提供されるものと推測される。
本発明の有機無機複合ゲルはラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)とが複合化して形成された三次元網目の中にイオン液体(C)が包含されているものであり、機能性液体としてのイオン液体の性質に加えて、ゲルとして機械的に優れた強度、弾性、柔軟性、伸張性、伸縮性などの性質を併せ持つものである。弾性、柔軟性、伸縮性は材料として使用する際の特性であり、使用目的などにより大きく異なる。材料としての強さ、機械的特性の根本となるものは、最大強度と伸張性である。本発明の有機無機複合ゲルは、伸張度(変形長×100/初期長)が、通常80%以上、好ましくは100%以上、特に好ましくは200%以上の延伸性を示すものであり、最大強度が5kPa以上、好ましくは10kPa以上のものである。伸張度と最大強度の上限は特に限定されないが、通常、伸張度は5000%以下、最大強度は100MPa以下である。
本発明のイオン液体(C)は、イオン性液体、常温溶融塩或いは単に溶融塩などと称されるものであり、150℃以下、より好ましく100℃以下、特に好ましくは60℃以下の温度域で液状の溶融状態を呈する塩である。
本発明では、イオン液体(C)は、親水性イオン液体(C1)と疎水性イオン液体(C2)とに大別される。本発明では、水とイオン液体とを質量比1:1で混合し、十分に撹拌後、静置し10分以内に水相とイオン液体の相に分離するものを疎水性イオン液体(C2)と定義し、10分経過しても相分離が観察されないものを親水性イオン液体(C1)と定義する。
イオン液体が親水性であるか、疎水性であるかはカチオンとアニオンの組み合わせや、多様なカチオンの構造の僅かな違いなどにより異なる。
例えば、親水性イオン液体(C1)の例として、
(1)カチオンとして、エチルメチルイミダゾリームイオン構造を有し、アニオンとして、塩素イオン、ブロムイオンや、チオシアン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、トリフロロメタンスルホン酸、硝酸、メチルスルホン酸イオン構造等を有するイオン液体、
(2)カチオンとして、ブチルメチルイミダゾリームイオン構造を有し、アニオンとして、塩素イオン、ブロムイオンや、チオシアン酸、テトラフルオロホウ酸、トリフロロメタンスルホン酸、硝酸、メチルスルホン酸イオン構造等を有するイオン液体、
(3)カチオンとして、ヘキシルメチルイミダゾリーム、ブチルジメチルイミダゾリウムイオン構造を有し、アニオンとして、塩素イオン、ブロムイオンや、チオシアン酸、硝酸、メチルスルホン酸イオン構造等を有するイオン液体、
(4)カチオンとして、エチルジメチルイミダゾリームイオン構造を有し、アニオンとして、塩素イオン、ブロムイオンや、チオシアン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、トリフロロメタンスルホン酸、硝酸、メチルスルホン酸イオン構造等を有するイオン液体、
(5)カチオンとして、エチルピリジニウムイオン構造を有し、アニオンとして、塩素イオン、ブロムイオンや、チオシアン酸、トリフロロメタンスルホン酸、硝酸、メチルスルホン酸イオン構造等を有するイオン液体、
などを挙げることができる。
一方、疎水性イオン液体(C2)の例として、
(1)カチオンとして、エチルメチルイミダゾリームイオン構造を有し、アニオンとして、ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド酸イオン構造を有するイオン液体、
(2)カチオンとして、ブチルメチルイミダゾリームイオン構造を有し、アニオンとして、ヘキサフルオロリン酸、ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド酸イオン構造等を有するイオン液体、
(3)カチオンとして、ヘキシルメチルイミダゾリーム、ヘキシルピリジニウムイオン構造等を有し、アニオンとして、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、トリフロロメタンスルホン酸、ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド酸イオン構造等を有するイオン液体、
などを挙げることができる。
より具体的には、本発明では親水性イオン液体(C1)として、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム メチルサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム チオシアネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム エチルサルフェート、テトラブチルアンモニウム ハイドロキシド 30−ハイドレート等を使用することが好ましい。また、疎水性イオン液体(C2)として、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフロロホスフェートを使用することが好ましい。
