JP5768328B2 - 不溶化異方性膜、不溶化処理液、不溶化異方性膜の製造方法及び光学素子 - Google Patents
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Description
そのため、ガラス、透明フィルム等の基板上に有機色素等の異方性化合物を含む溶液を塗布する際、せん断力等の機械的な力で有機色素分子を当該基板上に配向させることにより、異方性膜を製造する方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
また、同様の方法により得られる異方性膜の耐久性向上等のために、乾性油等を含有する異方性膜用組成物も検討されている(例えば、特許文献3、4等参照)。
また、従来の方法により得られた異方性膜は、有機色素等の異方性化合物を溶解していた溶媒や、配向性向上、欠陥抑制を目的に添加された水溶性化合物が異方性膜中に多量に残存しているため、有機色素等の異方性化合物分子の配列状態が基板上で十分に安定でなかった。従って、液晶素子等の光学素子に通常使用される偏光板、位相差板等の異方性膜の、耐久性、品質保持性等は実用的に不十分であった。
例えば特許文献7では、こうした不溶化時の体積収縮を和らげる為に、モル体積を価数で除した値が比較的大きく、2価以上の価数を有するカチオン化合物を含有する不溶化液を用いることが提案されているが、こうした不溶化液を用いても、前述の問題に対しての効果は不十分であることがわかった。また、耐湿性を向上させるために、不溶化液に含有される該カチオン化合物のモル体積を増やす、例えば、脂肪族ポリアミンの炭素数を増やす等すると、水溶性が低下して不溶化液が不均一となり、異方性膜の不溶化ができなくなるという問題が生じた。すなわち、従来の方法で親水性の異方性膜を親油性に改質するには限界があり、そのため、耐湿性などの耐久性に依然として課題を有していた。
を含有する溶液を塗布して得られる異方性膜において、特定の化合物を当該異方性膜に含有させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は、水に不溶化された異方性膜であって、リオトロピック液晶性を示す有機色素、ポリアミン系化合物及び脂肪族モノカルボン酸を含有することを特徴とする、不溶化異方性膜に存する(請求項1)。
また、本発明の別の要旨は、異方性膜形成用組成物を基板上に塗布して形成した異方性膜を、上記不溶化処理液で処理する工程を有することを特徴とする、不溶化異方性膜の製造方法、及び、該方法により製造された不溶化異方性膜に存する(請求項6、7)。
きる。
本発明の不溶化異方性膜は、水に不溶化された異方性膜であって、リオトロピック液晶性を示す有機色素、カチオン化合物及び脂肪族モノカルボン酸を含有することを特徴とする、不溶化異方性膜である。
ここで、水に不溶化された異方性膜とは、蒸留水に浸漬した際に、白濁、溶出、ひび割れ等の外観変化を起こさず、浸漬前後のコントラスト比の低下率が30%未満である異方性膜を意味する。コントラスト比については、後述する。
本発明の不溶化異方性膜は、不溶化化合物としてカチオン化合物を含有する。該カチオン化合物は、好ましくは、後述する本発明の不溶化処理液に含有され、該処理液を使用して異方性膜の不溶化処理を行うことにより、処理後の不溶化異性膜に含有されることとなるものである。
本発明において不溶化化合物として用いられるカチオン化合物は、好ましくは、2価以上の価数を有する化合物である。
ここで「価数」とは、当該カチオン化合物がイオンになったときの、当該カチオン化合物1モルが生成する陽イオンの価数の総和を表す。例えば、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンは、イオンになったときにアミン部分が解離するため、3価となる。従って、本発明においては、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンは3価のカチオン化合物であり、同様に、1,4−シクロヘキサンジアミンは2価、ペンタエチレンヘキサミンは6価である。また、本発明の定義によれば、例えば、塩化バリウム及び塩化バリウム二水和物は2価であり、同様に考えると塩化カルシウムも2価、塩化リチウムは1価である。
また、該カチオン化合物の分子量は、通常50以上、好ましくは100以上、通常500以下、好ましくは300以下である。分子量が小さすぎる場合、本発明の効果が得られない可能性がある。分子量が大きすぎる場合、カチオン化合物の溶媒への溶解性が低下するため、後述する本発明の不溶化処理液の成分として用いた場合に該処理液が均一とならなくなったり、また、均一に溶解させるために溶媒のpHを下げなければならない場合がある。その結果、不溶化処理された異方性膜(不溶化異方性膜)に異方性化合物として含有される有機色素中の酸性基が遊離酸型となる等の問題を生じる可能性がある。
