JP2008021868A - 蛍光体複合部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】発光効率が高く化学的に安定な蛍光体複合部材を提供することである。
【解決手段】本発明の蛍光体複合部材は、入射光を別の波長の光に変換して発光する蛍光体複合部材において、無機蛍光体粉末とガラス粉末とを含む混合物を焼成してなり、且つ、入射光波長域の平均全光線透過率(TA)と変換光波長域の平均全光線透過率(TZ)の比(TA/TZ)が0.95以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の蛍光体複合部材は、入射光を別の波長の光に変換して発光する蛍光体複合部材において、無機蛍光体粉末とガラス粉末とを含む混合物を焼成してなり、且つ、入射光波長域の平均全光線透過率(TA)と変換光波長域の平均全光線透過率(TZ)の比(TA/TZ)が0.95以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、LEDやLD等のデバイスに用いられる蛍光体複合部材に関するものである。
近年、白色LEDは、白熱電球や蛍光灯に代わる次世代の光源として照明用途への応用が期待されている。
蛍光体を用いて波長変換するLED素子においては、LEDチップの発光面が蛍光体粉末を含む有機系バインダー樹脂によってモールドされている。このモールド部分をLEDチップから発せられた光が通過する際に、その光の全部が蛍光体に吸収されて、別の波長に変換したり、または、光の一部が蛍光体に吸収され、変換された光と透過光とが合わさって、所望の光が発せられる。
しかしながら、上記LED素子を構成するモールド樹脂が、青色〜紫外線領域の高出力の短波長の光によって劣化し、変色を引き起こすという問題がある。
上記問題を解決するために、特許文献1及び2には、ガラス粉末と蛍光体粉末を含む材料を焼成することで、ガラス中に蛍光体を分散させた蛍光体複合部材が開示されている。
特開2005−11933号公報
特開2003−258308号公報
しかしながら、特許文献1及び2で開示されているようなガラス中に蛍光体を分散させた蛍光体複合部材の場合、高い発光効率が得られないことがあった。
本発明の目的は、発光効率が高く化学的に安定な蛍光体複合部材を提供することである。
本発明者は種々検討した結果、蛍光体複合部材の入射光及び変換光のそれぞれの波長域における透過率を調整することで部材の発光効率が向上することを見いだし、本発明を提案するに至った。
即ち、本発明の蛍光体複合部材は、入射光を別の波長の光に変換して発光する蛍光体複合部材において、無機蛍光体粉末とガラス粉末とを含む混合物を焼成してなり、且つ、入射光波長域の平均全光線透過率(TA)と変換光波長域の平均全光線透過率(TZ)の比(TA/TZ)が0.95以下であることを特徴とする。
本発明の蛍光体複合部材は、入射光を効率よく別の波長域の光に変換でき、しかも、変換光の波長域の透過率が高いため、高い発光効率を得ることができる。また、蛍光体がガラス中に分散されてなるため、化学的に安定で、高出力の光に長期間に亘って曝されても劣化が少ない蛍光体複合部材とすることができる。
本発明の蛍光体複合部材は、樹脂よりも化学的に安定なガラス中に蛍光体を分散してなるため、高出力の光に長期間に亘って曝されても変色等による劣化を抑えることができる。
また、本発明の蛍光体複合部材は、入射光の波長域の平均全光線透過率(TA)と変換光の波長域の平均全光線透過率(TZ)の比(TA/TZ)を0.95以下となるようにしているため、入射光が部材内で別の波長の光に効率良く変換され、部材から出てくる変換光の光量が多くなり、発光効率を高めることができる。尚、(TA/TZ)の値が0.95より大きくなると、入射光が部材内で別の波長の光に効率良く変換され難くなったり、部材から出てくる変換光の光量が低下しやすくなり、発光効率が低下する傾向にある。(TA/TZ)の値の好ましい範囲は、0.05〜0.93であり、より好ましくは、0.06〜0.90である。
