次に、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器を説明する。図1は、本実施形態による水洗大便器の右側面図である。図2は本実施形態による水洗大便器の上面図であり、図3は左側面図である。また、図4は本実施形態による水洗大便器を後方右斜め上から見た斜視図であり、図5は後方左斜め上から見た斜視図である。さらに、図6は、図2のVI−VI線に沿う断面図である。また、図7は、リム吐水及びジェット吐水の給水系統を示すブロック図である。なお、図2乃至6は、本実施形態による水洗大便器を、便座、カバー、局部洗浄装置、及びサイドパネルを取り外した状態で示している。
図1に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、水洗大便器本体2と、水洗大便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置されたカバー6と、水洗大便器本体2の後方上部に配置された局部洗浄装置8と、を有する。また、水洗大便器本体2の後方には、機能部10が配置されており、この機能部10はサイドパネル10aにより覆われている。
水洗大便器本体2は陶器製であり、汚物を受けるボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。排水トラップ管路14は、ボウル部12の底部から後方、斜め上方に延びた後、下方に向かって延びて排水管Dに接続されている。ジェット吐水口16は、ボウル部12の底部に形成されており、排水トラップ管路14の入口に向けて洗浄水を吐出するように構成されている。リム吐水口18は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、ボウル部12の縁に沿って洗浄水を吐出するように構成されている。
本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、機能部10に内蔵された貯水タンクに貯水された洗浄水を加圧ポンプによって加圧して、大流量でジェット吐水口16から吐出させるように構成されている。
次に、図2乃至図7を参照して、機能部10の構成を説明する。
図2乃至図7に示すように、機能部10には、リム吐水用の給水系統として、定流量弁20と、リム吐水用電磁弁22と、リム吐水用バキュームブレーカ24と、リム吐水用フラッパー弁26が内蔵されている。さらに、機能部10には、ジェット吐水用の給水系統として、タンク給水用電磁弁28と、タンク給水用バキュームブレーカ30と、貯水タンク32と、加圧ポンプ34と、ジェット吐水用バキュームブレーカ36と、ジェット吐水用フラッパー弁38が内蔵されている。さらに、機能部10には、リム吐水用電磁弁22、タンク給水用電磁弁28、及び加圧ポンプ34を制御する洗浄制御手段であるコントローラ40(図7)が内蔵されている。
定流量弁20は、止水栓42a、分岐金具42b、及びストレーナ42c(以上、図7に図示)を介して入水口20aから流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るように構成されている。本実施形態においては、定流量弁20は、洗浄水の流量を16リットル/分以下に制限するように構成されている。また、定流量弁20を通過した洗浄水は、2つに分岐され、一方はリム吐水用電磁弁22に、他方はタンク給水用電磁弁28に流入するように接続されている。なお、本実施形態においては、定流量弁20は、水洗大便器本体2の後方左側に配置されている。
リム吐水用電磁弁22は、コントローラ40の制御信号により開閉され、リム吐水口18から洗浄水を吐出、停止させるように構成されている。本実施形態においては、リム吐水用電磁弁22は、定流量弁20と同様に、水洗大便器本体2の後方左側に配置されている。
リム吐水用バキュームブレーカ24は、リム吐水用電磁弁22を通過した洗浄水をリム吐水口18へ導くリム側給水路18aの途中に配置され、洗浄水のリム吐水口18からの逆流を防止している。また、リム吐水用バキュームブレーカ24は、ボウル部12の上端面よりも約25.4mm(約1インチ)上方に配置されており、逆流を確実に防止している。なお、本実施形態においては、リム吐水用バキュームブレーカ24は、水洗大便器本体2の後方中央の、排水トラップ管路14の上方に配置されている。
リム吐水用フラッパー弁26は、リム吐水用バキュームブレーカ24の下流側のリム側給水路18aに配置され、洗浄水のリム吐水口18からの逆流を防止している。本実施形態においては、リム側給水路18aにリム吐水用バキュームブレーカ24とリム吐水用フラッパー弁26を直列に配置することによって、より確実に洗浄水の逆流を防止している。なお、本実施形態においては、リム吐水用フラッパー弁26は、水洗大便器本体2の後方左側の、ジェット吐水用フラッパー弁38の上方に配置されている。
タンク給水用電磁弁28は、コントローラ40の制御信号により開閉され、洗浄水を貯水タンク32へ給水、停止させるように構成されている。本実施形態においては、タンク給水用電磁弁28は、定流量弁20と同様に、水洗大便器本体2の後方左側に配置されている。
タンク給水用バキュームブレーカ30は、タンク給水用電磁弁28を通過した洗浄水を貯水タンク32へ導くタンク給水路32aの途中に配置され、洗浄水の貯水タンク32からの逆流を防止している。また、タンク給水用バキュームブレーカ30は、ボウル部12の上端面よりも約25.4mm(約1インチ)上方に配置されており、逆流を確実に防止している。なお、本実施形態においては、タンク給水用バキュームブレーカ30は、水洗大便器本体2の後方中央の、排水トラップ管路14の上方に配置されている。