具体的には、該カチオン化合物において、モル体積/価数の値は、好ましくは30cm3/mol以上、より好ましくは40cm3/mol以上、さらに好ましくは60cm3/mol以上、好ましくは200cm3/mol以下、より好ましくは120cm3/mol以下である。
また、分子量が大きすぎる場合は、カチオン化合物の溶媒への溶解性が低下するため、後述する本発明の不溶化処理液の成分として用いた場合に該処理液が均一とならなくなったり、また、均一に溶解させるために溶媒のpHを下げなければならない場合がある。その結果、不溶化処理された異方性膜(不溶化異方性膜)に異方性化合物として含有される有機色素中の酸性基が遊離酸型となる等の問題を生じる可能性がある。
具体的には、異方性膜の不溶化処理においては、異方性膜に通常含まれる1価カチオン(通常は、後述するリオトロピック液晶性を示す有機色素の対イオンである)と、上記カチオン化合物のカチオンとが交換されることにより、当該異方性膜が水に対して不溶化される。従来、カチオン化合物のカチオンとして、例えばバリウム等の小さな体積を有するものが用いられていたが、このような小さな体積を有するものを用いた場合には、十分な効果を得ることができないことがあった。その理由は、以下のように推察される。
さらに、上記カチオン化合物は、本発明の不溶化異方性膜が水に対して不溶であるという観点から、酸性基を有さないカチオン化合物であることが好ましい。ここで、「酸性基」とは、アレニウス酸を有する官能基のことを表す。酸性基の具体例としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等が挙げられる。即ち、カチオン化合物としては、酸性基を有さない化合物が好ましい。
本発明の不溶化異方性膜に含有されるカチオン化合物としては、例えば、ポリアミン系化合物、錯イオン系化合物等が挙げられ、中でもポリアミン系化合物が好ましい。
、ポリアミン系化合物一分子が有するアミノ基の数としては、通常2以上、また、その上限は、通常20以下、好ましくは10以下である。アミノ基の数が少なすぎる場合、異方性膜を不溶化できなくなる可能性があり、多すぎる場合、分子量が大きくなるため上記化合物が異方性膜内に拡散せず、やはり不溶化できなくなる可能性がある。
脂肪族ポリアミン系化合物の具体例としては、ジアミノヘキサン、ジアミノデカン等のジアミノアルカン化合物、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン等のジアミノシクロアルカン化合物、ジエチレントリアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等のポリエチレンポリアミン化合物等が挙げられる。中でも、ポリエチレンポリアミン化合物が好ましく、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンが特に好ましい。
錯イオン系化合物とは、金属イオンに分子中の非共有電子対が配位結合してできた錯イオンの塩である。本発明において用いられる錯イオン系化合物の錯イオンとしては、例えば、テトラアンミン銅(II)イオン、ヘキサアンミンコバルト(III)イオン等が挙げられる。
また、不溶化処理における蒸留水による洗浄中の亀裂を抑制するためには、N−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミン、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシエ
チル)エチレンジアミン、N,N,N'−トリメチル−N'−(2−ヒドロキシエチル)ビス(2−アミノエチル)エーテル等の水酸基を有するポリアミンを上記カチオン化合物と組み合わせて使うことが好ましい。
本発明の不溶化異方性膜は、前記カチオン化合物のほかに脂肪族モノカルボン酸を含有する。該脂肪族モノカルボン酸は、好ましくは、後述する本発明の不溶化処理液に前記カチオン化合物とともに含有され、該処理液を使用して異方性膜の不溶化処理を行うことにより、処理後の不溶化異方性膜に含有されることとなるものである。
前記のとおり、本発明の不溶化異方性膜は、後述する不溶化処理液に含有される前記カチオン化合物のカチオンが異方性膜に通常含まれる1価カチオンと交換されることにより、水に対して不溶化され、製造される。このとき、前記カチオン化合物だけでは、異方性膜に生じる急激な体積収縮による亀裂、配向性の低下等を完全には補償できないことがあったが、脂肪族モノカルボン酸を併用することにより体積収縮をさらに抑制することができ、従来の問題を解決できることがわかった。
脂肪族モノカルボン酸とは、「大有機化学 4. 脂肪族化合物III」、朝倉書店に記
載されているように、脂肪族炭化水素の水素原子を1個のカルボキシル基で置換した化合物である。炭素鎖が飽和か不飽和かによって、飽和モノカルボン酸または不飽和モノカルボン酸に分類されるが、いずれのモノカルボン酸も用いることができる。
