図11はアイドラ支持構造が備えられるクローラ式車両の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
この図11に示すように、油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2とを有し、この旋回体2にはフロント作業機3、運転室21、及びエンジン、油圧ポンプが配置される機械室22等が設けられている。
フロント作業機3は、旋回体2に上下方向の回動可能に連結したブーム23と、このブーム23に上下方向の回動可能に連結したアーム24と、このアーム24の先端に取り付けたフロントアタッチメント、例えばバケット25とを含んでいる。旋回体2は、走行体1に旋回輪20を介して旋回可能に連結されている。
走行体1は、左右一対の走行ユニット1R,1L(一方のみ図示)を備えており、これらの走行ユニット1R,1Lは、トラックフレームを構成するサイドフレーム10に支持されたスプロケット11とアイドラ12を有し、これらスプロケット11とアイドラ12にわたって履帯13が巻回されている。サイドフレーム10は、走行ユニット1R,1Lに対応して車両の幅方向に一対設けられており、それぞれのサイドフレーム10に、上述したスプロケット11、アイドラ12、及び履帯13の組み合わせが設けられている。走行ユニット1R、1Lの構成は同等であるので、以下にあっては、後述の本発明に係る各実施形態も含めて走行ユニット1R側の構成についてだけ説明する。
図12は、図11に示す油圧ショベルに備えられる従来のアイドラ支持構造の第1例を示す斜視図、図13は図12に示す従来の第1例に備えられる一対のアイドラブラケットを示す斜視図、図14は図12に示す従来の第1例によって支持されるアイドラを示す斜視図、図15は図13に示すアイドラブラケットの正面図、図16は図14に示すアイドラの正面図、図17は図13に示す従来の第1例を示す正面図である。
本発明の支持対象であるアイドラ12は、図12に示すように、左右一対のアイドラブラケット33A1,33A2によって保持され、これらのアイドラブラケット33A1,33A2は、サイドフレーム10の一方の端部側に配置された端板14に溶接によって接合され、サイドフレーム10の延設方向に沿うように設けられている。
図13,15,17に示すように、アイドラブラケット33A1は、上面及び下面のそれぞれが折り曲げ形成された本体板33a1と、この本体板33a1の内側にそれぞれ固定され、略L字状に形成された挟持板体33b1,33c1とを備えている。挟持板体33b1の下面、及び挟持板体33c1の上面は、それぞれ水平面に含まれる平坦面に形成され、サイドフレーム10方向に延設されており、端部はそれぞれサイドフレーム10に溶接によって接合されている。これにより、挟持板体33b1の下面と挟持板体33c1の上面との間にガイド部となる空間が形成される。また、本体板33a1と、挟持板体33b1,33c1とで、端部が開口する上下2つのボックス構造部が形成されている。上下のボックス構造部は、本体板33a1を介して連結されている。
図14に示すアイドラ12の支軸34を回転可能に支持する図16,17に示す一対の軸受部35a,35bを備え、これらの軸受部35a,35bのうちの軸受部35aは、上述した挟持板体33b1の下面と挟持板体33c1の上面とにより形成されるガイド部に配置され、このガイド部によってサイドフレーム10の延設方向に案内されるようになっている。
また、図16,17に示すように、軸受部35aの上面、下面のそれぞれには、サイドフレーム10の延設方向と直交する当該油圧ショベルの横方向に沿う方向のうちの一方向、すなわち図17の左方向に作用する横荷重をアイドラブラケット33A1に伝える荷重伝達部、例えば突起部50a1,50b1を備えている。
