JP5227248B2 - 防振装置およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、例えば、自動車用のトルクロッドやエンジンマウント等の防振装置、特には、耐久性に優れた、製造容易な防振装置およびその製造方法に関するものである。
防振装置としては、金属製の中心部材を、ゴム部材を介して樹脂製の外筒部材に連結してなるものがあり、例えば、トルクロッドでは、一対の、それぞれの中心部材の外周面にゴム部材を介して連結した一対の外筒部材の相互を、アーム部材によって一体的に連結してなる。
このような防振装置の製造方法としては、例えば、はじめに、中心部材の周りにゴム部材を加硫接着させて一体化し、次いで、中心部材に加硫接着させたゴム部材の外周面に対する脱脂等の洗浄処理を行うとともに、プライマー処理のような活性化処理を施し、そして、そのゴム部材の外周面に接着剤を塗布した後、ゴム部材の周りに、ポリアミド樹脂等からなる外筒部材を射出成形して、ゴム部材と外筒とを、接合中間層としての接着剤の接着力によって一体化させて製造する方法がある。
しかるに、このような防振装置では、ゴム部材と外筒部材とを、接着剤層の作用によって固着させていることから、複数の処理工程が必要となって作業工数が増加することになるという問題があった。
この一方で、ゴム部材が小型であることから、そのゴム表面に接着剤を適切に塗布することが難しいという他の問題もあった。
そこで、例えば特許文献1には、支軸部材と、該支軸部材の外側に所定距離を隔てて配された筒部材との間にゴム弾性体を介装し、その支軸部材と筒部材とを該ゴム弾性体で連結した防振装置において、前記ゴム弾性体をスチレン−ブタジエン系ゴム組成物によって構成すると共に、該ゴム弾性体の外周面に、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物によって構成された取付スリーブを加硫接着する一方、前記筒部材を合成樹脂材料によって形成して、該筒部材の取付孔に前記取付スリーブを、例えば圧入、ストッパ部または緩衝ゴム等の機械的構造等によって、固着させてなる防振装置が開示されている。
しかるに、特許文献1に記載の防振装置は、外筒部材に高耐久性のナイロン等のポリアミド樹脂を用いる場合、高強度を要する防振装置では、ゴム弾性体と取付スリーブとを機械的構造等によって、固着させることにより、それらの界面接着強度が劣るおそれがあった。
特開平8−261263号公報
そこで本発明は、ゴム部材に接着剤を塗布することなく製造することができ、外筒部材と接合中間層との接合強度および接合耐久性を大きく高めることができる防振装置およびその製造方法を提供する。
この発明にかかる防振装置は、中心部材を、それの周りを囲繞するゴム部材および接合中間層を順次に介して、樹脂製の外筒部材に固着させてなるものであって、ゴム部材の外周面と外筒部材の内周面との間の接合中間層を、外筒部材の内周面に設けた複数の切欠き内へ入り込む多点注入層とするとともに、そのゴム部材をスチレン−ブタジエン系ゴムにより、接合中間層を、ポリフェニレンエーテル樹脂または、ポリフェニレンエーテルエラストマーにより構成して、それらの両者を加硫接着させてなるものである。
ここで、「多点注入」とは、複数個所のゲートからポリフェニレンエーテル樹脂を同時に注入することをいう。
このような防振装置においてより好ましくは、外筒部材を、ポリアミド樹脂と強度部材とを主体として構成する。
以上のような防振装置の製造方法は、特に、中心部材を、それの周りを囲繞するゴム部材および接合中間層を順次に介して、樹脂製の外筒部材に固着させてなる防振装置を製造するに当り、外筒部材の内周に複数の切欠きを設け、各切欠きと対応する位置からポリフェニレンエーテル樹脂またはエラストマーを多点注入して、外筒部材の内周面を所要の厚みで覆った状態で、その外筒部材に融着接合した接合中間層を形成し、次いで、この接合中間層と中心部材との間へ、スチレン−ブタジエン系ゴムからなるゴム材料を注入して成形するとともに加硫させて、そのゴム材料を、中心部材および接合中間層の両者に加硫接着させるにある。
本発明では、ゴム部材の外周面と外筒部材の内周面との間の接合中間層を、外筒部材の内周面に設けた複数の切欠き内へ入り込む多点注入層とすることにより、外筒部材と接合中間層との間の接着面積が増加することに加え、その接合中間層の、切欠きへの入り込みによる、機械的掛合力の増加することにより外筒部材と接合中間層との接合力を大きく高めることができる。この一方で、接合中間層を多点注入層とすることで、ポリフェニレンエーテルの必要量の注入を、短時間で、能率的にしかも十分均等に行うことができる。
