JP5239228B2 - 複合半透膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は液状混合物の選択分離に有用な複合半透膜の製造方法に関する。詳しくは、海水やかん水から塩分を除去する際にホウ素も十分に除去することができる、架橋ポリアミドからなる分離機能層を有する複合半透膜を製造する方法に関する。
近年、複合半透膜を用いた海水の淡水化が、世界中の水処理プラントで実用化されてきている。分離機能層が架橋ポリアミドからなる複合半透膜は、多官能性アミンと多官能性ハロゲン化物との界面重縮合によって分離機能層を形成し、容易に製膜できるという利点があり、さらに、高塩排除率、高透過流束であるという優れた性能を有する利点がある(特許文献1,2参照)。
しかしながら、水処理によって取得する水に要求される水質基準はますます厳しくなっており、特に海水中に微量含まれるホウ素については、通常の逆浸透膜処理では飲料水に適用できる濃度にまで低減することが困難である。
そこで、複合半透膜のホウ素阻止性能を向上させる手段が種々提案されてきている。その一つとして、界面重縮合により製膜された複合半透膜を熱処理して性能向上させる方法が挙げられる。この方法では、従来の製造方法に対して大きな変更を加える必要がないため、簡便な改善方法として有用である。その熱処理としては、例えば、架橋ポリアミドからなる複合半透膜を40〜100℃の範囲で熱水処理する方法が提案されている(特許文献3,4参照)。
しかし、この方法によって処理されて得られる複合半透膜を、25℃、pH6.5、ホウ素濃度5ppm、TDS濃度3.5重量%の海水を5.5MPaの操作圧力で透過させた場合のホウ素透過係数は、熱水処理前と熱水処理後とで比較した場合、(熱水処理前のホウ素透過係数)÷(熱水処理後のホウ素透過係数)は2.5程度であり、熱水処理だけではホウ素透過性を十分に低減させることはできない。そこで、より高いホウ素阻止性能向上効果を得られる、後処理方法の開発が望まれていた。
特開平1−180208号公報 特開平2−115027号公報 特開平11−19493号公報 特公平7−114941号公報
本発明は、ホウ素のような中性領域では非解離の物質に対しても十分に高い阻止性能を示す複合半透膜を製造する方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するための本発明法は、下記(1)〜(4)によって特定される。
(1)多官能アミン化合物と多官能酸ハロゲン化物とから界面重縮合反応によって架橋ポリアミドからなる分離機能層を形成する方法によって、水透過係数が30×10−12/m・Pa・s以下、ホウ素透過係数が12.0×10 −7 m/s以下の性能を有する複合半透膜を製造した後、該複合半透膜を、加圧かつ加熱された水蒸気雰囲気下で蒸気処理することを特徴とする複合半透膜の製造方法。
(2)前記蒸気処理が、104〜364kPaの加圧条件下、かつ、101〜140℃に加熱された水蒸気雰囲気中で行われることを特徴とする上記(1)に記載の複合半透膜の製造方法。
(3)上記(1)または(2)に記載の製造方法によって得られる複合半透膜を有していることを特徴とする複合半透膜エレメント。
(4)上記(1)または(2)に記載の製造方法によって得られる複合半透膜を用いて海水もしくはかん水を逆浸透処理することを特徴とする水処理方法。
本発明法によれば、逆浸透膜処理では高度に阻止することが難しかったホウ素のような中性領域で非解離の物質にたいしても高い阻止性能を有する複合半透膜を製造することができる。したがって、この複合半透膜によれば、特に海水の脱塩において、これまでは高度の阻止が難しかったホウ素を高い阻止率でもって除去することができ、逆浸透処理による飲料水製造において好適に用いることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、微多孔性支持膜上に、多官能アミン化合物と多官能酸ハロゲン化物とからの界面重縮合反応によって架橋ポリアミドからなる分離機能層を形成させる方法によって、水透過係数が30×10−12/m・Pa・s以下の性能を有する複合半透膜を製造した後、該複合半透膜を、加圧・加熱された水蒸気雰囲気下で蒸気処理するものである。ここで、加圧・加熱された水蒸気雰囲気下は、104〜364kPaの加圧条件下において101〜140℃に加熱された水蒸気雰囲気下であることが好ましい。
