JP5229116B2 - 内燃機関の点火時期制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の点火時期制御装置に関する。
自動車用エンジン等の内燃機関においては、ノックの発生を抑制するための点火時期の遅角を含めて点火時期制御が行われる。
こうした内燃機関の点火時期制御は機関運転状態等に基づき算出される点火時期指令値を用いて行われ、同制御を通じて上記点火時期指令値が減少するほど同機関の点火時期が遅角される。上記点火時期指令値は、機関運転状態に基づき算出されるベース点火時期よりも遅角側に設定された最大遅角点火時期に対し、ノック発生の有無に応じて増減するフィードバック項による補正を加えるとともに、前記フィードバック項に基づき更新される基本学習値による補正を加えることによって算出される(特許文献1参照)。
点火時期指令値の算出に用いられる上記フィードバック項は、ノック発生ありのときには予め定められた遅角更新量分だけ減量されて点火時期を遅角補正し、ノック発生なしのときには予め定められた進角更新量分だけ増量されて点火時期を進角補正するものである。従って、フィードバック項は、ノック発生時に点火時期を直ちに遅角させてノックの抑制を図るとともに、ノック発生のないときには点火時期を進角させて上記点火時期の遅角によって低下した機関出力を可能な限り回復させるための補正項ということになる。
また、点火時期指令値の算出に用いられる上記基本学習値に関しては、機関運転状態に応じて区画された複数の基本学習領域毎に用意されて現在の機関運転状態に対応したものが上記フィードバック項に基づき更新される。こうした基本学習値の更新は、例えば、上記フィードバック項に徐変処理を施した値である徐変値がその基準値を中心とする予め定められた所定範囲内の値となるよう基本学習値を増減させることにより実現される。このように更新された基本学習値は、ノックの発生を抑制すべく点火時期を定常的に補正するための補正項ということになる。
なお、上記点火時期指令値を算出する際に最大遅角点火時期に対し補正を加えるための基本学習値としては、現在の機関運転状態に対応する基本学習領域の基本学習値が用いられる。また、上記最大遅角点火時期に対し基本学習値による補正を加える際には、その基本学習値が上記最大遅角点火時期に対し遅角補正を加える値となることのないよう同基本学習値のガードが行われる。
特開2008−297909公報(段落[0043]〜[0048])
ところで、燃焼室内でのデポジットの付着といった内燃機関の経年劣化が生じると、そのデポジットが高温となって混合気の異常着火の原因となり、内燃機関にノックが発生することとなる。こうした燃焼室内でのデポジットの付着といった内燃機関の経年劣化によるノック発生への影響は、同一の基本学習領域内において、その領域内中における更に細かな機関運転領域によって大きく異なる可能性がある。このため、基本学習領域毎に設定された基本学習値を用いて点火時期の補正を行うとき、同基本学習領域内での機関運転状態によっては上記基本学習値が内燃機関の経年劣化によるノック発生を抑制するうえで不適切な値となるおそれがある。詳しくは、上記ノック発生を抑制するうえで上記基本学習値が大きすぎる値となり、同基本学習値による点火時期の補正を通じてのノック発生の抑制を効果的に行えなくなるおそれがある。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、基本学習領域内における内燃機関の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域で、ノック発生の抑制を効果的に行えなくなることを抑制できる内燃機関の点火時期制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明によれば、基本学習領域内における内燃機関の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域では、複数の多点学習領域が設定されるとともに、それら多点学習領域毎に多点学習値が用意される。そして、現在の機関運転状態が基本学習領域内における内燃機関の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域にあるときには、上記複数の多点学習領域のうち現在の機関運転状態が存在する多点学習領域の多点学習値がフィードバック項に基づき更新される。これにより、基本学習領域内における内燃機関の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域において、そのばらつきに応じて同領域を細分化した多点学習領域毎の多点学習値をそれぞれノック発生を抑制するうえで適切な値とすることができる。そして、基本学習領域内における内燃機関の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域では、最大遅角点火時期に対し、現在の機関運転状態に対応する多点学習領域の多点学習値による補正が加えられ、その上で同多点学習領域の存在する基本学習領域に対応した基本学習値による補正が加えられることとなる。上記のように多点学習値による補正を最大遅角点火時期に対し加えることで、基本学習領域内における内燃機関の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域において、内燃機関でのノック発生を効果的に抑制できなくなることを抑制できる。
