JP5990821B2 - 耐水性有機薄膜の製造方法 - Google Patents
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Description
かかる有機薄膜の耐水化処理においては、有機薄膜にクラックが生じたり、有機薄膜が基材から剥離するなどの欠陥を生じ易い。
特許文献3には、有機薄膜に機械的損傷を与えないで連続的に耐水化することにより、前記クラックなどの欠陥の発生を抑制できることが開示されている。
特許文献2及び3の方法は、いずれも、有機薄膜の耐水化にあたって、その欠陥の発生を抑制できるので好ましい。
この搬送過程で、有機薄膜にクラックなどの欠陥が生じる場合があり、それを改善する必要がある。
かかる推定の下、本発明者らは、試行錯誤を繰り返し、本発明を完成した。
好ましくは、前記有機薄膜の表面の、水平面に対する傾斜角が、1度〜45度である。
好ましくは、前記有機薄膜の表面を、前記長尺積層体の搬送方向下流側から搬送方向上流側へ斜め下がりに傾斜させて、前記長尺積層体を搬送する。
本発明の好ましい耐水性有機薄膜の製造方法は、前記有機薄膜が有機色素を含み、前記耐水化処理液が、前記有機色素を架橋する架橋剤を含む。
本発明の好ましい耐水性有機薄膜の製造方法は、前記有機薄膜の表面に残存する耐水化処理液を、前記長尺積層体の搬送方向又はその方向とは反対の方向に流動させる。
本発明の製造方法は、有機薄膜を有する長尺積層体の少なくとも有機薄膜を、耐水化処理液に接触させる耐水化工程と、前記長尺積層体の少なくとも有機薄膜の表面を洗浄する洗浄工程と、前記耐水化工程と洗浄工程の間に設けられ、前記長尺積層体を耐水化工程から洗浄工程へと搬送する搬送工程と、を有する。本発明の耐水性有機薄膜の製造方法は、耐水化工程、搬送工程及び洗浄工程を有していることを条件として、任意の他の工程を有していてもよい。例えば、前記耐水化工程の前には、有機薄膜を形成する製膜工程を有していてもよい。
本発明は、前記搬送工程において、前記有機薄膜の表面に残存する耐水化処理液を、前記有機薄膜の表面に対して流動させながら前記長尺積層体を搬送することを特徴とする。
なお、本明細書において、「XXX〜YYY」の記載は、「XXX以上YYY以下」を意味する。
耐水性有機薄膜の製造装置1は、製膜工程を行う製膜部(図示せず)と、耐水化工程を行う耐水化処理部3と、洗浄工程を行う洗浄部4と、を少なくとも有する。
本発明においては、長尺基材を用いることにより、ロールツゥロール方式で耐水性有機薄膜を製造できる。ただし、本発明は、ロールツゥロール方式で耐水性有機薄膜を製造する場合に限定されるわけではない。
以下、適宜な図面を参照しつつ、各工程を具体的に説明する。
製膜工程は、長尺基材の上に有機薄膜を形成することにより、長尺積層体を得る工程である。
例えば、ロールに巻き取られた長尺基材を引き出し、それを製膜部に搬送する。
長尺基材は、回転ローラなどを用いて、搬送方向上流側から下流側へと搬送される。
コーティング液を塗工することにより、長尺基材の表面上に、塗膜が形成される。
前記塗膜を、必要に応じて、乾燥装置により乾燥する。なお、コーティング液を塗工後、長尺基材を搬送している間に前記塗膜が自然乾燥して固化する場合には、前記乾燥装置による乾燥は省略される。前記乾燥後の塗膜が、有機薄膜である。従って、製膜部から下流側においては、長尺基材とその表面に積層された有機薄膜とを有する長尺積層体が搬送されていく。
前記ポリマーフィルムとしては、特に限定されないが、透明性に優れているフィルム(例えば、ヘイズ値5%以下)が好ましい。
前記長尺基材の厚みは、強度などを考慮して適宜に設定できる。薄型軽量化の観点から、前記長尺基材の厚みは、好ましくは300μm以下、より好ましくは5μm〜200μm、特に好ましくは10μm〜100μmである。
前記長尺基材の表面(コーティング液を塗工する面)は配向規制力を有していてもよい。その配向規制力は、長尺基材の表面に配向処理を施すことで形成できる。前記配向処理としては、ラビング処理などの機械的配向処理、光配向処理などの化学的配向処理などが挙げられる。
