JP5244928B2 - 衝撃吸収用木質床材 - Google Patents

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Description

本発明は、衝撃吸収性を向上させることを目的とする木質床材に関する。
合板や木質繊維板等を基材とし、その表面側に突板のような木質表面材を積層した木質床材は知られており、適宜枚数の木質床材を床下地面に敷き詰めることによって、いわゆる木質フロアとされる。
木質フロアでの歩行感を高めるため、あるいは防音性や遮音性を高くして階下への音等の伝播を低減するため、等の目的で、適宜の緩衝材や制振材を、木質床材における中間材あるいは裏面材として備えることも行われる。そのような材料として、例えば、特許文献1では多孔質ゴムを用いることが、特許文献2では、基材よりも低い剛性である発泡樹脂材料を用いることが記載されている。
近年、フロアにおいて、人が転倒したとき等に受ける衝撃力を効果的に吸収し緩和することの必要性が認識されるようになり、例えば、JIS A6519「体育館用鋼製床下地構成材」では一般体育館の床の硬さは100G以下であることが望ましいとしている。ここで、床の硬さとは、ヘッドモデルを自由落下させ、床に衝突したときの加速度Gの最大値を測定して得られる値(衝撃時のG値)であって、前記JIS A6519には、その測定法等が記載されている。
例えば、前記JIS A6519の測定法により、衝撃時のG値を100G以下となるように構成された床材として、特許文献3及び4には、基材と表面材がともに樹脂材料からなる樹脂製床材が記載されている。特許文献3の衝撃吸収材は厚さ4mm〜10mmの発泡シートとされ、樹脂表面材は厚さ1.8mm〜6mmの合成樹脂タイルなどとされている。また、特許文献4の衝撃吸収材は、その厚さは2mm〜15mmで、発泡倍率は4〜20倍のポリオレフィン発泡体とされ、樹脂表面材は厚さ0.3mm〜1.0mmの樹脂シートとされている。
特開平9−32255号公報 特開平11−182007号公報 特開平7−82871号公報 特開2002−317548号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載の木質床材は、フロアの歩行感、または防音性・遮音性を目的として、緩衝材や制振材の材質及び厚さが選定されており、人が転倒したとき等に受ける衝撃までも考慮して構成されたものではない。したがって、これらの木質床材では、転倒時に受ける衝撃を充分に吸収することができない場合がある。
また、特許文献3及び4の樹脂製床材は、転倒時の衝撃を考慮すべく、前記JIS A6519に準拠して、床の硬さは、加速度計を取り付けたヘッドモデル(床の硬さの測定装置)を高さ200mmから落下させ、床に衝突したときに加速度計で測定し、発生する加速度Gの最大値が100G以下となるように、表面材及び衝撃吸収材を選定している。しかしながら、実際、家庭内における転倒では、この2倍以上の衝撃エネルギがフロアに付与されることが想定される。したがって、これらの樹脂床材からなるフロアであっても、充分に衝撃エネルギは吸収できないおそれがある。
さらに、特許文献3及び4の樹脂製床材の衝撃吸収材を、特許文献1及び2に記載の木質床材に適用したとしても、木質床材の木質表面材の剛性、可撓性等の物性値は、樹脂製床材のものとは大きく異なるため、これだけでは、容易に衝撃時のG値が低減されるものではない。
このような課題を鑑みて、本発明は、転倒時などに生じる衝撃エネルギを木質フロアに吸収させて人体が受ける衝撃を低減することを課題とし、より具体的には、これまでの評価基準の2倍以上の衝撃エネルギが木質フロアに付与された場合であっても、この衝撃エネルギを吸収し、衝撃時のG値が100G以下となる木質フロアを提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく、本発明者は多くの実験と研究を継続して行うことにより、木質フロアに付与する衝撃エネルギをこれまでの評価基準(JIS A6519)の2倍以上とした場合、木質フロアに衝撃エネルギを吸収させることができる形態として、木質表面材の撓みの状態に応じて、大きく2つの形態に分類されることが新たにわかった。
第1の形態は、図7(a)に示すように、衝撃時に、木質表面材61Aをほとんど撓ませず、木質表面材61Aに作用する衝撃荷重Wを衝撃吸収材62Aに均一に分散させ、衝撃吸収材62Aに衝撃エネルギを吸収させる形態である。第2の形態は、図7(b)に示すように、衝撃時に、木質表面材61Bに作用する衝撃荷重Wにより、木質表面材61Bを積極的に撓ませ、これにより木質表面材61Bにも衝撃エネルギを吸収させる形態である。
さらに、第1の形態を想定して、発明者がさらなる実験を繰り返した結果、木質表面材の下地材となる衝撃吸収材の硬度が高すぎる場合、高硬度の衝撃吸収材は、分散した衝撃荷重に対して変形せず反発してしまい、衝撃エネルギは衝撃吸収材に吸収され難い状態となる(以下、明細書では、この状態を「衝撃力反発状態」と呼ぶ)。さらに、この衝撃吸収材を適正な硬度にした場合であっても、木質表面材の下地材となる衝撃吸収材の厚さが薄すぎる場合、衝撃吸収材が、これ以上に収縮し難いほどの厚さにまで圧縮されてしまい、この結果、木質床材に衝撃エネルギが吸収され難い状態となる(以下、明細書では、この状態を「エネルギ吸収限界状態」と呼ぶ)。なお、衝撃吸収材の硬度が低すぎる場合には、このエネルギ吸収限界状態になりやすい傾向にあった。
したがって、衝撃力反発状態とならないためには、衝撃吸収材の硬度を、分散した衝撃荷重に対して変形し易い(衝撃荷重が反発し難い)硬度に設定することが重要である。一方、エネルギ吸収限界状態とならないためには、衝撃吸収材の厚さを、衝撃吸収材が充分圧縮できる程度に設定することが重要である。このような新たな知見を得た。
本発明は、この発明者の新たな知見に基づくものであり、本願の第1の発明に係る木質床材は、木質表面材と、前記木質表面材の裏面に積層した衝撃吸収材とを少なくとも備えた木質床材であって、前記木質表面材は、長さ350mm、幅50mmの板材を、スパン300mmで支持し、スパン中央に集中荷重を0.1N作用させたときの前記板材の最大撓み量が、0.0013mm〜0.0214mmの範囲となるような板材の材料及び厚さと同じ材料及び同じ厚さからなり、前記衝撃吸収材は、アスカーC硬度40度〜50度かつ厚み6mm以上であることを特徴とするものである。
