JP5223695B2 - 不溶化異方性膜並びに不溶化処理液及びそれを用いた不溶化異方性膜の製造方法並びにそれを用いた光学素子 - Google Patents
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Description
このとき、前記水溶性アニオン有機化合物が、リオトロピック液晶性を示す有機色素であることが好ましい(請求項2)
本発明の別の要旨は、モル体積を価数で除した値が30cm 3 /mol以上であり、2価以上の価数を有する脂肪族ポリアミン系化合物、および溶媒を含有することを特徴とする、異方性膜の不溶化処理液に存する(請求項3)。
このとき、前記溶媒が、水、硫酸、酢酸および塩酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい(請求項4)。
本発明の不溶化異方性膜は、水に不溶化された異方性膜であって、水溶性アニオン有機化合物と、モル体積を価数で除した値が30cm3/mol以上であり、2価以上の価数を有するカチオン化合物(以下、適宜「不溶化化合物」ということがある。)とを含有するものである。ここで、水に不溶化された異方性膜とは、蒸留水に浸漬した際に、白濁、溶出、ひび割れ等の外観変化を起こさず、浸漬前後のコントラスト比の低下率が30%未満である異方性膜を表す。コントラスト比については、後述する。
本発明において用いられる不溶化化合物は、モル体積を価数で除した値が30cm3/mol以上であり、2価以上の価数を有するカチオン化合物である。
本明細書において「カチオン化合物」とは、当該化合物分子が溶解した水溶液中において、解離イオンの状態としてカチオン(陽イオン)性を示す化合物を意味する。また、ここで、該不溶化化合物の有する価数が2価以上であるのは、価数が1価である場合、異方性膜を水に不溶化できない可能性があるからである。
具体的には、異方性膜の不溶化処理においては、異方性膜に通常含まれる1価カチオン(通常は、後述する水溶性アニオン有機化合物の対イオンである)と、不溶化化合物のカチオンとが交換されることにより、当該異方性膜が水に対して不溶化される。従来、不溶化化合物のカチオンとして、例えばバリウム等の小さな体積を有するものが用いられていたが、本発明者の検討によれば、このような小さな体積を有するものを用いた場合には、本発明の効果を得ることができないことがわかった。その理由は、以下のように推察される。
即ち、異方性膜に通常含まれる1価カチオンと不溶化化合物のカチオンとが交換され、異方性膜が不溶化される際に、異方性膜中に通常多量に残存する水等の溶媒も膜中から放出されるため、小さな体積を有する例えばバリウム等では放出される残存溶媒の体積を補償できず、異方性膜の体積収縮が生じる可能性がある。この体積収縮により、巨視的には膜に亀裂を生じたり、微視的には有機色素等の水溶性アニオン有機化合物分子の配列状態が乱れる等の課題が生じたりする可能性がある。しかし、体積を当量あたりの値(即ち、モル体積/価数の値)で規定し、この値が30cm3/mol以上である本発明において用いられる不溶化化合物を用いれば、不溶化化合物のカチオンが、放出される水の体積を補償できる程度の体積を有するため、本発明の効果を得ることができる。
ここで、不溶化化合物をモル体積/価数の値で規定する理由は、不溶化処理により通常交換される1価カチオンと2価以上のカチオンである不溶化化合物の当量とがおおよそ等しいからである。
ポリアミン系化合物とは、その分子内に2以上のアミノ基を有する化合物をいう。また、ポリアミン系化合物一分子が有するアミノ基の数としては、通常2以上、また、その上限は、通常20以下、好ましくは10以下である。アミノ基の数が少なすぎる場合、異方性膜を不溶化できなくなる可能性があり、多すぎる場合、分子量が大きくなるため上記化合物が異方性膜内に拡散せず、やはり不溶化できなくなる可能性がある。
本発明の不溶化異方性膜は、上記不溶化化合物のほかに、異方性化合物として水溶性アニオン有機化合物を含有する。水溶性アニオン有機化合物としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、中でも、紫外波長領域、可視光波長領域、及び、赤外波長領域の波長域のうち、少なくとも何れか一つの波長域に吸収を有するものが好ましく、可視光波長領域に吸収を有するものがより好ましい。
A1は、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいナフチレン基を表わす。
R1は、水素原子、水酸基又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を表わす。