本発明で使用するラジカル重合性モノマー(A)は、単官能ラジカル重合性モノマーであり、溶媒、好ましくは水、又は水を含む有機溶媒に溶解する性質を示すもので、粘土鉱物と相互作用し、イオン液体に対して親和性のあるものを選択して使用する。
本発明では、親水性イオン液体(C1)に対しては、親水性のイオン液体(C1)との相互作用に優れるラジカル重合性モノマー(A1)が好ましく、選択され、疎水性のイオン液体(C2)に対しては、疎水性イオン液体(C2)との相互作用に優れるラジカル重合性モノマー(A2)が好ましく選択される。
親水性のイオン液体(C1)との相互作用に優れるラジカル重合性モノマー(A1)としては、親水性のアミド基、アミノ基、エステル基、水酸基、テトラメチルアンモニウム基、シラノール基、エポキシ基などの官能基を有するラジカル重合性モノマーが挙げられ、中でも水酸基、アミド基やエステル基などを有するラジカル重合性モノマーが好ましく、特にアミド基を有するものが好ましい。
アミド基を有するラジカル重合性モノマーとしては、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、アクリルアミド等のアクリルアミド類、または、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、メタクリルアミド等のメタクリルアミド類の中から選択される一つ又は複数を重合して得られる有機高分子が例として挙げられる。ここでアルキル基としては炭素数が1〜4のものが特に好ましく選択される。
疎水性イオン液体(C2)との相互作用に優れるラジカル重合性モノマー(A2)としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキル部位や芳香族を有する部位を有するラジカル重合性モノマーが挙げられる。粘土鉱物との相互作用をも有することで、下記構造式(1)及び(2)のラジカル重合性モノマーが好ましい。下記構造の炭素数範囲を越える場合、粘土鉱物との親和性が低下する場合があったり、均質なゲルが得られなく場合がある。
Figure 0005246854
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数1〜5のアルキレン基、Rは分岐しても良い炭素数1〜4のアルキル基を表す。但し、RとRの炭素数の合計は6以下である。)
Figure 0005246854
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは分岐していても良い炭素数3〜6のアルキレン基を表す。)
構造式(1)のラジカル重合性モノマーとして、メトキシエチル(メタ)アクリレートやエトキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。構造式(2)のラジカル重合性モノマーとしては、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、親水性の粘土鉱物との親和性を高めることを目的として、ラジカル重合性モノマー(A2)と粘土鉱物との相互作用に優れるラジカル重合性モノマーとを併用することが好ましい。粘土鉱物との相互作用に優れるラジカル重合性モノマーとしては親水性のアミド基、アミノ基、エステル基、水酸基、テトラメチルアンモニウム基、シラノール基、エポキシ基などの官能基を有するラジカル重合性モノマー、中でもアミド基を有する親水性のイオン液体(C1)との相互作用に優れるラジカル重合性モノマー(A1)が好ましいものとして挙げることができる。この場合、ラジカル重合性モノマー(A1)とラジカル重合性モノマー(A2)との混合の割合は使用するイオン液体の種類や目的より異なるが、通常、ラジカル重合性モノマー(A2)99〜50モル%、ラジカル重合性モノマー(A1)1〜50モル%、好ましくはラジカル重合性モノマー(A2)98〜55モル%、ラジカル重合性モノマー(A1)2〜45モル%である。ラジカル重合性モノマー(A2)が50モル%未満の場合、疎水性イオン液体との親和性が低下し、柔軟性や伸縮性はかえって損なわれる場合がある。
また、上述した疎水性イオン液体に対して使用されるラジカル重合性モノマーの場合、使用するモノマーによっては、水系ゲルでは水との親和性が悪いために、不透明であるとか、力学的強度が弱く場合もある。しかし、このような場合でも、疎水性イオン液体をゲル化させると、透明性が付与されたり、力学特性が著しく向上したゲルが提供される。これについては、実施例で説明する。
