JP5217461B2 - 作業車両の原動部構造 - Google Patents

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Description

コンバインなどの作業車両の原動部構造に関する。
作業車両の一例として、コンバインは、穀稈を刈取装置により刈り取って搬送し、フィードチェーンから脱穀装置に供給して、脱穀、選別し、脱穀選別された穀粒をグレンタンクに一時貯溜した後、グレンタンク内の穀粒をコンバインの外部に排出する構成である。したがって、コンバインの周囲には搬送、脱穀する際の藁屑や塵埃等が飛散して漂っており、またこのように飛散した藁屑などがコンバイン内に入り込むことで動力の伝動機構や電気系統等に不具合が生じる原因となることもある。
そして、コンバインのエンジンルームの吸気側に配置するラジエーターカバーには、藁屑や塵埃等がエンジンルーム内に入り込むことを防止するために防塵網を取り付けている。しかし、吸気の際に防塵網に塵埃等が付着するため、これら塵埃等を清掃して目詰まりを防止し、エンジンの冷却効果を高める装置が開示されている。
例えば、下記特許文献1には、防塵網面上の付着物を回転駆動する遮蔽装置で除去すると共に、この遮蔽装置を風車で回転駆動させる構成とした防塵装置が開示されている。この遮蔽装置は扇状の塞部(プレート)を防塵網上で回転させることで防塵網上の付着物を取り除く構成である。また、下記特許文献2には、除塵網に清掃機構を設けて、エンジン近傍の温度変化に基づいて作動させる構成が示されている。この構成は、エンジン温度が高くなると除塵網の目詰まりを清掃作動によって解消し、オーバーヒートを未然に防止せんとするものである。
特開2002−59748号公報 特開昭60−159328号公報
従来から、ラジエーターカバーの防塵ネットは、冷却風の吸気作用に伴い網面に付着する塵埃によって、外気の吸引作用が阻害され、エンジンのオーバーヒートに繋がる虞がある。したがって、このような不具合を防止するために、防塵ネットには清掃手段が設けられ、付着塵埃を取り除いて、外気の吸気作用を常に良好に保持して、効果的にラジエータを冷やしながらエンジンのオーバーヒートを未然に防止する手段が講じられている。
そして、従来の清掃装置は、上記特許文献1及び2に開示されているように、清掃機構(プレート状の塞部やブラシ)を、網面上に回転、或いは往復揺動させる構成としている。したがって、これらの構成では、網面上におけるブラシの清掃範囲が円形の回転範囲、又は扇形の往復揺動範囲に限られた部分のみが清掃され、防塵ネットの略全面に渡って清掃できない。
また、塞部やブラシが防塵ネットに当たる部分は、その間(当たっている間)外気が遮断されるため、外気の吸気作用が阻害されることでラジエーターの冷却効果が低下する。
本発明の課題は、ラジエーターの防塵網の略全面を清掃可能であり、且つ外気の吸気作用を阻害せず、ラジエーターの冷却効果を維持する作業車両の防塵装置などの原動部構造の提供である。
上記課題は次の解決手段により解決できる。
請求項1記載の発明は、冷却ファン(1)を備えたエンジン(16)と、冷却ファン(1)の外側に設けられたラジエーター(5)と、該ラジエーター(5)の外側に設けられ、該ラジエーター(5)へ供給される外気の濾過用の網部(3)および該網部(3)を取り付けた外枠を構成する枠部(2)とからなるラジエーターカバー(2,3)と、前記ラジエーターカバー(2,3)の網部(3)の内側面に接近して設けられ、網部(3)の目合いの一部を塞いで外気の通過を遮断する遮風プレート(6)と、該遮風プレート(6)を前記網部(3)の内側面に沿って直線的に往復運動させる移動機構(23)とを設け、前記ラジエーターカバー(2,3)の枠部(2)の網部(3)を取り付けた部位の周りに網部(3)よりも外側に突出するように段差部(D)を設け、該段差部(D)に、ラジエーター(5)を迂回して冷却ファン(1)に至る吸気風路の吸気口(60)を設け、前記遮風プレート(6)は上部プレート(6a)と下部プレート(6b)からなり、上部プレート(6a)の下端部に設けた長孔(19)と、下部プレート(6b)の上端部に設けられ、前記長孔(19)に上下摺動自在に嵌合した摺動ピン(20)とにより、上部プレート(6a)と下部プレート(6b)とが連結されることで、遮風プレート(6)を前記連結部で伸縮自在、且つ往復運動方向に折曲自在に構成した作業車両の原動部構造である。
