JP5233467B2 - 結晶粒解析装置、結晶粒解析方法、及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Description
特許文献1には、圧延された薄板鋼板を焼鈍して一次再結晶化し、一次再結晶化した薄板鋼板を仕上げ焼鈍して、二次再結晶化した薄板鋼板を得るための技術が開示されている。かかる技術では、一次再結晶化した結晶粒の粒径の分布を統計的に求める。そして、その一次再結晶化した結晶粒の粒径の分布を用いて、一次再結晶化した個々の結晶粒の粒界エネルギーの積分値(積分粒界エネルギー)を求め、求めた結果を用いて一次再結晶化した結晶粒の最適な分布を推定する。そして、特許文献1では、このようにして推定した分布となるように、一次再結晶化した結晶粒を得るようにすれば、適正に二次再結晶化した薄板鋼板が得られることになるとしている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、一次再結晶化した結晶粒について着目し、一次再結晶化した結晶粒が、二次再結晶化されるまでの挙動について考慮していない。したがって、結晶粒が時間の経過と共にどのように変化していくのかについての正確な知見を得ることが困難であった。また、前述した従来の技術では、一次再結晶化した結晶粒の粒径の分布を統計的に求めるので、事前の製造・試験等に基づいた多くのデータが必要であった。したがって、結晶粒の状態を簡便に解析することが困難であるという問題点があった。
また、特許文献3に記載の技術では、具体的にどのようなモデルを用いて、結晶粒成長の計算を行うのかが示されていないという問題点があった。
まず、図1(a)に示すように、結晶粒Aの3つの粒界ua〜ucの両端点に対応する位置に三重点ia、ie、ifを設定し、粒界ua〜ucの中間点に対応する位置に二重点ib〜id、ig〜iiの各粒界点を設定する。ここで、三重点ia、ie、ifとは、3つの直線が交わる点(すなわち、3つの結晶粒と接する点)をいい、二重点ib〜id、ig〜iiとは、2つの直線が交わる点(2つの結晶粒と接する点)をいう。そして、同一の粒界ua〜uc上で互いに隣接する点(粒界点)iを互いに結ぶ直線(ライン)を設定する。
以上のように、本実施形態では、粒界ua〜ucの両端の位置だけでなく、粒界ua〜ucの途中の形状も出来るだけ忠実に表すことができるように、二重点ib〜id、ig〜iiを設定するようにしている。
図2は、本実施形態の結晶粒解析装置の機能構成の一例を示すブロック図である。尚、結晶粒解析装置100のハードウェアは、パーソナルコンピュータ等、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、画像入出力ボード、各種インターフェース、及びインターフェースコントローラ等を備えた情報処理装置を用いて実現することができる。そして、特に断りのない限り、図2に示す各ブロックは、CPUが、ROMやハードディスクに記憶されている制御プログラムを、RAMを用いて実行することにより実現される。そして、図2に示す各ブロック間で、信号のやり取りを行うことにより、以下の処理が実現される。
例えば、図3(c)に示した粒界u1における易動度Miは、結晶粒A1の方位ξ1と結晶粒A2の方位ξ2との差分Δξの絶対値と、解析温度設定部106により取得された解析温度θ(t)とに対応した易動度Miを、易動度記憶部110に記憶されたグラフ等から読み出すことにより得られる。尚、易動度記憶部110は、例えば、RAM又はハードディスクを用いて構成される。
図4は、二重点に生じる駆動力Fi(t)の計算方法の一例を説明する図である。図4では、二重点iに生じる駆動力Fi(t)を計算する場合を例に挙げて説明する。
まず、二重点iが属する粒界uの粒界ベクトルγiの大きさ(絶対値)と同じ大きさを有し、且つ、二重点iから点i−1、i+1に向かう方向を有する2つのベクトルfi1、fi2のベクトル和が、二重点iに生じる駆動力Frであると仮定する(図4を参照)。そうすると、二重点iに生じる駆動力Frの大きさは、以下の(2)式で表される。
二重点iに生じる駆動力を(2)式のようにして定義してもよいが、このようにして定義してしまうと、二重点iに生じる駆動力が、二重点iから点i−1(又は点i+1)までの直線42、43の長さlに依存してしまう。すなわち、二重点iに生じる駆動力が、1つの粒界uに対して設定された二重点iの数に依存してしまう。例えば、図3(c)に示すように、粒界u1に対して3つの二重点i2〜i4が設定された場合と、粒界u1に対して5つの二重点が設定された場合とで、二重点iに生じる駆動力が異なってしまう。
図5は、三重点に生じる駆動力Fi(t)の計算方法の一例を説明する図である。尚、図5では、三重点iに生じる駆動力Fi(t)を計算する場合を例に挙げて説明する。また、図5では、三重点iに隣接する3つの点を夫々「1」、「2」、「3」で表記している。
このように、本実施形態では、点1、2、3が属する粒界uにおける単位長さ当たりの粒界エネルギーγi1、γi2、γi3の大きさ(絶対値)と同じ大きさを有し、且つ、計算対象の三重点iから、その三重点iに隣接する点に向かう方向を有する3つのベクトルDi1(t)、Di2(t)、Di3(t)のベクトル和が、三重点iに生じる駆動力Fi(t)として計算される。
位置計算部116は、位置計算部116は、計算対象の三重点iが属する3つの粒界uの易動度Mi1〜Mi3を、易動度設定部111から取得する。
また、位置計算部116は、三重点用駆動力計算部115により計算された駆動力Fi(t)を示すベクトル(計算対象の三重点iに生じる駆動力Fi(t)を示すベクトル)を取得する。そして、位置計算部116は、計算対象の三重点iが属する粒界uの易動度Miと、計算対象の三重点iの駆動力Fi(t)を示すベクトルとを、前述した(4)式に代入して、計算対象の三重点iの速度vi(t)を示すベクトルを計算する。
以上のように本実施形態では、結晶粒(粒界点(二重点i及び三重点i))の「時間の経過に伴う位置の変化」を平面(2次元)上で解析するようにしている。
図6において、破線部は、検出されたインヒビターkの領域を示している。この場合、インヒビター設定部118は、破線で示した検出領域を、図6に示すように円及び球で近似して、インヒビターkの中心位置bkを示す座標に関する情報と、その半径rに関する情報を計算する。ここで、インヒビター設定部118により設定されるインヒビターkは、粒界点と異なり、時間の経過に伴う位置の変化をしないものである。
