大コア光ファイバでは、基本モードが伝送されるのみならず、高次モードも伝送される。そのため、曲げ損失が増加し、シングルモード動作帯が縮小する。すなわち、光ファイバ中の非線形効果やファイバヒューズが低減する一方で、曲げ損失が増加しシングルモード動作帯が縮小するという、トレードオフの関係が存在する。そのため、コア半径の拡大量には限界があるという課題がある。
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、コア半径が大きくなったときであっても、シングルモード動作が可能となる光ファイバ及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、メインコアとサブコアを備える光ファイバ内で、メインコアの高次モードとサブコアの基本モードを結合させ、サブコアの基本モードと結合したメインコアの高次モードをサブコアの高い伝送損失により低減させることとした。
具体的には、本発明は、高次モードを伝送可能なメインコアと、前記メインコアから間隔を隔てて配置され、前記メインコアの高次モードに結合する基本モードを伝送可能であり、前記メインコアより大きい伝送損失を有するサブコアと、前記メインコアと前記サブコアの周囲に配置され、前記メインコアと前記サブコアより小さい屈折率を有するクラッドと、を備えることを特徴とする光ファイバである。
この構成によれば、メインコアの基本モードは、サブコアの基本モードと結合せず、メインコアにより伝送損失が低い状態で伝送される一方で、メインコアの高次モードは、サブコアの基本モードと結合して、サブコアにより伝送損失が高い状態で伝送される。そのため、メインコアの半径が大きくなったときであっても、シングルモード動作が可能となる。
また、本発明は、前記メインコアの半径及び前記メインコアと前記クラッドとの比屈折率差は、所定通信波長帯において、前記メインコアが高次モードを伝送可能であるように設定されており、前記サブコアの半径及び前記サブコアと前記クラッドとの比屈折率差は、前記所定通信波長帯において、前記サブコアの基本モードと前記メインコアの高次モードとがモード結合を生じ、前記メインコアの高次モードが受ける損失量のうち前記サブコアで受ける損失量が前記メインコアで受ける損失量より大きくなるように設定されていることを特徴とする光ファイバである。
この構成によれば、所定通信波長帯において、メインコアの高次モードが受ける損失量のうちサブコアで受ける損失量がメインコアで受ける損失量より大きくなる程度に、メインコアの高次モードとサブコアの基本モードとが精密に結合することができる。
また、本発明は、前記メインコアの半径及び前記メインコアと前記クラッドとの比屈折率差は、所定通信波長帯において、前記メインコアが高次モードを伝送可能であるように設定されており、前記所定通信波長帯の両端において、前記サブコアの基本モード及び前記メインコアの高次モードの実効屈折率が等しく、前記所定通信波長帯の全体において、前記サブコアの基本モード及び前記メインコアの高次モードの実効屈折率が通信波長に対して比例変化し、前記メインコアの高次モードが受ける損失量のうち前記サブコアで受ける損失量が前記メインコアで受ける損失量より大きくなるように、前記サブコアの半径及び前記サブコアと前記クラッドとの比屈折率差が設定されていることを特徴とする光ファイバである。
この構成によれば、所定通信波長帯において、メインコアの高次モードが受ける損失量のうちサブコアで受ける損失量がメインコアで受ける損失量より大きくなる程度に、メインコアの高次モードとサブコアの基本モードとが容易に結合することができる。
また、本発明は、前記メインコアの半径及び前記メインコアと前記クラッドとの比屈折率差は、曲げ損失が所定曲げ損失となるように設定されていることを特徴とする光ファイバである。
この構成によれば、曲げ損失を所定曲げ損失まで減少させることができる。
また、本発明は、前記メインコアと前記サブコアの間隔は、前記メインコアの基本モードの電界強度の広がり幅より広く、前記メインコアの高次モードの電界強度の広がり幅より狭いことを特徴とする光ファイバである。
メインコアとサブコアの間隔が狭くなれば、メインコアの光がメインコアからサブコアに向けて漏れ出す量が多くなる。メインコアとサブコアの間隔が広くなれば、メインコアの光がメインコアからサブコアに向けて漏れ出す量が少なくなる。ここで、メインコアの基本モードの光は、メインコアから漏れ出さず、メインコアにより伝送損失が低い状態で伝送されることが望ましい。そして、メインコアの高次モードの光は、メインコアから漏れ出して、サブコアにより伝送損失が高い状態で伝送されることが望ましい。この構成によれば、メインコアとサブコアの間隔が適切に設定されることにより、メインコアの基本モードの光が伝送損失が低い状態で伝送されることができるとともに、メインコアの高次モードの光が伝損損失が高い状態で伝送されることができる。
また、本発明は、前記クラッドの内部に配置され、前記クラッドより小さい屈折率を有する低屈折率領域をさらに備えることを特徴とする光ファイバである。
この構成によれば、光ファイバの曲げ損失を低減することができる。
また、本発明は、前記低屈折率領域は空孔であることを特徴とする光ファイバである。
この構成によれば、光ファイバの曲げ損失を容易に低減することができる。
また、本発明は、前記サブコアは、前記メインコアを中心として、正多角形状または円環状に配置されることを特徴とする光ファイバである。
この構成によれば、サブコアが単数個である場合のみならず、サブコアが複数個である場合であっても、本発明を適用することができる。
また、本発明は、通信波長帯は1.00μm〜1.70μmであり、前記メインコアが伝送可能なモードはLP01モードとLP11モードであり、前記LP11モードの伝送損失は1dB/m以上であることを特徴とする光ファイバである。
