本発明の第1実施形態の硬貨入出金機を図1〜図9を参照して以下に説明する。
図1〜図3は、第1実施形態の硬貨入出金機1を概略的に示すもので、硬貨入出金機1は、装置本体2と、この装置本体2に対し着脱可能な台車部3とを有している。以下の説明における前後左右は、硬貨入出金機1の前(操作者から見て手前側)、硬貨入出金機1の後(操作者から見て奥側)および硬貨入出金機1の左右(操作者から見て左右)である。
装置本体2には、入金のため金種混合状態で一括投入された硬貨を一枚ずつ分離して搬送する分離供給部5が上部に設けられている。この分離供給部5は、バラ硬貨が一括投入されるホッパ6と、このホッパ6の下側にその底部を形成するように設けられた水平旋回可能な回転円盤7と、硬貨が一枚のみ通過可能な開口を有し回転円盤7の回転時の遠心力で硬貨を一枚ずつに分離して繰り出すとともに繰り出しのタイミングを制御可能な硬貨分離部8と、硬貨分離部8で一枚ずつ繰り出された硬貨を水平に搬送する硬貨搬送部9とを有している。
また、装置本体2には、硬貨搬送部9で搬送中の硬貨の真偽及び金種を識別し計数する識別部11が硬貨搬送部9の上流側に設けられ、硬貨搬送部9におけるこの識別部11の下流側には、識別部11の識別結果に基づいて真以外の硬貨と識別されたリジェクト硬貨を排除するリジェクト部12が設けられている。さらに、硬貨搬送部9におけるリジェクト部12の下流側には、識別部11の識別結果に基づいて真の硬貨であって受け入れ可能と識別された硬貨を金種別に振り分ける複数箇所、具体的には取扱金種数(日本国内では1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨および500円硬貨の六種類)と同数の六箇所の振分部13a,13b,13c,13d,13e,13fが硬貨搬送部9の搬送方向に沿ってこの順に設けられている。ここで、振分部13a〜13fは、すべて装置本体2の左右方向一側、具体的には右側に配置され、装置本体2の前後に並べられている。
これら振分部13a〜13fは、すべて、取り扱う最大径の硬貨(日本国内では500円硬貨)を落下可能な選別孔14a,14b,14c,14d,14e,14fを有しており、これらのうち上流側の五つの振分部13a〜13eには、選別孔14a〜14eを個別に開閉可能なシャッタ15a,15b,15c,15d,15eが設けられている。さらに、各振分部13a〜13fのそれぞれの上流側には、硬貨の通過を検出する硬貨センサ16a,16b,16c,16d,16e,16fが設けられている。同様に、リジェクト部12も、リジェクト孔14gと、リジェクト孔14gを開閉可能なシャッタ15gと、上流側の硬貨センサ16gとを有している。なお、硬貨センサ16a〜16gは、シャッタ15a〜15e,15gのうちの対応するものの開閉タイミングを制御するために用いられ、また、硬貨の搬送ジャムの有無を検出するために用いられる。
また、装置本体2は、リジェクト部12で硬貨搬送部9から排除された硬貨を受け入れる着脱自在のリジェクトボックス20と、各振分部13a〜13fに一対一で対応して設けられ、各振分部13a〜13fで振り分けられた硬貨をそれぞれ個別に一時貯留させる複数箇所、具体的には振分部13a〜13fと同数である六箇所の一時貯留部(一時貯留手段)21a,21b,21c,21d,21e,21fとを有している。
なお、最も上流側つまり最も前側の一時貯留部21aは、最も上流側つまり最も前側の振分部13aの下方に設けられており、この振分部13aのシャッタ15aが開かれることで選別孔14aから落下された硬貨のみを受け入れて一時貯留させる。次の一時貯留部21bは、振分部13bの下方に設けられ、シャッタ15bが開かれることで選別孔14bから落下された硬貨のみを一時貯留させる。次の一時貯留部21cは、振分部13cの下方に設けられ、シャッタ15cが開かれることで選別孔14cから落下された硬貨のみを一時貯留させる。次の一時貯留部21dは、振分部13dの下方に設けられ、シャッタ15dが開かれることで選別孔14dから落下された硬貨のみを一時貯留させる。次の一時貯留部21eは、振分部13eの下方に設けられ、シャッタ15eが開かれることで選別孔14eから落下された硬貨のみを一時貯留させる。最も下流側つまり最も後側の一時貯留部21fは、振分部13fの下方に設けられ、選別孔14fから落下された硬貨のみを一時貯留させる。
