JP3786805B2 - ガラス膜の焼成方法および連続焼成装置 - Google Patents

ガラス膜の焼成方法および連続焼成装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス膜の焼成方法およびその焼成に用いられる連続焼成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一面(膜形成面)にガラスを主成分とするガラス膜を備えた基板が知られている。例えば、面放電型ACプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)の維持放電電極を覆う透明誘電体膜を備えた前面ガラス基板や、蛍光表示管(Vacuum Fluorescent Display:VFD)の導体パターンを覆う絶縁膜を備えた蛍光体基板等がそれである。このようなガラス膜は、例えば、ガラス・ペーストの印刷、コート、或いはシートの貼り着け等で基板の一面にガラス粉末と樹脂成分とを含む膜を形成し、そのガラス粉末の組成や粒径等に応じて定められる例えば500 〜600(℃) 程度の所定温度で焼成して、樹脂成分を焼失させると同時にそのガラス粉末を相互に結合させることによって形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記ガラス膜を形成するガラス粉末は二種に大別される。一つは、軟化点よりも80〜100(℃) 程度高い保持温度で焼成するフロー・タイプである。このフロー・タイプでは保持温度においてガラスの粘性が十分に低くなるため、樹脂成分の焼失やガス化等によってガラス膜内に生じた気泡が表面まで導かれて除去される。図9(a) 〜(d) は、その焼成過程を説明する図である。(a) に示される脱バインダ後の乾燥膜76中のガラス粉末78は、転移点から軟化点に至る過程で軟化して(b) に示されるように内部に気泡(気孔)80を閉じ込めたまま結合させられるが、保持温度において更に軟化させられると、(d) に示されるようにその気泡80の殆どが排出される。なお、(c) は軟化点から保持温度までの温度範囲に対応する。そのため、生成されたガラス膜82に内在する気泡80が小さく且つ少なくなることから、直線透過率で90(%) 以上の高い可視光透過率を有し且つ絶縁性や耐電圧等の電気的特性に優れた透明ガラス膜82を得ることができる。しかしながら、フロー・タイプでは上記利点の反面で工程の安定性に欠ける問題がある。すなわち、反応性の高い元素を含むガラスを高温で焼成することから、それに接する厚膜銀電極等の他の膜との反応が生じ易く且つ基板の変形が大きくなる。また、AC型PDPにおいては、ガラス膜82を酸化マグネシウム(MgO) の保護膜で覆った後、前面板を背面板と重ね合わせて封着するが、保護膜の損傷防止のために転移点以下の温度で処理することが望まれる反面で、気密空間内面の吸着ガスの除去のためには可及的に高温で処理することが望まれることから、転移点が低いフロー・タイプでは両者を満足する温度設定が困難であった。
【0004】
これに対して、軟化点よりも10〜 20(℃) 程度高い保持温度で焼成する軟化点タイプのガラス粉末も用いられている。この軟化点タイプでは、フロー・タイプとは反対に工程の安定性に優れる利点がある。すなわち、反応性の高い元素が殆ど含まれない或いはそのような元素の含有量の少ないガラスを軟化点よりそれほど高くない温度で焼成することから、基板の変形が小さく且つ厚膜銀電極等との反応も生じ難く、また、フロー・タイプよりも高軟化点のガラスを用い得るため、転移点よりも低い温度範囲で前記吸着ガスを十分に脱離させ得る高温に封着温度を設定できる。しかしながら、軟化点タイプは前記の図9(c) に示される段階で焼成を終了するものであって、保持温度においてもガラス膜82が極めて高粘度であることから、ガラス膜82の焼成過程で生成された気泡80が内部に多数残留するため、可視光透過率が65(%) 以下と低く且つ電気的特性に劣る問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、工程の安定性が高く且つ内部気泡の少ないガラス膜を製造するための焼成方法および連続焼成装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するための第1発明のガラス膜の焼成方法の要旨とするところは、膜形成面に形成したガラス粉末および樹脂成分を含む乾燥膜をそのガラス粉末の軟化点よりも10〜20( ℃) だけ高い保持温度まで昇温することにより、その樹脂成分を焼失させると同時にそのガラス粉末を相互に結合させてその乾燥膜からガラス膜を生成するガラス膜の焼成方法であって、(a) 前記保持温度まで昇温させる過程において、前記ガラス粉末の転移点+ 20( ) に到達するまでに予め定められた設定圧力に減圧し、そのガラス粉末の転移点+20( ℃) から前記保持温度までの温度範囲でその設定圧力を保持することにより前記乾燥膜の焼成雰囲気を減圧した後、その保持温度において大気圧に戻す減圧工程を含むことにある。
【0007】
【第1発明の効果】