尚、本発明において、(TA/TZ)を0.95以下となるようにするには、入射光の波長域の平均全光線透過率(TA)を低くしたり、変換光の波長域の平均全光線透過率(TZ)を高くすればよい。(TA)を低くすることにより、入射光を部材内で別の波長の光に効率良く変換でき、(TZ)を高くすることにより、部材から出てくる変換光の光量を多くできる。
より具体的には、入射光の波長域の平均全光線透過率(TA)及び変換光の波長域の平均全光線透過率(TZ)を以下のようにすることが好ましい。
350〜430nmの波長域の範囲にある光を入射光として用いる場合、0.1〜2mmの範囲の厚みで350〜430nmの入射光波長域における部材の平均全光線透過率(TA)は30%以下であることが好ましい。この波長域における平均全光線透過率(TA)が大きくなるということは、入射光が部材中の蛍光体に吸収されず別の波長の光に効率良く変換されないことを意味しており、発光効率が低下する傾向にある。また、前記波長域は紫外域であるため、この波長域の平均全光線透過率が大きくなると、周辺の部材が劣化したり、人体に悪影響を及ぼす可能性が高くなる。この波長域における部材の平均全光線透過率(TA)のより好ましい範囲は28%以下である。
350〜430nmの波長域の範囲にある入射光を蛍光体に効率よく吸収させて、この波長域における部材の平均全光線透過率を低くするには、例えば、入射光によって劣化し難い蛍光体を用いたり、蛍光体の粒度を大きくしたり、蛍光体の含有量を増やしたりすることで調整することができる。尚、部材中の蛍光体に前記波長域の入射光をより効率よく吸収させるためには、着色成分の含有量を可能な限り少なくしてこの波長域における透過率を高めたガラスを用いればよい。
前記波長域の光を入射光として用いる場合、変換光波長域における平均全光線透過率(TZ)は、0.1〜2mmの範囲の厚みで430〜700nmの波長において、10%以上であることが好ましい。この波長域における平均全光線透過率(TZ)が小さくなるということは、部材から出てくる変換光が効率よく取り出されていないということを意味しており、発光効率が低下する傾向にある。この波長域における部材の平均全光線透過率(TZ)のより好ましい範囲は12%以上である。
430〜700nmの波長域における部材の平均全光線透過率を高めて、部材から出てくる変換光が効率よく取り出すには、例えば、着色成分の含有量を可能な限り少なくしてこの波長域における透過率を高くしたガラスを用いることで調整できる。
また、430〜480nmの波長域の範囲にある光を入射光として用いる場合、0.1〜2mmの範囲の厚みで430〜480nmの入射光波長域における部材の平均全光線透過率(TA)は5〜80%であることが好ましい。この波長域における平均全光線透過率(TA)が大きくなるということは、入射光が部材中の蛍光体に吸収されず別の波長の光に効率良く変換されてないことを意味しており、部材からは青色の光のみが出射されることになり、所望の合成色(透過光と発光色の混合色)が得難くなる。一方、(TA)が小さくなるということは、部材からは青色の光が出射されてないこと意味しており、変換された光のみが出射されることになり、所望の合成色が得難くなる。この波長域における部材の平均全光線透過率(TA)のより好ましい範囲は7〜75%である。
430〜480nmの波長域における部材の平均全光線透過率を上記範囲となるように調整して、入射光を蛍光体に効率よく吸収させると同時に、入射光もある程度透過させるには、例えば、入射光によって劣化し難い蛍光体を用いたり、蛍光体の粒度を大きくしたり、蛍光体の含有量を増やしたり、この波長域における透過率を高めたガラスを用いることで調整することができる。
前記波長域の光を入射光として用いる場合、変換光波長域における平均全光線透過率(TZ)は、0.1〜2mmの範囲の厚みで480〜700nmの波長において、10%以上であることが好ましい。この波長域における平均全光線透過率(TZ)が小さくなるということは、部材から出てくる変換光が効率よく取り出されていないということを意味しており、発光効率が低下する傾向にある。この波長域における部材の平均全光線透過率(TZ)のより好ましい範囲は12%以上である。
