以下、本発明に係るマルチコアファイバの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るマルチコアファイバ100の様子を示す図である。具体的には、図1(A)は、マルチコアファイバ100の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図1(B)は、図1(A)に示すマルチコアファイバ100のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図1(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ100は、クラッド40と、クラッド40の径方向の中心に配置される特定のコア要素10bと、クラッド40内に配置されコア要素10bを囲むように配置される3つ以上のコア要素20aと、クラッド40の外周面を被覆する内側保護層41と、内側保護層41の外周面を被覆する外側保護層42と、を備える。なお、図1(A)においては、1つのコア要素10bが、6つのコア要素20aにより囲まれている場合の様子を示している。
コア要素10bは、コア11と、コア11の外周面を囲む内側クラッド層12と、内側クラッド層12の外周面を囲み、クラッド40に外周面が囲まれる低屈折率層13bとを有している。また、それぞれのコア要素20aは、それぞれの中心が互いに等間隔とされてクラッド40内に配置されている。そして、それぞれのコア要素20aは、コア要素10bと同様の構造をしており、コア11と同様のコア21と、コア21の外周面を囲み、内側クラッド層12と同様の構造の内側クラッド層22と、内側クラッド層22の外周面を囲み、クラッド40に外周面が囲まれる低屈折率層23aとを有している。そして、本実施形態においては、各コア要素10b,20aにおいて、それぞれのコア11,21の直径は互いに等しく、それぞれの内側クラッド層12,22の外径は互いに等しく、それぞれの低屈折率層13b,23aの外径は互いに等しくされている。従って、それぞれの内側クラッド層12,22の厚さは、互いに等しく、さらに、それぞれの低屈折率層13b,23aの厚さは互いに等しくされている。マルチコアファイバ100を構成するそれぞれの部材の大きさは、特に限定されるわけではないが、例えば、コア11,21の直径は、8.2μmとされ、内側クラッド層12,22の外径は、19μmとされ、低屈折率層13b,23aの外径は、27μmとされ、クラッド40の直径は、150μmとされ、内側保護層41の外径は、220μmとされ、外側保護層42の外径は、270μmとされる。
また、本実施形態においては、それぞれのコア要素10b,20aおけるそれぞれのコア11,21の屈折率は互いに等しく屈折率n1とされ、それぞれの内側クラッド層12,22の屈折率は互いに等しく屈折率n2とされる。そして、図1に示すように、それぞれのコア要素20aの低屈折率層23aの屈折率は互いに等しく屈折率n3aとされるが、コア要素10bの低屈折率層13bの屈折率n3bは、コア要素20aの低屈折率層23aの屈折率n3aよりも高くされる。ここで、屈折率で、各コア要素10b,20aを分類すると、複数のコア要素10b,20aの内、一部のコア要素10bと、他の一部のコア要素20aとに分類することができる。
そして、図1(B)に示すように、内側クラッド層12,22の屈折率n2、及び、クラッド40の屈折率n4は、コア11の屈折率n1よりも低くされ、それぞれの低屈折率層13b,23aの屈折率n3b,n3aは、内側クラッド層12,22の屈折率n2、及び、クラッド40の屈折率n4よりも更に低くされている。別言すれば、それぞれの屈折率n1〜n4は、
n1>n2>n3a,n3b
n1>n4
n3a,n3b<n4
を全て満たし、更に、
n3a<n3b
とされている。
なお、本実施形態においては、内側クラッド層12の屈折率n2とクラッド40の屈折率n4とが、互いに等しくされている。つまり、n2=n4とされている。
このようにそれぞれのコア要素10b,20aを屈折率の観点から見る場合に、コア要素10b,20aにおいて、低屈折率層13b,23aは、それぞれ溝状の形状をしており、それぞれのコア要素10b,20aは、トレンチ構造を有している。このような、トレンチ構造にすることにより、マルチコアファイバ100の曲げに対する損失を抑制することができる。また、トレンチ構造を有する光ファイバは、量産における製造方法が確立しているため、マルチコアファイバ100を容易に安価に製造することができる。なお、本実施形態において、それぞれの低屈折率層13b,23aの屈折率は、低屈折率層13b,23a内で一様であるため、低屈折率層13b,23aにおける屈折率n3b,n3aと、この平均屈折率とは同意である。
マルチコアファイバ100は、このような屈折率を有するため、コア11,21は、例えば、ゲルマニウム等の屈折率を上げるドーパントが添加された石英から成り、内側クラッド層12,22及びクラッド40は、例えば、何らドーパントが添加されない純粋な石英から構成される。さらに、低屈折率層13b,23aは、クラッド40及び内側クラッド層12,22よりも屈折率の低い材料から成り、例えば、フッ素等の屈折率を下げるドーパントが添加された石英から成り、低屈折率層13bと低屈折率層23aとで、ドーパントの添加量が異なるようにされている。また、内側保護層41、及び外側保護層42は、例えば、互いに種類の異なる紫外線硬化樹脂等から構成される。
なお、光ファイバの導波特性は、上記の屈折率に基づくクラッド40の屈折率に対する比屈折率差Δで規定される。i=1,2,3a,3bとしたとき、n
iの屈折率を有する層のクラッド40に対する比屈折率差Δ
iは、以下の式で定義される。
このようにマルチコアファイバ100においては、それぞれのコア要素10b,20aにおいて、低屈折率層13b,23aの屈折率n3b,n3aが、内側クラッド層12の屈折率n2及びクラッド40の屈折率n4よりも小さくされることで、コア11への光の閉じ込め効果が大きくなり、コア11から光が漏えいしづらくなる。従って、コア11を伝播する光がコア要素10b,20aから漏えいすることを防止することができる。さらに、屈折率の低い低屈折率層13b,23a及びクラッド40が障壁となり、互いに隣り合うコア要素10b,20aにおけるコア11,21同士、或いは、互いに隣り合うコア要素20aにおけるコア21同士のクロストークを抑制することができる。
コア11,21の比屈折率差は、特性として有するべきモードフィールド径MFDに応じて規定される。内側クラッド層12,22のクラッド40に対する比屈折率差は、本実施形態のように略ゼロであることが多いが、波長分散特性の調整のために正負の値に適時設定される。つまり、内側クラッド層12,22の屈折率n2が、コア11,21の屈折率n1と、クラッド40の屈折率n4との間に設定されたり、低屈折率層13b,23aの屈折率n3a,n3bと、クラッド40の屈折率n4との間に設定される。
そして、上述のようにコア要素10bの低屈折率層13bの屈折率n3bは、コア要素20aの低屈折率層23aの屈折率n3aよりも高くされ、
n3a<n3b
を満たしている。このため、特定のコア要素10bの低屈折率層13bは、特定のコア要素10bを囲む3つ以上のコア要素20aの低屈折率層23aよりも、コア11への光の閉じ込め損失が大きくされている。つまり、特定のコア要素10bにおいては、低屈折率層により自己のコアに光が閉じ込められる作用が、特定のコア要素10bを囲むコア要素20aよりも弱く、光がコア要素10bから逃げ易くされている。このため、一部のコア要素である特定のコア要素10bにおいては、他の一部のコア要素であるコア要素20aよりも高次モードが逃げ易い。
なお、このようなマルチコアファイバ100は、次のように製造される。まず、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13bとなる特定のコア要素用ガラス部材、及び、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23aとなる複数のコア要素用ガラス部材を準備する。さらに、これらのコア要素用ガラス部材をクラッド40もしくはクラッド40の一部となるクラッド用ガラス部材中に配置して、コラプスすることにより、断面における配置が、図1(A)に示すマルチコアファイバ100における内側保護層41、外側保護層42を除いた部分と相似形のファイバ用母材を作製する。そして、作成したファイバ用母材加熱溶融し紡糸することでマルチコアファイバとし、このマルチコアファイバを内側保護層41、外側保護層42で被覆して、マルチコアファイバ100とする。なお、上記のコア要素用ガラス部材をクラッド40もしくはクラッド40の一部となるクラッド用ガラス部材中に配置して、コラプスしながら紡糸しても良い。
以上説明したように、本実施形態のマルチコアファイバ100は、クラッド40と、クラッド40内に設けられ、コア11,21と、コア11,21を囲む内側クラッド層12,22と、内側クラッド層12,22を囲むと共に、クラッド40及び内側クラッド層12,22よりも平均屈折率が低い低屈折率層13b,23aと、を有する複数のコア要素10b,20aと、を備え、複数のコア要素は、特定のコア要素10bが、3つ以上のコア要素20aに囲まれるよう配置され、複数のコア要素における一部のコア要素の低屈折率層は、他の一部のコア要素の低屈折率層よりも、コアへの光の閉じ込め損失が大きいものであり、この一部のコア要素が、特定のコア要素10bであり、他の一部のコア要素が、特定のコア要素10bを囲む3つ以上のコア要素20aである。
このようなマルチコアファイバ100によれば、上述のようにコア間のクロストークを抑制することができる。
また、マルチコアファイバが、本実施形態のコア要素10b,20aのように、コアが低屈折率層で囲まれている複数のコア要素を有し、更に特定のコア要素が、3つ以上のコア要素で囲まれている場合、特定のコア要素のカットオフ波長が長くなる傾向にある。しかし、本実施形態のマルチコアファイバ100によれば、上述のように、特定のコア要素10bにおいては、この特定のコア要素10bを囲む3つ以上のコア要素20aよりも、自己の低屈折率層13bによる光の閉じ込め損失が大きくされている。つまり、特定のコア要素10bにおいては、低屈折率層により自己のコアに光が閉じ込められる作用が、この特定のコア要素10bを囲む3つ以上のコア要素20aよりも弱く、光がコア要素10bから逃げ易くされている。従って、特定のコア要素10bにおいては、高次モードが逃げ易くされている。一方、特定のコア要素10bにおいては、コア要素10bを囲むそれぞれのコア要素20aの低屈折率層23aにより、高次モードが逃げづらくされている。従って、特定のコア要素10bにおいては、自己の低屈折率層13bによる高次モードの逃げやすさと、特定のコア要素10bを囲むそれぞれのコア要素20aの低屈折率層23aによる高次モードの逃げづらさと、をバランスさせることができる。このため特定のコア要素10bのカットオフ波長が、このコア要素10bを囲むコア要素20aと比べて、長波長化することを抑制することができる。こうして、それぞれのコア要素10b,20aのカットオフ波長が変わることを抑制でき、それぞれのコア要素10b,20aにおける、シングルモード通信を行うための条件が変わることを抑制することができる。
また、本実施形態においては、上述のように、特定のコア要素10bにおける低屈折率層13bの屈折率n3bが、コア要素10bを囲む3つ以上のコア要素20aの屈折率n3aよりも高くされることにより、コア要素10bの低屈折率層13bは、コア要素20aの低屈折率層23aよりも、コア11への光の閉じ込め損失が大きくされている。従って、特定のコア要素10bにおける低屈折率層13bの材料を、特定のコア要素10bを囲むコア要素20aにおける低屈折率層23aの材料と変えるだけで良く、それぞれのコア要素10b,20aを同じ大きさにすることができる。従って、設計の自由度が向上する。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図2を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図2は、本発明の第2実施形態に係るマルチコアファイバ101の様子を示す図である。具体的には、図2(A)は、マルチコアファイバ101の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図2(B)は、図2(A)に示すマルチコアファイバ101のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図2(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ101は、第1実施形態における特定のコア要素10bの代わりに、コア要素10bと同じ位置に配置される特定のコア要素10cを備える点において、第1実施形態のマルチコアファイバ100と異なる。