本発明の粘土鉱物(B)は、層状粘土鉱物である。層間が膨潤し易い膨潤性層状粘土鉱物である。該層状粘土鉱物としては、水に均一分散可能な水膨潤性層状粘土鉱物や、有機化合物で処理を施こされた有機溶媒中で均一分散可能な膨潤性層状粘土鉱物が挙げられる。本発明では、良好な力学的特性が得られ易いことなどの理由から、水に均一分散可能な膨潤性層状粘土鉱物が好ましく用いられる。特に好ましくは水中で分子レベル、すなわち単一層、若しくはそれに近いレベルで剥離し均一分散可能な水膨潤性層状粘土鉱物である。層状粘土鉱物としては、具体的には、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などの膨潤性粘土鉱物が用いられる。より具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。
膨潤性層状粘土鉱物は前記ラジカル重合性モノマーを含有する溶液中で微細かつ均一に分散することが必要で、特に該溶液中に溶解することが望ましい。ここで溶解とは、粘土鉱物の沈殿を生じるような大きな凝集体が無い状態を意味する。より好ましくは1〜10層程度のナノメーターレベルの厚みで分散しているもの、特に好ましくは1〜2層程度の厚みで分散しているものである。
本発明の有機無機複合ゲルは、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)とが複合化して形成された三次元網目の中にイオン液体(C)が包含されているものである。粘土鉱物(B)が架橋点となってラジカル重合性モノマー(A)の重合体の三次元網目構造を形成しているものであり、その中に上述したイオン液体(C)が含有されているものである。ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)とが複合化して三次元網目を形成していることは、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)との複合体がゲルを形成する能力があることにより確認するができる。
ラジカル重合性モノマー(A)の重合体に対する粘土鉱物(B)の質量比は0.01〜10であることが好ましく、より好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。かかる質量比はかかる範囲であるならば、本発明の目的とする柔軟性や伸縮性を好ましく得ることができる。ゲル中でのイオン液体の含有量は使用目的などにより異なり一概に規定することができないが、通常、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)の合計質量(Wmonomer+Wclay)に対するイオン液体(C)の質量(WIL)との比[WIL/(Wmonomer+Wclay)]は、0.05〜100であることが好ましく、より好ましくは0.1〜80、特に好ましくは0.2〜60である。尚、ゲルがポリマーと粘土鉱物と溶液からなる場合には、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)の合計質量(Wmonomer+Wclay)はゲルを乾燥させた際の残存質量(乾燥質量:Wdry)と同じとなる場合がある。
本発明の有機無機複合体の製造法は特に制限されないが、ラジカル重合性モノマー(A)と粘土鉱物(B)とイオン液体(C)が含まれる溶液中でラジカル重合性モノマー(A)を重合させる方法や、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)とが複合化して形成された三次元網目構造体を形成させた後、イオン液体(C)を含浸させる方法などが挙げられる。
具体的には、ラジカル重合性モノマー(A)、粘土鉱物(B)、イオン液体(C)が含まれる均質溶液を調製した後、ラジカル重合性モノマー(A)を重合させて、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)とが複合化した三次元網目構造体にイオン液体が含まれる有機無機複合ゲルを形成させる。この場合、重合溶液の均質性を高める目的で、水や親水性の有機溶媒を併用することは好ましい。使用する水や有機溶媒の割合は特に規定されないが、通常、ラジカル重合性モノマーと粘土鉱物の合計質量(Wmonomer+Wclay)の20倍以下[Wsolvent/(Wmonomer+Wclay)]、特に15倍以下が好ましく用いられる。20倍を超える場合、ラジカル重合性モノマーと粘土鉱物のネットワーク構造の形成が損なわれる場合がある。尚、Wsolventは使用する水や有機溶媒の合計質量を示す。
ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)とが複合化して形成された三次元網目構造体を形成させた後、イオン液体(C)を含浸させる方法としては、ラジカル重合性モノマー(A)と粘土鉱物(B)との均質溶液を調製した後、ラジカル重合性モノマー(A)を重合させて、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)とが複合化した三次元網目構造体を形成させる。次いで、イオン液体(C)、或いは水や有機溶媒と混合したイオン液体(C)をゲルに含浸させた後、水や有機溶媒を除去する方法などを挙げることができる。
