JP2007121458A - 異方性色素膜用基板、異方性色素膜及びその製造方法、並びに偏光素子 - Google Patents

異方性色素膜用基板、異方性色素膜及びその製造方法、並びに偏光素子 Download PDF

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龍一 長谷川
Masami Kadowaki
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Abstract

【課題】乾燥時やレーキ化時等における異方性色素膜の亀裂や剥離の発生を抑制する。
【解決手段】表面にカチオン性基を有する基板を用い、その上に異方性色素膜を作製する。
【選択図】なし

Description

本発明は、異方性色素膜用基板及びそれを用いた偏光素子に関し、詳しくは、膜強度に優れ、亀裂による光漏れの無い異方性色素膜が得られる異方性色素膜用基板、及び、その異方性色素膜用基板上に異方性色素膜を形成してなる偏光素子に関する。
液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)では、表示における旋光性や複屈折性を制御するために、直線偏光板や円偏光板が用いられている。有機発光ダイオード(Organic light-emitting diode:OLED)ディスプレイにおいても、外光の反射防止のために円偏光板が使用されている。
これら直線偏光板や円偏光板等の偏光板は、通常、基板上に偏光膜を設けて形成される。偏光膜の材料としては、通常、二色性物質が用いられる。
この二色性物質としては、従来、ヨウ素が広く使用されてきた。しかし、ヨウ素は昇華性が大きいために、偏光板に使用した場合、その耐熱性と耐光性が十分ではなく、また偏光特性が経時劣化するという課題があった。
そのため、例えば特許文献1や非特許文献1,2に記載されているように、有機系の色素を二色性物質(二色性色素)として使用した、偏光膜としての異方性色素膜が検討されている。
これら文献に記載された二色性色素は、水やアルコール等の溶媒中でリオトロピック液晶相を形成し、配向基板や流動場、電場、磁場などの外場により容易に配向させることが可能である。例えば、Brilliant Yellow(CI−364)を用いると正の二色性膜、Methylene Blue(CI−922)やAmaranth(CI−184)を用いると負の二色性膜を得られることが知られている。
しかしながら、これらの色素膜は必ずしも強度が高くないため、乾燥時に亀裂を生じて光漏れを起こし二色性が低下するという課題があった。また、乾燥時には亀裂を生じなくても、乾燥後にカルシウム塩水溶液やバリウム塩水溶液などに浸漬して水に不溶化(以下「レーキ化」と記載する場合がある。)させる際に亀裂や剥離を生じやすいという課題もあった。色素膜の強度を向上させるために、高分子をバインダーとして添加すると、相分離を起こし、二色性などの光学性能を低下させるため、光学性能を維持したまま色素膜の強度を上げることはこれまで困難であった。
米国特許第2400877号明細書 J. F. Dreyer, Physics and Colloid Chemistry, 1948年, Vol.52, pp.808, "The Fixing of Molecular Orientation" J. F. Dreyer, Journal de Physique, 1969年, Vol.4, pp.114, "Light Polarization from Films of Lyotropic Nematic Liquid Crystals"
以上の背景から、乾燥時やレーキ化時に亀裂や剥離を生じない異方性色素膜を得る技術が求められていた。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、乾燥時やレーキ化時等における亀裂や剥離の発生が抑えられた異方性色素膜を得ることが可能な、優れた異方性色素膜用基板を提供すること、並びに、該基板を用いて異方性色素膜を形成することにより、耐久性に優れ、偏光特性の劣化が少ない偏光素子を提供することに存する。
本発明者らは鋭意検討の結果、表面にカチオン性基を有する基板を用い、その上に異方性色素膜を形成することにより、乾燥時やレーキ化時等に亀裂や剥離を生じるおそれの少ない異方性色素膜を得ることが可能となり、上記課題を効果的に解決できることを見出して、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、表面にカチオン性基を有することを特徴とする、異方性色素膜用基板に存する(請求項1)。
ここで、少なくとも基材と、該基材上に設けられた高分子膜とを備えてなり、前記カチオン性基が、該高分子膜が有する基であることが好ましい(請求項2)。
また、少なくとも基材を備えてなり、前記カチオン性基が、該基材の表面をカップリング剤で処理して得られる基であることも好ましい(請求項3)。
また、本発明の別の要旨は、上述の異方性色素膜用基板上に、少なくとも色素を含有する組成物を成膜して得られることを特徴とする、異方性色素膜に存する(請求項4)。
また、本発明の別の要旨は、上述の異方性色素膜用基板上に、少なくとも色素を含有する組成物を成膜することを特徴とする、異方性色素膜の製造方法に存する(請求項5)。