R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表わす。
nは、0又は1を表わす。
xは、1又は2を表わす。
なお、xが2の場合、1分子中に含まれる複数のA1は、同一であっても異なっていてもよい。
A2は、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいナフチレン基を表わす。
R4は、水素原子、水酸基又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を表わす。
R5及びR6は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表わす。
mは、0又は1を表わす。
yは、1又は2を表わす。
なお、yが2の場合、1分子中に含まれる複数のA2は、同一であっても異なっていてもよい。
D1は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基又は置換基を有していてもよい複素環基を表わす。
A3は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表わす。
R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表わす。
pは、0又は1を表わす。
メチル基、エチル基、n−プロピル基、ヒドロキシエチル基、1,2−ジヒドロキシプロピル基等の置換基を有していてもよいアルキル基(中でも、炭素数が通常1以上、通常4以下のアルキル基が好ましい。);
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、1,2−ジヒドロキシプロポキシ基等の置換基を有していてもよいアルコキシ基(中でも、炭素数が通常1以上、通常4以下のアルコキシ基が好ましい。);
メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基等のアルキルアミノ基(中でも、炭素数が通常1以上、通常4以下のアルキル基で置換されたアミノ基が好ましい。);
フェニルアミノ基;
アセチル基、ベンゾイル基等のアシルアミノ基等の置換基を有していてもよいアミノ基(中でも、炭素数が通常2以上、通常7以下のアシル基で置換されたアミノ基が好ましい。);
フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基等の置換カルバモイル基;
カルボキシ基;
スルホ基;
水酸基;及び
シアノ基等が挙げられる。
更に、本発明の不溶化異方性膜は、分子配向性を低下させない程度に上記式(1)〜(3)で表される有機色素以外のその他の有機色素を含むこともでき、これにより各種の色相を有する位相差膜、偏光膜等の異方性膜が得られる。
可視光波長領域に吸収を有する有機色素の具体例としては、C.I.Direct Yellow 12、C.I.Direct Yellow 34、C.I.Direct Yellow 86、C.I.Direct Yellow 142、C.I.Direct Yellow 132、C.I.Acid Yellow 25、C.I.Direct Orange 39、C.I.Direct Orange 72、C.I.Direct Orange 79、C.I.Acid Orange 28、C.I.Direct Red 39、C.I.Direct Red 79、C.I.Direct Red 81、C.I.Direct Red 83、C.I.Direct Red 89、C.I.Acid Red 37、C.I.Direct Violet 9、C.I.Direct Violet 35、C.I.Direct Violet 48、C.I.Direct Violet 57、C.I.Direct Blue 1、C.I.Direct Blue 67、C.I.Direct Blue 83、C.I.Direct Blue 90、C.I.Direct Green 42、C.I.Direct Green 51、C.I.Direct Green 59等が挙げられる。これらは、1種が単独で含まれていてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで含まれていてもよい。
さらに、本発明の不溶化異方性膜は、分子配向性を低下させない程度に上記以外のリオトロピック液晶性化合物を含有することもでき、これにより各種の吸収特性を有する位相差膜、偏光膜等の不溶化異方性膜が得られる。
本発明の不溶化異方性膜は、上記不溶化化合物及び水溶性アニオン有機化合物に加え、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤等の添加剤、ポリオールやアミノ酸、タウリン等の分子配向性改良剤等が挙げられる。その他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