本発明の不溶化異方性膜に含有される脂肪族モノカルボン酸としては、具体的には、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、9−ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、9−オクタデセン酸(オレイン酸)、11−オクタデセン酸(バクセン酸)、9,12−オクタデカジエン酸
(リノール酸)、9,12,15−オクタデカントリエン酸((9,12,15)−リノレン酸)、6,9,12−オクタデカトリエン酸((6,9,12)−リノレン酸)、9,11,13−オクタデカトリエン酸(エレオステアリン酸)、8,11−イコサジエン酸、5,8,11
−イコサトリエン酸、5,8,11−イコサテトラエン酸(アラキドン酸)等が好ましく挙げられる。
本発明の不溶化異方性膜は、異方性化合物としてリオトロピック液晶性を示す有機色素を含有する。該有機色素は、好ましくは、後述する異方性膜形成用組成物に含有され、この組成物が基板に塗布されることにより異方性膜中に含有されることとなるものである。さらに、形成された異方性膜が不溶化処理されることにより、該有機色素は本発明の不溶化異方性膜に含有されることとなる。
て不溶化される。通常、この「異方性膜に通常含まれる1価カチオン」は、該リオトロピック液晶性を示す有機色素の対イオンである。
有機色素としては、通常、二色性色素が用いられる。なお、ここで「色素」とは、一般に、可視光波長領域において吸収を有する化合物を意味する。
本発明の不溶化異方性膜に含有されるリオトロピック液晶性を示す有機色素は、後述する異方性膜形成用組成物に含有され、基板に塗布することにより異方性膜を形成する方法に適したものであることが好ましい。
アゾ系色素とは、1以上のアゾ基を有する有機色素を表す。アゾ系色素一分子中のアゾ基の数は、色調及び製造面の観点から、2以上が好ましく、また、6以下が好ましく、より好ましくは4以下である。
B1、D1およびE1は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表す。
R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基
、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいアシル基を表す。
mおよびnは、0または1を表す。)
Aは、下記式(1−a)または(1−b)を表し、
Cは、置換基として炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基またはアセチルアミノ基を有していてもよい1,4−フェニレン基を表し、
nは、0または1を表す。)
なお、本明細書において「置換基を有していてもよい」とは、置換基を1又は2以上有していてもよいことを意味する。2以上の置換基を有する際、置換基は1種であってもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせて置換してもよい。
本発明の不溶化異方性膜に含有されるリオトロピック液晶性を示す有機色素の分子量としては、遊離酸の状態で、好ましくは450以上、また、好ましくは1500以下、更に好ましくは1100以下である。分子量が小さすぎる場合、分子配向性が劣る可能性があり、大きすぎる場合、溶解性が劣る可能性がある。
なお、以下の構造式は、遊離酸の形を表わしている。なお、「遊離酸の形」とは、その分子中の全ての酸性基が遊離酸型となっているものを表す。
更に、本発明の不溶化異方性膜は、分子配向性を低下させない程度にさらに他の有機色素を含むこともでき、これにより各種の色相を有する位相差膜、偏光膜等の異方性膜が得られる。
このような、前記したリオトロピック液晶性を示す有機色素と組み合わせて用いることのできる他の有機色素やリオトロピック液晶性化合物等としては、例えば、特開2009−199075号公報に記載されたもの等が挙げられる。
本発明の不溶化異方性膜は、上記カチオン化合物、脂肪族モノカルボン酸、及びリオトロピック液晶性を示す有機色素に加え、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤等の添加剤、ポリオールやアミノ酸、タウリン等の分子配向性改良剤等が挙げられる。その他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
なお、本発明の不溶化異方性膜において、その他の成分としてモル体積/価数の値が30cm3/molより小さい2価以上の価数を有するカチオン化合物(以下、「その他のカチオン化合物」ということがある)が含有されている場合は、前記カチオン化合物とその他のカチオン化合物との体積平均を算出して求めたモル体積/価数の値が、30cm3/mol以上となることが好ましい。さらに、前記カチオン化合物とその他のカチオン化合物との合計量が、前記カチオン化合物の含有量の範囲を満たすことが好ましい。その他のカチオン化合物は、1種が単独で含まれていてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで含まれていてもよい。
