図1は、本発明の一実施例としての内燃機関装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な4気筒の内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)を有する浄化装置134を介して外気へ排出されると共にEGR(Exhaust Gas Recirculation)システム160を介して吸気側に供給される。EGRシステム160は、浄化装置134の後段に接続されて排気を吸気側のサージタンクに供給するためのEGR管162と、EGR管162に配置されステッピングモータ163により駆動されるEGRバルブ164とを備え、EGRバルブ164の開度の調節により、不燃焼ガスとしての排気を供給量を調節して吸気側に供給する。エンジン22は、こうして空気と排気とガソリンとの混合気を燃焼室に吸引することができるようになっている。以下、エンジン22の排気を吸気側に供給することをEGRという。
エンジン22は、吸気バルブ128の開閉タイミングを連続的に変更可能な可変バルブタイミング機構150を備える。図3および図4に、可変バルブタイミング機構150の構成の概略を示す構成図を示す。可変バルブタイミング機構150は、図示するように、クランクシャフト26にタイミングチェーン157aを介して接続されたタイミングギヤ157bに固定されたハウジング部152aと吸気バルブ128を開閉するインテークカムシャフト129に固定されたベーン部152bとからなるベーン式のVVTコントローラ152と、ベーン部152bの位置を検出するベーンポジションセンサ153と、VVTコントローラ152の進角室および遅角室に作動油の油圧を作用させるオイルコントロールバルブ156とを備え、オイルコントロールバルブ156を介してVVTコントローラ152の進角室および遅角室に作用させる油圧を調節することによりハウジング部152aに対してベーン部152bを相対的に回転させて吸気バルブ128の開閉タイミングにおけるインテークカムシャフト129の角度を連続的に変更する。実施例では、エンジン22から効率よく動力が出力される吸気バルブ128の開閉タイミングにおけるインテークカムシャフト129の角度を基準角とし、インテークカムシャフト129の角度をその基準角よりも進角させることによりエンジン22から高トルクが出力可能な運転状態とすることができ、インテークカムシャフト129の角度を最遅角させることによりエンジン22の気筒内の圧力変動を小さくしてエンジン22の運転の停止や始動に適した運転状態とすることができるよう構成されている。
また、VVTコントローラ152のベーン部152bには、ハウジング部152aとベーン部152bとの相対回転を固定するロックピン154が取り付けられている。図5にロックピン154の構成の概略を示す構成図を示す。ロックピン154は、図示するようにロックピン本体154aと、ロックピン本体154aがハウジング部152aの方向に付勢されるよう取り付けられたスプリング154bとを備え、インテークカムシャフト129の角度が最遅角に位置されたときにスプリング154bのスプリング力によりハウジング部152aに形成された溝157cに嵌合しベーン部152bをハウジング部152aに固定する。また、ロックピン154は、油路157dを介してスプリング154bのスプリング力に打ち勝つ油圧を作用させることにより溝157cに嵌合されたロックピン本体154aを引き抜くことができるよう図示しない油圧式のアクチュエータが設けられている。なお、実施例では、この油圧式のアクチュエータを作動させるための油圧は、エンジン22のクランクシャフト26に取り付けられた図示しないギヤポンプ33により供給される。
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Tw,燃焼室へ吸排気を行う吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットル開度Ta,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からの吸入空気量Qa,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,吸気管内の圧力を検出する吸気圧センサ158からの吸気圧,浄化装置134に取り付けられた触媒温度センサ134aからの触媒温度,空燃比センサ135aからの空燃比,酸素センサ135bからの酸素信号,シリンダブロックに取り付けられてノッキングの発生に伴って生じる振動を検出するノックセンサ159からのノック信号,EGRバルブ164の開度を検出するEGRバルブ開度センサ165からのEGRバルブ開度EV,VVTコントローラ152の進角室および遅角室に油圧を作用させるための作動油の温度を検出する温度センサ166からのVVT油温Toなどが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、可変バルブタイミング機構150への制御信号,EGRバルブ164の開度を調整するステッピングモータ163への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ち、エンジン22の回転数Neを演算したり、エアフローメータ148からの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて負荷率(エンジン22の1サイクルあたりで吸入可能な空気量に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算したり、エアフローメータ148からの吸入空気量QaとEGRバルブ開度センサ165からのEGRバルブ開度EVとエンジン22の回転数Neとに基づいて吸気に再循環する排気量とエンジン22の吸入空気量Qaとの和に対する排気量の比率としてのEGR率Reを演算している。
