以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る駆動装置の構成を示す分解斜視図である。図2は、組立完成状態における駆動装置のステッピングモータの2つのコイルを通る縦断面構造を示す断面図である。図3は、組立完成状態における駆動装置のステッピングモータの2つのコイルの間を通る縦断面構造を示す断面図である。
図1乃至図3において、駆動装置は、ステッピングモータ、リードスクリュー軸10、付勢係合部材11から構成されている。ステッピングモータは、ステータ1、軸受2、第1のコイル3、第2のコイル4、ボビン5、マグネット8、コア9を備えている。
ステータ1は、軟磁性材料により形成されており、第1の外側磁極部1a、第2の外側磁極部1b、平板部1c、穴部1d、突起部1e、突起部1fを備えている。平板部1cは、開き角θ(図4参照)の「への字形」をなす板状の部材である。平板部1cの中央には、軸受2が取り付けられる穴部1dが形成されている。第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bは、それぞれ、軸方向に延出された櫛歯形状を有し、平板部1cの両端部において該平板部1cに対し一体的に単純に曲げられると共に、リードスクリュー軸10に対し平行に配置される。突起部1e、突起部1fは、それぞれ、第1の外側磁極部1a、第2の外側磁極部1bの先端に一体的に設けられている。
ステ−タ1においては、第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bが平板部1cと一体的に構成されている。これにより、第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとの相互位置誤差を小さく抑えることができ、組み立てによるステッピングモータの性能のばらつきを最小限に抑えることができる。
軸受2は、軟磁性材料により円筒形状に形成されており、中央部に所定の深さの軸穴部2a、軸方向一方の端部に固定部2bを備えている。軸受2は、軸穴部2aにリードスクリュー軸10の軸部10aの先端部が嵌合され、固定部2bがステータ1の穴部1dに取り付けられることで、リードスクリュー軸10を回転自在に支持する。
ボビン5は、第1のボビン部5a、第2のボビン部5b、カバー部5c、ダボ5d、ダボ5eを備えている。カバー部5cは、ステータ1の第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bが嵌合可能な形状を有する。カバー部5cは、ステータ1の平板部1cの上面に載置され、マグネット8の外周面を覆うと共に、ステッピングモータの外観の一部を構成する。
第1のボビン部5aは、第1のコイル3が巻回されるものであり、カバー部5cに一体的に配設されている。また、第1のボビン部5aは、その内側に、第1の外側磁極部1aの軸方向における平板部1c寄りの部分が嵌合する切り欠き部を有する。第2のボビン部5bは、第2のコイル4が巻回されるものであり、カバー部5cに一体的に配設されている。また、第2のボビン5bは、その内側に、第2の外側磁極部1bの軸方向における平板部1c寄りの部分が嵌合する切り欠き部を有する。
更に、ボビン5のカバー部5cの長手方向両側には、第1のコイル3のコイル端子がからげられる(接続される)2つの端子ピン6(一部不図示)、及び、第2のコイル4のコイル端子がからげられる(接続される)2つの端子ピン7がそれぞれ配設されている。更に、ボビン5のカバー部5cの上面には、付勢係合部材11の取り付け位置を決めるための2つのダボ5d、5eが配設されている。
第1のコイル3は、ステッピングモータの軸方向におけるマグネット8とステータ1の平板部1cとの間で、第1の外側磁極部1aの外周側において、第1のボビン部5aに巻回される。第1のコイル3は、両端のコイル端子がボビン5に付設された上記2つの端子ピン6にからげられることで導通状態となる。これにより、第1のコイル3へ通電することにより、ステータ1の第1の外側磁極部1aが励磁される。
第2のコイル4は、ステッピングモータの軸方向におけるマグネット8とステータ1の平板部1cとの間で、第2の外側磁極部1bの外周側において、第2のボビン部5bに巻回される。第2のコイル4は、両端のコイル端子がボビン5に付設された上記2つの端子ピン7にからげられることで導通状態となる。これにより、第2のコイル4へ通電することにより、ステータ1の第2の外側磁極部1bが励磁される。
第1のコイル3及び第2のコイル4は、ステータ1の平板部1cの上面に隣接して配置され、第1のコイル3及び第2のコイル4の間には、リードスクリュー軸10及び軸受2が隣接して配置される。これにより、2つのコイル及びマグネットをステッピングモータの軸方向に間隔を置いて配置した構造と比較し、ステッピングモータの軸方向の長さを短くすることができる。