ラジカル重合性モノマー(A)と粘土鉱物(B)との均質溶液に使用する溶媒は、水、及び水と水に均質に混合する有機溶媒との混合水溶液が好ましく使用される。水に均質に混合する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒などが挙げられる。溶媒の量は特に規定されないが、通常、ラジカル重合性モノマーと粘土鉱物の合計質量(Wmonomer+Wclay)に対する溶媒の量は質量比[Wsolvent/(Wmonomer+Wclay)]で1〜50の範囲が用いられる。尚、Wsolventは使用する水や有機溶媒の合計質量を示す。
上述したラジカル重合性モノマー(A)を重合させる重合反応は、例えば、過酸化物の存在、加熱又は紫外線照射などの慣用の方法を用いたラジカル重合により行わせることができる。ラジカル重合開始剤及び触媒としては、慣用のラジカル重合開始剤及び触媒のうちから適宜選択して用いることができる。特に好ましいものとして、粘土鉱物と強い相互作用を有するカチオン系ラジカル重合開始剤を挙げることができる。
具体的には、重合開始剤としては、過酸化物、例えば、ペルオキソ二硫化カリウムやペルオキソ二硫化アンモニウム、アゾ化合物、例えば、和光純薬工業株式会社製のVA−044、V−50、V−501、VA−057などが好ましく用いられる。その他、ポリエチレンオキシド鎖を有するラジカル開始剤なども用いられる。
また触媒として、3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやβ−ジメチルアミノプロピオニトリルなどが好ましく用いられる。重合温度は用いる重合溶液やラジカル重合性モノマー、重合触媒及び開始剤の種類などに合わせて設定される。通常、0〜100℃の範囲が用いられる。重合時間も触媒、開始剤、重合温度、重合溶液量などの重合条件により異なり、一概には規定できないが、一般に数十秒〜数十時間の間で行う。
ラジカル重合性モノマー(A)の重合後、ラジカル重合性モノマーの重合体と粘土鉱物とが複合物が三次元網目構造体であるかどうかは、得られる複合体がゲル化していることで容易に確認できる。ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)とが複合化した三次元網目構造体にイオン液体(C)を含浸させる場合において、その方法としては、例えば、ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)とが複合化した三次元網目構造体、所謂ゲル体を直接、イオン液体と有機溶媒との混合溶液に接触或いは浸漬させるなどの方法でゲル中にイオン液体を導入する方法や、一度、ゲルを有機溶媒に浸漬するなどの方法でゲル中の溶液を有機溶媒に置換した後、イオン液体或いはイオン液体と有機溶媒との混合溶液に接触或いは浸漬させるなどの方法でゲル中にイオン液体を導入する方法、或いは、ゲルを乾燥させた後、イオン液体と有機溶媒との混合溶液に接触或いは浸漬させるなどの方法でゲル中にイオン液体を導入する方法などの方法を挙げることができる。
また、イオン液体以外の溶媒を除去する方法については、特に制限されることはなく、室温での風乾、加熱、及び/又は減圧による溶媒除去法など公知の方法が可能である。
また、粘土鉱物とイオン液体との相互作用を強くすることなどを目的として、イオン液体を導入する前に、界面活性剤の溶液と接触させるなどの方法で界面活性剤を添加することも可能である。
本発明の有機無機複合ゲルは、繊維状、ロット状、フィルム状、塗膜状、袋状、球状、(微)粒子状など任意の形状が可能である。フィルム状とする場合、より膜厚の薄いフィルムを得るためなどを目的として、ラジカル重合性モノマー(A)の重合後、ラジカル重合性モノマーの重合体と粘土鉱物とが複合化したゲルにイオン液体を導入する前に1軸或いは2軸に延伸或いはプレス成形する方法や、イオン液体を導入した後、1軸或いは2軸に延伸或いはプレス成形する方法は可能である。
有機無機複合ゲルの透明性については、使用目的、例えば、厚さなどにより大きく異なるため、特に規定されない。しかし、レンズなどの高屈折性光学用ゲルとして使用する場合、60%以上、好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上の光透過性を示すものである。ゲルは柔軟であるため、接着性に優れるために屈折率の異なるゲルを重ね併せて使用することも可能である。また、屈折率は、1.38以上、特に1.4以上が好ましい、これは水の屈折率1.333より遙かに大きく、一般的な光学ガラスの屈折率1.43に匹敵する値である。