図7(1a)〜(6a)は、ライン変更処理部119による処理前のラインpの一例が示されている。また、図7(1a)〜(6a)に示す各ラインpに対する第1の処理例を図7(1b)〜(6b)に示し、第2の処理例を図7(1c)〜(6c)に示している。また、図7では、インヒビターkは円として設定されている。
そこで、有効範囲設定部122は、固定点ikを解放させるか否かを決定する際に考慮する粒界uの範囲に関する情報を、ユーザによる操作装置300の操作に基づいて取得し、RAM又はハードディスクに設定する。ここでは、この粒界uの範囲に関する情報を、操作装置300の操作に基づいて取得しているが、結晶粒解析装置100に有効範囲記憶部を設けて、そこから、予め記憶された「粒界uの範囲に関する情報」を読み出すようにしてもよい。尚、以下の説明では、この範囲を、必要に応じて有効範囲と称する。
本実施形態では、インヒビターkの中心位置bkを中心とする円及び球を有効範囲として設定するものとする。よって、粒界エネルギー算出部121は、有効範囲の半径に関する情報を有効範囲設定部122から取得する。この有効範囲は、実験的に求めることができるものである。具体的に説明すると、固定点ikと、当該固定点ikと隣接する点iとを結ぶ2つの直線のなす角度のうち、最も鋭角な角度(例えば図8、図9の角度2β)が、何度であるときに、固定点ikが適切に解放されるのかを実験的に求めておき、その求めた角度に基づいて、固定点ikが適切に解放される有効範囲を決定するようにすることができる。ただし、固定点ikを含み、且つインヒビターkよりも広い領域であって、粒界エネルギーを算出する対象を画定する領域であれば、どのように有効範囲を決定してもよい。
そこで、障壁エネルギー設定部123は、ユーザによる操作装置300の操作に基づいて、この所定のエネルギーに関する情報(エネルギーの値)を取得し、RAM又はハードディスクに設定する。ここでは、この所定のエネルギーに関する情報(エネルギーの値)を、操作装置300の操作に基づいて取得しているが、結晶粒解析装置100に障壁エネルギー記憶部を設けて、そこから、予め記憶された"所定のエネルギーに関する情報(エネルギーの値)"を読み出すようにしてもよい。尚、以下の説明では、この所定のエネルギーを障壁エネルギーと称する。
本実施形態では、粒界エネルギー算出部121は、有効範囲設定部122から取得した有効範囲に基づく3次元の領域内において、インヒビターkに拘束されている固定点ikが属する粒界uの粒界エネルギーEiを算出する。また、本実施形態では、粒界エネルギー算出部121は、固定点ikを中心位置bkとするインヒビターk内(インヒビターkの表面(境界)は含まない)には、粒界uは存在しないものとして粒界エネルギーEiの計算(算出)を行う。
図8は、固定二重点として固定点ikが生成された場合の「有効範囲内における粒界」の様子の一例を示す図である。図9は、固定三重点として固定点ikが生成された場合の「有効範囲内における粒界」の様子の一例を示す図である。図10は、固定点ikが、インヒビターkに捉えられているとき、インヒビターkから解放されるとき、及びインヒビターkから解放された後の粒界面のモデルの一例を示す図である。具体的に図10(a)は固定点ikが固定二重点である場合のモデルであり、図10(b)は固定点ikが固定三重点である場合のモデルである。図11は、固定二重点である固定点ikが、インヒビターkに捉えられているとき、インヒビターkから解放されるとき、及びインヒビターkから解放された後の粒界面のモデルの一例を個別に示す図である。図12は、固定三重点である固定点ikが、インヒビターkに捉えられているとき、インヒビターkから解放されるとき、及びインヒビターkから解放された後の粒界面のモデルの一例を個別に示す図である。尚、図10に示すモデルは、粒界エネルギーを算出するときだけに使用され、前述した結晶粒Aの位置を算出する際には使用されない。また、粒界エネルギーを算出する際には、球として設定されたインヒビターkが使用される。
まず、図8(a)に示すように、粒界エネルギー算出部121は、固定点ikと当該固定点ikに隣接する点ir、itとを最短距離で結ぶラインpa、pbを、点ir、it方向に有効範囲801に到達する(仮想点808、809)まで延長し、仮想ライン802、803を生成する。そして、図10(a)に示すように、粒界エネルギー算出部121は、固定点ikを頂点とし、仮想ライン802、803(の少なくとも一部)を母線とし、平衡位置wを底面に含む錐体1002を生成する。ここで、平衡位置wとは、固定点ikが固定位置(インヒビターkの中心位置bk)から解放されて、インヒビターk内を除く領域の位置であって、粒界エネルギーEが最小となる位置をいう。
Ei=(ラインpa、pbを含む粒界uの単位面積当たりの粒界エネルギーη)
×(仮想粒界面1101の面積) ・・・(7)
このように本実施形態では、固定点ikが属する粒界の仮想的な仮想ラインであって、固定点ikを端点の1つとする仮想ライン802、803を母線とする錐体1002の側面の面積と、固定点ikが属する粒界における単位面積当たりの粒界エネルギーとを用いて、固定点ikが二重点である場合の粒界エネルギーEiが算出されることになる。
このように変化する図形は、次のようにして定められる。
まず、図9(a)に示すように、粒界エネルギー算出部121は、固定点ikを端点とする各ラインpa、pb、pcのうち、平衡位置wを挟む位置にあるラインpa、pb(平衡位置が存在する領域を画定する2つの仮想ライン)を、点ir、it方向に有効範囲801に到達する(仮想点808、809)まで延長し、仮想ライン802、803を生成する。そして、図10(b)に示すように、粒界エネルギー算出部121は、固定点ikを通り、固定点ikを中心として上下の長さが均等になるようにラインpを構成する面に垂直な方向に伸び、有効範囲801の直径(=2r)と同じ長さを有する仮想的な仮想ライン1003を一方の辺とし、仮想ライン802、803を他方の辺の長さとする2つの矩形1004、1005を生成する。
また、固定点ikが三重点であるため、2つの仮想粒界面1201、1202は、夫々、異なる粒界uに属していると見なすことができる。よって、例えば、固定点ikが三重点である場合の粒界エネルギーEiは、以下の(8)式により算出される。
Ei=(ラインpaを含む粒界uの単位面積当たりの粒界エネルギーη1)
×(仮想粒界面1201の面積)
+(ラインpbを含む粒界uの単位面積当たりの粒界エネルギーη2)
×(仮想粒界面1202の面積)
・・・(8)
