従来から、様々な機構の駆動源として使用される種々のステッピングモータが提案されている。ステッピングモータの第1の従来例として、回転軸を中心とする直径を小さくし且つ出力を高めたものが提案されている(特許文献1参照)。
図10は、第1の従来例に係るステッピングモータの構成を示す分解斜視図であり、図11は、図10のステッピングモータを組み立てた状態における内部構造を示す縦断面図である。
図10及び図11において、第1の従来例に係るステッピングモータは、ロータ201、第1のコイル202、第2のコイル203、第1のステータ204、第2のステータ205、出力軸206、連結リング207を備えている。
第1のステータ204及び第2のステータ205は、軟磁性材料から形成され、ステッピングモータの軸方向に所定の間隔を置いて互いに対向する状態に配置される。連結リング207は、非磁性材料から形成され、第1のステータ204と第2のステータ205を所定の間隔で保持する。出力軸206は、第1のステータ204の軸受部204E及び第2のステータ205の軸受部205Eに回転自在に支持されている。ロータ201は、出力軸206に固着され、円周方向に4分割して異なる極に交互に着磁されたマグネット(永久磁石)から構成されている。
第1のステータ204は、先端部が櫛歯形状を有すると共に、ロータ201の外周面に所定の隙間をあけて対向する第1の外側磁極部204A、204Bと、ロータ201の内周面に所定の隙間をあけて対向する第1の内側磁極部204C、204Dとを備える。
第2のステータ205は、ロータ201の外周面に所定の隙間をあけて対向する第2の外側磁極部205A、205Bと、ロータ201の内周面に所定の隙間をあけて対向する第2の内側磁極部205C、205Dとを備える。
第1の内側磁極部204C、204Dには、ロータ201に対しモータ軸方向に隣接して、第1のステータ204を励磁する第1のコイル202が巻回されている。第2の内側磁極部205C、205Dには、ロータ201に対しモータ軸方向に隣接して、第2のステータ205を励磁する第2のコイル203が巻回されている。
ステッピングモータのロータ201を回転させる場合は次のように行う。第1のコイル202、第2のコイル203への通電方向を切り換えることで、第1の外側磁極部204A、204B、第1の内側磁極部204C、204D、第2の外側磁極部205A、205B、第2の内側磁極部205C、205Dの各極性を切り換える。これにより、ロータ201を回転させる。
上記構成のステッピングモータは、第1及び第2のコイル202、203に通電することにより発生した磁束が外側磁極部から対向する内側磁極部へ、または内側磁極部から対向する外側磁極部へと流れる。これに伴い、外側磁極部と内側磁極部の間に位置するロータ201(マグネット)に磁束が効率的に作用する。
また、外側磁極部と内側磁極部との間隔を円筒形状のロータ201の厚さ程度とすることができるため、外側磁極部と内側磁極部とで構成される磁気回路の抵抗を小さくすることができる。これにより、少ない電流で多くの磁束を発生させて、出力を向上させることができるステッピングモータとすることができる。
また、ステッピングモータの第2の従来例として、ロータを回転軸方向に分割し、その分割した部分に出力ギアを形成することで、出力ギアからモータの端面までの距離を短くしたものが提案されている(特許文献2参照)。
この第2の従来例に係るステッピングモータは、複数に分割着磁された第1のロータ、同じく複数に分割着磁された第2のロータ、第1及び第2のローラとの間に配置された出力ギアがそれぞれ軸に一体に固定されている。
第1のロータの外周には第1のロータに対向する櫛歯を有する第1及び第2のハウジングが設けられ、第2のロータの外周には第2のロータに対向する櫛歯を有する第3及び第4のハウジングが設けられている。
第1及び第2のハウジングには第1のコイルが支持され、第3及び第4のハウジングには第2のコイルが支持されており、第1及び第3のハウジングはそれぞれに設けられたフランジ部で互いに固定されている。また、第1及び第2のハウジングの端面には第1のキャップが固着され、第3及び第4のハウジングの端面には第2のキャップが固着され、前記軸が2つの軸受を介して第1及び第2のキャップに回転自在に支持されている。
このステッピングモータでは、出力ギアがモータの軸方向の略中央に配置されるので、モータを配置するためのスペースを、出力ギアが噛合する被駆動ギアの軸方向の両側にモータの全長の半分のスペースを各々設ければよい。
さらに、ステッピングモータの第3の従来例として、回転軸方向の長さを短くし、且つ出力を高めたものが提案されている(特許文献3参照)。
