JP5242905B2 - 発光色変換部材の製造方法及び発光色変換部材 - Google Patents

発光色変換部材の製造方法及び発光色変換部材 Download PDF

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Description

本発明は、発光色変換部材の製造方法及びその製造方法で得られる発光色変換部材に関するものである。
近年、白色LEDは、白熱電球や蛍光灯に替わる次世代の光源として照明用途への応用が期待されている。
蛍光体を用いて波長変換するLED素子においては、LEDチップの発光面が蛍光体粉末を含む有機系バインダー樹脂によってモールドされている。このモールド部分をLEDチップから発せられた光が通過する際に、その一部または全部が蛍光体に吸収されて、別の波長に変換され、所望の光が発せられる。尚、発せられた光の一部が蛍光体に吸収される場合は、変換された光と透過光とが合わさって、所望の光が発せられる。
しかしながら、モールド部に樹脂を用いた場合、青色〜紫外線領域の高出力の短波長の光によって樹脂が劣化し変色を引き起こすという問題がある。また、空気中の水分が樹脂中に侵入し蛍光体を劣化させるという問題もある。
上記問題を解決するために、特許文献1及び2には、ガラス粉末と蛍光体粉末を含む材料を焼成することで、ガラス中に蛍光体を分散させた発光色変換部材が開示されている。
特開2005−11933号公報 特開2003−258308号公報
しかしながら、特許文献1及び2で開示されているようなガラス中に蛍光体を分散させた発光色変換部材の場合、高い発光効率が得られないことがあった。
本発明の目的は、発光効率の低下を抑えることが可能な発光色変換部材の製造方法及びその製造方法で得られる化学的に安定で発光効率の高い発光色変換部材を提供することである。
本発明者等は種々検討した結果、蛍光体粉末とガラス粉末とを含む材料の焼成時における蛍光体の劣化及び発光色変換部材への泡の残存が発光効率の低下を招く原因となっていることを見いだし、本発明を提案するに至った。
即ち、本発明の発光色変換部材の製造方法は、無機蛍光体粉末とSnO−P系ガラスからなる酸化物ガラス粉末とを含む発光色変換材料を焼成して発光色変換部材を製造する方法であって、SnO−P 系ガラスが、SnO 35〜80%、P 5〜40%、B 2〜30%、及び、MgO 0〜10%を含有し、かつ、該発光色変換材料を1気圧(1.013×105Pa)よりも低い気圧中で焼成することを特徴とする。
本発明の発光色変換部材の製造方法によれば、発光色変換材料を焼成する際に、蛍光体を劣化させることなくガラス中に分散でき、しかも、発光色変換部材中に残存する泡を少なくすることができる。それ故、このような方法で製造された本発明の発光色変換部材は、化学的に安定であり、しかも、光の散乱が少なく透過率が高くなるため、高い発光効率を有することができる。
本発明の発光色変換部材の製造方法は、無機蛍光体粉末と酸化物ガラス粉末とを含む発光色変換材料を、1気圧(1.013×105Pa)よりも低くして焼成しているため、焼成時に、蛍光体を酸化させる原因となる雰囲気中の酸素の量を少なくすることができ、蛍光体の劣化を防止しながら、ガラス中に無機蛍光体を分散させることができる。それ故、得られる発光色変換部材は、蛍光体の劣化が少なく、化学的に安定で、高出力の光に長期間曝されても変色を抑えることが可能となる。
また、焼成時に、ガラスが軟化して融着する際に生じる泡が抜けやすくなるため、焼成して得られる発光色変換部材は、気孔率(部材中に残存する泡の占める割合)が2%以下と小さくなる。それ故、得られる発光色変換部材は、光の散乱が少なく透過率が高くなり、高い発光効率を有する。
尚、本発明の発光色変換部材の製造方法において、焼成雰囲気を1気圧以上にして焼成すると、焼成時に、蛍光体が酸化されて劣化しやすくなったり、気孔率を2%以下にすることが難しくなり、高い発光効率を有する発光色変換部材が得難くなる。焼成雰囲気の気圧の好ましい範囲は0.9×105Pa以下であり、より好ましくは1000Pa以下であり、更に好ましくは200Pa以下であり、特に好ましくは0.001〜200Paである。