多官能アミン化合物とは、一分子中に少なくとも2個以上の一級および/または二級アミノ基を有する多官能アミンをいう。たとえば2個以上のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼンに結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸などの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン、4−アミノメチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると一分子中に2〜4個の一級および/または二級アミノ基を有する芳香族多官能アミンであることが好ましく、このような多官能芳香族アミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能アミンは、単独で用いたり、混合して用いてもよい。
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。たとえば、3官能酸ハロゲン化物では、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物では、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。多官能アミンとの反応性を考慮すると、多官能酸ハロゲン化物は多官能酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能酸ハロゲン化物は、単独で用いたり、混合して用いてもよい。
本発明の複合分半透膜の分離機能層の厚みは、十分な分離性能および透過水量を得るために、通常0.01〜1μmの範囲内、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲内である。
本発明における複合半透膜は、微多孔性支持膜上に分離機能層が形成された複合半透膜であり、この微多孔性支持膜は、実質的にイオン等の分離性能を有さないものであって、実質的に分離性能を有する分離機能層に強度を与えるためのものである。孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔をもち、あるいは、分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような支持膜が好ましい。
微多孔性支持膜に使用する材料やその形状は特に限定されないが、たとえばポリエステルまたは芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種を主成分とする布帛(基布)により強化された、ポリスルホンや酢酸セルロースやポリ塩化ビニル、あるいはそれらを混合した樹脂からなるものが好ましく使用される。使用される樹脂素材としては、化学的、機械的、熱的に安定性の高いポリスルホンを使用するのが特に好ましい。具体的には、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
たとえば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を、密に織ったポリエステル布あるいは不織布(基布)の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有した微多孔性支持膜を製造することができる。
上記の微多孔質支持膜の厚みや基布の厚みは、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度および充填密度を得るためには、微多孔質支持膜の厚みは50〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは75〜200μmの範囲内である。また、基布上に形成された多孔質層の厚みは、10〜200μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30〜100μmの範囲内である。
微多孔質支持膜の表面孔径等の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔質層を剥がした後、この多孔質層を凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。得られた電子顕微鏡写真から多孔質支持体の膜厚や表面孔径を決定する。なお、本発明における厚みや孔径は平均値を意味するものである。
次に、本発明によって蒸気処理される複合半透膜の製造方法について述べる。
例えば、密に織ったポリエステル布や不織布などの基布の上に、ポリスルホン溶液を一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させて、表面の大部分が直径数十nm以下の微細な孔を有した微多孔性支持膜を製造する。
