JP5228343B2 - 車輪支持用複列転がり軸受ユニット及びその製造方法 - Google Patents

車輪支持用複列転がり軸受ユニット及びその製造方法 Download PDF

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Description

この発明の対象となる車輪支持用複列転がり軸受ユニットは、自動車の車輪を懸架装置に対し回転自在に支持する為に利用する。本発明は、この様な車輪支持用複列転がり軸受ユニットの軽量化及び強度の向上を図るものである。
自動車の車輪を懸架装置に対し回転自在に支持する為に、例えば特許文献1〜6に記載されている様に、各種構造の車輪支持用複列転がり軸受ユニットが知られている。図5は、このうちの特許文献1に記載された構造を示している。この図5に示した、従来構造の第1例の車輪支持用複列転がり軸受ユニット1は、ハブ2を構成するハブ本体3及び内輪4と、外輪5と、複数個の転動体6、6とを備える。このうちのハブ本体3の外周面の軸方向外端(軸方向に関して外とは、自動車への組み付け状態で幅方向外寄りとなる側を言い、図1〜7の左側。反対に幅方向中央寄りとなる側を、軸方向に関する内と言い、図1〜7の右側。本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。)寄り部分には、車輪を支持する為のフランジ7を形成している。又、上記ハブ本体3の中間部外周面には外側列の内輪軌道8aを、同じく内端部には外径寸法が小さくなった小径段部9を、それぞれ形成している。そして、この小径段部9に、外周面に内側列の内輪軌道8bを形成した、上記内輪4を外嵌して、上記ハブ2を構成している。又、この内輪4の内端面は、上記ハブ本体3の内端部に形成した円筒部を直径方向外方にかしめ広げる事で形成したかしめ部10により抑え付けて、上記内輪4を上記ハブ本体3の所定位置に固定している。又、このハブ本体3の軸方向外端部で、上記フランジ7よりも軸方向外方に突出した部分に、円筒状のパイロット部11を形成している。上記車輪支持用複列転がり軸受ユニット1の使用時には、このパイロット部11に、ディスク等の制動用回転体、及び、車輪を構成するホイールを外嵌して、これらディスク及びホイールの回転中心と上記ハブ2の回転中心とを一致させる。又、上記外輪5の内周面には複列の外輪軌道12a、12bを形成し、これら両外輪軌道12a、12bと上記両内輪軌道8a、8bとの間に上記各転動体6、6を、両列毎にそれぞれ複数個ずつ設けている。
又、図6は、特許文献5に記載された構造を示している。この従来構造の第2例の車輪支持用複列転がり軸受ユニット1aの場合には、ハブ2の外周面に設けた複列の内輪軌道8a、8bのうち、軸方向外側列の内輪軌道8aの直径を、同内側列の内輪軌道8bの直径よりも大きくしている。又、外輪5の内周面に設けた複列の外輪軌道12a、12bのうち、軸方向外側の外輪軌道12aの直径を、同内側の外輪軌道12bの直径よりも大きくしている。従って、上記両内輪軌道8a、8bと上記両外輪軌道12a、12bとの間にそれぞれ複数個ずつ設けた転動体6、6のピッチ円直径は、上記内輪軌道8a、8b及び上記両外輪軌道12a、12bの直径の差に応じて互いに異なっている。即ち、軸方向外側の列の各転動体6、6(外側列)のピッチ円直径PCDOUT が、軸方向内側の列の各転動体6、6(内側列)のピッチ円直径PCDINよりも大きく(PCDOUT >PCDIN)なっている。
上述した図6に示した様な構造の場合には、外側列のピッチ円直径PCDOUT を大きくできる分、モーメント剛性を大きくして、旋回走行時の走行安定性向上と、車輪支持用複列転がり軸受ユニットの耐久性向上とを図る為の設計が容易になる。一方、内側列のピッチ円直径PCDINを大きくする必要がないので、懸架装置の一部(ナックルの取付孔)を特に大径化する必要はない。従って、この懸架装置部分等を特に大型化しなくても、上記走行安定性、並びに、耐久性向上を図れる。
尚、上述の図6に示した構造では、複列に配置された転動体6、6の直径を等しくしているが、図7に示した車輪支持用複列転がり軸受ユニット1bの様に、外側列の転動体6a、6aの直径を、内側列の転動体6b、6bの直径よりも小さくする構造も、従来から知られている。この様な図7に示した従来構造の第3例の場合には、外側列の転動体6a、6aの数を内側列の転動体6b、6bの数よりも十分に多くして、この外側列の剛性を内側列の剛性よりも高くする程度をより顕著にしている。更に、図示の各例では、転動体として玉を使用しているが、重量の嵩む自動車用の転がり軸受ユニットの場合には、転動体として円すいころを使用する場合もある。