特定のコア要素10cは、第1実施形態のコア11と同様のコア11と、コア11の外周面を囲み第1実施形態の内側クラッド層12と同様の内側クラッド層12と、内側クラッド層12の外周面を囲む低屈折率層13cとを有する。また、図2(B)に示すように、低屈折率層13cの屈折率n3cは、特定のコア要素10cを囲む3つ以上のコア要素20aにおけるそれぞれの低屈折率層23aの屈折率n3aと同様とされている。さらに、低屈折率層13cの厚さt3cは、低屈折率層23aの厚さt3aよりも薄くされている。このため、特定のコア要素10cの低屈折率層13cは、それぞれのコア要素20aの低屈折率層23aよりも、コア11への光の閉じ込め損失が大きくされている。
なお、本実施形態においては、コア要素10cの外径は、低屈折率層13cの厚さと低屈折率層23aの厚さとの差だけ、コア要素20aの外形よりも小さくされている。ここで、コア要素の断面の構造で、各コア要素10c,20aを分類すると、一部のコア要素10cと、他の一部のコア要素20aとに分類することができる。
このようなマルチコアファイバ101は、マルチコアファイバ100の製造において、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13bとなる特定のコア要素用ガラス部材の代わりに、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13cとなる特定のコア要素用ガラス部材を用いれば良い。
本実施形態におけるマルチコアファイバ101によれば、上述のように、特定のコア要素10cにおける低屈折率層13cが、それぞれのコア要素20aにおける低屈折率層23aよりも薄く形成されることにより、コア要素10cの低屈折率層13cは、それぞれのコア要素20aの低屈折率層23aよりも、コア11への光の閉じ込め損失が大きくされている。このため、特定のコア要素10cにおいては、低屈折率層13cにより、コア11から高次モードが逃げ易くされ、一方、それぞれのコア要素20aの低屈折率層23aにより、高次モードが逃げづらくされている。従って、コア要素10cのカットオフ波長が、コア要素20aと比べて、長波長化することを抑制することができる。そして、このような構成にすることで、特定のコア要素10cにおける低屈折率層13cの材料を、それぞれのコア要素20aにおける低屈折率層23aの材料と同じにすることができる。従って、低屈折率層の材料の自由度が向上する。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図3を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図3は、本発明の第3実施形態に係るマルチコアファイバ102の様子を示す図である。具体的には、図3(A)は、マルチコアファイバ102の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図3(B)は、図3(A)に示すマルチコアファイバ102のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図3に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ102は、第1実施形態における特定のコア要素10bの代わりに、コア要素10bと同じ位置に配置される特定のコア要素10eを備え、第1実施形態における3つ以上のコア要素20aの代わりに、それぞれのコア要素20aと同じ位置に配置される3つ以上のコア要素20dを備える点において、第1実施形態のマルチコアファイバ100と異なる。
図3(A)に示すように、それぞれのコア要素10e,20dは、第1実施形態のコア11と同様のコア11,21と、コア11,21の外周面を囲み第1実施形態の内側クラッド層12,22と同様の内側クラッド層12,22と有している。そして、コア要素10eは、内側クラッド層12の外周面を囲み、クラッド40に外周面が囲まれる低屈折率層13eを有しており、コア要素20dは、内側クラッド層12の外周面を囲み、クラッド40に外周面が囲まれる低屈折率層23dを有している。
それぞれの低屈折率層13e,23dには、クラッド40及び内側クラッド層12,22よりも屈折率が低い低屈折率部5が、内側クラッド層12,22を囲むように複数形成されて成っている。本実施形態においては、低屈折率層13e,23dに円形の空孔が複数形成されており、この空孔が低屈折率部5とされている。従って、低屈折率部5の断面における形状は円形である。
また、図3(A)に示すように、それぞれのコア要素10e,20dにおける複数の低屈折率部5の内、少なくとも1つは、自己のコア要素におけるコア11,21と、他のコア要素におけるコア11,21とを結ぶ直線上に配置されている。具体的には、コア要素10eにおける複数の低屈折率部5の内、一部の低屈折率部5は、自己のコア要素10eのコア11と、コア要素20dのコア21とを結ぶ直線上に配置されている。また、それぞれのコア要素20dにおいては、複数の低屈折率部5の内、1つの低屈折率部5は、自己のコア要素20dのコア21と、コア要素10eのコア11とを結ぶ直線上に配置されており、複数の低屈折率部5の内、他の少なくとも1つの低屈折率部5は、自己のコア要素20dのコア21と、他のコア要素20dのコア21とを結ぶ直線上に配置されている。このように、自己のコアと他のコアとの間に低屈折率部5が介在することにより、それぞれのコア同士のクロストークをより抑制することができる。
また、本実施形態においては、特定のコア要素10eの低屈折率層13eにおける低屈折率部5の数が、コア要素20dの低屈折率層23dにおける低屈折率部5の数よりも少なくされている。また、本実施形態においては、それぞれの低屈折率層13e,23dにおける低屈折率部5以外の領域は、クラッド40、及び、内側クラッド層12と同様の材料から成っている。そして、図3(B)に示すように、低屈折率部5が空孔であることから、低屈折率部5の屈折率n5は1であり、内側クラッド層12,22、及び、クラッド40の屈折率n2,n4よりも低いため、低屈折率層13e,23dの平均屈折率n3e,n3dは、内側クラッド層12及びクラッド40よりも低くされている。
また、低屈折率層13eにおいては、低屈折率部5の数が、低屈折率層23dの低屈折率部5の数よりも少なくされることで、低屈折率層13eの平均屈折率n3eは、低屈折率層23dの平均屈折率n3dの平均屈折率よりも高くされている。こうして、特定のコア要素10eの低屈折率層13eは、それぞれのコア要素20dの低屈折率層23dよりも、コア11への光の閉じ込め損失が大きくされている。
ここで、コア要素の断面の構造、及び、低屈折率層の平均屈折率で、各コア要素10e,20dを分類すると、一部のコア要素10eと、他の一部のコア要素20dとに分類することができる。
なお、上述のように低屈折率層13e,23dの低屈折率部5以外の領域は、内側クラッド層12及びクラッド40との境界がないが、図3においては、理解の容易のため、境界を仮想線で示している。
なお、このようなマルチコアファイバ102は、次のように製造される。
まず、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13eとなる特定のコア要素用ガラス部材、及び、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層23dとなる複数のコア要素用ガラス部材を準備する。この低屈折率層13e,23dとなる部材は、それぞれの低屈折率部(空孔)が形成されるように、それぞれの低屈折率部となる位置に、ガラス管が配置される。そして、これらのコア要素用ガラス部材をクラッド40もしくはクラッド40の一部となるクラッド用ガラス部材中に配置して、ガラス管の貫通孔に所定の圧力が加えられる状況で、コラプスすることにより、断面における配置が、図3(A)に示すマルチコアファイバ102における内側保護層41、外側保護層42を除いた部分と相似形のファイバ用母材を作製する。そして、作成したファイバ用母材を、各貫通孔に所定の圧力を加えながら、加熱溶融し紡糸することでマルチコアファイバとし、このマルチコアファイバを内側保護層41、外側保護層42で被覆して、マルチコアファイバ102とする。なお、上記のコア要素用ガラス部材をクラッド40もしくはクラッド40の一部となるクラッド用ガラス部材中に配置して、コラプスしながら各貫通孔に所定の圧力を加えて紡糸しても良い。
本実施形態におけるマルチコアファイバ102によれば、屈折率が低い低屈折率部5が、それぞれのコア11,21を囲むように環状に連続して形成されていないため、各コア11,21から適切に高次モードを逃がすことができる。従って、各コア11のカットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。
また、本実施形態においては、特定のコア要素10eにおける低屈折率部5の数を少なくすることで、低屈折率部5を設けるためのコストを低減することができ、より容易に特定のコア要素10eの低屈折率層13eを設けることができる。具体的には、低屈折率部5が空孔であれば、ファイバ用母材の作成において、空孔を孔開法で作製する場合は、孔開のコストが削減でき、ガラス管で空孔部分を作製する場合は、ガラス管の数を減らすことができ、何れにせよ安価に製造することができる。
なお、本実施形態においては、低屈折率部5を空孔で形成しているため、低屈折率部5の屈折率をより小さくすることができるが、低屈折率部5は、空孔に限らず、内側クラッド層12及びクラッド40よりも低屈折率の材料であれば、特に限定されない。例えば、低屈折率部5を屈折率を下げるフッ素等のドーパントが添加された石英で作成することができる。この場合においても、本実施形態のマルチコアファイバ102によれば、単価の高いフッ素が添加された石英の数を少なくすることができるので、安価に製造することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図4を参照して詳細に説明する。なお、第3実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図4は、本発明の第4実施形態に係るマルチコアファイバ103の様子を示す図である。具体的には、図4(A)は、マルチコアファイバ103の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図4(B)は、図4(A)に示すマルチコアファイバ103のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図4に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ103は、第2実施形態における特定のコア要素10eの代わりに、コア要素10eと同じ位置に配置される特定のコア要素10fを備える点において、第3実施形態のマルチコアファイバ102と異なる。
コア要素10fは、第3実施形態のコア11と同様のコア11と、コア11の外周面を囲み第3実施形態の内側クラッド層12と同様の内側クラッド層12と有している。そして、コア要素10fは、内側クラッド層12の外周面を囲み、クラッド40に外周面が囲まれる低屈折率層13fを有している。