またここでは、ゴム部材をスチレン−ブタジエン系ゴムにより、接合中間層を、ポリフェニレンエーテル樹脂または、ポリフェニレンエーテルエラストマーにより構成して、それらの両者を加硫接着することにより、拡散接着により、接着剤なしに、十分強固に接着させることができる。
本発明の防振装置の一の実施形態のトルクロッドを示す斜視図である。 (a)〜(c)は、本発明の実施形態であるトルクロッドの製造方法の一の実施形態を示す図である。 本発明の防振装置の他の実施形態のエンジンマウント等として使用される液体封入式の防振装置の要部を示す縦断面図である。 (a)〜(c)は、本発明の実施形態のエンジンマウント等として使用される液体封入式の防振装置の製造方法の一の実施形態を示す図である。
以下に、図面を参照しながら本発明の防振装置を詳細に説明する。
図1は、本発明の防振装置の一の実施形態のトルクロッドを示す斜視図である。
図示のトルクロッド1は、円筒形状の、一対の金属製中心部材2と、これら中心部材2の周りを囲繞するゴム部材3と、樹脂材料からなる外筒部材4と、これら外筒部材4を連結するアーム部材5とを具えてなる。
なおここでは、ゴム部材3を、これらの中心部材2に、加硫接着によって、直接的に固着させてなる。
このゴム部材3により、例えば中心部材側から外筒部材側への回転駆動時の振動等の伝達を吸収、緩和等することができる。
この場合、外筒部材4は、アーム部材5の作用下で、両中心部材2との相互の離隔方向の力および近接方向の力等に対する抗力を発揮することができる。
ところで、このトルクロッド1では、ゴム部材3の外周面と外筒部材4の内周面との間の接合中間層6を、外筒部材4の内周面に設けた複数の切欠き、図では90度の間隔をおく四個所の切欠き7内へ入り込む多点注入層とする。
そしてまた、そのゴム部材3をスチレン−ブタジエン系ゴムにより、接合中間層6を、ポリフェニレンエーテル樹脂またはエラストマーにより構成して、それらの両者を拡散接着によって加硫接着させて、二層の異材で構成する。接合中間層6と、外筒部材4とは融着接合する。
接合中間層6に用いられるポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテルの共重合体としては、例えば、2,6−ジメチルフェノールと、2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体または2,6−ジフェニルフェノールとの共重合体またはo−クレゾールとの共重合体等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルだけではなく、ポリフェニレンエーテルをスチレン系樹脂やポリアミド樹脂等とアロイ化した変成ポリフェニレンエーテルも含むことができる。
本発明では、各中心部材2の周りに加硫接着されるゴム部材3と接合中間層6とを、接着剤なしの直接的な拡散接着によって、十分強固に接着させることにより、ゴム部材3の、外筒部材4からの不測の抜け出しを効果的に防止して、耐久性を大きく向上等させることができる。
このような防止装置において、さらに好ましくは、接合中間層6の厚みを調整することで、接合中間層6とゴム部材3との接着性を向上するとともに、外筒部材自体の耐久性を発揮することができる。
また好ましくは、外筒部材4を、ポリアミド樹脂と強度部材とを主体として構成する。
この構成により、ポリフェニレンエーテル樹脂等からなる接合中間層6との接着強度を確保しつつ、外筒部材4に要求される剛性を確保することができる。
このポリアミド樹脂としては、ナイロン、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等が挙げられ、特に強度の点から6,6ナイロンが好ましい。
また強度部材としては、例えばガラス繊維や炭素繊維等の繊維状強化材が挙げられる。
図2(a)〜(c)は、本発明の実施形態であるトルクロッドの製造方法の一の実施形態を示す図である。
上述したようなトルクロッド1は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、図2(a)に示すように、一対の円環状の外筒部材4のそれぞれをアーム部材5によって連続してなる形態のブラケット8を射出成形する。このブラケット8は、例えば6,6ナイロンと50重量%ガラスからなる構成とすることができる。
この場合、外筒部材4の内周面には、後に接合中間層6を注入するための、図では120°の間隔をおいた、三個所に切欠き7をそれぞれ設ける。