図12は、第3の従来例に係るステッピングモータの構成を示す分解斜視図であり、図13は、図12のステッピングモータを組み立てた状態における内部構造を示す縦断面図である。
図12及び図13において、第3の従来例に係るステッピングモータは、周方向にN分割されて異なる極に交互に着磁された円筒形状のマグネット306と、マグネット306の内径部に固定される軟磁性材料からなるロータ軸307とを備えている。
ロータ軸307の軸方向においてマグネット306に隣接する位置には、第1のコイル302が配置されている。第1のコイル302の内周側には、第1のコイル302により励磁される第1の外側磁極部301aが挿入されている。
第1の外側磁極部301aは、マグネット306の外周面に対して所定の隙間をもち、その外周面の所定の角度範囲内に対向するように配置される。ロータ軸307の軸方向においてマグネット306に隣接する位置には、第2のコイル304が第1のコイル302と略同一平面上に配置されている。
第2のコイル304の内周側には、第2のコイル304により励磁される第2の外側磁極部301bが挿入されている。第2の外側磁極部301bは、第1の外側磁極部301aとはマグネット306の着磁部に対して(180/N)°位相がずれるとともにマグネット306の外周面に対して所定の隙間をもち、その外周面の所定の角度範囲内に対向するように配置される。
また、第1の外側磁極部301aと第2の外側磁極部301bとこれらの一端部を結ぶ平板部301cとによってステータ301が一体的に形成される。ロータ軸307はステータ1に取り付けられる軸受310とカバー308に取り付けられる軸受309とにより回動可能に支持される。
このモータは、第1のコイル302、第2のコイル304への通電方向を切り換えて、第1の外側磁極部301a、第2の外側磁極部301bの各極性を切り換えることによりロータ軸307を回転させる。
このモータは、コイルに通電することにより発生した磁束が外側磁極部からマグネットを通過して対向するロータ軸(内側磁極部)へ、又はロータ軸(内側磁極部)からマグネットを通過して対向する外側磁極部へと流れる。これにより、外側磁極部と内側磁極部との間に位置するマグネットに磁束が効率的に作用する。
また、ロータ軸が内側磁極部を兼ねることでマグネットの内周と内側磁極部との間に空隙を設ける必要がないため、外側磁極部と内側磁極部との間隔を非常に小さくでき、外側磁極部と内側磁極部とで構成される磁気回路の抵抗が小さくなる。従って、少ない電流で多くの磁束を発生させて、モータの出力を向上させることができる。
さらに、第1のコイルと第2のコイルとは共にマグネットに隣接して略同一平面状に配置されるとともに、第1の外側磁極部と該第2の外側磁極部とは同一のマグネットに対してそれぞれ異なる角度範囲に関して対向するように構成されている。このため、マグネットの軸方向寸法を短くでき、軸方向の長さが短いモータとすることができる。
また、2つの外側磁極部は一体で形成されるため、相互位置誤差を小さく抑えることができるとともに、部品点数を少なくして、構造が簡単で低コストなモータとすることができる。
特開平9−331666号公報
特開平1−103151号公報
特開2004−242453号公報
以下、本発明の実施の形態の一例を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態の一例であるステッピングモータを説明するための分解斜視図、図2は図1のステッピングモータを組み立てた状態の外観斜視図である。図3は図2のステッピングモータの前方から見た断面図、図4は図2のステッピングモータの左側方から見た断面図、図5は図2のステッピングモータの第1及び第2のコイルの上面側から軸方向に見た断面図である。
図1〜図5において、本実施形態のステッピングモータは、ステータ1、第1の軸受2、第2の軸受11、第1のコイル3、第2のコイル4、ボビン5、マグネット8、ロータ9、出力ギア10、天板12を備えている。
ステータ1は、軟磁性材料により形成されており、第1の外側磁極部1a、第2の外側磁極部1b、平板部(基部)1c、穴部1d、突起部1e、1f、軸穴部1gを備えている。
平板部1cの中央には、第1の軸受2が取り付けられる穴部1dが形成されている。また、平板部1cの長手方向の両端部間は穴部1dを中心として円周方向に互いに接近して開き角度θ(θ<180°)をなしている(図6参照)。平板部1cの長手方向の端部と穴部1dとの間には、出力ギア10の軸部10aを回転自在に支持する軸穴部1gが形成されている。