また、本発明の別の要旨は、上述の異方性色素膜用基板と、該異方性色素膜用基板上に設けられた異方性色素膜とを有することを特徴とする、偏光素子に存する(請求項6)。
本発明の異方性色素膜用基板によれば、乾燥時やレーキ化時等における亀裂や剥離の発生が抑えられた、均一な異方性色素膜を得ることが可能となる。また、本発明の異方性色素膜用基板上に異方性色素膜を設けてなる偏光素子は、耐久性に優れ、偏光特性の劣化が少ないという利点がある。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
[I.異方性色素膜用基板]
本発明の異方性色素膜用基板は、異方性色素膜の形成に用いられる基板であって、表面にカチオン性基を有することを特徴とする。
具体的に、本発明の異方性色素膜用基板は、少なくとも基材を備えてなるとともに、以下の(i)〜(iii)等のうち何れかの構成を有する。
(i)基材上に高分子等からなる膜(以下適宜「高分子膜」と略称する。)が設けられ、この高分子膜がカチオン性基を有する構成。
(ii)基材の表面を処理することによって表面層(以下適宜「表面処理層」と略称する。)が形成され、この表面処理層がカチオン性基を有する構成。
(iii)基材そのものがカチオン性基を有する構成。
中でも、上述の(i)、(ii)の構成、即ち、基材上に設けられた高分子膜又は表面処理層がカチオン性基を有する構成が好ましい。以下の説明では、これら(i)、(ii)の構成を中心に説明するが、本発明の異方性色素膜用基板の構成はこれらに制限されるものではない。
なお、本発明において「異方性色素膜」とは、色素膜の厚み方向及び任意の直交する面内2方向の立体座標系における合計3方向から選ばれる任意の2方向における電磁気学的性質に異方性を有する色素膜である。電磁気学的性質としては、吸収、屈折等の光学的性質、抵抗、容量等の電気的性質などが挙げられる。吸収、屈折等の光学的異方性を有する膜としては、例えば、偏光膜(直線偏光膜、円偏光膜)、位相差板、導電異方性膜等が挙げられる。
[I−1.基材]
本発明の異方性色素膜用基板に用いられる基材の種類や形状は特に制限されず、その用途や目的等に応じて任意の材料及び形状を選択することができる。但し、本発明の異方性色素膜用基板を後述する偏光素子等の作製用途に用いる場合には、目的とする波長の光に対して透過性を有する材料及び形状を選択する必要がある。具体的に、基材の例としては、ガラス、ポリマー等が挙げられる。ポリマーの具体例としては、トリアセテート系、アクリル系、ポリエステル系、トリアセチルセルロース系、ウレタン系、ポリカーボネート系、シクロオレフィン系、液晶性高分子系等が挙げられる。なお、基材そのものがカチオン性基を有する場合の例については後述する。また、基材の形状の例としては、フィルム状、平板状等が挙げられる。基材の寸法も特に制限されないが、例えば偏光素子作製用途の場合、通常は厚さが10μm以上、1mm以下のフィルム状の基材を用いる。
なお、基材の表面には、二色性色素の配向方向を制御するために、「液晶便覧」、丸善株式会社、平成12年10月30日発行、226頁〜239頁などに記載の公知の方法により、配向処理層を施しておいてもよい。
[I−2.カチオン性基]
本発明において「カチオン性基」とは、カチオン性を示す基をいう。具体的には、水中で電離して有機陽イオンとなる基をいう。水中で電離して有機陽イオンとなる基の例としては、
スルホニウム基、ピロール環、3−ピロリン環、ピロリジン環、ピラゾール環、2−ピラゾリン環、ピラゾリジン環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環或いは1,2,4−トリアゾール環由来の一価の基(式中、Xはハロゲン原子を表わし、R1〜R3は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表わす。)等が挙げられる。
本発明の異方性色素膜用基板が有するカチオン性基は、上述のように、基材そのものが有していてもよいし、基材上に設けられた高分子膜又は表面処理層が有していてもよい。
(i)高分子膜:
基材上にカチオン性基を有する高分子膜を設ける場合、高分子膜としては、上記カチオン性基を有する膜であればその種類は特に制限されないが、上述したような有機陽イオンとなり得る基を、その表面に有する膜が好ましい。
高分子膜を構成する高分子の具体例としては、ポリアリルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウム、ポリリジン、カチオン化セルロース、カチオン化グアー等のポリアミンの塩;ポリビニルピリジン等のピリジニウムの塩など;並びにこれらのランダム共重合体やブロック共重合体などが挙げられる。中でも、ポリアミンの塩が好ましく、具体的には、ポリアリルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムが特に好ましい。なお、これらの高分子は何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
高分子膜を構成する高分子の分子量は、通常500以上、好ましくは1000以上、また、通常100万以下、好ましくは50万以下の範囲である。高分子の分子量が小さすぎると、膜強度が低く剥離を生じるおそれがあり、逆に高分子の分子量が大きすぎると、加工性が悪く膜厚が不均一となるおそれがある。