尚、光透過率は、通常の分光光度計や濁度計を用いて求めることができる。光源は単色光でも白色光で構わない。但し、単色光の場合は400〜800nmの間の波長が用いられる。光透過率はゲルの厚みにより異なる。実際には使用する厚みでの光透過性が重要になるが、本発明では0.1mm以上の厚みで測定した場合の値である。また、屈折率は通常用いられている屈折率の測定法を用いることができ、具体的にはアッベの屈折率計やエリプソメーターを用いる方法などを挙げることができる。
次いで本発明を実施例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
(合成例1)
重合モノマーとして、ジメチルアクリルアミド(DMAA:興人株式会社製)を使用した。粘土鉱物は水膨潤性の合成ヘクトライト(商品名 ラポナイトXLG、日本シリカ株式会社製)を120℃で2時間真空乾燥させて用いた。溶媒は18Ωの超純水を用い、水は使用前に予め3時間以上窒素でバブリングさせて含有酸素を除去してから使用した。
内部を窒素置換した100mLの丸底フラスコに純水48g入れたものに、撹拌下で2.0gの合成ヘクトライトと5gのDMAAを入れ、35℃で撹拌し透明な均質溶液を得た。この溶液を氷浴に入れ、10分間ゆっくりと撹拌した後、触媒としてテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)32μLを加え、次いで、予め調製した純水10gとペルオキソ二硫化カリウム(KPS:関東化学株式会社製)0.2gからなる重合開始剤の水溶液2mLを撹拌下で加えた。厚さ2mm、幅10mmのシリコンゴムをスペーサとし、15cm2のガラス板2枚を用いてゲル調製容器を作成した。溶液を窒素雰囲気下でゲル調製容器中に入れた。尚、ゲル調製容器内への溶液の導入は窒素雰囲気としたグローブボックス内で行った。20℃で24時間保持することで重合を進行させた。得られたゲル1は無色透明であり、十分な強度と伸縮性を有するゲルであった。
尚、仕込値から算出したゲル1の含水率(ゲル中の水質量(Wwater)/乾燥質量(Wdry);Wwater/Wdry)は7.1(=50/7)、クレイ量(クレイ質量(Wclay)/乾燥質量(Wdry);Wclay/Wdry)は0.29(=2/7)である。ここで、Wwaterは仕込んだ水の質量(50g)、Wclayは仕込んだクレイ質量(2g)。Wdryはゲル1の乾燥質量(7g)であり、仕込んだモノマー質量(Wmonomer、5g)とクレイ質量(Wclay、2g)の和から求めた。以後、合成例、実施例において、乾燥質量はすべて仕込値から算出した値(モノマー質量とクレイ質量の和)から求めた。
(合成例2)
内部を窒素置換した50mLのサンプル瓶に窒素置換した純水48g入れたものに、撹拌下で4.0gの合成ヘクトライトと5gのDMAAを入れ、撹拌機(シンキー株式会社製の撹拌機AR−250)で撹拌し透明な均質液を得た。この溶液を氷浴に入れ、10分間冷却した後、TEMED32μLを加え、30秒間撹拌し、次いで、KPS水溶液2mLを加え、1分間撹拌した。重合液を窒素雰囲気下でゲル調製容器中に入れた。20℃で24時間保持することで重合を進行させた。得られたゲル2は無色透明であり、十分な強度と伸縮性を有するゲルであった。
尚、仕込値から算出したゲル2の含水率(Wwater/Wdry)は5.6、クレイ量(クレイ質量(Wclay/Wdry)は0.44である。
(合成例3)
重合モノマーとして、2−メトキシエチルアクリレート(MEA)(アクリックス C−1:東和合成株式会社製)とDMAAを使用した。
内部を窒素置換した100mLの丸底フラスコに純水48g入れたものに、撹拌下で2.0gの合成ヘクトライトと5.2gのMEA、1.0gのDMAAを入れ(MEA/DMAA=8/2 モル/モル)、35℃で撹拌し透明な均質溶液を得た。この溶液を氷浴に入れ、10分間ゆっくりと撹拌した後、TEMED32μLを加え、次いで、KPS水溶液2mLを撹拌下で加えた。重合溶液を窒素雰囲気下でゲル調製容器中に入れた。20℃で24時間保持することで重合を進行させた。得られたゲル3は白濁していたが十分な強度と伸縮性を有するゲルであった。
尚、仕込値から算出したゲル3の含水率(Wwater/Wdry)は6.1、クレイ量(クレイ質量(Wclay/Wdry)は0.24である。
(合成例4)
合成ヘクトライト量を0.8g、DMAAの代わりに、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPA)1.13gを用いて、合成例3と同様な方法で、透明な均質溶液を得た。合成例3と同様な方法で厚さ2mmのゲルフィルム4を調製した。得られたゲル4は白濁していた。また、強度と伸縮性は測定可能なほど強いものではなかった。
尚、仕込値から算出したゲル4の含水率(Wwater/Wdry)は7、クレイ量(クレイ質量(Wclay/Wdry)は0.11である。
(合成例5)