第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bは、それぞれ櫛歯形状をなして平板部1cと一体に形成されており、平板部1cの短手方向の両側部で平板部1cに対してロータ9の軸方向に延出するように曲げられて、ロータ9の軸線に対して平行に配置される。
突起部1e、1fは、第1の外側磁極部1aの先端と第2の外側磁極部1bの先端とにそれぞれ一体的に設けられている。
本実施形態では、ステ−タ1は、上記第1の従来例におけるステータとは異なり、第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bが平板部1cと一体的に構成されている。このため、第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとの相互誤差が少なくなり、組み立てによるステッピングモータの性能のばらつきを最小限に抑えることができる。
第1の軸受2は、軟磁性材料により円筒形状に形成されており、中央部に軸穴部2aを有している。第1の軸受2は、軸穴部2aにロータ9の軸方向の一端部に突設された軸部9cが嵌合し、外周部がステータ1の穴部1dに圧入等により取り付けられることで、ロータ9を回転自在に支持する。
第2の軸受11は、円筒形状に形成されており、中央部に軸穴部11aを有している。第2の軸受11は、軸穴部11aにロータ9の軸方向の他端部に突設された軸部9dが嵌合することで、ロータ9を回転自在に支持する。
ボビン5は、第1のボビン部5a、第2のボビン部5b、コイル受け部5c、穴部5d、軸穴部5e、カバー部5f、ダボ5g,5hを備えている。
カバー部5fは、ステータ1の第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bが係合可能な内周形状を有する。カバー部5fは、ステータ1の平板部1cの上面に載置され、マグネット8の外周面を覆うと共に、ステッピングモータの外観の一部を構成する。
第1のボビン部5aは、第1のコイル3が巻回されるものであり、カバー部5fに一体に配置されている。また、第1のボビン部5aは、その内側に、第1の外側磁極部1aの軸方向における平板部1c側の部分が嵌合する切り欠き部を有する。第2のボビン部5bは、第2のコイル4が巻回されるものであり、カバー部5fに一体に配設されている。また、第2のボビン5bは、その内側に、第2の外側磁極部1bの軸方向における平板部1c側の部分が嵌合する切り欠き部を有する。
コイル受け部5cは、第1のコイル3及び第2のコイル4とマグネット8と軸方向に仕切る位置に配置されている。コイル受け部5cの一方の面には、第1のコイル3及び第2のコイル4は当接し、コイル受け部5cの他方の面には、マグネット8が所定の隙間をもって配置される。また、コイル受け部5cの中央にはロータ9のギア部9bの歯先円直径よりも大径の穴部5dが設けられ、ギア部9bはマグネット8側から穴部5dを通ってコイル3,4側へ挿入された状態で配置される。さらに、コイル受け部5cには出力ギア10の軸部10bを回転自在に支持する軸穴部5eが設けられている。
ボビン5のカバー部5fの長手方向(平板部1cの短手方向)の一側には、第1のコイル3のコイル端子がからげられる(接続される)2つの端子ピン6(一部不図示)が配設されている。また、ボビン5のカバー部5fの長手方向(平板部1cの短手方向)の他側には、第2のコイル4のコイル端子がからげられる(接続される)2つの端子ピン7が配設されている。更に、ボビン5のカバー部5fの上面には、天板12の取り付け位置を決めるための2つのダボ5g,5hが配設されている。
第1のコイル3は、軸方向におけるマグネット8とステータ1の平板部1cとの間で、第1の外側磁極部1aの外周側において、第1のボビン部5aに巻回される。第1のコイル3は、両端のコイル端子がボビン5に付設された上記2つの端子ピン6にからげられることで導通状態となる。これにより、第1のコイル3へ通電することにより、ステータ1の第1の外側磁極部1aが励磁される。
第2のコイル4は、軸方向におけるマグネット8とステータ1の平板部1cとの間で、第2の外側磁極部1bの外周側において、第2のボビン部5bに巻回される。第2のコイル4は、両端のコイル端子がボビン5に付設された上記2つの端子ピン7にからげられることで導通状態となる。これにより、第2のコイル4へ通電することにより、ステータ1の第2の外側磁極部1bが励磁される。
第1のコイル3及び第2のコイル4は、ステータ1の平板部1cの上面に隣接して配置され、第1のコイル3及び第2のコイル4の間には、ロータ9のギア部9bが隣接して配置される。これにより、上記第1の従来例のように2つのコイル及びマグネットをモータ軸方向に間隔を置いて配置した構造と比較し、ステッピングモータの軸方向長さを短くすることができる。