低屈折率層13fは、断面の形状が円形の空孔から成る複数の低屈折率部5fを有している。上述のように低屈折率層23dの低屈折率部5も空孔から成っているため、低屈折率層13fにおける低屈折率部5fの屈折率n5fと、コア要素20dの低屈折率層23dにおける低屈折率部5の屈折率n5は1であり、互いに等しくされる。そして、低屈折率層13fにおける低屈折率部5fの数は、コア要素20dの低屈折率層23dにおける低屈折率部5を同数とされるが、低屈折率層13fにおけるそれぞれの低屈折率部5fの面積(長手方向に垂直な断面における面積)は、低屈折率層23dにおけるそれぞれの低屈折率部5の面積(長手方向に垂直な断面における面積)よりも小さくされている。また、低屈折率層13fにおける低屈折率部5f以外の領域は、クラッド40、及び、内側クラッド層12と同様の材料から成っている。
従って、マルチコアファイバ103においては、コア要素10fにおける低屈折率層13fの平均屈折率n3fが、コア要素20dにおける低屈折率層23dの平均屈折率n3dよりも高くされ、更に、コア要素10fにおける低屈折率層13fの厚さt3fが、コア要素20dにおける低屈折率層23dの厚さt3dよりも薄くされる。こうして、特定のコア要素10fの低屈折率層13fは、それぞれのコア要素20dの低屈折率層23dよりも、コア11への光の閉じ込め損失が大きくされている。
ここで、コア要素の断面の構造、及び、低屈折率層の平均屈折率で、各コア要素10f,20dを分類すると、一部のコア要素10fと、他の一部のコア要素20dとに分類することができる。
なお、上述のように低屈折率層13fの低屈折率部5f以外の領域は、内側クラッド層12及びクラッド40との境界がないが、図4においては、理解の容易のため、境界を仮想線で示している。
なお、このようなマルチコアファイバ103は、マルチコアファイバ102の製造において、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13eとなる特定のコア要素用ガラス部材の代わりに、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13fとなる特定のコア要素用ガラス部材を用いれば良い。
なお、本実施形態においても、第3実施形態と同様にして低屈折率部5、5fを空孔で形成しているため、低屈折率部5、5fの屈折率をより小さくすることができるが、低屈折率部5、5fは、空孔に限らず、内側クラッド層12及びクラッド40よりも低屈折率の材料から成っていれば、特に限定されない。例えば、低屈折率部5,5fを屈折率を下げるフッ素等のドーパントが添加された石英で作成することができる。この場合においても、本実施形態のマルチコアファイバ103によれば、低屈折率部5fに用いるフッ素が添加された石英の量を少なくすることができるので、安価に製造することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図5を参照して詳細に説明する。なお、第3実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図5は、本発明の第5実施形態に係るマルチコアファイバ104の様子を示す図である。具体的には、図5(A)は、マルチコアファイバ104の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図5(B)は、図5(A)に示すマルチコアファイバ104のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図5に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ104は、第2実施形態における特定のコア要素10eの代わりに、コア要素10eと同じ位置に配置される特定のコア要素10gを備える点において、第3実施形態のマルチコアファイバ102と異なる。
コア要素10gは、第3実施形態のコア11と同様のコア11と、コア11の外周面を囲み第3実施形態の内側クラッド層12と同様の内側クラッド層12と有している。そして、コア要素10gは、内側クラッド層12の外周面を囲み、クラッド40に外周面が囲まれる低屈折率層13gを有している。
低屈折率層13gは、複数の低屈折率部5gを有している。それぞれの低屈折率部5gは、空孔ではなく、クラッド40の屈折率n4、及び、内側クラッド層12の屈折率n2よりも低い屈折率n5gを有するガラス等の材料から成っている。このような屈折率n5gを有する低屈折率部5gの材料としては、例えば、第1実施形態における低屈折率層13b,23aの材料と同様の材料を挙げることができる。そして、低屈折率層13gにおける低屈折率部5gの数は、コア要素20dの低屈折率層23dにおける低屈折率部5と同数とされ、それぞれの低屈折率部5gの面積(長手方向に垂直な断面における面積)は、低屈折率層23dにおけるそれぞれの低屈折率部5の面積(長手方向に垂直な断面における面積)と同じとされている。また、低屈折率層13gにおける低屈折率部5g以外の領域は、クラッド40、及び、内側クラッド層12と同様の材料から成っている。
従って、マルチコアファイバ104においては、コア要素10gにおける低屈折率層13gの平均屈折率n3gが、コア要素20dにおける低屈折率層23dの平均屈折率n3dよりも高くされる。こうして、特定のコア要素10gの低屈折率層13gは、それぞれのコア要素20dの低屈折率層23dよりも、コア11への光の閉じ込め損失が大きくされている。
ここで、コア要素の断面の構造、及び、低屈折率層の平均屈折率で、各コア要素10g,20dを分類すると、一部のコア要素10gと、他の一部のコア要素20dとに分類することができる。
なお、本実施形態においても、上述のように低屈折率層13gの低屈折率部5g以外の領域は、内側クラッド層12及びクラッド40との境界がないが、図5においては、理解の容易のため、境界を仮想線で示している。
なお、このようなマルチコアファイバ104は、マルチコアファイバ102の製造において、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13eとなる特定のコア要素用ガラス部材の代わりに、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13gとなる特定のコア要素用ガラス部材を用いれば良い。低屈折率層13gとなる部材は、低屈折率部5gとなる位置に低屈折率のガラスロッドを配置すれば良い。
本実施形態におけるマルチコアファイバ104によれば、特定のコア要素10gにおける低屈折率部5gの材料を、コア要素10gを囲むコア要素20dにおける低屈折率部5の材料と変えるだけで良く、それぞれのコア要素10g,20dを同じ大きさにすることができる。従って、設計の自由度が向上する。
なお、本実施形態においても、第3実施形態と同様にして低屈折率部5を空孔で形成しているため、低屈折率部5の屈折率をより小さくすることができるが、低屈折率部5は、空孔に限らず、内側クラッド層12及びクラッド40及び低屈折率部5gよりも低屈折率の材料から成っていれば、特に限定されない。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図6を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図6は、本発明の第6実施形態に係るマルチコアファイバ105の様子を示す図である。具体的には、図6(A)は、マルチコアファイバ105の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図6(B)は、図6(A)に示すマルチコアファイバ105のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図6(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ105は、第1実施形態における特定のコア要素10bの代わりに、コア要素10bと同じ位置に配置される特定のコア要素10hを備える点において、第1実施形態のマルチコアファイバ100と異なる。
コア要素10hは、第1実施形態のコア11と同様のコア11と、コア11の外周面を囲み第1実施形態の内側クラッド層12と同様の内側クラッド層12を有するが、コア要素10bが有する低屈折率層を有さない。このため、特定のコア要素10hは、低屈折率層による光の閉じ込めが無く、コア11が有している光を閉じ込める作用により、コア11に光を閉じ込める。
なお、本実施形態のマルチコアファイバ105においては、内側クラッド層12とクラッド40が同様の材料から成っているため、本来内側クラッド層12とクラッド40との境界は存在しないが、図6においては、理解の容易のため、内側クラッド層12を示す仮想線を記載している。従って、本実施形態のマルチコアファイバ105のように、内側クラッド層12とクラッド40とが同様の材料から成っている場合、コア要素10hは、内側クラッド層12を有さず、コア11がクラッド40内に直接配置されていると考えることもできる。また、第1実施形態のマルチコアファイバ100において、一部のコア要素である特定のコア要素10bの低屈折率層13bの屈折率をクラッド40と同じ屈折率まで上げることにより、特定のコア要素10bは、低屈折率層13bを有さない構造となり、本実施形態のマルチコアファイバ105のコア要素10hと同様の構成となる。従って、本実施形態のマルチコアファイバ105であっても、第1実施形態のマルチコアファイバ100であっても、同様の技術的特徴を有する。
ここで、コア要素の断面の構造で、各コア要素10h,20aを分類すると、一部のコア要素10hと、他の一部のコア要素20aとに分類することができる。
このようなマルチコアファイバ105は、クラッド40と、クラッド40内に設けられる複数のコア要素10h,20aと、を備え、複数のコア要素10h,20aは、特定のコア要素10hが、3つ以上のコア要素20aに囲まれるよう配置され、複数のコア要素10h,20aは、一部のコア要素と、他の一部のコア要素とから成り、他の一部のコア要素は、コア21と、コア21を囲む内側クラッド層22と、内側クラッド層22を囲むと共に、クラッド40及び内側クラッド層22よりも平均屈折率が低い低屈折率層23aと、を有し、一部のコア要素は、コア11を有すると共に、低屈折率層を有さないものであり、この一部のコア要素が、特定のコア要素10hであり、他の一部のコア要素が、特定のコア要素10hを囲む3つ以上のコア要素20aである。
なお、このようなマルチコアファイバ105は、マルチコアファイバ100の製造において、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13bとなる特定のコア要素用ガラス部材の代わりに、コア11、内側クラッド層12となる特定のコア要素用ガラス部材を用いれば良い。ただし、本実施形態においては、内側クラッド層12とクラッド40が同様の屈折率を有するため、内側クラッド層12とクラッド40に同様の材料を用いることができる。従って、コア要素10hとなる部分は、コア11となるガラスロッドのみをクラッドとなるガラス部材に挿入すれば良い。
本実施形態のマルチコアファイバ105によれば、特定のコア要素10hのコア11と、特定のコア要素10hを囲むそれぞれのコア要素20aのコア21との間には、クラッド40、及び、コア要素20aの低屈折率層23aが存在するので、クロストークを低減することができる。そして、特定のコア要素10hは、低屈折率層によるコアへの光の閉じ込めがないため、高次モードを逃げやすくすることができる。そして、このコア要素10hにおいては、低屈折率層が無いことによる高次モードの逃げ易さと、特定のコア要素10hを囲むそれぞれのコア要素20aの低屈折率層23aによる高次モードの逃げづらさと、をバランスさせることができる。このため、特定のコア要素10hのカットオフ波長が長波長化することを防止することができる。