本願の第2の発明に係る木質床材は、木質表面材と、前記木質表面材の裏面に積層した衝撃吸収材とを少なくとも備えた木質床材であって、前記木質表面材は、長さ350mm、幅50mmの板材を、スパン300mmで支持し、スパン中央に集中荷重を0.1N作用させたときの前記板材の最大撓み量が、0.0013mm〜0.5mmの範囲となるような板材の材料及び厚さと同じ材料及び同じ厚さからなり、前記衝撃吸収材は、アスカーC硬度9度〜50度かつ厚み7mm以上であることを特徴とするものである。
後の実施例に示すように、本願の第1及び第2の発明に係る木質床材は、衝撃吸収性に優れており、これまでの評価基準の2倍以上(実際には、2.3倍)の衝撃エネルギが木質床材に付与された場合(以下「高衝撃時」という)であっても、衝撃時のG値は100G以下となる。したがって、本発明の木質床材を床下地面に配置した木質フロアによれば、転倒時などに生じる衝撃エネルギを木質フロアに効果的に吸収させることができ、衝撃力に対して安全性を高めることができる。
本願の第1及び第2の発明でいう「最大撓み量」は、集中荷重が作用する部分における木質表面材の撓み量であり、第1及び第2の発明の木質表面材の材料及び厚さは、長さ350mm、幅50mmの板材を、スパン300mmで支持し、スパン中央に集中荷重を0.1N作用させたときの前記板材の最大撓み量が、第1の発明では、0.0013mm〜0.0214mmの範囲となるような板材の材料及び厚さであり、第2の発明では、0.0013mm〜0.5mmの範囲となるような板材の材料及び厚さである。このような関係を満たす木質表面材は、木質板材を準備して、上記条件で曲げ試験を行うことにより選定してもよく、後述する一般的な撓み量の演算式により選定してもよい。
なお、本発明でいう、「スパン中央に集中荷重を作用させる」とは、単純支持された状態で、長手方向のスパンの中央の位置において集中した荷重を、幅方向において、均等に分布した荷重を作用させることである。
ここで、第1及び第2の発明において木質表面材の最大撓み量が、0.0013mm未満の場合、木質表面材の剛性が高くなり、衝撃時における木質表面材の撓みによるエネルギ吸収が小さくなり、衝撃吸収材の硬度の如何によっては、衝撃吸収材が押しつぶされ難くなる場合があり、高衝撃時には、衝撃を充分吸収できない場合がある。
一方、第1の発明において木質表面材の最大撓み量が0.0214mmを超えた場合、第2の発明において木質表面材の最大撓み量が0.5mmを超えた場合には、撓み量が大きすぎるため、衝撃時に木質表面材の最も撓む部分における衝撃吸収材が、これ以上収縮し難いほどの厚さにまで局所的に圧縮され、衝撃エネルギが衝撃吸収材に吸収され難い状態(いわゆる「底打ち状態」)となる場合がある。
そして、第1の発明及び第2の発明に係る木質表面材は、このような板材の条件において、それぞれ、前述した最大撓み量の範囲を満たすものであれば、その材質及び厚さは任意とする。好ましくは、木質表面材は、無垢材、合板、木質繊維板、LVL、OSB、集成材、PB、またはこれらの2種以上を接着積層した複合基材、等を挙げることができる。また、木質表面材に裏溝を入れたり、熱処理や蒸気処理、その他、樹脂、熱水、または薬剤等で処理(樹脂含浸を含む)したりしたものでもよい。木質表面材の表面に印刷したり、化粧単板または化粧シートを積層したりしてもよく、本発明では、この積層状態のものも木質表面材として含むものであり、積層状態の木質表面材が、最大撓み量の範囲を満たしていればよい。木質表面材に用いる木質繊維板には、インシュレーションボード、HDF(高密度繊維板)、MDF、ハードボード等が例として挙げられる。
なお、ここでは、板材の長さを350mm、板材の幅を50mm、スパン300mmの中央に作用する集中荷重を0.1Nとしたときの最大撓み量から、木質表面材の材質及び厚さを選定したが、板材の長さ、板材の幅、スパン、及び、スパン中央に作用する集中荷重の条件は、その一例に過ぎず、同等の材料及び厚さの木質表面材が選定できるのであれば、この荷重条件に制限されるものではない。したがって、本発明の下限値である最大撓み量0.0013mmの条件で得られる木質表面材の材料及び厚さと、例えば、板材の長さを350mm、板材の幅を100mm(板幅を2倍)、スパン300mm、スパン中央に作用する集中荷重Pを0.1Nにしたときの最大撓み量0.00065mm(0.0013mmの0.5倍)の条件で得られる木質表面材の材料及び厚さとは、条件が異なるものの選定される木質表面材は実質的には同じものであり、このような場合も含めて発明の範囲とするものである。
本発明による木質床材において、第1の発明に係る衝撃吸収材は、アスカーC硬度40度〜50度かつ厚み6mm以上であることを条件に、第2の発明に係る衝撃吸収材は、アスカーC硬度9度〜50度かつ厚み7mm以上であることを条件に、任意である。好ましくは、合成樹脂発泡体またはゴム発泡体である。合成樹脂発泡体には、例として、ポリエチレン系樹脂発泡体(例えば、ポリエチレン樹脂発泡体、ポリエチレンビニルアルコール樹脂発泡体、ポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体)、ポリスチレン系樹脂発泡体、ウレタン発泡体、またはこれら2種以上の樹脂を配合した樹脂発泡体等を挙げることができる。ゴム発泡体には、例として、合成ゴム発泡体、天然ゴム発泡体を挙げることができる。
本発明者らの実験では、第1の発明に係る衝撃吸収材のアスカーC硬度が40度未満の場合、第2の発明に係る衝撃吸収材のアスカーC硬度が9度未満の場合、衝撃吸収材の厚さによっては、前記高衝撃時に、衝撃吸収材が前述したエネルギ吸収限界状態となり、衝撃時のG値が100Gを超えることがある。
また、好ましくは、木質フロアの歩行感を考慮すると、第2の発明に係る衝撃吸収材のアスカーC硬度は20度以上であることが好ましい。一方、第1及び第2の発明において、衝撃吸収材のアスカーC硬度が、50度を超えた場合には、高衝撃時に、衝撃吸収材は、衝撃力反発状態になるため、衝撃時のG値が100Gを超えることがある。
さらに、第1の発明に係る衝撃吸収材の厚さが、6mm未満の場合、第2の発明に係る衝撃吸収材の厚さが、7mm未満の場合、前記高衝撃時に、衝撃吸収材が前述したエネルギ吸収限界状態となる。
特に、発明者の後述する試験結果から、第2の発明において、衝撃吸収材の厚さを7mm以上とした場合には、特に、木質表面材の最大撓み量が、0.0166mm以上で、高衝撃における衝撃時のG値が低下することがわかっている。すなわち、この場合、高衝撃時における木質表面材の撓みによるエネルギ吸収効果をさらに効果的に発現するができると考えられる。さらに、衝撃吸収材の厚さを9mm以上、木質表面材の最大撓み量が、0.0166mm以上としたときには、さらに、高い衝撃時における木質表面材の撓みよるエネルギ吸収効果と、衝撃吸収材が圧縮されることによるエネルギ吸収効果の相乗効果により、高衝撃における衝撃時のG値が70Gを下回ることがある。