請求項1記載の発明によれば、網部の目合いの一部を塞いで通過外気を遮断する遮風プレートが網部の内側面に沿って直線的に往復運動することによって、外気の通過を遮断して網部に吸着している塵埃を脱落しやすくすることができる。この場合、遮風プレートは、網部の内側面に沿って直線的に往復運動することによって網部のほとんど全面に渡って移動できるから、網部の通過外気を一時遮断して塵埃を脱落しやすくすることができる。したがって、従来の固定した回転軸を中心とするブラシなどによる回転運動による清掃のように、清掃範囲が限定されることはない。
更に、ラジエーターカバーの枠部の網部を取り付けた部位の周りの段差部にラジエーターを迂回して冷却ファンに至る吸気風路の吸気口60を設けることで、網部の外側面に吸着されている塵埃を、この遮風プレートの縁部越しに吸引される外気の流れによってこの縁部付近に吸着し、遮風プレートの移動によって、この遮風プレートと共に網部の外側面上を移動させ、吸気口60から吸い込んで除去することができる。
これによって、網部における外気の通過状態を良好に維持して、ラジエーターの冷却効果を維持し、エンジン16のオーバーヒートを防止して作業能率を高めることができる。
また、上部プレート(6a)の下端部に設けた長孔(19)と、下部プレート(6b)の上端部に設けられ、前記長孔(19)に上下摺動自在に嵌合した摺動ピン(20)とにより、上部プレート(6a)と下部プレート(6b)が連結されているため、遮風プレート(6)が連結部で伸縮自在、且つ往復運動方向に折曲自在となる。
請求項2記載の発明は、前記上部プレート(6a)と下部プレート(6b)との連結部には、該上部プレート(6a)と下部プレート(6b)との間に介在して上部プレート(6a)と下部プレート(6b)とが一直線状になるように縮小方向に付勢するスプリング(8)を設けた請求項1記載の作業車輌の原動部構造である。
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明の作用に加えて、上部プレート(6a)と下部プレート(6b)はスプリング(8)の張力により折れ曲がった状態から一直線状に自動復帰が出来る。
請求項記載の発明は、前記ラジエーター(5)を迂回して冷却ファン(1)に至る吸気風路中に風洞(61)を設け、前記ラジエーターカバー(2,3)を開閉可能な構成とし、ラジエーターカバー(2,3)を閉じた場合に、前記吸気口(60)が風洞(61)に連通する構成とした請求項1又は請求項2に記載の作業車輌の原動部構造である。
また、請求項記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、ラジエーターカバー2,3を開閉可能な構成とすることで、容易にラジエーターカバー2,3内のラジエータなどのメンテナンスができ、また、メンテナンス終了後は、ラジエーターカバー2,3を閉じることによって吸気口60を風洞61に連通させることができ、これによって吸気口60から風洞61を経て冷却ファンに至る吸気風路が形成されて、網部外側面の塵埃除去を行うことができる。
請求項1記載の発明によれば、遮風プレートの網部の内側面に沿った直線的な往復運動と該遮風プレートの移動に伴って吸気口60から塵埃を吸い込んで除去することで、網部に吸着されている塵埃を除去し、網部における外気の通過状態を良好に維持して、ラジエーターの冷却効果を維持し、エンジン16のオーバーヒートを防止して作業能率を高めることができる。
また、遮風プレート(6)が伸縮自在、且つ往復運動方向に折曲自在であるため、例えば、斜めにカットされた形状に設けられている防塵ネット(3)であっても、遮風プレート(6)はその部分を移動して、通過する外気を一時的に遮断して付着している藁屑や塵等の塵埃の清掃ができる。
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明の効果に加えて、上部プレート(6a)と下部プレート(6b)との連結部に設けたスプリング(8)の張力によって、該上部プレート(6a)と下部プレート(6b)からなる遮風プレート(6)を、折れ曲がった状態から一直線状に自動復帰させることが出来る。
また、請求項記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、ラジエーターカバー2,3を開閉可能な構成により容易にラジエーターカバー2,3内のラジエータなどのメンテナンスができ、また吸気口60から風洞61を経て冷却ファンに至る吸気風路により網部外側面の塵埃除去を行うことができる。
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
図1には本発明の一実施形態による原動部構造の防塵装置を装備したコンバインの右側面図を示し、図2には図1のコンバインの防塵装置の右側面図(外側から見た図)を示し、図3には図2の防塵装置の左側面図(内側から見た図)を示す。図4には、図2のラジエーターカバー付近のA−A線断面矢視図を示す。なお、図2及び図3は遮風プレートの作用を示す図であるため、見やすいように、後述するラジエーターカバーの吸気口の図示を省略している。