また、特定のコア要素10hは、低屈折率層を有しておらず構成が簡素であるため、特定のコア要素10hを容易に設けることができる。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図7を参照して詳細に説明する。なお、第3実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図7は、本発明の第7実施形態に係るマルチコアファイバ106の様子を示す図である。具体的には、図7(A)は、マルチコアファイバ106の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図7(B)は、図7(A)に示すマルチコアファイバ106のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図7(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ106は、第3実施形態における特定のコア要素10eの代わりに、第6実施形態におけるコア要素10hを備える点において、第3実施形態のマルチコアファイバ102と異なる。
ここで、コア要素の断面の構造、及び、低屈折率層の平均屈折率で、各コア要素10h,20dを分類すると、一部のコア要素10hと、他の一部のコア要素20dとに分類することができる。
また、本実施形態においても第3実施形態と同様に、それぞれのコア要素20dにおける複数の低屈折率部5の内、少なくとも1つは、自己のコア要素20dにおけるコア21と、他のコア要素におけるコア11,21とを結ぶ直線上に配置されている。つまり、それぞれのコア要素20dにおいては、複数の低屈折率部5の内、1つの低屈折率部5は、自己のコア要素20dのコア21と、コア要素10hのコア11とを結ぶ直線上に配置されており、複数の低屈折率部5の内、他の少なくとも1つの低屈折率部5は、自己のコア要素20dのコア21と、他のコア要素20dのコア21とを結ぶ直線上に配置されている。このように、コア21と他のコア11,21との間に低屈折率部5が介在することにより、それぞれのコア同士のクロストークをより抑制することができる。
なお、このようなマルチコアファイバ106は、マルチコアファイバ102の製造において、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13eとなるコア要素用ガラス部材の代わりに、第6実施形態におけるコア11、内側クラッド層12となるコア要素用ガラス部材を用いれば良い。
本実施形態のマルチコアファイバ106においても、第6実施形態のマルチコアファイバ105と同様にして、特定のコア要素10hのコア11と、特定のコア要素10hを囲むそれぞれのコア要素20dのコア11との間には、クラッド40、及び、コア要素20dの低屈折率層23dが存在するので、クロストークを低減することができる。また、特定のコア要素10hは、低屈折率層によるコアへの光の閉じ込めがないため、高次モードを逃げやすくすることができる。そして、このコア要素10hにおいては、低屈折率層が無いことによる高次モードの逃げ易さと、特定のコア要素10hを囲むそれぞれのコア要素20dの低屈折率層23dによる高次モードの逃げづらさと、をバランスさせることができる。このため、特定のコア要素10hのカットオフ波長が長波長化することを防止することができる。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について図8を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図8は、本発明の第8実施形態に係るマルチコアファイバ107の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図である。
図8に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ107は、第1実施形態における3つ以上のコア要素20aが、4つ以上とされ、この4つ以上のコア要素20aの中心が矩形をなすように配置されている点において、第1実施形態のマルチコアファイバ100と異なる。
なお、このようなマルチコアファイバ107は、マルチコアファイバ100の製造において、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23aとなる複数のコア要素用ガラス部材の配置を図8に示すマルチコアファイバ107におけるそれぞれのコア要素20aの配置と同様にすれば良い。
本実施形態におけるマルチコアファイバ107によれば、矩形状にコアが配置されているため、平面型の導波路等といった光デバイスとの整合性を容易に取ることができ、このような光デバイスとの間で、光の入出力を容易に行うことができる。
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について図9を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図9は、本発明の第9実施形態に係るマルチコアファイバ110の様子を示す図である。具体的には、図9(A)は、マルチコアファイバ110の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図9(B)は、図9(A)に示すマルチコアファイバ110のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図9(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ110は、クラッド内に複数のコア要素10a,20a,20bが配置される点において、第1実施形態のマルチコアファイバ100と異なる。
特定のコア要素10aは、クラッド40の中心に配置され、さらに、コア要素20a及びコア要素20bから成る3つ以上のコア要素が、特定のコア要素10aを囲んで配置されている。そして、コア要素20a,20bから成る3つ以上のコア要素は、その数が偶数とされ、コア要素20aとコア要素20bとが交互に配置されると共に、コア要素20aとコア要素20bとが、それぞれ等間隔で配置されている。なお、図9(A)においては、1つのコア要素10aが、コア要素20a,20bから成る6つのコア要素に囲まれている場合の様子を示している。
コア要素10aは、第1実施形態のコア要素10bのコア11と同様のコア11と、コア11の外周面を囲み第1実施形態の内側クラッド層12と同様の内側クラッド層12と、内側クラッド層12の外周面を囲む低屈折率層13aとを有する。図9(B)に示すように、低屈折率層13aは、屈折率n3aが、第1実施形態のコア要素10bにおける低屈折率層13bの屈折率n3bよりも低くされ、コア要素20aの低屈折率層23aと同じ屈折率とされている点において、第1実施形態の低屈折率層13bと異なり、他の構成は、第1実施形態の低屈折率層13bと同様とされる。
また、コア要素20bは、コア要素20aのコア21と同様のコア21と、コア21の外周面を囲みコア要素20aの内側クラッド層22と同様の内側クラッド層22と、内側クラッド層22の外周面を囲む低屈折率層23bとを有する。図9(B)に示すように、低屈折率層23bは、屈折率n3bが、コア要素20aにおける低屈折率層23aの屈折率n3aよりも高くされている点において、コア要素20aの低屈折率層23aと異なり、他の構成は、コア要素20aの低屈折率層23aと同様とされる。
こうしてコア要素20bの低屈折率層23bは、コア要素10a,20aの低屈折率層13a,23aよりも、コア21への光の閉じ込め損失が大きくされている。
なお、本実施形態においては、コア要素10aの低屈折率層13aの屈折率が、コア要素20aの低屈折率層23aの屈折率と同様の屈折率n3aとされている。つまり、コア要素10a及びそれぞれのコア要素20aは、互いに同じ構造、大きさで、同じ屈折率を有するが、複数のコア要素の内、コア要素20bは、コア要素10a,20aと同じ構造、大きさを有するものの異なる屈折率を有している。ここで、屈折率で、各コア要素10a,20a,20bを分類すると、複数のコア要素10a,20a,20bの内、一部のコア要素20bと、他の一部のコア要素10a,20aとに分類することができる。
このようなマルチコアファイバ110においては、それぞれのコア要素10a,20a,20bを屈折率の観点から見る場合に、コア要素10a,20a,20bにおいて、低屈折率層13a,23a,23bは、それぞれ溝状の形状をしており、それぞれのコア要素10a,20a,20bは、トレンチ構造を有しているため、コア11への光の閉じ込め効果が大きくなり、コア11から光が漏えいしづらくなる。さらに、屈折率の低い低屈折率層13a,23a,23b及びクラッド40が障壁となり、互いに隣り合うコア要素10a,20a,20bにおけるコア11,21同士のクロストークを抑制することができる。また、マルチコアファイバ110の曲げに対する損失が低減される。また、トレンチ構造を有する光ファイバは、量産における製造方法が確立しているため、マルチコアファイバ110を容易に安価に製造することができる。なお、本実施形態において、それぞれの低屈折率層13a,23a,23bの屈折率は、低屈折率層13a,23a,23b内で一様であるため、低屈折率層13a,23a,23bにおける屈折率n3a,n3bと、この平均屈折率とは同意である。
そして、上述のようにコア要素10aの低屈折率層13aとそれぞれのコア要素20aの低屈折率層23aとは、屈折率n3aが、互いに等しくされ、コア要素20bの低屈折率層23bの屈折率n3bは、コア要素10a,20aの低屈折率層13a,23aの屈折率n3aよりも高くされ、
n3a<n3b
を満たしている。このため、上述のように分類した、一部のコア要素20bの低屈折率層23bは、他の一部のコア要素10a,20aの低屈折率層13a,23aよりも、コア11への光の閉じ込め損失が大きくされている。つまり、一部のコア要素20bにおいては、低屈折率層により自己のコアに光が閉じ込められる作用が、他の一部のコア要素10a,20aよりも弱く、光がコア要素20bから逃げ易くされている。従って、特定のコア要素10aを囲むコア要素20a,20b全体の内側(コア要素10aとコア要素20a,20bとの間の領域を含む領域)における光の閉じ込め損失が大きくなり、一部のコア要素20bの近傍においては、高次モードが逃げ易い。
なお、このようなマルチコアファイバ110は、次のように製造される。まず、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13aとなる特定のコア要素用ガラス部材、及び、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23aとなる複数のコア要素用ガラス部材、及び、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23bとなる複数のコア要素用ガラス部材を準備する。さらに、これらのコア要素用ガラス部材をクラッド40もしくはクラッド40の一部となるクラッド用ガラス部材中に配置して、コラプスすることにより、断面における配置が、図9(A)に示すマルチコアファイバ110における内側保護層41、外側保護層42を除いた部分と相似形のファイバ用母材を作製する。そして、作成したファイバ用母材加熱溶融し紡糸することでマルチコアファイバとし、このマルチコアファイバを内側保護層41、外側保護層42で被覆して、マルチコアファイバ110とする。なお、上記のコア要素用ガラス部材をクラッド40もしくはクラッド40の一部となるクラッド用ガラス部材中に配置して、コラプスしながら紡糸しても良い。
以上説明したように、本実施形態のマルチコアファイバ110によれば、上述のように一部のコア要素20bの周辺において、一部のコア要素20bの近傍から、特定のコア要素10aの高次モードを逃がすことができる。このため、特定のコア要素10aのカットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。こうして、それぞれのコア要素10a,20a,20bのカットオフ波長が互いに異なることを抑制でき、それぞれのコア要素10a,20a,20bにおける、シングルモード通信を行うための条件が異なることを抑制することができる。
また、本実施形態のマルチコアファイバ110においては、一部のコア要素20bと、他の一部のコア要素20aとが、上述のように交互に並んでいる。従って、特定のコア要素10aを囲む領域における、光が逃げ易い場所を、特定のコア要素10aを基準として対称にすることができる。従って、特定のコア要素10aにおいて、光が、コア11の径方向に偏在することを抑制することができる。
なお、本実施形態においては、一部のコア要素20bと、他の一部のコア要素20aとが、上述のように交互に並んでいるものとしたが、一部のコア要素20b同士が並んで配置されていても良い。
