JP5696361B2 - 複合半透膜およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な複合半透膜に関し、例えば乾燥による品質変化の小さい、微多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を形成した複合半透膜およびその製造方法に関する。
近年、複合半透膜を用いた海水やかん水の淡水化が試みられ、世界中の水処理プラントで実用化されてきている。複合半透膜は微多孔性支持膜上に分離機能層を被覆してなり、その分離機能層を架橋芳香族ポリアミドから形成した場合には、ベンゼン環を含むことによって剛直性に富み、芳香族多官能アミン水溶液と芳香族多官能酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液との界面重縮合により容易に製膜できる利点があり、さらに高塩除去率、高透過流束であることが知られている。
しかし、微多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を形成してなる複合半透膜は、乾燥すると透水性や溶質除去率の低下などの品質変化が起こるため、保管時には保湿する必要がある。乾燥による品質変化を防ぐ方法として、例えば、多官能アミン水溶液と多官能酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液との界面重合を、複数個のイオン性部分を有する高分子湿潤剤の存在下で行う方法(特許文献1)が開示されているが、この方法では該高分子潤滑剤を存在させずに得られた膜よりも溶質除去率が低くなる傾向が見られ、好ましくない。また、多官能アミン水溶液と多官能酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液との界面重合で得られた複合半透膜を分子量1000以下の糖類溶液に浸漬処理する方法(特許文献2)が開示されている。しかしながらこの方法では、5重量%以上の高濃度の糖類溶液を使用する必要があり、経済的な負担や廃液処理への負荷が増加するなどの問題があった。
特許第2727087号公報 特開2000−117074号公報
本発明は、膜製造方法の変更によって複合半透膜の透水性や溶質除去率を損なうことなく、さらには経済的な負担や廃液処理への負荷の少ない方法により、乾燥による品質低下の小さい複合半透膜を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成をとる。
(1)微多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を形成してなり、該ポリアミド分離機能層を構成するポリアミドが、多官能アミンと糖類を含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液とを微多孔性支持膜上で接触させ界面重縮合させることで得られた架橋ポリアミドであることを特徴とする複合半透膜。
(2)前記糖類が、単糖類、二糖類、三糖類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)に記載の複合半透膜。
(3)前記糖類が、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、ラフィノースから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)に記載の複合半透膜。
(4)微多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を形成してなる複合半透膜の製造方法であって、該ポリアミド分離機能層を構成する架橋ポリアミドが、多官能アミンと糖類を含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液とを微多孔性支持膜上で接触させ界面重縮合させることで形成されることを特徴とする複合半透膜の製造方法。
(5)前記糖類が、単糖類、二糖類、三糖類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(4)に記載の複合半透膜の製造方法。
(6)前記糖類が、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、ラフィノースから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(4)に記載の複合半透膜の製造方法。
本発明によれば、乾燥による透水性と溶質除去性の低下が小さい複合半透膜を得ることができる。また、必要とする薬剤量が少ないので、経済的な負担や廃液処理への負荷を少なくすることができる。
本発明は、架橋ポリアミドからなる分離機能層を有する複合半透膜に保湿性を付与するものである。
本発明において複合半透膜は、好ましくは、実質的に分離性能を有する分離機能層が、実質的に分離性能を有さない微多孔性支持膜上に被覆されてなり、該分離機能層は多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを糖類の存在下で接触させ界面重縮合させることによって得られる架橋ポリアミドからなるものである。ここで多官能アミンは脂肪族多官能アミンと芳香族多官能アミンとから選ばれる少なくとも1つの成分からなる。
脂肪族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する脂肪族アミンであり、好ましくはピペラジン系アミンおよびその誘導体である。例えば、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,3,5−トリエチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2,5−ジ−n−ブチルピペラジンなどが例示され、性能発現の安定性から、特に、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジンが好ましい。
また、芳香族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミンであり、特に限定されるものではないが、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンなどがあり、そのN−アルキル化物としてN,N−ジメチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジエチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、N,N−ジエチルパラフェニレンジアミンなどが例示され、性能発現の安定性から、特にメタフェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好ましい。
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に2個以上のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物であり、上記アミンとの反応によりポリアミドを与えるものであれば特に限定されない。多官能酸ハロゲン化物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸の酸ハロゲン化物を用いることができる。酸ハロゲン化物の中でも、酸塩化物が好ましく、特に経済性、入手の容易さ、取り扱い易さ、反応性の容易さ等の点から、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸の酸ハロゲン化物であるトリメシン酸クロリドが好ましい。上記多官能酸ハロゲン化物は単独で用いることもできるが、混合物として用いてもよい。