基材上に高分子膜を作製する方法の例としては、(a)高分子溶液中に基板を浸漬した後、蒸留水でリンスし、単分子吸着層を得る方法、(b)高分子溶液を基板にスピンコートし、溶媒を乾燥して薄膜を得る方法、(c)高分子を基板に対して一方向にこすり付けて延伸薄膜を得る方法、(d)押し出し成型やキャスト成型などによって高分子フィルムを得る方法などがある。但し、上記(c),(d)等の作製方法の場合、後述する異方性色素膜用組成物の塗布時に高分子膜を構成する高分子が溶解してしまわないよう、共重合化や溶媒の選択等により溶解性をコントロールすることが好ましい。
高分子膜の膜厚は特に制限されず、その製造方法や用途等によって適宜調整すればよい。例えば、単分子吸着膜の場合は、通常1nm以上、また、通常10nm以下の範囲である。また、高分子フィルムの場合は、通常1μm以上、また、通常1mm以下の範囲である。
なお、高分子膜の作製後、例えば「液晶便覧」、丸善株式会社、平成12年10月30日発行、226頁〜239頁等に記載の公知の方法により、配向膜として用いてもよい。
(ii)表面処理層:
基材上にカチオン性基を有する表面処理層を形成する場合、基材の表面処理の例としては、カップリング剤による基材表面の改質等が挙げられる。カップリング剤の例としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤などが挙げられる。中でも、基材としてガラスを用いる場合は、シランカップリング剤が好ましく、アミノシランカップリング剤が特に好ましい。
アミノシランカップリング剤の好ましい例としては、下記式(A)で表される化合物が挙げられる。
前記式中、R11、R12及びR13は各々独立に、一価の炭化水素基を表わし、R14は、二価の炭化水素基を表わす。R11〜R14の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状の何れでもよく、これらの二種以上が結合したものでもよい。R11〜R14の炭化水素基の炭素数は、通常1以上、また、通常10以下、好ましくは8以下の範囲である。
カップリング剤による基材表面の改質処理は、使用する基材やカップリング剤の種類に応じ、公知の手法を選択して行なえばよい。
例として、シランカップリング剤を用いる場合の一般的な手順を説明すると、まず、シランカップリング剤を溶媒に溶解させて処理溶液を作製し、その処理溶液中に基板を浸漬する。浸漬後、基板を水等で洗浄し、風乾してカチオン性基を有する表面処理層を得る。
具体的に、処理溶液の溶媒としては、シランカップリング剤を好適に溶解し、且つ、基材に好ましからぬ作用を及ぼさないものであれば、任意のものを使用できるが、例としては水、酢酸水、水−アルコール混合溶媒等が挙げられる。
処理溶液中のシランカップリング剤の濃度は、通常0.1重量%以上、また、通常2重量%以下の範囲である。
具体的に、処理溶液の溶媒としては、シランカップリング剤を好適に溶解し、且つ、基材に好ましからぬ作用を及ぼすものでなければ、任意のものを使用できるが、例としては水、酢酸水、水−アルコール混合溶媒等が挙げられる。
処理溶液中のシランカップリング剤の濃度は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.02重量%以上、また、通常2重量%以下、好ましくは1重量%以下の範囲である。
処理溶液中に基板を浸漬させる際の条件も特に制限されないが、浸漬時の温度は通常は常温であり、浸漬時間は通常10秒以上、また、通常1時間以下の範囲である。
(iii)基材自身がカチオン性基を有する場合:
基材自身がカチオン性基を有する場合、そのような基材の例としては、以下のものが挙げられる。
・カチオン性基を有する、トリアセテート系、アクリル系、ポリエステル系、トリアセチルセルロース系、ウレタン系、ポリカーボネート系、シクロオレフィン系又は液晶性高分子系のポリマー。
・トリアセテート系、アクリル系、ポリエステル系、トリアセチルセルロース系、ウレタン系、ポリカーボネート系、シクロオレフィン系或いは液晶性高分子系のモノマー又はポリマーに、カチオン性基を有するモノマーを共重合してなるポリマー。
・カチオン性基を有するポリマーとカチオン性基を有さないポリマーとを配合してなるポリマー組成物。
上述のポリマーにおけるカチオン性基の割合は、ポリマー全体に対するモル分率の値で、通常0.5%以上、90%以下の範囲が好ましい。カチオン性基の割合が少なすぎると、カチオン性基による効果が得られないおそれがあり、カチオン性基の割合が多すぎると、塗布時に溶解してしまうおそれがある。
(iv)その他:
なお、本発明の異方性色素膜用基板は主に光学素子等の用途に用いられることから、上述の基材、高分子膜、表面処理層等は、可視光に対する透過率が高いことが望ましい。また、複屈折などの光学異方性は、その用途によって大小制御できるほうが好ましい。
また、上述のカチオン性基は、基材表面の全体に存在していてもよく、基材表面の一部のみに存在していてもよい。特に、基材が平板形状である場合、上述のカチオン性基は、基材の片面のみに存在していてもよく、両面に存在していてもよい。これらは基材の形状や、高分子膜、表面処理層等の種類及びその作製方法、本発明の異方性色素膜用基板の用途等に従って、適宜選択すればよい。
[I−3.その他]
