以下、本発明を車両用のエアバッグ装置付きステアリングホイールに具体化した一実施形態について、図1〜図16を参照して説明する。なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方として説明する。また、左右方向は車両の車幅方向であって車両前進時の左右方向と一致するものとする。また、ステアリングホイール本体は、ステアリングホイールのうち、エアバッグ装置及びホーンスイッチ機構以外の部位をいうものとする。
図1に示すように、ステアリングホイール10は、運転者が車両を操舵すべく把持するステアリングホイール本体11の中央部に、エアバッグ装置(エアバッグモジュール)20が一体に組付けられて構成されている。ステアリングホイール本体11は、ステアリングホイール10の骨格部分をなす芯金12を備えている。図2は、その芯金12の一部を示している。芯金12は、鉄、アルミニウム、マグネシウム、又はそれらの合金等によって形成されており、そのボス部12aにおいてステアリングシャフト14に一体回転可能に取付けられている。
芯金12において、ボス部12aの周囲の複数箇所には、保持部12bが芯金12の一部として設けられている。なお、芯金12において、保持部12bとそれ以外の箇所とを区別する必要がある場合には、後者の箇所を芯金本体12iというものとする。また、ここでの複数箇所とは、ボス部12aの左方、右方及び後方の合計3箇所である。3箇所の各保持部12bには、後述するホーンスイッチ機構15の固定ピン31を挿入するための貫通孔THが形成されている。これらの貫通孔THには、通常貫通孔12c及び特別貫通孔12jといった2つの形態が存在するが、詳細については後述する。また、通常貫通孔12c及び特別貫通孔12jを区別する必要がない場合、すなわち、通常貫通孔12c及び特別貫通孔12jに共通する事項について説明する場合には、単に「貫通孔TH」と記載するものとする。
図2及び図8(A),(B)の少なくとも1つに示すように、各保持部12bと芯金本体12iとの間には、弾性部材としてのクリップ13がそれぞれ組み込まれている。各クリップ13は、ばね綱等の金属からなる線材を所定形状に屈曲させることによって形成されていて、若干弾性変形させられた状態で保持部12b及び芯金本体12i間に組み込まれて芯金12に保持されている。各クリップ13は、その一部、例えば端部において、保持部12b及び芯金本体12iの少なくとも一方に接触している。各クリップ13は、後述するホーンスイッチ機構15の固定ピン31を芯金12に対し導通状態で係止する機能を有するものであって、各クリップ13の一部が貫通孔THの略下方近傍に位置している。
上記のように、貫通孔TH毎にクリップ13が1つずつ配設されているため、同クリップ13の配置のためのスペース、及び作動のためのスペースは、ともに貫通孔THの近傍に必要となるだけである。この点において、本実施形態は、貫通孔TH毎のクリップ13を1本の連続する弾性線材によって形成する場合(特許文献2がこれに該当する)と大きく異なる。貫通孔TH毎のクリップを1本の弾性線材によって形成する場合には、クリップ13の配置のためのスペース及び作動のためのスペースは、貫通孔THの近傍だけでなく、隣り合う貫通孔TH間にも必要となり、その分、上記配置及び作動のためのスペースが大きくならざるを得ないからである。
車両には、ホーン装置40(図9参照)が設けられており、これを作動させるための複数(本実施形態では3つ)のホーンスイッチ機構15が、各保持部12bにおいて、スナップフィット構造にて芯金12に装着されている。各ホーンスイッチ機構15は互いに同一の構成を有している。そして、これらのホーンスイッチ機構15を介してエアバッグ装置20が芯金12に支持されている。このように、各ホーンスイッチ機構15は、エアバッグ装置20の支持とホーンスイッチとの機能を兼ねている。
次に、エアバッグ装置20及びホーンスイッチ機構15のそれぞれについて説明する。
<エアバッグ装置20>
エアバッグ装置20は、図3及び図4の少なくとも一方に示すように、パッド部24、エアバッグ22及びインフレータ23をバッグホルダ21に組付けることによって構成されている。
パッド部24は、樹脂成形よりなり、表面が意匠面をなす外皮部24aと、その外皮部24aの裏面側(下側:図3及び図4では右側)に略四角環状に立設された収容壁部24bとを有している。収容壁部24bにて囲まれる外皮部24aの内側面は、バッグホルダ21との間に、エアバッグ22を主として収容するためのバッグ収容空間Xを形成している。外皮部24aのバッグ収容空間Xを形成する部位には、エアバッグ22の膨張展開時に押し破られる薄肉部24cが形成されている。
収容壁部24bの下端部(図4の右端部)には、矩形板状をなす複数(5つ)の係止爪24dが一体に形成されている。具体的には、係止爪24dは、収容壁部24bの前側壁部、左側壁部及び右側壁部にそれぞれ1つ、後側壁部に2つ設けられている。各係止爪24dは所定長さの幅広に形成されており、各係止爪24dの下端部には、外側(バッグ収容空間Xから遠ざかる側)へ突出する係止突起24eが形成されている。また、収容壁部24bの各角部には、それぞれ矩形板状のかしめ片24fが一体に形成されている。
パッド部24の複数箇所(3箇所)には、ホーンスイッチ機構15を支持するためのスイッチ支持部24gがそれぞれ形成されている。各スイッチ支持部24gは、パッド部24の外皮部24aから裏面側(下側)に延びるように、収容壁部24bと一体に形成されている。詳しくは、各スイッチ支持部24gは、収容壁部24bから外側(バッグ収容空間Xよりも外側)に突出している。各スイッチ支持部24gは、正面視で(パッド部24の軸線L方向から見て)U字状に湾曲形成されており、内部が中空となっている。各スイッチ支持部24gは、そのU字状の開口側において収容壁部24bと繋がっている。このような構成の各スイッチ支持部24gは、収容壁部24bを補強するリブの役割もなし、収容壁部24bの強度の向上にも寄与している。
これに対し、バッグホルダ21は、金属板をプレス加工することにより、上下方向の高さの低い略矩形状に形成されている。なお、バッグホルダ21は、プレス加工以外の手段、例えばダイカスト成形等によって形成されたものであってもよい。バッグホルダ21の周縁部は、パッド部24を固定するための略四角環状の周縁固定部21aとして構成されている。周縁固定部21aの全体は、どの箇所においても略同一高さとなるように略平面状に形成されている。
周縁固定部21aにおいて、前記パッド部24の各係止爪24dに対応する箇所、すなわち前側辺部、左側辺部及び右側辺部の各1箇所と、後側辺部の2箇所とには、それぞれ爪係止孔21bが形成されている。各爪係止孔21bは、幅広の上記各係止爪24dに対応してバッグホルダ21の辺方向に長いスリット状をなし、バッグホルダ21の表裏を貫通して形成されている。各爪係止孔21bには、各係止爪24dの下端部が挿通されて係止される。その際、各係止爪24dが係止突起24e分だけ内側(バッグ収容空間X側)に撓んで挿通され、挿通後、係止爪24dが形状復帰して係止突起24eが爪係止孔21bの周縁部に係止する。この係止により、各係止爪24dが反挿入方向へ抜け出ることが規制される。
各係止爪24dにおいて、挿通によりバッグホルダ21よりも下側となる箇所(係止突起24eを含む)に対し、加熱によりつぶされる所謂熱かしめが施されている(図3参照)。係止爪24dと爪係止孔21bの壁面との間には、同係止爪24dの挿通のための隙間が存在するが、この隙間が上記熱かしめによって埋められている。そのため、エアバッグ22の膨張展開時等にパッド部24に過大な力が加わっても、係止爪24dが爪係止孔21bから抜け出ることが確実に阻止される。
また、バッグホルダ21の各角部には、上記各かしめ片24fが挿通されるスリット状のかしめ用挿通孔21cが貫通形成されている。各かしめ用挿通孔21cには、各かしめ片24fが挿通され、上記係止爪24dと同様、挿通後においてかしめ片24fの下端部に対し熱かしめが施されている(図3参照)。そして、上述した各係止爪24d及び各かしめ片24fの熱かしめにより、パッド部24がバッグホルダ21に対して固定されている。