一時貯留部21a〜21fは、左右方向に水平移動可能な共通の側壁部形成体22にそれぞれの側壁部が個別に形成されており、この側壁部形成体22の下側に左右方向に水平移動可能に設けられた共通の底部形成体23でそれぞれの下部開口部が閉塞可能とされている。つまり、側壁部形成体22には、左右に一対の側壁部を有するとともにこれら側壁部の間に各一時貯留部21a〜21fをそれぞれ区分けするための区分側壁部が前後方向に複数具体的には7つ設けられている。そして、これら一時貯留部21a〜21fのすべての下部開口部を同時に閉塞しまた同時に開放するように前後方向に長い一つの底部形成体23が設けられている。
側壁部形成体22は、左右方向に配設されたガイドレール35で直線移動可能に支持されており、駆動機構部36で駆動されてガイドレール35に沿って往復移動する。ここで、側壁部形成体22は、装置本体2の右側に配置された振分部13a〜13fの下方の第1の位置と、この第1の位置に対し水平方向に側壁部形成体22の幅分位置をずらした第2の位置とに往復移動可能であり、これらの各位置に停止させるように、各位置にはそれぞれ図示略のセンサが設けられている。
底部形成体23は、左右方向に配設されたガイドレール38で直線移動可能に支持されており、駆動機構部39で駆動されてガイドレール38に沿って往復移動する。ここで、底部形成体23は、上記した第1の位置にある側壁部形成体22の一時貯留部21a〜21fのすべての下部開口部を同時に閉塞する第1の位置と、この第1の位置に対し水平方向に側壁部形成体22の幅分位置をずらし、上記した第1の位置にある側壁部形成体22の一時貯留部21a〜21fのすべての下部開口部を同時に開放する第2の位置とに往復移動可能であり、これらの各位置に停止させるように、各位置にはそれぞれ図示略のセンサが設けられている。
台車部3は、下部に設けられたキャスタ30を転動させることで、装置本体2に対し前面2A側に引き出され、さらに装置本体2から取り外されて運搬される一方、前面2A側から装填されることで装置本体2に装着されるようになっている。
台車部3には、第1の位置にある側壁部形成体22および底部形成体23の鉛直下方に、前後方向に並設して複数、具体的には振分部13a〜13fと同数である六箇所の個別に仕切られた返却収容部24a,24b,24c,24d,24e,24fを有する返却ボックス26が着脱自在に設けられており、返却ボックス26の返却収容部24a〜24fは、各一時貯留部21a〜21fに一時貯留された硬貨を操作者に返却する際のそれぞれの受け入れ先となっている。
各部を制御する図1に示す制御装置(振分制御手段,動作制御手段)28が、図3に示すように、一時貯留部21a〜21fを構成する側壁部形成体22および底部形成体23を第1の位置に位置させ側壁部形成体22の下部開口部を底部形成体23で閉塞させた状態で、複数の振分部13a〜13fからの硬貨を受け入れさせ、その後、側壁部形成体22を第1の位置に位置させたまま、図4に示すように、駆動機構部39で底部形成体23を第2の位置へ水平移動させると、一時貯留部21aに一時貯留されていた硬貨のみが下方の返却収容部24aに、一時貯留部21bに一時貯留されていた硬貨のみが下方の返却収容部24bに、一時貯留部21cに一時貯留されていた硬貨のみが下方の返却収容部24cに、一時貯留部21dに一時貯留されていた硬貨のみが下方の返却収容部24dに、一時貯留部21eに一時貯留されていた硬貨のみが下方の返却収容部24eに、一時貯留部21fに一時貯留されていた硬貨のみが下方の返却収容部24fに、それぞれ投入されることになる。なお、この返却ボックス26にあっては、六つの個別に仕切られた返却収容部24a〜24fにより構成される必要はなく、一時貯留部21a〜21fの硬貨を受け入れ可能な仕切のない、ただ一つの返却収容部によって構成しても良いものである。