また、本明細書では、特に断りがない限り、左側及び右側とはコンバインが前進する方向に向いたときの方向を言う。
図1に示すように、コンバインの車体11の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行装置(以下、走行クローラと称す。)10を有する走行装置本体を配設し、車体11の前端側に分草杆13aを備えた刈取装置13が設けられている。刈取装置13は車体11の上方の支点を中心にして上下動する刈取装置支持フレーム(図示せず)で支持されているので、コンバインに搭乗したオペレータが運転台の操縦席14の操向レバー48を前後に傾倒操作することにより、刈取装置支持フレームと共に上下に昇降する構成である。
車体11の上方には、刈取装置13から搬送されてくる穀稈をフィードチェーン(図示せず)により引き継いで搬送して脱穀、選別する脱穀装置(周知のとおり、図1においてグレンタンク12の裏側に隣接して設けている。)と該脱穀装置で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク12が載置され、グレンタンク12の後部に縦オーガ、横オーガからなる穀粒排出オーガ15を連接して、コンバインの外部に排出する構成としている。
すなわち、コンバインはオペレータが操縦席14においてHST主変速レバー42および副変速レバー43を操作し、エンジン16(エンジンルーム4内にある)の動力を図示しない走行トランスミッションケース内の主変速機を介して変速し、左右の走行クローラ10、10に伝動して任意の速度で走行する。
また、コンバインは、オペレータが操縦席14において操向レバー48を左右に傾倒操作することにより各種旋回走行することができる。すなわち、操向レバー48をコンバインを旋回させようとする方向に傾倒操作することにより、左右の走行クローラ10、10に速度差が与えられて走行方向の変更が行われる構成としている。
そして、エンジンルーム4は、図1に示すように前記操縦席14の下側に配置され、図4に示すように、内側にエンジン16を搭載し、その外側に隣接させて冷却ファン1を軸架し、更に、その外側にはラジエーター5を装置した構成としている。そして、ラジエーターカバー2,3は、前記エンジンルーム4の外側枠に沿わせて開閉自在に設けられ、すぐ内側にある前記ラジエーター5に臨ませるように、外枠を構成する枠部2にラジエーター5へ供給される外気の濾過用の防塵ネット(網部)3を張設して設けている。なお、防塵ネット3の部分は網に限らず、板に多数の穴を設けためくら鉄板のようなものなど、通気が可能な構成であれば良い。そして、前記冷却ファン1の吸引作用によって外気を除塵しながら防塵ネット3を通過させてエンジンルーム4に冷気の供給ができるようにエンジン冷却装置を構成している。防塵ネット3は網面3a,3b,3cからなり、網面3a,3cは共にほぼ長方形、網面3bは台形の形状をしている。
そして、遮風プレート6は、図2及び図3に示すように、前記防塵ネット3の網面3a,3b,3cの目合いの一部を塞いで、一時的に外気の通過を遮断できる程度の横幅を持たせて上下に長く形成し、網面3a,3b,3cの内側に接近させて配置している。
つぎに、遮風プレート6の直線運動による移動方向を案内するガイド装置7a,7bは、ラジエーターカバー枠部2に連結し、前後方向(図面の左右方向)に長手方向を有する長穴7A,7Bを設けたプレートからなり、図2及び図3に示すように、前記ラジエーターカバー2,3の上部と下部とに一対を平行に配置し、前記遮風プレート6の上部と下部に設けたスライド保持具18,18が長穴7A,7B内をスライド可能に支持した構成である。また、ガイド装置7aは網面3bの上方の枠部2に、ガイド装置7bは網面3aと3cの間の枠部2にそれぞれ取り付けられている。そして、図2及び図3に示すように、ガイド装置7aはガイド装置7bより短い構成である。
このようにして、遮風プレート6は、上下一対のガイド装置7a,7bにスライド保持具18,18を摺動可能に支持させて、前記防塵ネット3の網面3a,3b,3cに沿って横(車体11に対しては前後方向)にスライドできる構成である。なお、ガイド装置7a,7bは上下のみならず、ラジエーターカバー2,3の上下中間位置にある横桟に補助的に上記ガイド装置7a,7bと同様な構成の中間ガイド装置を設けても良い。
また、ガイド装置7a,7bをラジエーターカバー2,3の左右両端に設け、遮風プレート6は前記防塵ネット3の網面3a,3b,3cに沿って縦(上下方向)にスライドできる構成としても良い。