バッグホルダ21における周縁固定部21aの内側部分は、略正方形状の台座部21fを構成している。台座部21fの中心部には円形状の開口部21gが形成されている。台座部21fであって、開口部21gの周縁部近傍の複数箇所、ここでは、台座部21fの対角線上となる合計4箇所には、それぞれねじ挿通孔21hが形成されている。台座部21fの開口部21gには、インフレータ23の一部が挿通されて取付けられる。
より詳しくは、インフレータ23は低円柱状の本体を有しており、その本体の外周面にはフランジ部23aが形成されている。フランジ部23aには、等角度間隔に複数(4つ)の取付片23bが径方向外側に延出されている。各取付片23bにおいて、バッグホルダ21の上記ねじ挿通孔21hに対応する箇所には、それぞれねじ挿通孔23cが形成されている。インフレータ23は、フランジ部23aから一方側(略上方側)が膨張用ガスを噴出するガス噴出部23xとして構成されている。そして、インフレータ23のガス噴出部23xがバッグ収容空間X側に突出するように、その反対側からバッグホルダ21の開口部21gに挿通されている。さらに、フランジ部23aが開口部21gの周縁部に当接され、この状態で、インフレータ23はリングリテーナ25とともにバッグホルダ21に取付けられている。
より詳しくは、リングリテーナ25は、インフレータ23のガス噴出部23xが挿通されるバッグホルダ21の開口部21gと同等の円形状の開口部25aを有している。また、リングリテーナ25は、バッグホルダ21の各ねじ挿通孔21hに対応する複数箇所(4箇所)に取付ねじ25bを有している。リングリテーナ25には、膨張展開可能に折り畳まれたエアバッグ22が、その開口部において取付けられている。なお、説明の便宜のため図示は省略したが、リングリテーナ25における開口部25a以外の部位は、エアバッグ22の一部によって覆われる。エアバッグ22の取付けられたリングリテーナ25の複数の取付ねじ25bは、バッグ収容空間X側からバッグホルダ21及びインフレータ23の各ねじ挿通孔21h,23cに挿通される。さらに、挿通後の各取付ねじ25bにナット26が螺着されることにより、エアバッグ22がリングリテーナ25を介してバッグホルダ21に固定され、またそれと同時にインフレータ23もバッグホルダ21に固定されている。
バッグホルダ21の周縁固定部21aの複数箇所(3箇所)には、ホーンスイッチ機構15を取付けるための取付部21dがそれぞれ形成されている。ここでの複数箇所の一部は、周縁固定部21aの左側辺部及び右側辺部の各前側辺部寄りの箇所であって、爪係止孔21bとかしめ用挿通孔21cとの間の部位である。そのほか、後側辺部において対で設けられる爪係止孔21b間の部位も、上記複数箇所に含まれる。これらの箇所は、上述したパッド部24のスイッチ支持部24gに対応する箇所(スイッチ支持部24gの略下方近傍)であって、芯金12の回転中心であるボス部12a(図2参照)の周りである。複数の上記取付部21dは、バッグホルダ21の略同一平面上に位置している。各取付部21dには、ホーンスイッチ機構15の取付けのための取付孔21eが貫通形成されている。各取付孔21eは円形状をなしているが、これは、後述する可動装着部材32の筒状部32aの形状(円環状)に対応させたものである。各取付孔21eには、径方向外側に延びる複数(4つ)の凹部21iが等角度(90°)毎に形成されている。このように、3つの取付孔21eは、金属板をプレス加工することにより形成されたバッグホルダ21の略同一面上において、ステアリングシャフト14の周りに略等角度毎に設けられている。
なお、上記エアバッグ装置20の組み立て作業は、例えば、次のようにして行なう。最初に、バッグホルダ21をそのパッド部24側の面が略上方を向くように配置し、そのバッグホルダ21に対して略上方から各部材(各ホーンスイッチ機構15、リングリテーナ25、エアバッグ22及びパッド部24)を組付ける。その後、その組付けにより得られた一体部品を裏返し、インフレータ23をバッグホルダ21に組付ける。
<ホーンスイッチ機構15>
ホーンスイッチ機構15は、本実施形態のステアリングホイール10では3つ用いられている。各ホーンスイッチ機構15からステアリングホイール10の中心(ボス部12a)までの距離は互いに略等しく設定されることが望ましい。これは、後述する接点端子34と固定ピン31の上端面31fとを確実に接触させて導通状態にするためである。
各ホーンスイッチ機構15は、図5及び図6の少なくとも一方に示すように、支持部材としての金属製の固定ピン31、絶縁部としての可動装着部材32、樹脂製のキャップ部材33、可動側接点部としての接点端子34、樹脂部材41、及び付勢部材としてのコイルばね35を備えている。次に、各部材について説明する。
固定ピン31は、略上下方向に延びる長尺状をなしており、その軸線に直交する断面は、長さ方向のどの箇所においても円形となっている。固定ピン31の下端部の外周面には、凹部が設けられている。本実施形態では、この凹部として、環状の係止溝31bが固定ピン31の全周にわたって形成されている。固定ピン31の上端部を除く大部分は、上記取付孔21e(図4参照)よりも若干小径に形成されている。固定ピン31の上端部には、他の箇所よりも大径で、取付孔21eよりも大径の鍔部31aが形成されている。
可動装着部材32は、絶縁体としての特性を有する材料、例えば、樹脂材料によって形成されている。可動装着部材32は、段付形状を有する筒状をなし、固定ピン31に対しその長手方向(略上下方向)に移動可能に組付けられている。可動装着部材32において、固定ピン31が挿通される箇所(以下「筒状部32a」という)の上端には、固定ピン31の鍔部31aが嵌合される嵌合部32bが形成されている。この嵌合部32bは、固定ピン31の鍔部31aの下面及び外周面と当接している。また、嵌合部32bの上端部の相対向する2箇所には、当接突部32gがそれぞれ略上方へ向けて突設されている。嵌合部32bの上端部であって、上記両当接突部32g間の相対向する2箇所には、保持突部32hがそれぞれ略上方へ向けて突設されている。
嵌合部32bの周方向に沿った複数箇所(4箇所)からは、ばね保持部32cが略下方へ向けて延びている。なお、図5及び図6では、ばね保持部32cは3つのみ図示されている。各ばね保持部32cと筒状部32aとの間には隙間が設定されており、ばね保持部32cは径方向(ホーンスイッチ機構15の軸直交方向)に撓むことが可能となっている。各ばね保持部32cの下端部には、筒状部32a側に向けて係止突部32d(図5参照)が突設されている。
各ばね保持部32cは、後述する樹脂部材41が固定ピン31に装着される前に、コイルばね35を可動装着部材32に保持するためのものである。その保持は、コイルばね35の上端部が、可動装着部材32の筒状部32aとばね保持部32cとの間に挿入され、かつ弾性復元するばね保持部32c下端の係止突部32dに係止されることによって行なわれる。
嵌合部32bの下面の周方向に沿った複数箇所(4箇所)からは、ホルダ係止部32eが略下方へ向けて延びている。図5及び図6では、ホルダ係止部32eは1つのみ図示されている。各ホルダ係止部32eは、上記ばね保持部32cから周方向に若干ずれた位置に形成されている。図9に示すように、各ホルダ係止部32eと筒状部32aとの間には隙間が設定されており、各ホルダ係止部32eは径方向に撓むことが可能となっている。
図5及び図6の少なくとも一方に示すように、キャップ部材33は、下面を開放した有底円筒状をなしており、可動装着部材32の嵌合部32bに対し、固定ピン31及び可動装着部材32を略上方から覆うように組付けられている。キャップ部材33は、円形の上底部33aと、その上底部33aの周縁から略下方に延びる略円筒状の側壁部33bとを有している。側壁部33bの相対向する2箇所には、一対のフック部33c(図5及び図6では1つのみ図示)が弾性変形可能に形成されている。各フック部33cは、可動装着部材32の上述した嵌合部32bの下面32i(図6参照)に係止されている。また、上底部33aは、可動装着部材32の上述した両当接突部32gの上端と当接している(図9〜図11参照)。このようにキャップ部材33は、可動装着部材32に対して略上下方向へ移動不能に装着されている。