なお、モル体積/価数の値が30cm3/molより小さい2価以上の価数を有するカチオン化合物は、1種が単独で含まれていてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで含まれていてもよい。なお、上記の体積平均は、例えば、以下に記載する方法に従って求めることができる。
即ち、まず本発明の不溶化異方性膜の組成分析を行って得られた各化合物の構造及び重量分率を基に、各化合物の比重を用いて体積分率を求める。そして、測定した各化合物の構造から求められる価数を用いて、各化合物のモル体積/価数の値を求める。求めた体積分率とモル体積/価数の値との積を算出することにより、各化合物の体積平均を求めることができる。
本発明の不溶化異方性膜の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、乾燥後の膜厚で、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上であり、また、その上限は、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下であることが望ましい。不溶化異方性膜の膜厚が薄すぎる場合、均一な膜厚とすることが難しくなる可能性があり、厚すぎる場合、不溶化異方性膜を構成する水溶性アニオン有機化合物分子の分子配向性を制御することが難しくなる可能性がある。
具体的には、本発明の不溶化異方性膜においては、浸漬前後で比較した場合の浸漬後のコントラスト比の低下率は、通常30%未満、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
本発明の不溶化異方性膜の製造方法は、異方性膜形成用組成物を基板上に塗布して形成した異方性膜を、モル体積を価数で除した値が30cm3/mol以上であり、2価以上の価数を有するカチオン化合物(即ち、不溶化化合物)を含有する溶液(以下、適宜「不溶化処理液」ということがある。)で処理する工程(以下、適宜「不溶化処理工程」ということがある。)を少なくとも有する。即ち、異方性膜に対して、不溶化処理工程を行うことにより、不溶化異方性膜が得られる。中でも、本発明の不溶化異方性膜の製造方法は、異方性膜形成用組成物を基板上に塗布して異方性膜を形成する工程(以下、適宜「異方性膜形成工程」ということがある。)と、当該不溶化処理工程との、少なくとも2つの工程を有することが好ましい。
(基板)
本発明において、異方性膜は、通常、任意の基板上に形成される。
基板としては、例えば、ガラス、トリアセテート、アクリル、ポリエステル、トリアセチルセルロース、ノルボン系、環状ポリオレフィン系又はウレタン系のフィルム等の基材を直接用いるほか、これら基材の表面に、例えばコロナ処理、プラズマ処理、紫外線オゾン処理等公知の表面処理を施した基板、基材表面に例えばポリイミド等の公知の液晶配向処理を施した基板等が挙げられる。枚葉基板であってもよいし、フィルム状の基板であってもよい。また、基板の膜厚としては、通常0.01mm以上、好ましくは0.02mm以上、また、通常3mm以下、好ましくは1mm以下である。
基板表面には、通常、有機色素等の異方性化合物の分子配向性を制御するために、「液晶便覧」、丸善株式会社刊、平成12年10月30日発行、226頁〜239頁等に記載の公知の方法により、一方向に配向処理を施す。本発明においては、この配向処理された方向を「配向処理方向」という。具体的な方法としては、例えば基板表面に均一性の薄膜を形成後、方向性を付与する方法、基板表面に方向性を付与しながら薄膜を形成する方法等がある。
本発明の製造方法の異方性膜形成工程においては、通常、一方向(即ち、配向処理方向)に配向処理された基板上に異方性膜形成用組成物を塗布して異方性膜を形成する。塗布する材料(即ち、異方性膜形成用組成物)としては、異方性膜を構成できる異方性化合物を含む材料であればよく、溶液であっても、ゲル状の材料であってもよい。具体的には、異方性膜形成用組成物としては、紫外波長領域、可視光波長領域、及び、赤外波長領域の波長域のうち、少なくとも何れか一つの波長域に吸収を有する水溶性アニオン有機化合物を含有する材料であることが好ましく、有機色素を含有する材料(以下、適宜「色素溶液」という。)を用いることが特に好ましい。中でも、可視光の波長域(即ち、可視光波長領域)に吸収を有する二色性色素を含有する異方性膜形成用組成物を用いることにより、異方性膜を偏光膜として使用することが可能となる。なお、異方性化合物は、異方性膜形成用組成物に、1種が単独で含有されていてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで含有されていてもよい。