多官能酸ハロゲン化物を溶解する有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ微多孔性支持膜を破壊しないことが好ましく、架橋ポリアミドの生成反応を阻害しないものであればいずれであっても良い。代表例としては、液状の炭化水素、トリクロロトリフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられるが、オゾン層を破壊しない物質であることや入手のしやすさ、取り扱いの容易さ、取り扱い上の安全性を考慮すると、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカンなど、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、1−デセンなどの単体あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
糖類は、上述の多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであればとくに限定されず、単糖類、二糖類、三糖類のほか、デンプン、グリコーゲン、ペクチン、アガロースなどが挙げられる。これらの中でも、溶解による多官能アミン水溶液の粘度上昇を抑えられ、良好な製膜を行うことができることから、単糖類、二糖類、三糖類が好ましく、とくに経済性、入手のしやすさ、取り扱いの容易さから、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、ラフィノースがさらに好ましい。
本発明において微多孔性支持膜は、実質的にイオン等の分離性能を有さず、実質的に分離性能を有する分離機能層に強度を与えるためのものである。孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような支持膜が好ましい。
微多孔性支持膜に使用する材料やその形状は特に限定されないが、例えば支持体(基材)に樹脂をキャストして形成した膜を例示することができる。基材としては、ポリエステルまたは芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種を主成分とする布帛が例示される。基材にキャストする樹脂の種類としては、例えばポリスルホンや酢酸セルロースやポリ塩化ビニル、あるいはそれらを混合したものが好ましく使用され、化学的、機械的、熱的に安定性の高いポリスルホンを使用するのが特に好ましい。
具体的には、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
Figure 0005696361
本発明に使用する微多孔性支持膜は、ミリポア社製”ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製”ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるが、”オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することができる。
例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を、密に織ったポリエステル布あるいは不織布(基材)の上に一定の厚さに注型し、それを、ドデシル硫酸ソーダ0.5重量%、DMF2重量%を含む水溶液中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有する微多孔性支持体を備えた微多孔性支持膜を得ることができる。
上記の微多孔性支持体および基材の厚みは、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度および充填密度を得るためには、微多孔性支持体と基材との合計の厚みが50〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは100〜250μmの範囲内である。また、多孔性支持体の厚みは、10〜200μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30〜100μmの範囲内である。
微多孔性支持膜の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から微多孔質支持体を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)によって観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。得られた電子顕微鏡写真から微多孔性支持体の膜厚や表面孔径を決定する。なお、本発明における厚みや孔径は無作為に10箇所を抽出して測定した測定値の平均値を意味するものである。
次に、複合半透膜の好ましい製造方法について説明する。複合半透膜中の実質的に分離性能を有する分離機能層は、例えば、前述の多官能アミンを含有する水溶液と、前述の多官能酸ハロゲン化物を含有する、水とは非混和性の有機溶媒溶液を用い、後述の微多孔性支持膜上で接触させ界面重縮合させることにより形成される。
多官能アミンを含有する水溶液や多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液には、両成分間の反応を妨害しないものであれば、必要に応じて、アシル化触媒や極性溶媒、酸捕捉剤、界面活性剤、酸化防止剤等の化合物が含まれていてもよい。
本発明において、微多孔性支持膜は、架橋ポリアミドなどの分離機能層を支持するために使用される。微多孔性支持膜の構成は特に限定されないが、好ましい微多孔性支持膜としては布帛により強化された上述のポリスルホン支持膜などを例示することができる。
そして、本発明では、微多孔性支持膜へ多官能アミン水溶液を含有させる工程において、該多官能アミン水溶液に糖類を含有せしめることを特徴とするものである。多官能アミン水溶液に糖類を含有せしめる方法としては特に限定されるものではなく、例えば、多官能アミン水溶液中に糖類を溶解させることで含有させればよい。ここで、多官能アミンと糖類を含有する水溶液の多官能アミン濃度は、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜15重量%である。さらに、該水溶液の糖類濃度は、0.1〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%である。このように、本発明においては、糖類を多官能アミン水溶液に含有するという簡便な方法によって、乾燥による膜性能の低下を防ぐことができる。また、従来の方法のように、糖類を大量に使用する必要がないため、経済的な負担や廃液処理への負荷を少なくすることができる。
次いで、過剰に塗布された該水溶液を膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば膜面を垂直方向に保持して自然流下させる方法等がある。液切りの方法としては、例えば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能アミン水溶液接触後の微多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
その後、多官能アミンと糖類を存在せしめた微多孔性支持膜に、前述の多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布し、界面重縮合により架橋ポリアミドの分離機能層を形成させる。