なお、上底部33aの上部には、キャップ部材33の固定ピン31及び可動装着部材32への組付け時において、キャップ部材33の向きを揃えるための溝33dが形成されている。溝33d内の各フック部33cと対応する位置には、同フック部33cのアンダーカット部分を成形するための成形用孔33eが形成されている。そして、各成形用孔33eは、キャップ部材33の上底部33a内面と当接する可動装着部材32の当接突部32gによって塞がれている。そのため、各成形用孔33eからキャップ部材33内部への屑等の異物の侵入が防止され、その結果、固定ピン31と接点端子34との導通に関する不具合の発生が抑制される。
接点端子34は、キャップ部材33の内側に配置されている。接点端子34は、金属板のプレス加工により成型されるものであって、長尺状をなす上部34aと、上部34aの両端からそれぞれ略下方に延びる一対の側部34bとからなり、全体として、キャップ部材33の内面形状に対応した断面略コ字状をなしている。接点端子34は、その上部34aがホーンスイッチ機構15の中心軸と直交するように配置されている。各側部34bは、可動装着部材32における嵌合部32bの保持突部32hの外側に位置しており、同保持突部32hとキャップ部材33とによって挟み込まれている。各側部34bには係合孔34eが形成されており、各係合孔34eには、キャップ部材33の内面に突出形成された係合突部33fがそれぞれ係止されている(図10及び図11参照)。これらの係止により、接点端子34は、キャップ部材33の内周面に保持されている。
上記上部34aには、固定ピン31側である下側に突出する複数(本実施形態では3つ)の接触突部34cが形成されている。3つの接触突部34cは、上部34aの長手方向に沿って等間隔に並んでおり、真ん中の接触突部34cは上部34aの長手方向中央部に形成されている。なお、上記接点端子34は、3つの接触突部34cがステアリングホイール10の径方向(放射線上)に並ぶように設けられるのが望ましい。これは、接点端子34と固定ピン31の上端面31fとの導通を確実に行なうためである。
上記各側部34bの下端部には、屈曲部34dがそれぞれ外側へ向けて屈曲形成されている。なお、ホーンスイッチ機構15のバッグホルダ21への取付け前の状態においては、各屈曲部34dが側部34bとなす角度は90度よりも大きな値(本実施形態では95度)に設定されている。これは、接点端子34がバッグホルダ21に組付けられた状態において、屈曲部34dをバッグホルダ21の上面に確実に接触させるためである。同状態では、屈曲部34dと側部34bとのなす角度は、略90度となる。なお、この組付け状態では、各側部34bと固定ピン31との間には、前記可動装着部材32の嵌合部32bが介在されており、各側部34bと固定ピン31との絶縁状態が確保されている。
図7及び図12の少なくとも一方に示すように、樹脂部材41は、その全体が絶縁材料である合成樹脂によって一体に形成されている。この樹脂部材41の一部は、固定ピン31よりも若干大径の挿通孔41aを有する円環状の環状部41bによって構成されている。環状部41bの外径は、上記コイルばね35の外径、及び貫通孔THの壁面における上端部の外径(壁面における最大径)と同程度に設定されている。樹脂部材41は、環状部41bにおいて固定ピン31の外側に嵌合されている。
環状部41b下面の挿通孔41a寄りの箇所であって、同挿通孔41aの周りの複数箇所(4箇所)からは、略下方へ向けて係止片41cが延びている。ここでは、各係止片41cは、挿通孔41aの周りに等角度(90°)毎に設けられている。各係止片41cの下端部には、爪部41dが内方へ向けて突設されており、これらの爪部41dが固定ピン31の係止溝31b内に入り込んでいる。各係止片41cの外側面は、略上下方向のどの部位においても同一径である円筒面の一部を構成している。
また、環状部41bの下面における挿通孔41aの周りであって、隣り合う係止片41c間からは、略下方へ向けて複数(4つ)の係合片41eが延びている。各係合片41eの外側面41fは、上側ほど拡径するテーパ面の一部を構成している。そして、これらの環状部41b、係止片41c及び係合片41eによって樹脂部材41が構成されている。この樹脂部材41は、環状部41bにおいて固定ピン31の外側に嵌合され、かつ各爪部41dが係止溝31bに入り込むことにより、同固定ピン31に脱落不能に装着されている。上記のように、樹脂部材41では、環状部41bの中心を通る軸線を、4つの係合片41eの外側面41fが4つの係止片41cの外側面を挟んで間欠的(断続的)に取り囲んでいる。こうした構成により、樹脂部材41は、全体として、上側ほど拡径するテーパ状の外側面を有するのと同様な状態となっている。
図5及び図10の少なくとも一方に示すように、コイルばね35は、固定ピン31の周りに巻回されている。コイルばね35は、可動装着部材32の筒状部32aに形成された段差部32fと樹脂部材41の環状部41bとの間に、圧縮させられた状態で配置されている。この状態では、環状部41bは、圧縮されたコイルばね35の下向きの付勢力を受ける第2受圧部として機能する。
このようにして、複数の単体部品(固定ピン31、可動装着部材32、キャップ部材33、接点端子34、コイルばね35及び樹脂部材41)がユニット化されて、アセンブリとされたホーンスイッチ機構15が構成されている。このため、ホーンスイッチ機構15の取付けや交換の際に、ユニット化されたホーンスイッチ機構15を1つの集合体として扱うことが可能である。
上記ユニット化されたホーンスイッチ機構15は、図9〜図11の少なくとも1つに示すように、バッグホルダ21の各取付孔21eに挿通されて固定される。各取付孔21eがバッグホルダ21の3箇所の取付部21dに形成されていることから(図4参照)、全てのホーンスイッチ機構15は、バッグホルダ21の略同一平面上に取付けられて、下方へ延びていることとなる。
なお、図9は、ホーンスイッチ機構15のホルダ係止部32eを含む断面を示しており、図10及び図11は、接点端子34の各部(上部34a、側部34b、屈曲部34d等)を含む断面を示している。各取付孔21eの周囲に等角度毎に設けられた複数の上記凹部21i(図4参照)は、取付孔21eに可動装着部材32を挿通する際の周方向の位置決めの役割を果たす。そして、上記の挿通に伴い、これらの凹部21i内に可動装着部材32のばね保持部32cが配置される。
可動装着部材32の取付孔21eへの挿通過程で、接点端子34の両端における屈曲部34dがバッグホルダ21の上面に接触する。接点端子34において各屈曲部34dの側部34bとなす角が小さくなるように可動装着部材32の挿通を続ける。この角が90度よりも大きな値から略90度となると、各屈曲部34dのバッグホルダ21の上面に対する接触面積が最大となる。この接触により、バッグホルダ21と接点端子34とが確実に導通された状態となる。
可動装着部材32の取付孔21eへの挿通により、各ホルダ係止部32eの下端部が取付孔21eを越えると、同ホルダ係止部32eは、自身の弾性復元力によりバッグホルダ21の下面に係止される。このように、挿入に伴う弾性係止によって係止する構造は、スナップフィット構造とも呼ばれる。
また、バッグホルダ21の上面は、可動装着部材32に略上下方向へ移動不能に装着されたキャップ部材33の側壁部33bの下端面、及びフック部33cの下端面と当接する。すなわち、ホーンスイッチ機構15は、可動装着部材32の各ホルダ係止部32eとキャップ部材33とによってバッグホルダ21を挟み込む。この挟み込みにより、ホーンスイッチ機構15の可動装着部材32、キャップ部材33及び接点端子34は、バッグホルダ21とともに略上下方向へ移動可能となる。なお、これらの可動装着部材32、キャップ部材33及び接点端子34は、固定ピン31に対しては相対的に移動可能である。
各ホーンスイッチ機構15が、上記のようにバッグホルダ21に取付けられた状態では、固定ピン31の上端部(鍔部31aを含む)は、同バッグホルダ21よりも上側に位置する。この鍔部31aは、上記コイルばね35の略下方からの上向きの付勢力を受ける受圧部を構成する。
また、上記取付け状態では、可動装着部材32が、固定ピン31及びバッグホルダ21間に介在されて、両者の接触を防ぎつつ、すなわち絶縁状態にしつつ、バッグホルダ21を固定ピン31に対し略上下動可能に支持するとともに、コイルばね35の上向きの付勢力を固定ピン31の鍔部31aに伝達する。