さらに、これらの衝撃吸収材の厚さの上限は、50mmであることが好ましく、より好ましくは、15mmである。衝撃吸収材の厚さが、50mmを超えた場合には、木質床材の施工に実用的ではない。また、発明者の実験及び経験から、衝撃吸収材の厚さが15mmを越えてもそれ以上の衝撃吸収性能の改善が期待できない場合がある。
なお、本発明において、アスカーC硬度とは、高分子計器株式会社製のゴム硬度計で測定するゴム等の硬さの測定値として広く知られている硬さの数値であり、アスカー(高分子計器)C型、SRIS(日本ゴム協会規格)0101に準拠する規格である。このアスカーC硬度を計測する硬度計は、直径5.08mm、最大高さ2.54mmの球形状の押針をスプリング荷重が0度のとき55g、100度のとき855gの力で試料の表面に押付けて変形を与え、試料の抵抗力とスプリングの力がバランスした状態での押針の押込み深さをもとに硬度を測定するものである。測定方法は計器を両手で垂直に保持し、水平に置いた試料の表面に計器の加圧面を押付け、そのときの目盛り板上の指針の位置から読取る。
本発明によれば、これまでの評価基準の2倍以上の衝撃エネルギが木質フロアに付与された場合であっても、この衝撃エネルギを吸収し、衝撃時のG値を100G以下となる木質フロアを得ることができる。
本願の第1及び第2の発明に係る形態の木質フロアを構成する木質床材の一例を示す模式図。 本発明に係る形態の木質フロアを構成する木質表面材の選定の一例となる最大撓み量を説明するための図。 図1に示す木質床材を床下地面に配置した木質フロアの一例を示す模式図であり、(a)は、製造された木質床材を床下地面に配置した木質フロアの一例を示す模式図、(b)は、木質フロアを床下地面で、木質床材を製造し、木質フロアとした一例を示す模式図。 実施例および比較例で採用した衝撃時のG値の測定方法を説明するための図。 実施例C、D及び比較例C、Dの木質フロアに係る衝撃吸収材のアスカーC硬度と衝撃時のG値との関係を示した図。 実施例E〜H及び比較例E〜Hの木質フロアに係る衝撃吸収材のアスカーC硬度と衝撃時のG値の関係を示した図。 木質フロアに衝撃エネルギを吸収させることができる形態を説明するための図であり、(a)は、衝撃吸収材に衝撃エネルギを吸収させる第1の形態の概念図、(b)は、木質表面材に衝撃エネルギを吸収させる第2の形態の概念図。
以下、実施の形態に基づき本願の第1及び第2の発明を説明する。図1は、本願の第1及び第2の発明に係る形態の木質フロアを構成する木質床材の一例を示す模式図である。図2は、本発明に係る形態の木質フロアを構成する木質表面材の選定の一例となる最大撓み量を説明するための図である。図3は、図1に示す木質床材を床下地面に配置した木質フロアの一例を示す模式図であり、(a)は、製造された木質床材を床下地面に配置した木質フロアの一例を示す模式図、(b)は、木質フロアを床下地面で木質床材を製造し、木質フロアとした一例を示す模式図である。
この例において、木質床材10は、木質表面材11と、その裏面に積層した衝撃吸収材12と、を備える。各積層界面には従来の木質床材で用いられている適宜の接着剤が塗布されて、全体が積層一体化している。木質床材10の厚さは9〜50mm程度である。
木質表面材11は、長さL350mm、幅50mmの板材を、スパン300mmで支持し、スパン中央に集中荷重を0.1N作用させたときの前記板材の最大撓み量が、第1の発明に係る場合は、0.0013mm〜0.0214mmとなるような板材の材料及び厚さと同じ材料及び同じ厚さからなり、第2の発明に係る場合は、0.0013mm〜0.5mmとなるような板材の材料及び厚さと同じ材料及び同じ厚さからなる。これらの関係は、前記曲げ荷重の条件を再現した曲げ試験により、実験的に求めてもよく、木質表面材が以下の条件で弾性変形するのであれば、以下に示す、一般的な撓み量を演算する式1により、簡易的に求めてもよい。なお、図2は、式1の各パラメータを表すものである。なお、ここでは、板材の長さLを350mmとする。
y=P×L/(4×h×b×E)・・・(式1)
ここで、y:最大撓み量(スパン中央における撓み量)[mm]
P:スパン中央に作用する集中荷重[N](なお、図2に示すようにPは、スパン中央において集中した荷重であり、幅方向には均等に分布した荷重)
L:スパン[mm](なお、スパンは、両側単純支持梁の支持点S1、S2間の距離であり、板材はこの間に配置されていればよい。)
b:板材の幅[mm]
h:板材の厚さ[mm]
E:板材の曲げヤング率[N/mm
さらに、式1を変形し、以下の式2を得る。
×E=P×L/(4×b×y)・・・(式2)
ここで荷重条件は、スパン:300mm、板材の幅:50mm、スパン中央に作用する集中荷重P:0.1Nとしたときに、第1の発明は、最大撓み量が、0.0013mm〜0.0214mmの範囲となる条件であり、第2の発明は、最大撓み量が、0.0013mm〜0.5mmの範囲となる条件であるから、これらの値を式2に代入して、以下の条件1−1及び条件2、又は条件1−2及び条件2が得られる。なお、支持梁との接触部からの板材の端部までの長さは、それぞれ25mmである。
0.1×300/(4×50×0.0214)≦h×E・・・(条件1−1)
0.1×300/(4×50×0.5)≦h×E・・・(条件1−2)
×E≦0.1×300/(4×50×0.0013)・・・(条件2)
板材の曲げヤング率は、木質表面材の木質材料の物性値(材質に依存した値)であることから、この条件1−1及び条件2(または条件1−2及び条件2)を満たす曲げヤング率及び板厚の条件を算出し、この算出された曲げヤング率の木質材料および板厚と同一の木質材料及び同一の厚さの木質表面材を選定し、これを木質表面材11とすればよい。なお、木質表面材から板材を採取するときの木取りに関係なく、最大撓み量が前述した最大撓み量の条件を満たせばよい。
従って、木質表面材11は、条件1−1または条件1−2と、条件2とを共に満たすものであれば、インシュレーションボード、MDF、HDF、ハードボード等の木質繊維板、合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB)、LVL、集成材、無垢材等いずれであってもよい。木質表面材11は、さらに、長方形状や、正方形状でもよく、表面が化粧用に印刷する場合や、化粧単板、化粧シート、突板のような表面化粧材11aが貼着されていても良く、さらには、所定の最大撓み量を得るために、木質表面材11の裏面に所定の間隔で、断面が矩形状、三角形状等の溝を短手方向もしくは長手方向、またはこれら両方向に沿って設けてもよい。この場合には、表面化粧材11aを含む木質表面材11が、前述した最大撓み量の条件を満たせば良い。