以上説明した本発明の異方性色素膜用基板を用い、その上に後述する手法で異方性色素膜を形成することにより、乾燥時やレーキ化時等における亀裂や剥離の発生が抑えられた、均一な異方性色素膜を得ることが可能となる。
本発明の異方性色素膜用基板により上述の利点が得られる理由は明らかではないが、水溶性色素と反対の電荷を有する基板を用いることにより、静電相互作用で色素が強く基板表面に吸着されるため、大きな体積変化を伴う乾燥時やレーキ化時においても、異方性色素膜の亀裂や剥離を生じないものと推測される。
以上の効果を奏することから、本発明の異方性色素膜用基板は、亀裂や剥離の発生が少ない良好な異方性色素膜の作製が求められる各種の分野において使用できる。例としては、上述のように、偏光膜(直線偏光膜、円偏光膜)、位相差板、導電異方性膜等を作製する用途が挙げられる。中でも、本発明の異方性色素膜用基板上に偏光膜として異方性色素膜を作製することにより、後述するように、優れた偏光素子を得ることが可能となる。
[II.異方性色素膜]
本発明の異方性色素膜用基板は、その上に異方性色素膜を形成することにより、偏光素子等の各種用途に用いられる。以下、本発明の異方性色素膜用基板上に形成される異方性色素膜について説明する。
[II−1.色素]
本発明において異方性色素膜の形成に用いられる色素は、特に制限されるものではなく、従来公知の各種の色素が使用可能であるが、通常は二色性色素が用いられる。
また、本発明に用いる色素は、配向制御のため、液晶相を有する色素であることが好ましい。なお、本発明において「液晶相を有する色素」とは、溶剤中でリオトロピック液晶性を示す色素を意味する。
特に、本発明に用いる色素としては、水への溶解性が高く、色調が偏光素子に適しているという理由から、アニオン性色素が好ましい。なお、本発明において「アニオン性色素」とは、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基などの酸性基を有する色素をいう。
また、本発明に用いる色素は、後述の湿式成膜法に供するために、水溶性であることが好ましい。なお、本発明において「水溶性」の色素とは、例えば、常温、常圧条件下における水に対する溶解度が10mg/ml以上である色素をいう。
また、本発明に用いる色素は、塩型を取らない遊離の状態で、その分子量が通常200以上、中でも300以上、また、通常1500以下、中でも1200以下の範囲であることが好ましい。分子量が小さすぎると、溶媒中での会合性が低くて液晶性を発揮しないおそれがあり、逆に分子量が大きすぎると、合成プロセスが複雑となりコストが高くなる傾向がある。
本発明に用いる色素の例としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、縮合多環系色素(ペリレン系色素、オキサジン系色素等)等が挙げられる。中でも、異方性色素膜中で高い分子配列を取りうるアゾ系色素が好ましい。なお、本発明において「アゾ系色素」とは、アゾ基を少なくとも1個以上持つ色素をいう。その一分子中のアゾ基の数は、色調及び製造面の観点から、2以上が好ましく、6以下が好ましく、さらに好ましくは4以下、最も好ましくは3以下である。
本発明に用いる色素の好ましい具体例としては、下記式(I−1)〜(I−8)で表わされる構造の色素が挙げられる(以下、式で構造を表わした色素や化合物等については、その式の番号を付して「色素(I−1)」のように表記する場合がある。)。但し、本発明に用いる色素は以下に例示するものに限定されるものではない。
本発明に用いる色素の合成法は特に制限されないが、例えば、上述の色素(I−1)の場合、下記(A)〜(D)の工程により製造することができる。
(A)工程:3−アミノベンゼンスルホン酸(メタニル酸)と、下記式(i)で表わされる化合物とを用い、常法(例えば、細田豊著「新染料化学」(昭和48年12月21日、技報堂発行)第396頁〜第409頁参照)に従って、ジアゾ化、カップリング工程を経てモノアゾ化合物を製造する。
(B)工程:上記(A)工程で得られたモノアゾ化合物を用い、同様に常法によりジアゾ化し、上記化合物(i)とカップリング反応を行なって、ジスアゾ化合物を製造する。
(C)工程:上記(B)工程で得られたジスアゾ化合物を、同様に、常法によりジアゾ化し、7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸(RR酸)とカップリング反応を行なって、トリスアゾ化合物を製造する。
(D)工程:上記(C)工程の反応終了後、反応系に塩化ナトリウムを加えて塩析することにより、目的とする色素(I−1)が得られる。なお、必要に応じ、得られた色素を更に精製してもよい。
本発明の異方性色素膜用基板上への異方性色素膜の形成には、上に例示した各種の色素のうち何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、配向を低下させない程度の割合で、上記例示以外の色素を一種又は二種以上併用してもよい。このように、色素の選択及び組み合わせを調整することにより、各種の色相を有する異方性色素膜を作製することができる。