前記有機薄膜の形成材料及び溶媒は、特に限定されず、それぞれ従来公知のものを用いることができる。
前記水系溶媒は、水、親水性溶媒、水と親水性溶媒の混合溶媒などが挙げられる。親水性溶媒は、水と均一に溶解させることができる溶媒である。親水性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。
前記Q1又はQ2で表されるアリール基又はアリーレン基は、置換基を有していても、或いは、置換基を有していなくてもよい。Q1又はQ2で表されるアリール基又はアリーレン基が、置換若しくは無置換のいずれの場合でも、一般式(I)又は(II)のアゾ化合物は、吸収二色性を示す。
また、一般式(I)及び(II)のRの炭素数1〜3のアルキル基、ベンゾイル基又はフェニル基が置換基を有する場合、その置換基としては、上記アリール基の説明欄で例示した置換基と同様のものが挙げられる。
前記アリーレン基としては、フェニレン基の他、ナフチレン基などのようなベンゼン環が縮合した縮合環基が挙げられる。
前記一般式(I)及び(II)のQ1は、好ましくは置換若しくは無置換のフェニル基であり、さらに好ましくはパラ位に置換基を有するフェニル基である。
前記一般式(II)のQ2は、好ましくは置換若しくは無置換のナフチレン基であり、さらに好ましくは置換若しくは無置換の1,4−ナフチレン基である。
前記一般式(I)及び(II)のMは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又は金属イオンである。なお、前記一般式(I)又は(II)で表されるアゾ化合物を含む有機薄膜に耐水化処理を行った後には、前記一般式(I)又は(II)のMの一部又は全部は、耐水化処理液由来のカチオン種となる。
さらに、前記一般式(I)及び(II)のkは、好ましくは0〜2の整数であり、さらに好ましくは0〜1の整数である。一般式(I)及び(II)のlは、好ましくは0〜2の整数であり、さらに好ましくは0〜1の整数である。
一般式(III)のR及びMは、前記一般式(I)のR及びMと同様である。
なお、一般式(III)のXの炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基が置換基を有する場合、その置換基としては、前記アリール基の説明欄で例示した置換基と同様のものが挙げられる。
前記一般式(III)のXは、好ましくは、水素原子、ニトロ基、又はシアノ基であり、さらに好ましくはニトロ基である。
前記アゾ化合物のような有機色素は、溶媒に溶解したとき、超分子を形成している(つまり、前記コーティング液中において、有機色素は超分子を形成している)。この有機色素を含むコーティング液を所定方向に流延すると、前記超分子に剪断応力が加わる。その結果、前記超分子の長軸が流延方向に配向した塗膜を形成することができる。得られた有機薄膜は、有機色素が所定方向に配向しているため、良好な吸収二色性を示す。
特に、前記一般式(III)で表されるアゾ化合物は、2個以上の−SO3M基が隣接していない。よって、前記アゾ化合物は、−SO3M基同士の立体障害が小さい。このため、耐水化処理前後において、前記アゾ化合物が直線的に配向することによって、偏光度の高い偏光子を得ることができる。
また、コーティング液のpHは、好ましくはpH4〜10程度、さらに好ましくはpH6〜8程度に調製される。
前記有機薄膜の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1μm〜10μmである。
本発明の有機薄膜が偏光子である場合、例えば、可視光領域(波長380nm〜780nm)の少なくとも一部の波長において二色性を示す。
前記有機薄膜の透過率は、35%以上であり、好ましくは36%以上であり、さらに好ましくは37%以上である。
耐水化工程は、前記製膜工程によって得られた有機薄膜に耐水性を付与する工程である。耐水化工程においては、前記長尺積層体の少なくとも有機薄膜の表面に、耐水化処理液を接触させる。