たとえば、木質表面材11の木質材料として木質繊維板(MDF)を選定した場合には、材料のばらつきなどもあり、MDFの曲げヤング率は、4000〜4740[N/mm]の範囲となることから、第1の発明の場合、前記最大撓みの範囲を満たす(条件1−1及び条件2を満たす)木質表面材の厚さは、例えば、5.4mm(5.403mmを四捨五入した値)〜13.5mmの範囲を含むこととなり、第2の発明の場合、前記最大撓みの範囲を満たす(条件1−2及び条件2を満たす)木質表面材の厚さは、例えば、2.7mm〜13.5mmの範囲を含むこととなる。以下の実施例では、この木質材料及び厚さの選定方法に、この演算方法を採用しているが、この方法に限定されず、FEM等の数値解析などを利用してもよい。
なお、実験的に求める場合には、図2に示すように、長さ350mm、幅50mmの板材を、スパン300mmで支持し、試験装置などでスパン中央に、集中荷重を0.1N作用させ、スパン中央における板材の変位量を測定することにより、板材の最大撓み量yとして得ることができる。
衝撃吸収材12は、第1の発明の場合、アスカーC硬度40度〜50度かつ厚み6mm以上の合成樹脂発泡体またはゴム発泡体であり、第2の発明の場合、アスカーC硬度9度〜50度かつ厚み9mm以上の合成樹脂発泡体またはゴム発泡体である。また、衝撃吸収材12のアスカーC硬度は、衝撃吸収材の材質や炭酸カルシウムなどの添加剤または発泡倍率等を変更することにより調整することができる。また、2種以上の樹脂を配合する場合には、その配合割合を変更することで調整できる。
裏面材を設けた場合には、裏面材として、厚さ1mm以上の、MDF、HDF、インシュレーションボード、ハードボード等の木質繊維板、合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB)、LVL、集成材、無垢材、合成樹脂板、金属板、紙等を挙げることができる。
このように構成された木質床材10は、床下地面に配置して木質フロア1とされる。具体的には、図3(a)に示すように、木質床材10を、床下地面に敷き詰めて木質フロア1を構築してもよく、図3(b)に示すように、床下地面に、衝撃吸収材12を敷設し、衝撃吸収材12の上に木質表面材11の順に敷設して、木質フロア1としてもよい。
このようにして構成された、木質フロア1は、衝撃時に、衝撃荷重により木質表面材をほとんど撓ませず、衝撃吸収材12に衝撃荷重を分散して吸収させることもできるが、木質表面材を積極的に撓ませることにより衝撃エネルギを吸収することもできる。この結果、これまでの評価基準の2倍以上の衝撃エネルギが木質フロアに作用した場合であっても、この衝撃エネルギを吸収し、衝撃時のG値を100G以下とすることができる。
以下、実施例と比較例により本発明を説明する。なお、以下、本発明の実施例として、実施例A〜Jでは、床下地面を合板下地面として評価したが、本発明の床下地面は、これに限定されるものではない。また、以下に示す最大撓み量の導出には、全て前述した式1を用いたが方法に限定されるわけではない。なお、実施例A、C、E、及びIは、第1の発明に係る実施例であり、実施例B、D、F〜H、及びJは、第2の発明に係る実施例である。また、以下に示す実施例及び比較例で用いた、木質表面材(MDF等)において、同じ厚さのMDF等は、同じ曲げヤング率であるので、同じ最大撓み量である。なお、確認的に、上述した実験により、最大撓み量を測定しており、ヤング率から求めた値も、実験的に測定した値も同じ値となっていることを確認している。すなわち、最大撓み量は、木質表面材が弾性変形の範囲における撓み量であることを確認している。
[実施例A(第1の発明):木質表面材の最大撓み量]
[実施例A1(第1の発明)]
以下に示すようにして、木質フロアの試験体を製作した。木質表面材として13.5mm厚のMDF、衝撃吸収材としてアスカーC硬度50度であり6mm厚のポリエチレン樹脂発泡体を接着して、厚さ19.5mmの木質床材とした。さらに、後述する図4に示す303mm×606mm、厚さ11mmの合板下地31の表面を床下地面とし、この床下地面(合板下地31の表面)の中央に、100mm×100mmの木質床材10を敷設して、木質フロアの試験体とした。なお、13.5mm厚のMDF(曲げヤング率E、4100[N/mm])を、長さ350mm、幅50mmの板材を、スパン300mmで支持し、スパン中央に集中荷重を0.1N作用させたときには、前述した式1を用いた演算により、最大撓み量は、0.0013mmとなる。
施工された木質フロアの衝撃時のG値をJIS A6519に準じて測定した。繰り返しになるが、ヘッドモデルが床に衝突したときの加速度計に出力される加速度の最大値を衝撃時のG値という。ただし、JIS A6519の「床の硬さ試験」の測定方法は、落下高さを200mmとしているが、ここでは、落下高さ460mmとした。すなわち、これまでの測定方法における衝撃エネルギの2.3倍の衝撃エネルギを木質フロアに付与した。また、測定に当たっては、図4に示すように、コンクリート床20の上に図示の寸法の木枠(試験台)30を配置し、この木枠30の上部の中央に、木質床材10が位置するように木質床材10を配置して、木質フロア(木質床材10と合板下地31の組合せ)を製作した。木質フロアにおける前記木枠30の中央根太32の中央部に対応する箇所を衝撃点Pとし、そこに測定装置(不図示)が落ちるようにした。その結果を表1に示した。
[実施例A2及びA3(第1の発明)]
実施例A1と同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として、実施例A2、A3の順に、10.8mm厚のMDF(曲げヤング率E、4000[N/mm])、5.4mm厚のMDF(曲げヤング率E、4000[N/mm])を用いた点であり、木質表面材の最大撓み量は、0.0027mm、0.0214mmとなる。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表1に示した。
[実施例A4及びA5(第1の発明)]