合成ヘクトライト量を0.8g、MEAの代わりに、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)5.2gを用いて、合成例3と同様な方法で、透明な均質溶液を得た。合成例3と同様な方法で厚さ2mmのフィルム状のゲル5を調製した。得られたゲル5は白濁していたが十分な強度と伸縮性を有するゲルであった。
尚、仕込値から算出したゲル5の含水率(Wwater/Wdry)は約7.1、クレイ量(クレイ質量(Wclay/Wdry)は0.11である。
(合成例6)
合成ヘクトライト量を0.8g、DMAAの代わりに、ジエチルアクリルアミド(DEAA)を1.27g用いて、合成例3と同様な方法で、透明な均質溶液を得た。合成例3と同様な方法で厚さ2mmのフィルム状のゲル6を得た。得られたゲル6は白濁していた。また、強度と伸縮性は測定可能なほど強いものではなかった。
尚、仕込値から算出したゲル6の含水率(Wwater/Wdry)は約6.9、クレイ量(クレイ質量(Wclay/Wdry)は0.11である。
(合成例7)
粘土鉱物の代わりに有機架橋剤としてN,N−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬株式会社製)77mg(0.01モル/水1L)を使用、合成例1と同じように有機架橋ゲル1を調製した。有機架橋ゲル1は白濁しており、触れたら壊れるほど非常に脆かった。
Figure 0005246854
(実施例1)
合成例1で得られたゲル1(50×30mm、ゲルの質量3.1g)を500mLのメタノールに1日間浸漬させ、ゲル中の溶液をメタノールに置換した。途中メタノールを2度交換した。メタノール10g、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム メチルサルフェート(bmiMS;フルカ株式会社製)10gのbmiMS溶液を用意し、メタノール置換したゲル1をこの中に浸漬させて、室温で1日間保持させた。bmiMS溶液から取り出した後、メタノールとbmiMSを含有するゲル1をポリプロピレン製のトレイに載せて、室温で1日間風乾させた後、80℃にセットした熱風乾燥機に1日間保持し、メタノールを乾燥させて、有機無機複合ゲル1(ゲルの質量3.1g)を得た。有機無機複合ゲルは透明であった。600nmにおける約1mm厚のゲルの光透過率は92%であった。
有機無機複合ゲル1中のイオン液体量(WIL/Wdry)は7.1(=2.72g/0.38g)であった。尚、WILはゲル中のイオン液体質量(2.72g=3.1−0.38)で、得られた有機無機複合ゲル1の質量(3.1g)と実施例1に使用したゲル1の乾燥質量(Wdry、0.38g)の差から求めた。有機無機複合ゲル1の引張試験と行ったところ、破断伸度は1200%、最大強度は300kPaであり、ゲルとして十分な強度と伸張性を示すことが判った。200℃まで加熱したが質量変化は見られなかった。屈折率を測定したところ、1.484であり、ゲル1の屈折率1.349に比べ、大きく向上していることが確認された。
尚、破断強度と伸びは、島津製作所製の引張試験器(オートグラフAGS−H)を用いて測定した。幅5mm、厚み2mm、長さ60mmの試験片を用いて、試験長30mm、引張速度毎分100mmで測定を行った。屈折率はアタゴ株式会社製のアッベ屈折率計2T、光透過率は日本分光株式会社製の分光光度計V−530を用いて測定した。また、bimMS 0.5gと純水0.5gを十分に撹拌し、非常に良く混合し、1時間以上静置したが分離しなかった。
(実施例2−4)
bmiMSの代わりに、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム チオシアネート(bmiTC;フルカ株式会社製)(実施例2)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム エチルサルフェート(emiES;フルカ株式会社製)(実施例3)、テトラブチルアンモニウム ハイドロキシド 30−ハイドレート(TBA30;フルカ株式会社製)(実施例4)を用いて、実施例1と同様な方法で有機無機複合ゲル2−4を調製した。bmiTCの場合、黄色く着色したが、得られたゲルはいずれも透明であった。600nmにおける約1mm厚のゲルの光透過率はbmiTCの場合が70%、emiESの場合が90%、TBA30の場合が88%であった。
有機無機複合ゲル中のイオン液体量はbmiTCの場合が7.3、emiESの場合が6.1、TBA30の場合が4.1であった。引張試験と行ったところ、bmiTCの場合、破断伸度は800%、最大強度は100kPa、emiESの場合、破断伸度は850%、最大強度は100kPa、TBA30の場合、破断伸度は900%、最大強度は800kPaであり、ゲルとして十分な強度と伸張性を示すことが判った。屈折率測定を行ったところ、bmiTCの場合が1.537、emiESの場合が1.483、TBA30の場合が1.41であった。屈折率が大きく向上していることが確認された。