つぎに、上記遮風プレート6は、図2及び図3に示すように、上部プレート6aと下部プレート6bの上下二つに分割可能であり、該分割部で上部プレート6aと下部プレート6bは重複している。そして、上部プレート6aに長孔19を開孔し、下部プレート6bにはその長孔19に摺動自在に嵌合する摺動ピン20を設け、その部分(長孔19が存在する分割部)で伸縮自由で、且つ、折曲自在に連結した構成である。
コンバインにおいて、エンジンルーム4は操縦席14の下部に配置されている場合が多いため、オペレータの乗降の妨げにならないように上側の前後幅が下側に比べて狭くなっていることが多い。また、エンジン冷却装置のレイアウト上、カバーの形状が限定される場合もある。
したがって、必然的にラジエーターカバー2,3の形状も上下で前後幅が異なる場合もあり、このような場合はラジエーターカバー2,3の略全面を清掃することが困難である。
しかし、本構成によれば、前記遮風プレート6は図2の仮想線で示すように水平方向の長さが短い上側のガイド装置7aの一方の端部である終点位置に達すると、下側の長いガイド装置7bによって一方の下部プレート6bのみが横方向に移動し、上部プレート6aが下部プレート6bの動きに連動して傾斜状態に倒れて変形した網面3bを塞いで通過外気を遮断できる構成である。このとき、遮風プレート6は、上部プレート6aと下部プレート6bとの分割部にある長孔19内を摺動ピン20が動くことで上下に伸長し、且つ、折曲自在になっている。
そして、遮風プレート6は、図2の実線で示すように、車両の本体(車体)11の後方側から前方に向けて、まずラジエーターカバー枠部2の板面上を通過し、その後図示するように角部(図面右側、車両の本体(車体)11に対しては前方側の三角形の一角)の網面3b上で上部プレート6aが斜めに傾きながら移動することが出来る程度の長さに構成している。したがって、遮風プレート6は、斜めにカットされた形状に設けられている防塵ネット3であっても、その部分を移動して、通過する外気を一時的に遮断して付着している藁屑や塵等の塵埃の清掃ができる。
そして、前記遮風プレート6は、図3に示すように、上部プレート6aと下部プレート6bとの間の連結部位(分割部)において、両プレート6a,6b間にスプリング8を介装して、常に、スプリング8の縮小方向へ付勢されている。したがって、遮風プレート6は、車両の本体11の後方側から前方に向けて移動する間に、図2において、一点鎖線の位置から二点鎖線の位置へはスプリング8の張力に抗して移動し、逆の復帰行程では、スプリング8の張力で自動復帰が出来る。
つぎに、遮風プレート6の横移動機構について説明する。
まず、表面に螺旋状の溝を有するリードカム軸25は、図3に示すように、前記防塵ネット3の内側において、前記ラジエーターカバー枠部2に取り付けられた左右の側枠26,26に架渡しており、下部プレート6bに固着したリードメタル27を螺合して回転自在に軸受け支持した構成としている。
そして、電動モーター28をリードカム軸25の上側に配置して該電動モーター28のモーター軸に減速装置や伝動ギヤ29,30を噛合させて、上記リードカム軸25を正転、及び逆転に伝動する構成である。なお、上記電動モーター28は、スイッチ(図示せず)による操作で適宜オン,オフの切替操作ができる。
図3に示すように、前後リミットスイッチ31,32をそれぞれ前記リードカム軸25の両端部分に接近させて設け、すなわちリードカム軸25の両端部近傍に達したリードメタル27を検出できる位置に設けている。そして、遮風プレート6が車体11に対して前方側又は後方側へ移動し、リードカム軸25の端部に達して前後リミットスイッチ31,32によりリードメタル27がそれぞれ検出されると、図示しないコントローラにより電動モーター28の回転方向を切り替える構成である。
なお、図5に示す、表面に交差状の溝を有するリードカム軸25を用いると、電動モーター28の回転方向を切り替えることなく、一方向回転のみで遮風プレート6の往復移動が可能である。
以上のように構成された原動部に設けられた防塵装置17によって、塵埃の多い圃場でコンバインが刈取脱穀作業を行った場合、またはコンバイン作業を長時間続けた場合等に、エンジンルーム4の外側に設けたラジエーターカバー2,3の防塵ネット3には藁屑や塵が付着して外気の吸引作用が阻害されることが多い。そこで、オペレーターが、刈取脱穀作業の開始時に、エンジン始動スイッチをオン操作すると、電動モーター28が始動して伝動ギヤ29,30を介してリードカム軸25が回転駆動し、リードメタル27を正転方向に駆動する。