また、本実施形態のマルチコアファイバ110においては、上述のように、一部のコア要素20bにおける低屈折率層23bの屈折率n3bが、一部のコア要素10a,20aの屈折率n3aよりも低くされることにより、一部のコア要素20bの低屈折率層13bは、他の一部のコア要素10a,20aの低屈折率層13a,23aよりも、コア21への光の閉じ込め損失が大きくされている。従って、一部のコア要素20bにおける低屈折率層23bの材料を、他の一部のコア要素10a,20aにおける低屈折率層13a,23aの材料と変えるだけで良く、それぞれのコア要素10a,20a,20bを同じ大きさにすることができる。従って、設計の自由度が向上する。
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態について図10を参照して詳細に説明する。なお、第9実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図10は、本発明の第10実施形態に係るマルチコアファイバ111の様子を示す図である。具体的には、図10(A)は、マルチコアファイバ111の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図10(B)は、図10(A)に示すマルチコアファイバ111のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図10(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ111は、第9実施形態における一部のコア要素20bの代わりに、コア要素20bと同じ位置に配置されるコア要素20cを備える点において、第9実施形態のマルチコアファイバ110と異なる。
コア要素20cは、第9実施形態のコア21と同様のコア21と、コア21の外周面を囲み第9実施形態の内側クラッド層22と同様の内側クラッド層22と、内側クラッド層22の外周面を囲む低屈折率層23cとを有する。図10(B)に示すように、低屈折率層23cの屈折率n3cは、特定のコア要素10aや特定のコア要素10a囲むコア要素20aにおけるそれぞれの低屈折率層13a,23aの屈折率n3aと同様とされている。さらに、低屈折率層23cの厚さt3cは、低屈折率層13a,23aの厚さt3aよりも薄くされている。そして、コア要素20cの低屈折率層23cは、コア要素10a,20aの低屈折率層13a,23aよりも、コア21への光の閉じ込め損失が大きくされている。
なお、本実施形態においては、コア要素20cの外径は、低屈折率層13a,23aの厚さt3aと低屈折率層23cの厚さt3cとの差だけ、コア要素10a,20aの外形よりも小さくされている。
このようなマルチコアファイバ111は、マルチコアファイバ110の製造において、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23bとなるコア要素用ガラス部材の代わりに、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23cとなるコア要素用ガラス部材を用いれば良い。
本実施形態におけるマルチコアファイバ111によれば、上述のように、一部のコア要素20cにおける低屈折率層23cが、他の一部のコア要素10a,20aにおける低屈折率層13a,23aよりも薄く形成されることにより、コア要素20cの低屈折率層23cは、それぞれのコア要素10a,20aの低屈折率層13a,23aよりも、光の閉じ込め損失が大きくされている。この場合においても、この光の閉じ込め損失が大きいコア要素20cの近傍において、特定のコア要素10aの光に対する光の閉じ込め損失が大きくなり、特定のコア要素10aから伝播する高次モードが逃げ易くなる。このため、特定のコア要素10aのカットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。
また、本実施形態のマルチコアファイバ111においては、一部のコア要素20cにおける低屈折率層23cの材料を、他の一部のコア要素10a,20aにおける低屈折率層13a,23aの材料と同じにすることができる。従って、低屈折率層の材料の自由度が向上する。
(第11実施形態)
次に、本発明の第11実施形態について図11を参照して詳細に説明する。なお、第9実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図11は、本発明の第11実施形態に係るマルチコアファイバ112の様子を示す図である。具体的には、図11(A)は、マルチコアファイバ112の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図11(B)は、図11(A)に示すマルチコアファイバ112のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図11に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ112は、第9実施形態における特定のコア要素10aの代わりに、コア要素10aと同じ位置に配置される特定のコア要素10dを備え、第9実施形態におけるそれぞれのコア要素20aの代わりに、それぞれのコア要素20aと同じ位置に配置されるコア要素20dを備え、第9実施形態におけるそれぞれのコア要素20bの代わりに、それぞれのコア要素20bと同じ位置に配置されるコア要素20eを備える点において、第9実施形態のマルチコアファイバ110と異なる。
図11(A)に示すように、特定のコア要素10dと、それぞれのコア要素20dとは、互いに同じ構造をしている。それぞれのコア要素10d,20dは、第9実施形態のコア11,21と同様のコア11,21と、コア11,21の外周面を囲み第9実施形態の内側クラッド層12,22と同様の内側クラッド層12,22とを有している。また、コア要素10d,20dは、内側クラッド層12,22の外周面を囲み、クラッド40に外周面が囲まれる低屈折率層13d,23dを有している。また、それぞれのコア要素20eは、第9実施形態のコア21と同様のコア21と、コア21の外周面を囲み第9実施形態の内側クラッド層22と同様の内側クラッド層22とを有している。そして、コア要素20eは、内側クラッド層12の外周面を囲み、クラッド40に外周面が囲まれる低屈折率層13eを有している。
それぞれの低屈折率層13d,23d,23eには、クラッド40及び内側クラッド層12よりも屈折率が低い低屈折率部5が、内側クラッド層12を囲むように複数形成されて成っている。本実施形態においては、低屈折率層13d,23d,23eに円形の空孔が複数形成されており、この空孔が低屈折率部5とされている。従って、低屈折率部5の断面における形状は円形である。
そして、上述のように特定のコア要素10dと、それぞれのコア要素20dとは、互いに同じ構造をしているため、低屈折率層13dに設けられている低屈折率部5の数や大きさと、低屈折率層23dに設けられている低屈折率部5の数や大きさは互いに同じとされる。一方、コア要素20eの低屈折率層23eに設けられている低屈折率部5は、それぞれの大きさは、低屈折率層13d,23dに設けられているそれぞれの低屈折率部5と同じであるが、数が少なくされている。
また、図11(A)に示すように、それぞれのコア要素10d,20d,20eにおける複数の低屈折率部5の内、少なくとも1つは、自己のコア要素におけるコア11,21と、他のコア要素におけるコア11,21とを結ぶ直線上に配置されている。具体的には、コア要素10dにおける低屈折率部5は、自己のコア要素10dのコア11と、コア要素20d,20eのコア21とを結ぶ直線上に配置されている。また、それぞれのコア要素20dにおいては、低屈折率部5の1つは、自己のコア要素20dのコア21と、コア要素10dのコア11とを結ぶ直線上に配置されており、低屈折率部5の他の少なくとも1つは、自己のコア要素20dのコア21と、他のコア要素20eのコア21とを結ぶ直線上に配置されている。さらに、コア要素20eにおいては、低屈折率部5の1つは、自己のコア要素20eのコア21と、コア要素10dのコア11とを結ぶ直線上に配置されている。このように、自己のコア要素におけるコアと他のコア要素におけるコアとの間に低屈折率部5が介在することにより、それぞれのコア同士のクロストークをより抑制することができる。
また、それぞれの低屈折率層13d,23d,23eにおける低屈折率部5以外の領域は、クラッド40、及び、内側クラッド層12と同様の材料から成っている。そして、低屈折率部5が空孔であることから、図11(B)に示すように、低屈折率部5の屈折率n5は1であり、内側クラッド層12、及び、クラッド40の屈折率n2,n4よりも低いため、低屈折率層13d,23dの平均屈折率n3d、及び、低屈折率層23eの平均屈折率n3eは、内側クラッド層12及びクラッド40よりも低くされている。
また、上述のように、一部のコア要素20eの低屈折率層23eにおける低屈折率部5の数は、他の一部のコア要素10d,20dの低屈折率層13d,23dにおける低屈折率部5の数よりも少なくされているため、低屈折率層23eの平均屈折率n3eは、低屈折率層13d,23dの平均屈折率n3dよりも高くされている。そこで、コア要素の断面の構造、及び、低屈折率層の平均屈折率で、各コア要素10d,20d,20eを分類すると、一部のコア要素20eと、他の一部のコア要素10d,20dとに分類することができる。このように、低屈折率層23eの平均屈折率n3eは、低屈折率層13d,23dの平均屈折率n3dよりも高くされているため、一部のコア要素20eの低屈折率層23eは、他の一部のコア要素10d,20dの低屈折率層13d,23dよりも、コア21への光の閉じ込め損失が大きくされている。
なお、上述のように低屈折率層13d,23d,23eの低屈折率部5以外の領域は、内側クラッド層12,22及びクラッド40との境界がないが、図11においては、理解の容易のため、境界を仮想線で示している。
なお、このようなマルチコアファイバ112は、次のように製造される。
まず、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13dとなる特定のコア要素用ガラス部材、及び、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23dとなる複数のコア要素用ガラス部材、及び、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23eとなる複数のコア要素用ガラス部材を準備する。この低屈折率層13d,23d,23eとなる部材は、それぞれの低屈折率部(空孔)が形成されるように、それぞれの低屈折率部となる位置に、ガラス管が配置される。そして、これらのコア要素用ガラス部材をクラッド40もしくはクラッド40の一部となるクラッド用ガラス部材中に配置して、ガラス管の貫通孔に所定の圧力が加えられる状況で、コラプスすることにより、断面における配置が、図11(A)に示すマルチコアファイバ112における内側保護層41、外側保護層42を除いた部分と相似形のファイバ用母材を作製する。そして、作成したファイバ用母材を、各貫通孔に所定の圧力を加えながら、加熱溶融し紡糸することでマルチコアファイバとし、このマルチコアファイバを内側保護層41、外側保護層42で被覆して、マルチコアファイバ112とする。なお、上記のコア要素用ガラス部材をクラッド40もしくはクラッド40の一部となるクラッド用ガラス部材中に配置して、コラプスしながら各貫通孔に所定の圧力を加え、紡糸しても良い。
本実施形態におけるマルチコアファイバ112によれば、一部のコア要素20eの低屈折率層23eは、他の一部のコア要素10d,20dの低屈折率層13d,23dよりも、コア21への光の閉じ込め損失が大きくされているため、特定のコア要素10dのコア11のカットオフ波長の長波長化を防止することができる。そして、屈折率が低い低屈折率部5が、それぞれのコア11,21を囲むように環状に連続して形成されていないため、各コア11,21から適切に高次モードを逃がすことができる。従って、各コア11,21のカットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。