なお、前記製膜工程によって得られた長尺積層体を、引き続いて耐水化工程を行ってもよいし、或いは、前記製膜工程によって得られた長尺積層体を、一旦ロールに巻き取り、その後、そのロールから長尺積層体を引き出して耐水化工程を行ってもよい。
これらの中では、前記(B)長尺積層体を耐水化処理液中に浸漬する、又は、前記(C)長尺積層体を耐水化処理液中に通過させる、の何れかの方法が好ましい。この方法によれば、有機薄膜全体に耐水化処理液を確実に接触させることができる。また、この方法によれば、有機薄膜内に耐水化処理液が浸透し易くなる。
耐水化処理直後の長尺積層体の有機薄膜の表面が十分に湿潤となるように、前記耐水化処理液を有機薄膜中に十分に浸透させることが好ましい。特に、前記(B)又は(C)の方法によれば、耐水化処理液を有機薄膜中に十分に浸透させることができ、さらに、処理浴から長尺積層体を出した直後には、十分な量の処理液で表面が湿った有機薄膜を得ることができる。
前記製膜工程で得られた、有機薄膜を有する長尺積層体6は、耐水化処理液が満たされた処理浴31に搬送される。前記処理浴31の中を長尺積層体6が通ることにより、有機薄膜の表面及び長尺基材の裏面に耐水化処理液が接触する。
前記長尺積層体は、回転ローラ7a,7b,7c,7d,7e,7f,7g,7h,7iによって搬送方向上流側から下流側へと搬送される。
前記架橋剤及び溶媒としては、例えば、上記特許文献1に開示された架橋剤及び溶媒を用いることができる。特許文献1に開示された架橋剤は、有機窒素化合物であり、溶媒は、水系溶媒である。前記有機窒素化合物としては、特許文献1に記載のように、その分子中に2個以上のカチオン性基(好ましくは、窒素原子を含むカチオン性基)を有する非環式の有機窒素化合物などが挙げられる。前記非環式の有機窒素化合物(非環式の脂肪族窒素化合物)としては、例えば、アルキレンジアミンなどの脂肪族ジアミン又はその塩;アルキレントリアミンなどの脂肪族トリアミン又はその塩;アルキレンテトラアミンなどの脂肪族テトラアミン又はその塩;アルキレンペンタアミンなどの脂肪族ペンタアミン又はその塩;アルキレンエーテルジアミンなどの脂肪族エーテルジアミン又はその塩などが挙げられる。前記水系溶媒としては、上記コーティング液の欄で例示したものを用いることができる。
前記耐水化処理液中における架橋剤の濃度は、好ましくは1質量%〜50質量%であり、さらに好ましくは5質量%〜30質量%である。
前記耐水化処理液に有機薄膜を接触させると、前記有機薄膜中の有機色素間が架橋剤を介して架橋される。前記架橋により、耐水性及び機械的強度に優れた耐水性有機薄膜が得られる。
搬送工程は、耐水化処理後の長尺積層体を、洗浄工程に搬送する工程である。
前記搬送工程は、耐水化工程と洗浄工程の間に設けられている。
なお、前記長尺積層体を耐水化工程から洗浄工程へと搬送する間の全ての区間で、前記耐水化処理液を流動させるようにしてもよいし、或いは、前記搬送する間の一部の区間で、前記耐水化処理液を流動させるようにしてもよい。つまり、前記長尺積層体を耐水化工程から洗浄工程へと搬送する間に、前記耐水化処理液を流動させない区間が含まれていてもよい。
前記自発的に耐水化処理液を流動させて長尺積層体を搬送する方法としては、例えば、長尺積層体(有機薄膜)を傾斜させて搬送することなどが挙げられる。
前記強制的に耐水化処理液を流動させて長尺積層体を搬送する方法としては、例えば、有機薄膜の表面に風を当てながら長尺積層体を搬送することなどが挙げられる。
これらの方法の中の1つの方法を単独で又は2つ以上の方法を併用してもよい。
具体的には、前記有機薄膜を有する長尺積層体6は、処理浴31から上方に引き上げられた後、第1回転ローラ7dにて搬送方向下流側に向けられ、さらに、第2回転ローラ7eにて下方に向けられ、洗浄浴41に導入される。処理浴31から引き出された長尺積層体6の有機薄膜の表面には、耐水化処理液が付着している。
前記長尺積層体6を処理浴31から洗浄浴41に搬送する途中において(図示例では、第1回転ローラ7dから第2回転ローラ7eの間において)、長尺積層体6は、その有機薄膜が水平面Hに対して傾斜するように搬送される。