マグネット8は、円筒形状に形成されており、コア9が嵌合可能な内径部8aを備えている。マグネット8は、ステータ1の第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bに隙間をあけて対向する状態に配置される。マグネット8は、円周方向にN分割(着磁極数:N)(本実施の形態では6分割(着磁極数:6))され、S極とN極が交互に着磁されている(図4参照)。マグネット8の内周面は、外周面に比べ弱い着磁分布を有するか、或いは全く着磁されていないか、或いは外周面と逆の極(外周面がS極の場合はN極)に着磁されている。
コア9は、軟磁性材料により円筒形状に形成されており、リードスクリュー軸10が嵌合可能な穴部9aを備えている。コア9は、マグネット8の内径部8aに接着等により固定される。マグネット8とコア9とは、互いの軸方向寸法が同一に形成されており、互いの軸方向端面が同一となるように固定される。
リードスクリュー軸10は、軟磁性材料により形成されており、軸部10a、オネジ部10bを備えている。軸部10aは、先端部以外の部分がコア9の穴部9aに嵌合されることで固定され、球面(球R)形状を有する先端部が軸受2に回転自在に支持される。オネジ部10bは、後述する付勢係合部材11のメネジ部11hと噛み合うことで、リードスクリュー軸10の回転に伴い、付勢係合部材11のメネジ部11hを軸方向に直進移動させる。
尚、本実施の形態では、リードスクリュー軸10とコア9とは別体(別々の構成)のものを一体に固定する構成としているが、リードスクリュー軸10とコア9とを一体で構成してもよい。リードスクリュー軸10とコア9とを別体で構成する場合は、リードスクリュー軸10には強度が強くて耐磨耗性が優れるSUS等の材料を使用し、コア9には磁気効率のよいSUY等の軟磁性材料を使用することが可能となる。他方、リードスクリュー軸10とコア9とを一体で構成する場合は、部品点数の削減によるコスト低減を図ることができると共に、リードスクリュー軸10とコア9との同軸位置精度を向上させることが可能となる。
付勢係合部材11は、バネ性を有する材料により形成されており、平板状の天板部11a、アーム部11b、上面部11cを備えている。付勢係合部材11は、リードスクリュー軸10と共に直進駆動機構を構成する。
天板部11aは、穴部11d、穴部11e、位置決め部11f、位置決め部11g、穴部11m、取り付け腕部11j、取り付け穴11kを備えている。アーム部11bは、天板部11aの端部から直角に且つ組立状態でリードスクリュー軸10に対し平行となるように折り曲げた状態で一体に形成されている。上面部11cは、アーム部11bの端部から直角に且つ天板部11aに対し平行に折り曲げた状態で一体に形成されている。上面部11cは、メネジ部11h、駆動腕部11iを備えている。
天板部11aの穴部11d、11eには、ステータ1の第1の外側磁極部1aの先端の突起部1eと、第2の外側磁極部1bの先端の突起部1fとがそれぞれ挿入され、レーザ溶接やカシメ等により固定される。天板部11aは、該天板部11aとステータ1との間にボビン5を挟持する状態でステータ1に固定される。
天板部11aの位置決め部11f、11gには、ボビン5のダボ5d、5eがそれぞれ嵌合され、天板部11aに対するボビン5の取り付け位置が決められる。天板部11aの穴部11mは、天板部11aの略中央部に形成されており、リードスクリュー軸10のオネジ部10bの外径よりも大きな径を有する。天板部11aの取り付け腕部11jには、取り付け穴11kが形成されている。付勢係合部材11は、取り付け穴11kを介してネジ等により例えばカメラ本体の地板(不図示)等に固定される。
上面部11cのメネジ部11hは、リードスクリュー軸10のオネジ部10bと螺合する。また、上面部11cの駆動腕部11iは、被駆動部材としての後述のレンズ枠18の当接部18dと、後述の連結バネ21の押さえ部21bとに挟まれて固定される(図9参照)。リードスクリュー軸10の回転により、付勢係合部材11のメネジ部11hが軸方向に直進移動されることにより、駆動腕部11iはレンズ枠18を光軸に沿って直進移動させる。
付勢係合部材11は、上述したようにバネ性を有する材料により形成されており、主にアーム部11b、上面部11cが撓む構成になっている。付勢係合部材11のアーム部11b、上面部11cは、予めリードスクリュー軸10を軸方向で軸受2側に付勢するよう構成されている。リードスクリュー軸10は、軸部10aの球面(球R)形状の先端部が軸受2の軸穴部2aの底面に当接することで、軸方向の位置が決められる。
即ち、付勢係合部材11のメネジ部11hがリードスクリュー軸10のオネジ部10bのいかなる個所に螺合していても、リードスクリュー軸10は、軸受2側に押し付けられて軸方向の位置規制がなされる。且つ、リードスクリュー軸10のオネジ部10bと螺合している付勢係合部材11のメネジ部11h及び駆動腕部11iも、リードスクリュー軸10の軸方向に関しては位置規制がなされている。