480〜700nmの波長域における部材の平均全光線透過率を高めて、部材から出てくる変換光が効率よく取り出すには、例えば、着色成分の含有量を可能な限り少なくしてこの波長域における透過率を高くしたガラスを用いることで調整できる。
尚、発光効率を高めるには、部材の肉厚を薄くして透過率を高める方法があるが、肉厚が薄くなると、機械的強度が低下するため、割れや欠けが生じやすくなる。そこで、本発明において、肉厚を薄くして発光効率を高めながら、割れや欠けを防止するには、波長700nmにおける全光線透過率(%)×厚み(mm)の値が5〜15となるようにすることが好ましい。この値が大きくなると、部材の肉厚が厚い、若しくは、蛍光体の混合割合が少なくて透過率が高いため、発光効率が低下する傾向にある。一方、この値が低くなると、部材の肉厚が薄い、若しくは、蛍光体の混合割合が多くて、透過率が低いため、部材に割れや欠けが生じたり、発光効率が低下する傾向にある。
また、本発明において、部材の発光効率をより向上させるには、部材の気孔率(部材中に残存する泡の割合)を10%以下にすることが好ましい。気孔率が大きくなると、光の散乱が強くなり、入射光が部材の内部まで透過し難くなり、別の波長の光に効率良く変換され難くなったり、変換されて部材から出射される光の光量が低下して部材の発光効率が低下しやすくなる。また、部材の機械的強度が低下し易くなる。気孔率のより好ましい範囲は8%以下である。尚、本発明でいう気孔率とは、アルキメデス法を用いて、焼成体のかさ密度を測定し、次に、焼成体を粉砕してウルトラピクノメーターにより、焼成体の真密度を測定し、(1−かさ密度/真密度)×100(%)で求めた値をいう。
本発明において使用できる無機蛍光体粉末としては、一般的に市中で入手できるものであれば使用できる。無機蛍光体には、YAG系、酸化物、アルミン酸塩、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、希土類酸硫化物、ハロリン酸塩及び塩化物などからなるものがある。
YAG系蛍光体、酸化物蛍光体は、ガラス粉末と混合して焼成しても酸化されることはなく安定である。また、アルミン酸塩、窒化物、酸窒化物、硫化物、希土類酸硫化物、ハロリン酸塩、塩化物などの蛍光体は焼成時の加熱により、酸化されたり、ガラスと反応し、発泡や変色などの異常反応を起こしやすく、その程度は、焼結温度が高温であればあるほど著しくなる。しかし、これらの無機蛍光体を用いる場合、焼成温度とガラス組成を最適化することで反応を抑えることができる。
上記の無機蛍光体の中でも、特に、波長350〜480nmに励起帯を有し、波長430〜700nmに発光ピークを有するもの、特に、青色(波長430〜480nm)、緑色(波長500〜540nm)、黄色(波長540〜600nm)赤色(波長600〜700nm)に発光するものを用いることが好ましい。
波長350〜430nmの紫外域の励起光を照射すると青色の蛍光を発する蛍光体としては、Sr5(PO4)3Cl:Eu2+、(Sr,Ba)MgAl10O17:Eu2+、(Sr,Ba)3MgSi2O8:Eu2+を用いることができる。
波長350〜430nmの紫外域の励起光を照射すると緑色の蛍光を発する蛍光体としては、SrAl2O4:Eu2+、SrGa2S4:Eu2+、SrBaSiO4:Eu2+、CdS:In、CaS:Ce3+、Y3(Al,Gd)5O12:Ce2+、Ca3Sc2Si3O12:Ce3+、SrSiOn:Eu2+、ZnS:Al3+,Cu+、CaS:Sn2+、CaS:Sn2+,F、CaSO4:Ce3+,Mn2+、LiAlO2:Mn2+、BaMgAl10O17:Eu2+,Mn2+、ZnS:Cu+,Cl-、Ca3WO6:U、Ca3SiO4Cl2:Eu2+、Sr0.2Ba0.7Cl1.1Al2O3.45:Ce3+,Mn2+、Ba2MgSi2O7:Eu2+、Ba2SiO4:Eu2+、Ba2Li2Si2O7:Eu2+、ZnO:S、ZnO:Zn、Ca2Ba3(PO4)3Cl:Eu2+、BaAl2O4:Eu2+を用いることができる。