前記有機薄膜の表面の、水平面Hに対する傾斜角αは、特に限定されず、適宜設定できる。有機薄膜の表面に残存する耐水化処理液を良好に流動させるために、前記有機薄膜の表面の、水平面Hに対する傾斜角αは、例えば、1度〜45度であり、好ましくは1度〜20度であり、より好ましくは1度〜10度である。
搬送方向下流側から上流側へ斜め下がりに長尺積層体6を傾斜させながら搬送した場合には、前記有機薄膜の表面に残存する耐水化処理液が、長尺積層体6の搬送方向Aとは反対の方向に流動する。なお、前記搬送方向Aとその反対方向は、180度逆方向である。
搬送方向下流側から上流側へ斜め上がりに長尺積層体6を傾斜させながら搬送した場合には、前記有機薄膜の表面に残存する耐水化処理液は、長尺積層体6の搬送方向Aに流動する。
前記風の主成分は、大気であってもよいし、或いは、酸素、窒素及びヘリウムなどの特定の気体であってもよい。
好ましくは、図1に示すように、風は、長尺積層体6の搬送方向下流側から搬送方向上流側に向かって吹き付けられる。下流側に向けて風を吹き付けることにより、有機薄膜の表面に残存する耐水化処理液が処理浴側へと流動するので、耐水化処理液が洗浄浴に混入することを抑制できる。この場合、有機薄膜の表面に残存する耐水化処理液は、長尺積層体6の搬送方向Aとは反対の方向に主として流動する。
なお、図2において、符号81は、送風装置8の風吹き出し口を示す。
前記風の速さ(風速)は、例えば、5m/秒〜30m/秒であり、好ましくは8m/秒〜20m/秒以下である。このような風速の風を吹き付けることにより、有機薄膜の表面に残存する耐水化処理液を良好に流動させることができる。
なお、前記風の速さは、有機薄膜の表面に於ける風の速さを意味する。
例えば、図1に示すように、長尺積層体の側面から見た場合に、風の向き(気体の流れ方向)と有機薄膜の表面との成す角βが0度を超え90度未満(鋭角)となるように、風を吹き付ける。好ましくは、前記角βが1度〜30度、より好ましくは、前記角βが3度〜25度となるように、風を吹き付ける。このような角度から風を吹き付けることにより、耐水化処理液を良好に流動させることができる。
前記残存する耐水化処理液が局所的に集まると、有機薄膜の表面に耐水化処理液を殆ど有しない領域が生じる。長尺積層体を搬送中に、前記のような領域が生じると、耐水化処理液に含まれる架橋剤などが固化及び結晶化し易い。前記架橋剤などが結晶化することにより、有機薄膜にクラックなどの欠陥が生じると推定される。
本発明の製造方法によれば、前述のように、有機薄膜の表面において耐水化処理液が局所的に集まることを防止できるので、有機薄膜に欠陥が生じることを抑制できる。
洗浄工程は、耐水化処理後の長尺積層体の少なくとも有機薄膜の表面を洗浄液を用いて洗浄する工程である。
洗浄工程を行うことにより、長尺積層体の表裏面(有機薄膜の表面及び長尺基材の裏面)に残存している耐水化処理液を除去することができる。従って、長尺積層体の表裏面において、架橋剤などが析出することを防止できる。
例えば、(i)有機薄膜の表面に洗浄液を吹き付ける、(ii)洗浄液が所定方向に流れている浴中に長尺積層体を浸漬させる、(iii)洗浄液が満たされた洗浄浴中に長尺積層体を通過させる、などの方法が挙げられる。
搬送工程によって長尺積層体6は、洗浄液が満たされた洗浄浴41に搬送される。前記洗浄浴41の中を長尺積層体6が通ることにより、有機薄膜の表面及び長尺基材の裏面に付着した耐水化処理液及び架橋剤などが除去される。
洗浄部4の下流側には、乾燥装置9が設けられている。乾燥装置9によって、洗浄後の長尺積層体6の表裏面を乾燥できる。なお、自然乾燥による場合には、前記乾燥装置9は省略される。
このようにして耐水性有機薄膜を有する長尺積層体6が得られる。得られた長尺積層体6は、ロール51に巻き取られる。
前記親水性有機化合物としては、好ましくは分子中に極性基を有する液状の有機化合物を用いることができる。
洗浄後、長尺積層体の表裏面を乾燥する場合、その乾燥方法は、自然乾燥、強制的な乾燥の何れでもよい。乾燥温度は、特に限定されないが、通常、20℃〜60℃である。乾燥時間は、長尺積層体の表裏面が乾くまで行えばよい。