また、上記取付け状態では、キャップ部材33の上面が、前述したパッド部24のスイッチ支持部24gと当接する(図3参照)。この当接により、例えばエアバッグ装置20が強打されたとき、その反力によりキャップ部材33が可動装着部材32から外れることが規制される。
さらに、上記取付け状態では、各ホーンスイッチ機構15におけるコイルばね35及び同コイルばね35に挿通された固定ピン31がバッグホルダ21から略下方(パッド部24から離れる方向)に突出している。
ところで、上記エアバッグ装置20は、上記複数(3つ)のホーンスイッチ機構15を介して芯金12に装着される。表現を変えると、バッグホルダ21に取付けられた各ホーンスイッチ機構15が芯金12にそれぞれ締結されることにより、エアバッグ装置20が芯金12に装着される。ここで、芯金12において、ボス部12aの周囲の複数箇所(3箇所)に保持部12bが設けられ、保持部12b毎に貫通孔TH(通常貫通孔12c、特別貫通孔12j)が設けられていることについては、先述したとおりである。
図2、図8(A)及び図9の少なくとも1つに示すように、通常貫通孔12cは、ボス部12aの左方及び右方の2箇所の保持部12bにそれぞれ設けられている。各通常貫通孔12cは、下側ほど縮径するテーパ状をなし、かつ固定ピン31に装着された樹脂部材41が上側から嵌入し得る大きさを有している。このため、固定ピン31及び樹脂部材41が挿入された状態の通常貫通孔12cでは、その壁面が樹脂部材41と接触することにより、それらの樹脂部材41及び固定ピン31の傾動を規制する。ちなみに、各通常貫通孔12cの上端での内径は、上述した樹脂部材41における環状部41bの外径と略同じに設定されている。なお、図2では、各通常貫通孔12cについて、テーパ状の壁面の図示が省略されている。後述する特別貫通孔12jの本体孔12kについても同様である。
また、前述したように、通常貫通孔12cの略下方側近傍にはクリップ13の一部が配置されている。そのため、固定ピン31及び樹脂部材41を各通常貫通孔12cに挿入し、係止溝31bにおいてクリップ13に係合させることが可能である。この際、クリップ13は固定ピン31の径方向のいずれの方向から係止溝31bに係合されてもよい。一方、クリップ13が係止溝31bに係合する方向は、通常貫通孔12cの略下方側におけるクリップ13の初期位置(係止溝31bに係合する前の位置)によって決まる。従って、通常貫通孔12cの略下方側におけるクリップ13の初期位置は特に限定されない。
図2、図8(B)及び図11の少なくとも1つに示すように、特別貫通孔12jは、ボス部12aの略下方の1箇所の保持部12bに設けられている。特別貫通孔12jの少なくとも一部は、本体孔12kによって構成されている。本体孔12kは、下側ほど縮径するテーパ状をなし、かつ固定ピン31に装着された樹脂部材41が上側から嵌入し得る大きさを有している。このため、仮に、特別貫通孔12jが本体孔12kのみから構成されるものであれば、固定ピン31及び樹脂部材41が挿入された状態の特別貫通孔12jでは、その壁面が樹脂部材41と接触することにより、それらの樹脂部材41及び固定ピン31の傾動を規制する。
しかし、特別貫通孔12jは、上記本体孔12kに加え、同本体孔12kに連続する傾動許容部12lも備えている。傾動許容部12lは、係止溝31bに対するクリップ13の係合箇所とは反対側において、本体孔12kを起点とし、同クリップ13を支点とした固定ピン31の傾動領域まで特別貫通孔12jを延設することにより形成されている。傾動許容部12lは、保持部12bの外部に連通するものであってもよいし、連通しないものであってもよい。
ここで、特別貫通孔12jの略下方側のクリップ13の係止溝31bに対する係合箇所は、両通常貫通孔12cから遠い側(図2の下側、図8(B)及び図11の各左側)となる箇所である。この箇所でクリップ13を係止溝31bに係合させるために、クリップ13の初期位置は、本体孔12kの中心よりも反通常貫通孔12c側に設定されている。
これに伴い傾動許容部12lは、本体孔12kに対し、係止溝31bに対するクリップ13の係合箇所とは反対側である通常貫通孔12c側(図2の上側、図8(B)及び図11の各右側)に設けられている。このことから、上記2箇所の通常貫通孔12cにそれぞれ挿入された固定ピン31の係止溝31bに対するクリップ13の係合が、全ての通常貫通孔12cについて解除されたときには、本体孔12kに挿入された固定ピン31のクリップ13を支点とした略上方への傾動が可能となる。
バッグホルダ21に装着されている上記複数(3つ)のホーンスイッチ機構15を芯金12に締結する場合には、図12及び図13に示すように、各固定ピン31を、対応する貫通孔TH(通常貫通孔12c又は特別貫通孔12j)に略上方から近づける。このときには、各固定ピン31において係止溝31bよりも略下方部分(以下「下端31cという」)が、コイルばね35及び樹脂部材41から略下方へ若干突出している。このため、各下端31cを各貫通孔THに若干嵌め合わせることで、各固定ピン31の貫通孔THに対する位置決めが容易である。
各樹脂部材41は、固定ピン31が貫通孔THに挿入される前の段階で、同固定ピン31に装着されていることから、固定ピン31が貫通孔THに挿入される過程で、樹脂部材41もまた貫通孔THに挿入される。
上記挿入に伴い、樹脂部材41の環状部41bが保持部12bの上面12gに接近し、係合片41eが貫通孔THの壁面(通常貫通孔12cの壁面、又は特別貫通孔12jにおける本体孔12kの壁面)に接近する。また、固定ピン31の下端31cがクリップ13に接触する。さらに、クリップ13の付勢力に抗して固定ピン31等を挿入すると、クリップ13が固定ピン31の径方向外方へ弾性変形させられる。そして、図10及び図11に示すように、係止溝31bがクリップ13に対応する箇所(高さ)まで固定ピン31を挿入すると、そのクリップ13が自身の弾性復元力により係止溝31bに入り込もうとする。
一方、係止溝31b内には、コイルばね35によって略下方へ付勢された樹脂部材41の爪部41dが入り込んでいる。そのため、クリップ13は、係止溝31b内に入り込む過程で、コイルばね35を略上方へ圧縮させながら、爪部41dと係止溝31b内の下面31dとの間に入り込む。この入り込みにより、係止溝31b内では、爪部41dがクリップ13の上側に位置する。クリップ13において、貫通孔THの略下方側に位置する部分は、コイルばね35によって略下方へ付勢された爪部41dと係止溝31bの下面31dとによって上下から挟み込まれ、動きを規制される。一方、固定ピン31は、係止溝31b内に入り込んだクリップ13によって、略上下方向の動きを規制される。このようにして、固定ピン31がクリップ13によって芯金12に係止されることで、各ホーンスイッチ機構15の芯金12に対する締結と、エアバッグ装置20の芯金12に対する装着とが行われる。
上記のように貫通孔TH(通常貫通孔12c及び特別貫通孔12j)に挿入される固定ピン31をクリップ13の弾性によって芯金12に係止する構造もまた、上述した可動装着部材32のバッグホルダ21に対する弾性係止構造と同様、スナップフィット構造である。
また、この係止に際しては、樹脂部材41が固定ピン31に装着された状態でその固定ピン31と一緒に貫通孔THに挿入されて、クリップ13によって芯金12(保持部12b)に係止される。そのため、樹脂部材41を個別に芯金12(保持部12b)に組付けなくてもよく、樹脂部材41を、芯金12(保持部12b)における貫通孔THの壁面と固定ピン31との間に介在させるための作業効率がよい。
全てのホーンスイッチ機構15が芯金12に締結された状態では、テーパ状の通常貫通孔12cにテーパ状の樹脂部材41が嵌合している。このため、通常貫通孔12cでは、固定ピン31の傾動が規制される。一方、特別貫通孔12jでは、通常貫通孔12cでの固定ピン31の締結状況を無視すれば、傾動許容部12lの存在により固定ピン31の傾動が可能である。
しかし、2つの通常貫通孔12cに挿通されたホーンスイッチ機構15も、特別貫通孔12jに挿通されたホーンスイッチ機構15も共通の部材(バッグホルダ21)の略同一平面上に取付けられている。全て(3つ)のホーンスイッチ機構15が共通の部材(バッグホルダ21)によって連結された状態となっている。特別貫通孔12jに挿入されたホーンスイッチ機構15の動きは、バッグホルダ21を通じ、両通常貫通孔12cに挿通されたホーンスイッチ機構15から影響を受ける。両通常貫通孔12cに挿通されたホーンスイッチ機構15が動けなければ、特別貫通孔12jに挿入されたホーンスイッチ機構15も動けない。