これにより、付勢係合部材11の駆動腕部11iは、リードスクリュー軸10の回転を駆動装置の外部に駆動力として伝達する。駆動装置により駆動する被駆動部材を例えばレンズ枠18(図8参照)とした場合、レンズ枠18を光軸に沿って直進移動させレンズ枠18を所定の位置に位置出しする。
付勢係合部材11は、リードスクリュー軸10を軸方向に付勢し、リードスクリュー軸10のがたつきをなくす機能を有する。更に、付勢係合部材11は、リードスクリュー軸10に係合し、リードスクリュー軸10の回転に伴ってリードスクリュー軸10の軸方向に移動し、被駆動部材を駆動する機能を有する。複数の機能を有する付勢係合部材11を単一の部品で構成しているので、複数の機能を複数の部品で実現する場合と比較し、部品点数及びコストを削減することが可能となる。
尚、本実施の形態では、駆動装置により駆動する被駆動部材としてレンズ枠を例に挙げているが、レンズ枠に限定されるものではない。
上記構成を有する駆動装置のステッピングモータにおいて、ステータ1の第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bは、マグネット8の外周面に所定の隙間をあけて対向している。そして、コア9における第1の外側磁極部1aに対向する部分と、リードスクリュー軸10と、軸受2とにより、第1の内側磁極部が形成される。同様に、コア9における第2の外側磁極部1bに対向する部分と、リードスクリュー軸10と、軸受2とにより、第2の内側磁極部が形成される。
これにより、第1のコイル3へ通電することで、第1の外側磁極部1aと第1の内側磁極部をそれぞれ反対の極に励磁して、その磁極間にマグネット8を横切る磁束を発生させ、磁束を効果的にマグネット8に作用させる。同様に、第2のコイル4へ通電することで、第2の外側磁極部1bと第2の内側磁極部をそれぞれ反対の極に励磁し、その磁極間にマグネット8を横切る磁束を発生させ、磁束を効果的にマグネット8に作用させる。
本実施の形態では、マグネット8の内側で内側磁極部を成すコア9とマグネット8の内周部との間に、空隙を設ける必要がなくなる。そのため、ステータ1の第1の外側磁極部1aとコア9との間隔、及び、ステータ1の第2の外側磁極部1bとコア9との間隔を小さくすることができる。そのため、第1のコイル3、第1の外側磁極部1a、及び第1の内側磁極部で形成される磁気回路、及び第2のコイル4、第2の外側磁極部1b、及び第2の内側磁極部で形成される磁気回路の磁気抵抗を小さくすることができる。これにより、ステッピングモータの出力を高めることができる。
また、本実施の形態では、第1の内側磁極部及び第2の内側磁極部を、コア9とリードスクリュー軸10と軸受2とで構成している。これにより、第1のコイル3、第2のコイル4、マグネット8、及び、コア9とリードスクリュー軸10からなるロータが、内側磁極部を兼ねることになるので、製造コストを低減することができる。更に、ステータ1は、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bを平板部1cと直交する方向へ単純に折り曲げただけで構成される。これにより、製造が容易であり、製造コストを低減することができる。
また、本実施の形態では、図2に示すように、マグネット8はコア9の外周部に固定されている。これにより、マグネット8の機械的強度を大きくすることができる。また、コア9は、マグネット8の内径部に現れるS極とN極との間の磁気抵抗を小さくするいわゆるバックメタルとして作用する。これにより、磁気回路のパーミアンス係数は高く設定されることになるため、本ステッピングモータが高温の環境下で使用された場合でも減磁による磁気的劣化も少ない。
また、本実施の形態では、マグネット8の外径部側のみの隙間(マグネット8とステータ1の第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bとの間の隙間)を管理するだけでよい。これにより、ステッピングモータを構成する各部品の組み立てが容易になる。
また、本実施の形態では、ステータ1の第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bを、ステッピングモータの軸方向に延出した櫛歯形状に構成している。これにより、ステッピングモータの最大外径(図4のL1)を最小限に抑えることができる。
例えば、外側磁極部をマグネットの半径方向に伸びるステータ板で構成すると、マグネットを平面的な展開にする必要があると共に、半径方向に向かってコイルを巻くことになる。そのため、軸方向の長さは短くてもステッピングモータの最外径は大きなものとなってしまう。