さらに、返却ボックス26の側方であって第2の位置にある側壁部形成体22の鉛直下方には、前後方向に並設して複数、具体的には振分部13a〜13fと同数である六箇所の個別に仕切られた出金可能な収納繰出部27a,27b,27c,27d,27e,27fが設けられており、これら収納繰出部27a〜27fは、各一時貯留部21a〜21fに一時貯留された硬貨をそれぞれ個別に受け入れて金種別に収納する。つまり、収納繰出部27a〜27fは、入金され金種別に選別分類された硬貨を金種別に収納するように金種別に設けられている。
制御装置28が、上記と同様、図3に示すように、側壁部形成体22および底部形成体23を第1の位置に位置させ側壁部形成体22の下部開口部を底部形成体23で閉塞させた状態で、複数の振分部13a〜13fからの硬貨を受け入れさせ、その後、図5に示すように、底部形成体23はそのままで、駆動機構部36で側壁部形成体22のみを第2の位置へ水平移動させることにより、一時貯留部21aに一時貯留されていた硬貨のみが下方の収納繰出部27aに、一時貯留部21bに一時貯留されていた硬貨のみが下方の収納繰出部27bに、一時貯留部21cに一時貯留されていた硬貨のみが下方の収納繰出部27cに、一時貯留部21dに一時貯留されていた硬貨のみが下方の収納繰出部27dに、一時貯留部21eに一時貯留されていた硬貨のみが下方の収納繰出部27eに、一時貯留部21fに一時貯留されていた硬貨のみが下方の収納繰出部27fに、それぞれ投入されることになる。
収納繰出部27a〜27fは、それぞれ個別に、硬貨を出金のために計数しつつ繰り出すことが可能であり、これらから繰り出された硬貨は、これらの左右方向の一側を前後に横断するように水平に延在するベルトコンベア31の正転で一側のエレベータ32に集められ、このエレベータ32で上部の出金口33まで搬送される。なお、ベルトコンベア31の逆側には、図示は略すが繰り出し不良があった場合にベルトコンベア31の逆転で硬貨を回収する出金回収部が設けられている。
さらに、装置本体2には、上記した制御装置28が設けられており、制御装置28は、硬貨入出金機1の全体を制御するもので、例えば、分離供給部5を制御するとともに、識別部11の識別結果および硬貨センサ16a〜16gの検出結果に基づいて振分部13a〜13eおよびリジェクト部12のシャッタ15a〜15e,15gを個別に制御する。また、図示略のセンサの検出に基づいて側壁部形成体22および底部形成体23の駆動機構部36,39を個別に制御するとともに、収納繰出部27a〜27f、ベルトコンベア31およびエレベータ32等を制御する。
加えて、装置本体2には、操作者への表示を行うとともに操作者による操作入力が行われる表示操作部(モード設定手段)29が設けられている。この表示操作部29では、入金された硬貨を出金用の硬貨として収納繰出部27a〜27fに金種別に収納する選別計数モードと、収納繰出部27a〜27fの適宜のものから硬貨を出金口33に出金する硬貨出金モードと、収納繰出部27a〜27fに収納されている硬貨数を精査する硬貨精査モードと等が選択設定可能となっている。
次に、収納繰出部27a〜27fについて、主に図6〜図8を参照して説明する。なお、収納繰出部27a〜27fはすべて同様の構造であるため、以下においては、収納繰出部27aを例示して説明する。
収納繰出部27aは、下部に設けられた第1の収納部51と、上部つまり第1の収納部51の上方に設けられた第2の収納部52とを有している。
第1の収納部51は、収納繰出部27a内のベルトコンベア31よりも下側、且つ水平方向におけるベルトコンベア31とは反対側に水平に配置されるベルトコンベア53を有している。このベルトコンベア53は、その搬送方向が、ベルトコンベア31の搬送方向に直交する方向に沿い且つベルトコンベア31に向かう方向となっている。