色素溶液は、通常、有機色素と溶媒とを含有する。色素溶液は、溶媒が蒸発した後に得られる異方性膜における有機色素等の異方性化合物分子の高い分子配向性の観点から、液晶相の状態であることが好ましい。ここで、本明細書において「液晶相の状態である」とは、「液晶の基礎と応用」、松本正一・角田市良著、1991年、1頁〜16頁に記載されている状態のことをいう。特に、色素溶液の状態としては、3頁に記載されているネマティック相が好ましい。有機色素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
有機色素としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、中でも、[I−2.水溶性アニオン有機化合物]で説明した有機色素を用いることが好ましい。
1)塩型で得られた有機色素の水溶液に塩酸等の強酸を加え、有機色素を遊離酸の形で酸析せしめた後、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば、水酸化リチウム水溶液等)で有機色素が有する酸性基を中和し塩交換する方法。
2)塩型で得られた有機色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば、塩化リチウム等)を加え、塩析ケーキの形で塩交換を行なう方法。
3)塩型で得られた有機色素の水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂で処理し、有機色素を遊離酸の形で酸析せしめた後、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば、水酸化リチウム水溶液等)で有機色素が有する酸性基を中和し塩交換する方法。
4)予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば、水酸化リチウム水溶液等)で処理した強酸性陽イオン交換樹脂に、塩型で得られた有機色素の水溶液を作用させ、塩交換を行なう方法。
異方性膜形成用組成物は、分子配向性を低下させない程度に他の異方性化合物を含有することもでき、これにより各種の吸収特性を有する位相差膜、偏光膜等の異方性膜を製造することができる。
異方性膜形成用組成物に用いる溶媒としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、中でも、水、水混和性のある有機溶媒、又はこれらの混合物が好ましいが、通常は水を用いる。有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類等が挙げられる。なお、溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
異方性膜形成用組成物中の異方性化合物の濃度としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、例えば、異方性化合物が水溶性アニオン有機化合物であり、溶媒として水を用いる場合、水溶性アニオン有機化合物の濃度は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、また、その上限は、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。水溶性アニオン有機化合物の濃度が低すぎる場合、十分な光透過性、二色性等の光学特性を有する異方性膜を得ることができなくなる可能性があり、高すぎる場合、異方性膜形成用組成物中で水溶性アニオン有機化合物が析出する可能性がある。
異方性膜形成用組成物には、更に必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤等の添加剤等のその他の成分が含有されていてもよい。これらのその他の成分により、異方性膜形成用組成物の濡れ性、塗布性等を向上させることができる。その他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
異方性膜形成用組成物を基板に塗布する方法としては、例えば、「コーティング工学」、原崎勇次著、株式会社朝倉書店刊、1971年3月20日発行、253頁〜277頁、「分子協調材料の創製と応用」、市村國宏監修、株式会社シーエムシー出版、1998年3月3日発行、118頁〜149頁等に記載の公知の方法が挙げられる。また、例えば、予め配向処理を施した基板上に、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、ファウンテン法、ディップ法等で塗布する方法等も挙げられる。