即ち、まず本発明の不溶化異方性膜の組成分析を行って得られた各化合物の構造及び重量分率を基に、各化合物の比重を用いて体積分率を求める。そして、測定した各化合物の構造から求められる価数を用いて、各化合物のモル体積/価数の値を求める。求めた体積分率とモル体積/価数の値との積を算出することにより、各化合物の体積平均を求めることができる。
本発明の不溶化異方性膜の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、乾燥後の膜厚で、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上であり、また、その上限は、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下であることが望ましい。不溶化異方性膜の膜厚が薄すぎる場合、均一な膜厚とすることが難しくなる可能性があり、厚すぎる場合、不溶化異方性膜を構成する有機色素分子の分子配向性を制御することが難しくなる可能性がある。
Yz:不溶化異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率を基に算出された明度(Y値)
本発明の不溶化異方性膜は、水に不溶化された異方性膜である。水に不溶化された異方性膜は、該異方性膜を蒸留水に浸漬した際に、白濁、溶出、ひび割れ等の外観変化を起こさず、浸漬後に各種光学特性の低下も起こさないという優れた利点を有する。ここで、不溶化の程度を表すために、上記コントラスト比を指標とすることができる。
具体的には、本発明の不溶化異方性膜においては、浸漬前後で比較した場合の浸漬後の
コントラスト比の低下率は、通常30%未満、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
本発明の不溶化処理液は、カチオン化合物と脂肪族モノカルボン酸とを含有することを特徴とする。
[II−1.不溶化処理液に用いられるカチオン化合物]
本発明の不溶化処理液は、カチオン化合物を含有する。好ましくは、モル体積を価数で除した値が30cm3/mol以上であり、2価以上の価数を有するカチオン化合物を含有する。
本発明の不溶化処理液に含有されるカチオン化合物の量は、異方性膜中に含まれる異方性化合物の不溶化処理液に対する溶解性に基づいて適宜選択されるが、不溶化処理液に対して、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上、また、その上限は、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下であることが望ましい。濃度が低すぎる場合、不溶化処理中に異方性膜が溶解する可能性があり、高すぎる場合、不溶化処理後の異方性膜の洗浄が困難となる可能性がある。
本発明の不溶化処理液は、前記カチオン化合物とともに脂肪族モノカルボン酸を含有する。本発明の不溶化処理液に含有される脂肪族モノカルボン酸としては、例えば[I−2.脂肪族モノカルボン酸]で説明した、本発明の不溶化異方性膜に含有されるものと同様のものが用いられる。脂肪族モノカルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
本発明の不溶化処理液は、通常、前記カチオン化合物と脂肪族モノカルボン酸とを溶解し得る溶媒を含有する。
不溶化処理液に用いられる溶媒としては、水、硫酸、酢酸、塩酸等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
また、不溶化処理液は、上記の溶媒の他に、カチオン化合物の溶解性を改良したり、異方性膜の溶解を抑制したりする等の目的で水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。水溶性有機溶媒としては、水と単層に自由混合する有機溶媒の他、不溶化処理時の溶液温度において、水溶性有機溶媒の濃度が通常5重量%以上、通常100重量%未満の割合で混合(溶解)可能なもの等が挙げられる。
不溶化処理液には、カチオン化合物、脂肪族モノカルボン酸及び溶媒の他、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤のうち、何れを使用することもできるが、ノニオン界面活性剤が好ましい。ノニオン界面活性剤の種類としては、例えば、ポリエチレングリコール型、多価アルコール型等が挙げられる。これらの界面活性剤は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
不溶化処理液には、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記以外のその他の成分が含有されていてもよい。例えば、不溶化処理を行う前の異方性膜に、ポリオールやアミノ