マグネット8は、円筒形状に形成されており、ロータ9のコア部9aが嵌合可能な内径部8a(図1参照)を有している。マグネット8は、円周方向にN分割(着磁極数:N)(本実施の形態では6分割(着磁極数:6))されて、S極とN極が交互に着磁されている(図6参照)。マグネット8の内周面は、外周面に比べ弱い着磁分布を有するか、或いは全く着磁されていないか、或いは外周面と逆の極(外周面がS極の場合はN極)に着磁されている。
ロータ9は、軟磁性材料にて形成されており、円柱形状のコア部9aと、出力ギア10と噛み合うギア部9bと、第1の軸受2により回転自在に支持される軸部9cと、第2の軸受11により回転自在に支持される軸部9dとを備えている。コア部9aの外周面にはマグネット8の内径部8aが接着等により固定される。マグネット8とコア部9aとは、互いの軸方向寸法が同一に形成されており、互いの軸方向端面が同一となるように固定される。
ロータ9のステッピングモータの軸方向に関しての位置は、第1の軸受2と第2の軸受11とにより所定の隙間を持って規制されることで定められる。
コア部9aとギア部9bとが一体化されているロータ9は、粉末プレス(焼結)、或いは金属粉末射出成形(MIM)、或いは金属粉末と樹脂の混合品の射出成形等により製作することで、高精度なものを切削品よりも安価に得ることができる。
なお、本実施の形態では、ロータ9のコア部9a及びギア部9bと軸部9c,9dとを一体に形成しているが、これに限定されない。例えば、コア部9a及びギア部9bと回転軸とを別体で形成し、一体に形成されたコア部9a及びギア部9bに回転軸の嵌合穴を係止して該嵌合穴に回転軸を圧入等により嵌合固定するようにしてもよい。また、回転軸を固定軸として、該固定軸に対して一体に形成されたコア部9a及びギア部9bを軸受等を介して回転自在に支持するようにしてもよい。
コア部9a及びギア部9bと軸部9c,9dとを一体で形成する場合は、部品点数の削減によるコストの低減を図ることができると共に、コア部9a及びギア部9bと軸部9c,9dとの同軸位置精度を向上させることが可能となる。他方、コア部9及びギア部9bと回転軸とを別体で構成する場合は、回転軸には強度が強くて耐磨耗性が優れるSUS等の材料を使用し、コア部9a及びギア部9bには磁気効率の良いSUY等の軟磁性材料を使用することが可能となる。
出力ギア10は、第1のコイル3と第2のコイル4との間でロータ9のギア部9bに隣接し、かつ軸方向においてボビン5のコイル受け部5cとステータ1の平板部1cとの間に配置され、ロータ9のギア部9bと噛み合っている。
出力ギア10は、ロータ9の回転中心を基準にした第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとのなす角度をθ(θ<180°)とすると、角度θの範囲とは反対側のスペースの広い側に配置される(図5参照)。また、出力ギア10は軸部10aがステータ1の平板部1cに設けられる軸穴部1gにより回転自在に支持され、軸部10bがボビン5のコイル受け部5cに設けられる軸穴部5eにより回転自在に支持される。
ここで、出力ギア10の歯数をロータ9のギア部9bの歯数よりも多く設定することで、減速駆動が可能となる(本実施の形態では出力ギア10の歯数は15歯、ロータ9のギア部9bの歯数は11歯に設定)。出力ギア10はモータに内蔵されている(図4及び図5参照)ので、モータの外形を大きくすることなく減速が可能となる。
出力ギア10の歯の一部はボビン5のカバー部5fより外部に露出しており、ここに不図示の被駆動ギアを噛み合うことで外部出力が可能となる。すなわち、ステッピングモータの側面から出力が可能となる。
天板(支持部材)12は、平板状に形成されており、突起用穴部12a,12b、位置決め用穴部12c,12d、軸受用穴部12eを備えている。突起用穴部12a,12bには、それぞれステータ1の第1の外側磁極部1aの延出端に配設された突起部1e、第2の外側磁極部1bの延出端に配設された突起部1fが挿入され、レーザ溶接やカシメ等により固定される。
位置決め用穴部12c,12dには、それぞれ、ボビン5のダボ5g,5hが嵌合される。これにより、天板12に対するボビン5の取り付け位置が決められる。軸受用穴部12eには、第2の軸受11が挿入され固定される。