これに対して、本実施の形態では、ステッピングモータの最大外径(図4のL1)は、マグネット8の直径と、ステータ1の第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bの厚みと、第1のコイル3及び第2のコイル4の巻き線幅とで決定される。この場合、第1及び第2のコイル3、4の巻き線幅の片側部分(軸受2側の部分)は、径方向でマグネット8と略同じ位置にある。これにより、ステッピングモータの最外径を最小限に抑えることができる。
また、本実施の形態では、上述したように、ステータ1の第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bをステッピングモータの軸方向に延出した櫛歯形状に構成している。これにより、第1のコイル3、第2のコイル4、マグネット8、及び、コア9とリードスクリュー軸10からなるロータを、すべて一方向(図1の上方向から下方向へ)から組み込むことが可能となり、組み立て作業性が向上する。
また、本実施の形態では、ボビン5は、第1のコイル3と第2のコイル4の両方が巻回されると共に、マグネット8の外周面を覆うカバーを兼ねている。これにより、第1及び第2のコイルを別々のボビンに巻回する場合やカバーを別個に設ける場合と比較し、部品点数及びコストを削減することができる。
また、本実施の形態では、ステッピングモータの最小外径(図4のL2)は、マグネット8の直径と、ボビン5のカバー部5cの厚みだけで決定される。これにより、ステッピングモータの最小外径(図4のL2)に対してマグネット8の外径をかなり近いものにすることが可能となり、ステッピングモータの外径の小型化に対して有利である。
また、本実施の形態では、付勢係合部材11は、メネジ部11hがリードスクリュー軸10のオネジ部10bと螺合することでリードスクリュー軸10を支持する。更に、付勢係合部材11は、平板部11aによりマグネット8の軸方向の一端面を覆い、ボビン5を間に挟んでステータ1に固定される。これにより、ステッピングモータ単体に後から付勢係合部材を取り付ける構造のものと比較し、部品点数を削減できるので、コストを低減することができると共に、ステッピングモータの軸方向の長さをより短くすることができる。
また、本実施の形態では、ステータ1と該ステータ1に固定される付勢係合部材11とにより、リードスクリュー軸10を支持する構成としている。これにより、2つの支持部の同軸度のズレを最小限に抑えることができる。更に、マグネット8の外周面と第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bの内周面とのギャップの均一化を図ることができ、ステッピングモータの安定した回転を得ることができる。
また、本実施の形態では、リードスクリュー軸10がステッピングモータの回転軸となっているため、例えばリードスクリュー軸がステッピングモータの回転軸とは別体のものと比較し、リードスクリュー軸と回転軸を接合する必要がなくなる。これにより、接合時の芯ズレがなくなることで、ステッピングモータの安定した回転を得ることができると共に、大幅にコストの低減を図ることができる。
また、本実施の形態では、リードスクリュー軸10のオネジ部10bに螺合するメネジ部11h及び駆動腕部11iを備える付勢係合部材11をステッピングモータに組み込み、駆動装置を構成している。よって、マグネット8の回転を、リードスクリュー軸10の軸方向移動に変換して出力することができる。これにより、駆動装置の他に減速機等の機構を用いることなく、例えばレンズ等の直進駆動をステップ制御で行うことが可能となる。即ち、直進駆動機構をユニット化でき、汎用性が高い。
次に、本実施の形態の駆動装置を構成するステッピングモータの特徴及び動作について図4乃至図7を参照しながら説明する。
先ず、ステッピングモータの特徴について説明する。
図4は、ステッピングモータの第1の通電状態の場合を示す上面図である。図5は、ステッピングモータの第2の通電状態の場合を示す上面図である。図6は、ステッピングモータの第3の通電状態の場合を示す上面図である。図7は、ステッピングモータの第4の通電状態の場合を示す上面図である。
図4乃至図7において、マグネット8は、上述したように、その外周側表面及び内周側表面が円周方向に等角度間隔で複数個に分割(本実施の形態では6分割)され、S極とN極が交互に着磁されている。外周側表面がS極である部分に対応する内周側表面はN極であり、外周側表面がN極である部分に対応する内周側表面はS極である。
また、ステータ1の第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとは、図4に示すように、マグネット8の回転中心を基準としてθ度位相がずれた位置に配置されている。ここで、θ度は(180度−180度/N)である(N=着磁分割数)。本実施の形態では、N=6であるので、θ度は150度である。このように、θ度=(180度−180度/N)にすることにより、図4のL2(ステッピングモータの最小外径)寸法を小さくすることができる。