酸、タウリン等の分子配向性改良剤が含まれている場合、分子配向性改良剤の溶出を抑制する目的で、不溶化処理液に同じ分子配向性改良剤を含有させてもよい。その他の成分の含有量も、本発明の不溶化異方性膜が得られる限り、任意に決定できる。
不溶化処理液の調製方法は特に制限されない。例えば、上記カチオン化合物及び脂肪族モノカルボン酸を上記濃度範囲となるように溶媒と混合し、必要に応じて攪拌等を行なって溶媒に溶解させればよい。また、必要に応じて用いられる上記の水溶性有機溶媒、界面活性剤等を、それぞれ上記濃度範囲となるように、溶媒に混合してもよい。なお、混合の時期、順番等も任意であり、本発明の不溶化異方性膜が得られる限り、任意の時期に任意の順番で、上記の各成分を混合すればよい。
本発明の不溶化異方性膜の製造方法は、異方性膜形成用組成物を基板上に塗布して形成された異方性膜を、前記本発明の不溶化処理液で処理する工程(以下、適宜「不溶化処理工程」ということがある。)を少なくとも有する。本発明の不溶化異方性膜の製造方法は、異方性膜形成用組成物を基板上に塗布して異方性膜を形成する工程(以下、適宜「異方性膜形成工程」ということがある。)と、該不溶化処理工程との、少なくとも2つの工程を有することが好ましい。
ここで、一般に不溶化処理とは、レーキ顔料の製造同様に、少ない価数のイオンをそれより大きい価数のイオンに置き換える(即ち、例えば、1価のイオンを多価のイオンに置き換える)処理のことである。より具体的には、例えば、「細田豊、『理論製造 染料化学』、技報堂、(1957)、435頁〜437頁 10章.有機顔料と顔料捺染及び原液染色 10.2節 レーキ(Lake)」等に記載されている処理を表わす。
(基板)
本発明において、異方性膜は、通常、任意の基板上に形成される。
基板表面には、通常、異方性化合物として用いられるリオトロピック液晶性を示す有機色素の分子配向性を制御するために、「液晶便覧」、丸善株式会社刊、平成12年10月30日発行、226頁〜239頁等に記載の公知の方法により、一方向に配向処理を施す。本発明においては、この配向処理された方向を「配向処理方向」という。具体的な方法としては、例えば基板表面に均一性の薄膜を形成後、方向性を付与する方法、基板表面に方向性を付与しながら薄膜を形成する方法等がある。
また、後者においては、例えば、基板表面に酸化ケイ素の斜方蒸着を施す、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂片を基板表面に一方向へ擦って基板表面に樹脂薄膜を転写させる、ポリマー製基板を一軸方向に延伸する、等の方法が挙げられる。
本発明の製造方法の異方性膜形成工程においては、通常、一方向(即ち、配向処理方向)に配向処理された基板上に異方性膜形成用組成物を塗布して異方性膜を形成する。本発明において用いられる異方性膜形成用組成物は、少なくともリオトロピック液晶性を示す有機色素含む材料であればよく、溶液であっても、ゲル状の材料であってもよい。異方性膜形成用組成物には、リオトロピック液晶性を示す有機色素1種が単独で含有されていてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで含有されていてもよい。
リオトロピック液晶性を示す有機色素としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、中でも、[I−3.リオトロピック液晶性を示す有機色素]で説明した有機色素を用いることが好ましい。
2)塩型で得られた有機色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば、塩化リチウム等)を加え、塩析ケーキの形で塩交換を行なう方法。
4)予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば、水酸化リチウム水溶液等)で処理した強酸性陽イオン交換樹脂に、塩型で得られた有機色素の水溶液を作用させ、塩交換を行なう方法。
また、上記の有機色素が有する酸性基が遊離酸型を取るか、塩型を取るかは、通常、有機色素のpKaと色素水溶液のpHとに依存する。
その他の有機色素としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを含有することができる。中でも、その他の有機色素は、可視光波長領域に吸収を有する有機色素が好ましい。可視光波長領域に吸収を有する有機色素の具体例としては、[I−3.有機色素]に記載のものと同様のもの等が挙げられる。なお、その他の有機色素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
該化合物は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。これにより各種の吸収特性を有する位相差膜、偏光膜等の異方性膜を製造することができる。