ロータ9は、ステータ1に取り付けられる第1の軸受2と、ステータ1に固定された天板12に取り付けられる第2の軸受11とで回転自在に支持されるため、ロータ9の軸方向の両端部の同軸度のズレを最小限に抑えることができる。これにより、マグネット8の外周面と第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bの内周面とのギャップの均一化を図ることができ、ステッピングモータの安定した回転を得ることができる。
本実施の形態では、ステータ1の第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとは、マグネット8の外周面に所定の隙間をあけて互いに径方向に対向している。そして、ロータ9のコア部9aにおける第1の外側磁極部1aに対向する部分と、ロータ9のギア部9bにおける第1のコイル3に対向する部分とにより、第1の内側磁極部が形成される。
同様に、ロータ9のコア部9aにおける第2の外側磁極部1bに対向する部分と、ロータ9のギア部9bにおける第2のコイル4に対向する部分とにより、第2の内側磁極部が形成される。
これにより、第1のコイル3へ通電することで、第1の外側磁極部1aと第1の内側磁極部とをそれぞれ反対の極に励磁して、その磁極間にマグネット8を横切る磁束を発生させ、磁束を効果的にマグネット8に作用させる。
同様に、第2のコイル4へ通電することで、第2の外側磁極部1bと第2の内側磁極部とをそれぞれ反対の極に励磁し、その磁極間にマグネット8を横切る磁束を発生させ、磁束を効果的にマグネット8に作用させる。この場合、第1の軸受2を軟磁性材料にすることで磁路として活用することができ、モータの磁気回路の抵抗を低くでき、出力向上につながる。
また、本実施の形態では、第1の内側磁極部及び第2の内側磁極部を、ロータ9で構成しているので、ロータ9が内側磁極部を兼ねることにより、製造コストを低減することができる。
更に、ステータ1は、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bを平板部1cに対して直角に単純に曲げただけで容易に形成することができるので、製造コストを低減することができる。
更に、本実施の形態では、ステータ1の第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bは、ステッピングモータの軸方向に延出する櫛歯形状であるので、ステッピングモータの最外径(図6のL1)を最小限に抑えることができる。
例えば、外側磁極部をマグネットの半径方向に伸びるステータ板で構成すると、マグネットを平面的な展開にする必要があると共に、半径方向に向かってコイルを巻くことになる。そのため、軸方向の長さは短くてもステッピングモータの最外径は大きなものとなってしまう。
これに対して、本実施の形態では、ステッピングモータの最外径(図6のL1)は、マグネット8の直径と、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bの厚みと、第1のコイル3及び第2のコイル4の巻き線幅とで決定される。この場合、第1及び第2のコイル3,4の巻き線幅の片側部分(第1の軸受2側の部分)は、径方向でマグネット8と略同じ位置にあるので(図3参照)、ステッピングモータの最外径を最小限に抑えることができる。
更に、本実施の形態では、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bを、平板部1cの短手方向の両側からそれぞれモータ軸方向に延出した櫛歯形状に構成している。これにより、第1の軸受2、第1のコイル3、第2のコイル4、ボビン5、マグネット8が固定されるロータ9、出力ギア10、第2の軸受11、天板12を全て軸方向の一方向(図1の上から下方向へ)から組み込むことが可能となり、組み立て作業性がよい。
また、本実施の形態では、ボビン5は、第1のコイル3と第2のコイル4の両方が巻回されると共に、マグネット8の外周面を覆うカバーを兼ねている。そのため、第1及び第2のコイルを別々のボビンに巻回する場合やカバーを別個に設ける場合と比較し、部品点数及びコストを削減することができる。さらに、ボビン5は出力ギア10を回転自在に支持する部材として機能する。
上記第2の従来例では、マグネットはコイルを含むハウジングユニットの内径に配置されるため、ステッピングモータの外形寸法に対するマグネットの直径は小さなものとなってしまう。そのため、ステッピングモータの外径を小型化すると出力が大幅に落ちてしまう。
これに対して、本実施の形態では、ステッピングモータの外形寸法(図6のL2)は、マグネット8の直径と、ボビン5のカバー部5fの厚みと、マグネット8とカバー部5fとの隙間だけで決定される。そのため、ステッピングモータの外形寸法(図6のL2)に対するマグネット8の直径はかなり近いものにすることが可能となり、ステッピングモータの外形寸法の小型化に対して有利である。