このようにすれば、ガラス膜を焼成する際の昇温過程においてガラス粉末が転移点+20( ℃) に到達するまでに予め定められた設定圧力に減圧されるとともに前記保持温度までその設定圧力が保持されることにより、軟化する過程で、減圧工程において減圧させられると、乾燥膜の内部から表面に気孔が連通している段階でその外部空間が乾燥膜内部よりも低圧となるため、その乾燥膜内部に存在する気体が表面から排出される。そのため、保持温度まで昇温させられることによりガラス粉末が軟化し且つ相互に結合させられる際には、内部に気体が殆ど存在しないことから、生成されるガラス膜内に気泡が残存することが抑制される。また、このようにして気泡の残留が抑制されることから、保持温度を軟化点よりも僅かに高い程度の温度に設定すれば足りるため、その保持温度を高く設定する場合のような工程の安定性に欠ける不都合が抑制される。したがって、工程の安定性が高く且つ内部気泡の少ないガラス膜を製造することができる。すなわち、従来の軟化点タイプのガラス粉末を用いて、その工程の安定性を損なうことなく、気泡の少ないガラス膜が得られる。また、前記保持温度において前記焼成雰囲気が大気圧に戻されるので、ガラス膜の表面の平坦性が高められる。
【0008】
【第1発明の他の態様】
ここで、好適には、前記減圧工程は、前記軟化点に到達するまでに予め定められた設定圧力に減圧し、前記保持温度までその設定圧力に保持するものである。このようにすれば、ガラス粉末が軟化し且つ相互に結合させられる保持温度まで設定圧力に減圧されていることから、その設定圧力に応じた気泡の少ないガラス膜を得ることができる。
【0009】
また、好適には、前記減圧工程は、前記軟化点よりも所定値だけ低い所定の設定温度に到達するまでに前記設定圧力に減圧するものである。このようにすれば、軟化点に到達する前に設定圧力に減圧されていることから、その設定圧力に応じた気泡の少ないガラス膜を一層確実に得ることができる。
【0010】
また、好適には、前記所定圧力は、7.00×104(Pa) 以下の圧力である。このようにすれば、大気圧[ 1.013×105(Pa) ]よりも十分に低い圧力まで減圧されることから、焼成過程において膜内の気体が好適に排出されて気泡の少ないガラス膜を得ることができる。一層好適には、前記所定圧力は3.40×104(Pa) 以下の圧力である。このようにすれば、膜内に残留する気体が一層少なくなることから、気泡を一層少なくすることができて、例えば透明ガラス膜の場合には80(%) 以上の高い直線透過率を得ることができる。更に好適には、前記所定圧力は1.20×104(Pa) 以下の圧力である。このようにすれば、残留する気孔が更に少なくなるため、例えば90(%) 以上の従来のフロー・タイプと同程度の直線透過率のガラス膜を得ることができる。
【0011】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明の連続焼成装置の要旨とするところは、基板を一方向に搬送しつつその膜形成面に形成したガラス粉末および樹脂成分を含む乾燥膜をそのガラスの軟化点よりも10〜20( ℃) だけ高い保持温度で焼成することにより、その樹脂成分を焼失させると同時にそのガラス粉末を相互に結合させてその乾燥膜からガラス膜を生成するために用いられる連続焼成装置であって、(a) 前記基板の搬送方向における一部にその基板を前記保持温度に保つための保持部を備えてその搬送方向に沿って伸びるトンネル状の炉体と、(b) その炉体内の搬送方向における一部に設けられ、前記基板を前記保持部に搬送する過程でその基板を昇温すると共に、前記ガラス粉末の転移点+ 20( ) に到達するまでに予め定められた設定圧力に減圧し、そのガラス粉末の転移点+ 20( ) から前記保持温度までの温度範囲でその設定圧力を保持することにより、前記基板の焼成雰囲気を減圧した後、その保持温度において大気圧に戻すための減圧昇温部とを、含むことにある。
【0012】
【第2発明の効果】
このようにすれば、乾燥膜が設けられた基板は、トンネル状の炉体内を搬送される過程で減圧昇温部において昇温させられつつガラス粉末の転移点+20( ℃) に到達するまでに予め定められた設定圧力に減圧されるとともに前記保持温度までその設定圧力が保持されることによりその焼成雰囲気が減圧される。そのため、ガラス粉末が軟化する過程で減圧されるように減圧昇温部が設定されることにより、乾燥膜内部に存在する気体をその表面から排出させ、生成されるガラス膜内に気泡が残存することを好適に抑制できる。また、炉体内に設けられる保持部における保持温度を軟化点よりも僅かに高い程度の温度に設定すれば足りるため、その保持温度を高く設定する場合のような工程の安定性に欠ける不都合も抑制される。したがって、本発明の連続焼成装置によれば、工程の安定性が高く且つ内部気泡の少ないガラス膜を製造することができる。さらに、前記保持温度において前記焼成雰囲気が大気圧に戻されるので、ガラス膜の表面の平坦性が高められる。
【0013】
【第2発明の他の態様】
ここで、好適には、前記の減圧昇温部は、開閉可能な気密な仕切り部材によって相互に区分された前記搬送方向に沿って順に並ぶ予圧部および減圧部を備えたものである。このようにすれば、基板の焼成雰囲気が搬送方向において複数段階で減圧されることから、1室で減圧する場合に比較して容易且つ短時間で所望の圧力まで減圧することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1(a) は、本発明のガラス膜の焼成方法を適用して透明な誘電体層32を形成したAC型PDP10の構成の一例を一部を切り欠いて示す斜視図であり、図1(b) は、その隔壁22の長手方向に沿った断面を示す図である。図において、PDP10は、それぞれの略平坦な一面12、14が向かい合うように所定間隔を隔てて互いに平行に配置され、図示しない周縁部において気密に封着された相互に同様な寸法および形状の前面板16および背面板18と、それら前面板16および背面板18との間に形成された気密空間を一方向に沿って配列された複数の放電空間16に区画形成する複数本の長手状の隔壁22とを備えて構成されている。これら前面板16および背面板18は、例えばそれぞれ 900×500(mm) 程度の大きさと 1.8〜4(mm) 程度の均一な厚さを備えて、透光性を有する軟化点が700(℃) 程度のソーダライム・ガラス等から成るものである。