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転且つ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行う遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行う。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行っている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作,特に,可変バルブタイミング機構150のVVTコントローラ152の進角室および遅角室への作動油の温度が低くなる冷間時で且つEGRシステム160によりEGRが行われているときの動作について説明する。図6は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される冷間EGR時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、温度センサ166からのVVT油温Toが可変バルブタイミング機構150が良好に作動する温度として予め実験や解析などで定めた良好作動温度T1(例えば、70℃)未満であり且つエンジンECU24により演算されるエンジン22の回転数Neと負荷率KLとから求められるEGR率Reが値0より多いとき、つまり、EGRを行っているときに、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
冷間EGR時駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2など制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図7に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数を乗じることによって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ることによって求めることができる。
続いて、要求パワーPe*と比較的大きいパワーの出力が要求されているか否かを判定するために用いられる値としての閾値Perefとを比較する(ステップS120)。したがって、ステップS120の処理では、エンジン22から比較的大きなパワーの出力が要求されているか否かを判定する処理となる。要求パワーPe*が閾値Perefより小さいときには、エンジン22から比較的大きいパワーの出力は要求されていないと判断し、エンジン22を効率よく運転する制約である燃費優先動作ラインを用いて要求パワーPe*を出力する際のエンジン22の運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると共に(ステップS130)高出力要求フラグFに値0を設定する(ステップS140)。高出力要求フラグFは、エンジン22から比較的大きなパワーの出力が要求されているか否かを判定するために後述する開閉タイミング制御ルーチンで使われるものした。要求パワーPe*が閾値Peref以上のときには、エンジン22から比較的大きいパワーの出力が要求されていると判断し、エンジン22を効率よく運転する制約に比して同一回転数で高トルクを出力する制約である高トルク用動作ラインを用いて要求パワーPe*を出力する際のエンジン22の運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*を設定すると共に(ステップS150)、高出力要求フラグFに値1を設定する(ステップS160)。燃費優先動作ラインおよび高トルク用動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図8に示す。図8から解るように、高トルク用動作ラインは燃費優先動作ラインよりも高トルク側となる。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、燃費優先動作ラインまたは高トルク用動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
次に、設定した目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算し(ステップS170)、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いてモータMG2のトルク指令Tm2*を式(3)により計算する(ステップS180)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図9に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(1)および式(3)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
Tm2*=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (3)