また、本実施形態においては、特定のコア要素10dにおける低屈折率部5の数を少なくすることで、低屈折率部5を設けるためのコストを低減することができ、より容易に特定のコア要素10dの低屈折率層13dを設けることができる。具体的には、低屈折率部5が空孔であれば、ファイバ用母材の作成において、空孔を孔開法で作製する場合は、孔開のコストが削減でき、ガラス管で空孔部分を作製する場合は、ガラス管の数を減らすことができ、何れにせよ安価に製造することができる。
なお、本実施形態においては、低屈折率部5を空孔で形成しているため、低屈折率部5の屈折率をより小さくすることができるが、低屈折率部5は、空孔に限らず、内側クラッド層12及びクラッド40よりも低屈折率の材料であれば、特に限定されない。例えば、低屈折率部5を屈折率を下げるフッ素等のドーパントが添加された石英で作成することができる。この場合においても、本実施形態のマルチコアファイバ112によれば、単価の高いフッ素が添加された石英の数を少なくすることができるので、安価に製造することができる。
(第12実施形態)
次に、本発明の第12実施形態について図12を参照して詳細に説明する。なお、第11実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図12は、本発明の第12実施形態に係るマルチコアファイバ113の様子を示す図である。具体的には、図12(A)は、マルチコアファイバ113の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図12(B)は、図12(A)に示すマルチコアファイバ113のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図12に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ113は、第11実施形態における一部のコア要素20eの代わりに、コア要素20eと同じ位置に配置されるコア要素20fを備える点において、第11実施形態のマルチコアファイバ112と異なる。
コア要素20fは、第11実施形態の一部のコア要素20eにおけるコア21と同様のコア21と、コア21の外周面を囲み第11実施形態のコア要素20eにおける内側クラッド層22と同様の内側クラッド層22と有している。そして、コア要素20fは、内側クラッド層22の外周面を囲み、クラッド40に外周面が囲まれる低屈折率層23fを有している。
低屈折率層23fは、断面の形状が円形の空孔から成る複数の低屈折率部5fを有している。上述のようにコア要素10d,20dにおける低屈折率層13d,23dの低屈折率部5も空孔から成っているため、低屈折率層23fにおける低屈折率部5fの屈折率n5f、及び、コア要素10d,20dにおける低屈折率層13d,23dの低屈折率部5の屈折率n5は、共に1であり、互いに等しくされる。そして、低屈折率層23fにおける低屈折率部5fの数は、コア要素10d,20dの低屈折率層13d,23dにおける低屈折率部5を同数とされるが、低屈折率層23fにおけるそれぞれの低屈折率部5fの面積(長手方向に垂直な断面における面積)は、低屈折率層13d,23dにおけるそれぞれの低屈折率部5の面積(長手方向に垂直な断面における面積)よりも小さくされている。
また、低屈折率層23fにおける低屈折率部5f以外の領域は、クラッド40、及び、内側クラッド層12と同様の材料から成っている。従って、図12(B)に示すように、マルチコアファイバ113においては、コア要素20fにおける低屈折率層23fの平均屈折率n3fが、コア要素10d,20dにおける低屈折率層13d,23dの平均屈折率n3dよりも高くされ、コア要素20fにおける低屈折率層23fの厚さt3fが、コア要素10d,20dにおける低屈折率層13d,23dの厚さt3dよりも薄くされる。
そこで、コア要素の断面の構造、及び、屈折率で、各コア要素10d,20d,20fを分類すると、一部のコア要素20fと、他の一部のコア要素10d,20dとに分類することができる。
そして、上記のような構造、及び、屈折率を有することにより、一部のコア要素20fの低屈折率層23fは、それぞれのコア要素10d,20dの低屈折率層13d,23dよりも、コア21への光の閉じ込め損失が大きくされている。
なお、上述のように低屈折率層23fの低屈折率部5f以外の領域は、内側クラッド層22及びクラッド40との境界がないが、図12においては、理解の容易のため、境界を仮想線で示している。
このようなマルチコアファイバ113は、第10実施形態のマルチコアファイバ112の製造において、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23eとなる複数のコア要素用ガラス部材の代わりに、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23fとなる複数のコア要素用ガラス部材を用いれば良い。
本実施形態においても、第11実施形態と同様にして低屈折率部5、5fを空孔で形成しているため、低屈折率部5、5fの屈折率をより小さくすることができるが、低屈折率部5、5fは、空孔に限らず、内側クラッド層12,22及びクラッド40よりも低屈折率の材料であれば、特に限定されない。
(第13実施形態)
次に、本発明の第13実施形態について図13を参照して詳細に説明する。なお、第11実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図13は、本発明の第13実施形態に係るマルチコアファイバ114の様子を示す図である。具体的には、図13(A)は、マルチコアファイバ114の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図13(B)は、図13(A)に示すマルチコアファイバ114のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図13に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ114は、第11実施形態における一部のコア要素20eの代わりに、コア要素20eと同じ位置に配置されるコア要素20gを備える点において、第11実施形態のマルチコアファイバ112と異なる。
コア要素20gは、第11実施形態のコア要素20eにおけるコア21と同様のコア21と、コア21の外周面を囲み第11実施形態の内側クラッド層22と同様の内側クラッド層22とを有している。そして、コア要素20gは、内側クラッド層22の外周面を囲み、クラッド40に外周面が囲まれる低屈折率層23gを有している。
低屈折率層23gは、複数の低屈折率部5gを有している。それぞれの低屈折率部5gは、空孔ではなく、クラッド40の屈折率n4、及び、内側クラッド層12の屈折率n2よりも低い屈折率n5gを有するガラス等の材料から成っている。このような屈折率n5gを有する低屈折率部5gの材料としては、例えば、第9実施形態における低屈折率層13aの材料と同様の材料を挙げることができる。そして、低屈折率層23gにおける低屈折率部5gの数は、コア要素10d,20dの低屈折率層13d,23dにおける低屈折率部5を同数とされ、それぞれの低屈折率部5gの面積(長手方向に垂直な断面における面積)は、低屈折率層13d,23dにおけるそれぞれの低屈折率部5の面積(長手方向に垂直な断面における面積)と同じとされている。また、低屈折率層23gにおける低屈折率部5g以外の領域は、クラッド40、及び、内側クラッド層12と同様の材料から成っている。
上述のように低屈折率部5gは、ガラス等の材料からなっているため、空孔からなる低屈折率部5よりも屈折率が高くされる。従って、マルチコアファイバ114においては、コア要素20gにおける低屈折率層23gの平均屈折率n3gが、コア要素10d,20dにおける低屈折率層13d,23dの平均屈折率n3dよりも高くされる。
そこで、コア要素の断面の構造、及び、屈折率で、各コア要素10d,20d,20gを分類すると、一部のコア要素20gと、他の一部のコア要素10d,20dとに分類することができる。
そして、上記のような構造、及び、屈折率を有することにより、一部のコア要素20gの低屈折率層23gは、他の一部のコア要素10d,20dの低屈折率層13d,23dよりも、コア21への光の閉じ込め損失が大きくされている。
なお、本実施形態においても、上述のように低屈折率層13gの低屈折率部5g以外の領域は、内側クラッド層22及びクラッド40との境界がないが、図13においては、理解の容易のため、境界を仮想線で示している。
このようなマルチコアファイバ113は、第10実施形態のマルチコアファイバ112の製造において、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23eとなる複数のコア要素用ガラス部材の代わりに、コア11、内側クラッド層12、低屈折率層13gとなる複数のコア要素用ガラス部材を用いれば良い。低屈折率層13gとなる部材は、低屈折率部5gとなる位置に低屈折率のガラスロッドを配置すれば良い。
本実施形態におけるマルチコアファイバ114によれば、特定のコア要素10gにおける低屈折率部5gの材料を、コア要素10gを囲むコア要素10eにおける低屈折率部5の材料と変えるだけで良く、それぞれのコア要素10g,10fを同じ大きさにすることができる。従って、設計の自由度が向上する。
なお、本実施形態においても、第11実施形態と同様にして低屈折率部5を空孔で形成しているため、低屈折率部5の屈折率をより小さくすることができるが、低屈折率部5は、空孔に限らず、内側クラッド層12及びクラッド40及び低屈折率部5gよりも低屈折率の材料であれば、特に限定されない。
(第14実施形態)
次に、本発明の第14実施形態について図14を参照して詳細に説明する。なお、第9実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図14は、本発明の第14実施形態に係るマルチコアファイバ115の様子を示す図である。具体的には、図14(A)は、マルチコアファイバ115の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図14(B)は、図14(A)に示すマルチコアファイバ115のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
第9実施形態のマルチコアファイバ110では、特定のコア要素10aを囲む3つ以上のコア要素において、一部のコア要素20bと他の一部のコア要素20aとが、交互に配置されていたが、図14(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ115は、特定のコア要素10aを囲む3つ以上のコア要素の全てが、コア要素20bとされる点において、第9実施形態のマルチコアファイバ110と異なる。
つまり、本実施形態のマルチコアファイバ115においては、特定のコア要素10aを囲むコア要素20bの全てを一部のコア要素として、特定のコア要素10aを他の一部のコア要素として分類することができる。
このようなマルチコアファイバ115の製造は、第9実施形態のマルチコアファイバ110の製造において、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23aとなるコア要素用ガラス部材の代わりに、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23bとなるコア要素用ガラス部材を用いれば良い。
本実施形態のマルチコアファイバ115によれば、特定のコア要素10aを囲む3つ以上のコア要素20bにおけるそれぞれのコア要素20bの近傍から、特定のコア要素10aの高次モードをより逃がすことができる。従って、それぞれのコア要素のカットオフ波長が互いに異なることを抑制できる。
(第15実施形態)