【0016】
上記の前面板16上には、上記隔壁22の長手方向と直交する一方向に沿って互いに平行に配置された複数対の表示放電電極24a、24b(以下、特に区別しないときは単に表示放電電極24という)が、各対相互に一定の中心間隔を以て備えられる。複数本の表示放電電極24の各々は、幅広の透明電極28と、表示放電電極24の各対毎の外側位置においてその透明電極28に重ねて設けられた細幅の金属電極30とから構成されたものである。透明電極28は、例えばITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)やATO(Antimon Tin Oxide :酸化アンチモン錫)等の透明導体材料から成るものであり、高い可視光透過率を有している。一方、金属電極30は、その透明電極28の導電性を補うものであって、金、銀やアルミニウム等の金属材料或いはこれらを主成分とする厚膜導体材料から成るものであり、殆ど光を通さないが細幅に設けられるためその遮光が問題となることはない。このように構成された表示放電電極24は、前面板の内面12の略全面に設けられた誘電体層32およびその上に設けられた保護膜34で覆われている。
【0017】
上記の誘電体層32は、図1(b) に両端の電極対について示すように電極24間で交流放電を発生させるためにその表面に電荷を蓄えるものであり、例えば厚膜印刷技術を利用して形成された転移点Tg が450(℃) 程度で軟化点Tspが530(℃) 程度のPbO-SiO2-B2O3-Al2O3 系低軟化点ガラス等から成る。この誘電体層32は、 30(μm)程度の厚さに形成されているが、内部には気泡(気孔)が殆どなく、例えば、直線透過率で92(%) 程度もの高い可視光透過率を有している。なお、上記の転移点Tg および軟化点Tspは、それぞれ示差熱分析(DTA)曲線の第1ピークおよび第2ピークの値である。また、上記の直線透過率とは、誘電体層32に垂直に入射する光のうちそれを直線的に透過する割合を表したものである。すなわち、誘電体層32の表面に対して垂直に光を入射した場合に、界面における屈折や反射、内部における散乱等によって射出方向の変化した光を除いた誘電体層32の裏面に対して垂直に射出された光量だけを測定して、入射光に対する割合を算出した。本実施例においては、上記の誘電体層32がガラス膜に相当する。
【0018】
また、上記の保護膜34は、電極24間の交流放電によって上記の誘電体層32がスパッタされることを防止するために設けられたものであって、例えば蒸着等の薄膜技術を利用して形成されたMgO 等から成るものである。この保護膜34の本来の目的は誘電体層32の保護にあるが、二次電子放出係数の高いMgO 等の誘電体で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。また、例えば0.5(μm)程度の厚さを以て薄く且つ緻密に形成されていることから、この保護膜34による遮光は殆ど生じない。
【0019】
一方、前記の背面板18上には、その略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリガラス等から成るアンダ・コート36が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極38が前記複数の隔壁22に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート40に覆われて設けられている。隔壁22は、例えば、低軟化点ガラスおよび無機フィラー等から成るものであり、そのオーバ・コート40上に備えられる。そして、それら隔壁22の側面およびオーバ・コート40の表面には、各放電空間20毎に塗り分けられた蛍光体層42が備えられている。この蛍光体層42は、例えば紫外線励起により赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色の何れかに発光させられるものが、隣接する放電空間20相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、上記のアンダ・コート36は、厚膜銀から成る書込電極38と背面板18との反応等を抑制するものであり、オーバ・コート40は、蛍光体層42の汚染や書込電極38からのアウト・ガスによる放電空間20内の雰囲気変化等を防止するものである。
【0020】
以上のように構成されたPDP10は、例えば、以下のように駆動される。すなわち、先ず、一方の表示放電電極24aに所定の負電圧を印加して順次走査すると同時に、その走査のタイミングに同期して所定の書込電極38に所定の正電圧を印加することにより、正電圧が印加された書込電極38と表示放電電極24aとの間で順次書込放電させて、表示放電電極24aを覆う保護膜34上に電荷を蓄積して発光させる区画(表示区画)を選択する。その後、全ての表示放電電極24a、24bに所定の放電維持パルスを印加して表示放電を発生させ且つ所定時間維持して、選択された表示区画内の蛍光体層42を励起して発光させ、その光を図1(b) に示すように保護膜34、誘電体層32、透明電極28、および前面板16を通して射出することにより、一画像を表示する。上記の表示区画の選択および発光が一定周期で繰り返されることにより所望の画像が連続的に表示される。なお、詳細な駆動方法は本実施例の理解に不要であるため説明を省略する。
【0021】
この場合において、本実施例では、前述したように表示放電電極24を覆う誘電体層32が92(%) 程度の高い直線透過率を有していることから、放電空間20内で発生した光の殆どがその誘電体層32に遮られることなく前面板16から射出される。そのため、発光効率が高められることから高輝度を容易に得ることができる。