なお、上記基本学習値の更新、及びそれを行うためのフィードバック項の増減は、ベース点火時期に対する最大遅角点火時期の遅角量が判定値以上であるときに許可され、同遅角量が上記判定値未満となるときには禁止される。ここで、上記最大遅角点火時期に関しては、内燃機関でノックが発生する限界まで点火時期を進角させたときの同点火時期(以下、ノック限界点火時期という)に応じて設定することが一般的であり、同ノック限界点火時期が進角するほど同じように進角側の値に設定される。一方、ベース点火時期に関しては、内燃機関の出力トルクを最大値とすることの可能な点火時期(以下、MBTという)となるよう算出することが一般的であり、ノック限界点火時期が進角側に移行するほど同ノック限界点火時期に対し大きく遅角した値となる。従って、ベース点火時期に対する最大遅角点火時期の遅角量が小さいということは、内燃機関でのノック発生の可能性が低い状態であることを意味する。このような状態では、フィードバック項の増減及び基本学習値の更新を行ったとしても、それらが無駄になる可能性が高い。こうしたことを回避するため、ベース点火時期に対する最大遅角点火時期の遅角量が判定値未満であるときには、上述したようにフィードバック項の増減及び基本学習値の更新が禁止される。
ところで、多点学習領域においては、多点学習値により最大遅角点火時期が補正されることとなる。詳しくは、多点学習値が正の値である場合には同多点学習値により最大遅角点火時期が進角側に補正され、多点学習値が負の値である場合には同多点学習値により最大点火時期が遅角側に補正される。ここで、多点学習値により最大遅角点火時期が進角側に補正されると、同補正後の最大遅角点火時期におけるベース点火時期に対する遅角量が小さくなる。そして、上記遅角量が判定値未満になると、フィードバック項の増減及び基本学習値の更新が禁止され、更にはフィードバック項の増減に基づく多点学習値の更新も禁止される。このようにフィードバック項の増減及び多点学習値の更新が禁止されると、その後に上記遅角量が判定値以上になってフィードバック項の増減及び多点学習値の更新が再開される可能性が低くなり、上記フィードバック項の増減及び多点学習値の更新を行うことの可能な機関運転領域が狭くなることは避けられない。また、上記のようにフィードバック項の増減及び多点学習値の更新が禁止された多点学習領域において、それらフィードバック項の増減及び多点学習値の更新が再開されないと、同多点学習値が内燃機関におけるノック発生を抑制するうえで適切な値であればよいが、ノック発生の誤検出等に起因して不適切な値になっている場合には、上記多点学習値が不適切な値のままとなって内燃機関でのノック発生を抑制できなくなるおそれがある。
こうした実情を考慮して、請求項1記載の発明では、多点学習領域にあって多点学習値が最大遅角点火時期を進角補正する値であるとき、すなわち同多点学習値が正の値であるときには、同多点学習値による最大遅角点火時期の補正が禁止される。このため、多点学習領域において、多点学習値による最大遅角点火時期の進角側への補正を通じて、同最大遅角点火時期におけるベース点火時期に対する遅角量が判定値未満となることは抑制され、ひいてはフィードバック項の増減及び多点学習値の更新が禁止されることも抑制される。従って、上記のようにフィードバック項の増減及び多点学習値の更新が禁止されることにより、それらフィードバック項の増減及び多点学習値の更新を行うことの可能な機関運転領域が狭くなるという不具合の発生を回避することができる。更に、上記のようにフィードバック項の増減及び多点学習値の更新が禁止される多点学習領域において、その禁止に伴い同多点学習値が内燃機関におけるノック発生を抑制するうえで不適切な値のままとなり、内燃機関でのノック発生を抑制できなくなるという不具合の発生も回避できる。
請求項2記載の発明によれば、各多点学習領域のうち少なくとも最も低負荷側の多点学習領域において、多点学習値が最大遅角点火時期を進角補正する値であるか否かの判断、及び同判断に基づく最大遅角点火時期の多点学習値による補正の禁止が行われる。ここで、ベース点火時期及びノック限界点火時期に関しては、機関低負荷状態となるほどノック限界点火時期に対しベース点火時期が大きく遅角側に位置するようになる傾向がある。このため、ノック限界点火時期と同じような傾向で推移する最大遅角点火時期は機関低負荷状態となるほどベース点火時期に近い値となり、同ベース点火時期に対する最大遅角点火時期の遅角量は機関低負荷状態になるほど小さくなる傾向がある。従って、仮に多点学習値による最大遅角点火時期の進角側への補正が行われるとすると、各多点学習領域のうち最も低負荷側の多点学習領域で上記遅角量が最も判定値未満になり易くなる。しかし、各多点学習領域のうち少なくとも最も低負荷側の多点学習領域において、最大遅角点火時期の多点学習値による進角側への補正が禁止される。このため、上記多点学習領域において、多点学習値による最大遅角点火時期の進角側への補正により、ベース点火時期に対する同最大遅角点火時期の遅角量が判定値未満となることを的確に回避できるようになる。
第1実施形態の点火時期制御装置が適用されるエンジン全体を示す略図。 エンジン負荷の変化に対するノック限界点火時期、MBT、ベース点火時期、及び最大遅角点火時期の推移を示すグラフ。 点火時期指令値を算出するためのフィードバック項及びその徐変値の推移を示すタイムチャート。 多点学習領域以外の基本学習領域での点火時期指令値の算出の概要を示す説明図。 基本学習領域及び多点学習領域を示す説明図。 多点学習領域での点火時期指令値の算出の概要を示す説明図。 多点学習領域での点火時期指令値の算出の概要を示す説明図。 点火時期指令値の算出手順を示すフローチャート。
以下、本発明を自動車用エンジンの点火時期制御装置に具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図1に示されるエンジン1においては、その燃焼室2に吸気通路3を通じて空気が吸入されるとともに、燃料噴射弁4から噴射された燃料が同燃焼室2に供給される。この空気と燃料とからなる混合気に対し点火プラグ5による点火が行われると、同混合気が燃焼してピストン6が往復移動し、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト7が回転する。そして、燃焼後の混合気は排気として各燃焼室2から排気通路8に送り出される。
こうしたエンジン1の点火時期制御装置は、同エンジン1の各種運転制御を実行する電子制御装置26を備えている。この電子制御装置26は、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