bmiTCとemiESの場合について、イオン伝導度を測定した。bmiTCの場合が0.03mS/cm、emiESの場合が0.03mS/cmであった。イオン液体自身のイオン伝導度はbmiTCが0.03mS/cm、emiESが0.04mS/cmであった。ゲル化後もイオン伝導度が大きく低下していないことが確認された。尚、イオン伝導度は0.01〜10000Hzの電場(10mV)を加えた場合の複素インピーダンスを測定し、コール・コールプロットで外挿して求めた。複素インピーダンスはALS社製の電気化学計測器モデル760Bを使用し、電極は白金電極を使用した。
また、bimTC、emiES、TBA30それぞれを 0.5gと純水0.5gを十分に撹拌した。いずれの場合も非常に良く混合し、1時間以上静置したが分離しなかった。
(実施例5)
合成例2で得られたゲル2(50×30mm)を500mLのメタノールに1日間浸漬させ、ゲル中の水をメタノール置換した。途中メタノールを2度交換した。メタノール10g、bmiMS10gのbmiMS溶液を用意し、メタノール置換したゲル2をこの中に浸漬させて、室温で1日間保持させた。bmiMS溶液から取り出した後、室温で1日間風乾させた後、80℃で1日間乾燥させて、有機無機複合ゲル5を得た。有機無機複合ゲルは透明であった。600nmにおける約1mm厚のゲルの光透過率は88%であった。
有機無機複合ゲル5中のイオン液体量は4であった。有機無機複合ゲル5の引張試験と行ったところ、破断伸度は850%、最大強度は700kPaであり、ゲルとして十分な強度と伸張性を示すことが判った。200℃まで加熱したが質量変化は見られなかった。屈折率を測定したところ、1.490であり、ゲル2の1.353に比べ、大きく向上していることが確認された。
(実施例6)
合成例3で得られたゲル3(50×30mm)を500mLのメタノールに1日間浸漬させ、ゲル中の水をメタノール置換した。途中メタノールを2度交換した。メタノール10g、疎水性のイオン液体である1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフロロホスフェート(bmiFP6;フルカ株式会社製)10gのbmiFP6溶液を用意し、メタノール置換したゲル3をこの中に浸漬させて、室温で1日間保持させた。bmiFP6溶液から取り出した後、室温で1日間風乾させた後、80℃で1日間乾燥させて、有機無機複合ゲル6を得た。有機無機複合ゲルは若干黄色みがかかっていたが透明であった。600nmにおける約1mm厚のゲルの光透過率は85%であった。
有機無機複合ゲル6中のイオン液体量は5.2であった。有機無機複合ゲル6の引張試験と行ったところ、破断伸度は800%、最大強度は300kPaであり、ゲルとして十分な強度と伸張性を示すことが判った。200℃まで加熱したが質量変化は見られなかった。屈折率は1.42であった。水性ゲルでは不透明であり、力学的に非常に弱いゲルであったが、イオン液体をゲル化することにより、透明性が付与され、力学特性も大きく向上した。
尚、bimFP6 0.5gと純水0.5gを十分に撹拌し、静置したところ、1分もたたないうちに2相に分離した。bmiFP6が疎水性のイオン液体であることが確認できた。
(実施例7)
合成例4で得られたゲル4のフィルム(15×15mm2、ゲルの質量0.45g、乾燥質量0.056g)をポリプロピレン製のトレイに載せて、約1日間室温で保持し水を乾燥させた。テトラヒドロフラン(THF)に1日間浸漬させ、THF含有ゲル4(質量0.62g)を得た。THF含有率(WTHF/Wdry)は10であった。尚、WTHFはゲル中のTHF質量で、THF含有ゲルの質量とその乾燥質量の差から求めた。THF10g、疎水性イオン液体bmiFP610gからなるbmiFP6溶液を用意し、THF含有ゲルをこの中に浸漬させて、室温で1日間保持させた。bmiFP6溶液から取り出した後、室温で1日間風乾させた後、80℃で1日間乾燥させて、有機無機複合ゲル7(ゲルの質量1.3g)を得た。有機無機複合ゲルは黄色みを帯びていたが透明であった。600nmにおける約1mm厚のゲルの光透過率は93%であった。
有機無機複合ゲル7中のイオン液体量は22であり、非常に大きいものであった。有機無機複合ゲル7を250%まで延伸させたが破断しなかった。また、10kPaの加重を加えたが破断しなかった。200℃まで加熱したが質量変化は見られなかった。屈折率は1.42であった。水性ゲルでは不透明であり、力学的に非常に弱いゲルであったが、イオン液体をゲル化することにより、透明性が付与され、力学特性も大きく向上した。
(実施例8)