また、焼成雰囲気については、昇温、焼成及び降温の全ての焼成工程で焼成雰囲気を1気圧よりも低くして発光色変換材料を焼成してもよいし、焼成工程の中でも蛍光体の劣化が起こりやすい部分のみを1気圧より低くして焼成しても良い。
また、気孔率が2%より大きくなると、光の散乱が強くなり透過する光量が低下して部材の発光効率が低下しやすくなる。気孔率の好ましい範囲は1%以下、より好ましくは0.9%以下である。尚、本発明でいう気孔率とは、アルキメデス法により測定したかさ密度と真密度に基づき、(1−かさ密度/真密度)×100(%)で求めた値をいう。
本発明の製造方法において使用できる無機蛍光体粉末としては、一般的に市中で入手できるものであれば使用できる。無機蛍光体には、YAG系、酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、希土類酸硫化物、アルミン酸塩化物、ハロリン酸塩化物などからなるものがある。
YAG系蛍光体、酸化物蛍光体は、酸化物ガラス粉末と混合して焼成しても酸化されることはなく安定である。そのため、本発明の方法で発光色変換部材を製造する場合、部材中への泡の残存を抑制する効果を得ることができる。
また、窒化物、酸窒化物、硫化物、希土類酸硫化物、アルミン酸塩化物、ハロリン酸塩化物などの蛍光体は焼成時の加熱により、酸化されたり、ガラスと反応し、発泡や変色などの異常反応を起こしやすい。そのため、本発明の方法で発光色変換部材を製造する場合、部材中への泡の残存を抑制する効果に加え、蛍光体の劣化を防止する効果も得ることができる。
上記の無機蛍光体の中でも、特に、波長300〜500nmに励起帯を有し、波長380〜780nmに発光ピークを有するもの、特に、青色(波長440〜480nm)、緑色(波長500〜540nm)、黄色(波長540〜595nm)、赤色(波長600〜700nm)に発光するものを用いることが好ましい。
波長300〜440nmの紫外域の励起光を照射すると青色の蛍光を発する蛍光体としては、Sr5(PO43Cl:Eu2+、(Sr,Ba)MgAl1017:Eu2+、(Sr,Ba)3MgSi28:Eu2+を用いることができる。
波長300〜440nmの紫外域の励起光を照射すると緑色の蛍光を発する蛍光体としては、SrAl24:Eu2+、SrGa24:Eu2+、SrBaSiO4:Eu2+、CdS:In、CaS:Ce3+、Y3(Al,Gd)512:Ce2+、Ca3Sc2Si312:Ce3+、SrSiOn:Eu2+、ZnS:Al3+,Cu+、CaS:Sn2+、CaS:Sn2+,F、CaSO4:Ce3+,Mn2+、LiAlO2:Mn2+、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+、ZnS:Cu+,Cl-、Ca3WO6:U、Ca3SiO4Cl2:Eu2+、Sr0.2Ba0.7Cl1.1Al23.45:Ce3+,Mn2+、Ba2MgSi27:Eu2+、Ba2SiO4:Eu2+、Ba2Li2Si27:Eu2+、ZnO:S、ZnO:Zn、Ca2Ba3(PO43Cl:Eu2+、BaAl24:Eu2+を用いることができる。
波長440〜480nmの青色の励起光を照射すると緑色の蛍光を発する蛍光体としては、SrAl24:Eu2+、SrGa24:Eu2+、SrBaSiO4:Eu2+、CdS:In、CaS:Ce3+、Y3(Al,Gd)512:Ce2+、Ca3Sc2Si312:Ce3+、SrSiON:Eu2+を用いることができる。
波長300〜440nmの紫外域の励起光を照射すると黄色の蛍光を発する蛍光体としては、ZnS:Eu2+、Ba5(PO43Cl:U、Sr3WO6:U、CaGa24:Eu2+、SrSO4:Eu2+,Mn2+、ZnS:P、ZnS:P3-,Cl-ZnS:Mn2+を用いることができる。
波長440〜480nmの青色の励起光を照射すると黄色の蛍光を発する蛍光体としては、Y3(Al,Gd)512:Ce2+、Ba5(PO43Cl:U、CaGa24:Eu2+を用いることができる。