【0022】
ところで、上記のように透光性の高い誘電体層32は、例えば、以下のようにして形成されたものである。以下、図2に従って前面板16の処理工程を説明しつつ誘電体層32の形成方法を詳述する。先ず、アニール等の前処理を前面板16に施した後、透明電極形成工程S1において、その一面12に透明電極28を形成する。この透明電極28は、例えば、スパッタ法等の薄膜技術や厚膜スクリーン印刷法等の厚膜技術を用いて前述したような電極材料を一面12上に設けた後、フォトリソグラフィ技術によりパターニングし、厚膜技術による場合には更に焼成処理を施すことにより形成できる。
【0023】
次いで、金属電極形成工程S2においては、透明電極28上に重ねて金属電極30を形成する。この金属電極30は、例えば、一面12上に前述した金属電極材料を蒸着してフォトリソグラフィ技術でパターニングし、或いは厚膜導体材料を厚膜スクリーン印刷で塗着してフォトリソグラフィ技術でパターニングした後に焼成することで形成できる。厚膜技術による場合には、予め金属電極30のストライプ・パターンで印刷形成してもよい。
【0024】
続く誘電体層形成工程S3においては、上記の透明電極28および金属電極30を覆って、一面12の全面に誘電体層32を形成する。この誘電体層32の形成は、例えば、以下のようにして行われる。すなわち、先ず、ペースト調製工程において、前述した誘電体層32を構成する低軟化点ガラスの粉末(ガラス粉末)およびエチルセルロースやアクリル等の樹脂成分をターピネオールやブチルカルビトールアセテート等の有機溶剤に分散した厚膜絶縁ペースト(ガラス・ペースト)を調製する。ガラス粉末は、例えば粉砕等によって平均粒径を0.5 〜5(μm)程度としたものが好適に用いられる。次いで、印刷工程において、その厚膜絶縁ペーストを一面12上の全面に塗布する。続く乾燥工程においては、塗布した厚膜絶縁ペーストを例えば120(℃) 程度の温度で乾燥して溶剤成分を除去する。乾燥後の膜厚(乾燥膜の膜厚)は、例えば 42(μm)程度である。上記印刷および乾燥処理は、この乾燥膜厚が得られるように適当な回数繰り返して実施する。そして、焼成工程において、この乾燥膜を焼成することにより、前記の誘電体層32が生成される。
【0025】
上記の焼成処理は、例えばガラス粉末の軟化点Tspよりも 20(℃) 程度だけ高い保持温度で加熱処理するものである。具体的には、例えば図3に示される温度プロファイルに従って焼成される。以下、この温度プロファイルに従い、焼成処理の各段階における乾燥膜44(図4(a) 等を参照)等の断面状態を示す図4(a) 〜(d) を参照して焼成処理方法を詳細に説明する。
【0026】
図3において、温度プロファイルは相互に昇温速度の異なるA〜Eの5段階に別れている。第1段階Aは、室温から300(℃) まで 20(℃/分) 程度の昇温速度を以て 15(分間) 程度で速やかに昇温する昇温工程である。この段階では、前面板16および乾燥膜44が専ら温度上昇させられるだけであり、その乾燥膜44は化学的には殆ど変化しない。続く第2段階Bは、300(℃) から400(℃) まで6.7(℃/分) 程度の低い昇温速度を以て 15(分間)程度で緩やかに昇温する脱バインダ工程である。図4(a) は、この第2段階Bがある程度進んだ後或いはその終了時点を示している。この段階では、乾燥膜44中の樹脂成分の殆どが焼失させられるため、ガラス粉末(粒子)46相互の間に、その樹脂成分がなくなること等によって形成された大きな空隙が存在する。なお、この段階でも、ガラス粉末46は何ら化学変化をしていない。
【0027】
続く第3段階Cは、400(℃) から保持温度である550(℃) まで 15(℃/分) 程度の昇温速度を以て 10(分間) 程度で昇温しつつ、前面板16の配置されている焼成炉の炉室内を例えば2.67×103(Pa)[=20(Torr)] 程度まで減圧する減圧昇温工程である。本実施例では、例えば、460(℃) 程度の温度で、すなわち、転移点Tg よりは 10(℃) 程度高いが軟化点Tspよりは 70(℃) 程度低い温度で上記の設定圧力に到達するように、昇温速度や減圧能力が設定されている。この段階では、昇温過程で450(℃) 程度のガラス転移点Tg を越えるとガラス粉末46の粘性が急激に低下し、更に昇温する過程で530(℃) 程度の軟化点Tspを越えると、ガラス粉末46が急激に軟化して相互に結合させられる。このとき、これら粘性の低下および軟化は、2.67×103(Pa) 程度まで減圧される過程或いは減圧された後に生じることから、ガラス粉末46相互間の空隙は軟化したガラスで略埋め尽くされる。図4(b) は、このようにガラス粉末46が相互に結合して、ガラス膜48が生成された状態を示しており、内部には殆ど気孔(図9(b) 等を参照)は存在しない。本実施例においては、上記の減圧昇温工程Cが減圧工程に対応する。
【0028】
そして、550(℃) 程度の保持温度に到達した後の第4段階Dすなわち保持工程において、炉室内に空気を導入して大気圧に戻しつつ、その保持温度で例えば 20(分間) 程度の一定時間だけ保持する。これにより、減圧昇温工程ではガラス粉末46の輪郭が残って凹凸の大きかったガラス膜表面48aの平坦性が高められる。その後、降温工程に対応する第5段階Eにおいて、保持温度から室温まで冷却することにより、滑らかな表面を備え且つ殆ど気泡を含まない前記の誘電体層32が得られる。このようにして軟化点Tspよりも僅かに高い程度の、それほど高くない温度で焼成処理が施されることから、前面板16の熱変形は少なく、しかも、誘電体膜32と金属電極30等との反応は殆ど生じていない。
【0029】