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,高出力要求フラグF,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*と高出力要求フラグFとについてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS190)、冷間EGR時駆動制御ルーチンを終了する。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行う。こうした制御により、エンジン22を効率よくまたは高トルクを出力するよう運転しながら駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
次に、目標回転数Ne*と目標トルクTe*と高出力要求フラグFとが設定されたときのエンジン22の動作について説明する。ハイブリッド用電子制御ユニット70から送信された目標回転数Ne*と目標トルクTe*と高出力要求フラグFとを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御,吸気バルブ128の開閉タイミング制御などの制御を行うと共にEGRバルブ164の開度がEGR率Reをエンジン22の回転数Neと負荷率KLとから設定される目標EGR率Re*とする開度となるようスロットルモータ163の駆動制御を行う。この際、吸気バルブ128の開閉タイミング制御は、高出力要求フラグFの値を考慮して行われる。以下、吸気バルブ128の開閉タイミング制御について説明する。なお、吸入空気量制御や点火制御,燃料噴射制御については、本発明の中核をなさないため、これ以上の説明は省略する。
図10は、エンジンECU24により実行される開閉タイミング制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、ハイブリッド用電子制御ユニット70から送信された目標回転数Ne*と目標トルクTe*とをエンジンECU24が受信したときに実行される。
開閉タイミング制御ルーチンが実行されると、エンジンECU24のCPU24aは、エンジン22の目標回転数Ne*や高出力要求フラグF,水温センサ142からの冷却水温Tw,スロットルバルブポジションセンサ146からのスロットル開度Ta,温度センサ166からのVVT油温Toなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS200)。エンジン22の目標回転数Ne*と高出力要求フラグFとは、上述した冷間EGR時駆動制御ルーチンにより設定されたものをハイブリッド用電子制御ユニット70から通信により入力されものとした。
こうしてデータが入力されたら、目標回転数Ne*を用いてエンジン22の吸気バルブ128の開閉タイミングの仮の値としての仮目標タイミングVTtmpを設定する(ステップS210)。仮目標タイミングVTtmpは、VVT油温Toが良好作動温度T1以上であり冷却水温Twがエンジン22の暖機が終了したと判定する暖機終了温度T2以上であり且つEGRシステム160によりEGRを行っているときに、エンジン22を安定して運転でき且つエンジン22から効率よく動力が出力される吸気バルブ128の開閉タイミングとして設定されるものであり、目標回転数Ne*と仮目標タイミングVTtmpとの関係を予め定めて仮目標タイミング設定用マップとしてROM24bに記憶しておき、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とが与えられると記憶しているマップから対応する仮目標タイミングVTtmpを導出して設定するものとした。
続いて、スロットル開度Taとエンジン22に比較的大きなトルクの出力が要求されている推測されるスロットル開度の閾値Taref(例えば、全開値の50%,60%,70%の開度など)とを比較すると共に(ステップS220)、高出力要求フラグFの値を調べる(ステップS230)。スロットル開度Taが閾値Taref未満であったり、高出力要求フラグFが値0のときには(ステップS220,S230)、エンジン22に対して大きなトルクの出力が要求されていない低出力要求時であると判断して、冷却水温TwとVVT油温Toとを用いて仮目標タイミングVTtmpを遅角側(開閉タイミングが遅くなる方向)へ補正するための遅角補正値VTαを設定して(ステップS240)、仮目標タイミングVTtmpから補正値VTαを減じたものを目標タイミングVT*として設定して(ステップS160)、目標開閉タイミングVT*で吸気バルブ128が開閉するよう可変バルブタイミング機構150を制御して(ステップS170)、冷間EGR導入時制御ルーチンを終了する。したがって、目標タイミングVT*は、仮目標タイミングを遅角補正値Tαだけ遅角させた(遅くした)タイミングとして設定されることになる。ここで、遅角補正値VTαは、実施例では、低出力要求時の冷却水温TwとVVT油温Toと遅角補正値VTαとの関係を実験や解析などで予め定めて低出力要求時補正値設定用マップとしてROM24bに記憶しておき、冷却水温TwとVVT油温Toとが与えられると記憶したマップから対応する遅角補正値VTαを導出して設定するものとした。図11は、低出力要求時補正値設定用マップの一例を示す説明図である。遅角補正値VTαは、図示するように、VVT油温Toが低いほど大きく且つ冷却水温Twが低いほど大きくなるよう設定されるものとした。遅角補正値VTαをVVT油温Toが低いほど大きく設定したのは、VVT油温Toが低いほど可変バルブタイミング機構150の進角室や遅角室に作用する作動油の粘性が高く可変バルブタイミング機構150が良好に作動にくいからである。また、遅角補正値VTαを冷却水温Twが低いほど大きく設定したのは、冷却水温Twが低いほど開閉タイミングを遅角させるほうがエンジン22を安定して運転できるからである。こうして設定された遅角補正値VTαを用いて目標開閉タイミングVT*を設定するから、より安定してエンジン22を運転することができる。