このように本実施形態では、固定点ikを通り、固定点ikを中心として上下の長さが均等になるようにラインpを構成する面に垂直な方向に伸び、有効範囲801の直径(=2r)と同じ長さを有する仮想的な仮想ライン1003を一方の辺とし、固定点ikが属する粒界の仮想的な仮想ラインであって、固定点ikを端点の1つとする仮想ライン802、803を他方の辺の長さとする矩形からインヒビターkに含まれる領域を差し引いた面の面積と、固定点ikが属する粒界における単位面積当たりの粒界エネルギーとを用いて、粒界エネルギーEiが算出されることになる。
本実施形態では、粒界エネルギー算出部121は、有効範囲設定部122から取得した有効範囲に基づく3次元の領域内において、解放された固定点ikが属する粒界uの粒界エネルギーEi'を算出する。また、本実施形態では、粒界エネルギー算出部121は、固定点iを中心位置bkとするインヒビターk内(インヒビターkの表面(境界)は含まない)には、粒界uは存在しないものとし、また、その他のインヒビターkは存在しないものとして粒界エネルギーEi'を算出する。
Ei'=(ラインpa、pbを含む粒界uの単位面積当たりの粒界エネルギーη)
×(仮想粒界面1102の面積) ・・・(9)
このように本実施形態では、固定点ikが属する粒界の仮想的な仮想ラインであって、固定点ikを端点の1つとする仮想ライン802、803を母線とする円錐1002の底面の面積と、固定点ikが属する粒界における単位面積当たりの粒界エネルギーとを用いて、固定点ikが二重点である場合の粒界エネルギーEi'が算出されることになる。
仮想粒界面1008、1009、1203は、次のようにして定められる。
まず、図9(a)に示すように、粒界エネルギー算出部121は、仮想点808と平衡位置wとを最短距離で結ぶライン(仮想ライン)901と、仮想点809と平衡位置wとを最短距離で結ぶライン(仮想ライン)902と、固定点ikと平衡位置wとを最短距離で結ぶライン(仮想ライン)903とを生成する。
また、固定点ikが三重点であるため、3つの仮想粒界面1008、1009、1203は、夫々、異なる粒界uに属していると見なすことができる。よって、例えば、固定点ikが三重点である場合の粒界エネルギーEi'は、以下の(10)式により算出される。
Ei'=(ラインpaを含む粒界uの単位面積当たりの粒界エネルギーη1)
×(仮想粒界面1008の面積)
+(ラインpbを含む粒界uの単位面積当たりの粒界エネルギーη2)
×(仮想粒界面1009の面積)
+(ラインpcを含む粒界uの単位面積当たりの粒界エネルギーη3)
×(仮想粒界面1203の面積)
・・・(10)
本実施形態では、粒界エネルギー算出部121は、有効範囲設定部122から取得した有効範囲に基づく3次元の領域内において、固定点ikが解放されるときの当該固定点ikが属する粒界uの粒界エネルギーEi''を算出する。また、本実施形態では、粒界エネルギー算出部121は、固定点iを中心位置bkとするインヒビターk内(インヒビターkの表面(境界)は含まない)には、粒界uは存在しないものとし、また、その他のインヒビターkは存在しないものとして粒界エネルギーEi''を算出する。
このように変化する図形(錐体)は、次のようにして定められる。
まず、図8(a)に示すように、粒界エネルギー算出部121は、仮想点804と仮想点808、809とを最短距離で結ぶ仮想ライン806、807を生成する。そして、図10(a)に示すように、粒界エネルギー算出部121は、仮想点804を頂点とし、仮想ライン806、807(の少なくとも一部)を母線とし、平衡位置wを底面に含む錐体1010を生成する。
また、固定点ikは二重点であるため、仮想粒界面1103は、同一の粒界uに属していると見なすことができる。よって、例えば、固定点ikが二重点である場合の粒界エネルギーEi''は、以下の(11)式により算出される。
Ei''=(ラインpa、pbを含む粒界uの単位面積当たりの粒界エネルギーη)
×(仮想粒界面1103の面積) ・・・(11)
このように本実施形態では、固定点ikが解放したときの当該固定点ikが属する粒界の仮想的な仮想ラインであって、当該固定点ikを端点の1つとする仮想ライン806、807を母線とする錐体1010の側面の面積と、固定点ikが属する粒界における単位面積当たりの粒界エネルギーとを用いて、固定点ikが二重点である場合の粒界エネルギーEi''が算出されることになる。
仮想粒界面1012、1013、1204は、次のようにして定められる。
まず、図9(a)に示すように、粒界エネルギー算出部121は、仮想点808と仮想点804とを最短距離で結ぶライン(仮想ライン)806と、仮想点809と仮想点804とを最短距離で結ぶライン(仮想ライン)807とを生成する。
そして、図10(b)に示すように、粒界エネルギー算出部121は、仮想点804を通り、固定点ikを中心として上下の長さが均等になるようにラインpを構成する面に垂直な方向に伸び、有効範囲801の直径(=2r)と同じ長さを有する仮想的な仮想ライン1014を一方の辺とし、インヒビターkの半径r(固定点ikと仮想点804とを最短距離で結んだ仮想ライン)を他方の辺の長さとする矩形1011を生成する。更に、粒界エネルギー算出部121は、仮想ライン1014を一方の辺とし、仮想ライン806、807を他方の辺の長さとする2つの矩形1012、1013を生成する。
また、固定点ikが三重点であるため、3つの仮想粒界面1012、1013、1203は、夫々、異なる粒界uに属していると見なすことができる。よって、例えば、固定点ikが三重点である場合の粒界エネルギーEi''は、以下の(12)式により算出される。
Ei''=(ラインpaを含む粒界uの単位面積当たりの粒界エネルギーη1)
×(仮想粒界面1013の面積)
+(ラインpbを含む粒界uの単位面積当たりの粒界エネルギーη2)
×(仮想粒界面1012の面積)
+(ラインpcを含む粒界uの単位面積当たりの粒界エネルギーη3)
×(仮想粒界面1204の面積)
・・・(12)
尚、図9(a)では、固定点ikと仮想点808、809とを最短距離で結んだ2つのライン(仮想ライン)のなす角を二等分する線上の点に平衡位置wがある場合を例に挙げて示しているが、平衡位置wは、固定点ikと仮想点808、809とを最短距離で結んだ2つのラインのなす角を二等分する線上の位置に限定されるものではない。
Ei'<Ei ・・・(13)
この判定の結果、粒界エネルギーEi'が粒界エネルギーEi未満(Ei'<Ei)でない場合には、固定点ikを解放しない。
Ei''−Ei<E0 ・・・(14)
この判定の結果、粒界エネルギーEi''から、粒界エネルギーEiを減算した値が、障壁エネルギーE0未満でない場合には、固定点ikを解放しない。一方、粒界エネルギーEi''から、粒界エネルギーEiを減算した値が、障壁エネルギーE0未満である場合には、固定点ikを解除する(解放する)処理を行う。