電子制御装置26の入力ポートには、以下に示す各種センサが接続されている。
・自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル27の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ28。
・吸気通路3に設けられたスロットルバルブ29の開度(スロットル開度)を検出するスロットルポジションセンサ30。
・エンジン1でのノック発生を検出するノックセンサ31。
・吸気通路3を通じて燃焼室2に吸入される空気の量を検出するエアフローメータ32。
・クランクシャフト7の回転に対応する信号を出力し、エンジン回転速度(機関回転速度)の算出等に用いられるクランクポジションセンサ34。
また、電子制御装置26の出力ポートには、点火プラグ5の駆動回路及びスロットルバルブ29の駆動回路等が接続されている。
そして、電子制御装置26は、上記各種センサから入力した検出信号に基づき、エンジン回転速度やエンジン負荷(エンジン1の1サイクル当たりに燃焼室2に吸入される空気の量)といったエンジン運転状態を把握する。なお、エンジン回転速度はクランクポジションセンサ34からの検出信号に基づき求められる。また、エンジン負荷は、アクセルポジションセンサ28、スロットルポジションセンサ30、及び、エアフローメータ32等の検出信号に基づき求められるエンジン1の吸入空気量とエンジン回転速度とから算出される。電子制御装置26は、エンジン負荷やエンジン回転速度といったエンジン運転状態に応じて、上記出力ポートに接続された各種駆動回路に指令信号を出力する。こうしてエンジン1の点火時期制御等の各種運転制御が電子制御装置26を通じて実施される。
次に、エンジン1の点火時期制御の概要について説明する。
エンジン1の点火時期に関しては、エンジン運転状態等から求められる点火時期指令値STに基づき、同点火時期指令値STが減少するほど遅角側に制御されることとなる。同点火時期指令値STは、エンジン運転状態に基づき算出されるベース点火時期BT、及びエンジン1でのノック発生を抑制するための点火時期の補正量である遅角量AKCSに基づき、以下の式(1)を用いて算出される。
ST=BT−AKCS …(1)
ST :点火時期指令値
BT :ベース点火時期
AKCS:遅角量
式(1)の上記ベース点火時期BTは、標準的な環境条件のもとエンジン1でノックが発生する限界まで点火時期を進角させたときの同点火時期(以下、ノック限界点火時期AKnという)、及び、同じく標準的な環境条件のもとエンジン1の出力トルクを最大値とすることの可能な点火時期(以下、MBTという)を考慮して算出される。なお、上記環境条件としては気温、湿度、大気圧、及びエンジン冷却水温等があげられ、これらの条件に応じてエンジン1でのノックの発生しやすさが変化することとなる。
ここで、上記ノック限界点火時期AKn及びMBTは、エンジン回転速度及びエンジン負荷に基づき可変とされる値であり、エンジン回転速度一定の条件下ではエンジン負荷に基づき図2に示されるように推移する。同図から分かるように、ノック限界点火時期AKn(図中の二点鎖線)、及びMBT(図中の一点鎖線)は共に、エンジン負荷の減少に伴い徐々に進角側の値となるよう推移する。ただし、ノック限界点火時期AKn(図中の二点鎖線)は、MBT(図中の一点鎖線)と比較してエンジン負荷の変化に対し大きく変化する傾向を有しており、通常はMBTよりも進角側の値になるもののエンジン1の高負荷状態ではMBTよりも遅角側の値となる。
式(1)のベース点火時期BTは、エンジン回転速度及びエンジン負荷といったエンジン運転状態に基づき、上記ノック限界点火時期AKnと上記MBTとのうちのより遅角側の値と等しい値となるよう算出される。その結果、算出されるベース点火時期BTは、エンジン回転速度一定の条件のもとでは、エンジン負荷の変化に対し図2に実線で示されるように推移する値となる。これは、エンジン1でのノック発生を抑制しつつ、同エンジン1の出力トルクを可能な限り大きくするためである。
上記遅角量AKCSは、エンジン1の点火時期を制御するうえでのベース点火時期BTに対する遅角量の最大値を表す最大遅角量AKmax、エンジン1でのノック発生の有無に応じて増減するフィードバック項F、及び同フィードバック項Fに基づき更新される基本学習値AG(i) を用いて、以下の式(2)から算出される。
AKCS=AKmax−(AG(i) +F) …(2)
AKmax:最大遅角量
AG(i) :基本学習値
F :フィードバック項
式(2)の最大遅角量AKmaxは、上述したベース点火時期BT、及び、最もノックが発生しやすい環境条件下においてノックを生じさせない最も進角側の点火時期を表す値である最大遅角点火時期AKmfに基づき、以下の式(3)を用いて算出される。
AKmax=BT−AKmf …(3)
BT :ベース点火時期
AKmf :最大遅角点火時期
式(3)の最大遅角点火時期AKmfは、上述したノック限界点火時期AKnからノック余裕代Rを減算した値「AKn−R」である。なお、ここで用いられるノック余裕代Rは、最大遅角点火時期AKmfが上述した意味の値となるよう、予め実験等により設定された固定値である。
上記式(1)は上記式(2)を用いて以下の式(4)のように変形することが可能であり、この式(4)は上記式(3)を用いて以下の式(5)のように変形することが可能である。
ST=BT−AKCS
=BT−{AKmax−(AG(i) +F)}
=BT−AKmax+(AG(i) +F) …(4)
=BT−(BT−AKmf)+(AG(i) +F)
=AKmf+AG(i) +F …(5)
次に、式(5)で用いられるフィードバック項F及び基本学習値AG(i) について詳しく説明する。