異方性膜形成用組成物に用いる溶媒としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、中でも、水、水混和性のある有機溶媒、又はこれらの混合物が好ましいが、通常は水を用いる。有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類等が挙げられる。なお、溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
異方性膜形成用組成物中のリオトロピック液晶性を示す有機色素の濃度としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、例えば、溶媒として水を用いる場合、有機色素の濃度は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、また、その上限は、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。該有機色素の濃度が低すぎる場合、十分な光透過性、二色性等の光学特性を有する異方性膜を得ることができなくなる可能性があり、高すぎる場合、異方性膜形成用組成物中で有機色素が析出する可能性がある。
異方性膜形成用組成物には、更に必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤等の添加剤等のその他の成分が含有されていてもよい。これらのその他の成分により、異方性膜形成用組成物の濡れ性、塗布性等を向上させることができる。その他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
また、異方性膜形成用組成物中の異方性化合物の安定性を向上させ、造塩、凝集等の発生を抑制する等の観点から、異方性膜形成用組成物にpH調整剤を混合してpHを調整してもよい。pH調整剤は、通常、公知の酸、アルカリ等の中から任意に選択することが可能である。pH調整剤を加える時期も特に制限されず、異方性膜形成用組成物の構成成分の混合前、混合中、混合後の何れの段階で加えてもよい。
異方性膜形成用組成物を基板に塗布する方法としては、例えば、「コーティング工学」、原崎勇次著、株式会社朝倉書店刊、1971年3月20日発行、253頁〜277頁、「分子協調材料の創製と応用」、市村國宏監修、株式会社シーエムシー出版、1998年3月3日発行、118頁〜149頁等に記載の公知の方法が挙げられる。また、例えば、予め配向処理を施した基板上に、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、ファウンテン法、ディップ法等で塗布する方法等も挙げられる。
上記の工程により製造される不溶化処理前の異方性膜の物性、成分等は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、不溶化処理前の異方性膜の膜厚は、[I−5.物性]に記載の本発明の不溶化異方性膜の膜厚と、通常は同様となる。
(異方性膜中の異方性化合物の濃度)
また、不溶化処理前の異方性膜が含有するリオトロピック液晶性を示す有機色素の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、不溶化処理前の異方性膜が含有する該有機色素の含有量は、[I−3.リオトロピック液晶性を示す有機色素]に記載の本発明の不溶化異方性膜における含有量と、通常は同様となる。
次に、異方性膜形成工程で形成された異方性膜を不溶化処理工程に供することにより、本発明の不溶化異方性膜が得られる。即ち、異方性膜形成工程で得られた異方性膜を、前記本発明の不溶化処理液で処理することにより、本発明の不溶化異方性膜を得ることができる。
異方性膜の不溶化処理の方法は、前記本発明の不溶化処理液と異方性膜とを接触させることができれば、特に制限されない。不溶化処理の方法の具体例としては、不溶化処理液をバット等の浴中に入れ、異方性膜形成用組成物を基板上に塗布して形成した異方性膜を、当該基板とともに不溶化処理液に浸漬する方法、スプレー、ダイ等の各種コーティング法により、異方性膜に不溶化処理液を接触させる接触方法等が挙げられる。不溶化処理時の温度は、異方性膜中の成分にも依存するが、通常20℃以上、通常25℃以下が望ましい。
本発明の不溶化異方性膜の製造方法においては、本発明の不溶化異方性膜が得られる限り、上記の異方性膜形成工程、及び不溶化処理工程以外の任意の工程を有していてもよい。その他の工程も、1回のみ行ってもよく、本発明の不溶化異方性膜が得られる限り、2回以上行ってもよい。
また、不溶化異方性膜の耐久性を更に高めるために、半乾性油や乾性油など、不飽和カルボン酸を含有する溶液に浸漬したり、膜上に塗布したりした後、乾燥する工程を有することも好ましい。
本発明の不溶化異方性膜は、高度な分子配向性を有するとともに、水に溶解せず(水不溶性)、高湿度下、水蒸気等による色素膜の再溶解(潮解)の防止等の安定性に優れ、且つ、欠陥、剥離等が生じる可能性が少ない(即ち、耐久性、品質保持性等に優れる)ことから、安定に取り扱うことが可能である。
