JP5231126B2 - 鋼管杭の製造方法 - Google Patents
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Description
遠心成形法で製造された鋼管杭は、建設現場まで搬送された後に杭打ちされる。建設現場では、鋼管杭の頭部にフーチング等のコンクリート構造物を施工するが、このコンクリート構造物と鋼管杭との接合力を大きくするために、鋼管杭の頭部に複数本の鋼棒が取り付けられている。
そのため、従来例として、鋼管の端部に接合される端板にねじ孔を複数形成し、これらのねじ孔に建設現場でアンカー鉄筋として鋼棒をそれぞれ螺合するもの(特許文献2)がある。
特許文献2の従来例は、遠心成形法よって工場生産されるプレストレスを導入したPC杭において、鋼管の内周面に鋼管と同心円上に円筒状のコンクリート体を設け、このコンクリート体の端面に平板リング状の端板を設け、この端板にねじ孔を形成し、このねじ孔にコンクリート体の端面と端部が当接するように異形鉄筋を螺合する構造である。
しかし、特許文献2の従来例では、平板リング状の端板に異形鉄筋を螺合する構成であり、端板の面積に制限があるので、端板に螺合される異形鉄筋の本数が制限され、必ずしも十分な接合強度を得られるとは限らない。
つまり、遠心成形法では、まず、端板を鋼管の開口端に接合するとともに、この端板に一部を外部に残りを鋼管の内部に露出させた状態で鋼棒を取り付け、この状態で、鋼管を回転させながらコンクリートを鋼管内部に打設するが、端板から鋼管の一部が露出された状態で鋼管が回転するので、鋼管の回転に伴って鋼棒が端板に対して傾いたり、鋼棒自体が変形したりして鋼棒が正しい位置でコンクリートに取り付けることができず、鋼棒の取り扱いに不都合が生じる。さらには、端板から露出した鋼棒は鋼管杭の搬送時に邪魔になる等の不都合が生じる。
そのため、本発明では、鋼管内鋼棒と鋼管外鋼棒とが端板を挟んで略一直線上になるので、建設現場で施工されたコンクリート構造物で生じる力が鋼管外鋼棒から鋼管内鋼棒に伝達され、この鋼管内鋼棒の力が鋼管内のコンクリートに伝達されることになる。そのため、建設現場で施工されるコンクリート構造物と鋼管杭との接合力が大きなものになる。
しかも、本発明では、コンクリート打設工程では、端板に仮止部材を介して鋼管内鋼棒が取り付けられており、鋼管外鋼棒は端板に未だ取り付けられていないから、コンクリート打設工程で、鋼管を回転させても、端板から鋼管外鋼棒が露出することがないので、鋼棒が邪魔となることがなく、製造時の取扱性が向上するとともに、鋼管杭の運搬時にも鋼棒が邪魔になることがない。
本発明では、鋼棒連結工程では、仮止部材をカプラーから取り外し、その取り外したカプラーの部分に鋼管外鋼棒を螺合する構成としてもよく、この場合、仮止部材の端板への取外作業並びにカプラーへの鋼管外鋼棒の取付作業を容易に行うことができる。
この構成では、端板とカプラーとの接合を行った後に、端板と鋼管との接合を行うので、仮止め工程を効率的に実施することができる。これに対して、本発明とは逆の手順、つまり、端板と鋼管とを接合した後に端板にカプラーを取り付ける手順も実施可能である。
この構成では、鋼管外鋼棒が端板から外れた状態で工場から建設現場へ搬送できるので、この建設現場までの搬送作業に際して鋼管外鋼棒が邪魔になることがない。
この構成では、仮止部材が端板に取り付けられた状態で鋼管杭を杭打ちするので、杭打ち作業において鋼管外鋼棒が邪魔になることがないだけでなく、仮止部材で鋼管内鋼棒が鋼管内に保持されているので、杭打ちの衝撃で鋼管内鋼棒が端板からずれることがない。そのため、杭打ち作業を効率的に行うことができる。
この構成では、カプラーを比較的入手が容易で簡易な構造にしたから、鋼管杭を製造するためのコストを低く抑えることができる。
図1及び図2には本実施形態の鋼管杭の製造方法で製造された鋼管杭が示されている。図1は鋼管杭1が建設現場で杭打ちされた状態を示す縦断面図であり、図2は鋼管杭1の平面図である。
図1において、鋼管杭1は、その頭部1Aが地面GLから露出するように建設現場で杭打ちされている。鋼管杭1の頭部1Aにはコンクリート構造物、例えば、フーチングFが設けられている。
金属製鋼管2は、所定の口径、例えば、直径が400mm〜1000mmのパイプ部材である。
上下2枚の端板3は、それぞれ開口3Aが中心に形成された略リング状板であり、これらの2枚の端板3のうち上側に配置された端板3には、周方向に沿って複数個、本実施形態では、12個(図2参照)の貫通孔3Bが形成されている。
このカプラー5は、外周部が略六角柱とされた金属製のナットであり、例えば、鋼種SD95A、SD45、SD390、SD490等の適宜な鋼材からなるナットである。