このようにして得られた微多孔性支持膜上に、1分子中に少なくとも2個のアミノ基を有する多官能アミン化合物の水溶液、多官能酸ハロゲン化物の溶液を順に塗布してin−situ界面重縮合反応をさせて、実質的に分離性能を有するポリアミド分離機能層を形成させる。
多官能アミン化合物水溶液中の多官能アミン化合物の濃度は、0.5〜20重量%の範囲内にあることが好ましく、1〜15重量%の範囲内にあることがより好ましい。多官能アミン化合物濃度が0.5重量%を下回ると、水透過係数が30×10−12/m・Pa・s以下の複合半透膜を作製することが困難となり、20重量%を超えると分離機能層の膜厚が大きくなり実用レベルの透過水量を得ることが困難となる。
多官能酸ハロゲン化物を溶解する溶媒は、水と非混和性であり、かつ、多官能酸ハロゲン化物を溶解するとともに、微多孔性支持膜を破壊せず、界面重縮合により架橋ポリマーを形成し得るものであればよい。例えば、炭化水素化合物、シクロヘキサン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2トリフルオロエタンなどが挙げられるが、反応速度、溶媒の揮発性から、好ましくは、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2トリフルオロエタンなどである。
上記有機溶媒中の多官能酸ハロゲン化物の濃度は、0.04〜1.0重量%の範囲内であると好ましい。0.04重量%を下回ると、活性層である分離機能層の形成が不十分となりやすく、1.0重量%を超えると実用レベルの透過水量を得ることが困難となり、また、コスト高となる。
多官能アミン化合物水溶液、および多官能酸ハロゲン化物溶液には、多官能アミン化合物と多官能酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、必要に応じて、アシル化触媒や極性溶媒、酸捕捉剤、界面活性剤、酸化防止剤などを含有させることもできる。
これら多官能アミン化合物、多官能酸ハロゲン化物およびその他の成分の比率は、上記範囲内の濃度でもって製造する複合半透膜の水透過係数が30×10−12/m・Pa・s以下、ホウ素透過係数が12.0×10 −7 m/s以下になるように適宜調整すればよい。
このようにして得られた複合半透膜(水透過係数が30×10−12/m・Pa・s以下、ホウ素透過係数が12.0×10 −7 m/s以下)を、そのまま、加圧・加熱された水蒸気雰囲気下で蒸気処理しても良いし、また、前記のようにして得られた複合半透膜を、次いで、水洗などによって未反応残存物を取り除いた後、pHが6〜13の範囲内の塩素含有水溶液に常圧で接触させ、その後に、加圧・加熱された水蒸気雰囲気下で蒸気処理してもよい。後者の場合には、最終的に得られる複合半透膜の塩排除率、透過水量を高めることができるので好ましい。ここで、加圧・加熱された水蒸気雰囲気は、104〜364kPaの加圧条件下において101〜140℃に加熱された水蒸気雰囲気であることが好ましい。
蒸気処理の前に常圧で接触処理させるpH6〜13の塩素含有水溶液としては、以下に例示する塩素発生化合物を含有する水溶液が用いられる。すなわち、塩素発生化合物としては、塩素ガス、サラシ粉、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、クロラミンB、クロラミンT、ハラゾーン、ジクロロジメチルヒダントイン、塩素化イソシアヌル酸およびその塩などを代表例として挙げることができ、酸化力の強さによって、その濃度を決定することが好ましい。上記の塩素発生化合物を含有する水溶液の中でも、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が、取り扱い性の点から好ましい。また、塩素処理剤として、次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合、遊離塩素の濃度は10〜2000ppmが好ましく、膜性能のバランスを考えると、100〜1000ppmの範囲がより好ましい。塩素処理時間は2分〜20時間が好ましく、遊離塩素濃度が低く、処理pHが高い場合には、処理時間は長時間の方が好ましく、逆に遊離塩素濃度が高く、処理pHが低い場合には、処理時間は短時間の方が好ましい。
複合半透膜における水透過係数(L)とホウ素透過係数(P)の値は、膜面で生じる濃度分極現象を考慮した以下の測定・算出方法で求めることができる。