波長430〜480nmの青色の励起光を照射すると緑色の蛍光を発する蛍光体としては、SrAl2O4:Eu2+、SrGa2S4:Eu2+、SrBaSiO4:Eu2+、CdS:In、CaS:Ce3+、Y3(Al,Gd)5O12:Ce2+、Ca3Sc2Si3O12:Ce3+、SrSiON:Eu2+を用いることができる。
波長350〜430nmの紫外域の励起光を照射すると黄色の蛍光を発する蛍光体としては、ZnS:Eu2+、Ba5(PO4)3Cl:U、Sr3WO6:U、CaGa2S4:Eu2+、SrSO4:Eu2+,Mn2+、ZnS:P、ZnS:P3-,Cl-ZnS:Mn2+を用いることができる。
波長430〜480nmの青色の励起光を照射すると黄色の蛍光を発する蛍光体としては、Y3(Al,Gd)5O12:Ce2+、Ba5(PO4)3Cl:U、CaGa2S4:Eu2+を用いることができる。
波長350〜430nmの紫外域の励起光を照射すると赤色の蛍光を発する蛍光体としては、CaS:Yb2+,Cl、Gd3GA4O12:Cr3+、CaGa2S4:Mn2+、Na(Mg,Mn)2LiSi4O10F2:Mn、ZnS:Sn2+、Y3Al5O12:Cr3+、SrB8O13:Sm2+、MgSr3Si2O8:Eu2+,Mn2+、α−SrO・3B2O3:Sm2+、ZnS−CdS、ZnSe:Cu+,Cl、ZnGa2S4:Mn2+、ZnO:Bi3+、BaS:Au,K、ZnS:Pb2+、ZnS:Sn2+,Li+、ZnS:Pb,Cu、CaTiO3:Pr3+、CaTiO3:Eu3+、Y2O3:Eu3+、(Y、Gd)2O3:Eu3+、CaS:Pb2+,Mn2+、YPO4:Eu3+、Ca2MgSi2O7:Eu2+,Mn2+、Y(P、V)O4:Eu3+、Y2O2S:Eu3+、SrAl4O7:Eu3+、CaYAlO4:Eu3+、LaO2S:Eu3+、LiW2O8:Eu3+,Sm3+、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu2+,Mn2+、Ba3MgSi2O8: Eu2+,Mn2+を用いることができる。
波長430〜480nmの青色の励起光を照射すると赤色の蛍光を発する蛍光体としては、ZnS:Mn2+,Te2+、Mg2TiO4:Mn4+、K2SiF6:Mn4+、SrS:Eu2+、CaS:Eu2+、Na1.23K0.42Eu0.12TiSi4O11、Na1.23K0.42Eu0.12TiSi5O13:Eu3+、CdS:In,Te、CaAlSiN3:Eu2+、CaSiN3:Eu2+、(Ca,Sr)2Si5N8:Eu2+、Eu2W2O7を用いることができる。
尚、励起光の波長域や発光させたい色に合わせて複数の無機蛍光体粉末を混合して用いてもよい。例えば、紫外域の励起光を照射して、白色光を得たい場合は、青色、緑色及び赤色の蛍光を発する蛍光体を混合して使用すればよい。
尚、無機蛍光体粉末の粒度としては、1〜75μmの平均粒径を有するものを用いることが好ましい。無機蛍光体粉末の平均粒径が大きくなると、蛍光体を励起させるために入射した光が、部材の内部まで透過し難くなり、発光効率が低下する傾向にある。一方、平均粒径が小さくなると、焼成時に、ガラスと反応したり、発泡して、部材中の気孔率(部材中に残存する泡の割合)が大きくなり、部材の発光効率が低下しやすくなる。無機蛍光体粉末の平均粒径のより好ましい範囲は1〜50μmである。
本発明において使用するガラス粉末には、無機蛍光体を安定に保持するための媒体としての役割がある。また、使用するガラスの組成系によって、蛍光体複合部材の色調が異なり、無機蛍光体粉末との反応性に差がでるため、種々の条件を考慮して使用するガラスの組成を選択する必要がある。さらにガラス組成に適した無機蛍光体の添加量や、部材の厚みを決定することも重要である。ガラス粉末としては、無機蛍光体と反応しにくいものであれば、特に、組成系に制限はないが、850℃以下(より好ましくは800℃以下)の軟化点を有するガラスからなるものを用いることが好ましい。ガラスの軟化点が高くなると、材料の焼成温度も高くなるため、蛍光体が劣化して、発光効率の高い蛍光体複合部材を得にくくなる。