上記フィードバック項Fは、ノックセンサ31からの検出信号に基づきノック発生ありの旨判断されたときには予め定められた遅角更新量a分だけ減量されて点火時期を遅角補正し、ノック発生なしの旨判断されたときには予め定められた進角更新量b分だけ増量されて点火時期を進角補正するものである。こうしたフィードバック項Fのノック発生の有無に基づく推移の一例を図3に実線で示す。このように推移するフィードバック項Fは、ノック発生時に点火時期を直ちに遅角させてノックの抑制を図るとともに、ノック発生のないときには点火時期を進角させて上記点火時期の遅角によって低下したエンジン出力を可能な限り回復させるための補正項ということになる。
上記基本学習値AG(i) は、エンジン負荷及びエンジン回転速度といったエンジン運転状態に応じて区画された複数(この例では「2」)の基本学習領域i(i=0、1)毎に用意され、それぞれ電子制御装置26に設けられた不揮発性のRAMに記憶されている。そして、点火時期指令値STの算出に用いられる基本学習値AG(i) としては、現在のエンジン運転状態に対応する基本学習領域iの値が用いられる。また、現在のエンジン運転状態のある基本学習領域iでは、フィードバック項Fに徐変処理を施した値である徐変値Fsmに基づき基本学習値AG(i) の更新が行われる。こうした徐変値Fsmは、上記フィードバック項Fが図3に実線で示されるように推移したとすると、例えば同図に破線で示されるように推移する。
上記基本学習値AG(i) の更新に関しては、例えば、上記徐変値Fsmがその基準値(初期値)を中心とする予め定められた所定範囲H内の値となるよう基本学習値AG(i) を増減させることによって実現される。詳しくは、所定の時間間隔をおいた更新タイミング毎に、徐変値Fsmが上記所定範囲Hから外れているか否かが判断される。そして、上記徐変値Fsmが上記所定範囲Hに対し増加側に外れているときには基本学習値AG(i) が予め定められた進角更新量K1だけ増大され、上記徐変値Fsmが上記所定範囲Hに対し減少側に外れているときには基本学習値AG(i) が予め定められた遅角更新量K2だけ減少される。ちなみに、図3の例においては、タイミングT1以降で徐変値Fsmが上記所定範囲Hに対し減少側に外れており、そのときに上記更新タイミングを迎えると、基本学習値AG(i) が予め定められた遅角更新量K2だけ減少される。以上のように更新される基本学習値AG(i) は、ノックの発生を抑制すべく点火時期を定常的に補正するための補正項ということになる。
図4は、上記フィードバック項F及び上記基本学習値AG(i) 等に基づく点火時期指令値STの算出の概要を示している。同図に示されるように、上記点火時期指令値STは、最大遅角点火時期AKmfに対しフィードバック項F及び基本学習値AG(i) による補正を加えることで算出される。上記最大遅角点火時期AKmfは、ベース点火時期BTから最大遅角量AKmaxを減算した値である。また、最大遅角量AKmaxから基本学習値AG(i) 及びフィードバック項Fの合計値を減算した値は、式(1)の遅角量AKCSとなる。上記フィードバック項Fがノック発生の有無に応じて増減されると、同フィードバック項Fの増減分だけ点火時期指令値STが矢印Y1又は矢印Y2で示されるように増減する。更に、この増減するフィードバック項Fの徐変値Fsmが所定範囲H内の値となるよう基本学習値AG(i) が増減されることにより、同基本学習値AG(i) の更新が実現される。なお、上記最大遅角点火時期AKmfに対し基本学習値AG(i) による補正を加える際には、その基本学習値AG(i) が上記最大遅角点火時期AKmfに対し遅角補正を加える値、すなわち負の値となることのないよう、同基本学習値AG(i) のガードが行われる。
ここで、燃焼室2内でのデポジットの付着などエンジン1の経年劣化が生じると、同エンジン1でノックが発生しやすくなることから、それに基づいて基本学習値AG(i) が減少側の値に更新される。そして、上記更新後の基本学習値AG(i) を用いて点火時期を補正することで、エンジン1の経年劣化によってノックが発生しやすくなることの抑制が図られる。
ところで、燃焼室2内でのデポジットの付着といったエンジン1の経年劣化によるノック発生への影響は、同一の基本学習領域i内において、その領域i内中における更に細かなエンジン運転領域によって大きく異なる可能性がある。この場合、基本学習領域i毎に設定された基本学習値AG(i) を用いて点火時期の補正を行うとき、同基本学習領域i内でのエンジン運転状態によっては上記基本学習値AG(i) がエンジン1の経年劣化によるノック発生を抑制するうえで不適切な値となるおそれがある。詳しくは、上記ノック発生を抑制するうえで、上記基本学習値AG(i) が大きすぎる値となって同ノック発生の抑制を効果的に行うことができなくなるおそれがある。
こうしたことを抑制するため、基本学習領域i内におけるエンジン1の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域に複数の多点学習領域nが設定されるとともに、それら多点学習領域n毎に多点学習値AGdp(n) が用意される。そして、現在のエンジン運転状態が多点学習領域nにあるときには、同多点学習領域nに対応する多点学習値AGdp(n) をフィードバック項Fに基づき更新するとともに式(5)の最大遅角点火時期AKmfの補正に用いる。
この場合、基本学習領域i内におけるエンジン1の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域において、そのばらつきに応じて同領域を細分化した多点学習領域n毎の多点学習値AGdp(n) をそれぞれノック発生を抑制するうえで適切な値とすることができる。そして、上記多点学習領域nにおいては、最大遅角点火時期AKmfに対し、現在のエンジン運転状態に対応する多点学習領域nの多点学習値AGdp(n) による補正が加えられることとなる。上記のように多点学習値AGdp(n) による補正を最大遅角点火時期AKmfに対し加えることで、基本学習領域i内におけるエンジン1の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域において、エンジン1でのノック発生の抑制を効果的に行えなくなることを抑制できる。