上記のように、ステータ1の第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとは、マグネット8における軸方向に直交する方向の同一面(外周面)に対して、それぞれ異なる角度範囲(θ度位相がずれた位置)で対向するように構成されている。これにより、マグネット8を軸方向に関して短くすることができ、ひいては、ステッピングモータも軸方向に関して短くすることができる。
上記構成の大きな特徴として、マグネット8の外周面の一部分に着目すれば、次のように磁束が作用する。即ち、マグネット8が回転することにより、マグネット8の一部分に対して、第1のコイル3により励磁される第1の外側磁極部1aの磁束と、第2のコイル4により励磁される第2の外側磁極部1bの磁束とが交互に作用することになる。第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bがマグネット8の同じ個所に対して磁束を作用させるので、着磁のバラツキなどによる悪影響を受けず、ステッピングモータの性能を安定化することができる。
次に、ステッピングモータの動作について説明する。
図4の状態で、第1のコイル3に正方向に通電することにより、第1の外側磁極部1aはN極に励磁され、第1の内側磁極部(コア9のうち第1の外側磁極部1aに対向する部分)はS極に励磁されている。また、第2のコイル4に正方向に通電することにより、第2の外側磁極部1bはN極に励磁され、第2の内側磁極部(コア9のうちのうち第2の外側磁極部1bに対向する部分)はS極に励磁されている(第1の通電状態)。
次に、図4の状態から、第2のコイル4への通電方向のみ逆方向にして、第2の外側磁極部1bをS極に励磁し、第2の内側磁極部をN極に励磁する。これに伴い、図5に示すように、マグネット8は時計方向に30度回転する(第2の通電状態)。
更に、図5の状態から、第1のコイル3への通電方向のみ逆方向にして、第1の外側磁極部1aをS極に励磁し、第1の内側磁極部をN極に励磁する。これに伴い、図6に示すように、マグネット8は時計方向に更に30度回転する(第3の通電状態)。
更に、図6の状態から、第2のコイル4への通電方向のみ正方向にして、第2の外側磁極部1bをN極に励磁し、第1の内側磁極部をS極に励磁する。これに伴い、図7に示すように、マグネット8は時計方向に更に30度回転する(第4の通電状態)。
以後、同様に、第1のコイル3及び第2のコイル4への通電方向を順次切り換えていくことにより、第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとは異なるタイミングで励磁の切り換えが行われる。これにより、マグネット8は通電位相に応じた位置へと回転する。
上記のように、本実施の形態では、第1の通電状態として、第1のコイル3と第2のコイル4を共に正方向に通電する。第2の通電状態として、第1のコイル3を正方向に通電し、第2のコイル4を逆方向に通電する。第3の通電状態として、第1のコイル3と第2のコイル4を共に逆方向に通電する。第4の通電状態として、第1のコイル3を逆方向に通電し、第2のコイル4を正方向に通電する。このように、第1の通電状態→第2の通電状態→第3の通電状態→第4の通電状態へと通電状態の切り換えを行い、マグネット8を回転させている。
上記の通電状態の切り換えは次のようにしてもよい。即ち、第5の通電状態として、第1のコイル3と第2のコイル4を共に正方向に通電する。第6の通電状態として、第1のコイル3を正方向に通電し、第2のコイル4を非通電状態とする。第7の通電状態として、第1のコイル3を正方向に通電し、第2のコイル4を逆方向に通電する。第8の通電状態として、第1のコイル3を非通電状態とし、第2のコイル4を逆方向に通電する。このように、第5の通電状態→第6の通電状態→第7の通電状態→第8の通電状態へと通電状態を切り換えるようにしてもよい。これにより、マグネット8は通電位相に応じた回転位置へと回転する。
次に、マグネット8と、ステータ1の第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bとの位相関係について説明する。
上述したように、第1の通電状態、第2の通電状態、第3の通電状態、第4の通電状態と通電状態を切り換えると、ステータ1の第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとは、交互に励磁される極性の切り換えが行われる。
図4の状態で、第1のコイル3に正方向に通電することにより、第1の外側磁極部1aをN極に励磁すると、マグネット8には、第1の外側磁極部1aの中心とマグネット8の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように図中時計方向の回転力が発生する。同時に、第2のコイル4にも正方向に通電することにより、第2の外側磁極部1bをN極に励磁すると、マグネット8には、第2の外側磁極部1bの中心とマグネット8の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように図中反時計方向の回転力が発生する。