何れの構造の車輪支持用複列転がり軸受ユニット1、1a、1bを造る場合でも、ハブ本体3は、図8に示す様な順番で、中炭素鋼等の金属材料製の素材に鍛造加工を施す事により造る。先ず、焼鈍した長尺材を所定長さに切断する事により、(A)に示す様な、円柱状の素材13を形成する。次いで、この素材13を加熱してから軸方向に押し潰して直径を拡げる据え込み加工により、(B)に示す様な、ビヤ樽形の第一中間素材14を形成する。
その後、この第一中間素材14を、受型と押型とを備えた金型内で塑性変形させる型成形加工を施す事により、(C)に示す様な第二中間素材15とする。この第二中間素材15は、中央部に上記ハブ本体3の軸方向中間部乃至内端部となる柱状部16を、この柱状部16の軸方向端部に、前記フランジ7を含む、上記ハブ本体3の軸方向外端部となる円板部17を、それぞれ有する。
上述の様な第二中間素材15には、更に別の受型と押型とを備えた金型内で塑性変形させる型成形加工を施す事により、(D)に示す様な第三中間素材18とする。この第三中間素材18は、上記フランジ7等、上記ハブ本体3の基本的な形状を備えたものであるが、このフランジ7の外周縁にはバリ19が形成されている。
そこで、このバリ19を除去する為のトリミングや、各部の寸法精度及び形状精度を向上させる為の機械加工を施して、上記ハブ本体3として完成する。
上述の様にして造られるハブ本体3を備えた車輪支持用複列転がり軸受ユニット1、1a、1bの場合、軽量化を図る面から、更には、上記ハブ本体3の強度及び耐久性の確保と軽量化とを両立させる面から、改良の余地がある。この理由に就いて、以下に説明する。
先ず、軽量化の面からは、上記ハブ本体3の軸方向中間部に存在する、余分な肉が問題となる。即ち、上記ハブ本体3の軸方向外端寄り部分は外径が大きくなっており、この部分の重量が嵩む。特に、図6〜7に示す様な、外側列の転動体6、6aのピッチ円直径を内側列の転動体6、6bのピッチ円直径よりも大きくする構造の場合に、この傾向が著しい。即ち、図5に示した構造と図6〜7に示した構造とを比較した場合、両構造は、内側列の転動体6、6bのピッチ円直径は互いに等しい。そして、外側列の転動体6、6aのピッチ円直径は、図6〜7に示した構造が図5に示した構造よりも大きくなっている。又、上記両構造を比較した場合、パイロット部11の外径は、同一寸法のホイールを外嵌支持する必要上、互いに等しい。この為、上記図6〜7に示した構造の場合には、上記ハブ本体3の軸方向外端寄り部分の重量が徒に嵩む程度が著しくなる。
又、上記ハブ本体3の強度及び耐久性の確保と軽量化とを両立させる事は、次の様な理由で難しくなる。即ち、上記ハブ本体3のうちで、上記フランジ7の根本部分は、走行時に車輪から加わるモーメント等が加わる部分である為、大きな強度が要求される。一方、上記ハブ本体3を含む上記車輪支持用複列転がり軸受ユニット1、1a、1bは、懸架装置を構成するばねよりも路面側に設けられる、所謂ばね下荷重である為、乗り心地や走行安定性を中心とする走行性能を向上させる為には、少しでも軽量化する事が望まれる部品である。
これらの事を考慮すれば、上記フランジ7の根本部分の強度を、この根本部分の厚さを大きくする事なく確保する事が望まれる。
上記フランジ7の根本部分の強度確保と軽量化とを両立させる為には、前記素材13を上記ハブ本体3に鍛造加工により成形する過程で、この根本部分の加工量を多くし、鍛錬効果によりこの根本部分の硬度を高める(加工硬化させる)事が効果がある。但し、図5〜7に記載された様な従来の車輪支持用複列転がり軸受ユニット1、1a、1bの場合には、上記フランジ7の根本部分の加工量が必ずしも多くはない。この為、この根本部分の硬度を必ずしも十分に高くできず、この根本部分の強度及び剛性を確保する為には、この根本部分の厚さ寸法を大きくしなければならず、上記車輪支持用複列転がり軸受ユニット1、1a、1bの軽量化を図る面からは不利になる。