貯水タンク32は、ジェット吐水口16から吐水すべき洗浄水を貯水するように構成されている。なお、本実施形態において、貯水タンク32は、図6に示すように、水洗大便器本体2の後方右側から、水洗大便器本体2後方中央の排水トラップ管路14の上方まで延びるように配置されており、約3リットルの内容積を有する。また、水洗大便器本体2の後方には、取付部である樹脂製の取付フレーム2aが固定されており、この取付フレーム2aは、水洗大便器本体2とは別体に構成され、貯水タンク32の周囲を取り囲むように概ね矩形状に形成されている。貯水タンク32は、その上端のフランジ部が取付フレーム2aと係合することにより、取付フレーム2aから吊り下げられている。
さらに、本実施形態においては、タンク給水路32aの先端は貯水タンク32の底部近傍に開口されており、タンク給水路32aの先端が水没した状態で貯水タンク32への給水を行うことにより、給水時の騒音を低減している。また、貯水タンク32の内部には、フロートスイッチ32bが配置されており、貯水タンク32内の水位を検出するように構成されている。フロートスイッチ32bは、貯水タンク32内の水位が所定の貯水水位に達するとONに切り替わり、コントローラ40はこれを検知して、タンク給水用電磁弁28を閉鎖させるように構成されている。
加圧ポンプ34は、貯水タンク32に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口16から吐出させるように構成されている。本実施形態においては、加圧ポンプ34は、貯水タンク32の下方に、即ち、水洗大便器本体2の後方右側、排水トラップ管路14の側方に配置されている。また、図4に示すように、貯水タンク32の底面には下方に延びる2本のU字形の金属板32cが取り付けられており、加圧ポンプ34は、これらの金属板32cによって貯水タンク32の下方に吊り下げられている。
また、加圧ポンプ34は、洗浄水を加圧するインペラ34a、及びこのインペラ34aを駆動するモーター34b(図7)を内蔵している。さらに、加圧ポンプ34には、水抜き用水栓34c(図7)が接続されており、この水抜き用水栓34cを開放することにより、メンテナンス時等に貯水タンク32内及び加圧ポンプ34内の洗浄水を排出できるように構成されている。また、加圧ポンプ34の下方には、水受けトレイ2bが配置されており、結露した水滴や漏水を受けるように構成されている。
また、図4に示すように、貯水タンク32は、貯水タンク32から水洗大便器本体2の前方に向かって延びた後、Uターンして後方に向かうU字管34dを介して加圧ポンプ34に接続されている。さらに、加圧ポンプ34によって加圧された洗浄水は、排水トラップ管路14の後ろ側を、水洗大便器本体2を横断して延びる横断管34eを介してジェット吐水用バキュームブレーカ36に流入するように構成されている。なお、本実施形態においては、加圧ポンプ34は、貯水タンク32内の洗浄水を加圧して、洗浄水を最大約100リットル/分の流量でジェット吐水口16から吐出させるように構成されている。
ジェット吐水用バキュームブレーカ36は、加圧ポンプ34の下流側に接続されており、ボウル部12内の溜水が貯水タンク32側へ逆流するのを防止すると共に、それらの間の縁切りを行うように構成されている。これにより、貯水タンク32内の貯水水位を、ボウル部12内の溜水水位よりも高く設定することが可能になる。なお、本実施形態においては、ジェット吐水用バキュームブレーカ36は、水洗大便器本体2の後方の、排水トラップ管路14の左側に配置されている。
ジェット吐水用フラッパー弁38は、ジェット吐水用バキュームブレーカ36の下流側に接続され、洗浄水のジェット吐水口16からの逆流を防止している。本実施形態においては、ジェット吐水用バキュームブレーカ36とジェット吐水用フラッパー弁38を直列に配置することによって、より確実に洗浄水の逆流を防止している。ジェット吐水用フラッパー弁38を通過した洗浄水は、ジェット側給水路16aを通ってジェット吐水口16から吐出されるように構成されている。なお、本実施形態においては、ジェット吐水用フラッパー弁38は、水洗大便器本体2の後方の、排水トラップ管路14の左側に配置されている。即ち、排水トラップ管路14の右側に配置されている貯水タンク32に貯水され、加圧ポンプ34によって加圧された洗浄水は、横断管34eを通って、排水トラップ管路14に対して反対側の左側に至り、そこに配置されたジェット吐水用バキュームブレーカ36、ジェット吐水用フラッパー弁38及びジェット側給水路16aを通ってジェット吐水口16から吐出されるように構成されている。
また、本実施形態においては、ジェット吐水用フラッパー弁38は、水洗大便器本体2の後方左側の、リム吐水用フラッパー弁26の下方に配置されている。従って、リム吐水用フラッパー弁26から延び、リム吐水口18に至るリム側給水路18aも、排水トラップ管路14に対してジェット側給水路16aと同じ側に配置されている。
洗浄制御手段であるコントローラ40は、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作により、リム吐水用電磁弁22、加圧ポンプ34を順次作動させ、リム吐水口18及びジェット吐水口16からの吐水を順次開始させて、ボウル部12を洗浄するように構成されている。さらに、コントローラ40は、洗浄終了後、タンク給水用電磁弁28を開放して貯水タンク32に洗浄水を補給し、フロートスイッチ32bが規定の貯水量を検出すると、タンク給水用電磁弁28を閉鎖して給水を停止するように構成されている。従って、タンク給水用電磁弁28は、洗浄水補給手段として作用する。