図13,15,17に示すように、アイドラブラケット33A2も上述したアイドラブラケット33A1と同様に、上面及び下面のそれぞれが折り曲げ形成された本体板33a2と、この本体板33a2の内側にそれぞれ固定され、略L字状に形成された挟持板体33b2,33c2とを備えている。挟持板体33b2の下面、及び挟持板体33c2の上面は、それぞれ水平面に含まれる平坦面に形成され、サイドフレーム10方向に延設されており、端部はそれぞれサイドフレーム10に溶接によって接合されている。これにより、挟持板体33b2の下面と挟持板体33c2の上面との間にガイド部となる空間が形成される。また、本体板33a2と、挟持板体33b2,33c2とで、端部が開口する上下2つのボックス構造部が形成されている。上下のボックス構造部は、本体板33a2を介して連結されている。
図14に示す軸受部35a,35bのうちの軸受部35bも上述した軸受部35aと同様に、挟持板体33b2の下面と挟持板体33c2の上面とにより形成されるガイド部に配置され、このガイド部によってサイドフレーム10の延設方向に案内されるようになっている。
また、図16,17に示すように、軸受部35bの上面、下面のそれぞれにも上述した軸受部35aと同様に、サイドフレーム10の延設方向と直交する当該油圧ショベルの横方向に沿う方向のうちの他方向、すなわち図17の右方向に作用する横荷重をアイドラブラケット33A2に伝える荷重伝達部、例えば突起部50a2,50b2を備えている。
上述した一対の軸受部35a,35bと、ガイド部をそれぞれ有する一対のアイドラブラケット33A1,33A2と、突起部51a1,51b1,51a2,51b2から成る荷重伝達部とによって、アイドラ12を回転可能に支持する従来のアイドラ支持構造が構成されている。
図18は図11に示す油圧ショベルに備えられる従来の履帯張力調整手段を一部破断して示す平面図である。
アイドラ12は、上述した挟持板体33b1,33c1間のガイド部内、及び挟持板体33b2,33c2間のガイド部内に配置された軸受部35a,35bを介して、サイドフレーム10の延設方向に移動可能となっており、これによって図11に示す履帯13の張力を調整できるようになっている。この履帯13の張力の調整のために、図11に示す油圧ショベルは図18に示す履帯張力調整手段51を備えている。すなわち、アイドラ12の支軸34は軸受部35a,35bを介してヨーク36に回転自在に連結されており、このヨーク36はピストン37に連結され、ピストン37は内部にグリース等の粘性流体を封入したシリンダ38に挿嵌されている。このシリンダ38には、ばね受け39が設けられており、また、シリンダ38にはロッド40が連結されている。このロッド40の他端側はばね受け41に挿嵌されており、ロッド40はばね受け41に摺動自在に保持されている。両ばね受け39,41間にはピストン37をシリンダ38から突出する方向に付勢するばね42が装着されている。
これによって、履帯13は適度な張りを持ち、かつ履帯13が障害物に衝突すると、履帯張力調整手段51のピストン37、及びばね受け39、シリンダ38、ロッド40が一体になって動き、ばね42を圧縮して緩衝作用を発揮する。このように構成される履帯張力調整手段51は、サイドフレーム10の内部から端版14を貫通して延び、ヨーク36はアイドラブラケット33A1の挟持板体33b1,33c1によって形成されたガイド部、及びアイドラブラケット33A2の挟持板体33b2,33c2によって形成されたガイド部にそれぞれ挟持されて、サイドフレーム10の延設方向に沿って移動可能になっている。