カプラー5の上端部は端板3の鋼管2が接合される面、つまり、端板3の下面に取り付けられている。
カプラー5の鋼管内には鋼管内鋼棒6が螺合され、カプラー5の鋼管外には鋼管外鋼棒7が螺合されている。これらの鋼管内鋼棒6、カプラー5及び鋼管外鋼棒7は略一直線上となるように配置されている。なお、カプラー5には鋼管内鋼棒6及び鋼管外鋼棒7の端部と螺合する雌ねじ部が内部に形成されているが、この雌ねじ部はカプラー5の軸方向に沿って貫通して形成されているものでもよい。あるいは、カプラー5の中央部に行き止まり部を形成しておき、この行き止まり部に向けて両端から途中まで雌ねじ部を形成するものでもよい。
鋼管外鋼棒7はA種以上の引張強度を有する高強度鉄筋であり、その下端部がカプラー5に螺合される雄ねじ部とされる。
鋼管外鋼棒7は、端板3の貫通孔3Bを挿通するとともに、その上端部にフーチングFとの接合力を強固なものにするためにナット8が螺合され、このナット8の下端面にリング状プレート9が取り付けられている。
端板3の複数の貫通孔3Bにそれぞれ鋼管外鋼棒7が配置されており、これらの鋼管外鋼棒7の上端部にはそれぞれナット8及びリング状プレート9が取り付けられているので、ナット8及びリング状プレート9は端板3の周方向に沿って等間隔に複数、図2では12個配置されている。
[仮止め工程]
図3は仮止め工程を説明するための概略図である。
仮止め工程は端板3に仮止部材10を介して鋼管内鋼棒を仮止めする工程である。
図3(A)に示される通り、まず、カプラー5の一端から途中まで鋼管内鋼棒6を螺合する。
図3(B)(C)に示される通り、端板3に仮止部材10を介して鋼管内鋼棒6を仮止めする。この仮止部材10は先端部側が貫通孔3Bを挿通してカプラー5に螺合するねじ部10Aと、このねじ部10Aに一体固定され端板3に係止する頭部10Bを有する六角ボルトである。
そして、図3(C)に示される通り、仮止部材10のねじ部10Aをカプラー5の他端側に螺合して端板3に仮止めする。
ここで、カプラー5の他端側を端板3に当接した状態を維持するにあたり、作業者が手でカプラー5を保持するものでもよく、簡単な治具を用いてカプラー5を保持するものでもよい。
図4はコンクリート打設工程を説明するための概略図である。
図4(A)に示される通り、予め製造された円形の鋼管2を用意しておき、さらに、図4(B)に示される通り、鋼管2の一端部に、鋼管内鋼棒6が仮止めされた端板3を溶接で接合する。鋼管2の他端部はリング状の端板30と接合する。この端板30は端板3に貫通孔3Bが形成されていないリング状板材である。
ここで使用される装置は、鋼管2の内部にコンクリートスラリーを投入するノズル11と、鋼管2を周方向に回転させるための2本の回転ロール12とを備えた遠心成形装置である。ノズル11は、その先端部分が端板3の開口3Aから鋼管2の内部に挿入されており、その基端部から送られるコンクリートスラリーを先端から鋼管2の内部に供給する。回転ロール12は、その軸方向が鋼管2の軸方向と一致するように配置されており、図示しない回転駆動源で回転されることにより、鋼管2を一方向Pに回転させる。
さらに、所定時間経過すると、図4(E)に示される通り、コンクリートが養生されて鋼管2の内部にコンクリート4が形成されることになる。
以上までの工程は工場で実施される。
[鋼管杭搬送工程]
鋼管内鋼棒6が仮止めされ内部にコンクリート4が設けられた鋼管2を従来と同様にトラック等を用いて搬送する。
[杭打ち工程]
まず、図5(A)に示される通り、建設現場の所定位置に鋼管2を杭打ちする。杭打ちの作業は従来と同様の杭打ち機械(図示せず)やボーリング機械(図示せず)を用い、頭部が地面GLの所定高さになるまで実施する。
[鋼棒連結工程]
図5(B)に示される通り、端板3から仮止部材10を取り外す。仮止部材10はボルトから形成されているので、その頭部10Bをスパナ−等の工具を用いて回転させることで、仮止部材10はカプラー5から取り外される。カプラー5及び鋼管内鋼棒6はコンクリート4に埋設されているので、仮止部材10が取り外されても、カプラー5及び鋼管内鋼棒6が鋼管2の内部でずれることがない。
[コンクリート構造物施工工程]
図5(D)に示される通り、鋼管外鋼棒7は端板3から所定寸法上方に露出した状態とされ、この状態で、鋼管外鋼棒7に近接して鉄筋(図示せず)を配置する。そして、これらの鉄筋と鋼管外鋼棒7との外側を型枠Bで囲い、型枠Bで囲われた部分にコンクリートを現場打ちする。このコンクリートが硬化したなら、型枠Bを外し、これにより、フーチングFが施工される。