第1のコイル3及び第2のコイル4への通電中は、マグネット8は回転力のバランスがとれた状態で静止する。図4はこの状態を示している。第1のコイル3及び第2のコイル4への通電量が等しい時は、第1の外側磁極部1aの中心とマグネット8の着磁部の中心(S極の中心)との位相差、及び、第2の外側磁極部1bの中心とマグネット8の着磁部の中心(S極の中心)との位相差は、共に約15度となる。
図4の状態から、第2のコイル4を逆方向の通電に切り換えると、第2の外側磁極部1bはS極に励磁されて、マグネット8には、第2の外側磁極部1bの中心とマグネット8の着磁部の中心(N極の中心)が一致するように図中時計方向の回転力が発生する。ここで、第1のコイル3は正方向の通電のままにしておくことで、マグネット8には、第1の外側磁極部1aの中心とマグネット8の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように同じく時計方向の回転力が発生する。これにより、図4の状態から、マグネット8は時計方向に回転を始める。
図4の状態から、マグネット8が時計方向に約15度回転すると、第1の外側磁極部1aの中心とマグネット8の着磁部の中心(S極の中心)が一致する状態になる。この時、第2の外側磁極部1bの中心は、マグネット8の着磁部の境界(S極、N極の境界)と一致した状態であり、マグネット8を更に時計方向に回転させる力が発生している。そして、マグネット8は、その状態から更に時計方向に約15度回転(図4の状態から時計方向に約30度回転)すると、第1のコイル3及び第2のコイル4の回転力のバランスがとれた状態となり、その位置で静止する。この状態は図5に示される。
図5の状態から、第1のコイル3を逆方向の通電に切り換えると、第1の外側磁極部1aはS極に励磁されて、マグネット8には、第1の外側磁極部1aの中心とマグネット8の着磁部の中心(N極の中心)が一致するように図中時計方向の回転力が発生する。ここで、第2のコイル4は逆方向の通電のままにしておくことで、マグネット8には、第2の外側磁極部1bの中心とマグネット8の着磁部の中心(N極の中心)が一致するように同じく時計方向の回転力が発生する。これにより、図5の状態から、マグネット8は時計方向に回転を始める。
図5の状態から、マグネット8が時計方向に約15度回転すると、第2の外側磁極部1bの中心とマグネット8の着磁部の中心(N極の中心)が一致する状態になる。この時、第1の外側磁極部1aの中心は、マグネット8の着磁部の境界(S極、N極の境界)と一致した状態であり、マグネット8を更に時計方向に回転させる力が発生している。そして、マグネット8は、その状態から更に時計方向に約15度回転(図5の状態から時計方向に約30度回転)すると、第1のコイル3及び第2のコイル4の回転力のバランスがとれた状態となり、その位置で静止する。この状態は図6に示される。
図6の状態から、第2のコイル4を正方向の通電に切り換えると、第2の外側磁極部1bはN極に励磁されて、マグネット8には、第2の外側磁極部1bの中心とマグネット8の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように図中時計方向の回転力が発生する。ここで、第1のコイル3は逆方向の通電のままにしておくことで、マグネット8には、第1の外側磁極部1aの中心とマグネット8の着磁部の中心(N極の中心)が一致するように同じく時計方向の回転力が発生する。これにより、図6の状態から、マグネット8は時計方向に回転を始める。
図6の状態から、マグネット8が時計方向に約15度回転すると、第1の外側磁極部1aの中心とマグネット8の着磁部の中心(N極の中心)が一致する状態になる。この時、第2の外側磁極部1bの中心は、マグネット8の着磁部の境界(S極、N極の境界)と一致した状態であり、更に時計方向に回転させる力が発生している。そして、マグネット8は、その状態から更に時計方向に約15度回転(図6の状態から時計方向に約30度回転)すると、第1のコイル3及び第2のコイル4の回転力のバランスがとれた状態となり、その位置で静止する。この状態が図7に示される。
次に、本実施の形態の駆動装置をレンズ駆動装置に適用した場合について図8及び図9を参照しながら説明する。
図8は、レンズ駆動装置の構成を示す分解斜視図である。図9は、レンズ駆動装置のステッピングモータとレンズ枠との連結部分の内部構造を示す図である。
図8及び図9において、レンズ駆動装置は、ステッピングモータM、リードスクリュー軸10、付勢係合部材11から構成されている。ステッピングモータMは、付勢係合部材11の取り付け腕部11jに設けられた取り付け穴11kを介してネジ24によりカメラ本体の地板(不図示)に固定される。