この構成によれば、従来のシングルモードファイバより広い通信波長帯において、メインコアが1個の高次モードを有する程度にメインコアの半径が大きくなったときでも、メインコアの1個の高次モードがサブコアによる伝送損失により低減され得る。
また、本発明は、通信波長帯は1.26μm〜1.625μmであり、前記メインコアが伝送可能なモードはLP01モードとLP11モードであり、前記LP11モードの伝送損失は1dB/m以上であることを特徴とする光ファイバである。
この構成によれば、従来のシングルモードファイバと同様な通信波長帯において、メインコアが1個の高次モードを有する程度にメインコアの半径が大きくなったときでも、メインコアの1個の高次モードがサブコアによる伝送損失により低減され得る。
また、本発明は、曲げ半径30mmにおける曲げ損失は0.1dB/100turns以下であることを特徴する光ファイバである。
この構成によれば、従来のシングルモードファイバと同様に、曲げ半径30mmにおける曲げ損失を0.1dB/100turns以下まで減少させることができる。
また、本発明は、前記サブコアにおける前記メインコアの高次モードの伝送損失は、本光ファイバにおける前記メインコアの高次モードの所望の伝送損失の2倍以上であることを特徴とする光ファイバである。
この構成によれば、メインコアの高次モードの損失量が、サブコアにおいて2dB/m以上となり、光ファイバ全体において1dB/m以上となる。そのため、メインコアの半径が大きくなったときでも、シングルモード動作が可能となる。
また、本発明は、ガラス部材に不純物を添加し、前記メインコアとなる部分を形成した母材を作成する母材作成ステップと、前記母材のうち前記メインコアとなる部分の周囲に空孔を形成する空孔形成ステップと、前記空孔に不純物を添加した粉末状のガラス材料を充填する材料充填ステップと、前記ガラス材料を加熱により融解し、前記サブコアとなる部分を形成するサブコア融解ステップと、前記サブコアとなる部分が形成された前記母材を溶融延伸し、光ファイバを作成する母材溶融延伸ステップと、を順に備えることを特徴とする光ファイバ製造方法である。
この構成によれば、メインコアの半径が大きくなったときであっても、シングルモード動作が可能となる光ファイバが製造され得る。
また、本発明は、ガラス部材に不純物を添加し、前記メインコアとなる部分を形成した母材を作成する母材作成ステップと、前記母材のうち前記メインコアとなる部分の周囲に空孔を形成する空孔形成ステップと、前記空孔に不純物を添加した棒状のガラスロッドを挿入し、前記サブコアとなる部分を形成するサブコア挿入ステップと、前記サブコアとなる部分が形成された前記母材を溶融延伸し、光ファイバを作成する母材溶融延伸ステップと、を順に備えることを特徴とする光ファイバ製造方法である。
この構成によれば、メインコアの半径が大きくなったときであっても、シングルモード動作が可能となる光ファイバが製造され得る。
また、本発明は、ガラス部材に不純物を添加し、前記メインコアとなる部分を形成したメインロッドを作成するとともに、空孔を形成したガラス部材の前記空孔に、不純物を添加した粉末状のガラス材料を充填し、前記サブコアとなる部分を形成したサブロッドを作成する粉末充填ロッド作成ステップと、前記メインロッドの周囲に前記サブロッドを配置するロッド配置ステップと、前記ガラス材料を加熱により融解する材料溶融ステップと、前記メインロッドと前記サブロッドを溶融延伸し、光ファイバを作成するロッド溶融延伸ステップと、を順に備えることを特徴とする光ファイバ製造方法である。
この構成によれば、メインコアの半径が大きくなったときであっても、シングルモード動作が可能となる光ファイバが製造され得る。
また、本発明は、ガラス部材に不純物を添加し、前記メインコアとなる部分を形成したメインロッドを作成するとともに、空孔を形成したガラス部材の前記空孔に、不純物を添加した棒状のガラスロッドを挿入し、前記サブコアとなる部分を形成したサブロッドを作成する棒挿入ロッド作成ステップと、前記メインロッドの周囲に前記サブロッドを配置するロッド配置ステップと、前記メインロッドと前記サブロッドを溶融延伸し、光ファイバを作成するロッド溶融延伸ステップと、を順に備えることを特徴とする光ファイバ製造方法である。
この構成によれば、メインコアの半径が大きくなったときであっても、シングルモード動作が可能となる光ファイバが製造され得る。
本発明は、コア半径が大きくなったときであっても、シングルモード動作が可能となる光ファイバ及びその製造方法を提供することができる。
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
(実施形態1)
図1は、本発明に係る光ファイバ1の断面を示す図である。光ファイバ1は、メインコア11、サブコア12、クラッド13から構成されている。メインコア11は、光ファイバ1の中央に配置されている。サブコア12は、メインコア11から間隔を隔てて配置されている。クラッド13は、メインコア11とサブコア12の周囲に配置されている。
メインコア11の半径はa1であり、サブコア12の半径はa2である。メインコア11の屈折率はn1であり、サブコア12の屈折率はn2であり、クラッド13の屈折率はn3である。すなわち、メインコア11とクラッド13の比屈折率差Δ1は(n1−n3)/n3であり、サブコア12とクラッド13の比屈折率差Δ2は(n2−n3)/n3である。ここで、光ファイバ1を伝送される光がメインコア11またはサブコア12に閉じ込められるために、Δ1,Δ2>0である必要がある。