(1)鋼管杭1を円形の金属製鋼管2と、この鋼管2の端部に接合される金属製端板3と、鋼管2の内部に設けられた円筒状のコンクリート4と、このコンクリート4の上端部に埋設されたカプラー5及び鋼管内鋼棒6と、カプラー5の鋼管外に取り付けられた鋼管外鋼棒7とを備え、これらの鋼管内鋼棒6、カプラー5及び鋼管外鋼棒7が略一直線上となるように配置したから、建設現場で施工されたフーチングFに地震等で生じる力が鋼管外鋼棒7に伝達されても、この鋼管外鋼棒7から鋼管内鋼棒6及びカプラー5を介して鋼管2の内部のコンクリート4に伝達されることになるため、建設現場で施工されるフーチングFと鋼管杭1との接合力が大きなものになって、建造物の耐震性が向上する。
(3)カプラー5をナットから構成したから、鋼管杭1を簡易な構造として製造コストを低くすることができる。つまり、ナットは、その長さ、内径等が適宜なサイズのものが複数種類予め用意されているので、鋼管杭1の長さ、直径等に応じてナットを適宜選択することで、個別にカプラー5を製造する必要がないので、鋼管杭1自体の製造コストを低いものにできる。
そのため、コンクリート打設工程では、端板3の外部には仮止部材10の一部が露出しているだけで、鋼管外鋼棒7は端板3に未だ取り付けられていないから、鋼管2を回転させても、端板3から鋼管外鋼棒7が露出することによる不具合、つまり、鋼管外鋼棒7が邪魔となることがなく、製造時及び運搬時での鋼管杭の取扱性が向上する。
(6)鋼棒連結工程では仮止部材10をカプラー5から取り外し、このカプラー5の仮止部材10が取り外された上部に鋼管外鋼棒7を螺合したから、仮止部材10の端板3への取外作業並びにカプラー5への鋼管外鋼棒7の取付作業を容易に行うことができる。
例えば、前記実施形態では、端板3とカプラー5との接合を行った後に、端板3と鋼管2との接合を実施したが、本発明では、端板3と鋼管2とを接合した後に端板3にカプラー5を取り付けることにしてもよい。
また、本発明では、鋼棒連結工程を工場で実施することにしてもよい。この場合、鋼管杭1をトラックに搬送する際や、建設現場に杭打ちする際に、搬送するための装置や杭打ちするための装置が鋼管外鋼棒7に干渉しないように留意すればよい。
また、本発明では、カプラー5を必ずしも用いることを要しない。
さらに、鋼管内鋼棒6を鋼管外鋼棒7と同じ材料から形成するものでもよい。鋼管外鋼棒7には必ずしもナットやリング状プレートを設けることを要しない。
Claims (6)
- 開口部を有する端板が円形の鋼管の端部に接合されるとともに前記鋼管の内部にコンクリートが打設された鋼管杭を製造する方法であって、
前記鋼管の端部に接合する端板に仮止部材を介して鋼管内鋼棒を仮止めする仮止め工程と、この仮止め工程で前記鋼管内鋼棒が仮止めされた状態で前記開口部を挿通して前記鋼管内部に先端が挿入されたノズルからコンクリートスラリーを打設するとともに前記鋼管を管周方向に回転させるコンクリート打設工程と、このコンクリート打設工程で打設された前記鋼管内のコンクリートを養生した後に前記仮止部材を取り外し、この取り外した部分に鋼管外鋼棒を連結して前記鋼管内鋼棒と連結固定する鋼棒連結工程とを備え、
前記仮止部材はねじ部の端部に頭部が一体固定されたボルトであり、
前記仮止め工程では、前記端板の前記鋼管が接合される面に、雌ねじを有するカプラーを取り付け、このカプラーの一部に前記鋼管内鋼棒を螺合し、前記カプラーの前記鋼管内鋼棒が螺合されていない残りの部分に前記仮止部材の雄ねじ部を螺合することを特徴とする鋼管杭の製造方法。 - 請求項1に記載された鋼管杭の製造方法において、
前記鋼棒連結工程では、前記仮止部材を前記カプラーから取り外し、このカプラーの前記仮止部材が取り外された部分に前記鋼管外鋼棒を螺合することを特徴とする鋼管杭の製造方法。 - 請求項1に記載された鋼管杭の製造方法において、
前記仮止め工程では、前記端板に前記カプラーを取り付けるとともに前記カプラーに鋼管内鋼棒を螺合し、その後、前記端板を前記鋼管の端部に接合することを特徴とする鋼管杭の製造方法。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載された鋼管杭の製造方法において、
前記仮止め工程及び前記コンクリート打設工程は工場にて実施し、前記鋼棒連結工程は建設現場で実施することを特徴とする鋼管杭の製造方法。 - 請求項4に記載された鋼管杭の製造方法において、
前記鋼棒連結工程は、工場で製造された前記鋼管杭を建設現場に杭打ちした後に実施することを特徴とする鋼管杭の製造方法。 - 請求項1から請求項5のいずれかに記載された鋼管杭の製造方法において、
前記カプラーはナットであることを特徴とする鋼管杭の製造方法。
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