平膜状の複合半透膜の試料を用いて測定する場合は、参考文献1(M. タニグチ(M.Taniguchi)らによる「ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス」第183巻,2000年,p259−267(以下、参考文献1という)に記載された平膜セル(図1)を使用する。この平膜セルは、図1(縦断面図)に示すように、供給する原水の流れ方向に対し、半透膜、不織布、燒結金属を順次重ね、その上に蓋部を重ねてシールした構造のものであり、側面上部から透過水が、側面下部から濃縮水が排出される。
この平膜セルを用い、供給圧力5.5MPa、流量3.5L/分で、25℃の模擬海水(pH6.5、ホウ素濃度5.0mg/L、全溶質濃度3.5重量%の海水)を透過させ、水透過流束(J)、得られた透過水の水質、濃縮水の水質を測定する。これら測定値から、半透膜の阻止性能を求め、以下の式によって水透過係数(L),ホウ素透過係数(P)を算出する。
ここで、TDS浸透圧(π)は、「AIChEジャーナル」第46巻,2000年,p1967−1973(以下、参考文献2という)に記載された、いわゆる「三宅の式」(下記)によって求めることができる。
上記におけるTDS原水膜面濃度(C)は、
の式から求める。ここにおけるTDS濃縮水濃度(C)とホウ素原水膜面濃度(Cmb)の値としては実測による値を用いればよい。
また、上記TDS物質移動係数(k)は、評価セルによって決められる値であり、この測定で用いた平膜セルの場合、
k=1.63×10−3・Q0.4053
である。つづいて、ホウ素の物質移動係数(k)は、参考文献1に示されるように、
k/k=(D/D0.75
D :TDS拡散係数[m/s]
:ホウ素拡散係数[m/s]
から算出する。
したがって、上記の式から未知数L,P,P,C,Cmbを算出する。
なお、平膜セルの代わりに膜エレメントで測定する場合には、参考文献2に示されているように、膜エレメントの長さ方向に積分しながらL,Pをフィッティングによって算出すればよい。
本発明による蒸気処理に供される複合半透膜は、水透過係数が30×10−12/m・Pa・s以下、ホウ素透過係数が12.0×10 −7 m/s以下の性能を有する複合半透膜である。水透過係数について、好ましくは20×10−12/m・Pa・s以下であり、より好ましくは、15×10−12/m・Pa・s以下である。水透過係数が30×10−12/m・Pa・sを超える複合半透膜である場合、あるいは、ホウ素透過係数が12.0×10 −7 m/sを超える複合半透膜である場合は、本発明による蒸気処理を行っても十分な効果が得られない。
上記した水透過係数を有する複合半透膜を本発明によって蒸気処理すると、蒸気処理の前後における複合半透膜のホウ素透過係数を、次式のとおりにすることができる。
(蒸気処理前のホウ素透過係数)÷(蒸気処理後のホウ素透過係数)≧3.0
ここで、ホウ素透過係数は、25℃、pH6.5、ホウ素濃度5ppm、TDS濃度3.5重量%の海水を5.5MPaの操作圧力で透水処理したときのホウ素透過係数であり、それぞれ、蒸気処理する前の段階で測定した値、蒸気処理した後に測定した値である。
このように、本発明で特定した蒸気処理を行うことによって、ホウ素透過係数を3分の1以下に低減させることができるので、ホウ素を高い阻止率でもって除去することができる複合半透膜とすることができ、逆浸透膜処理による飲料水製造において好適に用いることができる。
本発明による蒸気処理を行う際の処理圧力は、104〜364kPaの範囲であることが好ましく、120〜315kPaの範囲であることがより好ましく、143〜271kPaの範囲であることが特に好ましい。また処理温度は、101〜140℃の範囲であることが好ましく、105〜135℃の範囲であることがより好ましく、110〜130℃の範囲であることが特に好ましい。101℃未満で蒸気処理や熱水処理する場合は、ホウ素除去率向上効果が不十分となる。一方、上限の140℃をこえても特に問題ないが、140℃以下の処理の場合と効果は同等であり、現実的な処理設備やコスト面から高くても140℃以下であることが好ましい。このような加圧下において加熱することにより101℃以上の水蒸気中の処理が可能となる。
本発明では加圧・加熱下の水蒸気雰囲気下で処理することが重要である。ここで、水蒸気雰囲気は、その圧力・温度条件下での飽和水蒸気量あるいはそれに近い量の水蒸気が充満する雰囲気である。
これに対し、水蒸気を充満させていない乾熱雰囲気下で加熱する場合(例えば熱風処理やオーブン等の処理を行う場合)には、複合半透膜が乾燥し、複合半透膜中の微多孔性支持体や分離機能層の収縮が顕著になり、実用レベルの透過水量を得ることが困難となる。また、複合半透膜が乾燥した状態で熱処理されるため、微多孔性支持体や分離機能層の亀裂などの欠点が生じやすく、ホウ素除去性能が低下することが懸念される。