実施例A1と同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として、実施例A4、A5の順に、10.8mm厚のMDF、5.4mm厚のMDFを用いた点であり、木質表面材の最大撓み量は、それぞれ0.0027mm、0.0214mmとなる。また、衝撃吸収材として、アスカーC硬度40度、6mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表1に示した。
[比較例A1〜A3]
実施例A1と同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として2.7mm厚のMDF(曲げヤング率E、4740[N/mm])を用いた点であり、木質表面材の最大撓み量は、0.145mmとなる。また、衝撃吸収材として、比較例A1〜A3から順に、アスカーC硬度9度のウレタン樹脂発泡体、アスカーC硬度40度のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、アスカーC硬度70度のポリエチレン樹脂発泡体を用いた点であり、これらの厚さはすべて6mmである。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表1に示した。
Figure 0005244928
[評価]
表1に示すように、比較例A1〜A3の木質フロアと比較して、最大撓み量が0.0214mm以下の木質表面材を持つ実施例A1〜A5の木質フロアは、衝撃時のG値が、99G以下と小さくなっており、この結果から、最大撓み量が0.0214mm以下の木質表面材を用いることが、衝撃吸収性を向上するための条件といえる。また、比較例A1〜A3の木質フロアの如く最大撓み量が0.145mmの木質表面材を用いた場合には、衝撃吸収材のアスカーC硬度を変更しても、衝撃時のG値が100G以下となることはなかった。
比較例A1〜A3の衝撃時のG値が、実施例A1〜A5のものに比べて大きかったのは、衝撃時に、比較例A1〜A3の木質表面材の最も撓む部分における衝撃吸収材が、これ以上収縮し難いほどの厚さにまで局所的に圧縮され、衝撃エネルギが衝撃吸収材に吸収され難い状態(いわゆる「底打ち状態」)なったからであると考えられる。
[実施例B(第2の発明):木質表面材の最大撓み量]
[実施例B1〜B3(第2の発明)]
実施例A1と同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として、実施例B1〜B3の順に、13.5mm厚のMDF、5.4mm厚のMDF、2.7mm厚のMDFを用いた点であり、木質表面材の最大撓み量は、それぞれ0.0013mm、0.0214mm、0.145mmとなる。また、衝撃吸収材として、アスカーC硬度40度、9mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表2に示した。
[実施例B4〜B6(第2の発明)]
実施例A1と同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として、実施例B4〜B6の順に、13.5mm厚のMDF、5.4mm厚のMDF、2.7mm厚のMDFを用いた点であり、木質表面材の最大撓み量は、それぞれ0.0013mm、0.0214mm、0.145mmとなる。また、衝撃吸収材として、アスカーC硬度9度、9mm厚のウレタン樹脂発泡体を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表2に示した。
[比較例B1]
実施例A1と同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として、0.6mm厚のMDF(曲げヤング率E、4000[N/mm]、最大撓み量15.6mm)を用い、衝撃吸収材として、アスカーC硬度40度、9mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表2に示した。
Figure 0005244928
[評価]
表2に示すように、比較例B1の木質フロアと比較して、最大撓み量が0.145mm以下の木質表面材を持つ実施例B1〜B6の木質フロアは、衝撃時のG値が、91G以下と小さくなっており、この結果から、第2の発明の場合、少なくとも最大撓み量が0.145mm以下の木質表面材を用いれば、衝撃吸収性を向上する。なお、さらに、後述する実施例Jに示すように、衝撃吸収性を向上するための木質表面材の最大撓み量の上限値は、0.5mmであることが、発明者の実験で明らかになった。比較例B1の衝撃時のG値が、実施例B1〜B6のものに比べて大きかったのは、第1の発明と同じ理由(底打ち状態)であると考えられる。
[実施例C(第1の発明)及び実施例D(第2の発明):衝撃吸収材のアスカーC硬度]
[実施例C(第1の発明)]
実施例A1と同じように木質フロアの試験体を2体製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として5.4mm厚(最大撓み量0.0214mm)のMDFを用い、それぞれ、6mm厚の衝撃吸収材として、アスカーC硬度40度のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体と、アスカーC硬度50度のポリエチレン樹脂発泡体とを用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表3及び図5に示した。
[比較例C]
実施例A1と同じように木質フロアの試験体を2体製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として5.4mm厚(最大撓み量0.0214mm)のMDFを用い、それぞれ、6mm厚の衝撃吸収材として、アスカーC硬度9度のウレタン樹脂発泡体と、衝撃吸収材としてアスカーC硬度70度のポリエチレン樹脂発泡体とを用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表3及び図5に示した。
[実施例D(第2の発明)]
実施例B1と同じように木質フロアの試験体を2体製作した。実施例B1と相違する点は、木質表面材として5.4mm厚(最大撓み量0.0214mm)のMDFを用い、それぞれ、9mm厚の衝撃吸収材として、アスカーC硬度9度のウレタン樹脂発泡体と、アスカーC硬度40度のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体とを用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表3及び図5に示した。