又、金属材料に鍛造加工を施した場合、この鍛造加工後の部材には、所謂メタルフローと呼ばれる、金属組織の流れの如きものが現れる。上記ハブ本体3の中間部外周面に設けられる、軸方向外側列の内輪軌道8aの転がり疲れ寿命を確保する面からは、この内輪軌道8aの部分で、上記メタルフローの方向が、この内輪軌道8aの母線の方向に対し平行に近い事が好ましい。これに対して、上記従来の車輪支持用複列転がり軸受ユニット1、1a、1bの場合には、上記軸方向外側列の内輪軌道8a部分で厚さ寸法が変化する程度が著しい為、上記メタルフローの方向と上記内輪軌道8aの母線の方向とのずれが著しくなり、この内輪軌道8aの転がり疲れ寿命を確保する面からは不利になる。
尚、上述の様な問題は、図5に示した一般的な車輪支持用複列転がり軸受ユニット1でも生じ得るが、特に図6〜7に示した様な、軸方向外側列の転動体6、6aのピッチ円直径が軸方向内側列の転動体6、6bのピッチ円直径よりも大きくなった構造で、顕著になり易い。即ち、上記図6〜7に示した車輪支持用複列転がり軸受ユニット1a、1bは、ハブ本体3の軸方向外端部の直径が大きくなる為、重量増大の問題を生じ易いにも拘らず、素材からこのハブ本体3を造る際に、フランジ7の根本部分の加工量を多くしにくい。
特開2004−142722号公報 特開2003−232343号公報 特開2004−108449号公報 特開2004−345439号公報 特開2006−137365号公報 国際公開WO2005/065077
本発明は、上述の様な事情に鑑み、少なくとも軽量化、好ましくは、車輪を支持固定する為のフランジの根本部分の強度及び剛性の確保と軽量化とを両立させる事ができ、更に、必要に応じて軸方向外側列の内輪軌道の転がり疲れ寿命の確保を図り易い、車輪支持用複列転がり軸受ユニット及びその製造方法を実現するものである。
本発明の対象となる車輪支持用複列転がり軸受ユニットは、外輪と、ハブと、複数個の転動体とを備える。
このうちの外輪は、内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時に懸架装置に支持固定される。
又、上記ハブは、外周面の軸方向外端寄り部分に車輪を支持固定する為のフランジを、同じく軸方向中間部及び軸方向内端部に複列の内輪軌道を、このフランジよりも軸方向外方に突出した軸方向外端部に円筒状のパイロット部を、それぞれ有し、使用時に上記車輪と共に回転する。
更に、上記各転動体は、上記両外輪軌道と上記両内輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ、転動自在に設けられている。
特に、請求項1に記載した車輪支持用複列転がり軸受ユニットに於いては、上記ハブの軸方向外端面に開口した凹孔のうちで上記パイロット部よりも軸方向内側に寄った部分のうち上記フランジの径方向内側部分を含む部分の内径が、上記パイロット部の内径よりも大きくなっている。又、このパイロット部の内径よりも内径が大きくなった部分のうちで最も内径が大きい部分を、上記フランジの径方向内側部分に設けている。
この様な請求項1に記載した発明を実施する場合、請求項2に記載した発明の様に、軸方向外側の列の転動体のピッチ円直径が、軸方向内側の転動体のピッチ円直径よりも大きい構造で実施する。
又、上述の様な請求項1〜2に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項3に記載した様に、上記フランジの径方向内側部分を含む部分が、その内径が塑性加工により広げられたものとする。
或いは、上述の様な請求項1〜3に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項4に記載した様に、上記パイロット部の軸方向外端開口部を、蓋体により塞ぐ。
但し、駆動輪用の車輪支持用複列転がり軸受ユニットの場合に好ましくは、請求項5に記載した構成を採用する。即ち、この場合には、フランジに支持固定する車輪が駆動輪であって、ハブの中心部に等速ジョイントの駆動軸をスプライン係合させる為のスプライン孔が設けられている。この様な構造の場合には、上記駆動軸との干渉を防止する必要上、上記請求項4に記載した様な蓋体を設ける事は難しい。そこで、上記凹孔の奥部に嵌合された円輪状の座板により、この凹孔のうちのパイロット部よりも軸方向内側に寄った部分のうち上記フランジの径方向内側部分を含む部分で、内径がこのパイロット部の内径よりも大きくなっている部分の、このパイロット側の開口を塞ぐ。