また、(14)式の代わりに、例えば、粒界エネルギーEiから粒界エネルギーEi''からを減算した値の絶対値が、障壁エネルギーE0未満であるか否かを判定するようにしてもよい。
図13−1は、固定点ikが二重点である場合の、仮想粒界面の面積と、固定点の屈曲角との関係の一例を示す図であり、図13−1(b)は、図13−1(a)の曲線A、L、Mが交わる領域を拡大して示す図である。また、図13−2は、固定点ikが三重点である場合の、仮想粒界面の面積と、固定点の屈曲角との関係の一例を示す図であり、図13−2(b)は、図13−2(a)の曲線B、L、Mが交わる領域を拡大して示す図である。尚、図13−1、図13−2において、固定点の屈曲角は、図10に示した角度ξである。また、図13−1、図13−2では、インヒビターkの半径が1μmであり、有効範囲801の直径が12μmであるとしてシミュレーションした結果を例に挙げて示している。
図13−1において、曲線Lは、図11(a)に示した仮想粒界面1101の面積と屈曲角ξとの関係を示すものである。また、曲線Aは、図11(b)に示した仮想粒界面1102の面積と屈曲角ξとの関係を示すものであり、曲線Mは、図11(c)に示した仮想粒界面1103の面積と屈曲角ξとの関係を示すものである。
一方、図13−2において、曲線Lは、図12(a)に示した仮想粒界面1201、1202の面積と屈曲角ξとの関係を示すものである。また、曲線Bは、図12(b)に示した仮想粒界面1008、1009、1203の面積と屈曲角ξとの関係を示すものであり、曲線Mは、図12(c)に示した仮想粒界面1012、1013、1204の面積と屈曲角ξとの関係を示すものである。
図13−1に示す例では、曲線Lと曲線Aとが交わったか否かが第1の解放条件となる。一方、図13−2に示す例では、曲線Lと曲線Bとが交わったことが第1の解放条件となる。
図13−1、図13−2に示す例では、曲線Mの値から曲線Lの値を減じた値が、障壁エネルギーE0を単位エネルギー面積の粒界エネルギーηで割った値よりも小さくなることが第2の解放条件となる。
しかしながら、図13−1、図13−2に示すように、曲線Lと曲線A(曲線Lと曲線B)とが交わった後の点σ(点τ)以降では、曲線Mは曲線Lより下回っている。すなわち、粒界点がインヒビターkに捉えられているときの仮想粒界面の面積が、粒界点がインヒビターkから解放される瞬間の面積よりも小さい。したがって、このような場合には、固定点ikが解放されるときに、粒界の面積(仮想粒界面の面積)の増加が起こらずに、固定点ikを解放することができ、必ずしも障壁エネルギーE0を考慮しなくてもよくなる。すなわち、第1の解放条件((13)式)を満たせば、前述した第2の解放条件((14)式)を自動的に満たすことになり、第2の解放条件((14)式)の判定を省略することができる。
また、図13−2では、第1の解放条件を満たすときの屈曲角ξは78.56°であった(図13−2(b)の点δを参照)。これに対し、仮想粒界面1008、1009、1012、1013、1201〜1204の代わりに、仮想ライン(インヒビターkの部分を除いた仮想ライン802、803、903と、仮想ライン806、807、901、902)を用い、単位面積当たりの粒界エネルギーの代わりに、単位長さ当たりの粒界エネルギーを用いた場合、第1の解放条件を満たすときの屈曲角ξは108°であった。
このように本実施形態では、例えば、ステップS1の処理を行うことにより、画像信号取得手段の一例が実現される。
以上のように本実施形態では、例えば、ステップS7〜S10の処理を行うことにより、粒界点設定手段の一例が実現される。
以上のように本実施形態では、例えば、ステップS11〜S14の処理を行うことにより、介在物設定手段の一例が実現される。
このように本実施形態では、例えば、ステップS16の処理を行うことにより、有効領域設定手段の一例が実現される。
次に、ステップS17において、障壁エネルギー設定部123は、ユーザによる操作装置300の操作に基づいて、障壁エネルギーE0に関する情報(本実施形態では、障壁エネルギーE0の値)が入力されるまで待機する。そして、障壁エネルギーE0に関する情報が入力されると、ステップS18に進む。
ステップS18に進むと、障壁エネルギー設定部123は、障壁エネルギーE0に関する情報を、RAM又はハードディスクに設定する。
p1={i1,i2} ・・・(15)
以上のように本実施形態では、例えば、ステップS19の処理を行うことにより、ライン設定手段の一例が実現される。
u1={p1,p2,p3,p4} ・・・(16)
このように本実施形態では、例えば、ステップS21の処理を行うことにより、方位取得手段の一例が実現される。
このように本実施形態では、例えば、ステップS22の処理を行うことにより、粒界エネルギー設定手段の一例が実現される。
ステップS28において、ライン変更処理部119は、ステップS25で取得したラインpに関する情報及び円として設定されたインヒビターkに関する情報に基づいて、ラインpがインヒビターk内を通るか否かを判定する。この際、インヒビターkの表面(境界)は、インヒビターk内でないと判定される。この判定の結果、ラインpがインヒビターk内でない場合(図7(1a)〜(6a)に該当しない場合)には、ステップS38に進む。
以上のように本実施形態では、例えば、ステップS24〜S39の処理を行うことにより、ライン変更処理手段の一例が実現される。
次に、ステップS45において、解析点判別部113は、計算対象の点iが、固定点(ik)か否かを判定する。この判定の結果、計算対象の点iが、固定点(ik)でない場合には、ステップS46に進む。
以上のように本実施形態では、例えば、ステップS431〜S433の処理を行うことにより、駆動力演算手段の一例が実現され、例えば、ステップS434〜S436の処理を行うことにより、位置演算手段の一例が実現される。
以上のステップS441〜ステップS446までの処理を経ることにより、図14−4のステップS48に示す三重点用駆動力・位置算出処理が行われる。
以上のように本実施形態では、例えば、ステップS441、S442の処理を行うことにより、駆動力演算手段の一例が実現され、例えば、ステップS443〜S446の処理を行うことにより、位置演算手段の一例が実現される。