従って、2箇所の通常貫通孔12cに締結されている一対のホーンスイッチ機構15の芯金12に対する傾動がともに規制されている以上、バッグホルダ21は芯金12に対し傾動することができない。バッグホルダ21が傾動不能であれば、特別貫通孔12jに締結されているホーンスイッチ機構15についても傾動が規制される。2箇所の通常貫通孔12cに挿入されたホーンスイッチ機構15においても、1箇所の特別貫通孔12jに挿入されたホーンスイッチ機構15においても、係止溝31bにクリップ13が係合し続ける。3箇所のホーンスイッチ機構15は、いずれも貫通孔TH(通常貫通孔12c及び特別貫通孔12j)において芯金12に締結された状態を維持し、不用意にその締結状態が解除されることはない。
上記の締結状態では、各係合片41eの外側面41fが貫通孔THの壁面(通常貫通孔12cの壁面、又は特別貫通孔12jにおける本体孔12kの壁面)に接触する。また、爪部41dが係止溝31b内の上面31eから略下方へ僅かに離間する。このようにして、樹脂部材41が芯金12(保持部12b)における貫通孔THの壁面と固定ピン31との間に介在させられる。
また、上記締結状態では、芯金12に係止されたホーンスイッチ機構15毎の固定ピン31は、可動装着部材32を介してエアバッグ装置20(バッグホルダ21)を芯金12に対して進退可能に、すなわち、芯金12に対して近づいたり離れたりすることが可能となるように支持する。
ここで、可動装着部材32の段差部32fと樹脂部材41の環状部41bとの間に介装されているコイルばね35は、芯金12への取付け前よりもさらに圧縮させられた状態となる。この圧縮状態のコイルばね35は、可動装着部材32を芯金12から遠ざける方向である略上方へ付勢し、接点端子34を固定ピン31の上端面31fから略上方へ離間させる。
上記コイルばね35は、さらに圧縮することで、エアバッグ装置20の芯金12側への移動を許容する。すなわち、コイルばね35はホーンストロークを確保した状態で圧縮されている。ホーンストロークとは、接点端子34を固定ピン31の上端面31fから離隔させた状態(ホーンスイッチ機構15のオフ状態:図10及び図11)から、接点端子34が固定ピン31の上端面31fに接触する状態(ホーンスイッチ機構15のオン状態:図14)にするために要するエアバッグ装置20の芯金12側への押下量である。また、このコイルばね35によって、運転者がエアバッグ装置20を押下してホーンスイッチ機構15をオン状態にする際の荷重(ホーン荷重)が決定される。
上記のように、エアバッグ装置20が複数のホーンスイッチ機構15を介して芯金12に装着されたステアリングホイール10では、エアバッグ装置20が押下されたり、同エアバッグ装置20に過大な負荷がかかったりすることのない通常時には、接点端子34が固定側接点部(固定ピン31の上端面31f)から略上方へ離れる。接点端子34及び固定ピン31が非導通状態となり、ホーン装置40が作動しない。このときには、クリップ13により芯金12に係止された固定ピン31の鍔部31aに対し、コイルばね35の上向きの付勢力が可動装着部材32(バッグホルダ21)を介して加わる。
そのため、固定ピン31は上下2箇所で支持された状態となって動きを規制され、芯金12における貫通孔THの壁面(通常貫通孔12cの壁面、又は特別貫通孔12jにおける本体孔12kの壁面)から離れている状態から同壁面に接触して音を発することが抑制される。
また、このときには、コイルばね35の下向きの付勢力が、第2受圧部として機能する環状部41bを通じて樹脂部材41に加わり、同樹脂部材41において固定ピン31の係止溝31b内に入り込んだ爪部41dが、同係止溝31b内のクリップ13を略下方へ押圧する。この押圧により、クリップ13は、係止溝31b内の下面31dと爪部41dとによって挟み込まれ、動きを規制される。従って、クリップ13が固定ピン31の係止溝31b内の下面31dから離れている状態から同下面31dに接触して異音を発することが抑制される。
これに対し、エアバッグ装置20が押下されたり、同エアバッグ装置20に過大な負荷がかかったりして、バッグホルダ21がコイルばね35に抗して略下方へ移動させられると、少なくとも1つのホーンスイッチ機構15の可動装着部材32がバッグホルダ21を介しコイルばね35の付勢力に抗して押圧され、芯金12側(略下方側)に移動する。キャップ部材33及び接点端子34もバッグホルダ21及び可動装着部材32とともに芯金12側(略下方側)に移動する。過大な負荷がかかる状況としては、例えば車両が悪路を走行していてエアバッグ装置20が大きく振動したときを想定している。
そして、図14に示すように、接点端子34の3つの接触突部34cのうちの少なくとも1つが、固定ピン31の上端面31fに接触すると、グランドGND(車体アース)に接続された芯金12とバッグホルダ21とが、クリップ13,固定ピン31及び接点端子34を介して導通される。この導通により、バッグホルダ21に電気的に接続されたホーン装置40が作動する。
このように、固定ピン31は、芯金12(保持部12b)に係止される機能と、バッグホルダ21を芯金12に対し略上下方向へ移動可能に支持する機能とを発揮するほかに、固定側接点部としても機能する。そのため、従来技術(特許文献1)では必要とされていたホーンプレート等が不要となる。
また、上記のようにバッグホルダ21が略下方へ移動させられると、それまで可動装着部材32(バッグホルダ21)を介して固定ピン31の鍔部31aに加わっていたコイルばね35の上向きの付勢力が消失する。そのため、固定ピン31は、クリップ13によって芯金12に係止された箇所を支点として揺動可能な状態となる。このときには、クリップ13に対してもそれまで係止溝31b内の下面31dを通じて加わっていた上向きの付勢力が加わらなくなって、クリップ13が係止溝31b内で動き得る状態となる。
ここで、仮に芯金12(保持部12b)と固定ピン31との間に樹脂部材41が介在されないとすると、固定ピン31のクリップ13による芯金12に対する係止部分では、種々の隙間が生ずる。これらの隙間により、固定ピン31やクリップ13が動いて(がたついて)付近の部材に接触すると、多かれ少なかれ異音を発する。しかし、本実施形態では、樹脂部材41が異音の発生を抑制する。すなわち、樹脂部材41は、金属製の固定ピン31と、金属製の芯金12(保持部12b)における貫通孔THの壁面との接触を規制する。また、樹脂部材41は、金属製の固定ピン31における係止溝31b内の上面31eと、金属製のクリップ13とが接触するのを規制する。さらに、樹脂部材41は、クリップ13について、係止溝31b内での動きを規制することで、係止溝31bの外に位置する部位を動きにくくし、同クリップ13の一部が保持部12bの下面12eに接触したり、芯金本体12iの上面12fに接触したりするのを規制する。これらの規制により、金属同士の接触に伴う異音の発生が抑制される。
ところで、芯金12に対する各ホーンスイッチ機構15の上記締結状態を解除する場合には、図2において二点鎖線で示すように工具Tを用いる等して、各通常貫通孔12cの略下方側のクリップ13を、その通常貫通孔12cに挿入された固定ピン31の係止溝31bから遠ざかる側(固定ピン31の径方向外側)へ押圧する。この押圧により、図2及び図10において二点鎖線で示すように、各クリップ13を弾性変形させて係止溝31bから抜け出させると、固定ピン31が通常貫通孔12cに挿入されたホーンスイッチ機構15の芯金12に対する締結状態が解除される。この際のクリップ13の弾性変形量(変位量)はわずかである。従って、上記のようにクリップ13を作動(弾性変形)させるために必要なスペースも少なくてすむ。上記締結状態の解除により、各通常貫通孔12cに固定ピン31を係止するものがなくなるため、鍔部31aを介してコイルばね35による上向きの付勢力を受けている固定ピン31は、略上方へ押されて、通常貫通孔12cから抜け出ようとする。