又、請求項6に記載した車輪支持用複列転がり軸受ユニットの製造方法は、上述の様な、ハブの軸方向外端面に開口した凹孔のうちで上記パイロット部よりも軸方向内側に寄った部分のうち上記フランジの径方向内側部分を含む部分の内径が、上記パイロット部の内径よりも大きくなっており、このパイロット部の内径よりも内径が大きくなった部分のうちで最も内径が大きい部分が、上記フランジの径方向内側部分に設けられている車輪支持用複列転がり軸受ユニットを構成するハブを造る為に、先ず、金属製の素材に鍛造加工を施して、鍛造用の金型を抜き取り可能な形状のパイロット部及び凹孔を設けた中間素材とする。
その後、上記凹孔のうちでこのパイロット部よりも軸方向内側に寄った部分のうち上記フランジの径方向内側部分を含む部分の内周面に、上記パイロット部の内径よりも小さな内径を有する押圧ローラの外周面を押し付け、この押圧ローラを自転させつつ、この押圧ローラの自転軸を上記凹孔に対し、相対的に公転させる事により、この凹孔のうちで上記パイロット部よりも軸方向内側に寄った部分のうち上記フランジの径方向内側部分を含む部分の内径を上記パイロット部の内径よりも大きくすると共に、このパイロット部の内径よりも内径が大きくなった部分のうちで最も内径が大きい部分を上記フランジの径方向内側部分に形成する。
上述の様な請求項6に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項7に記載した様に、上記中間素材の軸方向外端部に、パイロット部の内側と連続する状態でこの中間素材の軸方向外端面に開口し、軸方向外側の内輪軌道の内径側に迄達する、奥部に向う程内径が小さくなる円形凹部を設ける。そして、上記押圧ローラにより、上記パイロット部よりも奥部の内周面からこの円形凹部の内周面で上記軸方向外側の内輪軌道の内径側に至る迄の部分を径方向外側に塑性変形させてこの部分の内径を大きくする。
この様な請求項7に記載した発明を実施する場合に、例えば、請求項8に記載した様に、上記径方向外側に塑性変形させるべき部分の軸方向に関する幅よりも、外周面の軸方向に関する幅が小さい押圧ローラを使用する。そして、この押圧ローラを自転及び公転させつつ軸方向及び径方向に移動させる事で、上記部分を軸方向全体に亙り径方向外側に塑性変形させる。
或いは、請求項9に記載した様に、外周面の軸方向に関する幅が、上記径方向外側に塑性変形させるべき部分の軸方向に関する幅と一致する押圧ローラを使用する。そして、この押圧ローラを軸方向に移動させる事なく自転及び公転させつつ径方向に移動させる事で、上記部分を軸方向全体に亙り径方向外側に塑性変形させる。
上述の様な本発明の車輪支持用複列転がり軸受ユニット及びその製造方法によれば、少なくとも、ハブのうちでパイロット部よりも軸方向内側に寄ったフランジの径方向内側部分を含む部分に存在する、強度確保の面から余分な部分の金属材料を除き、軽量化を図れる。
更には、車輪を支持固定する為のフランジの根本部分の強度及び剛性の確保と軽量化とを両立させる事ができる。即ち、ハブの軸方向外端面に開口した凹孔のうちで上記パイロット部よりも軸方向内側に寄った奥部の内径をこのパイロット部の軸方向外端開口部の内径よりも大きくする分、上記ハブの容積を低減してこのハブの軽量化を図れる。又、上記凹孔のうちで上記パイロット部よりも軸方向内側に寄った奥部の内径を押圧ローラの押し付けによる塑性加工(ローリング加工)により拡げれば、この奥部の周囲に存在する、上記フランジ部の根本部分の硬度が高くなり、上記フランジの根本部分の強度及び剛性の確保を図れる。
又、上記フランジと上記パイロット部とが交差している上記根本部分には、使用時に圧縮応力が加わるが、上記奥部の厚さを小さくする事で、この根本部分に加わる圧縮応力を緩和できる。
尚、上記塑性加工による板厚低減は限られており、しかも、板厚が低減しても金属材料が除かれる訳ではないので、上記塑性加工による板厚低減がそのまま軽量化に結び付く事はない。但し、この塑性加工に伴って上記フランジ部の根本部分の硬度が高くなる分、この根本部分の板厚を(塑性変形により小さくなる分以上に)小さくしても、必要とする強度及び剛性を確保できる。従って、予めこの塑性変形させるべき部分の板厚を小さくしておく事で、軽量化を図れる。
[実施の形態の第1例]
図1〜2は、請求項1〜4、6〜8に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、ハブ2aを構成するハブ本体3aに設けたパイロット部11よりも奥部の内周面から、このハブ本体3aの軸方向外半中心部に形成した円形凹部20の内周面に掛けての部分を径方向外方に凹ませる事により、当該部分に環状凹部21を全周に亙って設けると共に、上記パイロット部11の開口部を蓋体26により塞いでいる点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述の図6に示した従来構造の第2例と同様であるから、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