本発明によって蒸気処理する時間は、ある程度以上の時間であれば、短時間でも長時間でも同等の効果が得られるため特に制限されないが、生産効率やコスト面を考慮すると短時間である方が好ましい。かかる処理時間は、1〜30分の範囲にあることが好ましく、2〜20分の範囲にあることがより好ましい。
すなわち、30×10−12/m・Pa・s以下、ホウ素透過係数が12.0×10 −7 m/s以下の水透過係数を有する複合半透膜に対して、104〜364kPaの加圧条件下において101〜140℃に加熱された水蒸気による蒸気処理を施すことにより、複合半透膜のホウ素除去率を格段に向上させることができるものであり、高ホウ素除去率を有する複合半透膜とすることができる。
このようなホウ素除去率向上効果を得るための具体的な蒸気処理方法としては以下のような方法がある。
上記蒸気処理をオンラインで行う場合は、例えばラビリンスシールを用いた、従来から繊維製造などに使用されている加圧スチーム装置を用いることができる。また、バッチ式で行う場合はオートクレーブのような汎用の装置を用いることができる。
このように高温・高圧で蒸気処理して形成される本発明の複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントにして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水から飲料水などの透過水と、膜を透過しなかった濃縮水を分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が脱塩率は向上するが、運転に必要なエネルギーも上昇すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、海水脱塩条件では1MPa以上、10MPa以下が好ましい。またかん水脱塩条件では0.3MPa以上、5MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると脱塩率が低下するが、低くなるにしたがい透水性能も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHは、高くなると、海水などの高塩濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、低くなると膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
実施例および比較例における測定は次のとおり行った。
<参考例>
ポリエステル不織布(通気度0.5〜1cc/cm・sec)上にポリスルホンの15.3重量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を200μmの厚みで室温(25℃)でキャストし、ただちに水中に浸漬して5分間放置し、次いで、90℃2分間熱水中で処理して微多孔性支持膜を作製した。
このようにして得られた微多孔性支持膜(厚さ210〜215μm)を、メタフェニレンジアミン(以下mPDAという)3.5重量%水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド(以下TMCという)0.12重量%、テレフタル酸クロリド(以下TPCという)0.18重量%含むn−デカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置した。次に膜から余分な溶液を除去するために、膜を1分間垂直に把持して液切りした。その後、90℃の熱水で2分間洗浄した後、pH7、塩素濃度200mg/lに調整した次亜塩素酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、亜硫酸水素ナトリウム濃度が1,000mg/lの水溶液中に浸漬することで、余分な次亜塩素酸ナトリウムを還元除去した。さらに、この膜を95℃の熱水で2分間再洗浄した。
得られた複合半透膜の性能を、前記した測定・算出方法により、前記した模擬海水を用いて流量3.5L/分で評価したところ、膜透過流束は1.01m/m・日、透過水TDS濃度は73ppm、透過水ホウ素濃度は0.40mg/lであった。この複合半透膜は水透過係数Lp=8.3×10−12/m・Pa・s、ホウ素透過係数Pb=8.9×10−7m/sであった。なお、水透過係数およびホウ素透過係数の算出に必要なTDS濃縮水濃度とホウ素原水膜面濃度は実測値を用いた。
<実施例1>