次に、上記多点学習値AGdp(n) を考慮に入れた点火時期指令値STの算出の仕方について説明する。
現在のエンジン運転状態が多点学習領域nにあるときには、式(4)の最大遅角量AKmaxに上記多点学習領域nに対応した多点学習値AGdp(n) が反映され、それによって式(4)が以下の式(6)のようになる。
ST=BT−AKmax+AGdp(n) +(AG(i) +F) …(6)
BT :ベース点火時期
AKmax :最大遅角量
AGdp(n) :多点学習値
AG(i) :基本学習値
F :フィードバック項
更に、式(6)は、上記式(3)を用いることにより、以下の式(7)のように変形することが可能である。
ST=BT−AKmax+AGdp(n) +(AG(i) +F)
=BT−(BT−AKmf)+AGdp(n) +(AG(i) +F)
=AKmf+AGdp(n) +AG(i) +F …(7)
BT :ベース点火時期
AKmf :最大遅角点火時期
AGdp(n) :多点学習値
AG(i) :基本学習値
F :フィードバック項
この式(7)の多点学習値AGdp(n) は、上述したように基本学習領域i内におけるエンジン1の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域にエンジン運転状態に応じて同基本学習領域iよりも更に細かく区画された複数の多点学習領域n毎に用意されており、それぞれ電子制御装置26の不揮発性のRAMに記憶されている。これら多点学習値AGdp(n) は、燃焼室2内でのデポジットの付着などエンジン1の経年劣化が生じたとき、その経年劣化によるノック発生への影響のばらつきに対応して点火時期を補正するための補正項である。
図5は、上記基本学習領域i及び多点学習領域nを示したものである。この例では、基本学習領域iとして、エンジン回転速度に応じて二つに区画された基本学習領域i(i=0、1)が設定されている。また、複数の基本学習領域iのうちエンジン回転速度の変化方向について最も低回転側に存在する基本学習領域i(i=0)内において、エンジン負荷の変化方向について低負荷側の領域には、複数の多点学習領域nが設定されている。これは、こうした領域において、エンジン1の経年劣化によるノック発生への影響の度合いのばらつきが大きくなるためである。
上記各多点学習領域nの多点学習値AGdp(n) のうち、エンジン1の運転時に現在のエンジン運転状態のある多点学習領域nに対応したものがフィードバック項Fに基づき更新される。詳しくは、基本学習値AG(i) の更新と同様、フィードバック項Fに徐変処理を施した値である徐変値Fsmが所定範囲H内に収束するよう多点学習値AGdp(n) を増減させることにより、同多点学習値AGdp(n) の更新が実現されるようになる。なお、現在のエンジン運転状態が多点学習領域n内にあるときには、その多点学習領域nの存在する基本学習領域iの基本学習値AG(i) のフィードバック項Fに基づく更新は行われないようにされる。
上記式(7)の多点学習値AGdp(n) としては、現在のエンジン運転状態が複数の多点学習領域n内のいずれかにあるときには、同エンジン運転状態のある多点学習領域nに対応したものが用いられる。また、現在のエンジン運転状態が複数の多点学習領域nのうちのいずれにもないときには、点火時期指令値STが上記式(7)ではなく上記式(5)を用いて算出される。このため、現在のエンジン運転状態が複数の多点学習領域nのうちのいずれにもないときには、点火時期指令値STが多点学習値AGdp(n) を用いずに算出されることになり、点火時期の同多点学習値AGdp(n) による補正も行われなくなる。
図6は、エンジン運転状態が多点学習領域nにあり、同領域nの多点学習値AGdp(n) が負の値であるときの点火時期指令値STの算出の概要を示している。また、図7は、エンジン運転状態が多点学習領域nにあり、同領域nの多点学習値AGdp(n) が正の値であるときの点火時期指令値STの算出の概要を示している。これらの図から分かるように、最大遅角量AKmaxに多点学習値AGdp(n) を反映させるということは、最大遅角点火時期AKmfを多点学習値AGdp(n) 分だけ進角側もしくは遅角側に補正することと同義である。ちなみに、多点学習値AGdp(n) による最大遅角点火時期AKmfの補正後の値は、式(7)の右辺における「AKmf+AGdp(n) 」という項によって表される。従って、多点学習値AGdp(n) が負の値である場合には、同多点学習値AGdp(n) による最大遅角点火時期AKmfの遅角補正により、補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )が例えば図2に破線L2で示される値となる。一方、多点学習値AGdp(n) が正の値である場合には、同多点学習値AGdp(n) による最大遅角点火時期AKmfの進角補正により、補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )が例えば図2に破線L1で示される値となる。
なお、上記基本学習値AG(i) 及び多点学習値AGdp(n) の更新、並びにそれらの更新を行うためのフィードバック項Fの増減は、以下の[1]もしくは「2」の条件の成立をもって実行され、これら[1]の条件の不成立時や[2]の条件の不成立時には実行禁止されるようになっている。
[1]多点学習領域n以外の基本学習領域iにおいて、最大遅角点火時期AKmfのベース点火時期BTに対する遅角量が判定値以上であること。なお、上記最大遅角点火時期AKmfは、式(5)等で用いられる値である。また、上記遅角量は、最大遅角量AKmaxと等しい値となる。