ここで、付勢係合部材11は、単一の部品で構成されると共に複数の機能を有するため、部品点数及びコストを削減することができる。複数の機能は以下の通りである。リードスクリュー軸10を軸方向に付勢しリードスクリュー軸10のがたつきをなくすと同時に、リードスクリュー軸10に係合しリードスクリュー軸10の回転に伴ってその軸方向に移動し被駆動部材を駆動する機能。ステッピングモータMを固着し、付勢係合部材11自らが取り付け部を介して別の地板に取り付けられる機能。
レンズ枠18は、駆動装置により駆動される被駆動部材としての光学部材であり、レンズ17が装着される円筒形状部、軸穴部18a、一対の突起部18b、バネ取り付け部18c、当接部18dを備えている。
レンズ枠支持バー19は、レンズ枠18の軸穴部18aに挿入され、レンズ枠18をレンズ17の光軸方向に移動可能に支持する。
レンズ枠振れ止めバー20は、レンズ枠18の一対の突起部18bに嵌合され、レンズ枠18がレンズ枠支持バー19を中心にして回転移動しようとする動きを規制する。即ち、レンズ枠18は、レンズ枠支持バー19とレンズ枠振れ止めバー20とにより、光軸方向に移動可能に支持される。
連結バネ21は、板バネにより形成されており、穴部21a、押さえ部21bを備えている。連結バネ21は、ネジ23とバネ押え22によりレンズ枠18のバネ取り付け部18cに固定される。ステッピングモータMに組み付けられた付勢係合部材11の駆動腕部11iが、連結バネ21の押さえ部21bとレンズ枠18の当接部18dに挟まれて固定される。
上記構成において、連結バネ21は、レンズ17が固定されたレンズ枠18の自重よりも大きな力で、付勢係合部材11の駆動腕部11iをレンズ枠18の当接部18dに付勢している。従って、駆動装置のステッピングモータの駆動によるリードスクリュー軸10の回転に伴い、付勢係合部材11の駆動腕部11iが光軸方向に直進移動すると、レンズ17が固定されたレンズ枠18は駆動腕部11iに遅れなく追従して光軸方向に直進移動する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、駆動装置を構成するステッピングモータを、その外径がマグネット8の直径とボビン5のカバー部5cの厚みだけで決定可能な構造とする。更に、ステータ1の第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bを、ステッピングモータの軸方向に延出した櫛歯形状とし、第1のコイル3と第2のコイル4とを軸方向に垂直な略同一平面上に配置している。これにより、ステッピングモータの外径及び軸方向の長さを最小限に抑え、小型化を図ることができる。
また、ステッピングモータは、ステータ1の第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bの間に配置したロータ(コア9及びリードスクリュー軸10)の外周部に、マグネット8を固定する構成としている。これにより、マグネット8の機械的強度を向上できると共に、ロータに内側磁極部を兼用させることができ、マグネット8と内側磁極部との間に隙間を設けることが不要となる。この結果、磁気抵抗を低減することができるため、ステッピングモータの出力を向上させることができる。
また、リードスクリュー軸10を支持する付勢係合部材11がマグネット8の軸方向の一端面を覆う構成としている。これにより、マグネット8を覆う部材を別途設けることなく、マグネット8が露出しない構成とすることができる。
また、付勢係合部材11は、リードスクリュー軸10を軸方向に付勢しリードスクリュー軸10のがたつきをなくすと同時に、リードスクリュー軸10に係合しリードスクリュー軸10の回転に伴ってその軸方向に移動し被駆動部材を駆動する機能を有する。更に、ステッピングモータMを固着し、付勢係合部材11自らが取り付け部を介して別の地板に取り付けられる機能を有する。更に、マグネット8を覆いゴミの進入を防ぐ機能を有する。付勢係合部材11は、単一の部品構成で上記複数の機能を実現するため、部品点数及びコストを削減できると共にコンパクトな構成とすることができる。
また、ステッピングモータに付勢係合部材11を予め組み込むことで、ステッピングモータに後からモータ取り付け板を取り付ける構造のものと比較し、ステッピングモータの軸方向長さをより短くでき、ステッピングモータの小型化とコストの低減を図ることができる。
また、ステータ1と該ステータ1に固定される付勢係合部材11とにより、リードスクリュー軸10を支持する構成のため、2つの支持部の同軸度のズレを最小限に抑えることができる。これにより、マグネット8の外周面と第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bの内周面とのギャップの均一化を図ることができ、ステッピングモータの安定した回転を得ることができる。