次に、本発明の第15実施形態について図15を参照して詳細に説明する。なお、第11実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図15は、本発明の第15実施形態に係るマルチコアファイバ116の様子を示す図である。具体的には、図15(A)は、マルチコアファイバ116の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図15(B)は、図15(A)に示すマルチコアファイバ116のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
第11実施形態のマルチコアファイバ112では、特定のコア要素10dを囲む3つ以上のコア要素において、一部のコア要素20eと他の一部のコア要素20dとが、交互に配置されていたが、図15(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ116は、特定のコア要素10dを囲む3つ以上のコア要素の全てが、コア要素20eとされる点において、第11実施形態のマルチコアファイバ112と異なる。
つまり、本実施形態のマルチコアファイバ116においては、特定のコア要素10dを囲むコア要素20eの全てが一部のコア要素とされ、特定のコア要素10dが他の一部のコア要素とされる。
このようなマルチコアファイバ116の製造は、第11実施形態のマルチコアファイバ112の製造において、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23dとなるコア要素用ガラス部材の代わりに、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23eとなるコア要素用ガラス部材を用いれば良い。
本実施形態のマルチコアファイバ116によれば、特定のコア要素10dを囲む3つ以上のコア要素20eにおけるそれぞれのコア要素20eの近傍から、特定のコア要素10dの高次モードをより逃がすことができる。従って、それぞれのコア要素のカットオフ波長が互いに異なることを抑制できる。
(第16実施形態)
次に、本発明の第16実施形態について図16を参照して詳細に説明する。なお、第9実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図16は、本発明の第16実施形態に係るマルチコアファイバ120の様子を示す図である。具体的には、図16(A)は、マルチコアファイバ120の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図16(B)は、図16(A)に示すマルチコアファイバ120のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図16(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ120は、第9実施形態における一部のコア要素20bの代わりに、コア要素20bと同じ位置に配置されるコア要素20hを備える点において、第9実施形態のマルチコアファイバ110と異なる。
コア要素20hは、コア要素20aのコア21と同様のコア21と、コア21の外周面を囲みコア要素20aの内側クラッド層22と同様の内側クラッド層22を有するが、コア要素20aが有する低屈折率層を有さない。このため、コア要素20hは、低屈折率層による光の閉じ込めが無く、コア要素20hにおいては、コア21が有している光を閉じ込める作用のみにより、コア21に光を閉じ込める。
なお、本実施形態のマルチコアファイバ120においては、内側クラッド層22とクラッド40が同様の材料から成っているため、本来内側クラッド層22とクラッド40との境界は存在しないが、図16においては、理解の容易のため、内側クラッド層22を示す仮想線を記載している。従って、本実施形態のマルチコアファイバ120のように、内側クラッド層22とクラッド40とが同様の材料から成っている場合、コア要素20hは、内側クラッド層22を有さず、コア21がクラッド40内に直接配置されていると考えることもできる。また、第9実施形態のマルチコアファイバ110において、一部のコア要素であるコア要素20bの低屈折率層23bの屈折率をクラッド40と同じ屈折率まで上げることにより、コア要素20bは、低屈折率層23bを有さない構造となり、本実施形態のマルチコアファイバ120のコア要素20hと同様の構成となる。従って、本実施形態のマルチコアファイバ120であっても、第9実施形態のマルチコアファイバ110であっても、同様の技術的特徴を有する。
このように本実施形態のマルチコアファイバ120においては、コア要素20hの構造が、他のコア要素10a,20aと異なるため、コア要素の断面の構造で、各コア要素10a,20a,20hを分類すると、一部のコア要素20hと、他の一部のコア要素10a,20aとに分類することができる。
なお、このようなマルチコアファイバ120は、マルチコアファイバ110の製造において、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23bとなるコア要素用ガラス部材の代わりに、コア21、内側クラッド層22となるコア要素用ガラス部材を用いれば良い。ただし、本実施形態においては、上述のように内側クラッド層22とクラッド40が同様の屈折率を有するため、内側クラッド層22とクラッド40に同様の材料を用いることができる。従って、コア要素20hとなる部分は、コア21となるガラスロッドのみをクラッドとなるガラス部材に挿入すれば良い。
本実施形態のマルチコアファイバ120によれば、一部のコア要素20hのコア21と、他の一部のコア要素10a,20aのコア11,21との間には、クラッド40、及び、コア要素10a,20aの低屈折率層13a,23aが存在するので、クロストークを低減することができる。そして、一部のコア要素20hは、低屈折率層によるコアへの光の閉じ込めがなく、この一部のコア要素20hの近傍から、コア要素10aの高次モードが逃げることができる。このため、特定のコア要素10aのカットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。
また、一部のコア要素20hは、低屈折率層を有しておらず構成が簡素であるため、一部のコア要素20hを容易に設けることができる。
(第17実施形態)
次に、本発明の第17実施形態について図17を参照して詳細に説明する。なお、第11実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図17は、本発明の第17実施形態に係るマルチコアファイバ121の様子を示す図である。具体的には、図17(A)は、マルチコアファイバ121の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図17(B)は、図17(A)に示すマルチコアファイバ121のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
図17(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ121は、第11実施形態における一部のコア要素20eの代わりに、第16実施形態のコア要素20hと同様のコア要素20hが、コア要素20eと同じ位置に配置される備える点において、第11実施形態のマルチコアファイバ110と異なる。
従って、本実施形態のマルチコアファイバ121においては、コア要素20hの構造が、他のコア要素10d,20dと異なるため、コア要素の断面の構造で、各コア要素10d,20d,20hを分類すると、一部のコア要素20hと、他の一部のコア要素10d,20dとに分類することができる。
なお、このようなマルチコアファイバ121は、マルチコアファイバ112の製造において、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23eとなるコア要素用ガラス部材の代わりに、コア21、内側クラッド層22となるコア要素用ガラス部材を用いれば良い。ただし、本実施形態においても第16実施形態と同様にして、内側クラッド層22とクラッド40に同様の材料を用いることができる。従って、コア要素20hとなる部分は、コア21となるガラスロッドのみをクラッドとなるガラス部材に挿入すれば良い。
本実施形態のマルチコアファイバ121によれば、一部のコア要素20hのコア21と、他の一部のコア要素10d,20dのコア11,21との間には、クラッド40、及び、コア要素10d,20dの低屈折率層13d,23dが存在するので、クロストークを低減することができる。そして、一部のコア要素20hは、低屈折率層によるコアへの光の閉じ込めがなく、この一部のコア要素20hの近傍から、コア要素10aの高次モードが逃げることができる。このため、特定のコア要素10dのカットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。
また、一部のコア要素20hは、低屈折率層を有しておらず構成が簡素であるため、一部のコア要素20hを容易に設けることができる。
(第18実施形態)
次に、本発明の第18実施形態について図18を参照して詳細に説明する。なお、第16実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図18は、本発明の第18実施形態に係るマルチコアファイバ122の様子を示す図である。具体的には、図18(A)は、マルチコアファイバ122の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図18(B)は、図18(A)に示すマルチコアファイバ122のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
第16実施形態のマルチコアファイバ120では、特定のコア要素10aを囲む3つ以上のコア要素において、一部のコア要素20hと他の一部のコア要素20aとが、交互に配置されていたが、図18(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ122は、特定のコア要素10aを囲む3つ以上のコア要素の全てが、第16実施形態のコア要素20hと同様のコア要素20hとされる点において、第16実施形態のマルチコアファイバ110と異なる。
従って、特定のコア要素10aを囲む全てのコア要素20hは、低屈折率層による光の閉じ込めが無く、コア要素20hにおいては、コア21が有している光を閉じ込める作用のみで、コア21に光を閉じ込める。このため、本実施形態のマルチコアファイバ122においては、特定のコア要素10aを囲むコア要素20hの全てを一部のコア要素とし、特定のコア要素10aを他の一部のコア要素として分類することができる。
なお、このようなマルチコアファイバ122は、マルチコアファイバ120の製造において、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23aとなるコア要素用ガラス部材の代わりに、コア21、内側クラッド層22となるコア要素用ガラス部材を用いれば良い。本実施形態においても第16実施形態と同様にして、内側クラッド層22とクラッド40とに同様の材料を用いることができる。従って、コア要素20hとなる部分は、コア21となるガラスロッドのみをクラッドとなるガラス部材に挿入すれば良い。
本実施形態のマルチコアファイバ122によれば、少なくとも、特定のコア要素10aと、このコア要素10aを囲むコア要素20hとの間には、クラッド40、及び、コア要素10aの低屈折率層13aが存在するので、少なくともコア要素10aとコア要素20hとの間におけるクロストークを低減することができる。そして、一部のコア要素20hは、低屈折率層によるコアへの光の閉じ込めがなく、この一部のコア要素20hの近傍から、コア要素10aの高次モードが逃げることができる。つまり、本実施形態においては、特定のコア要素10aの周り全体から特定のコア要素10aの高次モードが逃げることができる。従って、特定のコア要素10aのカットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。
(第19実施形態)