上記例示以外の色素を配合する場合、配合用として好ましい色素の例としては、例えばC.I.Direct Yellow 12、C.I.Direct Yellow 34、C.I.Direct Yellow 86、C.I.Direct Yellow 142、C.I.Direct Yellow 132、C.I.Acid Yellow 25、C.I.Direct Orange 39、C.I.Direct Orange 72、C.I.Direct Orange 79、C.I.Acid Orange 28、C.I.Direct Red 39、C.I.Direct Red 79、C.I.Direct Red 81、C.I.Direct Red 83、C.I.Direct Red 89、C.I.Acid Red 37、C.I.Direct Violet 9、C.I.Direct Violet 35、C.I.Direct Violet 48、C.I.Direct Violet 57、C.I.Direct Blue 1、C.I.Direct Blue 67、C.I.Direct Blue 83、C.I.Direct Blue 90、C.I.Direct Green 42、C.I.Direct Green 51、C.I.Direct Green 59等が挙げられる。
なお、酸性基を有する色素の場合は、その遊離酸型のまま使用してもよく、酸性基の一部が塩型を取っているものであってもよい。また、塩型の色素と遊離酸型の色素が混在していてもよい。また、製造時に塩型で得られた場合はそのまま使用してもよいし、所望の塩型に変換してもよい。
色素の塩型の交換方法は特に制限されず、公知の方法を任意に用いることができる。例としては、以下の方法が挙げられる。
1)塩型で得られた色素の水溶液に塩酸等の強酸を添加し、色素を遊離酸の形で酸析せしめた後、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
2)塩型で得られた色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば、塩化リチウム)を添加し、塩析ケーキの形で塩交換を行う方法。
3)塩型で得られた色素の水溶液を強酸性イオン交換樹脂で処理し、色素を遊離酸の形で酸析せしめた後、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
4)予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で処理した強酸性イオン交換樹脂に、塩型で得られた色素の水溶液を作用させ、塩交換を行う方法。
前記例示色素の塩型の例としては、Na、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、炭素数1〜6の低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン、カルボキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン等が挙げられる。これらの塩型の種類は1種類に限られず、複数種混在していてもよい。
[II−2.異方性色素膜の形成]
本発明の異方性色素膜用基板上への異方性色素膜の形成は、通常、上述の色素を含有する組成物(以下適宜「色素組成物」という。)を用い、これを本発明の異方性色素膜用基板上に成膜することにより行なう。
なお、本発明の異方性色素膜用基板の表面の一部のみにカチオン性基が存在している場合には、後述する利点を有する異方性色素膜を得るために、通常はそのカチオン性基が存在する領域上に色素組成物を成膜するようにする。
成膜の手法は特に制限されないが、色素組成物が液晶性を示すことから、通常は湿式成膜法により行なわれる。以下、湿式成膜法により異方性色素膜の形成を行なう場合を中心として説明する。
湿式成膜法により成膜を行なう場合、色素組成物は通常、上述の色素を適当な溶剤に溶解又は分散させた色素溶液又は色素分散液として調製される。但し、色素組成物の性状は必ずしも液状に制限される訳ではなく、例えばゲル状等であってもよい。
色素組成物に使用される溶剤としては、水、水混和性のある有機溶剤、或いはこれらの混合物が適している。有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類等が挙げられる。これらの溶剤は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶剤の使用量は、色素組成物中の色素濃度が通常0.1重量%以上、中でも1重量%以上、また、通常50重量%以下、中でも30重量%以下の範囲となるように調整することが好ましい。色素組成物中の色素濃度が低すぎると十分な二色性を得ることができず、高すぎると成膜が困難になる。
色素組成物は、上述の色素及び溶剤に加えて、必要に応じて各種の添加剤などの成分を含んでいてもよい。
添加剤の例としては、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤を色素組成物に加えることにより、本発明の異方性色素膜用基板への濡れ性、塗布性を向上させることができる。界面活性剤の例としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系が挙げられるが、これらの何れも使用可能である。界面活性剤の使用量は、色素組成物に対して通常0.05重量%以上、0.5重量%以下が好ましい。
他の添加剤の例としては、"Additives for Coating", Edited by J. Bieleman, Willey-VCH (2000) に記載の各種の公知の添加剤が挙げられる。