また、リードスクリュー軸10がステッピングモータの回転軸となっているため、例えばリードスクリュー軸が回転軸と別構成のものと比較し、リードスクリュー軸と回転軸を接合する必要がなくなる。これにより、接合時の芯ズレがなくなることで、ステッピングモータの安定した回転を得ることができると共に、大幅にコスト低減を図ることができる。
また、リードスクリュー軸10のオネジ部10bに螺合するメネジ部11h及び駆動腕部11iを備える付勢係合部材11をステッピングモータに組み込むため、マグネット8の回転をリードスクリュー軸10の軸方向移動に変換して出力することができる。これにより、駆動装置の他に減速機等の機構を用いることなく、例えばレンズ等の直進駆動をステップ制御で行うことが可能となる。
上記の効果をまとめると、外径及び軸方向の長さを最小限に抑えた小型且つ低コストで高出力なステッピングモータを提供することが可能となる。また、ステッピングモータにリードスクリュー軸10及び付勢係合部材11を組み込むことで、被駆動部材(レンズ枠)を円滑且つ正確に駆動できる駆動装置を実現することが可能となる。また、直進駆動機構を構成する付勢係合部材11を単一の部品で構成し且つ複数の機能を持たせることで、部品点数及びコストを削減することが可能となる。
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態は、上述した第1の実施の形態に対して、駆動装置を構成するモータとして上記図1乃至図8に示したモータ以外のモータを使用する点において相違する。本実施の形態のその他の要素は、上述した第1の実施の形態(図8)の対応するものと同一なので、同一要素には同一符号を付し説明を省略する。
図10は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置の構成を示す分解斜視図である。
図10において、レンズ駆動装置は、モータM、リードスクリュー軸10、付勢係合部材11から構成されている。モータMは、モータ取り付け体としての付勢係合部材11の取り付け腕部11jに設けられた取り付け穴11kを介してネジ24によりカメラ本体の地板(不図示)に固定される。モータMとしては、例えば特開平9−331666号公報に開示されたモータであってもよいし、その他の公知のモータであってもよく、特定のモータに限定されるものではない。
上述した第1の実施の形態では、付勢係合部材11にマグネット8を覆う機能も持たせる場合を例に挙げた。
これに対し、本実施の形態では、マグネットはモータ本体内に内蔵され露出はされていないタイプのものである。付勢係合部材11は、以下に示す機能を有する。リードスクリュー軸10を軸方向に付勢しリードスクリュー軸10のがたつきをなくす機能。リードスクリュー軸10に係合しリードスクリュー軸10の回転に伴ってその軸方向に移動し被駆動部材を駆動する機能。モータを固着し、付勢係合部材11自らが取り付け部を介して別の地板に取り付けられる機能。付勢係合部材11は、単一の部品構成で上記複数の機能を実現するので、部品点数及びコストを削減することができる。
尚、必ずしも上記の機能すべてを同時に備える必要は無い。例えばメネジ部を別の部材で構成し、該メネジ部を付勢係合部材11に公知の方法(例えば接着や溶接等)で一体的に構成しても良い。この場合は、リードスクリュー軸10を軸方向に付勢しリードスクリュー軸10のがたつきをなくす機能と、モータを固着し付勢係合部材11自らが取り付け部を介して別の地板に取り付けられる機能との2つの機能を持つことになる。これにより、従来例に比べ部品点数及びコストを削減することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、モータにリードスクリュー軸10及び付勢係合部材11を組み込むことで、被駆動部材(レンズ枠)を円滑且つ正確に駆動できる駆動装置を実現することが可能となる。また、直進駆動機構を構成する付勢係合部材11を単一の部品で構成し且つ複数の機能を持たせることで、部品点数及びコストを削減することが可能となる。
[他の実施の形態]
上記第1及び第2の実施の形態では、図1乃至図10に示す駆動装置を例に挙げたが、本発明は、特定の構成に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲で示した機能及び各実施の形態で示した機能が達成できる構成であれば、任意の構成であってもよいことは言うまでもない。
上記第1及び第2の実施の形態では、駆動装置による被駆動部材としてレンズ枠を例に挙げたが、本発明は、これに限定されるものではない。レンズ枠以外の被駆動部材を駆動する場合に適用してもよい。
上記第1及び第2の実施の形態では、駆動装置を構成するステッピングモータの出力軸としてリードスクリュー軸を用いた構成(コアとリードスクリュー軸でロータを構成)を例に挙げたが、本発明は、これに限定されるものではない。ステッピングモータの出力軸にリードスクリューを一体的に設ける(接合を含む)構成(コアと出力軸でロータを構成)としてもよい。