上記の工程により製造される不溶化処理前の異方性膜の物性、成分等は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、不溶化処理前の異方性膜の膜厚は、[I−4.物性]に記載の本発明の不溶化異方性膜の膜厚と、通常は同様となる。
また、不溶化処理前の異方性膜が含有する異方性化合物の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、不溶化処理前の異方性膜が含有する異方性化合物の含有量は、[I−4.物性]に記載の本発明の不溶化異方性膜における含有量と、通常は同様となる。
次に、異方性膜形成工程で形成された異方性膜を不溶化処理工程に供することにより、本発明の不溶化異方性膜が得られる。即ち、該工程で得られた異方性膜を不溶化処理液で処理することにより、本発明の不溶化異方性膜を得ることができる。
本発明の不溶化処理液は、モル体積を価数で除した値が30cm3/mol以上であり、2価以上の価数を有するカチオン化合物を含有するものである。
本発明の不溶化処理液に含有されるモル体積を価数で除した値が30cm3/mol以上であり、2価以上の価数を有するカチオン化合物(即ち、不溶化化合物)としては、例えば[I−1.不溶化化合物]で説明したものと同様のものが用いられる。不溶化化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
なお、不溶化処理液中の不溶化化合物の量は、以下の方法に基づいて決定すればよい。即ち、例えば、不溶化処理を行った後に不溶化処理液が着色している等の理由により異方性膜の溶解が観察される場合は、不溶化処理液に含有される不溶化化合物の量を増やせばよい。一方、異方性膜を偏光顕微鏡等で観察し、処理ムラや部分的に亀裂が生じている場合は、洗浄が不十分である可能性があるので、不溶化処理液に含有される不溶化化合物の量を減らせばよい。
不溶化処理液に用いられる溶媒としては、水、硫酸、酢酸、塩酸等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
不溶化処理液には、不溶化化合物及び溶媒の他、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤のうち、何れを使用することもできるが、ノニオン界面活性剤が好ましい。ノニオン界面活性剤の種類としては、例えば、ポリエチレングリコール型、多価アルコール型等が挙げられる。これらの界面活性剤は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
不溶化処理液には、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記以外のその他の成分が含有されていてもよい。例えば、不溶化処理を行う前の異方性膜に、ポリオールやアミノ酸、タウリン等の分子配向性改良剤が含まれている場合、分子配向性改良剤の溶出を抑制する目的で、不溶化処理液に同じ分子配向性改良剤を含有させてもよい。その他の成分の含有量も、本発明の不溶化異方性膜が得られる限り、任意に決定できる。
不溶化処理液の調製方法は特に制限されない。例えば、上記不溶化化合物を上記濃度範囲となるように溶媒と混合し、必要に応じて攪拌等を行なって溶媒に溶解させればよい。また、必要に応じて用いられる上記の水溶性有機溶媒、界面活性剤等を、それぞれ上記濃度範囲となるように、溶媒に混合してもよい。なお、混合の時期、順番等も任意であり、本発明の不溶化異方性膜が得られる限り、任意の時期に任意の順番で、上記の各成分を混合すればよい。
異方性膜の不溶化処理の方法は、不溶化処理液と異方性膜とを接触させることができれば、特に制限されない。不溶化処理の方法の具体例としては、不溶化処理液をバット等の浴中に入れ、異方性膜形成用組成物を基板上に塗布して形成した異方性膜を、当該基板とともに不溶化処理液に浸漬する方法、スプレー、ダイ等の各種コーティング法により、異方性膜に不溶化処理液を接触させる接触方法等が挙げられる。不溶化処理時の温度は、異方性膜中の成分にも依存するが、通常20℃以上、通常25℃以下が望ましい。
従来、不溶化処理時に多価金属イオンを用いることが知られていたが、多価金属イオンは比重が大きいため、モル体積/価数の値が30cm3/molより小さく、不溶化処理後に異方性膜を収縮させ、異方性膜中の有機色素等の異方性化合物分子の分子配向性を乱す傾向があった。一方、本発明における不溶化処理工程においては、不溶化化合物としてモル体積/価数の値が30cm3/mol以上であり、2価以上の価数を有するカチオン化合物を用いるため、不溶化処理後も異方性膜は収縮せず、不溶化異方性膜中の有機色素等の異方性化合物分子の分子配向性を乱さないという利点がある。