スロットル開度Taが閾値Taref以上であり且つ高出力要求フラグFが値1であるときには(ステップS220,S230)、エンジン22に対して比較的大きなトルクの出力が要求されている高出力要求時であると判断して、冷却水温TwとVVT油温Toとを用いて遅角補正値VTαを設定して(ステップS250)、仮目標タイミングVTtmpを遅角補正値VTαだけ遅角したタイミングを目標タイミングVT*として設定して(ステップS260)、目標開閉タイミングVT*で吸気バルブ128が開閉するよう可変バルブタイミング機構150を制御して(ステップS270)、冷間EGR導入時制御ルーチンを終了する。ここで、遅角補正値VTαは、実施例では、高出力要求時の冷却水温TwとVVT油温Toと遅角補正値VTαとの関係を実験や解析などで予め定めて低出力要求時補正値設定用マップとしてROM24bに記憶しておき、冷却水温TwとVVT油温Toとが与えられると記憶したマップから対応する遅角補正値VTαを導出して設定するものとした。図12は、高出力要求時補正値設定用マップの一例を示す説明図である。図中、比較のため、図11に例示した低出力要求時の補正値を破線で示している。高出力要求時の遅角補正値VTαは、図示するように、VVT油温Toが高いほど小さく且つ冷却水温Twが高いほど小さく、さらに、低出力要求時より小さな値となる傾向に設定するものとした。遅角補正値VTαを低出力要求時より小さな値になるよう設定するから、仮目標タイミングVTtmp,VVT油温To,冷却水温Twが同一であるならば、目標タイミングVT*は低出力要求時より高出力要求時のほうがより進角側(より早いタイミング)に設定されることになる。このように、設定するのは以下の理由に基づく。吸気バルブ128の開閉タイミングが比較的遅角側に設定されているときにエンジン22から比較的大きなトルクを出力しようとすると、スロットルバルブ124の開度をより大きくすると共に燃料噴射量を増加させる制御を行うことが考えられる。今、EGRシステム160によりEGRを行っているときを考えているが、EGRを行っているときにこのような制御を行うとエンジン22の燃焼状態が不安定になることがある。こうしたことを回避するために、吸気バルブ128の開閉タイミングをより進角側に設定してエンジン22からより大きなトルクを出力するのである。また、高出力要求時にも、遅角補正値VTαをVVT油温Toが高いほど小さい値に設定したから、可変バルブタイミング機構150を良好に作動させることができる。さらに、遅角補正値VTαを冷却水温Twが高いほど小さい値として設定したから、より安定してエンジン22を運転することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、高出力要求時には、エンジン22の目標タイミング開閉タイミングVT*を低出力要求時より進角側に設定するから、エンジン22からより大きなトルクを出力することができる。また、遅角補正値VTαをVVT油温Toが高いほど小さい値として設定したから、可変バルブタイミング機構150を良好に作動させることができる。さらに、遅角補正値VTαを冷却水温Twが高いほど小さい値として設定したから、より安定してエンジン22を運転することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、遅角補正値VTαを冷却水温TwとVVT油温Toとを用いて設定するものとしたが、高出力要求時の遅角補正量αを低出力要求時の遅角補正量αより小さく設定すればよいから、遅角補正値VTαを冷却水温TwおよびVVT油温Toの一方のみを用いて設定するものとしてもよいし、冷却水温TwやVVT油温Toに拘わらず予め設定された値を設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、高出力要求時の遅角補正値VTαを低出力要求時より小さな値として設定して仮目標タイミングVTtmpから遅角補正値VTαを減じたものを目標開閉タイミングVT*として設定するものとしたが、高出力要求時には低出力要求時より目標開閉タイミングVT*が早くなる傾向に設定すればよいから、例えば、高出力要求時の目標開閉タイミングVT*として、低出力要求時に設定可能な目標開閉タイミングVT*の最も早いタイミングより早くなるよう予め設定したものを用いるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、仮目標タイミングVTtmpから遅角補正値VTαを減じたものを目標開閉タイミングVT*として設定するものとしたが、低出力時や高出力時の目標開閉タイミングVT*を予め設定しておき、こうして設定した目標タイミングVT*を用いるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、スロットル開度Taと閾値Tarefとを比較すると共に高出力要求フラグFの値を調べて遅角補正量αを設定するものとしたが、高出力要求フラグFの値を調べずにスロットル開度Taと閾値Tarefとの比較結果のみを用いて遅角補正量αを設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図13の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図13における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、走行用の駆動力を出力する走行用の動力を出力するモータを備えずにエンジンからの動力だけを用いて走行する自動車や自動車以外の列車などの車両や船舶,航空機などの移動体に搭載される内燃機関装置の形態や建設設備などの移動しない設備に組み込まれた内燃機関装置の形態としても構わない。