リードメタル27を正転方向に駆動することで、遮風プレート6は、図2に示すように、上記リードメタル27と共に横方向に移動を開始して、上下のスライド保持具18,18が、それぞれガイド装置7a,7bに支持されながら案内されて防塵ネット3の網面3a,3b,3c上を移動する。そのとき、遮風プレート6が連続的に移動する工程において、遮風プレート6が位置している部分では一時的に冷却ファン1の吸引作用で吸引されている外気が遮断されて空気の通過が止まり、防塵ネット3の網面3a,3b,3c上に付着している塵埃が吸着力を失って落下することで、防塵ネット3が清掃され、網面の目詰まりが解消される。
そして、防塵ネット3の網面3a,3b,3cの一部を塞ぐ程度の幅を持たせた遮風プレート6が防塵ネット3の網面3a,3b,3cに沿って横方向に直線運動をする構成であるから、防塵ネット3を通過する外気を一時的に遮断して網面3a,3b,3cに付着している塵埃を効果的に除去できる。そして、本実施形態によれば、遮風プレート6が、防塵ネット3に対して、横方向(車体11に対して前後方向)に網面3a,3b,3cに沿いながらほとんど全面に渡って移動可能であるため、防塵ネット3の略全面の塵埃を除去でき、防塵ネット3の目詰まりの防止が出来る。
そして、本実施形態によれば、遮風プレート6を上下のガイド装置7a,7bにスライド可能に支持させたことから、横方向への移動が安定して行われ、防塵ネット3の略全面に亘ってスムーズに移動し、一時的に防塵ネット3を通過する外気を遮断することができて、塵埃の取除作用を効果的に行うことができる。
更に、本実施形態によれば、上下二つに分割した遮風プレート6を伸縮自由で、且つ、折曲自在に連結し、上述の上下のガイド装置7a,7bにより案内されながら横方向に移動するため、変形した網面3b上も網面3bに沿って傾斜しながら移動可能であるため、防塵ネット3の変形した網面3bの清掃も可能である。したがって、防塵ネット3の形状に限定されず、防塵ネット3の網面全面を清掃可能である。
そして、遮風プレート6は変形した網面3b上を傾斜して移動しながら、吸引外気を一時的に遮断して網面3bの塵埃を除去した後、復路において上部プレート6aと下部プレート6bとは、相互間に、常時引っ張り合う方向(縮小方向)に付勢されたスプリング8の張力により、傾斜状態の上部プレート6aが自動的に下部プレート6bと一直線状になるまで復帰できる。
図5(a)には、図1のコンバインの防塵装置(リードカム軸25とそれに付随する部材を除く)のさらに詳細な右側面図を示し、図5(b)には、図5(a)のモーター28付近のS−S線断面矢視図を示す。なお、図4は、図5(a)のラジエーターカバー付近のA−A線断面矢視図でもある。
本実施形態によれば、ラジエーターカバー2,3の防塵ネット3に付着する藁屑や塵埃等を、防塵ネット3の通過風を遮断することによって取り除く遮風プレート6が、車体11に対して前後方向に往復運動する構成である。
図4及び図5に示す防塵装置は、表面に交差状の螺旋溝を有するリードカム軸25を用いており、リードカム軸25を一方向に回転させることで遮風プレート6の往復移動が可能である。したがって、図3に示す螺旋状の溝を有するリードカム軸25を用いる場合は電動モーター28の回転方向を切り替える必要があるが、図5に示す交差状の螺旋溝を有するリードカム軸25を用いれば、電動モーター28の回転方向の切り替えが不要となり、コントローラ等の制御装置の構成が簡素になる。
上述のように遮風プレート6は、防塵ネット3上を移動しながら吸引外気を一時的に遮断して網面3a,3b,3cの塵埃を除去するが、遮風プレート6によって吸引外気が遮断されると外気の吸気作用が阻害されることでラジエーター5の冷却効果が低下する場合もある。
しかし、図3及び図5に示す両実施形態によれば、ラジエーターカバーの枠部2と防塵ネット3との間に枠部2が防塵ネット3よりも外側に突出するように段差部Dを設けて、該段差部Dにラジエーター5を迂回して冷却ファン1に至る吸気風路の外気の吸気口60を設けている。
ラジエーターカバーの枠部2と防塵ネット3との間に段差部Dを設けることで、デザイン上、見た目にも良い。そして当該段差部Dに吸気口60を設けることで、他の場所に吸気口を設ける場合に比べて外観上は目立たないため、ラジエーターカバー2,3などのデザイン性を損なうこともない。
例えば、図4に示すように、ラジエーターカバー2,3の枠部2の防塵ネット3を取り付けた部位の周りに枠部2が防塵ネット3よりも外側に突出するように段差部Dを設ける。このように段差部Dを設けることで、枠部2と防塵ネット3が面一である場合よりもデザイン性に優れ、ラジエーターカバー2,3の見栄えもよくなる。
そして、この段差部Dに、直接、穴やスリットなどを開けて吸気口60を形成し、図4に示すように、枠部2を防塵ネット3を張設している内側の枠部2a(2aの外側端部は防塵ネット3と同一平面上にある)と外側の枠部2b(防塵ネット3よりも外側に突出している)とから構成し、内側枠部2aと外側枠部2bの間に外気の通気用の吸気風路を設ける。