[比較例D1]
実施例B1と同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例B1と相違する点は、木質表面材として5.4mm厚(最大撓み量0.0214mm)のMDFを用い、9mm厚の衝撃吸収材として、アスカーC硬度70度のポリエチレン樹脂発泡体とを用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表3及び図5に示した。
[比較例D2]
実施例B1と同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例B1と相違する点は、木質表面材として2.7mm厚(最大撓み量0.145mm)のMDFを用い、12mm厚の衝撃吸収材として、アスカーC硬度90度の合成ゴム系樹脂とを用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表3に示した。
Figure 0005244928
[評価]
表3及び図5に示すように、第1の発明の場合、比較例Cの木質フロアと比較して、アスカーC硬度40度及び50度の衝撃吸収材を持つ実施例Cの木質フロアは、衝撃時のG値が、97G以下と小さくなっており、この結果から、最大撓み量が0.0214mm以下の木質表面材を用いた場合、衝撃吸収材のアスカーC硬度を40度〜50度にすることが、衝撃吸収性を向上するための条件といえる。また、第2の発明の場合、比較例D1及びD2の木質フロアと比較して、アスカーC硬度9度及び40度の衝撃吸収材を持つ実施例Dの木質フロアが、衝撃時のG値が、81G以下と小さくなっていた。そして、図5からも明らかなように、第2の発明の場合には、衝撃吸収材のアスカーC硬度が9度〜50度であれば、衝撃吸収性を確実に向上できると考えられる。このように、実施例C及びDの場合には、図5中の(b)に示すように、高衝撃時に、木質表面材の撓みによるエネルギ吸収効果と、衝撃吸収材の圧縮されることによるエネルギ吸収効果の相乗効果により、高衝撃時におけるG値が下回ることがある。特に、第2の発明の場合には、図5に示すように、アスカーC硬度が、20度〜50度でその効果は顕著である。
なお、前述した実施例A1及びA2の結果を第2の発明に係る参考例として参照した場合、アスカーC硬度50度、厚さ6mmの衝撃吸収材であっても、衝撃時のG値が99G以下であることから、第2の発明において、アスカーC硬度50度、厚さ9mmの衝撃吸収材を用いた場合、衝撃時のG値が100G以下になることは、明らかである。後述する実施例Jの表7に示すように、実際にこの条件の木質フロアを準備して衝撃時のG値を測定した場合には、その値は77Gとなっていることがわかった。なお、この条件における衝撃時のG値を、図5に○で印した。
比較例Cの衝撃吸収材のアスカーC硬度が9度の場合、図5中の(a)に示すように、前述したエネルギ吸収限界状態となるため、衝撃吸収材がこれ以上に収縮し難いほどの厚さにまで圧縮されてしまい、木質床材に衝撃エネルギが吸収され難い状態となったと考えられる。この結果、衝撃時のG値が100Gを超えたものと考えられる。一方、比較例C及びD1,D2に示すように、衝撃吸収材のアスカーC硬度が、50度を超えた場合(70度の場合)には、図5中の(c)に示すように、高衝撃時に、衝撃吸収材は、前述した衝撃力反発状態になるため、衝撃時のG値が100Gを超えたものと考えられる。
[参考例]
さらに、参考例として、以下の参考例1〜7において、官能試験も行った。参考例1と同じようにして、木質フロアを製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として0.6mm厚のMDFを用いた点と、それぞれ順にアスカーC硬度が9度、20度、30度、40度、70度、90度、又は100度の衝撃吸収材を用いた点であり、衝撃吸収材の材質及び厚さは表4に示すとおりである。なお、衝撃吸収材の材質でアスカーC硬度が異なるものは、発泡倍率が相違する。
これらの木質フロアに対して、6人の被験者により靴を脱いだ状態での踏み心地の官能試験を行った。踏み心地が良いと感じた場合を1点、踏み心地が悪いと感じた場合を0点とし、6人の被験者の合計点を評価基準とした。この結果を表4に示した。
Figure 0005244928
[評価]
表4に示すように、参考例1の衝撃吸収材のアスカーC硬度が9度の場合は、踏み心地の評価基準である合計点が最も低い。これは、衝撃吸収材が柔らかすぎることによると考えられる。このことから、第2の発明の場合には、衝撃吸収材のアスカーC硬度は、20度以上であることがより好ましく、この場合には、踏み心地が良く、木質フロアの歩行感も良好であると考えられる。
[実施例E(第1の発明)及び実施例F〜H(第2の発明):衝撃吸収材の厚さ]
[実施例E(第1の発明)]
実施例A1と同じように木質フロアの試験体を3体製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として5.4mm厚(最大撓み量0.0214mm)のMDFを用い、衝撃吸収材の厚さを6mm、9mm、15mmのポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体(アスカーC硬度40度)を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表5及び図6に示した。
[比較例E]
実施例A1と同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として5.4mm厚(最大撓み量0.0214mm)のMDFを用い、衝撃吸収材の厚さを3mmのポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体(アスカーC硬度40度)を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表5及び図6に示した。
[実施例F(第2の発明)]
実施例B1と同じように木質フロアの試験体を2体製作した。実施例B1と相違する点は、木質表面材として2.7mm厚(最大撓み量0.145mm)のMDFを用い、衝撃吸収材の厚さを9mm、15mmとし、ウレタン樹脂発泡体(アスカーC硬度9度)を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表5及び図6に示した。
[比較例F]