ところで、図11に示す油圧ショベル等のクローラ式車両は悪路を走行することがあり、車両の走行中に地面の凸凹により履帯13が頻繁に浮き上がったり、傾いたり、左右方向にずれることがある。これにより、履帯13に対応して転動するアイドラ12に対し、支軸34の軸方向の荷重であるスラスト荷重、すなわち横荷重が作用することがある。このとき、図17等に示す軸受部35aの突起部50a1,50b1、あるいは軸受部35bの突起部50a2,50b2のうちのいずれか一方が、対向するアイドラブラケット33A1の挟持板体33b1,33c1、あるいはアイドラブラケット33A2の挟持板体33b2,33c2に衝突することにより、挟持板体33b1,33c1あるいは挟持板体33b2,33c2がこの横荷重を受け、軸受部35a,35bの左右方向へのガタツキが防止される。
しかし、掘削作業や路上走行中に走行方向等を変更したりするときには、アイドラ12には履帯13からの大きな横荷重が頻繁に作用し、このような横荷重がアイドラ12に作用するごとに、左右の挟持板体33b1,33c1、あるいは挟持板体33b2,33c2は、互いに逆方向の曲げ荷重を繰り返し受けることになる。この結果、アイドラブラケット33A1の本体板33a1とアイドラブラケット33A2の本体板33a2は「ハ」の字状に下方が広がる拡開変形を生じたり、サイドフレーム10の端板14と本体板33a1,33a2との接合部、すなわち溶接部分に亀裂が生じたりすることがある。
このように、本体板33a1,33a2が拡開変形すると、軸受部35aと挟持板体33b1,33c1との間、軸受部35bと挟持板体33b2,33c2との間のガタツキが大きくなって、走行時にアイドラ12が大きく振動し、この振動に伴って履帯13に波打ち現象が生じ、車両の乗り心地等を悪化させてしまうことになる。また、履帯13の張力を小さめに設定した場合には、履帯13がアイドラ12から外れやすくなる。
なお、このような問題を回避するため、端板14及びアイドラブラケット33A1,33A2の本体板33a1,33a2の強度を向上させるために、アイドラブラケット33A1,33A2のそれぞれの外側にリブ等を設けることが考えられる。しかし、このようにするとアイドラブラケット33A1,33A2の外側部分の形状が複雑になり、この複雑な形状をした外側部分に土砂や異物が堆積してしまう懸念がある。
このようなことから、従来さらに特許文献1に示される第2例が提案されている。図19は、この特許文献1に示される従来のアイドラ支持構造の第2例を示す正面図である。
この図19に示すように、特許文献1に示される従来のアイドラ支持構造の第2例は、アイドラブラケット33A1の本体板33a1に固定される挟持板体33d1,33e1間に形成されるガイド部に配置される軸受部35a1は、アイドラ12に近い側の端部の上部および下部に設けられ、サイドフレーム10の延設方向と直交する当該クローラ式車両の横方向に沿う方向のうちの一方向、すなわち同図19の左方向に作用する横荷重を受けた際に、挟持板体33d1,33e1に係合する突起部51a1,51b1を有している。また、これらの突起部51a1,51b1に連設される軸受部35a1の上面及び下面のそれぞれを、アイドラ12から離れるに従って軸受部35a1の厚さ寸法を大きくし、サイドフレーム10の延設方向と直交する当該クローラ式車両の横方向に沿う方向のうちの他方向、すなわち同図19の右方向に作用する横荷重を受けた際に、挟持板体33d1,33e1に係合するテーパ面としてある。また、挟持板体33d1の下面及び挟持板体33e1の上面のそれぞれを、軸受部35a1の上面及び下面に形成したテーパ面に対応するテーパ形状に形成してある。
同様に、アイドラブラケット33A2の本体板33a2に固定される挟持板体33d2,33e2間に形成されるガイド部に配置される軸受部35a2は、アイドラ12に近い側の端部の上部および下部に設けられ、サイドフレーム10の延設方向と直交する当該クローラ式車両の横方向に沿う方向のうちの他方向、すなわち同図19の右方向に作用する横荷重を受けた際に、挟持板体33d2,33e2に係合する突起部51a2,51b2を有している。また、これらの突起部51a2,51b2に連設される軸受部35a2の上面及び下面のそれぞれを、アイドラ12から離れるに従って軸受部35a2の厚さ寸法を大きくし、サイドフレーム10の延設方向と直交する当該クローラ式車両の横方向に沿う方向のうちの一方向、すなわち同図19の左方向に作用する横荷重を受けた際に、挟持板体33d2,33e2に係合するテーパ面としてある。また、挟持板体33d2の下面及び挟持板体33e2の上面のそれぞれを、軸受部35a2の上面及び下面に形成したテーパ面に対応するテーパ形状に形成してある。