湿式成膜法の具体的な手順も特に制限されず、公知の手順を用いればよいが、通常は、色素組成物を本発明の異方性色素膜用基板上に塗布し、塗膜を形成した後、これを乾燥して溶剤を除去し、色素を配向、積層することにより行なわれる。
塗布の手法としては、例えば、原崎勇次著「コーティング工学」、株式会社朝倉書店、1971年3月20日発行、253頁〜277頁や、市村國宏監修「分子協調材料の創製と応用」、株式会社シーエムシー出版、1998年3月3日発行、118頁〜149頁などに記載の方法や、予め配向処理を施した基材上に、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法などで塗布する方法などが挙げられる。
塗布時の条件は特に制限されないが、一般的な条件として、温度は通常0℃以上、好ましくは10℃以上、また、通常80℃以下、好ましくは40℃以下の範囲であり、湿度は通常10%RH以上、好ましくは20%RH以上、また、通常80%RH以下、好ましくは70%RHの範囲である。
塗膜の乾燥時の条件も特に制限されないが、一般的な条件として、温度は通常0℃以上、好ましくは20℃以上、また、通常120℃以下、好ましくは100℃以下の範囲であり、湿度は通常10%RH以上、好ましくは20%RH以上、また、通常80%RH以下、好ましくは70%RHの範囲である。
湿式成膜法により作製される異方性色素膜の膜厚は、用途や目的等に応じて適宜選択すればよいが、一般的には、乾燥後の値で、通常50nm以上、好ましくは100nm以上、また、通常50μm以下、好ましくは20μm以下、更に好ましくは1μm以下の範囲とする。
得られた異方性色素膜は、必要に応じ、その上に保護層を設けてもよい。保護層は、例えば、トリアセテート、アクリル、ポリエステル、ポリイミド、トリアセチルセルロース又はウレタン系のフィルム等の透明な高分子膜によりラミネーションして形成され、実用に供される。
[II−3.異方性色素膜の性質]
本発明の異方性色素膜用基板上に形成される異方性色素膜は、光吸収の異方性を利用して、直線偏光、円偏光、楕円偏光等を得る偏光膜として機能する他、膜形成プロセスの条件や、基板(本発明の異方性色素膜用基板)及び色素組成物の材料・条件等を選択することにより、屈折異方性や伝導異方性などの各種異方性膜としての機能化が可能となり、多様な用途に使用可能な様々な種類の偏光素子とすることができる。
本発明の異方性色素膜用基板上に形成される異方性色素膜の二色比は特に制限されるものではないが、高い方が好ましく、具体的には通常5以上、中でも10以上、更には15以上であることが好ましい。なお、異方性色素膜の二色比は、例えば、ヨウ素系偏光素子を入射光学系に配した分光光度計で異方性色素膜の透過率を測定した後、次式により求めることができる。
本発明の異方性色素膜用基板上に形成される異方性色素膜は、乾燥時やレーキ化時等における亀裂や剥離の発生が抑えられるという、優れた性質を有する。従って、上述の各種の用途に好適に用いられるが、中でも、本発明の異方性色素膜用基板上に偏光膜として異方性色素膜を形成し、偏光素子(本発明の偏光素子)の用途に用いることが好ましい。
[III.偏光素子]
本発明の偏光素子は、上述した本発明の異方性色素膜用基板と、この上に形成された異方性色素膜とを少なくとも備えてなるものである。本発明の異方性色素膜用基板上に形成された異方性色素膜は、上述のように、乾燥時やレーキ化時等における亀裂や剥離の発生が抑えられることから、これを備えた本発明の偏光素子は、耐久性に優れ、偏光特性の劣化が少ないという優れた性質を有する。
なお、本発明の偏光素子をLCDやOLEDなどの各種の表示素子の偏光フィルター等として形成する場合には、これらの表示素子を構成する電極基板等を基材として用い、この上にカチオン性基を有する高分子膜や表面処理層を設けて本発明の異方性色素膜用基板とし、その上に異方性色素膜を形成して偏光素子としてもよく、本発明の偏光素子を別個独立に構成した上で、得られた偏光素子をこれら表示素子の構成部材として用いてもよい。何れの場合も、本発明の異方性色素膜用基板を構成する基材の材料等を、表示装置としての用途を考慮して、予め適切に選択するようにする。
また、本発明の偏光素子は、上述した本発明の異方性色素膜用基板及び異方性色素膜に加えて、更に他の層を有していてもよい。他の層の例としては、異方性色素膜上に設けられる上記の保護層や、粘着層、反射防止層、その他各種の光学機能を有する層が挙げられる。これら光学機能を有する層は、例えば以下の様な方法により形成することが出来る。
位相差フィルムとしての機能を有する層は、例えば特許第2841377号公報、特許第3094113号公報などに記載の延伸処理を施したり、特許第3168850号公報などに記載された処理を施したりすることにより形成することができる。
また、輝度向上フィルムとしての機能を有する層は、例えば特開2002−169025号公報や特開2003−29030号公報に記載されるような方法で微細孔を形成すること、或いは、選択反射の中心波長が異なる2層以上のコレステリック液晶層を重畳することにより形成することができる。
反射フィルム又は半透過反射フィルムとしての機能を有する層は、蒸着やスパッタリングなどで得られた金属薄膜を用いて形成することができる。
拡散フィルムとしての機能を有する層は、上記の保護層に微粒子を含む樹脂溶液をコーティングすることにより、形成することができる。