この際、少なくとも特別貫通孔12jには固定ピン31が挿通されていて、係止溝31bにクリップ13が係合している。上述したように、全てのホーンスイッチ機構15は共通の部材であるバッグホルダ21の略同一平面上に取付けられていて、各ホーンスイッチ機構15の動きは、バッグホルダ21を通じ他のホーンスイッチ機構15による規制を受ける。そのため、上記のように通常貫通孔12cから抜け出る際には、固定ピン31は厳密には特別貫通孔12j側へ若干傾いた状態で略上方へ動くこととなる。
この際、仮に、各通常貫通孔12cの断面形状がその軸線方向のどこでも一様であるとすると、通常貫通孔12cの壁面が抵抗となり、固定ピン31が通常貫通孔12cの壁面に当って略上方への動きを規制されるおそれがある。しかし、本実施形態では、通常貫通孔12cが上側ほど拡径するテーパ状をなしているため、通常貫通孔12cの壁面が抵抗となりにくく、固定ピン31が通常貫通孔12cの壁面に当って略上方への動きを規制されることが起こりにくい。
図15は、芯金12における2つの通常貫通孔12cと、1つの特別貫通孔12jと、同特別貫通孔12jにおけるクリップ13との位置関係を示している。この図15に示すように、固定ピン31が通常貫通孔12cに挿入された2つのホーンスイッチ機構15の芯金12に対する締結が解除されて、各通常貫通孔12cから固定ピン31が抜き出されると、特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31は、クリップ13を支点として、同図15において破線の矢印で示す方向へ傾動することが可能となる。これは、1つには、上記締結解除前には、全てのホーンスイッチ機構15が取付けられているバッグホルダ21の動き(傾動)が、その締結によって規制されていたが、締結解除によりこの規制がなくなり、同バッグホルダ21が動けるようになったことによる。そのほかにも、芯金12であって、係止溝31bに対するクリップ13の係合箇所とは反対側(図15の上側)において、傾動許容部12lが、クリップ13を支点とした固定ピン31の傾動領域まで延設されていることにもよる。
図16に示すように、上記傾動に伴い固定ピン31の係止溝31bも変位するが、クリップ13は初期位置に至るまでは、自身の弾性復元力により係止溝31bに追従する。そして、クリップ13が初期位置に達した後も固定ピン31の傾動が続けられると、クリップ13の追従が止まるため、係止溝31bがクリップ13から遠ざかるようになる。従って、特別貫通孔12jに挿入されている固定ピン31については、上述した通常貫通孔12cに挿入されている固定ピン31とは異なり、工具T等によりクリップ13を押して、係止溝31bから遠ざけて外すための操作を行わなくても、係止溝31bがクリップ13から外れるようになる。そして、係止溝31bがクリップ13から外れると、特別貫通孔12jにおける固定ピン31の芯金12に対する締結状態が解除される。
ここで、上記締結解除に際し、固定ピン31を傾動させるときに、仮に金属製のクリップ13が金属製の芯金12における特別貫通孔12jの壁面に直接接触すると、その接触により固定ピン31の傾動が妨げられるおそれがある。しかし、芯金12における特別貫通孔12jの壁面と固定ピン31との間に樹脂部材41が介在された本実施形態では、特別貫通孔12jの壁面に代えて樹脂部材41がクリップ13に接触する。通常、樹脂部材41の方が、金属からなる芯金12に比べて変形しやすい。そのため、金属製のクリップ13と接触する樹脂部材41が変形(座屈)することで、固定ピン31の傾動が妨げられにくくなる。
そして、特別貫通孔12jにおけるホーンスイッチ機構15の上記締結状態が解除されると、鍔部31aを介してコイルばね35による上向きの付勢力を受けている固定ピン31は、その解除に伴い略上方へ押されて、通常貫通孔12cから抜け出ようとする。
この際、固定ピン31は特別貫通孔12j内で少なくとも傾斜している。そのため、仮に、特別貫通孔12jの断面形状がその軸線方向のどこでも一様であるとすると、特別貫通孔12jの壁面が傾動の抵抗となり、固定ピン31が特別貫通孔12jの壁面に当って略上方への移動を規制されるおそれがある。しかし、本実施形態では、特別貫通孔12jの本体孔12kが上側ほど拡径するテーパ状をなしている。そのため、特別貫通孔12jの壁面が抵抗となりにくく、固定ピン31が特別貫通孔12jの壁面に当って傾動を規制されることが起こりにくい。
また、仮に、特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31の係止溝31bに対し、クリップ13が通常貫通孔12cに近い側において係合されていると、クリップ13を支点とした固定ピン31の傾動方向は、一旦通常貫通孔12cから略上方へ抜き出された固定ピン31からすると、これを再び通常貫通孔12cに入り込ませる方向(略下方)となる。そのため、この場合には、通常貫通孔12cから略上方へ抜き出された固定ピン31が再び通常貫通孔12cに入り込まないようにする工夫が新たに必要となる。
この点、本実施形態では、固定ピン31が通常貫通孔12cに挿入された全てのホーンスイッチ機構15の芯金12に対する締結状態が解除されると、同固定ピン31を通常貫通孔12cから略上方へ抜き出すことが可能となる。
一方、上記のように、通常貫通孔12cから固定ピン31が抜き出されると、特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31は、通常貫通孔12cから遠い側において係合されているクリップ13を支点として、傾動許容部12lにおいて略上方へ傾動することが可能となる。この際の固定ピン31の傾動の方向は、上記通常貫通孔12cでの締結が解除された固定ピン31の通常貫通孔12cからの抜き出し方向(略上方)と略同じである。そのため、通常貫通孔12cから略上方へ抜き出された固定ピン31が再び通常貫通孔12cに入り込まないようにする上述した工夫を行わなくても、全ての固定ピン31が通常貫通孔12c及び特別貫通孔12jから抜け出る。
なお、特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31の上記傾動は、通常貫通孔12cでのホーンスイッチ機構15の締結状態が解除されていることを前提としてなし得るものである。すなわち、仮に、複数のホーンスイッチ機構15がそれぞれ独立した状態で動き得るものであるとすると、固定ピン31が通常貫通孔12cに挿入されたホーンスイッチ機構15の芯金12に対する締結状態が解除されなくても、特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31が傾動して、係止溝31bがクリップ13から外れるおそれがある。
しかし、全てのホーンスイッチ機構15が、バッグホルダ21の略同一平面上に取付けられている本実施形態では、全てのホーンスイッチ機構15がバッグホルダ21によって相互に連結されていて、所定のホーンスイッチ機構15の動きは、他のホーンスイッチ機構15から影響を受ける。各ホーンスイッチ機構15は、他のホーンスイッチ機構15から完全に独立して動くことができない。本実施形態では、特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31は、固定ピン31が通常貫通孔12cに挿入されたホーンスイッチ機構15の芯金12に対する締結状態が解除されない限り、傾動できない。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)固定ピン31の係止溝31bに係合し得るクリップ13を、貫通孔TH毎に設けている(図2参照)。このため、貫通孔TH毎のクリップ13を1本の連続する弾性線材によって形成する場合(特許文献2がこれに該当する)に比べ、同クリップ13の配置及び作動のためのスペースが少なくてすむ。
(2)芯金12における複数の貫通孔THを、互いに異なる2つの形態(通常貫通孔12c及び特別貫通孔12j)によって構成する(図8(A),(B)参照)。上記通常貫通孔12cを、挿入された固定ピン31の傾動を規制する孔によって構成する。また、特別貫通孔12jを、本体孔12k及び傾動許容部12lによって構成する。そして、通常貫通孔12cに挿入された固定ピン31の係止溝31bに対するクリップ13の係合が、全ての通常貫通孔12cについて解除されたときにのみ、特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31のクリップ13を支点とした傾動を、傾動許容部12lによって許容するようにしている(図16参照)。