ステップS49に進むと、固定点処理部120は、解析点判別部113で判定処理された固定点iの座標情報と、当該固定点iとラインpを構成する他方の各点の位置を示す情報とを、点設定部103から読み出す。そして、固定点処理部120は、処理対象の固定点iを中心位置bkとする、球として設定されたインヒビターkに関する情報(中心位置bkを示す座標情報及びその半径rに関する情報)を、インヒビター設定部118から読み出す。更に、固定点処理部120は、有効範囲801に関する情報(有効範囲801の半径に関する情報)を、有効範囲設定部122から読み出す。
ここで、固定点i(ik)が二重点である場合には、例えば、(7)式を用いて粒界エネルギーEiが算出される。一方、固定点i(ik)が三重点である場合には、例えば、(8)式を用いて粒界エネルギーEiが算出される。
このように本実施形態では、例えば、仮想粒界面1101、1201、1202により第1の仮想面が実現され、粒界エネルギーEiにより第1の粒界エネルギーが実現され、ステップS50の処理を行うことにより、面設定手段及び粒界エネルギー算出手段の一例が実現される。
ここで、固定点i(ik)が二重点である場合には、例えば、(9)式を用いて粒界エネルギーEi'が算出される。一方、固定点i(ik)が三重点である場合には、例えば、(10)式を用いて粒界エネルギーEi'が算出される。
このように本実施形態では、例えば、仮想粒界面1008、1009、1102、1203により第2の仮想面が実現され、粒界エネルギーEi'により第2の粒界エネルギーが実現され、ステップS51の処理を行うことにより、面設定手段及び粒界エネルギー算出手段の一例が実現される。
ここで、固定点i(ik)が二重点である場合には、例えば、(11)式を用いて粒界エネルギーEi''が算出される。一方、固定点i(ik)が三重点である場合には、例えば、(12)式を用いて粒界エネルギーEi''が算出される。
このように本実施形態では、例えば、仮想粒界面1012、1013、1103、1204により第3の仮想面が実現され、粒界エネルギーEi''により第3の粒界エネルギーが実現され、ステップS53の処理を行うことにより、面設定手段及び粒界エネルギー算出手段の一例が実現される。
一方、粒界エネルギーEiを減算した値が、障壁エネルギーE0未満である場合には、ステップS55に進む。
尚、前述したように、本実施形態では、ステップS52における第1の解放条件を満たした後の点σ、τ以降では、粒界点がインヒビターkに捉えられているときの仮想粒界面の面積が、粒界点がインヒビターkから解放される瞬間の面積よりも小さくなると考えられるので、ステップS54の処理を省略してもよい(図13−1(b)、図13−2(b)を参照)。
次に、ステップS58において、ライン変更処理部119は、ステップS57の処理で点の数及びラインの数がそれぞれ1つ増えたため、現在設定されている、増減する点の数を示すΔNIに1を加算して、当該ΔNIを変更すると共に、現在設定されている、増減するラインの数を示すΔNPに1を加算して、当該ΔNPを変更する。そして、ステップS59に進む。
以上のように本実施形態では、例えば、ステップS56、S57の処理を行うことにより、固定点処理手段の一例が実現される。
ステップS60に進むと、解析点判別部113は、計算対象の点を示す変数iに1を加算して、計算対象の点iを変更する。そして、変更した点iに対して、ステップS45以降の処理を再度行う。
ステップS61に進むと、固定点処理部120は、点設定部103に対して、ステップS56、S57における点iの変更に伴う再設定を行わせる。また、これと同時に、位置計算部116は、点設定部103に対して、ステップS47又はステップS48で計算された点iが存在する位置ri(t+Δt)を示すベクトルを出力する。これにより、点iの現在の位置ri(t)を示すベクトルが、点設定部103に再設定される。
特に、本実施形態では、有効範囲設定部122から取得した有効範囲801に基づく3次元の領域内において、インヒビターkに拘束されている固定点ikが属する粒界uの粒界エネルギーEiと、平衡位置wにある固定点ikが属する粒界の粒界エネルギーEi'と、インヒビターkから解放されたときの固定点ikが属する粒界uの粒界エネルギーEi''とを算出する。そして、粒界エネルギーEi'が粒界エネルギーEiよりも小さく、且つ粒界エネルギーEi''と粒界エネルギーEiとの差が障壁エネルギーE0よりも小さい場合に、固定点ikを解放するようにした。このように、インヒビターkに粒界点が拘束されてから解放されるまでの粒界エネルギーを3次元のモデルを使って算出するようにしたので、インヒビターkに粒界点が拘束されてから解放されるまでの粒界エネルギーを、より実際の粒界エネルギーに近付けることができる。したがって、2次元のモデルを使った場合よりも粒界点がインヒビターkから解放され易くなり、インヒビターkを大きく設定することができ、実際に存在するインヒビターの大きさに応じた大きさを有するインヒビターkを設定することが可能になる。よって、インヒビターkによって結晶粒Aの粒界移動が抑制されていた状態から結晶粒Aの粒界移動が再開する状態への移行及び移行後の結晶粒Aの粒界移動の状態を可及的に正確にシミュレーションすることができる。
また、粒界エネルギーEi'が粒界エネルギーEiよりも小さいという第1の解放条件に加えて、粒界エネルギーEi''と粒界エネルギーEiとの差が障壁エネルギーE0よりも小さいという第2の解放条件を加えるようにしているので、第1の解放条件を満たした後、粒界点がインヒビターkに捉えられているときの仮想粒界面の面積が、粒界点がインヒビターkから解放される瞬間の面積よりも小さくならないような状態になった場合には、単位面積当たりの粒界エネルギーηの影響を含めて、固定点ikを解放させるか否かを判定することができる。
本実施形態では、固定点ikが二重点である場合には、固定点ikを頂点とし、仮想ライン802、803を母線とし、平衡位置wを底面に含む直円錐を錐体1002として生成するようにした。しかしながら、錐体1002は必ずしも直円錐に限定されるものではない。例えば、斜円錐であってもよいし、角錐であってもよい。
また、本実施形態では、固定点ikと当該固定点ikに隣接する点ir、itとを最短距離で結ぶラインpa、pbを、点ir、it方向に有効範囲801に到達する(仮想点808、809)まで延長した仮想ライン802、803や、固定点ik・平衡位置w・仮想点804を通り、固定点ikを中心として上下の長さが均等になるようにラインpを構成する面に垂直な方向に伸び、有効範囲801の直径(=2r)と同じ長さを有する仮想的な仮想ライン1003・1007・1014を一辺に持つ仮想粒界面を設定することにより、有効範囲801に基づく大きさを有する面を、粒界の仮想面として設定するようにした。しかしながら、仮想粒界面の設定方法は、このようなものに限定されるものではない。