波長300〜440nmの紫外域の励起光を照射すると赤色の蛍光を発する蛍光体としては、CaS:Yb2+,Cl、Gd3GA412:Cr3+、CaGa24:Mn2+、Na(Mg,Mn)2LiSi4102:Mn、ZnS:Sn2+、Y3Al512:Cr3+、SrB813:Sm2+、MgSr3Si28:Eu2+,Mn2+、α−SrO・3B23:Sm2+、ZnS−CdS、ZnSe:Cu+,Cl、ZnGa24:Mn2+、ZnO:Bi3+、BaS:Au,K、ZnS:Pb2+、ZnS:Sn2+,Li+、ZnS:Pb,Cu、CaTiO3:Pr3+、CaTiO3:Eu3+、Y23:Eu3+、(Y、Gd)23:Eu3+、CaS:Pb2+,Mn2+、YPO4:Eu3+、Ca2MgSi27:Eu2+,Mn2+、Y(P、V)O4:Eu3+、Y22S:Eu3+、SrAl47:Eu3+、CaYAlO4:Eu3+、LaO2S:Eu3+、LiW28:Eu3+,Sm3+、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu2+,Mn2+、Ba3MgSi28: Eu2+,Mn2+を用いることができる。
波長440〜480nmの青色の励起光を照射すると赤色の蛍光を発する蛍光体としては、ZnS:Mn2+,Te2+、Mg2TiO4:Mn4+、K2SiF6:Mn4+、SrS:Eu2+、CaS:Eu2+、Na1.230.42Eu0.12TiSi411、Na1.230.42Eu0.12TiSi513:Eu3+、CdS:In,Te、CaAlSiN3:Eu2+、CaSiN3:Eu2+、(Ca,Sr)2Si58:Eu2+、Eu227を用いることができる。
尚、励起光の波長域や発光させたい色に合わせて複数の無機蛍光体粉末を混合して用いてもよい。例えば、紫外域の励起光を照射して、白色光を得たい場合は、青色、緑色、黄色、赤色の蛍光を発する蛍光体を混合して使用すればよい。
本発明の製造方法において使用する酸化物ガラス粉末には、無機蛍光体を安定に保持するための媒体としての役割がある。また、使用するガラスの組成系によって、発光色変換部材の色調が異なり、無機蛍光体粉末との反応性に差がでるため、種々の条件を考慮して使用するガラスの組成を選択する必要がある。さらにガラス組成に適した無機蛍光体の添加量や、部材の厚みを決定することも重要である。ガラスの軟化点が高くなると、材料の焼成温度も高くなるため、蛍光体が劣化して、発光効率の高い発光色変換部材を得にくくなる。本発明では、材料を低温で焼成するため、比較的容易に軟化点を低下させることが可能なSnO−P25系ガラスが選択される
ガラス粉末としてSnO−P25系ガラスを用いる場合、モル百分率で、SnO 35〜80%、P25 5〜40%、B23 〜30%、Al23 0〜10%、SiO2 0〜10%、Li2O 0〜10%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜10%の組成範囲からなるガラスを使用することが好ましい。上記範囲を決定した理由は次のとおりである。
SnOはガラスの骨格を形成すると共に、軟化点を下げる成分である。その含有量は35〜80%である。SnOの含有量が少なくなると、ガラスの軟化点が上昇する傾向にあり、発光色変換材料を低温で焼成し難くなり、蛍光体が劣化し易くなる。一方、含有量が多くなると、ガラス中にSnに起因する失透ブツが析出し、ガラスの透過率が低下する傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する発光色変換部材が得難くなる。また、ガラス化し難くなる。SnOのより好ましい範囲は50〜70%であり、さらに好ましくは55〜65%である。
25はガラスの骨格を形成する成分である。その含有量は5〜40%である。P25の含有量が少なくなると、ガラス化し難くなる。一方、含有量が多くなると、ガラスの軟化点が上昇する傾向にあり、発光色変換材料を低温で焼成し難くなり、蛍光体が劣化し易くなる。また、耐候性が著しく低下する傾向にある。P25のより好ましい範囲は10〜30%であり、さらに好ましくは15〜24%である。