図2は、本発明に係る光ファイバ1の構造を示す図である。図2(a)の上側には、メインコア11のみを示した光ファイバ1の断面が示されている。図2(b)の上側には、サブコア12のみを示した光ファイバ1の断面が示されている。図2(a)の下側では、実線がメインコア11の屈折率n1とクラッド13の屈折率n3の空間分布を示しており、破線がメインコア11の基本モードLP01の実効屈折率とメインコア11の高次モードLP11の実効屈折率を示している。図2(b)の下側では、実線がサブコア12の屈折率n2とクラッド13の屈折率n3の空間分布を示しており、破線がサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率を示している。以下の説明では、メインコア11とサブコア12はそれぞれ独立したコアであると仮定して、メインコア11の基本モードLP01とメインコア11の高次モードLP11とサブコア12の基本モードLP01を規定する。
サブコア12の基本モードLP01の実効屈折率は、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とは一致しているが、メインコア11の基本モードLP01の実効屈折率とは一致していない。そのため、サブコア12の基本モードLP01は、メインコア11の高次モードLP11とは結合するが、メインコア11の基本モードLP01とは結合しない。すなわち、メインコア11の高次モードLP11の光は、サブコア12の基本モードLP01の光として、サブコア12に向けてパワーを移行させることが容易であるが、メインコア11の基本モードLP01の光は、サブコア12の基本モードLP01の光として、サブコア12に向けてパワーを移行させることが困難である。
逆のパワーの移行の方向についても同様である。すなわち、サブコア12の基本モードLP01の光は、メインコア11の高次モードLP11の光として、メインコア11に向けてパワーを移行させることは容易であるが、メインコア11の基本モードLP01の光として、メインコア11に向けてパワーを移行させることは困難である。
ここで、サブコア12の伝送損失は、メインコア11の伝送損失より大きい。そのため、メインコア11の高次モードLP11の光とメインコア11の基本モードLP01の光は、それぞれ以下に説明するように光ファイバ1の内部を伝送される。
メインコア11の高次モードLP11の光は、サブコア12の基本モードLP01の光として、サブコア12に向けてパワーを移行させ、サブコア12の高い伝送損失のため急激に減衰し、再びメインコア11の高次モードLP11の光として、メインコア11に向けてパワーを移行させる。以上に説明した過程を繰り返すことにより、メインコア11の高次モードLP11の光は、光ファイバ1の内部を伝送されると急激に減衰する。
メインコア11の基本モードLP01の光は、メインコア11の内部に留まり、メインコア11の低い伝送損失のため急激には減衰しない。そのため、メインコア11の基本モードLP01の光は、光ファイバ1の内部を伝送されても急激には減衰しない。
メインコア11の半径が大きくなったときであっても、メインコア11とサブコア12を備える光ファイバ1全体を見れば、メインコア11の基本モードLP01が強くメインコア11の高次モードLP11が弱いシングルモード動作が可能となる。
メインコア11の半径が大きくなったときであっても、シングルモード動作が可能となるためには、光ファイバ1全体においてメインコア11の高次モードLP11の損失量が1dB/m以上であればよい。そこで、サブコア12においてメインコア11の高次モードLP11の損失量がどの程度であればよいかを見積もる。ここで、メインコア11の伝送損失はサブコア12の伝送損失より小さいため、メインコア11においてはメインコア11の高次モードLP11の損失量を無視する。
メインコア11の高次モードLP11の光は、ビート長にわたる伝送により、サブコア12の基本モードLP01の光として、サブコア12に向けてパワーを完全に移行させ、ビート長にわたる伝送により再び、メインコア11の高次モードLP11の光として、メインコア11に向けてパワーを完全に移行させる。すなわち、メインコア11の高次モードLP11の光は、光ファイバ1を伝送されるにあたり、全伝送距離の半分の距離にわたりメインコア11を伝送され、全伝送距離の半分の距離にわたりサブコア12を伝送される。そのため、光ファイバ1全体においてメインコア11の高次モードLP11の損失量が1dB/m以上であるためには、サブコア12においてメインコア11の高次モードLP11の損失量が1dB/mの2倍以上すなわち2dB/m以上であればよい。
なお、ビート長はμm〜mmオーダであるため、kmオーダの伝送がされれば、メインコア11の高次モードLP11は十分に減少することができ、メインコア11の基本モードLP01は十分に維持することができる。例えば、実施形態3で後述するように、a1=8.0μm、Δ1=0.2%、a2=2.06μm、Δ2=0.42%、通信波長を1.55μm、メインコア11とサブコア12の間隔を20μmとすれば、ビート長は2mm程度となる。
以上の説明では、サブコア12の基本モードLP01の実効屈折率が、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率と一致している。実際の製造では、サブコア12の基本モードLP01の実効屈折率が、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率と一致しているとは必ずしも限らない。しかし、実際の製造でも、メインコア11の高次モードLP11が受ける損失量のうちサブコア12で受ける損失量がメインコア11で受ける損失量より大きくなる程度に、サブコア12の基本モードLP01の実効屈折率をメインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とほぼ一致させ、サブコア12の基本モードLP01をメインコア11の高次モードLP11と結合させるとよい。すると、実際の製造でも、メインコア11の半径が大きくなったときであっても、メインコア11とサブコア12を備える光ファイバ1全体を見れば、メインコア11の基本モードLP01が強くメインコア11の高次モードLP11が弱いシングルモード動作が可能となる。