吸気口60から供給された外気は矢印R方向に流れて風洞61を通り冷却ファン1の外部を覆うカバー(例えばめくら鉄板などにより構成されたシュラウド)1a内を通過する。
このようにラジエーターカバーの枠部2と防塵ネット3との間の段差部Dにラジエーター5を迂回して冷却ファン1に至る吸気風路の吸気口60を設けることで、防塵ネット3の外側面に吸着されている塵埃を、この遮風プレート6の縁部越しに吸引される外気の流れによってこの縁部付近に吸着し、遮風プレート6の移動によって、この遮風プレート6と共に防塵ネット3の外側面上を移動させ、吸気口60から吸い込んで除去することができる。
これによって、防塵ネット3における外気の通過状態を良好に維持して、ラジエーター5の冷却効果を維持し、エンジン16のオーバーヒートを防止して作業能率を高めることができる。
また、図4に示すように、ラジエーターカバー外側枠部2bの先端部2baの前後位置を防塵ネット3とラジエーターカバー内側枠部2aとの境界部分の位置まで延長したり、また、ラジエーターカバー外側枠部2bの先端部2baが側面視で一部防塵ネット3に重なるまで延長しても良い。
このようにラジエーターカバー外側枠部2bの突出先端部2baの前後位置を防塵ネット3とラジエーターカバー内側枠部2aの境界部分の位置(または側面視で若干防塵ネット3に重なる位置)まで延長すると、側面視で図5に示すように、吸気口60がラジエーターカバー外側枠部2bにより隠れて目立たないため、ラジエーターカバー2などのデザイン性を損なうこともない。
本構成を採用することにより、デザイン性の優れるラジエーターカバー枠部2と防塵ネット3との段差部Dを生かしてその部分に吸気口60を設けることで、デザイン性を損なうことなく、ラジエーター5の冷却性能を向上できる。
なお、吸気口60は防塵ネット3の外周全面又は外周の一部に設けてもよく、図5に示すようにラジエーターカバー2,3の前側(車体11に対して前方側)に設けると良い。即ち、ラジエーターカバー枠部2と防塵ネット3の後側に縦軸の開閉支点を設け、この開閉支点を中心としてラジエーターカバー枠部2と防塵ネット3の前側を開閉自在に構成した場合に、吸気口60につながる風胴61をラジエーター5の前側を迂回するように設ければ、ラジエーターカバー枠部2と防塵ネット3を開放することによって、この風胴61部分のメンテナンスも容易に行なうことができる。
図6(a)には、図1のコンバインの他の実施形態による防塵装置の右側面図を示し、図6(b)には、図6(a)のモーター付近のS1−S1線断面矢視図を示す。
前記リードカム軸25、リードメタル27、電動モーター28、伝動ギヤ29,30などの遮風プレート6の横移動機構23の駆動部を遮風プレート6の上下中央部に配置し、該駆動部のない遮風プレート6の下部の空間にオイルクーラ51を配置しても良い。これによって、当該空間を有効利用しながらできるだけ大きな容量のオイルクーラ51を設置でき、コンバインの各部の作動油の冷却効率をも向上させることができる。
図6に示すように、ラジエーター5の上側にはエンジン16に供給する空気と燃料の混合気体の冷却用インタークーラ50を設けている。遮風プレート6の横移動機構23の駆動部を遮風プレート6の上下中央部に配置することで、ラジエーターカバー2,3内の横移動機構(駆動部)23の下側にスペースが空いて当該空間にオイルクーラ51を配置できる。
本構成を採用することにより、ラジエーターカバー2,3内の駆動部のない空いたスペースにオイルクーラ51を配置することにより、空間を効率よく有効利用できる。そして、このようにエンジン冷却装置全体の小型化が図れることで、作業車両の小型化も可能である。
図7(a)には、図1のコンバインの他の実施形態による防塵装置の左側面図(内側から見た図)を示し、図7(b)には、図7(a)のラジエーターカバー付近のB−B線矢視断面図を示す。なお、見やすいように遮風プレート6やその駆動部などは図示を一部省略している。
ラジエーター5やインタークーラ50などのエンジン冷却装置を収納した冷却装置収納部(冷却部ともいう)と冷却部よりも外側の外気部をラジエーターカバー2,3の外枠2に沿って設けられたシールゴムなどのシール材53で隔離すると共にコンバイン本体側(内側)にもシールプレート54,55,57を設ける。コンバイン本体側のシールプレート54,55,57はコンバイン本体と別部材で構成すると良い。また、シールプレート54に外気の吸気風路となる風洞61を設けても良い。