ガラス粉末としては、例えば、SiO2−B2O3系ガラス、SiO2−RO(ROはMgO、CaO、SrO、BaOを表す)系ガラス、SiO2−B2O3−R2O(R2OはLi2O、Na2O、K2Oを表す)系ガラス、SiO2−B2O3−Al2O3系ガラス、SiO2−B2O3−ZnO系ガラス、ZnO−B2O3系ガラスを用いることができる。尚、材料を低温で焼成したい場合、比較的容易に軟化点を低下させることが可能なZnO−B2O3系ガラス、SnO−P2O5系ガラスを選択すればよく、蛍光体複合部材の耐候性を向上させたい場合は、SiO2−B2O3系ガラス、SiO2−RO系ガラス、SiO2−B2O3−R2O系ガラス、SiO2−B2O3−Al2O3系ガラス、SiO2−B2O3−ZnO系ガラスを選択すればよい。
部材の発光効率をより向上させるには、上記のガラスの中でも、特に、肉厚1mm換算で、波長350〜430nmにおいて50%以上の平均全光線透過率を有し、且つ、波長430〜700nmにおいて80%以上の平均全光線透過率を有するガラスからなるものを用いることが好ましい。上記波長域における平均全光線透過率が低くなると、蛍光体を励起させるために入射した光が部材の内部まで透過し難くなったり、部材から出射される変換光の光量が低下し、部材の発光効率が低下しやすくなる。波長350〜430nmにおけるガラスの平均全光線透過率のより好ましい範囲は53%以上であり、波長430〜700nmにおけるガラスの平均全光線透過率のより好ましい範囲は83%以上である。
尚、波長350〜700nmにおけるガラスの平均全光線透過率を高くするには、ガラス中のFe2O3、Cr2O3、Co2O3、CuO、Ce2O3等の着色成分の含有量を可能な限り少なくすれば良い。特に、Fe2O3の含有量を少なくすることで、波長350〜430nmにおけるガラスの平均全光線透過率を高めることができる。
また、紫外線によってガラスが着色することを抑えたい場合には、TiO2やSnO2をガラス中に少量(1質量まで)含有させればよい。
ガラス粉末の粒度としては、0.1〜300μmの平均粒径を有するものを用いることが好ましい。ガラス粉末の平均粒径が大きくなると、焼成時に低温でガラスが焼結し難くなる。一方、平均粒径が小さくなると、焼成時に、発泡して、部材中の気孔率が大きくなり、部材の発光効率が低下しやすくなる。ガラス粉末の平均粒径のより好ましい範囲は0.7〜250μmである。
蛍光体複合部材の発光効率は、ガラス中に分散した蛍光体粒子の種類や含有量、及び蛍光体複合部材の肉厚によって変化する。発光効率を高めたい場合、部材の肉厚を薄くして励起光や変換された光の透過光を高めたり、蛍光体の含有量を増加させて、変換する光量を増加させることで調整すればよいが、蛍光体が多くなりすぎると、焼結しにくくなり、気孔率が大きくなって、励起光が効率良く蛍光体に照射されにくくなったり、蛍光体複合部材の機械的強度が低下しやすくなるなどの問題が生じる。一方、少なすぎると、十分に発光させることが難しくなる。従って、酸化物ガラス粉末と無機蛍光体粉末の混合割合は、質量比で、99.99:0.01〜70:30の範囲で調整することが好ましく、より好ましくは99.95:0.05〜80:20、特に、99.92:0.08〜85:15の範囲で調整することが好ましい。
本発明の蛍光体複合部材は、上記の無機蛍光体粉末とガラス粉末及び有機系樹脂バインダーを含む混合物を混練し、シート状に成形したグリーンシートを焼成することで得ることができる。このようにすることで、肉厚が薄く、均一な厚みを有し、大きいサイズの蛍光体複合部材を得ることができる。グリーンシート以外にも、上記の無機蛍光体粉末とガラス粉末とを含む混合物を予め所望の形状に成型したものを焼成してもよい。成型方法としては、特に、制限はなく、発光色変換材料を金型に入れて加圧成型するプレス成形法や、射出成形法、シート成形法、押し出し成形法等の方法を採用することができる。また、焼成して得られた焼結体に研磨、切断等の後加工を施してもよい。