例えば、有効範囲801を円ではなく、固定点ikを中心とする球としてもよい。このようにした場合、例えば、インヒビターkに拘束されているときの固定点ikが属する粒界uの仮想的な粒界面、平衡位置wにあるときの固定点ikが属する粒界uの仮想的な粒界面、及びインヒビターkから解放されるときの固定点ikが属する粒界uの仮想的な粒界面を、夫々範囲を指定せずに設定し、設定した仮想的な粒界面のうち、有効範囲801内にある部分を仮想粒界面として設定することができる。
[変形例3]
また、本実施形態では、図8(a)、図9(a)に示したように、固定点ikと当該固定点ikに隣接する点ir、itとにより構成されるラインpa、pbの延長線と、有効範囲801との交点808、809を求めるようにした。しかしながら、固定点ikを含む粒界uに接する線と、有効範囲801との交点を求めるようにしていれば必ずしもこのようにする必要はない。例えば、図8(a)において、交点808(809)に相当する点については、点ir(it)と、当該点ir(it)に隣接する固定点ik及び点iq(iu)とを通る円弧の固定点ikを通る接線と、有効範囲801との交点を求めるようにしてもよい。
また、本実施形態では、固定点ikを端点とする各ラインpa、pb、pcのうち、平衡位置wを挟む位置にあるラインpa、pbの延長線と、有効範囲801との交点808、809を求めるようにした。しかしながら、必ずしも平衡位置wを求めた上で、交点808、809を求める必要はない。例えば、以下のようにして交点808、809を求めることができる。図9(a)を参照しながら、交点808、809を求める方法のその他の一例を説明する。
まず、粒界エネルギー算出部121は、『固定点ikと、当該固定点ikに隣接する点ir、itとにより定まるラインpa、pbのなす角度』、『固定点ikと、当該固定点ikに隣接する点ir、ivとにより定まるラインpa、pcのなす角度』、及び『固定点ikと、当該固定点ikに隣接する点iv、itとにより定まるラインpc、pbのなす角度』のうち、最も鋭角である角度(ラインpa、pbのなす角度)を選択する。そして、粒界エネルギー算出部121は、選択した角度を構成するラインpa、pbを、平衡位置wを挟む位置にあるラインとみなし、そのラインpa、pbの延長線と、有効範囲801との交点808、809を求める。
また、本実施形態では、有効範囲801を円としたが、前述したように有効範囲801の形状は円に限定されるものではない。更に、前述したように有効範囲801を設定すれば、粒界uに対して設定される二重点の数に可及的に影響を受けずに固定点ikを解放することができ好ましいが、必ずしも有効範囲801を設定する必要はない。このようにした場合、例えば、図8及び図9において、点808、809の情報の代わりに、固定点ikに隣接する点ir、itの情報を用いて、前述した処理を行うようにすることができる。
また、本実施形態では、ユーザが、結晶粒画像31を見ながら、操作装置300を使用して、点i及びインヒビターkを指定する場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、EBSP法で解析することにより得られた結晶粒画像信号に基づいて、結晶粒解析装置100(コンピュータ)が自動的に、点i及びインヒビターkを指定するようにしてもよい。
また、本実施形態では、インヒビター設定部118において、図6に示すように、検出したインヒビターkの領域を円で近似してインヒビターkを設定するようにしているが、検出したインヒビターkの領域の形状に応じて、近似する形状を変更するようにしてもよい。この際、例えば、インヒビターkを楕円に近似する場合には、楕円の中心位置(固定位置)を示す座標情報と、楕円の長軸の長さに係る情報と、楕円の短軸の長さに係る情報を計算して、当該インヒビターkをRAM又はハードディスクに設定する形態を採る。また、例えば、インヒビターkを多角形に近似する場合には、例えば固定位置として重心位置を示す座標情報と、当該多角形における各頂点を示す座標情報を計算して、当該インヒビターkをRAM又はハードディスクに設定する形態を採る。
また、本実施形態では、粒界設定部105により、粒界uを定義するようにしたが、点i、ラインp、及び結晶粒Aを用いれば、粒界uは自ずと定まるので、必ずしも粒界uを定義する必要はない。
[変形例9]
また、本実施形態では、粒界エネルギー設定部109、易動度設定部111は、粒界uを介して互いに隣接する2つの結晶粒Aの方位ξの差分Δξの絶対値に基づいて、単位長さ当たりの粒界エネルギーγ、単位面積当たりの粒界エネルギーη、易動度Miを設定するようにしたが、粒界uを介して互いに隣接する2つの結晶粒Aの方位ξの差分Δξそのものに基づいて、単位長さ当たりの粒界エネルギーγ、単位面積当たりの粒界エネルギーη、易動度Miを設定するようにしてもよい。
また、本実施形態では、(6)式を用いて、計算対象の三重点iにおける易動度Miを求めるようにしたが、計算対象の三重点iが属する3つの粒界uに対応する易動度Mi1〜Mi3を用いて、計算対象の三重点iの易動度Miを求めるようにしていれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、以下の(17)式を用いて、計算対象の三重点iにおける易動度Miを求めるようにしてもよい。
また、本実施形態では、粒界uの再現性を高めるために二重点を設定するようにしたが、二重点を設定せずに、三重点のみを設定するようにしてもよい。このようにする場合、例えば、図14−4のステップS46、S47を省略する。そして、ステップS57、S58の代わりに、固定点iをインヒビターの表面に移動させ、通常の点iを生成するようにする。また、ステップS56の代わりに、固定点iを消滅させると共に、当該固定点iと当該固定点iに隣接する2つの点とを最短距離で結ぶ2つのラインを消滅させて当該固定点iが属する2つの粒界を消滅させた後、固定点iに隣接していた2つの点を結ぶ粒界(ライン)を発生させ、増減する点及びラインの数を示すΔNI及びΔNPを1減算する処理を行う。
また、本実施形態では、結晶粒解析装置が解析する材料の一例である金属材料として、電磁鋼板を例に挙げて説明したが、本発明に係る結晶粒解析装置が解析する材料は、このようなものに限定されず、インヒビター等の介在物を用いて製造されるものであれば、如何なるものでも適用可能である。尚、結晶粒解析装置が解析する金属材料が異なる場合には、粒界エネルギー記憶部108や易動度記憶部110に記憶されるグラフ等の内容等、結晶粒解析装置に入力されるデータが、材料に応じて異なることになる。