本例の場合には、ハブ本体3aの軸方向外半中心部に形成した上記円形凹部20の深さ(軸方向寸法)を、前述の図6に示した従来構造よりも深く(軸方向寸法を大きく)している。そして、上記ハブ本体3aの中間部外周面に形成した軸方向外側列の内輪軌道8aの径方向内側に、上記円形凹部20の一部を位置させている。この円形凹部20の内径は、奥部(軸方向内側)に向う程小さくなる。そして、上記パイロット部11よりも奥部の内周面から上記円形凹部20の内周面で上記軸方向外側列の内輪軌道8aの径方向内側に掛けての部分に、径方向外方に凹んだ、上記環状凹部21を、全周に亙って設けている。この様な環状凹部21の軸方向外端部の内径R21は、上記パイロット部11の開口部の内径R11よりも大きく(R21>R11)なっている。
上述の様な環状凹部21を形成する為に本例の場合には、図2に示す様に、この環状凹部21の軸方向に関する幅W21よりも外周面の軸方向に関する幅W22が小さい(W21>W22)、押圧ローラ22を使用している。上記環状凹部21を形成する場合には、この押圧ローラ22を、図2に矢印A、Bで示す様に自転及び公転させつつ、塑性変形させるべき部分に倣って、同図に矢印Cで示す様に軸方向及び径方向に移動させる。そして、上記環状凹部21を形成すべき部分を、軸方向全体に亙り、径方向外側に塑性変形させる。尚、上記公転の為には、上記ハブ本体3a側を回転させても良い。
上記図2を参照しつつ、より詳しく説明する。先ず、前述の図8に示す様にして行なう鍛造加工により、上記図2の下半部に示す様な中間素材23を造る。この中間素材23は、軸方向中間部乃至軸方向外端寄り部分で上記環状凹部21を形成すべき部分が、この環状凹部21の加工後の状態よりも径方向内方に存在する(当該部分の直径が小さい)。この様な中間素材23は、受型24と抑え型25とから成る、分割型の成形金型内にセットして固定した状態で、図2の上半部に示す様に、上記押圧ローラ22により、上記軸方向中間部乃至軸方向外端寄り部分を径方向外方に押圧する。この結果、当該部分が軸方向全体に亙り径方向外側に塑性変形して、当該部分の内周面に上記環状凹部21が形成されると同時に、当該部分の外周面に、上記受型24の内周面の形状が転写される。この受型24の内周面は、得るべきハブ本体3aの外周面形状に見合う形状とされているので、上記環状凹部21を形成した後の状態では、軸方向中間部乃至軸方向外端寄り部分の外周面が所定の形状となった、上記ハブ本体3aを得られる。
この様にして造られた、このハブ本体3aの軸方向中間部乃至軸方向外端寄り部分は、上記環状凹部21の加工時に加工量(塑性変形量)が多くなり、加工硬化の程度が高くなる為、硬度が向上し、厚さ寸法が小さくても、強度及び剛性が高くなる。又、図2の下半部と上半部とを比較すれば明らかな通り、上記環状凹部21の軸方向外端部でフランジ7の根本部分の加工量が特に多くなるので、このフランジ7の根本部分の強度及び剛性を十分に高くできる。この為、必要とする強度及び剛性を確保しつつ、上記ハブ本体3aを含む前記ハブ2aの容量を低減して、このハブ2aの軽量化を図れる。
又、上記ハブ本体3aの軸方向中間部で軸方向外側列の内輪軌道8aを設けた部分の厚さ寸法の変化を小さく抑えられる。この為、図8の(A)に示す様な素材13から上記中間素材23を造り、更にこの中間素材23に上記押圧ローラ22によるローリング加工を施して上記ハブ本体3aとする過程で、上記軸方向外側列の内輪軌道8aを設けた部分のメタルフローの方向を、この内輪軌道8aの母線の方向に対し平行に近くできる。この為、この内輪軌道8aの転がり疲れ寿命の確保を図り易くなる。更に、上記フランジ7と前記パイロット部11とが交差している、このフランジ7の根本部分には、使用時に車輪から加わるモーメントにより、圧縮応力が加わる。本例の場合には、前記環状凹部21を形成した分、上記根本部分の厚さを、図2の下半部から上半部に示す様に小さくする事で、この根本部分に加わる圧縮応力を緩和できる。