尚、軟化点を低下させ、しかも、ガラスを安定化させるには、SnO/P25の値を、モル比で、0.9〜16の範囲にすることが好ましい。SnO/P25の値が0.9より小さくなると、ガラスの軟化点が上昇する傾向にあり、発光色変換材料を低温で焼成し難くなり、蛍光体が劣化し易くなる。また、耐候性が著しく低下する傾向にある。一方、SnO/P25の値が16より大きくなると、ガラス中にSnに起因する失透ブツが析出し、ガラスの透過率が低下する傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する発光色変換部材が得難くなる。SnO/P25のより好ましい範囲は1.5〜10であり、さらに好ましくは2〜5である。
23は蛍光体との反応を抑えると共に、耐候性を向上させる成分である。また、ガラスを安定化させる成分でもある。その含有量は〜30%である。B23の含有量が多くなると、ガラスの軟化点が上昇する傾向にあり、発光色変換材料を低温で焼成し難くなり、蛍光体が劣化し易くなる。B23のより好ましい範囲は2〜20%であり、さらに好ましくは4〜20%である。
Al23はガラスを安定化させる成分である。その含有量は0〜10%である。Al23の含有量が多くなると、ガラスの軟化点が上昇する傾向にあり、発光色変換材料を低温で焼成し難くなり、蛍光体が劣化し易くなる。Al23のより好ましい範囲は0〜7%であり、さらに好ましくは1〜5%である。
SiO2はAl23と同様にガラスを安定化させる成分である。その含有量は0〜10%である。SiO2の含有量が多くなると、ガラスの軟化点が上昇する傾向にあり、発光色変換材料を低温で焼成し難くなり、蛍光体が劣化し易くなる。また、ガラスが分相しやすくなる。SiO2のより好ましい範囲は0〜7%であり、さらに好ましくは0〜5%である。
Li2Oはガラスの軟化点を著しく低下させると共に、発光色変換部材にした際に蛍光体の発光効率を向上させる成分である。その含有量は0〜10%である。Li2Oの含有量が多くなると、ガラスが著しく不安定になりやすくガラス化し難くなる。Li2Oのより好ましい範囲は0〜7%であり、さらに好ましくは1〜5%である。
Na2Oはガラスの軟化点を低下させると共に、発光色変換部材にした際に蛍光体の発光効率を若干向上させる成分である。その含有量は0〜10%である。Na2Oの含有量が多くなると、ガラスが不安定になりやすくガラス化し難くなる。Na2Oのより好ましい範囲は0〜7%であり、さらに好ましくは0〜5%である。
2Oは、ガラスの軟化点を若干低下させると共に、発光色変換部材にした際に、蛍光体の発光効率を向上させる成分である。その含有量は0〜10%である。K2Oの含有量が多くなると、ガラスが不安定になりやすくガラス化し難くなる。K2Oのより好ましい範囲は0〜7%であり、さらに好ましくは1〜5%である。
尚、Li2O、Na2O及びK2Oを合量で0〜10%にすることが好ましい。これら成分の合量が10%より多くなると、ガラスが不安定になりやすくガラス化し難くなる。Li2O+Na2O+K2Oのより好ましい範囲は0〜7%であり、さらに好ましくは1〜5%である。
MgOはガラスを安定化させてガラス化しやすくすると共に、発光色変換部材にした際に、蛍光体の発光効率を著しく向上させる成分である。その含有量は0〜10%である。MgOの含有量が多くなると、ガラスが失透しやすく、ガラスの透過率が低下する傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する発光色変換部材が得難くなる。MgOのより好ましい範囲は0〜7%であり、さらに好ましくは1〜5%である。
CaOはガラスを安定化させてガラス化しやすくする成分である。その含有量は0〜10%である。CaOの含有量が多くなると、ガラスが失透しやすく、ガラスの透過率が低下する傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する発光色変換部材が得難くなる。CaOのより好ましい範囲は0〜7%であり、さらに好ましくは0〜5%である。
SrOはガラスを安定化させてガラス化しやすくする成分である。その含有量は0〜10%である。SrOの含有量が多くなると、ガラスが失透しやすく、ガラスの透過率が低下する傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する発光色変換部材が得難くなる。SrOのより好ましい範囲は0〜7%であり、さらに好ましくは0〜5%である。