メインコア11の高次モードが単数の場合のみならず、メインコア11の高次モードが複数の場合であっても、図2の説明は成立する。メインコア11のそれぞれの高次モードについて、これらと結合する基本モードを有するサブコア12を配置すればよい。
(実施形態2)
本実施形態では、通信波長帯が1.00〜1.70μmである伝送システムについて詳細に説明する。この伝送システムによれば、光ファイバ1の伝送損失を1dB/km以下に抑制することができる。図3は、本発明に係る光ファイバ1の設計方法を示す図であり、各ステップSの順に設計方法を説明する。
最初に、通信波長帯を決定する(ステップS1)。本実施形態では、通信波長帯を1.00〜1.70μmに設定している。
次に、メインコア11について、半径a1と比屈折率差Δ1を決定する(ステップS2)。図4は、本発明に係る通信波長帯が1.00〜1.70μmである光ファイバ1について、半径a1と比屈折率差Δ1の設定方法を示す図である。一点鎖線は、メインコア11の第1高次モードLP11のカットオフ波長λCが1.00μmであるときの、半径a1と比屈折率差Δ1の関係を示す。破線は、メインコア11の第2高次モードLP21のカットオフ波長λC'が1.00μmであるときの、半径a1と比屈折率差Δ1の関係を示す。ここで、非特許文献3の式(3)に記載されているように、カットオフ波長は、理論式から求められる理論カットオフ波長の1.15倍である実効カットオフ波長である。
半径a1及び比屈折率差Δ1を表す点が破線より下側かつ一点鎖線より上側に存在すれば、メインコア11を導波するモードは基本モードLP01と第1高次モードLP11となる。ここでは、a1=7.0μm、Δ1=0.25%と決定することにより、メインコア11を導波するモードが基本モードLP01と第1高次モードLP11となる。
ここで、図4に示した設計方法は、図2に示したステップ型の屈折率分布に対して適用される。しかし、非特許文献4に記載されているように、Dual shape coreなどのステップ型以外の屈折率分布を採用することにより、半径a1及び比屈折率差Δ1を表す点が図4に示した破線より下側かつ一点鎖線より上側に存在しなくても、メインコア11を導波するモードが基本モードLP01と第1高次モードLP11となる。
次に、ステップS2で決定した半径a1と比屈折率差Δ1において、曲げ損失を計算する(ステップS3)。ステップS3で計算した曲げ損失が規定値を満たすときには(ステップS4においてYES)、ステップS5に進む。ステップS3で計算した曲げ損失が規定値を満たさないときには(ステップS4においてNO)、ステップS2に戻る。このように、曲げ損失が規定値を満たすまで、半径a1と比屈折率差Δ1を繰り返し決定する。その詳細については実施形態3において後述する。
次に、サブコア12について、半径a2と比屈折率差Δ2を決定し(ステップS5)、通信波長帯において、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率を計算する(ステップS6)。両実効屈折率が一致するときには(ステップS7においてYES)、ステップS8に進む。両実効屈折率が一致しないときには(ステップS7においてNO)、ステップS5に戻る。このように、両実効屈折率が一致するまで、半径a2と比屈折率差Δ2を繰り返し決定する。最後に、ステップS2で決定した半径a1と比屈折率差Δ1を抽出し、ステップS5で決定した半径a2と比屈折率差Δ2を抽出する(ステップS8)。
図5は、本発明に係る通信波長帯が1.00〜1.70μmである光ファイバ1について、半径a2と比屈折率差Δ2の設定方法を示す図である。n1.0=n1.0'なる注釈を付された実線は、通信波長が通信波長帯の一端の1.00μmであるときに、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率n1.0とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率n1.0'が等しくなるような、半径a2と比屈折率差Δ2の関係を示す。n1.7=n1.7'なる注釈を付された実線は、通信波長が通信波長帯の他端の1.70μmであるときに、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率n1.7とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率n1.7'が等しくなるような、半径a2と比屈折率差Δ2の関係を示す。ここで、ステップS2で決定したように、a1=7.0μm、Δ1=0.25%である。
半径a2及び比屈折率差Δ2を表す点が注釈を付された両実線が交わる点であるときに、通信波長が通信波長帯の一端の1.00μmであっても通信波長帯の他端の1.70μmであっても、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率が等しくなる。ここでは、a2=1.92μm、Δ2=0.45%と決定することにより、通信波長が通信波長帯の一端の1.00μmであっても通信波長帯の他端の1.70μmであっても、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率が等しくなる。このように、通信波長帯の両端において、図2に示した光ファイバ1を設計することができる。