本発明の不溶化異方性膜の製造方法においては、本発明の不溶化異方性膜が得られる限り、上記の異方性膜形成工程、及び不溶化処理工程以外の任意の工程を有していてもよい。その他の工程も、1回のみ行ってもよく、本発明の不溶化異方性膜が得られる限り、2回以上行ってもよい。
本発明の不溶化異方性膜は、高度な分子配向性を有するとともに、水に溶解せず(水不溶性)、高湿度下、水蒸気等による色素膜の再溶解(潮解)の防止等の安定性に優れ、且つ、欠陥、剥離等が生じる可能性が少ない(即ち、耐久性、品質保持性等に優れる)ことから、安定に取り扱うことが可能である。
また、本発明の不溶化異方性膜中においては、不溶化異方性膜に含有される水溶性アニオン有機化合物等の異方性化合物は、不溶化化合物の存在により水に対して不溶となる。従って、本発明の不溶化異方性膜は、洗浄工程等の各種工程に対して高い安定性及び耐久性を有する。
さらに、本発明の異方性膜を熱処理した際、残存溶媒の揮発がないため、光学特性の劣化、表面荒れ等がない。従って、本発明の不溶化異方性膜に、フィルムを融着させたり、熱硬化性樹脂をオーバーコートさせたりしても、異方性膜としての光学特性等の性質の劣化が少ないといった、品質保持性にも優れるという利点も得られる。
(光学素子)
本発明の不溶化異方性膜に、必要に応じて各種の後工程を加えて、光学素子への適用が可能となる。即ち、本発明の光学素子は、本発明の不溶化異方性膜を有するものである。また、例えば、本発明の不溶化異方性膜は、必要に応じ、保護層を設けて使用することができる。この保護層は、例えば、トリアセテート、アクリル、ポリエステル、ポリイミド、トリアセチルセルロース、ノルボン系、環状ポリオレフィン系又はウレタン系のフィルム等の透明な高分子膜によりラミネーションして形成され、光学素子として実用に供することができる。
水79部に、下記式(I)で表わされる色素のリチウム塩20部と、下記式(II)で表わされる色素1部とを撹拌溶解させることにより、色素溶液を調製した。
実施例1において、東京化成社製1,4−シクロヘキサンジアミン(モル体積/価数の値が63cm3/molであり、2価の価数を有する化合物(後記表1参照))15部、酢酸15.8部を69.2部の蒸留水に攪拌溶解した水溶液を不溶化処理液として用いた以外は、実施例1と同様の手順によって異方性膜の形成及び不溶化処理を行なった。
実施例1において、東京化成社製ペンタエチレンヘキサミン(モル体積/価数の値が39cm3/molであり、6価の価数を有する化合物(後記表1参照))16.2部、83.8部の5規定の塩酸に攪拌溶解した水溶液を不溶化処理液として用いた以外は、実施例1と同様の手順によって異方性膜の形成及び不溶化処理を行なった。
実施例1において、濃度20重量%の塩化バリウム二水和物(カチオンであるバリウムはモル体積/価数の値が20cm3/molであり、2価の価数を有する(後記表1参照))水溶液を不溶化処理液として用いた以外は、実施例1と同様の手順によって異方性膜の形成及び不溶化処理を行なった。得られた異方性膜は、不溶化処理中に塗布膜のひび割れが発生し、得られた異方性膜の光学特性を分光光度計で測定した結果、コントラスト比は200であり、光学特性の低下が著しかった。また、不溶化処理後の異方性膜を蒸留水に浸漬させると、蒸留水への色素の溶解が著しく、浸漬前後の異方性膜におけるコントラスト比の低下率は56%であった。
Claims (4)
- 水溶性アニオン有機化合物を含有する異方性膜形成用組成物を基板上に塗布して形成した異方性膜を、不溶化処理液で処理する工程を有する不溶化異方性膜の製造方法であって、
前記不溶化処理液が、モル体積を価数で除した値が30cm 3 /mol以上であり、かつ2価以上の価数を有する脂肪族ポリアミン系化合物を含有する
ことを特徴とする、不溶化異方性膜の製造方法。 - 前記水溶性アニオン有機化合物が、リオトロピック液晶性を示す有機色素である
ことを特徴とする、請求項1記載の不溶化異方性膜の製造方法。 - モル体積を価数で除した値が30cm3/mol以上であり、2価以上の価数を有する脂肪族ポリアミン系化合物、および溶媒を含有する
ことを特徴とする、異方性膜の不溶化処理液。 - 前記溶媒が、水、硫酸、酢酸および塩酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種からなる
ことを特徴とする、請求項3記載の異方性膜の不溶化処理液。
Priority Applications (1)
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