この従来の第2例は、軸受部35a1,35a2に与えられるサイドフレーム10の延設方向と直交する当該クローラ式車両の横方向に沿う方向の横荷重をアイドラブラケット33A1,33A2に伝える荷重伝達部が、上述のように軸受部35a1の上部及び下部に設けた突起部51a1,51b1と、軸受部35a1の上面及び下面に設けたテーパ面、及び、軸受部35a2の上部及び下部に設けた突起部51a2,51b2と、軸受部35a2の上面及び下面に設けたテーパ面と、アイドラブラケット33A1の挟持板体33d1の下面のテーパ形状,挟持板体33e1の上面のテーパ形状、及び、アイドラブラケット33A2の挟持板体33d2の下面のテーパ形状,挟持板体33e2の上面のテーパ形状によって構成されている。
このように構成された従来の第2例にあっては、アイドラ12に対して支軸34の軸方向に沿って、例えば同図19の左方向に向って横荷重が作用したときには、軸受部35a1の突起部51a1,51b1が、アイドラブラケット33A1の挟持板体33d1,33e1に係合し、軸受部35a2のテーパ面が、アイドラブラケット33A2の挟持板体33d2,33e2に係合する。したがって、軸受部35a2が左方向に変位することが規制されるとともに、軸受部35a1の突起部51a1,51b1がアイドラブラケット33A1の挟持板体33d1,33e1に強く押付けられないように保たれる。
また、これとは反対に、同図19の右方向に向って横荷重が作用したときには、軸受部35a2の突起部51a2,51b2が、アイドラブラケット33A2の挟持板体33d2,33e2に係合し、軸受部35a1のテーパ面が、アイドラブラケット33A1の挟持板体33d1,33e1に係合する。したがって、軸受部35a1が右方向に変位することが規制されるとともに、軸受部35a2の突起部51a2,51b2がアイドラブラケット33A2の挟持板体33d2,33e2に強く押付けられないように保たれる。以上の作用により、アイドラブラケット33A1,33A2が、繰り返して横荷重を受けた際の拡開変形が抑えられる。
しかしながら、上述した特許文献1に示される従来の第2例にあっては、アイドラブラケット33A1の挟持板体33d1の下面、挟持板体33e1の上面、アイドラブラケット33A2の挟持板体33d2の下面、挟持板体33e2の上面のそれぞれをテーパ形状に形成することから、これらの挟持板体33d1,33e1、及び挟持板体33d2,33e2が接合する端板14における溶接に際しての角度出しが難しく、また、軸受部35a,35bの外径寸法の精度出しが難しい。これに伴って、従来の第2の例にあってはアイドラ支持構造の製作工数が多くなりがちであり、製作費が高くなりやすい。
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、横荷重を受けた際の拡開変形を抑制できるとともに、容易に製作することができるクローラ式車両のアイドラ支持構造を提供することにある。