図6は、本発明に係る通信波長帯が1.00〜1.70μmである光ファイバ1について、基本モードの実効屈折率と高次モードの実効屈折率を示す図である。ここで、ステップS2で決定したように、a1=7.0μm、Δ1=0.25%であり、ステップS5で決定したように、a2=1.92μm、Δ2=0.45%である。通信波長が通信波長帯の一端の1.00μmと通信波長帯の他端の1.70μmでなくても、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率がほぼ等しくなる。メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率は、通信波長変化に対してほぼ比例変化するためである。このように、通信波長帯の全体において、図2に示した光ファイバ1を設計することができる。
図7は、本発明に係る通信波長帯が1.00〜1.70μmである光ファイバ1について、基本モードの電界分布と高次モードの電界分布を示す図である。図7(a)、図7(b)、図7(c)、図7(d)では、通信波長はそれぞれ1.00μm、1.31μm、1.55μm、1.70μmである。図7の左側には、メインコア11の基本モードLP01の光の電界分布が示されており、図7の右側には、メインコア11の高次モードLP11の光の電界分布が示されている。メインコア11は各図の中央に1個示されており、サブコア12はメインコア11の周囲に円環状かつ等間隔に8個示されている。メインコア11とサブコア12の間隔は、15μmである。
図7の左側から明らかなように、メインコア11の基本モードLP01の光はメインコア11において伝送されている。すなわち、図2に示したように、メインコア11の基本モードLP01とサブコア12の基本モードLP01は結合していない。図7の右側から明らかなように、メインコア11の高次モードLP11の光はサブコア12とメインコア11の両方において伝送されている。すなわち、図2に示したように、メインコア11の高次モードLP11とサブコア12の基本モードLP01は結合している。
本実施形態においては、通信波長帯のうち両端の通信波長において、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率を計算し(ステップS6)、両実効屈折率を一致させていた(ステップS7)。本実施形態においては、両実効屈折率を一致させる設計が容易となる。しかし、本実施形態の変形例として、通信波長帯のうち任意の通信波長において、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率を計算し(ステップS6)、両実効屈折率を一致させてもよい(ステップS7)。本実施形態の変形例においては、両実効屈折率を一致させる設計が精密となる。例えば、通信波長帯のうち任意の通信波長は、通信波長帯の一端の1.00μmから通信波長帯の他端の1.70μmまで、等間隔に分布する3点以上の通信波長である。
本実施形態においては、メインコア11について、半径a1と比屈折率差Δ1を決定し(ステップS2)、このときに曲げ損失が規定値を満たすかどうかを判断し(ステップS4)、サブコア12について、半径a2と比屈折率差Δ2を決定し(ステップS5)、このときに両実効屈折率が一致するかどうかを判断していた(ステップS7)。しかし、本実施形態の変形例においては、メインコア11について、曲げ損失が規定値を満たすかどうかを考慮したうえで、半径a1と比屈折率差Δ1を決定し(ステップS2)、サブコア12について、両実効屈折率が一致するかどうかを考慮したうえで、半径a2と比屈折率差Δ2を決定してもよい(ステップS5)。本実施形態の変形例においては、ステップS2とステップS5を繰り返す必要がない。
本実施形態と本実施形態の変形例を、以下に説明する3個の形態にまとめる。1個目の形態では、まず、所定通信波長帯において、メインコア11が高次モードLP11を伝送可能であるように、メインコア11の半径及びメインコア11とクラッド13との比屈折率差を設定する。次に、所定通信波長帯において、サブコア12の基本モードLP01とメインコア11の高次モードLP11とがモード結合を生じ、メインコア11の高次モードLP11が受ける損失量のうちサブコア12で受ける損失量がメインコア11で受ける損失量より大きくなるように、サブコア12の半径及びサブコア12とクラッド13との比屈折率差を設定する。
2個目の形態では、まず、所定通信波長帯において、メインコア11が高次モードLP11を伝送可能であるように、メインコア11の半径及びメインコア11とクラッド13との比屈折率差を設定する。次に、所定通信波長帯の両端において、サブコア12の基本モードLP01とメインコア11の高次モードLP11とがモード結合を生じ、メインコア11の高次モードLP11が受ける損失量のうちサブコア12で受ける損失量がメインコア11で受ける損失量より大きくなるように、サブコア12の半径及びサブコア12とクラッド13との比屈折率差を設定する。
3個目の形態では、1個目の形態または2個目の形態において、曲げ損失が所定曲げ損失となるように、メインコア11の半径及びメインコア11とクラッド13との比屈折率差を設定する。
(実施形態3)
本実施形態では、通信波長帯が1.26〜1.625μmである伝送システムについて詳細に説明する。この伝送システムによれば、従来のシングルモード光ファイバと同様に、伝送損失を1dB/km以下に抑制することができ、曲げ半径30mmにおける曲げ損失を0.1dB/100turns以下に抑制することができる。本実施形態の光ファイバ1の設計方法は、実施形態2の光ファイバ1の設計方法と同様であり、図3に示した光ファイバ1の設計方法を適用することができる。
最初に、通信波長帯を決定する(ステップS1)。本実施形態では、通信波長帯を1.26〜1.625μmに設定している。