上述の様に、上記環状凹部21を設ける事で、必要とする強度及び剛性を確保しつつ上記ハブ2aの軽量化を図れるが、そのままでは、上記環状凹部21に泥水等の異物が溜まり、このハブ2aの防錆を図る面等から好ましくない。この為、本例の場合には、前記パイロット部11の開口部を前記蓋体26により密封して、上記環状凹部21に異物が溜まらない様にしている。
[実施の形態の第2例]
図3は、請求項1〜4、6、7、9に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、中間素材23の軸方向中間部乃至外端寄り部分を径方向外方に塑性変形させる為の押圧ローラ22aとして、軸方向寸法が大きなものを使用している。この押圧ローラ22aの外周面の母線形状は、加工すべき環状凹部21の母線形状に合致している。この様な押圧ローラ22aにより、上記中間素材23の軸方向中間部乃至外端寄り部分を径方向外方に塑性変形させつつ、上記環状凹部21を形成するには、上記押圧ローラ22aを軸方向に移動させる事なく自転及び公転させつつ、上記中間素材23の径方向に移動させる事で、上記中間素材23の軸方向中間部乃至外端寄り部分を軸方向全体に亙り径方向外側に塑性変形させる。その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
尚、例えば図6〜7に示した構造で、円形凹部20の奥部で、フランジ7の根元部分よりも更に軸方向内側に寄った部分の内周面部分に存在する金属材料を、旋削等の削り加工により除去する事で、ハブ本体3の軽量化を図る事もできる。
[実施の形態の第3例]
図4は、請求項1、2、5に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例は、本発明を駆動輪の為の車輪支持用複列転がり軸受ユニットに適用する場合に就いて示している。即ち、ハブ2bの外周面に設けたフランジ7に支持固定する車輪が駆動輪(FR車、MR車の後輪、FF車の前輪、4WD車の全車輪)であって、上記ハブ2bを構成するハブ本体3bの中心部に、等速ジョイント27の駆動軸28をスプライン係合させる為のスプライン孔29が設けられている。この様な構造の場合には、上記駆動軸28の先端部との干渉を防止する必要上、前述の図1に示した、実施の形態の第1例の構造に組み込んだ様な蓋体26を設ける事は難しい。但し、何らの対策も施さない場合には、パイロット部11aにより囲まれた円形凹部20aの奥部内周面に形成した環状凹部21aに、泥水等の異物が溜まり、上記ハブ2bの防錆を図りにくくなる。尚、本例の構造の様なハブ2bは、炭素(C)を0.3〜0.6重量%含む中炭素鋼、或いは、炭素を0.6重量%以上含む高炭素鋼により造る。又、上記環状凹部21aは、切削加工により造る。
そこで本例の場合には、上記円形凹部20aの奥部に座板30を、締り嵌めで嵌合し、この座板30により、上記環状凹部21aの内径側開口を全周に亙り塞ぐ事で、この環状凹部21a内に異物が入り込まない様にしている。上記座板30は、炭素鋼、軸受鋼等、熱処理により上記ハブ本体3bのうちで少なくとも上記円形凹部20aの奥端面部分よりも表面硬度を高くされた金属板で、円輪状に造られている。この様な座板30の自由状態での外径は、この円形凹部20aの奥端部の自由状態での内径よりも僅かに大きくしている。又、軸方向に関する厚さT20は、上記環状凹部21aの内径側開口の軸方向に関する幅W21よりも大きく(T20>W21)している。又、上記円形凹部20aの奥端面31は平坦面として、この奥端面31と上記座板30の軸方向内側面とを広い面積で当接させられる様にしている。又、この座板30の内径は、上記駆動軸28の外径(雄スプラインの歯先円の直径)よりも大きくして、この駆動軸28を上記座板30に挿通自在としている。
本例の場合には、上述の様な寸法、形状、性状を有する上記座板30を上記円形凹部20aの奥端部に、締り嵌めで押し込み、この座板30の軸方向内側面と上記奥端面31とを突き合わせている為、次の(1) 〜(3) に示す様な作用・効果を得られる。
(1) 上記円形凹部20aの奥端部内周面に設けた上記環状凹部21a内に異物が溜まる事を防止し、この異物によって上記ハブ本体3bが錆びる事を防止できる。そして、このハブ本体3bが錆びる事に伴う、耐久性低下や、異音、振動等の発生防止を図れる。
(2) 上記円形凹部20aの奥端面31部分を、特に焼き入れ硬化しなくても、上記駆動軸28の先端部に螺着したナット32の緩み止めを図れる。