この目的を達成するために、本発明に係るクローラ式車両のアイドラ支持構造は、左右一対のサイドフレームを有する走行体と、上記サイドフレームのそれぞれの端部に設けられ、履帯が巻回されるアイドラとを有するクローラ式車両に設けられ、上記アイドラの支軸を回転可能に支持する一対の軸受部と、これらの軸受部を上記サイドフレームの延設方向に案内するガイド部をそれぞれ有する一対のアイドラブラケットと、上記一対の軸受部に与えられる上記サイドフレームの延設方向と直交する上記クローラ式車両の横方向に沿う方向の横荷重を上記アイドラブラケットに伝達する荷重伝達部とを備えたクローラ式車両のアイドラ支持構造において、上記荷重伝達部を、上記一対のアイドラブラケットのうちの一方のアイドラブラケット側のみに設け、上記一対のアイドラブラケットのうちの他方のアイドラブラケットの上記ガイド部に案内される上記軸受部の上記サイドフレームの延設方向と直交する上記クローラ式車両の横方向に沿う方向の移動が、上記他方のアイドラブラケットによって阻止されないように、これらの他方のアイドラブラケットと該当する軸受部との配置関係を設定したことを特徴としている。
このように構成した本発明は、アイドラに対して横荷重が左右方向のうちの一方向に作用したときには、一対のアイドラブラケットのうちの一方のアイドラブラケット側に設けた荷重伝達部を介して一方のアイドラブラケットを、一方向へ変位させるようにして伝えられ、この一方のアイドラブラケットが横荷重を受ける。このとき、他方のアイドラブラケット側に配置された軸受部は、何らの阻止力を受けることなく他方のアイドラブラケットのガイド部内を自由に移動する。また、アイドラに対して横荷重が上述した一方向とは逆方向である他方向に作用したときには、一対のアイドラブラケットのうちの一方のアイドラブラケット側に設けた荷重伝達部を介して一方のアイドラブラケットを、上述した変位を戻すように他方向に変位させるようにして伝えられ、上述と同様に一方のアイドラブラケットが横荷重を受ける。このとき、他方のアイドラブラケット側に配置された軸受部は、上述と同様に何らの阻止力を受けることなく他方のアイドラブラケットのガイド部内を自由に移動する。これらにより、アイドラに横荷重が作用した際の他方のアイドラブラケットの変形を防ぐことができる。
これにより、一対のアイドラブラケットが「ハ」の字状に下方が広がる拡開変形を抑制でき、耐久性を向上させることができる。また、軸受部のスラスト方向のガタツキの増加を抑え、走行時のアイドラの振動の増加や、このアイドラの振動の増加に伴って履帯に生じる波打ち現象を抑えることができ、車両の良好な乗り心地を確保することができる。
また、一対のアイドラブラケットの接合面に対する精度出し、及び軸受部の外形の精度出しは、一対のアイドラブラケットのうちの一方のアイドラブラケット、及びこの一方のアイドラブラケット側に配置される軸受部においてのみ考慮すれば済むので、容易に製作することができる。
また、本発明に係るクローラ式車両のアイドラ支持構造は、上記発明において、上記一方のアイドラブラケット側のみに設けられる上記荷重伝達部は、上記一方のアイドラブラケットの上記ガイド部に案内される上記軸受部の上記アイドラに近い側の端部の上部及び下部に設けられ、上記サイドフレームの延設方向と直交する上記クローラ式車両の横方向に沿う方向のうちの一方向の横荷重を受けた際に、上記一方のアイドラブラケットに係合する突起部と、該当する軸受部の上面及び下面のそれぞれに形成され、上記アイドラから離れるに従って該当する軸受部の厚さ寸法を大きくし、上記サイドフレームの延設方向と直交する上記クローラ式車両の横方向に沿う方向のうちの上記一方向とは逆方向である他方向の横荷重を受けた際に、上記一方のアイドラブラケットに係合するテーパ面とを含むことを特徴としている。
このように構成した本発明は、アイドラに対して横荷重が左右方向のうちの一方向に作用したときには、一方のアイドラブラケット側に配置された軸受部の端部の上部及び下部に設けた突起部を介して一方のアイドラブラケットに伝えられ、また、アイドラに対して横荷重が上述した一方向とは逆方向である他方向に作用したときには、一方のアイドラブラケット側に配置された軸受部の上面及び下面に設けたテーパ面を介して一方のアイドラブラケットに伝えられる。したがって、アイドラブラケットの接合面に対する角度出しが必要なアイドラブラケットは、一対のアイドラブラケットのうちの一方のアイドラブラケットのみであり、この点で容易に製作することができる。