BaOはガラスを安定化させてガラス化しやすくする成分である。その含有量は0〜5%である。BaOの含有量が多くなると、ガラスが著しく失透しやすく、ガラスの透過率が低下する傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する発光色変換部材が得難くなる。BaOのより好ましい範囲は0〜3%であり、さらに好ましくは0〜1%である。
尚、MgO、CaO、SrO及びBaOを合量で0〜10%にすることが好ましい。これら成分の合量が10%より多くなると、ガラスが失透しやすく、ガラスの透過率が低下する傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する発光色変換部材が得難くなる。MgO+CaO+SrO+BaOのより好ましい範囲は0〜7%であり、さらに好ましくは1〜5%である。
また、上記成分以外にも、本発明の主旨を損なわない範囲で種々の成分を添加することができる。例えば、耐候性を向上させるために、ZnO、Ta25、TiO2、Nb25、Gd23、La23を合量で10%まで添加してもよい。
また、本発明に使用する酸化物ガラス粉末の平均粒度は、1〜100μmのものを使用することが望ましい。ガラス粉末の平均粒度が小さくなると、発光色変換材料を焼成する際に、泡の発生量が多くなり、気孔率を2%以下にすることが難しくなる。一方、平均粒度が大きくなると、発光色変換部材中に無機蛍光体粉末が均一に分散され難くなり、結果として、高い発光効率を有する発光色変換部材が得難くなる。
発光色変換部材の発光効率(lm/W)は、ガラス中に分散した蛍光体粒子の種類や含有量、及び発光色変換部材の肉厚によって変化する。発光効率を高めたい場合、部材の肉厚を薄くして励起光や変換された光の透過光を高めたり、蛍光体の含有量を増加させて、変換する光量を増加させることで調整すればよいが、蛍光体が多くなりすぎると、焼結しにくくなり、気孔率が大きくなって、励起光が効率良く蛍光体に照射されにくくなったり、発光色変換部材の機械的強度が低下しやすくなるなどの問題が生じる。一方、少なすぎると、十分に発光させることが難しくなる。従って、酸化物ガラス粉末と無機蛍光体粉末の混合割合は、質量比で、99.99:0.01〜70:30の範囲で調整することが好ましく、より好ましくは99.95:0.05〜80:20、特に、99.92:0.08〜85:15の範囲で調整することが好ましい。
本発明の製造方法において、酸化物ガラス粉末と無機蛍光体粉末を混合し発光色変換材料を焼成する温度としては、300〜900℃(より好ましくは300〜850℃温度が)の範囲であり、且つ、ガラスの軟化点±50℃以内であることが望ましい。焼成温度が900℃又はガラスの軟化点+50℃より高くなると、蛍光体が劣化したり、ガラスと蛍光体が反応して発光効率が著しく低下する場合がある。また、焼成温度が300℃又はガラスの軟化点−50℃より低くなると、発光色変換部材の気孔率が増加し、光の散乱が強くなり透過する光量が低下して部材の発光効率が低下する場合がある。
尚、本発明の製造方法において、酸化物ガラス粉末と無機蛍光体粉末を含む発光色変換材料は予め所望の形状に成型して焼成する。材料の成型方法としては、特に、制限はなく、発光色変換材料を金型に入れて加圧成型するプレス成形法や、射出成形法、シート成形法、押し出し成形法等の方法を採用することができる。
また、上記のようにして焼成して得られた焼結体に研磨、切断等の後加工を施したり、粉砕してもよい。
成形した焼結体を用いる場合、成形した焼結体を別に用意した支持部材等に取り付け、これをLEDチップの発光面側に取り付けることで発光素子として使用することができる。
粉砕した焼結体を用いる場合、粉砕物をシリコーン樹脂等に分散しLEDチップを覆うことで発光素子として使用することができる。本発明の部材は、蛍光体がガラスで被覆されているため、蛍光体のみを樹脂に分散させる場合に比べて、蛍光体が劣化し難く信頼性を向上させることができる。
本発明の発光色変換部材は、上述の無機蛍光体粉末と酸化物ガラス粉末とを含む発光色変換材料を1気圧よりも低い気圧中で焼成することで得ることができる。