即ち、このナット32の座面が軟らかい場合には、この座面が塑性変形し、この座面とナット32との突き合わせ面の当接圧が低下して、このナットが緩む可能性がある。この様な原因でのナット32の緩み止めを図る為に、上記奥端面31を焼き入れ硬化する事も考えられる。但し、この奥端面31部分の硬化層と、外側列の内輪軌道8a部分に形成した硬化層とが繋がると、上記ハブ本体3bの靱性を確保する事が難しくなる。上記奥端面31部分の硬化層を、ショット・ピーニングにより形成すれば、この奥端面31部分の硬化層と上記内輪軌道8a部分に形成した硬化層とが繋がる事を防止できるが、この奥端面31部分の硬化層の形成作業が面倒になる。
これに対して、本例の構造に組み込む上記座板30として、硬度が高いものを使用すれば、上記奥端面31部分に硬化層を形成しなくても、上述の様な原因でのナット32の緩み止めを図れるので、低コストで、しかも、上記ハブ本体3bの靱性を十分に確保できる構造を実現できる。
(3) 上記円形凹部20aの奥部に上記座板30が圧入されている為、パイロット部11aに作用するラジアル方向の力を、この力の作用点及びその近傍部分だけでなく、上記座板30を介してこのパイロット部11aの他の部分でも支承できる。この為、例えば、このパイロット部11aに大きなモーメントが加わった場合にも、このパイロット部11aの一部(作用点)に大きな応力が発生する事を防止して、このパイロット部11aの変形を抑えられる。言い換えれば、このパイロット部11aの内径変化を抑えて、このパイロット部11aの強度及び剛性を向上させる事ができる。
尚、本例の様に、本発明を駆動輪の為の車輪支持用複列転がり軸受ユニットに適用する場合に、ハブ2bを構成すべくハブ本体3bに内輪4を結合固定する為には、必ずしもこのハブ本体3bの軸方向内端部にかしめ部10を形成する必要はない。単に上記ハブ本体3bの軸方向内端部に上記内輪4を外嵌しておくだけでも、上記ハブ2bと等速ジョイント27とを結合固定するのに伴って、上記内輪4を上記ハブ本体3bに対し、不離に結合できる。又、図4には、複列に配置した転動体6、6のピッチ円直径を互いに同じとした構造を示したが、前述した実施の形態の第1〜2例と同様に、外側列の転動体のピッチ円直径を、内側列の転動体のピッチ円直径よりも大きくしても良い事は勿論である。
本発明の実施の形態の第1例を示す半部断面図。 ハブ本体の内周面を加工する状態の第1例を示す断面図。 同第2例を示す断面図。 本発明の実施の形態の第3例を示す断面図。 従来構造の第1例を示す半部断面図。 同第2例を示す断面図。 同第3例を示す断面図。 ハブ本体の加工方法を工程順に示す斜視図。
1、1a、1b 車輪支持用複列転がり軸受ユニット
2、2a、2b ハブ
3、3a、3b ハブ本体
4 内輪
5 外輪
6、6a、6b 転動体
7 フランジ
8a、8b 内輪軌道
9 小径段部
10 かしめ部
11、11a パイロット部
12a、12b 外輪軌道
13 素材
14 第一中間素材
15 第二中間素材
16 柱状部
17 円板部
18 第三中間素材
19 バリ
20、20a 円形凹部
21、21a 環状凹部
22、22a 押圧ローラ
23 中間素材
24 受型
25 抑え型
26 蓋体
27 等速ジョイント
28 駆動軸
29 スプライン孔
30 座板
31 奥端面
32 ナット

Claims (9)

  1. 内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時に懸架装置に支持固定される外輪と、外周面の軸方向外端寄り部分に車輪を支持固定する為のフランジを、同じく軸方向中間部及び軸方向内端部に複列の内輪軌道を、このフランジよりも軸方向外方に突出した軸方向外端部に円筒状のパイロット部を、それぞれ有し、使用時に上記車輪と共に回転するハブと、上記両外輪軌道と上記両内輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ転動自在に設けられた転動体とを備えた車輪支持用複列転がり軸受ユニットに於いて、
    上記ハブの軸方向外端面に開口した凹孔のうちで上記パイロット部よりも軸方向内側に寄った部分のうち上記フランジの径方向内側部分を含む部分の内径が、上記パイロット部の内径よりも大きくなっており、このパイロット部の内径よりも内径が大きくなった部分のうちで最も内径が大きい部分が、上記フランジの径方向内側部分に設けられている
    車輪支持用複列転がり軸受ユニット。