本発明の耐水性有機薄膜を有する長尺積層体は、適宜な寸法に裁断されて使用される。
必要に応じて、前記長尺積層体の表面又は表裏面に保護フィルムを積層してもよい。
本発明の製造方法で得られた耐水性有機薄膜は、前記基材上に積層された状態で使用でき、或いは、基材から引き剥がして使用することもできる。
本発明の耐水性有機薄膜を有する画像表示装置は、液晶表示装置、有機ELディスプレイ、及びプラズマディスプレイなどを含む。前記画像表示装置の好ましい用途はテレビである。
有機薄膜の厚みは、ポリマーフィルムから有機薄膜の一部を剥離し、3次元非接触表面形状計測システム((株)菱化システム製、製品名「Micromap MM5200」)を用いて、前記ポリマーフィルムと有機薄膜との段差を測定した。
耐水性有機薄膜を有する長尺積層体をバックライト上に載せ、その積層体の裏面から光を当てながら有機薄膜をクロスニコルで観察した。
そして、前記観察した有機薄膜の表面の中から、420mm×1000mmの範囲を1つの領域とし、任意に且つ独立した10の領域を選択し、その各領域に含まれるクラック数を計測した。
計測後、前記クラックの総数を10で除算し、1つの領域当たりに含まれる平均クラック数を求めた。
4−ニトロアニリンと8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とを、常法(細田豊著「理論製造 染料化学 第5版」昭和43年7月15日技法堂発行、135ページ〜152ページに記載の方法)により、ジアゾ化及びカップリング反応させて、モノアゾ化合物を得た。得られたモノアゾ化合物を、前記常法によりジアゾ化し、さらに、1−アミノ−8−ナフトール−2,4−ジスルホン酸リチウム塩とカップリング反応させて粗生成物を得た。これを塩化リチウムで塩析することによって、下記構造式(1)のジスアゾ化合物を得た。
前記構造式(1)のジスアゾ化合物をイオン交換水に溶解することにより、8質量%のコーティング液を調製した。
長尺基材として、ラビング処理及びコロナ処理が施されたノルボルネン系ポリマーフィルム(日本ゼオン(株)製、製品名「ゼオノア」)を準備した。前記ポリマーフィルムは、厚み40μm、幅440mm、長さ500mの長尺状のものを使用した。
この長尺のポリマーフィルムをその長手方向に搬送しながら、公知のテンションウェブダイを有するコータを用いて、そのフィルムの表面に前記コーティング液を塗工することにより、前記フィルムの表面の幅420mmの範囲に塗膜を形成した。
塗工後、前記塗膜を自然乾燥させた。乾燥により、前記ポリマーフィルム上に有機薄膜が積層された長尺積層体を得た。その有機薄膜の厚みは、0.4μmであった。
前記処理浴から洗浄浴の間に、傾斜角3度(図1のα)で搬送方向下流側から上流側へ斜め下がりに傾斜させて搬送する区間(区間長さ1500mm)を設けた。また、前記処理浴から洗浄浴までの間の長尺積層体の搬送速度は、8m/分とした。
前記傾斜搬送と同時に、洗浄浴の500mm手前の位置に具備されたエアブロワーを用いて、有機薄膜の表面の幅方向全体に風を吹き付けた。
前記風の風量は、有機薄膜の表面100cm2当り10リットル/分、その風速は、15m/秒であった。また、搬送方向下流側から搬送方向上流側に向かい、有機薄膜の表面に対して約87度(図1のβ)となる方向から前記風を吹き付けた。
得られた長尺積層体について、上記有機薄膜の欠陥の評価法に従って、有機薄膜の単位面積当たりの平均クラック数を求めた。その結果を、表1に示す。
前記傾斜させて搬送する区間の傾斜角を15度としたこと及び有機薄膜の表面に対して約75度となる方向から風を吹き付けたこと以外は、実施例1と同様にして、長尺基材の表面上に耐水性有機薄膜が積層された長尺積層体を作製した。得られた長尺積層体について、その有機薄膜の単位面積当たりの平均クラック数を、表1に示す。
なお、実施例2についても、処理浴から洗浄浴の間における傾斜搬送中の有機薄膜の表面を、目視で観察したところ、その表面に残存している耐水化処理液が、搬送方向と反対の方向に恒常的に流動していることが確認された。