[2]多点学習領域nにおいて、多点学習値AGdp(n) による補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )のベース点火時期BTに対する遅角量が判定値以上であること。なお、上記補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )は、式(7)等で用いられる値である。また、上記遅角量は、上記多点学習値AGdp(n) を反映させた後の最大遅角量(「−AKmax+AGdp(n)」 の絶対値)と等しい値となる。
これら[1]及び[2]の条件における上記遅角量が小さいということは、ノック限界点火時期AKnがベース点火時期BTに対し比較的進角側に位置する状態であり、エンジン1でのノック発生の可能性が極めて低い状態であることを意味する。
ここで、最大遅角点火時期AKmfに関しては、ノック限界点火時期AKnに対しノック余裕代Rだけ減算した値として設定されるため、ノック限界点火時期AKnが進角するほど同じように進角側の値になる。なお、ノック限界点火時期AKnは、エンジン負荷の減少に伴い、図2に二点鎖線で示されるように徐々に進角側の値となってゆく。このため、上記最大遅角点火時期AKmf、及び、多点学習値AGdp(n) による補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )も、エンジン負荷の減少に伴い徐々に進角側の値となってゆく。一方、ベース点火時期BTに関しては、図2に実線で示されるように、エンジン1が高負荷運転以外の運転状態にあるときにはMBT(一点鎖線)と等しい値とされる。このため、エンジン負荷の減少に伴いノック限界点火時期AKn(二点鎖線)及び最大遅角点火時期AKmfが進角側に移行するほど、ベース点火時期BTは上記ノック限界点火時期AKnに対し大きく遅角した値となり、ベース点火時期BTと最大遅角点火時期AKmfとが近い値となる。
従って、上述した[1]及び[2]の条件で用いられる上記遅角量が小さいということは、ノック限界点火時期AKnが比較的進角側にあり、エンジン1でのノック発生の可能性が低い状態であることを意味する。このような状態では、フィードバック項Fの増減及び基本学習値AG(i) や多点学習値AGdp(n) の更新を行ったとしても、それらが無駄になる可能性が高い。こうしたことを回避するため、上記遅角量が判定値未満であって上記[1]の条件の不成立や上記[2]の条件の不成立が生じたには、上述したように基本学習値AG(i) 及び多点学習値AGdp(n) の更新、並びにそれらの更新を行うためのフィードバック項Fの増減が禁止される。なお、上記判定値としては、フィードバック項Fの増減及び基本学習値AG(i) や多点学習値AGdp(n) の更新が無駄に行われることを回避するうえでの最適値となるよう予め実験等により定められた値が用いられる。
次に、多点学習領域nでの多点学習値AGdp(n) による最大遅角点火時期AKmfの補正に伴って生じる不具合、及びその対策について説明する。
多点学習領域nにおいて、多点学習値AGdp(n) が正の値となって同多点学習値AGdp(n) により最大遅角点火時期AKmfが進角補正されると、同補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )が例えば図2の破線L1で示されるようにベース点火時期BTに近い値となる。このため、補正後の最大遅角点火時期のベース点火時期BTに対する遅角量が上記判定値未満となって上記[2]の条件が不成立となり、多点学習値AGdp(n) の更新及びそれ行うためのフィードバック項Fの増減が実行禁止されるおそれがある。
このようにフィードバック項Fの増減及び多点学習値AGdp(n) の更新が実行禁止されると、その後に上記遅角量が判定値以上になってフィードバック項Fの増減及び多点学習値AGdp(n) の更新が再開される可能性が低くなるため、上記増減及び上記更新を行うことの可能なエンジン運転領域が狭くなることは避けられない。なお、上述したフィードバック項Fの増減及び多点学習値AGdp(n) の更新の実行禁止は、各多点学習領域nのうち最もエンジン低負荷側の多点学習領域nで生じ易くなる。これは、図2に示されるように、最大遅角点火時期AKmfはエンジン低負荷領域においてエンジン負荷の減少に伴いベース点火時期BTに近い値となり、上記補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )のベース点火時期BTに対する遅角量はエンジン低負荷領域においてエンジン負荷の減少に伴い小さくなる傾向を有するためである。
また、上記のようにフィードバック項Fの増減及び多点学習値AGdp(n) の更新が禁止された多点学習領域nにおいて、多点学習値AGdp(n) がエンジン1の経年劣化に伴うノック発生を抑制するうえで適切な値になっていればよいが、ノック発生の誤検出等に起因して不適切な値になっている場合には、エンジン1のノック発生を抑制できなくなる。これは、上記のようにフィードバック項Fの増減及び多点学習値AGdp(n) の更新が禁止されると、それら増減及び更新を通じて上記補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )のベース点火時期BTに対する遅角量が判定値以上となって上記[2]の条件が成立することがなくなるためである。このように、[2]の条件が成立しなくなるということは、フィードバック項Fの増減及び多点学習値AGdp(n) の更新が再開されないことを意味し、上記多点学習値AGdp(n) がノック発生を抑制するうえで不適切な値のままとなり、エンジン1でのノック発生を抑制できなくなる。
図8は、上記不具合の回避を目的として実行される点火時期指令値算出ルーチンを示すフローチャートである。この点火時期指令値算出ルーチンは、電子制御装置26を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