焼成雰囲気としては大気中で焼成したり、ガラスと蛍光体の反応を抑えるために窒素或いはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で焼成してもよいが、1気圧(1.013×105Pa)よりも低い気圧で焼成することが好ましい。1気圧よりも低い気圧で焼成することで、焼成時に、蛍光体を酸化させる原因となる雰囲気中の酸素の量を少なくでき、蛍光体の劣化を防止できる以外にも、ガラスが軟化して融着する際に生じる泡が抜けやすくなるため、部材の気孔率を小さくできる。尚、本発明の蛍光体複合部材の製造方法において、焼成雰囲気を1気圧以上にして焼成すると、焼成時に、蛍光体が酸化されて劣化しやすくなったり、気孔率が大きくなり、発光効率が低下する傾向にある。焼成雰囲気の気圧のより好ましい範囲は0.9×105Pa以下であり、さらに好ましくは1000Pa以下であり、特に好ましくは200Pa以下である。
また、焼成温度としては、300〜900℃(より好ましくは300〜850℃温度が)の範囲であり、且つ、ガラスの軟化点±50℃以内であることが望ましい。焼成温度が900℃又はガラスの軟化点+50℃より高くなると、蛍光体が劣化したり、ガラスと蛍光体が反応して発光効率が著しく低下する場合がある。また、焼成温度が300℃又はガラスの軟化点−50℃より低くなると、蛍光体複合部材の気孔率が増加し、光の散乱が強くなり透過する光量が低下して部材の発光効率が低下する場合がある。
以下、実施例に基づき本発明を説明する。
表1及び表2は本発明の実施例(試料No.1、3、5、7)及び比較例(試料No.2、4、6、8)を示している。
表中の各ガラスは次のように調製した。まず、表に示す組成となるように、各ガラス原料を秤量して混合し、この混合物を白金坩堝中において、900〜1400℃で1時間溶融した後、ガラス融液の一部をカーボン板の上に流し出して、更にアニール後、切断、研磨加工を行い、ガラスの平均全透過率を測定した。また、残りのガラス融液をローラー成型器を用いてフィルム状に成形した。フィルム状のガラスをボールミルで粉砕した後、表に示す平均粒径となるように分級し、ガラス粉末を得た。得られたガラス粉末について、軟化点を測定し、結果を表に示した。
次に、得られたガラス粉末と、無機蛍光体粉末を、表に示す配合比となるように混合したものを金型に入れて加圧成形し、直径1cmのボタン状の予備成型体を作製した。この予備成型体を、表に示す焼成温度と雰囲気下(気圧)で焼成した後、加工し、直径8mm、厚さ0.5mmの円盤状の蛍光体複合部材を得た。得られた蛍光体複合部材について、気孔率、入射光波長域の平均全光線透過率(TA)、変換光波長域の平均全光線透過率(TZ)、(TA/TZ)の値、波長700nmにおける全光線透過率×厚みの値及び発光効率を測定し、結果を表に示した。
表から明らかなように、本発明の実施例である試料No.1、3、5及び7は、入射光
波長域の平均全光線透過率(TA)が11〜21%と低く、変換光波長域の平均全光線透過率(TZ)が31%以上と高く、(TA/TZ)の値が0.53以下であるため、発光効率も3.3lm/W以上と高かった。
波長域の平均全光線透過率(TA)が11〜21%と低く、変換光波長域の平均全光線透過率(TZ)が31%以上と高く、(TA/TZ)の値が0.53以下であるため、発光効率も3.3lm/W以上と高かった。
これに対して、比較例である試料No.No.2、4、6及び8は、(TA)が7〜11%と低いものの、変換光波長域の平均全光線透過率(TZ)が10%以下と低く、(TA/TZ)の値が1.00以上であるため、発光効率が0.8lm/W以下と低かった。
尚、ガラスの波長350〜430nm及び波長430〜700nmにおける平均全光線透過率については、厚さ1mmに光学研磨加工した試料を、分光光度計にて波長350〜700nmにおける全光線透過率を測定し、波長350〜430nm及び波長430〜700nmにおける全光線透過率の平均値をそれぞれの平均全光線透過率として示した。
軟化点については、マクロ型示差熱分析計を用いて測定し、第四の変曲点の値を軟化点とした。
気孔率については、アルキメデス法を用いて、焼成体のかさ密度を測定し、次に、焼成体を粉砕してウルトラピクノメーターにより、焼成体の真密度を測定し、(1−かさ密度/真密度)×100(%)で求めた値を気孔率とした。