上記第3の従来例に係るステッピングモータは、第1の従来例と同様に出力を取り出すにはロータ軸の先端にピニオンを固定するのが一般的であり、このピニオンを含めると軸方向寸法は長いものとなる。また、機器の小型化に伴いピニオンの小径化を行うにはピニオンの内径に圧入される軸の径も小径化する必要があるが、軸径が小さいと圧入による軸曲がりが発生しやすい。
これに対して、本実施の形態では、出力ギア10の歯の一部はボビン5のカバー部5fより外部に露出しており、ここに不図示の被駆動ギアを噛み合うことで外部出力が可能となるため、モータ側面からの出力が可能となる。すなわち、出力ギア10を含めても軸方向寸法の短いモータとすることができ、モータのレイアウトの自由度が高くなる。また、ロータ9にギア部9bを一体に設けており、軸にギアを圧入する必要がないので、ギア部9bの小径化が可能となる。さらに、出力ギア10の歯数をロータ9のギア部9bの歯数よりも多くすることで、モータ外形を大きくすることなく減速が可能となり、小型で軸方向寸法が短く、高出力なモータとすることができる。
次に、図6〜図9を参照して、本実施の形態のステッピングモータの作用効果や動作等について更に詳述する。
図6はステッピングモータの第1の通電状態を説明するための説明図、図7はステッピングモータの第2の通電状態を説明するための説明図である。図8はステッピングモータの第3の通電状態を説明するための説明図、図9はステッピングモータの第4の通電状態を説明するための説明図である。
図6〜図9において、マグネット8は、その外周側表面及び内周側表面が円周方向に等角度間隔で複数個に分割(本実施の形態では6分割)され、S極とN極が交互に着磁されている。外周側表面がS極である部分に対応する、内周側表面はN極であり、外周側表面がN極である部分に対応する、内周側表面はS極である。
また、ステータ1の第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとは、図6に示すように、マグネット8の回転中心を基準として角度θ位相がずれた位置に配置されている。ここで、角度θは、(180°−180°/N)である(N=着磁分割数)。本実施の形態では、N=6であるので、角度θは、150°である。このように、角度θ=(180°−180°/N)にすることにより、図6中のL2寸法(ステッピングモータの最小外形寸法)を小さくすることができる。
上記のように、ステータ1の第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとは、マグネット8における軸方向に直交する方向の同一面(外周面)に対して、それぞれ異なる角度範囲(角度θ位相がずれた位置)で対向するように配置されている。これにより、マグネット8の軸方向寸法、ひいてはステッピングモータの軸方向寸法を短くすることができる。
上記構成の大きな特徴として、マグネット8の外周面の一部分に着目すれば、次のように磁束が作用する。即ち、マグネット8が回転することにより、マグネット8の一部分に対して、第1のコイル3により励磁される第1の外側磁極部1aの磁束と、第2のコイル4により励磁される第2の外側磁極部1bの磁束とが交互に作用することになる。第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとがマグネット8の同じ個所に対して磁束を作用させるので、着磁のバラツキなどによる悪影響を受けず、ステッピングモータの性能を安定化させることができる。
次に、ステッピングモータの動作について説明する。
図6の第1の通電状態では、第1のコイル3に正方向に通電することにより、第1の外側磁極部1aはN極に励磁され、第1の内側磁極部はS極に励磁されている。第1の内側磁極部は、コア部9aのうち第1の外側磁極部1aに対向する部分及びギア部9bのうち第1のコイル3に対向する部分である。また、第2のコイル4に正方向に通電することにより、第2の外側磁極部1bはN極に励磁され、第2の内側磁極部はS極に励磁されている。第2の内側磁極部は、コア部9aのうち第2の外側磁極部1bに対向する部分及びギア部9bのうち第2のコイル4に対向する部分である。
次に、図6の第1の通電状態から第2のコイル4への通電方向のみ逆方向にして、第2の外側磁極部1bをS極に励磁し、第2の内側磁極部をN極に励磁する。これに伴い、図7に示すように、マグネット8は時計方向に30°回転して、第2の通電状態となる。