また、コントローラ40は、貯水タンク32への洗浄水の補給が開始された後、フロートスイッチ32bが所定の貯水水位を検出するまでの時間を計測する計時手段40aを内蔵している。さらに、コントローラ40は、計時手段40aによって測定された時間に基づいて、リム吐水口16からの洗浄水の吐水時間を調整する吐水時間調整手段40bを内蔵している。また、コントローラ40は、水洗大便器1が設置された室内の温度を測定する温度検出手段である温度センサ40cと、水洗大便器1内の洗浄水に凍結する虞がある場合に凍結防止運転を実行する凍結防止制御手段40dと、凍結防止運転の時間間隔をカウントするタイマー40eと、を有する。具体的には、コントローラ40は、CPU、メモリ、及びそれらを作動させるプログラムにより構成されている。
次に、図8を参照して、ジェット吐水用バキュームブレーカ36の構成を説明する。図8は、ジェット吐水用バキュームブレーカ36の断面図である。図8に示すように、ジェット吐水用バキュームブレーカ36は、入水口44a、及び出水口44bが形成されたバルブ本体44と、このバルブ本体44内で鉛直方向に移動可能に配置されたバキュームブレーカコマ46と、バルブ本体44に取り付けられ、大気開放口48aが形成されたバキュームブレーカ本体48と、を有する。
バルブ本体44の入水口44aは、鉛直上方に向けて開口しており、横断管34eに連通するように連結されている。また、出水口44bは、水平方向に向けて開口しており、ジェット吐水用フラッパー弁38の入口に連結されている。
バキュームブレーカコマ46は、概ね円盤状の弁体部46aと、この弁体部46aの中心から鉛直上方に延びる軸部46bと、を有する。さらに、弁体部46aの下面には入水口44aを閉鎖する下面シール材46cが取り付けられ、弁体部46aの上面には大気開放口48aを閉鎖する上面シール材46dが取り付けられている。
バキュームブレーカ本体48は概ね円筒状の部材であり、その下端に大気開放口48aが形成され、下部がバルブ本体44に嵌め込まれている。また、バキュームブレーカ本体48の中心軸線上には、バキュームブレーカコマ46の軸部46bを摺動可能に受け入れるガイド部48bが設けられている。軸部46bがガイド部48bに受け入れられることにより、バキュームブレーカコマ46は、下面シール材46cが入水口44aを閉鎖する下方位置と、上面シール材46dが大気開放口48aを閉鎖する上方位置との間で摺動可能に支持される。
使用時において、入水口44aから洗浄水が流入すると、その水勢によりバキュームブレーカコマ46は上方位置に移動され、大気開放口48aが閉鎖される。これにより、入水口44aから流入した洗浄水は、出水口44bから吐出される。さらに、入水口44aからの洗浄水の流入が停止されると、バキュームブレーカコマ46は重力により下方位置に移動され、入水口44aが閉鎖される。これにより、出水口44bから入水口44aへの洗浄水の逆流が防止される。また、出水口44bは大気開放口48aと連通するので、入水口44aと出水口44bは縁切りされ、入水口44aに連通した貯水タンク32と、出水口44bに連通したボウル部12の水位は連動しなくなる。
ここでは、ジェット吐水用バキュームブレーカ36の構造を説明したが、リム吐水用バキュームブレーカ24及びタンク給水用バキュームブレーカ30も同様の構造を有する。
次に、図9乃至図13を参照して、メンテナンス時における貯水タンク32及び加圧ポンプ34の取り外し手順を説明する。図9乃至図13は、貯水タンク32及び加圧ポンプ34を一体的に水洗大便器本体2の上方に取り出す手順を示す斜視図及び側面図である。
まず、図9に示すように、貯水タンク32及び加圧ポンプ34の取り外す際には、水洗大便器本体2の上に取り付けられた便座4、カバー6、及び局部洗浄装置8を取り外し、機能部10の上部を露出させる。次に、図10に示すように、機能部10の両側に取り付けられているサイドパネル10aを取り外す。次いで、図11に示すように、貯水タンク32の上方に配置されているリム吐水用バキュームブレーカ24、タンク給水用バキュームブレーカ30、及びジェット吐水用バキュームブレーカ36と、これらに接続されている配管を取り外す。さらに、貯水タンク32のフランジ部を取付フレーム2aに固定しているビスを取り外す。
次に、図12に示すように、貯水タンク32と加圧ポンプ34を接続しているU字管34dの接続部50a、50bを、サイドパネル10aを取り外すことによって露出された機能部10の側面から手を差し入れて取り外す。同様に、加圧ポンプ34と横断管34eの接続部50cを取り外す。また、加圧ポンプ34に接続されている電気コネクタ(図示せず)も取り外す。さらに、図13に示すように、取付フレーム2aから吊り下げられている貯水タンク32を、水洗大便器本体2の上方に引き上げて取り外す。これにより、金属板32cによって貯水タンク32から吊り下げられている加圧ポンプ34も一体的に取り外される。
次に、図14乃至図16を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器1の作用を説明する。図14は、水洗大便器1の洗浄時において各部が作動するタイミングを示すグラフであり、上段から順に、リム吐水用電磁弁22、タンク給水用電磁弁28、フロートスイッチ32b、加圧ポンプ34が作動するタイミングを示している。図15は水洗大便器1の洗浄作用を示すフローチャートである。