同ルーチンにおいては、まず、現在のエンジン運転状態が多点学習領域nにあるか否かが判断される(S101)。ここで否定判定であれば、上記式(5)を用いて点火時期指令値STが算出され(S102)、同点火時期指令値STに基づくエンジン1の点火時期制御が行われる。一方、現在のエンジン運転状態が多点学習領域nにある場合にはステップS101で肯定判定がなされ、ステップS103に進む。このステップS103以降の一連の処理は、上記多点学習領域nに対応した多点学習値AGdp(n) が最大遅角点火時期AKmfを進角補正する値であるとき、同多点学習値AGdp(n) による最大遅角点火時期AKmfの補正を禁止するためのものである。
この一連の処理として具体的には、まず上記多点学習値AGdp(n) が「0」以上であるか否かが判断される(S103)。ここで上記多点学習値AGdp(n) が「0」未満(負の値)である場合には、同多点学習値AGdp(n) が最大遅角点火時期AKmfを遅角補正する値である旨判断され、上記式(6)及び式(7)の「AGdp(n) 」に現在のエンジン運転状態に対応する多点学習値AGdp(n) が代入される(S104)。その後、式(7)を用いて点火時期指令値STが算出され(S106)、同点火時期指令値STに基づくエンジン1の点火時期制御が行われる。一方、ステップS103で上記多点学習値AGdp(n) が「0」以上である旨の判断、すなわち同多点学習値AGdp(n) が最大遅角点火時期AKmfを進角側に補正する値である旨の判断がなされると、上記(6)及び式(7)の「AGdp(n) 」に「0」が代入される(S105)。その後、式(7)を用いて点火時期指令値STが算出され(S106)、同点火時期指令値STに基づくエンジン1の点火時期制御が行われる。
ここで、ステップS105において、式(6)の「AGdp(n) 」に「0」が代入されるということは、式(6)の最大遅角量AKmaxに対する多点学習値AGdp(n) の反映が禁止されることを意味する。また、ステップS105において、式(7)の「AGdp(n) 」に「0」が代入されるということは、式(7)の最大遅角点火時期AKmfに対する多点学習値AGdp(n) による進角補正が禁止されることを意味する。この場合、式(7)において、上記多点学習値AGdp(n) による補正後の最大遅角点火時期を表す項「AKmf+AGdp(n) 」は最大遅角点火時期AKmfと等しくなり、上記補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )が式(7)の「AGdp(n) 」分だけベース点火時期BTに近い値になることがない。このため、上記補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )のベース点火時期BTに対する遅角量が式(7)の「AGdp(n) 」分だけ小さくなり、上記[2]の条件における判定値未満の値となることが抑制される。更に、上記遅角量が判定値未満の値となることに伴い上記[2]の条件が不成立となり、多点学習値AGdp(n) の更新及びそれ行うためのフィードバック項Fの増減が実行禁止されることも抑制される。
このように上記[2]の条件が不成立となって多点学習値AGdp(n) の更新及びフィードバック項Fの増減が禁止されるということが抑制されるため、同禁止によって多点学習値AGdp(n) の更新及びフィードバック項Fの増減を行うことの可能なエンジン運転領域が狭くなるという上記不具合の発生が回避される。更に、上記のように多点学習値AGdp(n) 及びフィードバック項Fの増減が禁止される多点学習領域nにおいて、その禁止に伴い同多点学習値AGdp(n) がエンジン1におけるノック発生を抑制するうえで不適切な値のままとなり、エンジン1でのノック発生を抑制できなくなるという上記不具合の発生も回避される。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)基本学習領域i内におけるエンジン1の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域では、複数の多点学習領域nが設定されるとともに、それら多点学習領域n毎に多点学習値AGdp(n) が用意される。そして、現在のエンジン運転状態が基本学習領域i内におけるエンジン1の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域にあるときには、上記複数の多点学習領域nのうち現在のエンジン運転状態が存在する多点学習領域nの多点学習値AGdp(n) がフィードバック項Fに基づき更新される。これにより、基本学習領域i内におけるエンジン1の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域において、そのばらつきに応じて同領域を細分化した多点学習領域n毎の多点学習値AGdp(n) をそれぞれノック発生を抑制するうえで適切な値とすることができる。そして、上記エンジン1の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域では、最大遅角点火時期AKmfに対し、現在のエンジン運転状態に対応する多点学習領域nの多点学習値AGdp(n) による補正が加えられ、その上で同多点学習領域nの存在する基本学習領域iに対応した基本学習値AG(i) による補正が加えられる。上記のように多点学習値AGdp(n) による補正を最大遅角点火時期AKmfに対し加えることで、基本学習領域i内におけるエンジン1の経年劣化によるノック発生への影響のばらつきが大きい領域において、エンジン1でのノック発生を効果的に抑制できなくなることを抑制できる。