ラジエーターカバー2,3はエンジンルーム4の外側枠に沿わせて矢印T方向に回動支点Gを中心として開閉自在に設けられており、ラジエーターカバー2,3の外枠2に沿って周囲全面にシール部53が形成されている。ラジエーターカバー2,3を閉めた状態で吸気口60からシールゴム53,53間を介して外気が矢印R方向に空間部Kを流れて吸気口60に連通する風洞61を通過する。
ラジエーターカバー2,3を開閉可能な構成とすることで、容易にラジエーターカバー2,3内のラジエータ5などのエンジン冷却装置のメンテナンスができる。また、メンテナンス終了後は、ラジエーターカバー2,3を閉じることによって吸気口60を風洞61に連通させることができ、これによって吸気口60から風洞61を経て冷却ファン1に至る吸気風路が形成されて、防塵ネット3外側面の塵埃除去を行うことができる。
そして、ラジエーターカバー2,3とコンバイン車体11側との連結部にはそれぞれ外気を隔離するシール部53,54,55,57を設けているため、ラジエーターカバー2,3を閉じた際の密着性を高めることができる。
更にコンバイン本体側のシールプレート54,55,57をコンバイン本体とは別部材で構成することで、シールプレート54,55,57のみを取り外してラジエーター5などの交換や点検、清掃等を容易に行うことができ、メンテナンス性が向上する。また、ラジエーターカバー2,3を閉じた場合に、コンバイン本体側のシールプレート54,55,57に吸気口60と連通する風洞61を設けることで、部材が削減でき、構成が簡易となる。
そして、図7に示すように、コンバイン車体11側のシールプレートを車体11に対して前方側のシールプレート54、下側のシールプレート57、車体11に対して後方側のシールプレート55など複数箇所に分けて設けることで、必要な箇所のシールプレートのみを取り外せば良いため、メンテナンスの作業性に優れる。
図8(a)には、図1のコンバインの他の実施形態による防塵装置の右側面図を示し、図8(b)には、図8(a)のモーター付近のS2−S2線断面矢視図を示す。
図8に示す例は、遮風プレート6が前記した横移動機構23により後端(図8の左側)まで移動すると、防塵ネット3と電動モータ28や伝動ギヤ29,30などの駆動部との間の隙間に入り込む構成である。予め電動モータ28や伝動ギヤ29,30などをブラケット33上に支持させた駆動部とラジエーターカバー2,3間に、若干、遮風プレート6が通過できる程度の隙間を設けて駆動部を配置することで、遮風プレート6の移動範囲をより大きく取ることができる。
図9(a)には、図1のコンバインの他の実施形態による防塵装置の右側面図を示し、図9(b)には、図9(a)のモーター付近のS3−S3線断面矢視図を示す。
図5で説明したリードカム軸25の代わりに通常の一方向の螺子溝を有したシャフト65を設けて、前後リミットスイッチ31,32をシャフト65の下方両端部分に設けて、遮風プレート6が前後リミットスイッチ31,32に接触すると移動方向を切り替えられるようにしても良い。
すなわち、遮風プレート6が車体11に対して前方側又は後方側に移動してシャフト65の端部に達して前後リミットスイッチ31,32に接触すると当該電気信号が検出されて、コントローラにより電動モーター28の回転方向(正逆回転)を切り替える構成である。前後リミットスイッチ31,32は図3に示すようなものでもよく、シャフト65の両端でリードメタル27を検出できる位置に設けても良い。
図9に示す例では、電動モーター28の回転方向によって遮風プレート6の移動方向を変えるため、リードカム軸25が不要になり、シャフト65の加工が簡単で済む(軸に交差状の溝をつける手間が省けること)ため、防塵装置の製造コストを低減でき、安価に提供できる。
そして、遮風プレート6が車体11に対して前方側又は後方側の防塵ネット3の端部に達すると当該移動を停止する構成としても良い。すなわち、遮風プレート6がシャフト65の端部に達して前後リミットスイッチ31,32によりリードメタル27が検出されると、コントローラから遮風プレート6の移動停止命令が駆動部のドライブユニットに発せられる構成である。また、遮風プレート6の往復回数を設定して、該設定回数往復した後に停止する構成としても良い。
このように遮風プレート6が防塵ネット3との重複範囲の狭いストロークの端(往路又は復路の終端部)で自動的に停止することにより、遮風プレート6の停止中に遮風プレート6が防塵ネット3を通過する吸引風を遮ることが低減され、ラジエーター5などの冷却効果を大きく損なうことがない。更に、わざわざ遮風プレート6の停止位置をオペレーターが調節する手間も省ける。
また、例えば吸気口60をラジエーターカバー2,3の前側(車体11に対して前方側)のみに設けた場合は、遮風プレート6が後ろ側に移動したときに停止する構成とすれば良い。本構成を採用することにより、次回の防塵装置17の作動時に遮風プレート6が後ろ側から前側に移動するため、防塵ネット3に付着する藁屑や塵埃などのゴミを前側の吸気口60に移動させることができるので、作動開始時のゴミの除去効果が大きい。