まず、待機状態(図15のステップS0)において、便器洗浄スイッチ(図示せず)が操作されると、ステップS1に進み、1回目のリム吐水が開始される。即ち、図14の時刻t0において、使用者が便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、コントローラ40はリム吐水用電磁弁22に信号を送って開放させ、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水を吐出させる。リム吐水用電磁弁22が開放されると、水道から供給された洗浄水が止水栓42a、分岐金具42b、ストレーナ42cを経て入水口20aから定流量弁20に流入する。定流量弁20では、水道の給水圧力が高い場合には、通過する洗浄水の流量が所定流量に制限され、給水圧力が低い場合には、洗浄水は流れを制限されることなくそのまま通過される。定流量弁20を通過した洗浄水は、さらに、水洗大便器本体2後方左側に配置されたリム吐水用電磁弁22を通過し、水洗大便器本体2後方中央の排水トラップ管路14の上方に配置されたリム吐水用バキュームブレーカ24に到達する。
さらに、リム吐水用バキュームブレーカ24を通過した洗浄水は、水洗大便器本体2後方左側に配置されたリム吐水用フラッパー弁26に流入した後、水洗大便器本体2の前方に向かって流れ、リム側給水路18aを通って、ボウル部12上部の後方左側に開口したリム吐水口18から吐出される。リム吐水口18から吐出された洗浄水は、ボウル部12内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部12の内壁面が洗浄される。
所定時間経過後、ステップS2に進み、ジェット吐水が開始される。即ち、コントローラ40は、図14の時刻t1において、加圧ポンプ34に信号を送りこれを起動させる。加圧ポンプ34が起動されると、貯水タンク32内に貯水されていた洗浄水が加圧される。水洗大便器本体2後方右側に配置された加圧ポンプ34によって加圧された洗浄水は、横断管34eを通って排水トラップ管路14の反対側に流れた後、排水トラップ管路14の右側に配置されたジェット吐水用バキュームブレーカ36に到達する。ジェット吐水用バキュームブレーカ36を通過した洗浄水は、水洗大便器本体2後方左側のリム吐水用フラッパー弁26の下に配置されたジェット吐水用フラッパー弁38に流入する。ジェット吐水用フラッパー弁38を通過した洗浄水は、水洗大便器本体2の前方に向かって流れ、リム側給水路18aの下側のジェット側給水路16aを通って、ボウル部12底部に開口したジェット吐水口16から吐出される。
ジェット吐水口16から吐出された洗浄水は排水トラップ管路14内に流入し、排水トラップ管路14を満水にしてサイホン現象を引き起こす。このサイホン現象により、ボウル部12内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路14に吸引され、排水管Dから排出される。なお、本実施形態においては、加圧ポンプ34によって加圧された洗浄水を約100リットル/分の大流量でジェット吐水口16から吐出させるので、排水トラップ管路14内のサイホン現象が急速に引き起こされ、ボウル部12内の溜水及び汚物は素早く排出される。好ましくは、ジェット吐水口16から吐出される洗浄水の最大流量は、約75乃至110リットル/分とする。
所定時間経過後、コントローラ40は、図14の時刻t2において、リム吐水用電磁弁22に信号を送ってこれを閉鎖させ、リム吐水口18からの吐水を停止させる。即ち、時刻t1〜t2においては、ジェット吐水口16からの吐水及びリム吐水口18からの吐水が同時に行われる。リム吐水口18からの吐水からの吐水中に加圧ポンプ34を起動させ、ジェット吐水口16からの吐水を開始することにより、加圧ポンプ34の起動音はリム吐水の音によってマスクされ、目立たなくなる。
加圧ポンプ34が起動され、貯水タンク32内の洗浄水がジェット吐水口16から吐水されることにより、貯水タンク32内の水位が低下する。貯水タンク32内に配置されたフロートスイッチ32bは、図14の時刻t3において、OFFとなり、水位が低下したことが検知される。
次いで、図14の時刻t4において、コントローラ40は、加圧ポンプ34に信号を送り、加圧ポンプ34に内蔵されたモーター34bの回転数の漸減を開始させる。これにより、ジェット吐水口16からの吐水流量も時間に対してほぼ直線的に漸減される。
次いで、図15のステップS3に進み、2回目のリム吐水が開始される。即ち、図14の時刻t5において、コントローラ40は、リム吐水用電磁弁22に信号を送ってこれを開放させ、リム吐水口18からの2回目の吐水を開始させる。これにより、吐水流量が漸減しているジェット吐水口16からの吐水にリム吐水口18からの吐水が重畳される。ここで、ジェット吐水口16から最大流量で吐水が行われている間は、排水トラップ管路14から排出される洗浄水の流量と、ジェット吐水口16から流入する洗浄水の流量がほぼ同等であるため、排水トラップ管路14内のサイホン現象は持続され、途切れることはない。さらに、ジェット吐水口16からの吐水流量を最大流量から漸減させることにより、サイホン現象が急激に途切れることによる大きなサイホン切れ音の発生が防止される。加えて、リム吐水口18からの吐水を重畳させることにより、吐水流量の低下はさらに緩やかになり、サイホン現象が途切れる際の音はさらに低減される。