また、位相差フィルムや光学補償フィルムとしての機能を有する層は、ディスコティック液晶性化合物、ネマティック液晶性化合物などの液晶性化合物を塗布して配向させることにより形成することができる。
以下、本発明について、実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の記載において「部」とは、特に断らない限り「重量部」を示す。
また、各実施例及び各比較例において得られた異方性色素膜の亀裂は、偏光顕微鏡Nikon Optiphot−POLを用い、5倍の対物レンズ及び10倍の接眼レンズを用いて対角位にて観察した。各実施例及び各比較例において掲載した図面代用写真(図1〜6)は、いずれもこの手法によって得られた顕微鏡写真である。各写真において、塗布方向は写真左上から右下へ−45度の方向である。
[実施例1]
水80部に、上記式(I−1)で表される色素のナトリウム塩15部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、pH7の色素組成物を得た。
一方、厚み0.8〜1.0mmのマイクロスライドグラス(松浪硝子社製白縁磨No.1 S−1111)を基材として用い、これをポリ(アクリルアミド−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(Poly (acrylamide-co-diallyldimethylammonium chloride):アルドリッチ社製)の0.1%水溶液に1分間浸漬した後、蒸留水にて十分洗浄し、乾燥空気を吹き付けて乾燥することにより、カチオン化膜つき基板(異方性色素膜用基板)を得た。
得られた異方性色素膜用基板上に、上述の色素組成物をギャップ10μmのアプリケータ(井元製作所社製四面アプリケータ)で塗布した後、真空乾燥することにより、異方性色素膜を形成した。得られた異方性色素膜を上述の手法により顕微鏡観察したところ、亀裂や剥離は観察されなかった。
上記異方性色素膜を5重量部の塩化カルシウム水溶液に5秒間浸漬してレーキ化し、蒸留水で洗浄後、乾燥空気を吹き付けて乾燥した。得られた異方性色素膜を再度、上述の手法により顕微鏡観察した。このレーキ化・乾燥後の異方性色素膜の顕微鏡写真(図面代用写真)を図1として示す。図1から明らかなように、レーキ化・乾燥後においても異方性色素膜の亀裂や剥離は観察されなかった。
[実施例2]
実施例1と同様のマイクロスライドグラスを基材として用い、これをポリ(アリルアミン塩酸塩)(Poly(allylamine hydrochloride):アルドリッチ社製)の0.1%水溶液に1分間浸漬した後、蒸留水にて十分洗浄し、乾燥空気を吹き付けて乾燥することにより、カチオン化膜付き基板(異方性色素膜用基板)を得た。
得られた異方性色素膜用基板上に、実施例1と同様の色素組成物を、ギャップ10μmのアプリケータ(井元製作所社製四面アプリケータ)で塗布した後、真空乾燥することにより異方性色素膜を形成した。得られた異方性色素膜を上述の手法により顕微鏡観察したところ、亀裂や剥離は観察されなかった。
上記異方性色素膜を5重量部の塩化カルシウム水溶液に5秒間浸漬してレーキ化し、蒸留水で洗浄後、乾燥空気を吹き付けて乾燥した。得られた異方性色素膜を再度、上述の手法により顕微鏡観察した。このレーキ化・乾燥後の異方性色素膜の顕微鏡写真(図面代用写真)を図2として示す。図2から明らかなように、レーキ化・乾燥後においても異方性色素膜の亀裂や剥離は観察されなかった。
[実施例3]
実施例1と同様のマイクロスライドグラスを基材として用い、これを3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン(東京化成社製)の0.1%水溶液に1分間浸漬後、蒸留水にて十分洗浄し、乾燥空気を吹き付けて乾燥することにより、カチオン化膜付き基板(異方性色素膜用基板)を得た。
得られた異方性色素膜用基板上に、実施例1と同様の色素組成物を、ギャップ10μmのアプリケータ(井元製作所社製四面アプリケータ)で塗布した後、真空乾燥することにより異方性色素膜を形成した。得られた異方性色素膜を上述の手法により顕微鏡観察したところ、亀裂や剥離は観察されなかった。
上記異方性色素膜を5重量部の塩化カルシウム水溶液に5秒間浸漬してレーキ化し、蒸留水で洗浄後、乾燥空気を吹き付けて乾燥した。得られた異方性色素膜を再度、上述の手法により顕微鏡観察した。このレーキ化・乾燥後の異方性色素膜の顕微鏡写真(図面代用写真)を図3として示す。図3から明らかなように、レーキ化・乾燥後においても異方性色素膜の亀裂や剥離は観察されなかった。
[実施例4]
実施例1と同様のマイクロスライドグラスを基材として用い、これをN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(東京化成製)の0.1%水溶液に1分間浸漬後、蒸留水にて十分洗浄し、乾燥空気を吹き付けて乾燥することにより、カチオン化膜つき基板(異方性色素膜用基板)を得た。
得られた異方性色素膜用基板上に、実施例1と同様の色素組成物を、ギャップ10μmのアプリケータ(井元製作所社製四面アプリケータ)で塗布した後、真空乾燥することにより異方性色素膜を得た。得られた異方性色素膜を上述の手法により顕微鏡観察したところ、亀裂や剥離は観察されなかった。