参考例で製造して得られた複合半透膜を、オートクレーブを用いて199kPaの加圧条件下、120℃の水蒸気によって20分間処理した。この複合半透膜を参考例と同様の条件で評価したところ、透過水TDS濃度は65ppm、透過水ホウ素濃度は0.19mg/lであった。この複合半透膜は水透過係数Lp=4.0×10−12/m・Pa・s、ホウ素透過係数Pb=2.8×10−7m/sであった。
<実施例2>
参考例で製造して得られた複合半透膜をオートクレーブを用いて蒸気処理する際の処理条件を271kPaの加圧条件下、130℃、3分間に変更した他は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。この複合半透膜を参考例と同様にして膜性能を評価したところ、透過水TDS濃度43ppm、透過水ホウ素濃度は0.18mg/lであった。この複合半透膜は水透過係数Lp=3.7×10−12/m・Pa・s、ホウ素透過係数Pb=2.5×10−7m/sであった。
<実施例3>
界面重縮合反応させる際のmPDA、TMC、TPCの組成を表1に示すように変更した他は、参考例と同様にして複合半透膜を作製した。この複合半透膜を参考例と同様にして膜性能を評価したところ、膜透過流束は1.13m/m・日、透過水TDS濃度は69ppm、透過水ホウ素濃度は0.48mg/lであった。この複合半透膜は水透過係数Lp=11.8×10−12/m・Pa・s、ホウ素透過係数Pb=12.0×10−7m/sであった。
このようにして得られた複合半透膜を、オートクレーブを用いて271kPaの加圧条件下、130℃の水蒸気によって3分間処理した。この複合半透膜を上記と同様の条件で評価したところ、透過水TDS濃度は45ppm、透過水ホウ素濃度は0.22mg/lであった。この複合半透膜は水透過係数Lp=5.0×10−12/m・Pa・s、ホウ素透過係数Pb=3.8×10−7m/sであった。
<比較例1>
界面重縮合反応させる際のmPDA、TMC、TPCの組成を表2に示すように変更した他は、参考例と同様にして複合半透膜を作製した。この複合半透膜を、参考例と同様にして膜性能を評価したところ、膜透過流束は1.50m/m・日、透過水TDS濃度は341ppm、透過水ホウ素濃度は0.89mg/lであった。この複合半透膜は水透過係数Lp=48.9×10−12/m・Pa・s、ホウ素透過係数Pb=29.3×10−7m/sであった。
このようにして得られた複合半透膜を、オートクレーブを用いて199kPaの加圧条件下、120℃の水蒸気によって20分間処理した。この複合半透膜を上記と同様の条件で評価したところ、透過水TDS濃度は312ppm、透過水ホウ素濃度は1.38mg/lであった。この複合半透膜は、水透過係数Lp=42.9×10−12/m・Pa・s、ホウ素透過係数Pb=23.8×10−7m/sであった。
<比較例2>
参考例で製造して得られた複合半透膜を、熱風乾燥機中で110℃、10分間乾熱処理を施した。得られた複合半透膜を参考例と同様にして膜性能を評価したところ、透過水TDS濃度は324ppm、透過水ホウ素濃度は1.17mg/lであった。この複合半透膜は水透過係数Lp=1.2×10−12/m・Pa・s、ホウ素透過係数Pb=15.3×10−7m/sであった。
<比較例3>
参考例で製造して得られた複合半透膜を、95℃熱水中で30分間熱水処理を施した。得られた複合半透膜を参考例と同様にして膜性能を評価したところ、透過水TDS濃度は62.5ppm、透過水ホウ素濃度は0.32mg/lであった。この複合半透膜は水透過係数Lp=4.2×10−12/m・Pa・s、ホウ素透過係数Pb=6.1×10−7m/sであった。
なお、実施例1〜3の製膜条件と結果を表1に、比較例1〜3の製膜条件と結果を表2に示す。
水透過係数等の膜性能を評価する際に使用する平膜セルの構造を示す縦断面図である。

Claims (2)

  1. 多官能アミン化合物と多官能酸ハロゲン化物とから界面重縮合反応によって架橋ポリアミドからなる分離機能層を形成する方法によって、水透過係数が30×10−12/m・Pa・s以下、ホウ素透過係数が12.0×10−7m/s以下の性能を有する複合半透膜を製造した後、
    該複合半透膜を、加圧かつ加熱された水蒸気雰囲気下で蒸気処理することを特徴とする
    複合半透膜の製造方法。
  2. 前記蒸気処理が、104〜364kPaの加圧条件下、かつ、101〜140℃に加熱された水蒸気雰囲気中で行われることを特徴とする
    請求項1に記載の複合半透膜の製造方法。
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