第2の収納部52は、第1の収納部51とは分離して硬貨を収納可能なもので、収納繰出部27a内の水平方向におけるベルトコンベア31とは反対側に設けられている。第2の収納部52は、上下に開口する筒状の胴部55と、胴部55の下部開口部を開閉するスライド開閉可能なシャッタ56とを有している。胴部55は、ベルトコンベア31側の壁部55aが下部ほどベルトコンベア31から水平方向において離れるように傾斜しており、その結果、下部開口部が収納繰出部27a内の水平方向におけるベルトコンベア31とは反対側に偏っている。この下部開口部を開閉するシャッタ56は閉状態でベルトコンベア31の上方に位置する。そして、壁部55aの傾斜により形成されたベルトコンベア31側の空間に、底部を構成するシャッタ56がスライドすることで下部開口部を開くようになっている。つまり、シャッタ56は開時にベルトコンベア31側であってベルトコンベア53の硬貨搬送方向に移動する。
ここで、第2の収納部52は、上述した底部形成体23が第1の位置にあって側壁部形成体22が第2の位置に移動したときに、一時貯留部21aのみから硬貨(つまり入金され金種別に選別分類された一金種の硬貨)を胴部55の上部開口部から受け入れることになり、シャッタ56を開くことで硬貨を第1の収納部51に受け渡す。その結果、第1の収納部51は、入金され金種別に選別分類された一金種の硬貨を第2の収納部52を介して受け入れ収納する。
第1の収納部51のベルトコンベア53のベルトコンベア31側には、ベルトコンベア53によって搬送され、その端末部から落下する硬貨を受け入れるとともに一枚ずつ分離して上方に搬送する繰出リフト(搬送手段)60が設けられている。この繰出リフト60は、上部が開口しベルトコンベア53からの硬貨を受け入れるホッパ61と、ホッパ61のベルトコンベア53とは反対側から鉛直上方に延びるリフト62とを有している。ホッパ61は、第2の収納部52の開状態のシャッタ56の下方に位置し、またリフト62はベルトコンベア31と第2の収納部52との間を通ってこれらよりも上方まで延出している。
リフト62は、硬貨一枚が通過可能な内寸を有して鉛直延在するとともに、図7に示すように上端部に一側に開口する放出口64が形成されたシャフト65と、シャフト65の放出口64とは反対側に設けられホッパ61内の硬貨Cを一枚ずつ係止してこのシャフト65の案内で上昇搬送するリフトベルト66とを有している。リフトベルト66には硬貨Cを下側から係止しつつシャフト65内で上昇移動する係止片67が所定の間隔で複数形成されている。各係止片67は、係止した硬貨Cをその自重で放出口64から放出させるために、シャフト65内にあるとき前下がりに傾斜する形状となっている。
リフト62の放出口64の近傍には、リフトベルト66によってリフト62内を上昇する硬貨をその磁気的性質から金種鑑別および計数する鑑別部(鑑別手段)69が設けられている。なお、この鑑別部69の位置および係止片67の間隔は、リフトベルト66の係止片67に係止された一の硬貨を鑑別部69が検出した後、この硬貨を放出口64から放出するタイミングでリフトベルト66を停止させると、次の係止片67で係止された硬貨Cを鑑別部69が検出する状態、あるいは検出する手前の状態となるように設定されている。
また、リフト62の放出口64の開口側には、鑑別部69による鑑別および計数後に放出口64から放出される硬貨を、図6に示す第2の収納部52と、ベルトコンベア31およびその搬送先である出金口33とに選択的に振り分ける図8に示す振分シュート(硬貨振分手段)70が設けられている。この振分シュート70は、リフト62の放出口64から放出された硬貨を上部から受け入れる一方、下部に硬貨の放出のため二叉に開口する第1の放出口71と第2の放出口72とが設けられたガイド73と、ガイド73の中に揺動可能に設けられて硬貨の放出先を第1の放出口71および第2の放出口72に選択的に振り分ける切替部材74とを有している。振分シュート70は、第1の放出口71がベルトコンベア31つまり出金口33側に硬貨を放出可能に配置され、第2の放出口72が第2の収納部52に硬貨を放出可能に配置されている。
次に、第1実施形態の制御装置28の制御内容を説明する。