上記のような減圧昇温工程が必要な誘電体層32の焼成は、例えば、図5に示されるようなゾーン構成を有する連続炉50を用いて行われる。図において、連続炉50は、前面板16の搬入側から搬出側に向かって順に並ぶ、昇温・脱バインダ・ゾーン52、減圧昇温ゾーン54、昇温ゾーン56、保持ゾーン58、および降温ゾーン60を備えている。昇温・脱バインダ・ゾーン52は、前記の昇温工程Aおよび脱バインダ工程Bに対応するものであり、前面板16がこの内部を搬送される過程で400(℃) 程度まで昇温させられると共に、それに塗着された乾燥膜44から樹脂成分が除去される。減圧昇温ゾーン54は、前記の減圧昇温工程Cに対応するものであり、昇温・脱バインダ・ゾーン52から送り込まれた前面板16の加熱処理雰囲気が減圧されつつ530(℃) 程度まで昇温させられる。また、昇温ゾーン56は、減圧が不要になるその530(℃) 程度以上の温度において常圧で昇温するものである。すなわち、減圧昇温工程Cは、図3に示されるように保持工程Dの直前まで行われてもよいが、この連続炉50で焼成する場合のようにそれらの間に常圧で昇温する工程が設けられてもよい。
【0030】
図6および図7は、それぞれ上記の減圧昇温ゾーン54の構成例を模式的に示す図である。前者の図6は、減圧昇温ゾーン54が一室から成る構成例である。減圧昇温ゾーン54と、その前後に連続する昇温・脱バインダ・ゾーン52および昇温ゾーン56との間には、開閉可能なシャッタ装置62a、62bが備えられている。シャッタ装置62は、例えば図の上下方向に移動可能な上側シャッタ64と、トンネル状の炉体74に固定された下側シャッタ66とを備えたものである。それら上下シャッタ64、66間が閉じられた場合には、減圧昇温ゾーン54と昇温・脱バインダ・ゾーン52或いは昇温ゾーン56とが空間的に仕切られるが、上側シャッタ64が上昇させられた場合には、減圧昇温ゾーン54と昇温・脱バインダ・ゾーン52或いは昇温ゾーン56とが空間的に連続させられることとなる。そのため、シャッタ装置62aが開けられた状態で、セラミック・ローラ等から成る搬送ローラ68で前面板16が減圧昇温ゾーン54に搬入されると、シャッタ装置62a、62bが何れも閉じられた状態で、炉体74外に備えられた真空ポンプ70が作動させられることにより、その減圧昇温ゾーン54内が減圧させられる。ゾーン54内は搬送方向に沿って高くなるように温度勾配が設けられているため、前面板16上に形成されている乾燥膜44は、搬送される過程で昇温させられつつ減圧されることとなる。前面板16が減圧昇温ゾーン54の前方端部まで送られると、真空ポンプ70が停止させられると共にシャッタ装置62bが開放されることにより昇温ゾーン56に送り出される。なお、真空ポンプ70は、上記のような間歇運転ではなく定常的に運転されてもよい。
【0031】
また、図7は、減圧昇温ゾーン54が第1室54a、第2室54b、および第3室54cの3室に分割されている構成例である。第2室54bと第1室54aおよび第3室54cそれぞれとの間には、前記の開閉可能なシャッタ装置62a、62bが備えられており、第1室54aと昇温・脱バインダ・ゾーン52との間、および第3室54cと昇温ゾーン56との間には、上側から高さ方向における中間位置までの範囲に亘る固定シャッタ72a、72bがそれぞれ備えられている。また、第1室54a、第2室54b、および第3室54cの外側には、それぞれから排気して内部を減圧するための真空ポンプ70a、70b、70cが配設されている。これら3つのうち、真空ポンプ70aおよび70cは、例えば定常的に排気運転されているが、第2室54bに備えられている真空ポンプ70bは、例えば図6に示される真空ポンプ70と同様に間歇駆動或いは定常駆動される。第1室54aおよび第3室54cは、定常的にある程度の減圧状態に保たれていることから、減圧ゾーンとして機能する第2室54bにおいて速やかに設定圧力まで減圧させるための予圧ゾーンとして機能する。そのため、図6に示されるように減圧昇温ゾーン54が1室で構成される場合に比較して、減圧に必要とする時間を短くできる利点がある。また、両図においては、シャッタ装置62が開閉可能な仕切りに相当する。
【0032】
図2に戻って、保護膜形成工程S4においては、誘電体層32の全面にMgO を蒸着等によって成膜することにより、保護膜34を形成する。そして、封着工程S5において、別途膜形成した背面板18を前面板16と重ね合わせ、それらの組成や用いられる封着ガラスの組成等によって定められる例えば430 〜450(℃) 程度の温度で熱処理することにより、前面板16と背面板18とを気密に封着し、排気・ガス封入工程S6において、形成された気密容器内から排気した後にNe-Xe(8%) ガス等の放電ガスを5.33×104(Pa)[=400(Torr)]程度の圧力で封入することにより、前記のPDP10が得られる。このとき、封着温度が430 〜450(℃) であって、十分に高く且つTg と同程度以下の温度であるため、放電空間20内面の吸着ガスが十分に除去され、且つ、保護膜34の損傷も見られない。
【0033】
要するに、本実施例においては、誘電体層32を焼成する際の昇温過程A〜Cにおいてガラス粉末46が軟化する過程で、減圧昇温工程Cにおいて減圧させられると、乾燥膜44の内部から表面に気孔が連通している段階でその外部空間が乾燥膜44内部よりも低圧となるため、その乾燥膜44内部に存在する気体が表面から排出される。そのため、保持温度まで昇温させられることによりガラス粉末46が軟化し且つ相互に結合させられる際には、内部に気体が殆ど存在しないことから、生成されるガラス膜48延いては誘電体層32内に気泡が残存することが抑制される。また、このようにして気泡の残留が抑制されることから、保持温度を軟化点Tspよりも僅かに[ 20(℃) 程度]高い550(℃) 程度の温度に設定すれば足りるため、その保持温度を高く設定する場合のような工程の安定性に欠ける不都合が抑制される。したがって、工程の安定性が高く且つ内部気泡の少ない誘電体層32を形成することができる。