風を吹き付けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、長尺基材の表面上に耐水性有機薄膜が積層された長尺積層体を作製した。得られた長尺積層体について、その有機薄膜の単位面積当たりの平均クラック数を、表1に示す。
なお、実施例3についても、処理浴から洗浄浴の間における傾斜搬送中の有機薄膜の表面を、目視で観察したところ、その表面に残存している耐水化処理液が、搬送方向と反対の方向に恒常的に流動していることが確認された。
(傾斜搬送区間を設けずに)有機薄膜の表面を水平面と平行に搬送したこと、及び、風の吹き付けを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、長尺基材の表面上に有機薄膜が積層された長尺積層体を作製した。得られた長尺積層体について、その有機薄膜の単位面積当たりの平均クラック数を、表1に示す。
なお、比較例についても、処理浴から洗浄浴の間における水平搬送中の有機薄膜の表面を、目視で観察したが、その表面に残存している耐水化処理液は、ほとんど流動しておらず、その液が局所的に集まった部分が散見された。
参考例は、長尺基材を用いず、枚葉状の基材を用いて有機薄膜を形成した。
具体的には、基材として、ラビング処理及びコロナ処理が施された、厚み40μm、幅50mm、長さ50mmのノルボルネン系ポリマーフィルム(日本ゼオン(株)製、製品名「ゼオノア」)を用いた。
このフィルムの表面に、実施例1と同じコーティング液を、バーコータ(BUSHMAN社製、製品名「Mayer rot HS4」)を用いて塗工し、23℃の恒温室内で十分に自然乾燥させた。乾燥により、前記ポリマーフィルム上に有機薄膜が積層された積層体を作製した。その有機薄膜の厚みは、0.4μmであった。
乾燥後の積層体の有機薄膜の表面を、クロスニコル下で目視にて観察したところ、主として有機薄膜の端部に、多数のクラックが生じていた。図3は、その有機薄膜の表面の写真図である。
本発明の製造方法によって得られた耐水性有機薄膜は、液晶表示装置などの画像表示装置、偏光サングラスなどに利用できる。
3 耐水化処理部
31 処理浴
4 洗浄部
41 洗浄浴
A 長尺積層体の搬送方向
B 風の向き
C 耐水化処理液の流動方向
Claims (7)
- 有機薄膜を有する長尺積層体の少なくとも有機薄膜を、耐水化処理液に接触させる耐水化工程と、
前記長尺積層体の少なくとも有機薄膜の表面を洗浄する洗浄工程と、
前記耐水化工程と洗浄工程の間に設けられ、前記長尺積層体を耐水化工程から洗浄工程へと搬送する搬送工程と、を有し、
前記搬送工程が、前記有機薄膜の表面に風を吹き付けながら前記長尺積層体を搬送することを含み、
前記搬送工程において、前記有機薄膜の表面に残存する耐水化処理液を、前記有機薄膜の表面に対して流動させながら前記長尺積層体を搬送する、耐水性有機薄膜の製造方法。 - 前記搬送工程が、前記有機薄膜の表面を水平面に対して傾斜させて前記長尺積層体を搬送することを含む、請求項1に記載の耐水性有機薄膜の製造方法。
- 前記風を、前記長尺積層体の搬送方向下流側から搬送方向上流側に向かって吹き付ける、請求項1又は2に記載の耐水性有機薄膜の製造方法。
- 前記有機薄膜の表面の、水平面に対する傾斜角が、1度〜45度である、請求項2に記載の耐水性有機薄膜の製造方法。
- 前記有機薄膜の表面を、前記長尺積層体の搬送方向下流側から搬送方向上流側へ斜め下がりに傾斜させて、前記長尺積層体を搬送する、請求項2に記載の耐水性有機薄膜の製造方法。
- 前記有機薄膜が有機色素を含み、前記耐水化処理液が、前記有機色素を架橋する架橋剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の耐水性有機薄膜の製造方法。
- 前記有機薄膜の表面に残存する耐水化処理液を、前記長尺積層体の搬送方向又はその方向とは反対の方向に流動させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の耐水性有機薄膜の製造方法。
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