ここで、一時貯留部21a〜21fを構成する側壁部形成体22および底部形成体23については、振分部13a〜13fの下方の第1の位置を基本位置としており、側壁部形成体22および底部形成体23を移動させた後には、必ずこれらを基本位置に戻して移動を完了する(図3に示す位置)。
「選別計数モード」
まず、表示操作部29への適宜の入力で選別計数モードが選択設定された場合を説明する。
選別計数モードが選択設定された状態で表示操作部29へのスタート操作が入力されると、制御装置28は、分離供給部5のホッパ6に金種混合で投入された硬貨を、回転円盤7の回転による遠心力によって硬貨分離部8が一枚ずつ繰り出すことになり、その後、識別部11で識別することになる。そして、この識別部11の識別結果に基づいて受け入れ不可と識別されたリジェクト硬貨を、すべてリジェクト部12でリジェクトボックス20に返却する一方、受け入れ可能と識別された真の硬貨を、金種別に選別して振り分けるように振分部13a〜13fを制御する。
つまり、識別部11で1円硬貨と識別された硬貨を、振分部13aのシャッタ15aを開いて選別孔14aから一時貯留部21aに一時貯留させる。また、識別部11で5円硬貨と識別された硬貨を、シャッタ15aを閉状態として振分部13aを通過させ、振分部13bのシャッタ15bを開いて選別孔14bから一時貯留部21bに一時貯留させる。さらに、識別部11で10円硬貨と識別された硬貨を、シャッタ15a,15bを閉状態として振分部13a,13bを通過させ、振分部13cのシャッタ15cを開いて選別孔14cから一時貯留部21cに一時貯留させる。加えて、識別部11で50円硬貨と識別された硬貨を、シャッタ15a〜15cを閉状態として振分部13a〜13cを通過させ、振分部13dのシャッタ15dを開いて選別孔14dから一時貯留部21dに一時貯留させる。また、識別部11で100円硬貨と識別された硬貨を、シャッタ15a〜15dを閉状態として振分部13a〜13dを通過させ、振分部13eのシャッタ15eを開いて選別孔14eから一時貯留部21eに一時貯留させる。さらに、識別部11で500円硬貨と識別された硬貨を、シャッタ15a〜15eを閉状態として振分部13a〜13eを通過させ、振分部13fの選別孔14fから一時貯留部21fに一時貯留させる。なお、一時貯留部21a〜21fへの各金種の振り分けのパターンは常に一定であれば上記に限らず他の設定としても良い。
そして、この一の入金処理でホッパ6に投入された硬貨のうち識別部11の識別結果に基づいて受け入れ可能と識別された真の硬貨がすべて、一時貯留部21a〜21fに金種別に一時貯留されると、その後、金種別の計数結果および合計金額を表示操作部29へ表示させ、操作者により表示操作部29へキャンセル操作が入力されると、制御装置28は、側壁部形成体22は第1の位置に停止させたまま、図4に示すように、駆動機構部39によって底部形成体23を第2の位置に移動させることで、一時貯留部21a〜21fに金種別に一時貯留させていた硬貨を金種別のまま返却ボックス26の返却収容部24a〜24fの対応するものに受け渡す。すると、操作者は、返却ボックス26を取り出して返却硬貨を受け取る。そして、一時貯留部21a〜21fから返却ボックス26に硬貨を受け渡した後、制御装置28は、駆動機構部39で底部形成体23を基本位置である第1の位置に戻す。
他方、操作者により表示操作部29へ承認操作が入力されると、制御装置28は、各一時貯留部21a〜21fに金種別で一時貯留させた硬貨を、収納繰出部27a〜27fに受け渡す。つまり、第1の位置にあった底部形成体23はそのままで、図5に示すように、駆動機構部36で側壁部形成体22を第2の位置へ水平移動させることにより、一時貯留部21a〜21fに金種別に一時貯留させていた硬貨を金種別のまま収納繰出部27a〜27fの対応するものに受け渡す。つまり、入金された硬貨を金種別に選別分類して金種別の収納繰出部27a〜27fに収納する。このとき、すべての収納繰出部27a〜27fにおいて、シャッタ56が閉塞された状態で待機する上部の第2の収納部52内に硬貨が投入されることになる。そして、一時貯留部21a〜21fから収納繰出部27a〜27fに硬貨を受け渡した後、制御装置28は、駆動機構部36で側壁部形成体22を基本位置である第1の位置に戻す。