更に、図7の第2の通電状態から第1のコイル3への通電方向のみ逆方向にして、第1の外側磁極部1aをS極に励磁し、第1の内側磁極部をN極に励磁する。これに伴い、図8に示すように、マグネット8は時計方向に更に30°回転して、第3の通電状態となる。
更に、図8の第3の通電状態から第2のコイル4への通電方向のみ正方向にして、第2の外側磁極部1bをN極に励磁し、第1の内側磁極部をS極に励磁する。これに伴い、図9に示すように、マグネット8は時計方向に更に30°回転して、第4の通電状態となる。
以後、同様に、第1のコイル3及び第2のコイル4への通電方向を順次切り換えていくことにより、第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとは異なるタイミングで励磁の切り換えが行われる。これにより、マグネット8は通電位相に応じた位置へと回転する。
上記のように、本実施の形態では、第1の通電状態として、第1のコイル3と第2のコイル4とを共に正方向に通電する。第2の通電状態として、第1のコイル3を正方向に通電し、第2のコイル4を逆方向に通電する。第3の通電状態として、第1のコイル3と第2のコイル4とを共に逆方向に通電する。第4の通電状態として、第1のコイル3を逆方向に通電し、第2のコイル4を正方向に通電する。このように、第1の通電状態→第2の通電状態→第3の通電状態→第4の通電状態へと通電状態の切り換えを行い、マグネット8を回転させている。
上記の通電状態の切り換えは次のようにしてもよい。即ち、第5の通電状態として、第1のコイル3と第2のコイル4を共に正方向に通電する。第6の通電状態として、第1のコイル3を正方向に通電し、第2のコイル4を非通電状態とする。第7の通電状態として、第1のコイル3を正方向に通電し、第2のコイル4を逆方向に通電する。第8の通電状態として、第1のコイル3を非通電状態とし、第2のコイル4を逆方向に通電する。このように、第5の通電状態→第6の通電状態→第7の通電状態→第8の通電状態へと通電状態を切り換えるようにしてもよい。これにより、マグネット8は通電位相に応じた回転位置へと回転する。
次に、マグネット8と、ステータ1の第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bとの位相関係について説明する。
上述したように、第1の通電状態、第2の通電状態、第3の通電状態、第4の通電状態と通電状態を切り換えると、第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとは、交互に励磁される極性の切り換えが行われる。
図6の第1の通電状態で第1のコイル3に正方向に通電して、第1の外側磁極部1aをN極に励磁すると、マグネット8には第1の外側磁極部1aの中心とマグネット8の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように図中時計方向の回転力が発生する。同時に、第2のコイル4にも正方向に通電して、第2の外側磁極部1bをN極に励磁すると、マグネット8には第2の外側磁極部1bの中心とマグネット8の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように図中反時計方向の回転力が発生する。
両コイルの通電中は、マグネット8は回転力のバランスがとれた状態で静止する。図6はこの状態を示している。両コイルへの通電量が等しい時は、第1の外側磁極部1aの中心とマグネット8の着磁部の中心(S極の中心)との位相差、及び、第2の外側磁極部1bの中心とマグネット8の着磁部の中心(S極の中心)との位相差は、共に約15°となる。
図6の状態から、第2のコイル4を逆方向の通電に切り換えると、第2の外側磁極部1bはS極に励磁されて、マグネット8には、第2の外側磁極部1bの中心と該マグネット8の着磁部の中心(N極の中心)が一致するように図中時計方向の回転力が発生する。ここで、第1のコイル3は正方向の通電のままにしておくことで、マグネット8には、第1の外側磁極部1aの中心と該マグネット8の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように同じく時計方向の回転力が発生する。これにより、図6の状態から、マグネット8は時計方向に回転を始める。
図6の状態から、マグネット8が時計方向に約15°回転すると、第1の外側磁極部1aの中心とマグネット8の着磁部の中心(S極の中心)とが一致する状態になる。このとき、第2の外側磁極部1bの中心は、マグネット8の着磁部の境界(S極、N極の境界)と一致した状態であり、マグネット8を更に時計方向に回転させる力が発生している。そして、マグネット8は、その状態から更に時計方向に約15°回転(図6の状態から時計方向に約30°回転)すると、両コイルの回転力のバランスがとれた状態となり、その位置で静止する。この状態は図7に第2の通電状態として示される。