【0034】
しかも、前記の減圧昇温工程Cにおいては、軟化点Tspに到達するまでに予め定められた2.67×103(Pa) 程度の設定圧力に減圧し、550(℃) 程度に設定された保持温度までその設定圧力に保持されることから、ガラス粉末46が軟化し且つ相互に結合させられる保持温度まで設定圧力に減圧されているため、その低い設定圧力に基づき、気泡の殆ど無い誘電体層32を得ることができる。
【0035】
また、本実施例においては、減圧昇温工程Cは、軟化点Tspよりも 70(℃) 程度の所定値だけ低い460(℃) 程度の設定温度に到達するまでに前記の2.67×103(Pa) 程度の設定圧力に減圧するように設定されていることから、ガラスの粘性が著しく低下することによりガラス粉末46が相互に結合して表面に開口する気孔が殆ど無くなるような軟化点Tspに到達する前に設定圧力に減圧されるため、気泡の殆ど無い誘電体層32を一層確実に得ることができる。
【0036】
また、本実施例においては、減圧昇温工程Cにおける設定圧力が2.67×103(Pa) 程度の極めて低い圧力であるため、焼成過程においてガラス膜48内の気体が好適に排出されて気泡の殆ど無い誘電体層32を得ることができる。そのため、前述したように、従来のフロー・タイプと同程度の92(%) もの直線透過率の誘電体層32を得ることができる。
【0037】
また、本実施例においては、誘電体層32を生成するための焼成工程において減圧することで気孔の残留が抑制されることから、 30(μm)程度の比較的厚い誘電体層32を一回の焼成で形成しても、高い透光性を得ることができる。すなわち、所謂軟化点タイプのガラスでも 10(μm)程度以下の極めて薄い膜であれば焼成後の気孔が少なくなるため、印刷、乾燥、および焼成を繰り返して積層すれば、任意の厚さのガラス膜をある程度の透光性を以て形成することができる。しかしながら、このようにして形成しても、従来はせいぜい70(%) 程度の直線透過率しか得られず、しかも、焼成回数が多くなることから製造上不利になると共に基板の変形や他の膜の変質、反応が著しくなるという問題がある。そのため、実用的な方法とは言えず、従来は軟化点タイプのガラス膜で高い透光性を有するものは殆ど用いられていなかったのである。
【0038】
また、本実施例においては、前面板16の搬送方向における一部にその前面板16を前記保持温度に保つための保持ゾーン58を備えてその搬送方向に沿って伸びるトンネル状の炉体74と、その炉体74内の搬送方向における一部に設けられて前面板16を保持ゾーン58に搬送する過程でその前面板16を昇温すると共に減圧するための減圧昇温ゾーン54とを備えた連続炉50で誘電体層32の焼成処理が行われ、乾燥膜44が設けられた前面板16は、トンネル状の炉体74内を搬送される過程で減圧昇温ゾーン54において昇温させられつつその焼成雰囲気が減圧される。そのため、ガラス粉末46が軟化する過程で減圧するように減圧昇温ゾーン54が設定されることにより、乾燥膜44内部に存在する気体がその表面から排出され、生成されるガラス膜48延いては誘電体層32内に気泡が残存することを好適に抑制できる。また、炉体74内に設けられる保持ゾーン56における保持温度を軟化点Tspよりも僅かに高い程度の温度に設定すれば足りるため、その保持温度を高く設定する場合のような工程の安定性に欠ける不都合も抑制される。
【0039】
また、図7に示される構成例においては、減圧昇温ゾーン54は、開閉可能な気密なシャッタ装置62によって相互に区分された前面板16の搬送方向に沿って順に並ぶ予圧ゾーンとして機能する第1室54aおよび減圧ゾーンとして機能する第2室54bを備えたものであることから、搬送方向において複数段階で減圧されるため、図6に示されるように1室で減圧する場合に比較して容易且つ短時間で所望の圧力まで減圧することができる。
【0040】
ところで、前記の実施例においては、減圧昇温工程Cだけを減圧している。これは、温度プロファイルの他の段階では減圧不要であることを確かめた実験結果に基づいて定めたものである。下記の表1に、前述した誘電体層32の形成工程において、減圧する段階だけを変更した場合の誘電体層32の直線透過率を評価した結果を示す。表1から明らかなように、図3に示される温度プロファイルのCにおいて減圧した場合には92(%) もの高い直線透過率を得ることができ、D、Eの一方或いは両方を共に減圧しても結果は変わらない。しかしながら、Cにおいて減圧しない場合には、D、Eの何れを減圧しても64〜65(%) 程度の低い直線透過率にとどまる。この場合の直線透過率は減圧を実施しない場合の直線透過率に略等しい。したがって、DおよびEにおける減圧は気泡の除去に何ら寄与しないことが明らかである。
【0041】
Figure 0003786805
【0042】
上記のことは以下のように説明できる。すなわち、焼成温度が軟化点Tspよりも10〜 20(℃) 高い温度に設定される所謂軟化点タイプのガラス膜48の焼成においては、保持温度に到達してもガラスの粘性は余り低くならない。一方、ガラス粉末46相互は軟化点Tspに至るまでに結合するため、保持温度に到達したときには内部に存在する気孔の表面への連通路は殆ど遮断される。そのため、粘性が十分に低くなる程度の高温で焼成される所謂フロー・タイプのガラスでは、その内部に残留した気孔がガラス膜内で移動して表面から排出されることから内部気孔が少なくなるが、軟化点タイプのガラス膜48では、保持温度においても気孔が移動可能な程度までは粘性が低下しないことから、その保持温度において減圧しても気孔を減少させることができないのである。なお、上記表1においては、A,Bについて減圧した結果を示していないが、前述した工程説明から明らかなようにB段階の終了する400(℃) 程度の温度までは有機成分の除去段階であるため、C段階より前に減圧することは考え難い。