上記異方性色素膜を5重量部の塩化カルシウム水溶液に5秒間浸漬してレーキ化し、蒸留水で洗浄後、乾燥空気を吹き付けて乾燥した。得られた異方性色素膜を再度、上述の手法により顕微鏡観察した。このレーキ化・乾燥後の異方性色素膜の顕微鏡写真(図面代用写真)を図4として示す。図4から明らかなように、レーキ化・乾燥後においても異方性色素膜の亀裂や剥離は観察されなかった。
[比較例1]
実施例1で基材として用いたものと同様のマイクロスライドグラスを異方性色素膜用基板として用い、この上に、実施例1と同様の色素組成物をギャップ10μmのアプリケータ(井元製作所社製四面アプリケータ)で塗布した後、真空乾燥することにより異方性色素膜を得た。得られた異方性色素膜には、亀裂や剥離は観察されなかった。
上記異方性色素膜を5重量部の塩化カルシウム水溶液に5秒間浸漬してレーキ化し、蒸留水で洗浄後、乾燥空気を吹き付けて乾燥した。得られた異方性色素膜を再度、上述の手法により顕微鏡観察した。このレーキ化・乾燥後の異方性色素膜の顕微鏡写真(図面代用写真)を図5として示す。図5から明らかなように、レーキ化・乾燥後の異方性色素膜には、塗布方向に平行な長さ数mmの亀裂が観察され、異方性色素膜の端部では剥離が起きていた。
[比較例2]
ガラス製基板(75mm×25mm、厚さ1mm)上にシルク印刷法によりポリイミドの配向膜を形成し(ポリイミド膜厚約800Å)、予め布でラビング処理を施したものを異方性色素膜用基板として用いた。
この異方性色素膜用基板上に、実施例1と同様の色素組成物をギャップ10μmのアプリケータ(井元製作所社製四面アプリケータ)で塗布した後、真空乾燥することにより異方性色素膜を得た。得られた異方性色素膜を上述の手法により顕微鏡観察したところ、亀裂や剥離は観察されなかった。
上記異方性色素膜を5重量部の塩化カルシウム水溶液に5秒間浸漬してレーキ化し、蒸留水で洗浄後、乾燥空気を吹き付けて乾燥した。得られた異方性色素膜を再度、上述の手法により顕微鏡観察した。このレーキ化・乾燥後の異方性色素膜の顕微鏡写真(図面代用写真)を図6として示す。図6から明らかなように、レーキ化・乾燥後の異方性色素膜には、塗布方向に平行な長さ100μmから1mmの亀裂が観察され、異方性色素膜の端部では剥離が起きていた。
[評価]
以上の実施例及び比較例の結果から明らかなように、表面にカチオン性基を有する異方性色素膜用基板(本発明の異方性色素膜用基板)を用いた実施例1〜4では、カチオン性基を有さない基板を用いた比較例1,2とは異なり、レーキ化時や乾燥時に亀裂や剥離の発生が抑えられた、良好な異方性色素膜が得られていることが分かる。
本発明の異方性色素膜用基板は、亀裂や剥離の発生が少ない良好な異方性色素膜の作製が求められる各種の分野、例えば直線偏光膜、円偏光膜、位相差板、導電異方性膜等の各種用途において好適に用いることができるが、中でも偏光膜の作製用途においてとりわけ好適に用いられる。また、本発明の異方性色素膜用基板上に異方性色素膜を設けた本発明の偏光素子は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、液晶プロジェクタ、車載用表示パネル等の各種用途において好適に使用することができる。
実施例1で得られた異方性色素膜のレーキ化後における顕微鏡写真(図面代用写真)である。 実施例2で得られた異方性色素膜のレーキ化後における顕微鏡写真(図面代用写真)である。 実施例3で得られた異方性色素膜のレーキ化後における顕微鏡写真(図面代用写真)である。 実施例4で得られた異方性色素膜のレーキ化後における顕微鏡写真(図面代用写真)である。 比較例1で得られた異方性色素膜のレーキ化後における顕微鏡写真(図面代用写真)である。 比較例2で得られた異方性色素膜のレーキ化後における顕微鏡写真(図面代用写真)である。

Claims (6)

  1. 表面にカチオン性基を有する
    ことを特徴とする、異方性色素膜用基板。
  2. 少なくとも基材と、該基材上に設けられた高分子膜とを備えてなり、
    前記カチオン性基が、該高分子膜が有する基である
    ことを特徴とする、請求項1記載の異方性色素膜用基板。
  3. 少なくとも基材を備えてなり、
    前記カチオン性基が、該基材の表面をカップリング剤で処理して得られる基である
    ことを特徴とする、請求項1記載の異方性色素膜用基板。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載の異方性色素膜用基板上に、少なくとも色素を含有する組成物を成膜して得られる
    ことを特徴とする、異方性色素膜。
  5. 請求項1〜3の何れか一項に記載の異方性色素膜用基板上に、少なくとも色素を含有する組成物を成膜する
    ことを特徴とする、異方性色素膜の製造方法。
  6. 請求項1〜3の何れか一項に記載の異方性色素膜用基板と、該異方性色素膜用基板上に設けられた異方性色素膜とを有する
    ことを特徴とする、偏光素子。
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JP2013156665A (ja) * 2008-06-20 2013-08-15 Nitto Denko Corp 耐水性偏光膜の製造方法

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