  2. 軸方向外側の列の転動体のピッチ円直径が、軸方向内側の列の転動体のピッチ円直径よりも大きい、請求項1に記載した車輪支持用複列転がり軸受ユニット。
  3. フランジの径方向内側部分を含む部分の内径が塑性加工により広げられている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した車輪支持用複列転がり軸受ユニット。
  4. パイロット部の軸方向外端開口部が、蓋体により塞がれている、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した車輪支持用複列転がり軸受ユニット。
  5. フランジに支持固定する車輪が駆動輪であって、ハブの中心部に等速ジョイントの駆動軸をスプライン係合させる為のスプライン孔が設けられており、凹孔のうちのパイロット部よりも軸方向内側に寄った部分のうち上記フランジの径方向内側部分を含む部分で、内径が上記パイロット部の内径よりも大きくなっている部分の、このパイロット側の開口が、上記凹孔の奥部に嵌合された円輪状の座板により塞がれている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した車輪支持用転がり軸受ユニット。
  6. 内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時に懸架装置に支持固定される外輪と、外周面の軸方向外端寄り部分に車輪を支持固定する為のフランジを、同じく軸方向中間部及び軸方向内端部に複列の内輪軌道を、このフランジよりも軸方向外方に突出した軸方向外端部に円筒状のパイロット部を、それぞれ有し、使用時に上記車輪と共に回転するハブと、上記両外輪軌道と上記両内輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ転動自在に設けられた転動体とを備え、上記ハブの軸方向外端面に開口した凹孔のうちで上記パイロット部よりも軸方向内側に寄った部分のうち上記フランジの径方向内側部分を含む部分の内径が、上記パイロット部の内径よりも大きくなっており、このパイロット部の内径よりも内径が大きくなった部分のうちで最も内径が大きい部分が、上記フランジの径方向内側部分に設けられている車輪支持用複列転がり軸受ユニットの製造方法であって、
    金属製の素材に鍛造加工を施して、鍛造用の金型を抜き取り可能な形状のパイロット部及び凹孔を設けた中間素材とした後、この凹孔のうちでこのパイロット部よりも軸方向内側に寄った部分のうち上記フランジの径方向内側部分を含む部分の内周面に、上記パイロット部の内径よりも小さな内径を有する押圧ローラの外周面を押し付け、この押圧ローラを自転させつつ、この押圧ローラの自転軸を上記凹孔に対し、相対的に公転させる事により、この凹孔のうちで上記パイロット部よりも軸方向内側に寄った部分のうち上記フランジの径方向内側部分を含む部分の内径を上記パイロット部の内径よりも大きくすると共に、このパイロット部の内径よりも内径が大きくなった部分のうちで最も内径が大きい部分を上記フランジの径方向内側部分に形成する、車輪支持用複列転がり軸受ユニットの製造方法。
  7. 中間素材の軸方向外端部に、パイロット部の内側と連続する状態でこの中間素材の軸方向外端面に開口し、軸方向外側の内輪軌道の内径側に迄達する、奥部に向う程内径が小さくなる円形凹部を設け、押圧ローラにより、上記パイロット部よりも奥部の内周面からこの円形凹部の内周面で上記軸方向外側の内輪軌道の内径側に至る迄の部分を径方向外側に塑性変形させてこの部分の内径を大きくする、請求項6に記載した車輪支持用複列転がり軸受ユニットの製造方法。
  8. 径方向外側に塑性変形させるべき部分の軸方向に関する幅よりも、外周面の軸方向に関する幅が小さい押圧ローラを使用し、この押圧ローラを自転及び公転させつつ軸方向及び径方向に移動させる事で、上記部分を軸方向全体に亙り径方向外側に塑性変形させる、請求項7に記載した車輪支持用複列転がり軸受ユニットの製造方法。
  9. 外周面の軸方向に関する幅が、径方向外側に塑性変形させるべき部分の軸方向に関する幅と一致する押圧ローラを使用し、この押圧ローラを軸方向に移動させる事なく自転及び公転させつつ径方向に移動させる事で、上記部分を軸方向全体に亙り径方向外側に塑性変形させる、請求項7に記載した車輪支持用複列転がり軸受ユニットの製造方法。
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