蛍光体複合部材の入射光波長域の平均全光線透過率(TA)及び変換光波長域の平均全光線透過率(TZ)については、厚さ0.5mmの試料を、分光光度計にて波長350〜700nmにおける全光線透過率を測定し、入射光波長域及び変換光波長域における全光線透過率の平均値をそれぞれの平均全光線透過率として示した。
発光効率については、電流20mAで操作した表に示す波長の入射光を試料の片面に入射し、入射面の反対側の面から発せられた光を汎用の蛍光スペクトル装置を用いて発光スペクトルを測定し、得られたスペクトルに標準比視感度を掛け合わせて全光束を計算し、得られた全光束を光源の電力(0.072W)で除して算出した。
本発明の蛍光体複合部材は、LED用途に限られるものではなく、レーザーダイオード等のように、ハイパワーの励起光を発するものに用いることも可能である。
Claims (12)
- 入射光を別の波長の光に変換して発光する蛍光体複合部材において、無機蛍光体粉末とガラス粉末とを含む混合物を焼成してなり、且つ、入射光波長域の平均全光線透過率(TA)と変換光波長域の平均全光線透過率(TZ)の比(TA/TZ)が0.95以下であることを特徴とする蛍光体複合部材。
- 入射光波長域が350〜430nmであり、0.1〜2mmの範囲の厚みで入射光波長域における平均全光線透過率(TA)が30%以下であることを特徴とする請求項1記載の蛍光体複合部材。
- 変換光波長域が430〜700nmであり、0.1〜2mmの範囲の厚みで変換光波長域における平均全光線透過率(TZ)が10%以上であることを特徴とする請求項1また2記載の蛍光体複合部材。
- 入射光波長域が430〜480nmであり、0.1〜2mmの範囲の厚みで入射光波長域における平均全光線透過率(TA)が5〜80%であることを特徴とする請求項1記載の蛍光体複合部材。
- 変換光波長域が480〜700nmであり、0.1〜2mmの範囲の厚みで変換光波長域における平均全光線透過率(TZ)が10%以上であることを特徴とする請求項1また4記載の蛍光体複合部材。
- 波長700nmにおける全光線透過率×厚みの値が5〜15であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光体複合部材。
- 無機蛍光体粉末が、YAG系、酸化物、アルミン酸塩、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、希土類酸硫化物、ハロリン酸塩及び塩化物の群から選ばれたいずれか一種以上からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光体複合部材。
- 1〜75μmの平均粒径を有する無機蛍光体粉末を用いてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の蛍光体複合部材。
- ガラス粉末が、肉厚1mm換算で、波長350〜430nmにおいて50%以上の平均全光線透過率を有し、且つ、波長430〜700nmにおいて80%以上の平均全光線透過率を有するガラスからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光体複合部材。
- 0.1〜300μmの平均粒径を有するガラス粉末を用いてなることを特徴とする請求項1〜6及び9のいずれかに記載の蛍光体複合部材。
- ガラス粉末と無機蛍光体粉末の混合割合が、質量比で99.99:0.01〜70:30の範囲にあることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の蛍光体複合部材。
- ガラス粉末と無機蛍光体粉末を含む混合物を1気圧(1.013×105Pa)よりも低い気圧で焼成してなることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の蛍光体複合部材。
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