合成例5で得られたゲル5(15×15mm2)を乾燥させた後、テトラヒドロフラン(THF)に1日間浸漬させ、THF含有ゲルを得た。THF含有率は400%であった。THF10g、疎水性イオン液体bmiFP610gからなるbmiFP6溶液を用意し、THF含有ゲルをこの中に浸漬させて、室温で1日間保持させた。bmiFP6溶液から取り出した後、室温で1日間風乾させた後、80℃で1日間乾燥させて、有機無機複合ゲル8を得た。有機無機複合ゲルは白濁していた。
有機無機複合ゲル8中のイオン液体量は6であった。有機無機複合ゲル8を150%まで延伸させたが破断しなかった。また、20kPaの加重を加えたが破断しなかった。200℃まで加熱したが質量変化は見られなかった。
(実施例9)
合成例6で得られたゲル6を乾燥させた後、THFに1日間浸漬させ、THF含有ゲルを得た。THF含有率は1100%であった。THF10g、疎水性イオン液体bmiFP610gからなるbmiFP6溶液を用意し、THF含有ゲルをこの中に浸漬させて、室温で1日間保持させた。bmiFP6溶液から取り出した後、室温で1日間風乾させた後、80℃で1日間乾燥させて、有機無機複合ゲル9を得た。有機無機複合ゲルは黄色みを帯びていたが透明であった。600nmにおける約1mm厚のゲルの光透過率は92%であった。
有機無機複合ゲル9中のイオン液体量は27であり、非常に大きいものであった。有機無機複合ゲル9を250%まで延伸させたが破断しなかった。また、10kPaの加重を加えたが破断しなかった。200℃まで加熱したが質量変化は見られなかった。屈折率は1.42であった。水性ゲルでは不透明であり、力学的に非常に弱いゲルであったが、イオン液体をゲル化することにより、透明性が付与され、力学特性も大きく向上した。
(比較例1)
合成例7で得た有機架橋ゲル1(50×30mm)を500mLのメタノールに1日間浸漬させた。途中メタノールを2度交換した。メタノール10g、親水性イオン液体bmiMS10gからなるbmiMS溶液を用意し、メタノール置換した有機架橋ゲル1をこの中に浸漬させて、室温で1日間保持させた。bmiMS溶液から取り出した後、室温で1日間風乾させた後、80℃で1日間乾燥させて、イオン液体含有有機架橋ゲル1を得た。該ゲル中のイオン液体量は7であった。有機架橋ゲル1は黄色みを帯びていたが透明であり、光透過率は86%であった。有機架橋ゲル1を延伸しようとしたが50%も延伸しないうちに破断し、非常に脆いものであった。強度は5kPa以下であった。屈折率は1.43であった。イオン液体をゲル化することにより、透明性は向上したが、力学特性の改善は全く見られなかった。
Figure 0005246854
Figure 0005246854

Claims (3)

  1. ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)とが複合化して形成された三次元網目の中にイオン液体(C)が包含されている有機無機複合ゲルであって、前記ラジカル重合性モノマー(A)が下記構造式(1)又は(2)で表されるラジカル重合性モノマー(A2)を含有し、且つイオン液体(C)が疎水性イオン液体(C2)であり、粘土鉱物(B)が水又は有機溶剤中で均一分散可能な膨潤性層状粘土鉱物である有機無機複合ゲル。
    Figure 0005246854
    (式中、R は水素原子又はメチル基、R は分岐していても良い炭素数1〜5のアルキレン基、R は分岐しても良い炭素数1〜4のアルキル基を表す。但し、R とR の炭素数の合計は6以下である。)
    Figure 0005246854
    (式中、R は水素原子又はメチル基、R は分岐していても良い炭素数3〜6のアルキレン基を表す。)
  2. ラジカル重合性モノマー(A)の重合体と粘土鉱物(B)とが複合化して形成された三次元網目の中にイオン液体(C)が包含されている有機無機複合ゲルであって、前記ラジカル重合性モノマー(A)がN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、アクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、メタクリルアミドから選ばれるアミド基を有するラジカル重合性モノマー(A1)を含有し、且つ前記イオン液体(C)が親水性イオン液体(C1)であり、粘土鉱物(B)が水又は有機溶剤中で均一分散可能な膨潤性層状粘土鉱物である有機無機複合ゲル。
  3. 前記ラジカル重合性モノマー(A)が、前記ラジカル重合性モノマー(A2)を99〜50モル%含有し、更にN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、アクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、メタクリルアミドから選ばれるアミド基を有するラジカル重合性モノマー(A1)を1〜50モル%含有する請求項1に記載の有機無機複合ゲル。
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