(2)多点学習領域nにあって多点学習値AGdp(n) が最大遅角点火時期AKmfを進角補正する値であるとき、すなわち同多点学習値AGdp(n) が正の値であるときには、同多点学習値AGdp(n) による最大遅角点火時期AKmfの補正が禁止される。すなわち、式(7)の項「AGdp(n) 」に「0」が代入され、式(7)における上記補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )が最大遅角点火時期AKmfと等しくされる。このため、上記補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )のベース点火時期BTに対する遅角量が判定値未満に小さくなることは抑制され、それに伴い上記[2]の条件が不成立となってフィードバック項Fの増減及び多点学習値AGdp(n) の更新が禁止されることも抑制される。従って、上記のようにフィードバック項Fの増減及び多点学習値AGdp(n) の更新が禁止されることにより、それらフィードバック項Fの増減及び多点学習値AGdp(n) の更新を行うことの可能なエンジン運転領域が狭くなるという不具合の発生を回避することができる。更に、上記のようにフィードバック項Fの増減及び多点学習値AGdp(n) の更新が禁止される多点学習領域nにおいて、その禁止に伴い同多点学習値AGdp(n) がエンジン1におけるノック発生を抑制するうえで不適切な値のままとなり、エンジン1でのノック発生を抑制できなくなるという不具合の発生も回避できる。
(3)多点学習値AGdp(n) が最大遅角点火時期AKmfを進角補正する値であるか否かの判断(図8のS103)、及び同判断に基づく最大遅角点火時期AKmfの上記多点学習値AGdp(n) による進角補正の禁止(図8のS105)は、各多点学習領域nのうちすべての領域で行われることから、最も低負荷側の多点学習領域nでも行われる。ここで、上記(1)に記載したフィードバック項Fの増減及び多点学習値AGdp(n) の更新の禁止は、各多点学習領域nのうち最もエンジン低負荷側の多点学習領域nで生じ易くなる。これは、最大遅角点火時期AKmfはエンジン低負荷領域においてエンジン負荷の減少に伴いベース点火時期BTに近い値となり(図2参照)、上記補正後の最大遅角点火時期(AKmf+AGdp(n) )のベース点火時期BTに対する遅角量はエンジン低負荷領域においてエンジン負荷の減少に伴い小さくなる傾向を有するためである。従って、仮に多点学習値AGdp(n) による最大遅角点火時期AKmfの進角側への補正が行われるとすると、各多点学習領域nのうち最も低負荷側の多点学習領域nで上記遅角量が最も判定値未満になり易くなる。しかし、こうした多点学習領域nにおいても、最大遅角点火時期AKmfの多点学習値AGdp(n) による進角側への補正が禁止されるため、同補正により上記遅角量が判定値未満となることを的確に回避できるようになる。
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・多点学習値AGdp(n) が最大遅角点火時期AKmfを進角補正する値であるか否かの判断、及び同判断に基づく最大遅角点火時期AKmfの上記多点学習値AGdp(n) による進角補正の禁止を、各多点学習領域nのうち最も低負荷側の多点学習領域nに限って実行してもよい。また、上記判断及び上記進角補正の禁止を、上記最も低負荷側の多点学習領域nを含む低負荷側の幾つかの多点学習領域nに限って実行してもよい。これらの場合、最大遅角点火時期AKmfの上記多点学習値AGdp(n) による進角補正の禁止が行われない多点学習領域nにおいて、上記進角補正の禁止によりエンジン1の点火時期が必要以上に遅角側に留められてエンジン出力が低下することを回避できる。
・最も低回転側の基本学習領域i内において、低負荷側の領域以外の領域に多点学習領域nを設定してもよい。
・基本学習領域iの合計数や多点学習領域nの合計数を適宜変更してもよい。
1…エンジン、2…燃焼室、3…吸気通路、4…燃料噴射弁、5…点火プラグ、6…ピストン、7…クランクシャフト、8…排気通路、26…電子制御装置、27…アクセルペダル、28…アクセルポジションセンサ、29…スロットルバルブ、30…スロットルポジションセンサ、31…ノックセンサ、32…エアフローメータ、34…クランクポジションセンサ。

Claims (2)

  1. 内燃機関の点火時期を点火時期指令値に基づき同指令値が減少するほど遅角側に制御する点火時期制御装置であって、前記点火時期指令値は、機関運転状態に基づき算出されるベース点火時期よりも遅角側の値に設定された最大遅角点火時期に対し、ノック発生の有無に応じて増減するフィードバック項による補正を加えるとともに、前記フィードバック項に基づき更新される基本学習値による補正を加えることで算出されるものであり、前記基本学習値に関しては、機関運転状態に応じて区画された複数の基本学習領域毎に用意されて現在の機関運転状態に対応する基本学習領域の値が前記フィードバック項に基づき更新されるとともに前記最大遅角点火時期の補正に用いられるものであり、前記ベース点火時期に対する前記最大遅角点火時期の遅角量が判定値以上であるときには前記フィードバック項の増減及び前記基本学習値の更新を許可し、前記遅角量が前記判定値未満となるときには前記フィードバック項の増減及び前記基本学習値の更新を禁止する内燃機関の点火時期制御装置において、
    前記複数の基本学習領域のうちの少なくとも一つの領域内にあって、内燃機関の経年劣化によるノック発生への影響にばらつきが生じる領域に、機関運転状態に応じて区画された複数の多点学習領域が設定されるとともに、それら多点学習領域毎に前記最大遅角点火時期の補正に用いられる多点学習値が用意され、
    前記多点学習値に関しては、現在の機関運転状態が多点学習領域にあるとき、その多点学習領域の値が前記フィードバック項に基づき更新されるとともに前記最大遅角点火時期の補正に用いられるものであり、
    前記多点学習値が前記最大遅角点火時期を進角補正する値であるときには、同多点学習値による前記最大遅角点火時期の補正が禁止される
    ことを特徴とする内燃機関の点火時期制御装置。
  2. 前記多点学習値が前記最大遅角点火時期を進角補正する値であるか否かの判断、及び同判断に基づく前記多点学習値による前記最大遅角点火時期の補正の禁止は、各多点学習領域のうち少なくとも最も低負荷側の多点学習領域にて行われる
    請求項1記載の内燃機関の点火時期制御装置。
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