【0043】
このように、C段階だけを減圧すれば足りることから、気孔の無いガラス膜48を焼成するためには、前記の図5に示されるように連続炉50の一部だけに減圧部分を設定できる。そのため、例えば本実施例のPDP10の前面板16のような大きなガラス板を処理する場合にも、連続炉50全体を減圧する場合のような大がかりな装置構成とすること無く、減圧可能とするために必要な装置の追加や変更に伴う装置製造コストや運転コストの上昇を抑制しつつ高い効果を得ることができる。しかも、PDP10の前面板16のような大きな基板への膜形成では、均一加熱して温度斑(むら)を可及的に少なくすることにより、その反りや変形を小さく留めることが望まれることから、焼成の最高温度で保持している間は、輻射だけでなく伝導や対流による加熱も行うことが好ましい。したがって、保持温度において減圧することはこの点からも避けるべきであるが、本実施例では上記のように最高温度で保持するD段階に先立つC段階だけで減圧していることから、誘電体層32の品質を高めつつ前面板16の均一加熱が可能になる利点もある。このような効果は、図5に示される連続炉50により焼成する場合のように昇温工程を設けることにより一層顕著に得られる。
【0044】
なお、前記の実施例においては、400(℃) から550(℃) まで昇温するC段階全体を減圧していたが、ガラス膜48内に気孔を残留させないためには、ガラス粉末46相互が結合して気孔が閉じるまでに一定の圧力まで減圧すれば足りる。下記の表2は、構成材料であるガラスの転移点Tg 、軟化点Tspがそれぞれ450(℃) 、530(℃) である前記の誘電体層32の焼成工程において、減圧開始温度および減圧終了温度を変更して、生成された誘電体層32の直線透過率との関係を調べたものである。
【0045】
Figure 0003786805
【0046】
上記の表2から明らかなように、減圧開始点が低くとも、530(℃) 未満すなわち軟化点Tsp未満の温度で減圧を終了すると、減圧の効果が無いとは言えないものの、内部に幾らかの気孔が残留し、十分な直線透過率を得ることができない。気孔が全て閉じる前に減圧を終了すると、再び気体が入り込んだ状態で気孔が閉じるためと考えられる。また、475(℃) 程度と転移点Tg よりも高い温度から減圧を開始しても、400(℃) 程度から減圧を開始した場合と同等の効果を得ることができる。しかしながら、減圧開始点を500(℃) 程度もの高温とした場合には、既に気孔が閉塞し、或いは、一定時間経過後に気孔内から気体を排出できる適当な圧力まで減圧されたときには気孔が閉塞しているため、減圧効果が得られなくなる。すなわち、少なくともTg + 20(℃) までには、設定圧力に到達していることが必要である。したがって、少なくともTg + 20(℃) 〜軟化点Tspまでの範囲で、本実施例では、470 〜530(℃) の範囲で減圧すれば、減圧した効果を得ることができる。
【0047】
図8は、前記の減圧昇温工程Cにおける設定圧力と、形成された誘電体層32の直線透過率との関係を表した図である。図において、横軸は設定圧力(Pa)を対数軸で示しており、縦軸は直線透過率(%) を通常軸で示している。図に示されるように、直線透過率は、105(Pa) 程度の常圧下の焼成では65(%) 程度であるが、減圧下で焼成することにより向上する傾向がある。7.00×104(Pa) 程度まで減圧すれば明らかな透過率改善効果が認められ、それ以下の圧力では、圧力の低下に伴って直線透過率の著しい改善傾向が見られる。また、3.40×104(Pa) 程度まで減圧すれば、80(%) 以上の透過率を得ることができ、1.20×104(Pa) 程度以下では、90(%) 以上、すなわちフロー・タイプのガラス膜と同等の直線透過率が得られる。この結果から、実質的に気孔の内在しないガラス膜を形成するためには、1.20×104(Pa) 程度以下に圧力を設定すればよいことが判る。
【0048】
また、下記の表3は、異なる組成のガラスに前述した焼成方法を適用した場合の結果を透過率で示したものである。表3において、Aは前述した実施例で用いているガラスであり、記載済の結果を再掲した。また、B〜Dについては、厚膜絶縁ペーストの調合組成は個々の組成系毎に適宜定めたが、焼成処理の保持温度(前記の図3のD段階における温度)は、全てTsp+ 10(℃) に設定し、何れも転移点Tg から軟化点Tspの範囲を2.67×103(Pa) 程度に減圧して焼成した。表3から明らかなように、本発明は組成系に拘わらず適用でき、何れにおいても少なくとも転移点Tg から軟化点Tspまで減圧することにより、高い直線透過率を得ることができる。なお、何れの組成系においても、減圧を実施しない従来の軟化点タイプの焼成では、直線透過率が65(%) 程度である。
【0049】
Figure 0003786805
【0050】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は、更に別の態様でも実施できる。
【0051】
例えば、実施例においては、PDP10の前面板16に形成される透明な誘電体層32の焼成に本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、気泡(気孔)の内在することが好ましくないガラス膜を形成する場合であれば、透明誘電体に限られず、背面板18上のアンダ・コート36やオーバ・コート40、或いはVFDの絶縁層等の表示装置(ディスプレイ)を構成する基板に形成されるガラス膜に好適に適用される。また、表示装置の他にも回路部品、金属への被覆処理等にも適用し得る。