また、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
101 結晶画像取得部
102 結晶画像表示部
103 点設定部
104 ライン設定部
105 粒界設定部
106 解析温度設定部
107 方位設定部
108 粒界エネルギー記憶部
109 粒界エネルギー設定部
110 易動度記憶部
111 易動度設定部
112 解析時間設定部
113 解析点判別部
114 二重点用駆動力計算部
115 三重点用駆動力計算部
116 位置計算部
117 解析画像表示部
118 インヒビター設定部
119 ライン変更処理部
120 固定点処理部
121 粒界エネルギー算出部
122 有効範囲設定部
123 障壁エネルギー設定部
200 表示装置
300 操作装置
Claims (16)
- 金属材料における結晶及び当該金属材料に含まれる介在物の画像信号を取得する画像信号取得手段と、
前記結晶に含まれる結晶粒の粒界の両端点に対応し、且つ当該結晶粒を含む3つの結晶粒と接する三重点が、前記画像信号に基づいて指定されると、その指定された三重点の粒界点を設定する粒界点設定手段と、
前記粒界点設定手段により設定された粒界点であって、同一の粒界上で互いに隣接する2つの粒界点を両端点とするラインを設定するライン設定手段と、
前記画像信号に基づいて前記介在物が指定されると、その指定された介在物を設定する介在物設定手段と、
前記ライン設定手段により設定されたラインが前記介在物内を通る場合に、当該介在物内に固定点を発生させ、当該固定点を端点とするラインの変更処理を行うライン変更処理手段と、
前記固定点が属する粒界を構成する仮想的な第1の仮想面と、当該固定点を固定位置から解放し、前記介在物内を除く領域の位置であって粒界エネルギーが最小となる平衡位置に移動させた際の、当該移動させた固定点が属する粒界を構成する仮想的な第2の仮想面とを設定する面設定手段と、
前記固定点が属する粒界における第1の粒界エネルギーと、前記平衡位置に移動させた固定点が属する粒界における第2の粒界エネルギーとを算出する粒界エネルギー算出手段と、
前記第2の粒界エネルギーが前記第1の粒界エネルギー未満である場合に、前記固定点を、前記ラインが設定されている2次元の面上に解放する処理を行う固定点処理手段とを有し、
前記粒界エネルギー算出手段は、前記面設定手段により設定された第1の仮想面の面積と、前記固定点が属する粒界における単位面積当たりの粒界エネルギーとを用いて第1の粒界エネルギーを算出し、
前記面設定手段により設定された第2の仮想面の面積と、前記固定点が属する粒界における単位面積当たりの粒界エネルギーとを用いて第2の粒界エネルギーを算出することを特徴とする結晶粒解析装置。 - 前記粒界点設定手段は、前記結晶に含まれる結晶粒の粒界の両端点に対応し、且つ当該結晶粒を含む3つの結晶粒と接する三重点と、前記結晶に含まれる結晶粒の粒界の中間点に対応し、且つ当該結晶粒を含む2つの結晶粒と接する二重点とが、前記画像信号に基づいて指定されると、その指定された三重点及び二重点の粒界点を設定することを特徴とする請求項1に記載の結晶粒解析装置。
- 前記固定点が二重点である場合、
前記第1の仮想面は、前記固定点が頂点となり、前記固定点が属する粒界を構成する2つのライン、又は前記固定点が属する粒界を構成する仮想的な2つの仮想ラインが母線となり、且つ、前記平衡位置が底面に含まれる錐体の側面から、当該錐体の側面のうち前記介在物に属する領域を差し引いた面であり、
前記第2の仮想面は、前記錐体の底面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の結晶粒解析装置。 - 前記固定点が三重点である場合、
前記第1の仮想面は、前記固定点を通り、前記ラインが設定される2次元の面に対して垂直方向に伸びる仮想的な仮想ラインと、前記2次元の面上のラインであって、前記固定点が属する粒界を構成するライン、又は前記固定点が属する粒界を構成する仮想的な仮想ラインとに基づく面から、当該面のうち前記介在物に属する領域を差し引いた面であり、
前記第2の仮想面は、前記平衡位置の点を通り、前記ラインが設定される2次元の面に対して垂直方向に伸びる仮想的な仮想ラインと、前記2次元の面上のラインであって、前記平衡位置に移動させた固定点が属する粒界を構成する仮想的な仮想ラインとに基づく面から、当該面のうち前記介在物に属する領域を差し引いた面を前記第2の仮想面として設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の結晶粒解析装置。 - 前記面設定手段は、前記介在物から解放される際の前記固定点が属する粒界を構成する仮想的な第3の仮想面を更に設定し、
前記粒界エネルギー算出手段は、前記介在物から解放される際の前記固定点が属する粒界における第3の粒界エネルギーを更に算出し、
前記固定点処理手段は、前記第2の粒界エネルギーが前記第1の粒界エネルギー未満であり、且つ前記第1の粒界エネルギーと前記第3の粒界エネルギーとの差が閾値未満である場合に、前記固定点を解放する処理を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の結晶粒解析装置。 - 前記固定点が二重点である場合、
前記第3の仮想面は、前記介在物の境界上の点が頂点となり、前記介在物から解放される際の前記固定点が属する粒界を構成する仮想的な仮想ラインが母線となり、且つ、前記平衡位置が底面に含まれる錐体の側面であることを特徴とする請求項5に記載の結晶粒解析装置。 - 前記固定点が三重点である場合、
前記第3の仮想面は、前記介在物の境界上の点を通り、前記ラインが設定される2次元の面に対して垂直方向に伸びる仮想的な仮想ラインと、前記2次元の面上のラインであって、前記介在物から前記介在物の境界上の点に解放された前記固定点が属する粒界を構成する仮想的な仮想ラインとに基づく面から、当該面のうち前記介在物に属する領域を差し引いた面であることを特徴とする請求項5に記載の結晶粒解析装置。 - 前記介在物の境界上の点は、前記固定点を端点とする各ラインで画定される領域のうち、前記平衡位置が存在するライン間の領域における前記介在物の境界であって、当該ライン間のなす角度を二等分する線分との交点であることを特徴とする請求項6又は7に記載の結晶粒解析装置。
- 前記粒界エネルギーを算出する対象を画定する領域であって、前記固定点を含む有効領域を設定する有効領域設定手段を有し、