実施例B1と同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例B1と相違する点は、木質表面材として2.7mm厚(最大撓み量0.145mm)のMDFを用い、衝撃吸収材の厚さを3mm、6mmのウレタン樹脂発泡体(アスカーC硬度9度)を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表5及び図6に示した。
[実施例G(第2の発明)]
実施例B1と同じように木質フロアの試験体を2体製作した。実施例B1と相違する点は、木質表面材として2.7mm厚(最大撓み量0.145mm)のMDFを用い、衝撃吸収材の厚さを9mm、15mmとし、ポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体(アスカーC硬度40度)を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表5及び図6に示した。
[比較例G]
実施例B1と同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例B1と相違する点は、木質表面材として2.7mm厚(最大撓み量0.145mm)のMDFを用い、衝撃吸収材の厚さを3mm、6mmのポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体(アスカーC硬度40度)を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表5及び図6に示した。
[実施例H(第2の発明)]
実施例B1と同じように木質フロアの試験体を2体製作した。実施例B1と相違する点は、木質表面材として5.4mm厚(最大撓み量0.0214mm)のMDFを用い、衝撃吸収材の厚さを9mm、15mmとし、ウレタン樹脂発泡体(アスカーC硬度9度)を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表5及び図6に示した。
[比較例H]
実施例B1と同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例B1と相違する点は、木質表面材として5.4mm厚(最大撓み量0.0214mm)のMDFを用い、衝撃吸収材の厚さを3mm、6mmのウレタン樹脂発泡体(アスカーC硬度9度)を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表5及び図6に示した。
Figure 0005244928
[評価]
表5及び図6に示すように、第1の発明の場合、比較例Eの木質フロアと比較して、6mm以上の厚さの衝撃吸収材を持つ実施例Eの木質フロアは、衝撃時のG値が、93G以下と小さくなっており、この結果から、第1の発明では、衝撃吸収材の厚さが6mm以上の木質表面材を用いることが、衝撃吸収性を向上するための条件といえる。同様に、第2の発明の場合、比較例F〜Hの木質フロアと比較して、9mm以上の厚さの衝撃吸収材を持つ実施例Eの木質フロアは、いずれも衝撃時のG値が、91G以下と小さくなっており、この結果から、第2の発明では、少なくとも衝撃吸収材の厚さが9mm以上の木質表面材を用いれば、衝撃吸収性を向上する(図6中の(b)参照)。なお、さらに、後述する実施例Jに示すように、衝撃吸収性を向上するための衝撃吸収材の厚さの下限値は、7mmであることが、発明者の実験で明らかになった。
また、図6に示すように、本発明のアスカーC硬度の範囲で衝撃吸収材の厚さが15mmを超えた場合には、それ以上の衝撃吸収性能が得られない可能性があり、衝撃吸収材の厚さが15mm以上の場合には、オーバースペックとなると考えられる。さらに、各比較例E〜Hの衝撃時のG値が、これに対応する実施例E〜Hに比べて大きかったのは、図6中の(a)に示すように、前述したエネルギ吸収限界状態となったためであると考えられる。
[実施例I(第1の発明):確認試験]
さらに、第1の発明の範囲を満たす条件で、以下の確認試験を行った。具体的には、以下の表6に示す最大撓み量の木質表面材と、以下の表6に示すアスカーC硬度および厚みの衝撃吸収材とを組み合わせて木質フロアの試験体を作製した。なお、木質表面材として、5.4mm厚のMDFからなる木質表面材(最大撓み量0.0214mm)と、5.4mm厚のMDFに0.16mmの樹脂シートで化粧した木質表面材(最大撓み量0.0166mm)と、13.5mmのMDFからなる木質表面材(最大撓み量0.0013mm)と、を準備した。また、表6に示すアスカーC硬度9度、40度、50度の衝撃吸収材として、各々、ウレタン樹脂発泡体、ポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体を準備した。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表6に示した。なお、実施例Iは、上述した第1の発明に係る実施例に示した範囲を確認するために行った試験である。
[比較例I]
実施例Iと同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例Iと相違する点は、衝撃吸収材として、ウレタン樹脂発泡体(アスカーC硬度9度)、またはポリエチレン樹脂発泡体(アスカーC硬度70度)を用いた点であり、厚さを表6に示す厚さにした点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表6に示した。
Figure 0005244928
[評価]
実施例Cおよび比較例Cの評価と同様に、表6に示すように、第1の発明の範囲である、木質表面材の最大撓み量が、0.0013mm〜0.0214mmの範囲であり、アスカーC硬度40度〜50度かつ厚み6mm以上の範囲にある実施例Iの木質フロアは、すべて、衝撃時のG値は100Gを下回った。
一方、比較例Iに示すように、衝撃吸収材のアスカーC硬度が9度の場合、高衝撃時に、これ以上に収縮し難いほどの厚さにまで圧縮されてしまい、木質床材に衝撃エネルギが吸収され難い状態(エネルギ吸収限界状態)となり、衝撃吸収材のアスカーC硬度が、70度の場合には、高衝撃時に、衝撃吸収材の衝撃力による反発が大きい状態(衝撃力反発状態)になるため、衝撃時のG値が100Gを超えたと考えられる。
[実施例J(第2の発明)]