次に、本発明の第19実施形態について図19を参照して詳細に説明する。なお、第17実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図19は、本発明の第19実施形態に係るマルチコアファイバ123の様子を示す図である。具体的には、図19(A)は、マルチコアファイバ123の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図19(B)は、図19(A)に示すマルチコアファイバ123のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
第17実施形態のマルチコアファイバ121では、特定のコア要素10dを囲む3つ以上のコア要素において、一部のコア要素20hと他の一部のコア要素20dとが、交互に配置されていたが、図19(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ123は、特定のコア要素10dを囲む3つ以上のコア要素の全てが、第17実施形態のコア要素20hと同様のコア要素20hとされる点において、第17実施形態のマルチコアファイバ110と異なる。
従って、特定のコア要素10dを囲む全てのコア要素20hは、第18実施形態のマルチコアファイバ122と同様に低屈折率層による光の閉じ込めが無く、コア要素20hにおいては、コア21が有している光を閉じ込める作用のみで、コア21に光を閉じ込める。このため、本実施形態のマルチコアファイバ123においては、特定のコア要素10dを囲むコア要素20hの全てを一部のコア要素とし、特定のコア要素10dを他の一部のコア要素として分類することができる。
なお、このようなマルチコアファイバ123は、第17実施形態の他の一部のコア要素20dの代わりに一部のコア要素20hとなるコア要素用ガラス部材を用いれば良い。本実施形態においても第18実施形態と同様にして、内側クラッド層22とクラッド40とに同様の材料を用いることができる。従って、コア要素20hとなる部分は、コア21となるガラスロッドのみをクラッドとなるガラス部材に挿入すれば良い。
本実施形態のマルチコアファイバ122によれば、少なくとも、特定のコア要素10dと、このコア要素10dを囲むコア要素20hとの間には、クラッド40、及び、コア要素10dの低屈折率層13dが存在するので、少なくともコア要素10dとコア要素20hとの間におけるクロストークを低減することができる。そして、一部のコア要素20hは、低屈折率層によるコアへの光の閉じ込めがなく、この一部のコア要素20hの近傍から、コア要素10dの高次モードが逃げることができる。つまり、本実施形態においては、特定のコア要素10dの周り全体から特定のコア要素10dの高次モードが逃げることができる。従って、特定のコア要素10dのカットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。
(第20実施形態)
次に、本発明の第20実施形態について図20を参照して詳細に説明する。なお、第9実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図20は、本発明の第20実施形態に係るマルチコアファイバ117の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図である。
図20に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ117は、第9実施形態における特定のコア要素10aを囲む3つ以上のコア要素が、4つ以上とされ、この4つ以上のコア要素の中心が矩形をなすように配置されている点において、第9実施形態のマルチコアファイバ100と異なる。そして、本実施形態においては、矩形の頂点の位置にコア要素20aが配置され、コア要素20aとコア要素20aとのそれぞれの中点に、それぞれコア要素20bが配置されている。
なお、このようなマルチコアファイバ117は、マルチコアファイバ110の製造において、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23aとなる複数のコア要素用ガラス部材、及び、コア21、内側クラッド層22、低屈折率層23bとなる複数のコア要素用ガラス部材の配置を図16に示すマルチコアファイバ117におけるそれぞれのコア要素20a,20bの配置と同様にすれば良い。
また、本実施形態においては、矩形の頂点の位置にコア要素20aが配置され、コア要素20aとコア要素20aとのそれぞれの中点に、それぞれコア要素20bが配置されるものとしたが、矩形の頂点の位置にコア要素20bが配置され、コア要素20bとコア要素20bとのそれぞれの中点に、それぞれコア要素20aが配置されるものとしても良い。
本実施形態におけるマルチコアファイバ117によれば、矩形状にコアが配置されているため、平面型の導波路等といった光デバイスとの整合性を容易に取ることができ、このような光デバイスとの間で、光の入出力を容易に行うことができる。
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
それぞれのコア要素の配置や数については、特定のコア要素が、3つ以上のコア要素に囲まれる限りにおいて、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、特定のコア要素10a〜10hの数が1つの場合について説明した。しかし、本発明は、これに限らず、特定のコア要素10a〜10hの数が複数であっても良い。ここで、特定のコア要素が複数の場合の変形例について、図21〜図23を用いて説明する。なお、上記の実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図21は、本発明の第1変形例に係るマルチコアファイバ130の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図22は、本発明の第2変形例に係るマルチコアファイバ131の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図であり、図23は、本発明の第3変形例に係るマルチコアファイバ132の長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図である。
なお、図21〜図23を用いて説明する以下の変形例では、図9を用いて説明した第9実施形態に対する変形例を説明する。図21〜図23においては、理解の容易のため、コア要素20bは、破線の四角形で囲まれて記載されている。図21〜図23におけるマルチコアファイバ130〜131においては、破線の四角形で囲まれて表されたコア要素20bが、第9実施形態のコア要素20bと同様の構成とされ、それ以外のコア要素が、第9実施形態のコア要素10a,20aと同様とされる。なお、第9実施形態において説明したように、コア要素10aとコア要素20aとは、構造、屈折率が共に同様とされる。ここで、図21〜図23に示す複数のコア要素を、屈折率で分類すると、複数のコア要素10a,20a,20bの内、一部のコア要素20bと、他の一部のコア要素10a,20aとに分類することができる。
そして、図21に示す第1変形例のマルチコアファイバ130においては、6つのコア要素で囲まれているコア要素の内、コア要素20b以外の何れかのコア要素を第9実施形態のコア要素10aとしても、コア要素10aを囲む6つのコア要素は、少なくとも1つがコア要素20bとされる。従って、特定のコア要素であるコア要素10aを囲む3つ以上のコア要素の少なくとも1つは、低屈折率層のコアへの光の閉じ込め損失が大きいコア要素とされる。従って、特定のコア要素10aから光の高次成分が逃げ易くなる。
また図22に示すように、第2変形例のマルチコアファイバ131においては、複数のコア要素10aのそれぞれが6つのコア要素20bで囲まれている。
また図23に示すように、第3変形例のマルチコアファイバ132においては、複数のコア要素20bのそれぞれが6つのコア要素20aで囲まれていると捉えることも、複数のコア要素10aが、3つのコア要素20aと3つのコア要素20bとにより囲まれていると捉えることもできる。また、この場合、コア要素20bを第1実施形態のコア要素10bとし、それぞれのコア要素10bが、コア要素20aで囲まれていると捉えることもできる。
何れにせよ、図21〜図23の変形例においては、複数の特定のコア要素のそれぞれが、3つ以上のコア要素に囲まれており、さらに、特定のコア要素とその特定のコア要素を囲む複数のコア要素において、一部のコア要素の低屈折率層は、他の一部のコア要素の低屈折率層よりも、コアへの光の閉じ込め損失が大きくされている。或いは、複数の特定コア要素のそれぞれは、一部のコア要素とされ、それぞれの特定のコア要素を囲む他の一部のコア要素よりもコアへの光の閉じ込め損失が大きくされている。従って、これら変形例のマルチコアファイバ130〜132においても、特定のコアのカットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。
また、それぞれのコア要素においては、それぞれの実施形態間において適宜組み合わせることができる。例えば、第8実施形態のコア要素10bが、第2実施形態のコア要素10cであっても良く、第8実施形態において、コア要素10bが、第3実施形態〜第5実施形態のコア要素10e,10f,10gであり、コア要素20aが、第3実施形態のコア要素20dであっても良い。また、第20実施形態において、それぞれのコア要素20aが、第11実施形態におけるコア要素20dであり、それぞれのコア要素20bが、第11実施形態におけるコア要素20eであり、コア要素10aが、第11実施形態におけるコア要素10dであっても良い。第9実施形態のコア要素10aが、第11実施形態のコア要素10dやあっても良く、或いは、第11実施形態のコア要素10dが、第9実施形態のコア要素10aであっても良い。このように、それぞれの実施形態同士におけるコア要素同士の組み合わせをすることが適宜可能である。
また、上記実施形態におけるコア要素において、それぞれのコア11,21の直径は互いに等しく、それぞれの内側クラッド層12,22の外径は互いに等しくされるとした。また、上記実施形態において、それぞれの低屈折率層の外径は互いに等しくされるとした。しかし、本発明はこれに限らず、コア11,21の直径や、内側クラッド層12,22の外径や、低屈折率層の外径が、それぞれのコア要素において、互いに異なっていても良く、特に互いに隣り合うコア要素におけるコア11,21の直径が互いに異なっていることが好ましい。例えば、中心に配置される特定のコア要素を囲む3つ以上のコア要素のコア21の直径が、中心のコア要素のコア11に対して、約1%異なるようにされ、さらに、外周側のコア要素におけるコア21の直径が、互いに隣り合うコア要素のコア21の直径に対して、互いに1〜2%異なるようにされる。このように、それぞれのコア要素におけるコア11,21の直径が、物理的に僅かに異なっていても、コア11,21を伝播する光にしてみれば、それぞれのコア11,21の直径は、殆ど変わらず、略同等の光学特性となる。そして、このように互いに隣り合うコア要素におけるコア11,21の直径を異なる大きさにすることにより、クロストークをより低減することができる。
また、上記実施形態においては、それぞれのコア要素において、それぞれのコア11,21の屈折率n1は互いに等しくされ、それぞれの内側クラッド層12,22の屈折率n2は互いに等しくされた。しかし、それぞれのコア要素における、それぞれのコア11,21の屈折率n1が互いに異なっていても良く、それぞれの内側クラッド層12,22の屈折率n2が互いに異なっていても良い。特に互いに隣り合うコア要素におけるコア11,21の屈折率が互いに異なっていることが好ましい。例えば、中心に配置される特定のコア要素を囲む3つ以上のコア要素のコア21の屈折率が、特定のコア要素のコア11に対して、約0.01%異なるようにされ、さらに、特定のコア要素を囲む3つ以上のコア要素におけるコア21の屈折率が、互いに隣り合うコア要素におけるコア21の屈折率に対して、互いに0.01〜0.02%異なるようにされる。このように、それぞれのコア要素におけるコア11,21の屈折率が、物理的に僅かに異なっていても、コア11,21を伝播する光にしてみれば、それぞれのコア11,21の光学特性は殆ど変わらない。そして、このように互いに隣り合うコア要素におけるコア11,21の屈折率を異なる大きさにすることにより、クロストークをより低減することができる。