前記面設定手段は、前記有効領域設定手段により設定された有効領域に基づく大きさを有する仮想面を設定することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の結晶粒解析装置。 - 前記固定点処理手段は、当該固定点を端点とする各ラインで画定される領域のうち、前記平衡位置が存在するライン間の領域における前記介在物の境界であって、当該ライン間のなす角度を二等分する線分との交点の位置に、前記固定点を移動させて解放する処理を行うことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の結晶粒解析装置。
- 前記固定点処理手段は、前記三重点である固定点を解除する際、当該固定点を端点とする各ラインで画定される領域のうち、前記平衡位置が存在するライン間の領域における前記介在物の境界であって、当該ライン間のなす角度を二等分する線分との交点の位置に、前記固定点を移動させて解放すると共に、当該移動させた固定点と結ばれる二重点を前記介在物の中に生成する処理を行うことを特徴とする請求項10に記載の結晶粒解析装置。
- 前記粒界点設定手段により設定された粒界点で発生する駆動力を、その粒界点が属する粒界における単位長さ当たりの粒界エネルギーを用いて演算する駆動力演算手段と、
前記駆動力演算手段により演算された駆動力を用いて、前記粒界点の時間の経過に伴う位置の変化を演算する位置演算手段とを更に有することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の結晶粒解析装置。 - 前記粒界を介して相互に隣接する2つの結晶粒の方位の差分と、単位長さ当たりの粒界エネルギー及び単位面積当たりの粒界エネルギーとの関係を記憶する粒界エネルギー記憶手段と、
前記画像信号に含まれる結晶粒の方位を取得する方位取得手段と、
前記方位取得手段により取得された結晶粒の方位であって、前記粒界を介して相互に隣接する2つの結晶粒の方位の差分に対応する単位長さ当たりの粒界エネルギー及び単位面積当たりの粒界エネルギーを、前記粒界エネルギー記憶手段により記憶された関係から求めて設定する粒界エネルギー設定手段とを有することを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の結晶粒解析装置。 - 前記介在物は、時間の経過に伴う位置の変化をしないものであって、インヒビターであることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の結晶粒解析装置。
- 金属材料における結晶及び当該金属材料に含まれる介在物の画像信号を取得する画像信号取得ステップと、
前記結晶に含まれる結晶粒の粒界の両端点に対応し、且つ当該結晶粒を含む3つの結晶粒と接する三重点が、前記画像信号に基づいて指定されると、その指定された三重点の粒界点を設定する粒界点設定ステップと、
前記粒界点設定ステップにより設定された粒界点であって、同一の粒界上で互いに隣接する2つの粒界点を両端点とするラインを設定するライン設定ステップと、
前記画像信号に基づいて前記介在物が指定されると、その指定された介在物を設定する介在物設定ステップと、
前記ライン設定ステップにより設定されたラインが前記介在物内を通る場合に、当該介在物内に固定点を発生させ、当該固定点を端点とするラインの変更処理を行うライン変更処理ステップと、
前記固定点が属する粒界を構成する仮想的な第1の仮想面と、当該固定点を固定位置から解放し、前記介在物内を除く領域の位置であって粒界エネルギーが最小となる平衡位置に移動させた際の、当該移動させた固定点が属する粒界を構成する仮想的な第2の仮想面とを設定する面設定ステップと、
前記固定点が属する粒界における第1の粒界エネルギーと、前記平衡位置に移動させた固定点が属する粒界における第2の粒界エネルギーとを算出する粒界エネルギー算出ステップと、
前記第2の粒界エネルギーが前記第1の粒界エネルギー未満である場合に、前記固定点を、前記ラインが設定されている2次元の面上に解放する処理を行う固定点処理ステップとを有し、
前記粒界エネルギー算出ステップは、前記面設定ステップにより設定された第1の仮想面の面積と、前記固定点が属する粒界における単位面積当たりの粒界エネルギーとを用いて第1の粒界エネルギーを算出し、
前記面設定ステップにより設定された第2の仮想面の面積と、前記固定点が属する粒界における単位面積当たりの粒界エネルギーとを用いて第2の粒界エネルギーを算出することを特徴とする結晶粒解析方法。 - 金属材料における結晶及び当該金属材料に含まれる介在物の画像信号を取得する画像信号取得ステップと、
前記結晶に含まれる結晶粒の粒界の両端点に対応し、且つ当該結晶粒を含む3つの結晶粒と接する三重点が、前記画像信号に基づいて指定されると、その指定された三重点の粒界点を設定する粒界点設定ステップと、
前記粒界点設定ステップにより設定された粒界点であって、同一の粒界上で互いに隣接する2つの粒界点を両端点とするラインを設定するライン設定ステップと、
前記画像信号に基づいて前記介在物が指定されると、その指定された介在物を設定する介在物設定ステップと、
前記ライン設定ステップにより設定されたラインが前記介在物内を通る場合に、当該介在物内に固定点を発生させ、当該固定点を端点とするラインの変更処理を行うライン変更処理ステップと、
前記固定点が属する粒界を構成する仮想的な第1の仮想面と、当該固定点を固定位置から解放し、前記介在物内を除く領域の位置であって粒界エネルギーが最小となる平衡位置に移動させた際の、当該移動させた固定点が属する粒界を構成する仮想的な第2の仮想面とを設定する面設定ステップと、
前記固定点が属する粒界における第1の粒界エネルギーと、前記平衡位置に移動させた固定点が属する粒界における第2の粒界エネルギーとを算出する粒界エネルギー算出ステップと、
前記第2の粒界エネルギーが前記第1の粒界エネルギー未満である場合に、前記固定点を、前記ラインが設定されている2次元の面上に解放する処理を行う固定点処理ステップとをコンピュータに実行させ、
前記粒界エネルギー算出ステップは、前記面設定ステップにより設定された第1の仮想面の面積と、前記固定点が属する粒界における単位面積当たりの粒界エネルギーとを用いて第1の粒界エネルギーを算出し、
前記面設定ステップにより設定された第2の仮想面の面積と、前記固定点が属する粒界における単位面積当たりの粒界エネルギーとを用いて第2の粒界エネルギーを算出することを特徴とするコンピュータプログラム。
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2008
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