次いで、漸減しているモーター34bの回転数は、図14の時刻t6においてゼロとなり、加圧ポンプ34は停止する。時刻t1〜t6の間加圧ポンプ34を作動させることにより、所定のジェット吐水量の洗浄水がジェット吐水口16から吐出され、貯水タンク32内の貯水量は概ねゼロになる。加圧ポンプ34が停止されることによりジェット吐水口16からの吐水は停止される。これにより、ジェット吐水用バキュームブレーカ36のバキュームブレーカコマ46(図8)は入水口44aを閉鎖させ、ボウル部12内の溜水と貯水タンク32内の洗浄水が縁切りされる。本実施形態においては、コントローラ40は、ジェット吐水口16から最大流量で約2秒間吐水させた後、吐水流量を漸減させ、約1秒間で吐水流量がゼロとなるように加圧ポンプ34を制御している。好ましくは、約1.5乃至2秒間最大流量で吐水させた後、約1乃至5秒間で吐水流量がゼロとなるように制御する。
リム吐水口18からの2回目の吐水によりボウル部12内の溜水の水位は上昇し、所定のリム吐水時間経過後、ボウル部12内は所定の溢流水位に到達する。図14の時刻t7において、コントローラ40は、リム吐水用電磁弁22に信号を送ってこれを閉鎖させ、リム吐水口18からの2回目の吐水を停止させる。なお、図15に示すフローチャートでは、簡単のため1回目のリム吐水の後、ジェット吐水が開始され、ジェット吐水の後2回目のリム吐水が実行されるように記載されているが、本実施形態においては、より詳細には図14に示すように、各吐水が重畳される期間が存在する。
次いで、図15のステップS4に進み、貯水タンク32への洗浄水の補給が開始されると共に、コントローラ40に内蔵された計時手段40aは、貯水タンク32が規定の貯水量に復帰するまでの水補給時間の計測を開始する。即ち、リム吐水口18からの吐水が停止した後、所定の給水待ち時間が経過した時刻t8において、コントローラ40は、タンク給水用電磁弁28に信号を送り、これを開放させる。タンク給水用電磁弁28が開放されると、入水口20aから流入した洗浄水は、水洗大便器本体2後方左側に配置されたタンク給水用電磁弁28、タンク給水路32aを通過して、水洗大便器本体2後方中央の排水トラップ管路14の上方に配置されたタンク給水用バキュームブレーカ30に流入する。タンク給水用バキュームブレーカ30を通過した洗浄水は、排水トラップ管路14の右側に流れ、貯水タンク32の底部近傍まで延びるタンク給水路32aの先端から貯水タンク32内に流入する。洗浄水が流出するタンク給水路32aの先端は、貯水タンク32内でほぼ水没した状態にあるため、洗浄水が貯水タンク32内に流入する際の騒音が低減される。
次いで、図15のステップS6においては、OFF状態のフロートスイッチ32bがONになったか否かが判断され、OFF状態である場合にはステップS6の処理が繰り返される。貯水タンク32内に洗浄水が流入し、貯水タンク32内の水位が規定の貯水量に達すると、フロートスイッチ32bがONになる(図14の時刻t9)。フロートスイッチ32bがONになると、ステップS7に進み、タンク給水用電磁弁28が閉鎖される。即ち、コントローラ40はタンク給水用電磁弁28に信号を送り、これを閉鎖させる。次いで、ステップS8に進み、計時手段40aは水補給時間の計測を終了する。
次に、ステップS9においては、コントローラ40に内蔵された吐水時間調整手段40bにより、便器洗浄が次に行われた際の2回目のリム吐水時間(図14におけるt5〜t7)が決定される。まず、吐水時間調整手段40bは、計時手段40aによって計測された水補給時間の過去50回の移動平均値を計算する。即ち、タンク給水用電磁弁28を開放した時刻Ts(図7におけるt8)から閉鎖した時刻Te(図7におけるt9)までの経過時間である水補給時間Te−Tsの直近の過去50回分の平均値Tavを計算する。吐水時間調整手段40bは、この平均値Tavが5秒未満である場合には、水洗大便器1が通常圧である0.07MPa以上の給水圧の地域に設置されていると判断する。また、吐水時間調整手段40bは、平均値Tavが5秒以上7秒未満である場合には、水洗大便器1が給水圧の低い地域に設置されていると判断する。さらに、吐水時間調整手段40bは、平均値Tavが7秒以上である場合には、水洗大便器1が給水圧0.03MPa以下の超低圧地域に設置されていると判断する。
さらに、吐水時間調整手段40bは、水洗大便器1が通常圧の地域に設置されていると判断した場合には、次回の便器洗浄時における2回目のリム吐水時間を3秒に設定する。また、吐水時間調整手段40bは、低圧地域と判断した場合には4秒に、超低圧地域と判断した場合には5.5秒に、2回目のリム吐水時間を設定する。これにより、水道の給水圧力が高い地域において、長時間リム吐水を行って洗浄水を無駄にしたり、水道の給水圧力が低い地域において十分な時間リム吐水を行わずに洗浄水が不足したりするのを防止することができる。
また、上記のように、吐水時間調整手段40bは、直近の過去50回分の水補給時間の平均値Tavに基づいて次回の洗浄における2回目のリム吐水時間を設定していたが、過去の便器洗浄が50回に満たない場合には、過去全ての水補給時間を平均して平均値Tavを計算する。さらに、水洗大便器1設置後、初めて便器洗浄を行う場合には、洗浄水が不足することのないよう、2回目のリム吐水時間は5.5秒に設定される。
ステップS9において、次回便器洗浄が行われた際の2回目のリム吐水時間が決定されると、ステップS0の待機状態に戻る。
次に、図16を参照して、コントローラ40に内蔵された凍結防止制御手段40cの作用を説明する。図16は水洗大便器1の凍結防止運転の処理を示すフローチャートである。