【0052】
また、実施例においては、誘電体層32が厚膜スクリーン印刷を用いて形成されていたが、転写やシートの貼り着け等を利用して前面板表面12に設ける場合にも本発明は同様に適用される。
【0053】
また、実施例においては、誘電体層32を焼成する際に2.67×103(Pa) 程度に減圧していたが、前記の図8に示されるように残留する気泡の量延いては透明誘電体層32の透過率は設定圧力に応じて異なるものとなるため、所望する誘電体層32の性状に応じて圧力を適宜設定すればよい。
【0054】
また、実施例においては、軟化点Tspに到達する前に設定圧力に減圧されていたが、軟化点Tspにおいても気孔が完全に閉じていないような焼成条件下では、軟化点到達後に、気孔が完全に閉じるような温度までに設定圧力に到達すれば足りる。
【0055】
また、図3に示される実施例においては、保持温度に到達するまでは設定圧力に減圧した状態を保つように説明したが、気孔が完全に閉じるような軟化状態となった後は減圧する必要がないため、そのような焼成条件下では図5に示される連続炉50を用いた焼成の場合のように保持温度に到達する前に減圧を終了することも可能である。
【0056】
また、実施例においては、減圧昇温工程Cだけを減圧していたが、均熱等の問題がなければ、保持工程Dにおいても減圧を継続しても差し支えない。また、脱バインダの妨げとならないような温度以降であれば、脱バインダ工程Bの一部を減圧してもよい。
【0057】
また、実施例においては、トンネル状の炉体74を備えた連続炉50で誘電体層32の焼成を行う場合について説明したが、バッチ式の焼成炉で焼成を行っても差し支えない。
【0058】
また、図6に示される実施例においては減圧昇温ゾーン54とその前後のゾーン52、56とが、図7に示される実施例においては第2室54bと第1室54aおよび第3室54cとの間が、可動式のシャッタ装置62によって相互に空間的に仕切られるようになっていたが、必要な圧力まで減圧する妨げとならなければ、それらの間を仕切る必要はない。
【0059】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加えた態様で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a) は、本発明のガラス膜の焼成方法が製造工程の一部に適用されたPDPの構成を説明するための一部を切り欠いた斜視図であり、(b) は、(a) における隔壁に沿った断面を示す図である。
【図2】図1のPDPの製造工程の要部を説明する工程図である。
【図3】図2の製造工程の誘電体層形成工程における焼成処理のための温度プロファイルを説明する図である。
【図4】 (a) 〜(c) は、図3の温度プロファイルに従って焼成される誘電体層の断面構造の変化を説明する図である。
【図5】図3の焼成処理に用い得る連続炉の全体構成を説明するゾーン図である。
【図6】図5の焼成炉の減圧昇温ゾーンの構成の一例を説明する図である。
【図7】図5の焼成炉の減圧昇温ゾーンの構成の他の一例を説明する図である。
【図8】図3に示される焼成処理における設定圧力と誘電体層の直線透過率との関係を説明する図である。
【図9】 (a) 〜(d) は、従来のガラス膜形成過程を説明する図である。
【符号の説明】
12:一面(膜形成面)
16:前面板(基板)
44:乾燥膜
46:ガラス粉末
50:連続炉
54:減圧昇温ゾーン(減圧昇温部)
58:保持ゾーン(保持部)
74:炉体

Claims (3)

  1. 膜形成面に形成したガラス粉末および樹脂成分を含む乾燥膜をそのガラス粉末の軟化点よりも10〜20( ℃) だけ高い保持温度まで昇温することにより、その樹脂成分を焼失させると同時にそのガラス粉末を相互に結合させてその乾燥膜からガラス膜を生成するガラス膜の焼成方法であって、
    前記保持温度まで昇温させる過程において、前記ガラス粉末の転移点+ 20( ) に到達するまでに予め定められた設定圧力に減圧し、該ガラス粉末の転移点+20( ℃) から前記保持温度までの温度範囲で該設定圧力を保持することにより前記乾燥膜の焼成雰囲気を減圧した後、該保持温度において大気圧に戻す減圧工程を含むことを特徴とするガラス膜の焼成方法。
  2. 前記設定圧力は、7.00×10(Pa) 以下の圧力である請求項1のガラス膜の焼成方法。
  3. 基板を一方向に搬送しつつその膜形成面に形成したガラス粉末および樹脂成分を含む乾燥膜をそのガラス粉末の軟化点よりも10〜20( ℃) だけ高い保持温度で焼成することにより、その樹脂成分を焼失させると同時にそのガラス粉末を相互に結合させてその乾燥膜からガラス膜を生成するために用いられる連続焼成装置であって、
    前記基板の搬送方向における一部にその基板を前記保持温度に保つための保持部を備えてその搬送方向に沿って伸びるトンネル状の炉体と、
    その炉体内の搬送方向における一部に設けられ、前記基板を前記保持部に搬送する過程でその基板を昇温すると共に、前記ガラス粉末の転移点+ 20( ) に到達するまでに予め定められた設定圧力に減圧し、該ガラス粉末の転移点+ 20( ) から前記保持温度までの温度範囲で該設定圧力を保持することにより、前記基板の焼成雰囲気を減圧した後、該保持温度において大気圧に戻すための減圧昇温部と
    を、含むことを特徴とする連続焼成装置。
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