次に、メインコア11について、半径a1と比屈折率差Δ1を決定する(ステップS2)。図8は、本発明に係る通信波長帯が1.26〜1.625μmである光ファイバ1について、半径a1と比屈折率差Δ1の設定方法を示す図である。一点鎖線は、メインコア11の第1高次モードLP11のカットオフ波長λCが1.26μmであるときの、半径a1と比屈折率差Δ1の関係を示す。破線は、メインコア11の第2高次モードLP21のカットオフ波長λC'が1.26μmであるときの、半径a1と比屈折率差Δ1の関係を示す。実線は、曲げ半径30mmにおける曲げ損失αBが0.1dB/100turnsであるときの、半径a1と比屈折率差Δ1の関係を示す。
半径a1及び比屈折率差Δ1を表す点が破線より下側かつ一点鎖線より上側かつ実線より下側に存在すれば、メインコア11を導波するモードは基本モードLP01と第1高次モードLP11となり、曲げ半径30mmにおける曲げ損失αBは0.1dB/100turns以下となる。ここでは、a1=8.0μm、Δ1=0.2%と決定することにより、メインコア11を導波するモードは基本モードLP01と第1高次モードLP11となり、曲げ半径30mmにおける曲げ損失αBは0.1dB/100turns以下となる。
次に、サブコア12について、半径a2と比屈折率差Δ2を決定する(ステップS5)。図9は、本発明に係る通信波長帯が1.26〜1.625μmである光ファイバ1について、半径a2と比屈折率差Δ2の設定方法を示す図である。n1.26=n1.26'なる注釈を付された実線は、通信波長が通信波長帯の一端の1.26μmであるときに、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率n1.26とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率n1.26'が等しくなるような、半径a2と比屈折率差Δ2の関係を示す。n1.625=n1.625'なる注釈を付された実線は、通信波長が通信波長帯の他端の1.625μmであるときに、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率n1.625とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率n1.625'が等しくなるような、半径a2と比屈折率差Δ2の関係を示す。ここで、ステップS2で決定したように、a1=8.0μm、Δ1=0.2%である。
半径a2及び比屈折率差Δ2を表す点が注釈を付された両実線が交わる点であるときに、通信波長が通信波長帯の一端の1.26μmであっても通信波長帯の他端の1.625μmであっても、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率が等しくなる。ここでは、a2=2.06μm、Δ2=0.42%と決定することにより、通信波長が通信波長帯の一端の1.26μmであっても通信波長帯の他端の1.625μmであっても、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率が等しくなる。このように、通信波長帯の両端において、図2に示した光ファイバ1を設計することができる。
図10は、本発明に係る通信波長帯が1.26〜1.625μmである光ファイバ1について、基本モードの実効屈折率と高次モードの実効屈折率を示す図である。ここで、ステップS2で決定したように、a1=8.0μm、Δ1=0.2%であり、ステップS5で決定したように、a2=2.06μm、Δ2=0.42%である。通信波長が通信波長帯の一端の1.26μmと通信波長帯の他端の1.625μmでなくても、メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率がほぼ等しくなる。メインコア11の高次モードLP11の実効屈折率とサブコア12の基本モードLP01の実効屈折率は、通信波長変化に対してほぼ比例変化するためである。実施形態3の通信波長帯は、実施形態2の通信波長帯より狭いため、実施形態3の両実効屈折率の一致程度は、実施形態2の両実効屈折率の一致程度より高い。このように、通信波長帯の全体において、図2に示した光ファイバ1を設計することができる。
図11は、本発明に係る通信波長帯が1.26〜1.625μmである光ファイバ1について、基本モードの電界分布と高次モードの電界分布を示す図である。図11(a)、図11(b)、図11(c)、図11(d)では、通信波長はそれぞれ1.26μm、1.31μm、1.55μm、1.625μmである。図11の左側には、メインコア11の基本モードLP01の光の電界分布が示されており、図11の右側には、メインコア11の高次モードLP11の光の電界分布が示されている。メインコア11は各図の中央に1個示されており、サブコア12はメインコア11の周囲に円環状かつ等間隔に8個示されている。メインコア11とサブコア12の間隔は、20μmである。
図11の左側から明らかなように、メインコア11の基本モードLP01の光はメインコア11において伝送されている。すなわち、図2に示したように、メインコア11の基本モードLP01とサブコア12の基本モードLP01は結合していない。図11の右側から明らかなように、メインコア11の高次モードLP11の光はサブコア12とメインコア11の両方において伝送されている。すなわち、図2に示したように、メインコア11の高次モードLP11とサブコア12の基本モードLP01は結合している。
(実施形態4)
本実施形態では、メインコア11とサブコア12の間隔を設定する方法について説明する。実施形態2の図7の左側と実施形態3の図11の左側では、メインコア11の基本モードLP01の電界分布を示した。実施形態2の図7の右側と実施形態3の図11の右側では、メインコア11の高次モードLP11の電界分布を示した。メインコア11とサブコア12の間隔が狭くなれば、メインコア11の光がメインコア11からサブコア12に向けて漏れ出す量が多くなる。メインコア11とサブコア12の間隔が広くなれば、メインコア11の光がメインコア11からサブコア12に向けて漏れ出す量が少なくなる。