まず、水洗大便器1において、便器洗浄が実行されていない待機状態であるステップS100に続いて、ステップS101の処理が実行される。ステップS101においては、コントローラ40の温度センサ40cによって測定されたトイレ室内の温度が、所定の凍結防止運転温度以下であるか否かが判断される。トイレ室内の温度が凍結防止運転温度よりも高い場合には、ステップS102以降の凍結防止運転は実行されず、ステップS100に戻ってステップS101の処理が繰り返し実行される。本実施形態においては、凍結防止運転温度は5゜Cに設定されている。また、使用者が、水洗大便器1に設けられた操作スイッチ(図示せず)により凍結防止運転を行うように設定した場合にも凍結防止運転が実行される。本実施形態においては、凍結防止運転は、操作スイッチ(図示せず)の特殊操作により設定されるように構成されている。即ち、本来他の機能を実行するための複数の操作スイッチ(図示せず)を同時に操作したり、所定時間押し続けたりすることによって、凍結防止運転が設定される。
次に、トイレ室内の温度が凍結防止運転温度以下である場合には、ステップS102の処理が実行される。ステップS102においては、凍結防止制御手段40cは、リム吐水用電磁弁22を開放させる。リム吐水用電磁弁22を開放させることにより、水道から供給された洗浄水は水道の給水圧力により、止水栓42a、分岐金具42b、ストレーナ42c、定流量弁20、リム吐水用電磁弁22、リム吐水用バキュームブレーカ24、リム吐水用フラッパー弁26、及びリム側給水路18aを通り約15リットル/分の流量でリム吐水口18からボウル部12内に吐水される。これにより、これらの給水系統に滞留していた洗浄水が移動され、その凍結が防止される。約1秒経過後、ステップS103が実行され、凍結防止制御手段40cはリム吐水用電磁弁22を閉鎖させる。
次いで、ステップS104においては、凍結防止制御手段40cは加圧ポンプ34を低速で回転させる。加圧ポンプ34が回転されると、貯水タンク32内の洗浄水は、加圧ポンプ34、ジェット吐水用バキュームブレーカ36、ジェット吐水用フラッパー弁38、及びジェット側給水路16aを通ってジェット吐水口16から吐水される。これにより、これらの給水系統に滞留していた洗浄水が移動され、その凍結が防止される。所定の凍結防止ポンプ作動時間である約20秒経過後、ステップS105が実行され、凍結防止制御手段40cは加圧ポンプ34を停止させる。なお、本実施形態においては、加圧ポンプ34は、ジェット吐水口16から約0.7リットル/分の流量で洗浄水が吐水される回転数で作動される。このような低流量でジェット吐水口16からの吐水を行うことにより、排水トラップ管路14内でサイホン現象を発生させることなく、上記給水系統に滞留している洗浄水を移動させることができる。これにより、サイホン現象発生による騒音が防止されると共に、洗浄水の浪費は最小限に抑えられる。
次に、ステップS106においては、フロートスイッチ32bの状態が判断される。貯水タンク32内の洗浄水の貯水量は、加圧ポンプ34を約20秒間作動させたことにより低下されている。貯水タンク32内に設けられたフロートスイッチ32bは、貯水量が所定の補給貯水量以下になるとOFFになる。フロートスイッチ32bがOFFにされている場合にはステップS107に進み、ステップS107においては、凍結防止制御手段40dはタンク給水用電磁弁28を開放させ、貯水タンク32内の洗浄水を補給する。即ち、フロートスイッチ32b及びタンク給水用電磁弁28は、貯水量維持手段として機能する。タンク給水用電磁弁28を開放させることにより、水道から供給された洗浄水は、止水栓42a、分岐金具42b、ストレーナ42c、定流量弁20、タンク給水用電磁弁28、及びタンク給水用バキュームブレーカ30を通り貯水タンク32内に給水される。これにより、これらの給水系統に滞留していた洗浄水が移動され、その凍結が防止される。
貯水タンク32内への給水により貯水タンク32の貯水量が規定の貯水量まで増加して所定の水位に上昇すると、ステップS106において、フロートスイッチ32bがONになったことが検出される。フロートスイッチ32bがONになったと判断されると、ステップS108に進み、ステップS108において、凍結防止制御手段40dはタンク給水用電磁弁28を閉鎖させる。次に、ステップS109において、コントローラ40に内蔵されたタイマー40eは、凍結防止運転が次に実行されるまでの間の時間の計測を開始する。ステップS110においては、タイマー40eによる計測開始後、凍結防止運転の所定の時間間隔が経過したか否かが判断される。本実施形態においては、凍結防止運転の時間間隔として、10分間が設定されている。
ステップS110における処理は、凍結防止運転の時間間隔である10分間が経過していない場合には繰り返し実行され、10分間経過するとステップS100の待機状態に戻る。ステップS100の待機状態に戻ると、再びステップS101に進み、温度センサ40cによって測定された温度が凍結防止運転温度よりも高い温度に上昇しているか否かが判断される。トイレ室内の温度が依然として凍結防止運転温度以下である場合には、ステップS102に進み上記の処理が繰り返される。一方、トイレ室内の温度が凍結防止運転温度よりも高い温度に上昇している場合にはステップS100に戻り、ステップS101における判断が繰り返し実行される。
また、水洗大便器1が凍結防止運転を行うように手動で設定されている場合にもステップS102以降の凍結防止運転が実行される。この凍結防止運転は、使用者が操作スイッチ(図示せず)により、凍結防止運転の設定を解除するまで繰り返される。上記のように、トイレ室内の温度が凍結防止運転温度よりも低い状態が継続した場合、及び使用者により凍結防止運転が設定されている場合には、ジェット吐水口16及びリム吐水口18からの吐水が、約10分間隔で間欠的に実行される。これにより、水洗大便器1の各部に滞留している洗浄水が移動され、その凍結が防止される。