さらに、こうした内燃機関装置の制御方法の形態としてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。内燃機関装置としては、実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、可変バルブタイミング機構150が「開閉タイミング変更手段」に相当し、スロットルバルブポジションセンサ146が「スロットル開度検出手段」に相当し、可変バルブタイミング機構150のVVTコントローラ152の進角室および遅角室への作動油の温度が低くなる冷間時で且つEGRシステム160によりEGRが行われているとき、EGRシステム160によりEGRが行われるEGRバルブ164を駆動制御したり、スロットル開度Taが閾値Taref未満であったり高出力要求フラグFが値0のときにはエンジン22の目標回転数Ne*,Te*を用いて仮目標タイミングVTtmpを設定して設定した仮目標タイミングVTtmpを低出力要求時補正値設定用マップを用いて設定される遅角補正値VTαだけ遅くしたタイミングを目標タイミングVT*として設定して設定した目標開閉タイミングVT*で吸気バルブ128が開閉するよう可変バルブタイミング機構150を制御する図10の開閉タイミング制御ルーチンのステップS200からS240,S260,S270の処理やスロットル開度Taが閾値Taref以上であり且つ高出力要求フラグFが値0のときにはエンジン22の目標回転数Ne*,Te*を用いて仮目標タイミングVTtmpを設定して設定した仮目標タイミングVTtmpを低出力要求時より大きく遅角補正値VTαを設定する高出力要求時補正値設定用マップを用いて設定される遅角補正値VTαだけ遅角したタイミングを目標タイミングVT*として設定して設定した目標開閉タイミングVT*で吸気バルブ128が開閉するよう可変バルブタイミング機構150を制御するステップS200からS230,S250〜S270の処理を実行するエンジンECU24が「制御手段」に相当する。車両としては、実施例では、モータMG2が「電動機」に相当する。また、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、設定した要求トルクTr*を用いてエンジン22から出力すべきパワーとしての要求パワーPe*を設定するハイブリッド用電子制御ユニットが「要求パワー設定手段」に相当し、可変バルブタイミング機構150のVVTコントローラ152の進角室および遅角室への作動油の温度が低くなる冷間時で且つEGRシステム160によりEGRが行われているときにエンジン22から要求パワーPe*を出力しながら要求トルクTr*で走行するエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*と設定してエンジンECU24やモータECU40に送信する図6の冷間EGR時駆動制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70とトルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行うモータECU40とスロットル開度Taが閾値Taref未満であったり高出力要求フラグFが値0のときにはエンジン22の目標回転数Ne*,Te*を用いて仮目標タイミングVTtmpを設定して設定した仮目標タイミングVTtmpを低出力要求時補正値設定用マップを用いて設定される遅角補正値VTαだけ遅くしたタイミングを目標タイミングVT*として設定して設定した目標開閉タイミングVT*で吸気バルブ128が開閉するよう可変バルブタイミング機構150を制御する図10の開閉タイミング制御ルーチンのステップS200からS240,S260,S270の処理やスロットル開度Taが閾値Taref以上であり且つ高出力要求フラグFが値0のときにはエンジン22の目標回転数Ne*,Te*を用いて仮目標タイミングVTtmpを設定して設定した仮目標タイミングVTtmpを低出力要求時より大きく遅角補正値VTαを設定する高出力要求時補正値設定用マップを用いて設定される遅角補正値VTαだけ遅角したタイミングを目標タイミングVT*として設定して設定した目標開閉タイミングVT*で吸気バルブ128が開閉するよう可変バルブタイミング機構150を制御するステップS200からS230,S250〜S270の処理を実行するエンジンECU24とが「制御手段」に相当する。
ここで、内燃機関装置において、「内燃機関」としては、エンジン22に限定したものではなく、排気の一部を吸気に再循環する排気再循環装置を有するものであれば如何なるものとしても構わない。