さらに、第2の発明の範囲を満たす条件で、以下の確認試験を行った。具体的には、以下の表7に示す最大撓み量の木質表面材と、以下の表7に示すアスカーC硬度および厚みの衝撃吸収材とを組み合わせて木質フロアの試験体を作製した。なお、木質表面材として、8.7mm厚の裏面に幅1.4mm、深さ7.5mmの溝を15mm間隔でいれた合板に、0.16mmの樹脂シートで表面を化粧した木質表面材(短手方向に沿って溝を形成したときの最大撓み量0.5mm)と、木質表面材として、8.7mm厚の裏面に幅1.4mm、深さ7.0mmの溝を15mm間隔でいれた合板からなる木質表面材(短手方向に沿って溝を形成したときの最大撓み量0.271mm)と、5.4mm厚のMDFからなる木質表面材(最大撓み量0.0214mm)と、5.4mm厚のMDFに0.16mmの樹脂シートで化粧した木質表面材(最大撓み量0.0166mm)と、13.5mm厚のMDFからなる木質表面材(最大撓み量0.0013mm)と、を準備した。また、表7に示すアスカーC硬度9度、40度、50度の衝撃吸収材として、順次、ウレタン樹脂発泡体、ポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体を準備し、7mm、9mm、15mmのいずれかの厚さの衝撃吸収材を用いた。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表7に示した。
なお、実施例Jのうち、木質表面材の最大撓み量が0.5mmのもの、衝撃吸収材が7mmのものは、実施例F〜Hに示した範囲から新たにその最適範囲をより広げるべく試験を行ったものであり、その他の衝撃吸収材が15mmのものは、実施例F〜Hに示した範囲内の試験である。
[比較例J]
実施例Jと同じように木質フロアの試験体を製作した。実施例Jと相違する点は、第2の発明の範囲をから外れる条件、すなわち、衝撃吸収材の厚みを6mmとした点、または、衝撃吸収材にポリエチレン樹脂発泡体(アスカーC硬度70度)を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表8に示した。
Figure 0005244928
Figure 0005244928
[評価]
(木質表面材の最大撓み量の最適範囲)
表7及び表8に示すように、衝撃吸収材が、アスカーC硬度9度〜50度かつ厚み7mm以上の条件を満たせば、最大撓み量が0.5mm以下の木質表面材を持つ実施例Gの木質フロアは、衝撃時のG値が、100G未満と比較例Jに比べて小さくなっている。この結果から、第2の発明の場合、最大撓み量が0.5mm以下の木質表面材であることが、衝撃吸収性を向上するための条件といえる。さらに、木質表面材の最大撓み量が、0.0166mm以上では、高衝撃時のG値が60G以下にまで低下する場合がある。すなわち、この場合、高衝撃時においける木質表面材の撓みよるエネルギ吸収効果がさらに効果的に発現することができると考えられる。
(衝撃吸収材のアスカーC硬度の最適範囲)
表7及び表8に示すように、第2の発明の場合、実施例D及び比較例Dに示したのと同じように、衝撃吸収材のアスカーC硬度が9度〜50度であれば、衝撃吸収性を確実に向上できたことが確認された。
(衝撃吸収材の厚さの最適範囲)
表7及び表8に示すように、実施例Jの木質フロアと、比較例Jの木質フロアと比較して、7mm以上の厚さの衝撃吸収材を有する実施例J木質フロアは、いずれも衝撃時のG値が、100G未満と比較例Jに比べて小さくなっており、衝撃吸収材の厚さが7mm以上の衝撃吸収材を用いることが、衝撃吸収性を向上するための条件といえる。
さらに、衝撃吸収材の厚さが6mm以下となる比較例Jの衝撃時のG値が、実施例Jのものに比べて大きかったのは、実施例F〜H、比較例F〜Hで示したのと同様に、前述したエネルギ吸収限界状態となったためであると考えられる。さらに、衝撃吸収材の厚さを9mm以上、木質表面材の最大撓み量が、0.0166mm以上としたときには、高い衝撃時における木質表面材の撓みよるエネルギ吸収効果と、衝撃吸収材が圧縮されることによるエネルギ吸収効果の相乗効果により、高衝撃における衝撃時のG値がさらに低減される場合があるといえる。
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
本発明では、衝撃吸収材の機械的特性(アスカーC硬度)が、発明の効果である衝撃時のG値に寄与するものであり、実施例では、衝撃吸収材の材料の一例として、ポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体を用いたが、同じ厚さで同じアスカーC硬度のポリエチレン系樹脂(例えば、ポリエチレンビニルアルコール樹脂発泡体)であれば、略同じ衝撃時のG値が得られる。
1…木質フロア、10…木質床材、11a…表面化粧材11a、11…木質表面材、12…衝撃吸収材、20…コンクリート床、30…木枠、31…合板下地、32…中央根太、33…試験台、A…試験体(木質フロア)、P…衝撃点

Claims (3)

  1. 木質表面材と、前記木質表面材の裏面に積層した衝撃吸収材とを少なくとも備えた衝撃吸収用木質床材であって、
    前記木質表面材は、長さ350mm、幅50mmの板材を、スパン300mmで支持し、スパン中央に集中荷重を0.1N作用させたときの前記板材の最大撓み量が、0.0013mm〜0.0214mmの範囲となるような板材の材料及び厚さと同じ材料及び同じ厚さからなり、
    前記衝撃吸収材は、アスカーC硬度40度〜50度かつ厚み6mm以上であり、
    JIS A6519に準拠して、該JIS A6519に規定する床の硬さ試験のヘッドモデルの落下高さ200mmを460mmにしたときの床の硬さを示す衝撃時のG値が、100G以下となることを特徴とする衝撃吸収用木質床材。
  2. 木質表面材と、前記木質表面材の裏面に積層した衝撃吸収材とを少なくとも備えた衝撃吸収用木質床材であって、
    前記木質表面材は、長さ350mm、幅50mmの板材を、スパン300mmで支持し、スパン中央に集中荷重を0.1N作用させたときの前記板材の最大撓み量が、0.0013mm〜0.5mmの範囲となるような板材の材料及び厚さと同じ材料及び同じ厚さからなり、
    前記衝撃吸収材は、アスカーC硬度9度〜50度かつ厚み7mm以上であり、
    JIS A6519に準拠して、該JIS A6519に規定する床の硬さ試験のヘッドモデルの落下高さ200mmを460mmにしたときの床の硬さを示す衝撃時のG値が、100G以下となることを特徴とする衝撃吸収用木質床材。
  3. 請求項1または2に記載の木質床材を床下地面に配置した衝撃吸収用木質フロア。
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