このため、特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31については、工具T等を使用して、係止溝31bからクリップ13を外す作業を行わなくても締結状態を解除できるようになり、複数のホーンスイッチ機構15の芯金12に対する締結状態を解除する際の作業性の向上を図ることができる。
(3)全てのホーンスイッチ機構15を、バッグホルダ21の略同一平面上(取付部21d)に取付けている(図4参照)。このため、固定ピン31が通常貫通孔12cに挿入されたホーンスイッチ機構15の芯金12に対する締結状態が解除されないのに、特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31が意図せず傾動して、係止溝31bのクリップ13との係合が不用意に外れるのを抑制することができる。
(4)固定ピン31の下端部を芯金12(保持部12b)の貫通孔THに挿入して、クリップ13によって芯金12に対し、スナップフィット構造にて係止している(図10及び図11参照)。固定ピン31を、取付孔21eを通じてバッグホルダ21に挿通することにより、バッグホルダ21を芯金12に対し略上下方向へ移動可能に支持している。さらに、固定ピン31の上端面31fを固定側接点部としている。
また、各ホーンスイッチ機構15として、バッグホルダ21を、芯金12から遠ざける方向である略上方へ付勢するコイルばね35と、バッグホルダ21とともに移動して、上記上端面31fに接触して導通することでホーン装置40を作動させる接点端子34(可動側接点部)とをさらに備えるものを採用している。
そして、エアバッグ装置20が押下されたり、同エアバッグ装置20に過大な負荷がかかったりすることのない通常時には、接点端子34(可動側接点部)を固定ピン31の上端面31f(固定側接点部)から略上方へ離れさせ、両接点部間を非導通状態とし、ホーン装置40を作動させない(図10及び図11参照)。これに対し、エアバッグ装置20が押下されたり、同エアバッグ装置20に過大な負荷がかかったりした場合には、バッグホルダ21とともに接点端子34(可動側接点部)を略下方へ移動させ、固定ピン31の上端面31f(固定側接点部)に接触させて導通状態にして、ホーン装置40を作動させるようにしている(図14参照)。
このように、固定ピン31を、芯金12に係止される機能と、バッグホルダを芯金12に対し略上下方向へ移動可能に支持する機能とを発揮させるほかに、固定側接点部としても機能させるようにしている。そのため、従来技術(特許文献1)では必要とされていたホーンプレート等を廃止し、部品点数を抑えることが可能となる。
(5)ホーンスイッチ機構15毎の固定ピン31の上端部に、コイルばね35による上向きの付勢力を受ける受圧部として鍔部31aを設けている(図10及び図11参照)。
このため、各通常貫通孔12cの略下方側のクリップ13を押圧して弾性変形させて係止溝31bから抜け出させた後は、コイルばね35によって固定ピン31を押上げて、これを通常貫通孔12cから抜け出させることができる。そのため、締結状態が解除された固定ピン31を通常貫通孔12cから抜き出す作業を行わなくてもすむ。
また、特別貫通孔12jの略下方側のクリップ13を押圧して弾性変形させて係止溝31bから抜け出させた後は、コイルばね35によって固定ピン31を押上げて、これを特別貫通孔12jから抜け出させることができる。そのため、締結状態が解除された固定ピン31を特別貫通孔12jから抜き出す作業を行わなくてもすむ。
(6)特別貫通孔12jにおいて固定ピン31が挿入される箇所を本体孔12kによって構成し、傾動許容部12lをこの本体孔12kに繋げている。そして、本体孔12kに挿入された固定ピン31の係止溝31bに対しては、クリップ13を通常貫通孔12cから遠い側において係合させている(図13及び図15参照)。このため、特別貫通孔12jでの固定ピン31の傾動方向を、通常貫通孔12cでの締結が解除された固定ピン31の抜き出し方向(略上方)と略同じにすることができる。その結果、通常貫通孔12cから略上方へ一旦抜き出された固定ピン31が再び通常貫通孔12cに入り込まないようにする工夫を別途行わなくても、全ての固定ピン31を通常貫通孔12c及び特別貫通孔12jから抜け出させることができる。
(7)傾動許容部12lを、本体孔12kの壁面において、係止溝31bに対するクリップ13の係合箇所とは反対側(図13の右側)となる箇所から、クリップ13を支点とした固定ピン31の傾動領域まで延設している。このため、芯金12において、クリップ13を支点とした固定ピン31の傾動領域となる箇所が特別貫通孔12jの一部、すなわち空間となる。芯金12には固定ピン31の傾動を規制する箇所がなくなり、傾動許容部12lでの固定ピン31の傾動が可能となる。
(8)各通常貫通孔12cを、下側ほど縮径するテーパ状の孔によって構成している(図10及び図12参照)。そのため、各通常貫通孔12cで芯金12に締結されたホーンスイッチ機構15の固定ピン31を、その通常貫通孔12cから無理なくスムーズに抜き出すことができる。
また、特別貫通孔12jの本体孔12kを、下側ほど縮径するテーパ状の孔によって構成している(図11及び13参照)。そのため、特別貫通孔12jで芯金12に締結されたホーンスイッチ機構15の固定ピン31を、その特別貫通孔12jから無理なくスムーズに抜き出すことができる。
(9)保持部12bにおける特別貫通孔12jの壁面と固定ピン31との間に樹脂部材41を介在させている(図11参照)。そして、特別貫通孔12jでのホーンスイッチ機構15の締結解除に際し、固定ピン31を傾動させるときに、金属製の特別貫通孔12jの壁面に代えて樹脂部材41をクリップ13に接触させるようにしている。そのため、金属製のクリップ13との接触により樹脂部材41を変形(座屈)させることで、金属製のクリップ13を金属製の特別貫通孔12jの壁面に接触させる場合に比べ、固定ピン31を無理なくスムーズに傾動させることができるようになる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<ホーンスイッチ機構15(樹脂部材41を除く)に関する事項>
・前記実施形態では、固定ピン31の下端部の外周に全周にわたって係止溝31bを設け、これをクリップ13の入り込む凹部としたが、この凹部は、必ずしも固定ピン31の全周にわたって設けられなくてもよい。クリップ13は、固定ピン31の外周面に対し径方向の一方向から弾性付勢しているからである。従って、凹部は固定ピン31の外周面の一部にのみ設けられてもよい。この場合、凹部は、その内底面が外周面に沿って円弧状(深さ一定)となるように形成されてもよいし、内底面が平坦となるように形成されてもよい。
・固定ピン31に代えて、次の条件を満たすものを支持部材としてもよい。
条件1:貫通孔THに挿入されて、弾性部材(クリップ13)によって芯金12に係止されること。
条件2:バッグホルダ21に挿入されることにより、同バッグホルダ21を芯金12に対し略上下方向へ移動可能に支持すること。
条件3:バッグホルダ21よりも上側に、付勢部材(コイルばね35)による上向きの付勢力を受ける受圧部(鍔部31a)を有すること。
条件4:導電性を有する金属によって形成されていて、自身の上端面31fが固定側接点部として機能すること。
・付勢部材は、上述したコイルばね35に限らず、バッグホルダ21を、芯金12から遠ざける方向である略上方へ付勢するものであればよい。
・弾性部材は、固定ピン31をその軸線に直交する方向から弾性付勢するものであればよく、線材を曲げ形成した上記実施形態(クリップ13)とは異なる形態を有するものを弾性部材としてもよい。
・前記実施形態では、ホーンスイッチ機構15として、可動装着部材32を取付孔21eに差し込むだけでバッグホルダ21に固定可能な構造、所謂、スナップフィット構造を有するものを採用したが、これとは異なる構造を有するものを採用してもよい。
例えば、ホーンスイッチ機構15の可動装着部材32に筒状部32aから径方向に延びる延出部を形成し、バッグホルダ21の取付孔21eには可動装着部材32の延出部に対応する凹部を形成する。そして、延出部を凹部に合わせてホーンスイッチ機構15を取付孔21eに挿入した後、ホーンスイッチ機構15を回転させることで延出部がバッグホルダ21の下面(芯金12側の面)に係合する構成としてもよい。