また、本発明の不溶化異方性膜中においては、不溶化異方性膜に含有されるリオトロピック液晶性を示す有機色素は、前記カチオン化合物及び脂肪族モノカルボン酸の存在により水に対して不溶となる。従って、本発明の不溶化異方性膜は、洗浄工程等の各種工程に対して高い安定性及び耐久性を有する。
(光学素子)
本発明の不溶化異方性膜に、必要に応じて各種の後工程を加えて、光学素子への適用が可能となる。即ち、本発明の光学素子は、本発明の不溶化異方性膜を有するものである。また、例えば、本発明の不溶化異方性膜は、必要に応じ、保護層を設けて使用することができる。この保護層は、例えば、トリアセテート、アクリル、ポリエステル、ポリイミド、トリアセチルセルロース、ノルボン系、環状ポリオレフィン系又はウレタン系のフィルム等の透明な高分子膜によりラミネーションして形成され、光学素子として実用に供することができる。
中でも、本発明の不溶化異方性膜は、偏光膜、位相差膜、導電異方性膜の用途に用いることが好ましく、位相差膜、偏光膜の用途に用いることがより好ましく、偏光膜の用途に用いることが特に好ましい。特に、不溶化異方性膜のコントラスト比が大きい場合に、具体的には、コントラスト比が通常100以上、中でも500以上、更には1000以上の場合に、本発明の不溶化異方性膜を用いることにより得られる効果が大きくなるため、望ましい。
て用いたりすればよい。
これらの光学機能を有する層は、例えば以下の様な方法により形成することができる。まず、位相差フィルムとしての機能を有する層は、例えば特開平2−59703号公報、特開平4−230704号公報等に記載の延伸処理を施したり、特開平7−230007号公報などに記載された処理を施したりすることにより形成することができる。
さらに、反射フィルム又は半透過反射フィルムとしての機能を有する層は、例えば、蒸着、スパッタリング等で得られた金属薄膜を用いて形成することができる。
また、位相差フィルム、光学補償フィルムとしての機能を有する層は、例えば、ディスコティック液晶性化合物、ネマティック液晶性化合物等の液晶性化合物を塗布して配向させることにより、形成することができる。
異方性膜及び不溶化異方性膜のコントラスト比(CR)は、グランテーラー型偏光素子を入射光学系に配した分光光度計(島津製作所社製SolidSpec3700)で異方性膜又は不溶化異方性膜の透過率を測定した後、JIS(日本規格協会)Z8701(1995)及びZ8722(1994)で規定の透過物体の色測定方法に準拠して、D65標準光源下、2度視野における色彩計算を行ない、次式により計算した。
Yz:異方性膜又は不溶化異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率を基に算出された明度(Y値)
水79.48部に、下記式(A)で表わされる色素の100%リチウム中和塩12.46部、50%リチウム中和塩0.54部、東京化成社製 グリシルグリシルグリシン 1.08部、東京化成社製 DL−アスパラギン酸 3.07部、東京化成社製 L−(+)−リジン 3.37部を撹拌溶解させることにより、色素溶液を調製した。
得られた異方性膜の光学特性を分光光度計で測定した結果、コントラスト比は560であった。
実施例1において、東京化成社製ビス(ヘキサメチレン)トリアミン 24.4部に6規定の硫酸75.6部を加えて撹拌溶解させた水溶液を不溶化処理液として用いた以外は、実施例1と同様の手順によって異方性膜の形成及び不溶化処理を行なった。異方性膜は、不溶化処理中に塗布膜のひび割れが発生し、蒸留水での洗浄中に完全に剥離した。
Claims (8)
- 水に不溶化された異方性膜であって、リオトロピック液晶性を示す有機色素、ポリアミン系化合物及び脂肪族モノカルボン酸を含有することを特徴とする、不溶化異方性膜。
- ポリアミン系化合物が、モル体積を価数で除した値が30cm3/mol以上であり、2価以上の価数を有する化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の不溶化異方性膜。
- ポリアミン系化合物が、酸性基を有さない化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の不溶化異方性膜。
- ポリアミン系化合物と脂肪族モノカルボン酸とを含有し、リオトロピック液晶性を示す有機色素を含む異方性色素膜の水に対する不溶化処理に用いられることを特徴とする、不溶化処理液。
- ポリアミン系化合物が、モル体積を価数で除した値が30cm3/mol以上であり、2価以上の価数を有する化合物であることを特徴とする、請求項4に記載の不溶化処理液。
- 異方性膜形成用組成物を基板上に塗布して形成した異方性膜を、請求項4又は5に記載の不溶化処理液で処理する工程を有することを特徴とする、不溶化異方性膜の製造方法。
- 請求項6に記載の製造方法により製造された、不溶化異方性膜。
- 請求項1〜3又は7のいずれか一項に記載の不溶化異方性膜を有することを特徴とする、光学素子。
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