本発明はトラクタやコンバインを含む作業車両だけでなく、他の車両においても利用可能性がある。
本発明の一実施形態による防塵装置を装備したコンバインの右側面図である。 図1のコンバインの防塵装置の右側面図である。 図2の防塵装置の左側面図である。 図2のラジエーターカバー付近のA−A線断面矢視図である。 図5(a)は、図1のコンバインの防塵装置のさらに詳細な右側面図であり、図5(b)は、図5(a)のS−S線断面矢視図である。 図6(a)は図1のコンバインの他の実施形態による防塵装置の右側面図であり、図6(b)は図6(a)のS1−S1線断面矢視図である。 図7(a)は図1のコンバインの他の実施形態による防塵装置の左側面図であり、図7(b)は図7(a)のラジエーターカバー付近のB−B線矢視断面図である。 図8(a)は図1のコンバインの他の実施形態による防塵装置の右側面図であり、図8(b)は図8(a)のS2−S2線断面矢視図である。 図9(a)は図1のコンバインの他の実施形態による防塵装置の右側面図であり、図9(b)は、図9(a)のS3−S3線断面矢視図である。
符号の説明
1 冷却ファン 1a 冷却ファンカバー
2 ラジエーターカバー枠部(枠部)
2a 内側枠部 2b 外側枠部
2ba 外側枠部先端部
3 ラジエーターカバー防塵ネット(網部)
3a、3b、3c 網面 4 エンジンルーム
5 ラジエーター 6 遮風プレート
6a 上部プレート 6b 下部プレート
7a ガイド装置(上) 7b ガイド装置(下)
7A,7B 長穴 8 スプリング
10 走行クローラ 11 車体
12 グレンタンク 13 刈取装置
13a 分草杆 14 操縦席
15 排出オーガ 16 エンジン
17 防塵装置 18 スライド保持具
19 長孔 20 摺動ピン
23 横移動機構 25 リードカム軸
26 側枠 27 リードメタル
28 電動モーター 29,30 伝動ギヤ
31,32 前後リミットスイッチ
33 ブラケット 42 HST主変速レバー
43 副変速レバー 48 操向レバー
50 冷却用インタークーラ 51 オイルクーラ
53 シール材 54,55,57 シールプレート
60 吸気口 61 風洞
65 シャフト D 段差部
K 空間部

Claims (3)

  1. 冷却ファン(1)を備えたエンジン(16)と、冷却ファン(1)の外側に設けられたラジエーター(5)と、該ラジエーター(5)の外側に設けられ、該ラジエーター(5)へ供給される外気の濾過用の網部(3)および該網部(3)を取り付けた外枠を構成する枠部(2)とからなるラジエーターカバー(2,3)と、前記ラジエーターカバー(2,3)の網部(3)の内側面に接近して設けられ、網部(3)の目合いの一部を塞いで外気の通過を遮断する遮風プレート(6)と、該遮風プレート(6)を前記網部(3)の内側面に沿って直線的に往復運動させる移動機構(23)とを設け、
    前記ラジエーターカバー(2,3)の枠部(2)の網部(3)を取り付けた部位の周りに網部(3)よりも外側に突出するように段差部(D)を設け、該段差部(D)に、ラジエーター(5)を迂回して冷却ファン(1)に至る吸気風路の吸気口(60)を設け、
    前記遮風プレート(6)は上部プレート(6a)と下部プレート(6b)からなり、上部プレート(6a)の下端部に設けた長孔(19)と、下部プレート(6b)の上端部に設けられ、前記長孔(19)に上下摺動自在に嵌合した摺動ピン(20)とにより、上部プレート(6a)と下部プレート(6b)とが連結されることで、遮風プレート(6)を前記連結部で伸縮自在、且つ往復運動方向に折曲自在に構成したことを特徴とする作業車両の原動部構造。
  2. 前記上部プレート(6a)と下部プレート(6b)との連結部には、該上部プレート(6a)と下部プレート(6b)との間に介在して上部プレート(6a)と下部プレート(6b)とが一直線状になるように縮小方向に付勢するスプリング(8)を設けたことを特徴とする請求項1記載の作業車両の原動部構造。
  3. 前記ラジエーター(5)を迂回して冷却ファン(1)に至る吸気風路中に風洞(61)を設け、
    前記ラジエーターカバー(2,3)を開閉可能な構成とし、ラジエーターカバー(2,3)を閉じた場合に、前記吸気口(60)が風洞(61)に連通する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の作業車両の原動部構造。
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