「開閉タイミング変更手段」としては、可変バルブタイミング機構150に限定されるものではなく、作動油の油圧を用いて前記内燃機関の吸気バルブの開閉タイミングを変更可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「スロットル開度検出手段」としては、スロットルバルブポジションセンサ146に限定されるものではなく、スロットル開度を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、可変バルブタイミング機構150のVVTコントローラ152の進角室および遅角室への作動油の温度が低くなる冷間時で且つEGRシステム160によりEGRが行われているとき、EGRシステム160によりEGRが行われるEGRバルブ164を駆動制御したり、スロットル開度Taが閾値Taref未満であったり高出力要求フラグFが値0のときにはエンジン22の目標回転数Ne*,Te*を用いて仮目標タイミングVTtmpを設定して設定した仮目標タイミングVTtmpを低出力要求時補正値設定用マップを用いて設定される遅角補正値VTαだけ遅くしたタイミングを目標タイミングVT*として設定して設定した目標開閉タイミングVT*で吸気バルブ128が開閉するよう可変バルブタイミング機構150を制御したりスロットル開度Taが閾値Taref以上であり且つ高出力要求フラグFが値0のときにはエンジン22の目標回転数Ne*,Te*を用いて仮目標タイミングVTtmpを設定して設定した仮目標タイミングVTtmpを低出力要求時より大きく遅角補正値VTαを設定する高出力要求時補正値設定用マップを用いて設定される遅角補正値VTαだけ遅角したタイミングを目標タイミングVT*として設定して設定した目標開閉タイミングVT*で吸気バルブ128が開閉するよう可変バルブタイミング機構150を制御するものに限定されるものではなく、前記作動油の温度が前記開閉タイミング変更手段を良好に作動可能な所定温度未満であると推定され且つ前記排気再循環装置により排気の再循環が行われているとき、検出されたスロットル開度が中程度の開度として予め設定された所定開度未満であるときには内燃機関の運転状態に対して第1の関係を用いて設定される第1目標開閉タイミングで吸気バルブを開閉しながら内燃機関が運転されるよう内燃機関と開閉タイミング変更手段とを制御し、検出されたスロットル開度が所定開度以上であるときには内燃機関の運転状態に対して第1の関係より吸気バルブの開閉タイミングを早くなる傾向に設定する第2の関係を用いて設定される第2目標開閉タイミングで吸気バルブを開閉しながら内燃機関が運転されるよう内燃機関と開閉タイミング変更手段とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。また、車両において、「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせたものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる差動作用を有するものなど、車軸に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され、3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「要求パワー設定手段」としては、設定した要求トルクTr*を用いてエンジン22から出力すべきパワーとしての要求パワーPe*を設定するハイブリッド用電子制御ユニットに限定されるものではなく、走行に要求される要求駆動力に基づいて内燃機関から出力すべき要求パワーを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、可変バルブタイミング機構150のVVTコントローラ152の進角室および遅角室への作動油の温度が低くなる冷間時で且つEGRシステム160によりEGRが行われているときにエンジン22から要求パワーPe*を出力しながら要求トルクTr*で走行するエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*と設定してトルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行うと共にスロットル開度Taが閾値Taref未満であったり高出力要求フラグFが値0のときにはエンジン22の目標回転数Ne*,Te*を用いて仮目標タイミングVTtmpを設定して設定した仮目標タイミングVTtmpを低出力要求時補正値設定用マップを用いて設定される遅角補正値VTαだけ遅くしたタイミングを目標タイミングVT*として設定して設定した目標開閉タイミングVT*で吸気バルブ128が開閉するよう可変バルブタイミング機構150を制御したりスロットル開度Taが閾値Taref以上であり且つ高出力要求フラグFが値0のときにはエンジン22の目標回転数Ne*,Te*を用いて仮目標タイミングVTtmpを設定して設定した仮目標タイミングVTtmpを低出力要求時より大きく遅角補正値VTαを設定する高出力要求時補正値設定用マップを用いて設定される遅角補正値VTαだけ遅角したタイミングを目標タイミングVT*として設定して設定した目標開閉タイミングVT*で吸気バルブ128が開閉するよう可変バルブタイミング機構150を制御するものに限定されるものではなく、作動油の温度が所定温度未満であると推定され且つ排気再循環装置により排気の再循環が行われているとき、検出されたスロットル開度が所定開度未満であるとき又は設定された要求パワーが所定パワー未満であるときには内燃機関の運転状態に対して第1の関係を用いて設定される第1目標開閉タイミングで吸気バルブを開閉しながら内燃機関から設定された要求パワーが出力されると共に要求駆動力により走行するよう内燃機関と開閉タイミング変更手段と発電機と電動機とを制御し、検出されたスロットル開度が所定開度以上であり且つ設定された要求パワーが所定パワー以上であるときには内燃機関の運転状態に対して第2の関係を用いて設定される第2目標開閉タイミングで吸気バルブを開閉しながら内燃機関から設定された要求パワーが出力されると共に要求駆動力により走行するよう内燃機関と開閉タイミング変更手段と発電機と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行われるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。