「硬貨出金モード」
表示操作部29への適宜の入力で硬貨出金モードが選択設定された場合を説明する。
硬貨出金モードが選択され出金の金種別の硬貨枚数が設定された状態で表示操作部29へのスタート操作が入力されると、制御装置28は、まず、第2の収納部52内に収納していた全硬貨を、図6に二点鎖線で示すようにシャッタ56を開作動させることで第1の収納部51のベルトコンベア53上に放出する。なお、上記した選別計数処理時に第2の収納部52内の硬貨を第1の収納部51に受け渡すようにしても良い。
次に、制御装置28は、収納繰出部27a〜27fのうちの出金対象のものについて、表示操作部29によって設定された硬貨出金モードに対応して、図6に示すように切替部材74を第1の放出口71側に硬貨を案内する状態とし、ベルトコンベア53および繰出リフト60のリフトベルト66を振分シュート70に向けて硬貨を搬送する方向に駆動するとともに、ベルトコンベア31を、下限位置で待機するエレベータ32に向けて硬貨を搬送する方向に駆動する。
すると、収納繰出部27a〜27fのうちの出金対象のものにおいて、第1の収納部51のベルトコンベア53上の硬貨が繰出リフト60のホッパ61内に放出されるとともに、ホッパ61内の硬貨が、繰出リフト60のリフトベルト66の複数の係止片67それぞれによって一枚ずつに分離されてリフト62内を上昇し、その途中で、鑑別部69によって金種鑑別および計数が行われ、その後、放出口64から振分シュート70内に放出される。すると、硬貨は振分シュート70の切替部材74で、図6に矢印で示すように第1の放出口71に案内されてベルトコンベア31上に放出される。
制御装置28は、出金対象の枚数の最後の硬貨を鑑別部69で鑑別しこれを繰出リフト60の放出口64から放出させるタイミングで、繰出リフト60を停止させることになり、このようにして、収納繰出部27a〜27fのうち出金対象の硬貨を収納しているものすべてから出金対象の枚数の硬貨をすべてベルトコンベア31に繰り出させ、ベルトコンベア31ですべての硬貨をエレベータ32に受け渡すと、制御装置28は、ベルトコンベア31を停止させるとともに、エレベータ32を上昇させて出金口33に硬貨を放出する。これにより、出金口33から出金対象の金種および枚数の硬貨が取り出し可能となる。
「硬貨精査モード」
次に、表示操作部29への適宜の入力で硬貨精査モードが選択設定された場合を説明する。
硬貨精査モードが選択された状態で表示操作部29へのスタート操作が入力されると、制御装置28は、まず、収納繰出部27a〜27fのすべてについて、図9に二点鎖線で示すように、第2の収納部52内に収納していた全硬貨をシャッタ56を開作動させることで第1の収納部51のベルトコンベア53上に放出する。なお、この場合も、上記した選別計数処理時に常に第2の収納部52内の硬貨を第1の収納部51に受け渡すようにしても良い。いずれにしても、硬貨精査モードの開始にあたっては第2の収納部52内に硬貨がない状態とする。
次に、制御装置28は、収納繰出部27a〜27fのすべてについて、表示操作部29によって設定された硬貨精査モードに対応して、図9に示すように切替部材74を第2の放出口72側に硬貨を案内する状態にするとともに、並行して第1の収納部51のベルトコンベア53および繰出リフト60のリフトベルト66を振分シュート70に向けて硬貨を搬送する方向に駆動する。ベルトコンベア31は停止状態を維持する。