有機溶媒溶液中の多官能酸ハロゲン化物の濃度は、0.01〜10重量%の範囲内であると好ましく、0.02〜2.0重量%の範囲内であるとさらに好ましい。この範囲であると、十分な反応速度が得られ、また副反応の発生を抑制することができる。さらに、この有機溶媒溶液にN,N−ジメチルホルムアミドのようなアシル化触媒を含有させると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
多官能酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を接触させて界面重縮合を行い、微多孔性支持膜上に架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成したあとは、余剰の溶媒を液切りするとよい。液切りの方法は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1〜5分間の間にあることが好ましく、1〜3分間であるとより好ましい。短すぎると分離機能層が完全に形成せず、長すぎると有機溶媒が過乾燥となり欠点が発生しやすく、性能低下を起こしやすい。
上述の方法により得られた複合半透膜は、50〜150℃の範囲内、好ましくは70〜130℃の範囲内で1〜10分間、より好ましくは2〜8分間熱水処理する工程などを付加することで、複合半透膜の溶質阻止性能や透水性をより一層向上させることができる。
このように形成される本発明の複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
参考例、比較例、実施例における膜の特性は、複合半透膜に、温度25℃、pH6.5に調整した海水(塩濃度約3.5%)を操作圧力5.5MPaで供給して膜ろ過処理を行ない、透過水、供給水の水質を測定することにより、次の式から求めた。
(塩透過率)
塩透過率(%)=100×(透過水中の塩濃度/供給水中の塩濃度)
(膜透過流束)
供給水(海水)の膜透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)でもって膜透過流束(m/m/日)を表した。
(風乾前後の変化比)
複合半透膜を室温下60分間風乾させた後、上記膜ろ過処理を行って塩透過率、膜透過流束を評価し、それぞれについて、(風乾後の値/風乾前の値)から算出した。
(実施例1)
微多孔性支持膜である布帛補強ポリスルホン支持膜(限外濾過膜)は、次の手法により製造した。すなわち、単糸繊度0.5デシテックスのポリエステル繊維と1.5デシテックスのポリエステル繊維との混繊糸からなる、通気度0.7cm/cm/秒、平均孔径7μm以下の湿式不織布であって、縦30cm、横20cmの大きさの物を、ガラス板上に固定し、その上に、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒のポリスルホン濃度15重量%の溶液(20℃)をキャストし、直ちに水に浸漬してポリスルホンの微多孔性支持膜を製造した。得られた微多孔性支持膜をPS支持膜と記す。
このようにして得られたPS支持膜を、メタフェニレンジアミン(以下mPDAという)3.8重量%、トレハロース1.0重量%を含む水溶液中に室温下2分間浸漬し、該支持膜表面に余分な水溶液が残らないようゆっくりと引き上げた。トリメシン酸クロリド(以下TMCという)0.175重量%を含むn−デカン溶液を、160cm/mの割合で支持膜表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置した。次に膜から余分な溶液を除去するために、膜を1分間垂直に把持して液切りし、室温下送風機で膜表面のn−デカンを除去した。その後、90℃の熱水で2分間洗浄して複合半透膜を得た。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜透過流束は0.75(m/m/日)、塩透過率は0.24%であった。さらに、得られた複合半透膜を室温下60分間風乾させた後評価したところ、膜透過流束は0.70(m/m/日)、塩透過率は0.26%であり、膜透過流束の乾燥前からの変化比は0.94、塩透過率の変化比は1.08であった。
(実施例2〜6)
トレハロースの替わりに表1に示す糖類をmPDA水溶液に添加したこと以外は実施例1と同様にして複合半透膜を得た。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、表1に示す結果となり、良好な性能を有することおよび風乾前後の変化比が小さいことがわかった。
Figure 0005696361
(比較例1)
トレハロースを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして複合半透膜を得た。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜透過流束は0.68(m/m/日)、塩透過率は0.26%であった。さらに、得られた複合半透膜を室温下60分間風乾させた後評価したところ、膜透過流束は0.59(m/m/日)、塩透過率は0.42%であり、膜透過流束の乾燥前からの変化比は0.87、塩透過率の変化比は1.33であった。
(比較例2)
トレハロースの替わりにペクチンをmPDA水溶液に添加したこと以外は実施例1と同様にして製膜を行ったが、ペクチンを添加したmPDA水溶液の粘性が大きくなり、PS支持膜を該水溶液中に室温下2分間浸漬した後、PS支持膜上から余分な水溶液を除去することが困難であったため、複合半透膜が形成されなかった。
実施例および比較例の結果から、多官能アミンと糖類を含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液とを微多孔性支持膜上で接触させて複合半透膜を製膜することで、乾燥による透水量の低下を低減させることがわかる。

Claims (4)

  1. 微多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を形成してなり、
    該ポリアミド分離機能層を構成するポリアミドが、多官能アミンと糖類を含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液とを微多孔性支持膜上で接触させ界面重縮合させることで得られた架橋ポリアミドであり、
    前記糖類が、単糖類、二糖類、三糖類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする複合半透膜。
  2. 前記糖類が、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、ラフィノースから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の複合半透膜。
  3. 微多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を形成してなる複合半透膜の製造方法であって、
    該ポリアミド分離機能層を構成する架橋ポリアミド、多官能アミンと糖類を含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液とを微多孔性支持膜上で接触させ界面重縮合させることで形成し、
    前記糖類が、単糖類、二糖類、三糖類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする複合半透膜の製造方法。
  4. 前記糖類が、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、ラフィノースから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の複合半透膜の製造方法。
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