図7の状態から、第1のコイル3を逆方向の通電に切り換えると、第1の外側磁極部1aはS極に励磁されて、マグネット8には、第1の外側磁極部1aの中心と該マグネット8の着磁部の中心(N極の中心)が一致するように図中時計方向の回転力が発生する。ここで、第2のコイル4は逆方向の通電のままにしておくことで、マグネット8には、第2の外側磁極部1bの中心と該マグネット8の着磁部の中心(N極の中心)とが一致するように同じく時計方向の回転力が発生する。これにより、図7の状態から、マグネット8は時計方向に回転を始める。
図7の状態から、マグネット8が時計方向に約15°回転すると、第2の外側磁極部1bの中心とマグネット8の着磁部の中心(N極の中心)とが一致する状態になる。このとき、第1の外側磁極部1aの中心は、マグネット8の着磁部の境界(S極、N極の境界)と一致した状態であり、マグネット8を更に時計方向に回転させる力が発生している。そして、マグネット8は、その状態から更に時計方向に約15°回転(図7の状態から時計方向に約30°回転)すると、両コイルの回転力のバランスがとれた状態となり、その位置で静止する。この状態は図8に第3の通電状態として示される。
図8の状態から、第2のコイル4を正方向の通電に切り換えると、第2の外側磁極部1bはN極に励磁されて、マグネット8には、第2の外側磁極部1bの中心と該マグネット8の着磁部の中心(S極の中心)とが一致するように図中時計方向の回転力が発生する。ここで、第1のコイル3は逆方向の通電のままにしておくことで、マグネット8には、第1の外側磁極部1aの中心と該マグネット8の着磁部の中心(N極の中心)とが一致するように同じく時計方向の回転力が発生する。これにより、図8の状態から、マグネット8は時計方向に回転を始める。
図8の状態から、マグネット8が時計方向に約15°回転すると、第1の外側磁極部1aの中心とマグネット8の着磁部の中心(N極の中心)とが一致する状態になる。このとき、第2の外側磁極部1bの中心は、マグネット8の着磁部の境界(S極、N極の境界)と一致した状態であり、更に時計方向に回転させる力が発生している。そして、マグネット8は、その状態から更に時計方向に約15°回転(図8の状態から時計方向に約30°回転)すると、両コイルの回転力のバランスがとれた状態となり、その位置で静止する。この状態が図9に第4の通電状態として示される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、ステータ1の第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bの間に配置したロータ9のコア部9aの外周部に、マグネット8を固定する構成としている。これにより、マグネット8の機械的強度を向上できると共に、ロータ9に内側磁極部を兼ねさせることができ、外側磁極部と内側磁極部との距離を小さくすることができる。この結果、磁気抵抗を低減することができるため、ステッピングモータの出力を向上させることができる。
また、ステッピングモータを、その外径がマグネット8の直径とボビン5のカバー部5cの厚みだけで決定可能な構造とし、ステータ1の第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bを、ステッピングモータの軸方向に延出した櫛歯形状としている。これにより、ステッピングモータの外径及び軸方向長さを最小限に抑え、小型化を図ることができる。
また、ボビン5は、第1のコイル3と第2のコイル4の両方が巻回されると共に、マグネット8の外周面を覆うカバーを兼ねているため、部品点数及びコストを削減することができる。
また、ステータ1に取り付けた第1の軸受2と、ステータ1に固定した天板12に取り付けた第2の軸受11とで、ロータ9を支持するようにしているため、ロータ9の軸方向の両端部の同軸度のズレを最小限に抑えることができる。これにより、マグネット8の外周面と第1の外側磁極部1aの内周面とのギャップの均一化を図ることができ、ステッピングモータの安定した回転を得ることができる。
以上より、小型で軸方向の長さが短く、かつ低コストで高出力なステッピングモータを提供することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記実施の形態では、ステッピングモータについて例示したが、これに限定されず、ステッピングモータ以外のモータに本発明を適用してもよい。