<芯金12に関する事項>
・芯金12は、その少なくとも一部がエアバッグ装置20よりも略下方に位置するものであればよく、その他の部分がエアバッグ装置20と同じ高さの箇所、又は同エアバッグ装置20よりも高い箇所に位置するものであってもよい。
<貫通孔TH及びクリップ13に関する事項>
・本発明は、複数の貫通孔THを有する芯金12と、エアバッグ装置20及び芯金12間の貫通孔THに対応する複数箇所に介在される複数のホーンスイッチ機構15とを備えるエアバッグ装置付きステアリングホイール10に広く適用可能である。
次に、図17〜図20を参照して、適用例について説明するが、いずれの適用例でも、次の条件を満たすことが望ましい。
条件1:クリップ13(弾性部材)が、本体孔12kに挿入された固定ピン31(支持部材)の係止溝31b(凹部)に対しては、通常貫通孔12cから遠い側において係合されること。
これは、通常貫通孔12cから略上方へ一旦抜き出された固定ピン31が再び通常貫通孔12cに入り込まないようにする上述した工夫を行わなくても、全ての固定ピン31を通常貫通孔12c及び特別貫通孔12jから抜き出すことができるようにするためである。そのためには、特別貫通孔12jにおいて、クリップ13を支点として固定ピン31を傾動させる際のその傾動方向を、締結状態を解除されて通常貫通孔12cから抜き出される固定ピン31のその抜き出し方向(略上方)に合致させる必要があるからである。
条件2:傾動許容部12lが、本体孔12kの壁面において、係止溝31bに対するクリップ13の係合箇所とは反対側となる箇所からクリップ13を支点とした固定ピン31の傾動領域まで延設されていること。
これは、芯金12において、クリップ13を支点とした固定ピン31の傾動領域となる箇所を特別貫通孔12jの一部、すなわち空間とし、芯金12に、固定ピン31の傾動を規制する箇所をなくし、傾動許容部12lでの固定ピン31の傾動を可能とするためである。
(適用例1)
図17は、芯金12の車幅方向(左右方向)についての2箇所に貫通孔THが設けられ、右側の貫通孔THが通常貫通孔12cとされ、左側の貫通孔THが特別貫通孔12jとされた適用例1を示している。
この適用例1では、クリップ13は、特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31の係止溝31bに対しては、通常貫通孔12cから遠い側である左側において係合される。また、特別貫通孔12jの傾動許容部12lは、本体孔12kの壁面において、係止溝31bに対するクリップ13の係合箇所とは反対側である右側の箇所から、クリップ13を支点とした固定ピン31の傾動領域まで延設される。
なお、図17中の破線の矢印は、クリップ13を支点とした固定ピン31の傾動方向を示している。後述する図18〜図20についても同様である。
(適用例2)
図18は、芯金12の3箇所(前側の2箇所と後側の1箇所)に貫通孔THが設けられ、後側の1つの貫通孔THが通常貫通孔12cとされ、前側の2つの貫通孔THが特別貫通孔12jとされた適用例2を示している。
この適用例2では、クリップ13は、各特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31の係止溝31bに対しては、通常貫通孔12cから遠い側である前側において係合される。また、各特別貫通孔12jの傾動許容部12lは、本体孔12kの壁面において、係止溝31bに対するクリップ13の係合箇所とは反対側である後側の箇所から、クリップ13を支点とした固定ピン31の傾動領域まで延設される。
(適用例3)
図19は、芯金12の4箇所(前側の2箇所と後側の2箇所)に貫通孔THが設けられ、後側の2つの貫通孔THが通常貫通孔12cとされ、前側の2つの貫通孔THが特別貫通孔12jとされた適用例3を示している。
この適用例3では、クリップ13は、各特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31の係止溝31bに対しては、通常貫通孔12cから遠い側である前側において係合される。また、各特別貫通孔12jの傾動許容部12lは、本体孔12kの壁面において、係止溝31bに対するクリップ13の係合箇所とは反対側である後側の箇所から、クリップ13を支点とした固定ピン31の傾動領域まで延設される。
(適用例4)
図20は、芯金12の4箇所(前側の1箇所と、中間部分の2箇所と、後側の1箇所)に貫通孔THが設けられ、前側の1つと中間部分の2つの貫通孔THが通常貫通孔12cとされ、後側の1つの貫通孔THが特別貫通孔12jとされた適用例4を示している。
この適用例4では、クリップ13は、特別貫通孔12jに挿入された固定ピン31の係止溝31bに対しては、各通常貫通孔12cから遠い側である後側において係合される。また、特別貫通孔12jの傾動許容部12lは、本体孔12kの壁面において、係止溝31bに対するクリップ13の係合箇所とは反対側である前側の箇所から、クリップ13を支点とした固定ピン31の傾動領域まで延設される。
なお、上記適用例1〜4は、一例に過ぎず、本発明は、貫通孔THが芯金12の5箇所以上設けられている場合にも適用可能である。また、本発明は、貫通孔THが芯金12の2〜4箇所に設けられていて、それらの貫通孔THが上記適用例1〜4とは異なる態様で配列された場合にも適用可能である。さらに、本発明は、複数の貫通孔THのうち、通常貫通孔12cとするものと、特別貫通孔12jとするものとが、上記適用例1〜4とは異なる場合にも適用可能である。
・特別貫通孔12jでは、本体孔12kに挿入された固定ピン31(支持部材)の係止溝31b(凹部)に対し、クリップ13(弾性部材)が、通常貫通孔12cから遠い側において係合されることが望ましい。しかし、通常貫通孔12cでは、クリップ13(弾性部材)が、挿入された固定ピン31(支持部材)の係止溝31b(凹部)に対し、いずれの側において係合されてもよい。これは、クリップ13が係止溝31bに係合する方向は特に問われないという意味である。
・通常貫通孔12c及び特別貫通孔12jが下側ほど縮径するテーパ状をなしていることは、クリップ13(弾性部材)の配置のためのスペースを小さくしつつ、複数のホーンスイッチ機構15の芯金12に対する締結状態を解除する際の作業性向上を図るという本発明の効果を得る観点からは必須の要件ではない。従って、通常貫通孔12c及び特別貫通孔12jを、下側ほど縮径するテーパ状とは異なる形状、例えば、内径が上下方向のどの箇所でも一様である形状とすることも可能である。
<樹脂部材41に関する事項>
・樹脂部材41の外側面の全体を、上側ほど拡径し、かつ貫通孔THの壁面に面接触するテーパ面に形成してもよい。例えば、係止片41cの外側面も、係合片41eの外側面41fと同様の面に形成し、これらの係止片41cの外側面と、係合片41eの外側面41fとによって上記テーパ面を構成してもよい。
・樹脂部材41は、クリップ13(弾性部材)の配置のためのスペースを小さくしつつ、複数のホーンスイッチ機構15の芯金12に対する締結状態を解除する際の作業性向上を図るという本発明の効果を得る観点からは必須の構成部材ではなく、従って割愛することも可能である。
<エアバッグ装置20に関する事項>
・バッグホルダ21の構成を適宜変更してもよい。例えば、前記実施形態では、パッド部24やホーンスイッチ機構15が組付けられる組付部を、爪係止孔21bや取付孔21eといった孔形状で構成したが、突部等、孔以外の形状で構成してもよい。また、爪係止孔21bや取付孔21e等の配置を適宜変更してもよい。
・前記実施形態では、パッド部24のスイッチ支持部24gを収容壁部24bの外側に設けたが、これを例えば、収容壁部24bの内側(バッグ収容空間X側)に設けてもよい。このように変更した場合には、エアバッグ装置を小型にすることが可能である。また、スイッチ支持部24gを収容壁部24bの内側から外側に跨るように形成してもよい。
<その他の事項>
・本発明のステアリングホイールが適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
・本発明は、車両に限らず、航空機、船舶等の他の乗り物における操舵装置のステアリングホイールに適用することもできる。