本発明の第1実施形態の水洗大便器によれば、洗浄水が加圧ポンプによって加圧されて吐水されるので、水道水圧が低い地域にも設置することができる。また、本実施形態の水洗大便器によれば、貯水タンク及び加圧ポンプが一体的に水洗大便器本体の上方に取り出し可能に配置されているので、貯水タンク又は加圧ポンプのメンテナンスが必要な場合には、貯水タンク及び加圧ポンプを、一般にスペースが空いている水洗大便器本体の上方に、一体的に取り出すことができる。これにより、水洗大便器本体を移動させることなく、貯水タンク及び加圧ポンプのメンテナンスを行うことができる。
さらに、本実施形態の水洗大便器によれば、貯水タンク及び加圧ポンプがサイドパネルによって囲われた内部に収納されているので、それらのメンテナンスを容易にしながら、すっきりした外観を得ることができる。
また、本実施形態の水洗大便器によれば、加圧ポンプが貯水タンクの下方に配置されているので、それらの占める投影床面積を狭くすることができ、貯水タンク及び加圧ポンプを一体的に上方に取り出し可能にする構造を容易に構成することができる。また、一般に重量が大きい加圧ポンプが、貯水タンクの下方に配置されているので、一体的に連結された貯水タンク及び加圧ポンプの安定が良く、それらの取り出しを容易にすることができる。
さらに、本実施形態の水洗大便器によれば、取付部が水洗大便器本体とは別体に構成されているので、取付部の設計の自由度を大きくすることができ、また、水洗大便器本体と一体に陶器で構成した場合よりも、取付部を小型に構成することができる。
また、本実施形態の水洗大便器によれば、加圧ポンプ及び貯水タンクが取付部から吊り下げられて支持されているので、水洗大便器本体の高さに製作誤差がある場合にも、一体的に連結された加圧ポンプ及び貯水タンクの下端と床面との間の距離で誤差を吸収することができ、水洗大便器の組み立てを容易にすることができる。
さらに、本実施形態の水洗大便器によれば、ボウル部の後方に突出した排水トラップ管路の側方のデッドスペースとなる部分に加圧ポンプ及び貯水タンクを収納することができるので、水洗大便器を小型に構成することができる。
次に、図17を参照して、本発明の第1実施形態の変形例による水洗大便器を説明する。図17は、本発明の第1実施形態の変形例による水洗大便器を示す斜視図である。
本実施形態の変形例による水洗大便器100は、貯水タンクと加圧ポンプの連結の仕方が上述した第1実施形態とは異なる。図17に示すように、水洗大便器100においては、貯水タンク132の底面から下方に延びるように4枚の金属板132cが取り付けられており、この金属板132cの下端に水受けトレイ102bが取り付けられている。また、加圧ポンプ134は、貯水タンク132の下方に吊り下げられた水受けトレイ102bの上に載置され、固定されている。
水洗大便器100の貯水タンク132又は加圧ポンプ134のメンテナンスを行う際には、上述した第1実施形態と同様に、貯水タンク132のフランジ部を取付フレーム2aに固定しているビスを取り外し、貯水タンク132を上方に引き上げる。これにより、貯水タンク132、及びその下方に吊り下げられた加圧ポンプ134、水受けトレイ102bを一体的に、水洗大便器本体2の上方に取り出すことができる。
第1実施形態の変形例の水洗大便器によれば、貯水タンクの下方に連結された水受トレイの上に加圧ポンプが載置されているので、設置面の上に載置するように設計された加圧ポンプをそのまま使用することができると共に、加圧ポンプに無理な力が作用するのを防止することができる。
次に、図18乃至図20を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器を説明する。本実施形態の水洗大便器は、加圧ポンプと貯水タンクがベース部材を介して連結されている点が、上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明する。
図18は、本実施形態による水洗大便器を後方右斜め上から見た斜視図である。図19は、一体的に連結された加圧ポンプ及び貯水タンクを水洗大便器本体の上方に取り出した状態を示す斜視図である。また、図20は、加圧ポンプと貯水タンクを連結する構造を示す分解斜視図である。なお、図18乃至20は、本実施形態による水洗大便器を、便座、カバー、局部洗浄装置、及びサイドパネルを取り外した状態で示している。
図18に示すように、本実施形態による水洗大便器200は、水洗大便器本体202と、この水洗大便器本体202の後方に配置された機能部210とを有する。
水洗大便器本体202は、ボウル部212と、排水トラップ管路214とを有し、ボウル部212には、ジェット吐水口とリム吐水口が形成されている(図18には図示せず)。
次に、図18乃至図20を参照して、機能部210の構成を説明する。
図18乃至図20に示すように、機能部210には、貯水タンク232と、加圧ポンプ234と、バルブユニット236が内蔵されている。さらに、貯水タンク232と加圧ポンプ234は、ベース部材であるポンプ側ベース部材238a及びタンク側ベース部材238bによって一体的に連結されている。また、タンク側ベース部材238bには、コントローラ240が取り付けられている。