本発明の発光色変換部材は、酸化物ガラス粉末と無機蛍光体粉末との焼結体からなり、劣化の少ない無機蛍光体がガラス中に分散した構成を有している。また、2%以下と低い気孔率を有している。そのため、化学的に安定で、高出力の光に長期間曝されても変色を抑えることができ、しかも、高い発光効率を得ることができる。
以下、実施例に基づき本発明を説明する。
表1〜表5は本発明の実施例及び参考例(試料No.1、3、5、7、9、11、13、15、17及び19)及び比較例(試料No.2、4、6、8、10、12、14、16、18及び20)を示している。
Figure 0005242905
Figure 0005242905
Figure 0005242905
Figure 0005242905
Figure 0005242905
まず、酸化物ガラスを調製した。表に示す組成となるように、各ガラス成分を秤量して混合し、この混合物を白金坩堝中において、900〜1400℃で1時間溶融してガラス化し、フィルム状に成形した。フィルム状のガラスをボールミルで粉砕した後、325メッシュの篩に通して分級し、平均粒径が45μmの酸化物ガラス粉末を得た。得られた酸化物ガラス粉末について、軟化点を測定し、結果を表に示した。尚、軟化点については、マクロ型示差熱分析計を用いて測定し、第四の変曲点の値を軟化点とした。
次に、得られた酸化物ガラス粉末と、無機蛍光体粉末を、表に示す配合比となるように混合して発光色変換材料を得て、これを金型に入れて加圧成形し、直径1cmのボタン状の予備成型体を作製した。この予備成型体を、表に示す焼成温度と雰囲気下(気圧)で焼成した後、加工し、直径8mm、厚さ1mmの円盤状の発光色変換部材を得た。得られた発光色変換部材について、気孔率及び発光効率を測定し、結果を表に示した。
表から明らかなように、本発明の実施例及び参考例である試料No.1、3、5、7、9、11、13、15、17及び19は、5000Pa以下の気圧中で焼成しているため、気孔率が、1.5%と低く、発光効率も1気圧(1.013×105Pa)で焼成した比較例(試料No.2、4、6、8、10、12、14、16、18及び20)よりも高かった。
尚、気孔率は、アルキメデス法を用いて、焼成体のかさ密度を測定し、次に、焼成体を粉砕してウルトラピクノメーターにより、焼成体の真密度を測定し、(1−かさ密度/真密度)×100(%)より求めた。
また、発光効率は、電流20mAで操作した励起波長400nmの光を試料の片面に入射し、その面の反対側の面から発せられた光を汎用の蛍光スペクトル測定装置を用いて発光スペクトル測定し、得られたスペクトルに標準比視感度を掛け合わせて全光束を計算し、得られた全光束を光源の電力(0.072W)で除して算出した。

Claims (5)

  1. 無機蛍光体粉末とSnO−P系ガラスからなる酸化物ガラス粉末とを含む発光色変換材料を焼成して発光色変換部材を製造する方法であって、SnO−P 系ガラスが、SnO 35〜80%、P 5〜40%、B 2〜30%、及び、MgO 0〜10%を含有し、かつ、該発光色変換材料を1気圧(1.013×10Pa)よりも低い気圧中で焼成することを特徴とする発光色変換部材の製造方法。
  2. 該発光色変換材料を1000Pa以下の気圧中で焼成することを特徴とする請求項1に記載の発光色変換部材の製造方法。
  3. 無機蛍光体粉末が、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物及び塩化物の群から選ばれたいずれか一種以上からなることを特徴とする請求項1または2に記載の発光色変換部材の製造方法。
  4. 酸化物ガラス粉末が、850℃以下の軟化点を有するガラスからなることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の発光色変換部材の製造方法。
  5. 酸化物ガラス粉末無機蛍光体粉末の混合割合が、質量比で99.99:0.01〜70:30の範囲にあることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の発光色変換部材の製造方法。
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