すると、収納繰出部27a〜27fのそれぞれにおいて、第1の収納部51のベルトコンベア53上の硬貨が繰出リフト60のホッパ61内に放出されるとともに、ホッパ61内の硬貨が、繰出リフト60のリフトベルト66の複数の係止片67それぞれによって一枚ずつリフト62内を上昇し、その途中で、鑑別部69によって金種鑑別および計数が行われ、その後、放出口64から振分シュート70内に放出される。すると、硬貨は振分シュート70の切替部材74で、図9に矢印で示すように第2の放出口72に案内されて、第2の収納部52内に放出される。このとき、第2の収納部52のシャッタ56は閉状態にあり、硬貨は第2の収納部52内に収納される。そして、収納繰出部27a〜27fのそれぞれにおいて、第1の収納部51のベルトコンベア53上に硬貨が存在しなくなったことが図示略のセンサにより検出されると、制御装置28は、ベルトコンベア53を停止させることになり、また、その後、鑑別部69で硬貨を検出しなくなってから所定時間経過すると、繰出リフト60および第1の収納部51のすべての硬貨が同じ収納繰出部を構成する第2の収納部52に収納されたと判断して、制御装置28は、繰出リフト60のリフトベルト66を停止させる。そして、すべての収納繰出部27a〜27fの鑑別部69による鑑別結果を表示操作部29に表示させるとともに、記憶部に記憶させる。
その後、制御装置28は、ベルトコンベア53およびリフトベルト66を停止状態のまま、図9に二点鎖線で示すように、第2の収納部52のシャッタ56を開放して、第2の収納部52の全硬貨を落下により第1の収納部51のベルトコンベア53上に戻した後、シャッタ56を閉状態として、硬貨精査モードを終了する。
なお、精査処理中に、異金種硬貨を鑑別部61が検出した場合には、この異金種硬貨については切替部材74によって第1の放出口71に案内し、停止状態のベルトコンベア31に繰り出すことになる。そして、制御装置28は、このような異金種硬貨が精査処理で検出された場合には、この異金種硬貨をベルトコンベア31で出金回収部に回収する。
以上により、制御装置28は、表示操作部29によって硬貨精査モードが設定された場合、第1の収納部51および繰出リフト60の硬貨、つまり第2の収納部52以外にある硬貨を、繰出リフト60によって一枚ずつ分離して搬送し鑑別部69で金種鑑別および計数して、振分シュート70により第2の収納部52に収納した後、シャッタ56の開作動によって第1の収納部51に戻す精査処理を、全金種の収納繰出部27a〜27fについて並行して行わせる。
以上に述べた第1実施形態の硬貨入出金機1によれば、金種別の収納繰出部27a〜27fのそれぞれについて、硬貨を、第1の収納部51から、繰出リフト60によって一枚ずつ分離して搬送しつつ、鑑別部69によって金種鑑別および計数し、振分シュート70によって出金口33側に振り分ければ、出金することができる。また、金種別の収納繰出部27a〜27fのそれぞれについて、硬貨を、第1の収納部51から、繰出リフト60によって一枚ずつ分離して搬送しつつ、鑑別部69によって金種鑑別および計数し、振分シュート70によって、第1の収納部51とは分離して硬貨を収納可能な第2の収納部52に振り分ければ、精査処理を行うことができる。しかも、その後に第2の収納部52から底部のシャッタ56の開作動によって第1の収納部51のベルトコンベア53上に硬貨を戻せば再び出金口33への出金が可能な状態となる。そして、第1の収納部51、第2の収納部52、繰出リフト60、鑑別部69および振分シュート70が金種別の収納繰出部27a〜27fのそれぞれに設けられており、硬貨精査モードが設定された場合に、制御装置28が全金種の収納繰出部27a〜27fに並行して精査処理を行わせるため、精査処理を短時間で行うことができる。
また、第1の収納部51のベルトコンベア53の搬送方向と、第2の収納部52のシャッタ56の開時の移動方向とが同じとされるため、硬貨の落下時の衝撃を吸収するために第2の収納部52の閉状態でのシャッタ56の位置(つまり硬貨の放出位置)の下方にベルトコンベア53を配置しても、シャッタ56の開作動のためのスペースと、ベルトコンベア53の端末から落下する硬貨を受け入れる繰出リフト60とを水平方向に位置を合わせることができ、水平方向にコンパクトに配置できる。
また、切替部材74の向きを切り替えることで、硬貨の放出先をガイド73の第1の放出口71およびガイド73の第2の放出口72に選択的に振り分けるため、コンパクトな構成で硬貨を振り分けることができる。