ここで、メインコア11の基本モードLP01の光は、メインコア11から漏れ出さず、メインコア11により伝送損失が低い状態で伝送されることが望ましい。そして、メインコア11の高次モードLP11の光は、メインコア11から漏れ出して、サブコア12により伝送損失が高い状態で伝送されることが望ましい。そこで、メインコア11とサブコア12の間隔が適切に設定されることにより、メインコアの基本モードの光が伝送損失が低い状態で伝送されることができるとともに、メインコアの高次モードの光が伝損損失が高い状態で伝送されることができる。
図12は、本発明に係る光ファイバ1について、基本モードの損失量と高次モードの損失量をメインコア11とサブコア12の間隔に対して示す図である。実線は、メインコア11の基本モードLP01の損失量をメインコア11とサブコア12の間隔に対して示したものである。破線は、メインコア11の高次モードLP11の損失量をメインコア11とサブコア12の間隔に対して示したものである。ここで、実施形態3のステップS2で決定したように、a1=8.0μm、Δ1=0.2%であり、実施形態3のステップS5で決定したように、a2=2.06μm、Δ2=0.42%であり、通信波長は1.55μmであり、サブコア12の伝送損失は5dB/mであり、メインコア11の伝送損失はサブコア12の伝送損失より小さいため無視している。
メインコア11の中心から遠ざかれば、メインコア11の基本モードLP01の電界強度は急激に減少する。そのため、メインコア11とサブコア12の間隔が広がれば、メインコア11の基本モードLP01の光がメインコア11からサブコア12に向けて漏れ出す量は急激に減少し、メインコア11の基本モードLP01の損失量は急激に減少する。メインコア11の中心から遠ざかっても、メインコア11の高次モードLP11の電界強度は急激には減少しない。そのため、メインコア11とサブコア12の間隔が広がっても、メインコア11の高次モードLP11の光がメインコア11からサブコア12に向けて漏れ出す量は急激には減少せず、メインコア11の高次モードLP11の損失量は急激には減少しない。すなわち、実線の傾きは、破線の傾きより大きい。
メインコア11の基本モードLP01の光が、メインコア11から漏れ出さず、メインコア11により伝送損失が低い状態で伝送されるためには、メインコア11とサブコア12の間隔が広がることが望ましい。メインコア11の高次モードLP11の光が、メインコア11から漏れ出して、サブコア12により伝送損失が高い状態で伝送されるためには、メインコア11とサブコア12の間隔が狭まることが望ましい。すなわち、メインコア11の基本モードLP01の光が低損失で伝送される要請及びメインコア11の高次モードLP11の光が高損失で伝送される要請は、互いに相反する要請である。
そこで、メインコア11とサブコア12の間隔が適切に設定されることにより、メインコアの基本モードの光が伝送損失が低い状態で伝送されることができるとともに、メインコアの高次モードの光が伝損損失が高い状態で伝送されることができる。例えば、メインコア11とサブコア12の間隔は、メインコア11の基本モードLP01の損失量が第1の損失量となるときの間隔以上に設定され、メインコア11の高次モードLP11の損失量が第2の損失量となるときの間隔以下に設定されればよい。
(実施形態5)
本実施形態では、光ファイバ1の製造方法について説明する。まず、メインコア11、サブコア12、クラッド13を形成する方法の具体例を4種類説明する。次に、サブコア12の伝送損失を大きくする方法の具体例を2種類説明する。
メインコア11、サブコア12、クラッド13を形成する第1の具体例を説明する。母材作成ステップでは、石英ガラスの光ファイバ母材に不純物を添加し、光ファイバ母材の中央にメインコア11となる部分を形成し、メインコア11となる部分の周囲にクラッド13となる部分を形成する。空孔形成ステップでは、メインコアの11となる部分から所定間隔を隔てた位置に穿孔により空孔を形成し、材料充填ステップでは、空孔に不純物を添加した粉末状のガラス材料を充填する。サブコア融解ステップでは、ガラス材料が充填された光ファイバ母材を加熱し、ガラス材料を溶融しサブコア12となる部分を形成する。母材溶融延伸ステップでは、サブコア12となる部分が形成された光ファイバ母材を溶融延伸し光ファイバ1を製造する。
メインコア11、サブコア12、クラッド13を形成する第2の具体例を説明する。母材作成ステップでは、石英ガラスの光ファイバ母材に不純物を添加し、光ファイバ母材の中央にメインコア11となる部分を形成し、メインコア11となる部分の周囲にクラッド13となる部分を形成する。空孔形成ステップでは、メインコアの11となる部分から所定間隔を隔てた位置に穿孔により空孔を形成し、サブコア挿入ステップでは、不純物を添加した棒状のガラスロッドをあらかじめ作成し、空孔に棒状のガラスロッドを挿入しサブコア12となる部分を形成する。母材溶融延伸ステップでは、サブコア12となる部分が形成された光ファイバ母材を溶融延伸し光ファイバ1を製造する。
メインコア11、サブコア12、クラッド13を形成する第3の具体例を説明する。粉末充填ロッド作成ステップでは、石英ガラスのロッドに不純物を添加し、メインコア11となる部分を形成する。そして、石英ガラスのロッドに穿孔により空孔を形成し、空孔に不純物を添加した粉末状のガラス材料を充填し、サブコア12となる部分を形成する。ロッド配置ステップでは、メインコア11が形成されたロッドの周囲にサブコア12が形成されたロッドを配置し、サブコア12が形成されたロッドの周囲に石英ガラスのロッドを配置する。そして、これらのロッドが束ねられたロッド群に石英ジャケットを装荷する。材料溶融ステップでは、石英ジャケットが装荷されたロッド群を加熱しガラス材料を溶融する。ロッド溶融延伸ステップでは、石英ジャケットが装荷されたロッド群を溶融延伸し光ファイバ1を作成する。