次に、図2(b)に示すように、ポリフェニレンエーテル樹脂またはエラストマーを、ブラケット8のそれぞれの切欠き7と対応する位置から多点注入することで、外筒部材4の内周面を所要の厚さで覆う、例えば二色成形で、ポリフェニレンエーテル樹脂を内周面に二段階に分けて、接合中間層6を成形する。
その後は、図2(c)に示すように、接合中間層6を形成したブラケット8をゴム型に装着するとともに、外筒部材4の中心付近に中心部材2を設置した状態で、例えば天然ゴム/スチレン−ブタジエン共重合体ゴムからなるゴム材料を、中心部材2の周りに注入して成形する。続いて、そのゴム材料を加硫して、それを、中心部材2および接合中間層6の両者に加硫接着したゴム部材3とする
このような製造方法でトルクロッド1を製造することで、スチレン‐ブタジエン系ゴムとポリフェニレンエーテルとの、優れた接着力をもって接着し得る拡散反応、および中心部材2とゴム部材3との加硫接着により、ゴム部材3に接着剤を塗布等するための工程の必要なしに、中心部材2と、ゴム部材3と、外筒部材4とを一体化させることができるので、耐久性が向上するとともに、トルクロッド1の生産性が向上することができる。
図3は、本発明の防振装置の他の実施形態のエンジンマウント等として使用される液体封入式の防振装置の要部を示す縦断面図である。
図中21はエンジンマウントを、22は中心部材、23はゴム部材を、24は外筒部材をそれぞれ示す。
図示のエンジンマウント21は、中心部材22と、この中心部材22の外周側であって軸線方向にオフセットさせて配置し、樹脂製の外筒部材24と、これらの部材22,24の間に配設されて、それらの部材を相互連結するゴム部材23とを具える。
ところで、このエンジンマウント21では、ゴム部材23と外筒部材24との接合域で、外筒部材24に、接合中間層30を多点注入するための切欠きを設け、ゴム部材23をスチレン−ブタジエン系ゴムからなるものとし、接合中間層30を、ポリフェニレンエーテル樹脂またはエラストマーからなる二層の異材で構成する。
このような構成のエンジンマウント21は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、図4(a)に示すように、外筒部材成形用の金型に6,6ナイロンと50重量%ガラスからなる樹脂材料を注入し、外筒部材24を射出成形する。
この場合、この外筒部材24の内周面の一部には接合材料を注入するための、切欠きを設ける。
次に、図4(b)に示すように、ポリフェニレンエーテル樹脂またはエラストマーからなる接合中間材料を、切欠きに多点注入して、外筒部材24の内周面の全体にわたってポリフェニレンエーテル樹脂層を形成する、例えば二色成形で、ポリフェニレンエーテル樹脂を内周面に二段階に分けて成形する。
そして、図4(c)に示すように、接合中間層30を内周に設けた外筒部材24の中心付近に中心部材22を設置し、例えば天然ゴム/スチレン−ブタジエン共重合体ゴムからなるゴム材料を、この中心部材22の周りに注入する。その後、ゴム材料を加硫して、中心部材22とゴム部材23とを加硫接着して形成するとともに、仕切り部材等を接着することにより、エンジンマウント21を形成することができる。
1 トルクロッド
2,22 中心部材
3,23 ゴム部材
4,24 外筒部材5
5 アーム部材
6,30 接合中間層7
7 切欠き
8 ブラケット
21 エンジンマウント

Claims (3)

  1. 中心部材を、それの周りを囲繞するゴム部材および接合中間層を順次に介して、樹脂製の外筒部材に固着させてなる防振装置において、
    ゴム部材の外周面と外筒部材の内周面との間の接合中間層を、外筒部材の内周面に設けた複数の切欠き内へ入り込む多点注入層とするとともに、そのゴム部材をスチレン−ブタジエン系ゴムにより、接合中間層を、ポリフェニレンエーテル樹脂または、ポリフェニレンエーテルエラストマーにより構成して、それらの両者を加硫接着させてなることを特徴とする防振装置。
  2. 外筒部材を、ポリアミド樹脂と強度部材とを主体として構成してなる請求項1に記載の防振装置。
  3. 中心部材を、それの周りを囲繞するゴム部材および接合中間層を順次に介して、樹脂製の外筒部材に固着させてなる防振装置を製造するに当り、
    外筒部材の内周に複数の切欠きを設け、各切欠きと対応する位置からポリフェニレンエーテル樹脂またはエラストマーを多点注入して、外筒部材の内周面を所要の厚みで覆う接合中間層を形成し、この接合中間層と中心部材との間へ、スチレン−ブタジエン系ゴムからなるゴム材料を注入して成形するとともに加硫させて、そのゴム材料を、中心部材および接合中間層の両者に加硫接着させる防振装置の製造方法。
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