また、表示操作部29によって設定されたモードに基づいて制御装置28が振分シュート70の放出方向を制御するため、モードに合わせて振分シュート70の放出方向を切り替えることができる。
次に、本発明の第2実施形態の硬貨入出金機を主に図10および図11を参照して第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付し、その説明は略す。
第2実施形態では、金種別の収納繰出部27a〜27fのそれぞれが、図10および図11に収納繰出部27aを例示するように、一部の構造を相違させている。
第2実施形態においては、第1実施形態の振分シュート70にかえて、繰出リフト60の放出口64から放出される硬貨を受け取って搬送するベルトコンベア(硬貨振分手段)77が設けられている。このベルトコンベア77は、ベルトコンベア31の搬送方向に対して直交する方向に沿って水平に配置されており、一端がベルトコンベア31上に、他端が第2の収納部52上に、それぞれ配置されていて、制御装置28で正逆回転が制御される。制御装置28は、硬貨出金モードが選択された場合はベルトコンベア77を正回転させて硬貨を図10に矢印で示すようにベルトコンベア31つまり出金口33側に、硬貨精査モードが選択された場合はベルトコンベア77を逆回転させて硬貨を図11に矢印で示すように第2の収納部52側に振り分ける。
以上に述べた第2実施形態の硬貨入出金機1によれば、制御装置28の制御によってベルトコンベア77の正逆回転を切り替えることで、第1の収納部51および繰出リフト60の硬貨の放出先を出金口33側および第2の収納部52側に選択的に振り分けることができるため、簡素な構成で硬貨を振り分けることができる。
次に、本発明の第3実施形態の硬貨入出金機を主に図12および図13を参照して第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付し、その説明は略す。
第3実施形態では、金種別の収納繰出部27a〜27fのそれぞれが、図12および図13に収納繰出部27aを例示するように、一部の構造を相違させている。
第3実施形態においては、第1の収納部51、第2の収納部52および繰出リフト60が第1実施形態に対して鏡面対称に配置されており、その結果、第2の収納部52の胴部55の傾斜する壁部55aがベルトコンベア31とは反対側に配置され、シャッタ56の開時の移動方向およびベルトコンベア53の硬貨搬送方向もベルトコンベア31とは反対の方向になっている。また、繰出リフト60のリフト62もベルトコンベア31とは反対側に配置されている。
そして、第1実施形態の振分シュート70にかえて、繰出リフト60の放出口64から放出される硬貨を受け取って搬送する長尺のベルトコンベア(搬送手段)80が設けられている。このベルトコンベア80は、ベルトコンベア31の搬送方向に対して直交する方向に沿って水平に配置されており、一端がベルトコンベア31上に、他端が繰出リフト60の放出口64の放出前方に、中間部が第2の収納部52上に、それぞれ配置されている。
加えて、ベルトコンベア80の途中には、開閉可能なフラッパ(硬貨振分手段)81が設けられている。このフラッパ81は、制御装置28の制御によって、ベルトコンベア80によって搬送中の硬貨をベルトコンベア31つまり出金口33側にそのまま搬送させる開状態と、ベルトコンベア80によって搬送中の硬貨を第2の収納部52に落下させる閉状態とに切り替えられる。つまり、フラッパ81は、ベルトコンベア80によって搬送される硬貨を出金口33側および第2の収納部52側に選択的に振り分けることになり、硬貨出金モードが選択された場合は開状態とされて硬貨を図12に矢印で示すようにベルトコンベア31つまり出金口33側に、硬貨精査モードが選択された場合は閉状態とされて硬貨を図13に矢印で示すように第2の収納部52に振り分ける。
以上に述べた第3実施形態の硬貨入出金機1によれば、ベルトコンベア80の途中に設けられたフラッパ81を、制御装置28の制御によって切り替えることで、硬貨の放出先を出金口33側および第2の収納部52側に選択的に振り分けることができるため、簡素な構成で硬貨を振り分けることができる。