バルブユニット236は、電磁弁、リム吐水と貯水タンクへの給水を切り換える切替弁、リム吐水用バキュームブレーカ、タンク給水用バキュームブレーカ等を内蔵している。また、バルブユニット236は、貯水タンク232の上部に配置されており、供給された洗浄水を下方の貯水タンク232に流入させるように構成されている。さらに、バルブユニット236には、入水口220aに延びるホース、及びリム側給水路218aに延びるホースが接続されている。
貯水タンク232は、タンク側ベース部材238bに取り付けられ、排水トラップ管路214の側面に配置されるように構成されている。また、貯水タンク232の側面には、加圧ポンプ234に接続される取水管234dが接続されている。
タンク側ベース部材238bは、概ねL字形に曲げられたプレート状の部材であり、その側面が貯水タンク232に結合されている。また、タンク側ベース部材238bの水平に向けられた面は、取付部である金属プレート244に固定される。この金属プレート244は、水洗大便器本体202の後部に形成された棚状部分202a(図19)に載せられ、水洗大便器本体202に予め固定されている。
金属プレート244の前端縁には、2つの掛け爪244aが設けられている。この掛け爪244aは、タンク側ベース部材238bの前端縁に設けられた受け部(図示せず)と係合し、これにより、タンク側ベース部材238bの前端部が固定される。
また、タンク側ベース部材238bの底面後部には、便器を横断する方向に延びる着脱ロッド246が、スライド可能に取り付けられている。この着脱ロッド246には、下方に向けて突出する3つの突出爪(図示せず)が設けられている。着脱ロッド246から下方に延びる3つの突出爪(図示せず)は、金属プレート244の後端部に形成された3つの係合穴244bに夫々挿入され、係合穴244bの縁に係合される。これにより、タンク側ベース部材238bの後端部が金属プレート244に固定される。
加圧ポンプ234は、ポンプ側ベース部材238aに取り付けられ、排水トラップ管路214の後方に突出している部分の概ね上方に配置されている。加圧ポンプ234は、貯水タンク232の側面から延びる取水管234dに接続され、貯水タンク232内の洗浄水を加圧して、ジェット側給水路216aに送り込むように構成されている。
ポンプ側ベース部材238aは、概ねL字形に曲げられたプレート状の部材であり、その水平方向に向けられた面の上に、加圧ポンプ234が載置されるように構成されている。さらに、ポンプ側ベース部材238aの水平方向に向けられた面は、タンク側ベース部材238bの水平方向に向けられた面上に載せられ、2本のビス242によって互いに固定される。これにより、貯水タンク232と加圧ポンプ234は、ベース部材を介して一体的に連結される。
コントローラ240は、タンク側ベース部材238bの鉛直方向に向けられた面に取り付けられている。コントローラ240は、加圧ポンプ234、及びバルブユニット236に内蔵された電磁弁、切替弁等を制御して、水洗大便器本体202のボウル部212を洗浄するように構成されている。
次に、メンテナンス時における貯水タンク232及び加圧ポンプ234の取り外し手順を説明する。
まず、貯水タンク232及び加圧ポンプ234の取り外す際には、水洗大便器本体202の上に取り付けられた便座、カバー、局部洗浄装置、及びサイドパネルを取り外し、機能部210を露出させる(図18)。次いで、バルブユニット236から延びるジェット側給水路216a、リム側給水路218a、入水口220aへの配管を取り外す。さらに、タンク側ベース部材238bにスライド可能に取り付けられている着脱ロッド246をスライドさせ、着脱ロッド246から下方に延びる突出爪(図示せず)を移動させる。これにより、各突出爪は、金属プレート244に形成された各係合穴244bの拡張された部分に夫々移動される。各突出爪(図示せず)が、各係合穴244bの拡張された部分に移動されると、突出爪と金属プレート244の係合が解除される。
各突出爪(図示せず)の係合を解除した後、タンク側ベース部材238bの後部を持ち上げながら、金属プレート244の掛け爪244aと、タンク側ベース部材238bの受け部(図示せず)との係合を解除する。最後に、図19に示すように、ベース部材を介して連結されている貯水タンク232及び加圧ポンプ234を、一体的に水洗大便器本体202の上方に引き上げて取り外す。
本発明の第2実施形態の水洗大便器によれば、貯水タンクと加圧ポンプがベース部材を介して連結されているので、質量の大きい加圧ポンプを貯水タンクに容易に連結することができる。
また、本実施形態の水洗大便器によれば、ベース部材がポンプ側ベース部材及びタンク側ベース部材から構成されているので、機能部を組み立てる作業性を改善することができる。
上述した第2実施形態においては、ベース部材は、金属プレートを介して水洗大便器本体の棚状部分に取り付けられていたが、変形例として、ベース部材を水洗大便器本体に直接取り付けるように構成することもできる。この場合には、水洗大便器本体の棚状部分が取付部として機能する。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、貯水タンク及び加圧ポンプを支持する取付部が、水洗大便器本体の後方に固定された別体の取付フレームによって構成されていたが、取付部を水洗大便器本体と一体に構成することもできる。
また、上述した実施形態においては、加圧ポンプは、貯水タンクの最も低い底面の下側に取り付けられていたが、加圧ポンプを他の位置に配置することもできる。例えば、上述した実施形態のように、後方から見て逆L字形に形成された貯水タンクの水平部分の下側に加圧ポンプを配置することもできる。なお、本明細書において、貯水タンクの下側とは、このような位置を含むものとする。