メインコア11、サブコア12、クラッド13を形成する第4の具体例を説明する。棒挿入ロッド作成ステップでは、石英ガラスのロッドに不純物を添加し、メインコア11となる部分を形成する。そして、石英ガラスのロッドに穿孔により空孔を形成し、空孔に不純物を添加した棒状のガラスロッドを挿入し、サブコア12となる部分を形成する。ロッド配置ステップでは、メインコア11が形成されたロッドの周囲にサブコア12が形成されたロッドを配置し、サブコア12が形成されたロッドの周囲に石英ガラスのロッドを配置する。そして、これらのロッドが束ねられたロッド群に石英ジャケットを装荷する。ロッド溶融延伸ステップでは、石英ジャケットが装荷されたロッド群を溶融延伸し光ファイバ1を作成する。
メインコア11、サブコア12、クラッド13を形成する4種類の具体例において、各領域の屈折率を設定する材料として、ゲルマニウム(Ge)の酸化物、アルミニウム(Al)の酸化物、リン(P)の酸化物などの屈折率を増加させる不純物、フッ素(F)、ボロン(B)などの屈折率を減少させる不純物、純石英があげられる。不純物の具体例は、非特許文献5に記載されているが、これらに限定されない。
サブコア12の伝送損失を大きくする第1の具体例を説明する。ここでは、サブコア12とクラッド13の境界の表面粗さを調整することにより、サブコア12の伝送損失をメインコア11の伝送損失より大きくする。サブコア12とクラッド13の境界の表面粗さを粗くすると、サブコア12を伝送される光がサブコア12とクラッド13の境界で一部放射されるため、サブコア12の伝送損失が大きくなる。サブコア12とクラッド13の境界の表面粗さを細かくすると、サブコア12を伝送される光がサブコア12とクラッド13の境界で放射されることが少なくなるため、サブコア12の伝送損失が小さくなる。
サブコア12の伝送損失を大きくする第2の具体例を説明する。ここでは、サブコア12に使用される材料の散乱損失または吸収損失を調整することにより、サブコア12の伝送損失をメインコア11の伝送損失より大きくする。例えば、サブコア12に使用される材料として、散乱損失または吸収損失の大きな不純物を添加された石英ガラスを使用してもよく、石英ガラスに形成された空孔に充填される散乱損失または吸収損失の大きな液体または固体を使用してもよい。
(実施形態6)
本実施形態では、メインコア11とサブコア12を配置する方法の具体例について説明する。図13は、本発明に係る光ファイバ1の断面を示す図である。
図13(a)に示した光ファイバ1は、1個のメインコア11、1個のサブコア12から構成されている。図13(b)に示した光ファイバ1は、1個のメインコア11、メインコア11から等しい間隔を隔ててメインコア11の周囲に円環状に配置された12個のサブコア12から構成されている。図13(c)に示した光ファイバ1は、1個のメインコア11、メインコア11から等しい間隔を隔ててメインコア11の周囲に正多角形状に配置された6個のサブコア12から構成されている。図13(b)、図13(c)に示した光ファイバ1は、1層構造のサブコア12を有している。
図13(d)に示した光ファイバ1は、1個のメインコア11、メインコア11から等しい間隔を隔ててメインコア11の周囲に円環状に配置された12個のサブコア12−1、メインコア11から当該間隔より大きい間隔を隔ててメインコア11の周囲に円環状に配置された12個のサブコア12−2から構成されている。図13(e)に示した光ファイバ1は、1個のメインコア11、メインコア11から等しい間隔を隔ててメインコア11の周囲に正多角形状に配置された6個のサブコア12−1、メインコア11から当該間隔より大きい間隔を隔ててメインコア11の周囲に正多角形状に配置された12個のサブコア12−2から構成されている。図13(d)、図13(e)に示した光ファイバ1は、2層構造のサブコア12−1、12−2を有している。
図13(b)、図13(c)に示した1層構造のサブコア12を有する光ファイバ1では、すべてのサブコア12の基本モードが、メインコア11の一の高次モードと結合してもよい。あるいは、一のサブコア12の基本モードが、メインコア11の一の高次モードと結合し、他のサブコア12の基本モードが、メインコア11の他の高次モードと結合してもよい。
図13(d)、図13(e)に示した2層構造のサブコア12を有する光ファイバ1では、内層のサブコア12−1の基本モードが、メインコア11の一の高次モードと結合し、外層のサブコア12−2の基本モードが、メインコア11の他の高次モードと結合してもよい。あるいは、内層のサブコア12−1の基本モードと外層のサブコア12−2の基本モードが、メインコア11の一の高次モードと結合してもよい。
メインコア11とサブコア12を配置する方法として、図13に示した配置方法以外にも様々な配置方法があげられるが、1個のメインコア11と1個のサブコア12の関係は、どのような配置方法でも図13(a)に示した配置方法と変わりはない。
(実施形態7)
本実施形態では、クラッド13以外に低屈折率領域を配置した光ファイバ1について説明する。図14は、本発明に係る光ファイバ1の断面を示す図である。
図14に示した光ファイバ1は、メインコア11、サブコア12、クラッド13、低屈折率領域14から構成されている。クラッド13の屈折率n3と低屈折率領域14の屈折率n4の間には、n3>n4の関係が成立する。低屈折率領域14を形成するためには、フッ素(F)、ボロン(B)などの屈折率を減少させる不純物を添加してもよく、クラッド13に穿孔により屈折率の低い空孔を形成してもよい。低屈折率領域14を形成することにより、光ファイバ1の曲げ損失を低減することができる。