また、本発明に係るクローラ式車両のアイドラ支持構造は、上記発明において、上記一方のアイドラブラケット側のみに設けられる上記荷重伝達部は、上記一方のアイドラブラケットの上記ガイド部に案内され、上面及び下面のそれぞれが水平面に含まれる平坦面に形成される上記軸受部の両端部にそれぞれ設けられ、上記サイドフレームの延設方向と直交する上記クローラ式車両の横方向に沿う方向のうちの一方向の横荷重を受けた際に、上記一方のアイドラブラケットに係合する突起部と、上記サイドフレームの延設方向と直交する上記クローラ式車両の横方向に沿う方向のうちの上記一方向とは逆方向である他方向の横荷重を受けた際に、上記一方のアイドラブラケットに係合する突起部とを含むことを特徴としている。
このように構成した本発明は、アイドラに対して横荷重が左右方向のうちの一方向、または他方向に作用したときには、一方のアイドラブラケット側に配置された軸受部の両端部のそれぞれに設けた突起部のうちの該当する突起部を介して一方のアイドラブラケットに伝えられる。上述した突起部が両端部に設けられる軸受部は、上面及び下面のそれぞれが水平面に含まれる平坦面に形成されるものであり、アイドラブラケットの接合面に対する角度出しが不要となるとともに、突起部が両端部に設けられる軸受部の外形形状の単純化を実現でき、さらに容易に製作することができる。
また、本発明に係るクローラ式車両のアイドラ支持構造は、上記発明において、上記一方のアイドラブラケットの板厚を、上記他方のアイドラブラケットの板厚に比べて厚く設定したことを特徴としている。
このように構成した本発明は、横荷重が作用しない他方のアイドラブラケットを薄板で製作することができ、製作費の低減に貢献する。また、横荷重が伝えられる一方のアイドラブラケットの剛性を高くすることができ、拡開変形の抑制に貢献する。
また、本発明に係るクローラ式車両のアイドラ支持構造は、上記発明において、上記一方のアイドラブラケットを、上記他方のアイドラブラケットよりも上記走行体の内部側に位置させたことを特徴としている。
このように構成した本発明は、横荷重が伝えられる一方のアイドラブラケットの強度を向上させるために、この一方のアイドラブラケットに補強材を設けた場合でも、その補強材が車両の外側に張り出されることがない。
本発明は、アイドラの支軸を支持する一対の軸受部に与えられるサイドフレームの延設方向と直交する当該クローラ式車両の横方向に沿う方向の横荷重を、上記アイドラブラケットに伝達する荷重伝達部を、一対のアイドラブラケットのうちの一方のアイドラブラケット側のみに設け、一対のアイドラブラケットのうちの他方のアイドラブラケットのガイド部に案内される軸受部のサイドフレームの延設方向と直交する当該クローラ式車両の横方向に沿う方向の移動が、他方のアイドラブラケットによって阻止されないように、これらの他方のアイドラブラケットと該当する軸受部との配置関係を設定してある。この構成によって、アイドラに対して横荷重が左右方向のうちの一方向、または他方向に作用したときには、一対のアイドラブラケットのうちの一方のアイドラブラケット側に設けた荷重伝達部を介して一方のアイドラブラケットのみに伝えられ、他方のアイドラブラケット側に配置された軸受部は、何らの阻止力を受けることなく他方のアイドラブラケットのガイド部内を自由に移動することができる。
したがって、アイドラに横荷重が作用した際の他方のアイドラブラケットの変形を防ぐことができ、一対のアイドラブラケットが「ハ」の字状に下方が広がる拡開変形を抑制でき、耐久性を向上させることができる。また、軸受箱のスラスト方向のガタツキの増加を抑え、走行時のアイドラの振動の増加や、このアイドラの振動の増加に伴って履帯に生じる波打ち現象を抑えることができ、車両の良好な乗り心地を確保することができる。これによって、信頼性の高いアイドラ支持構造を実現させることができる。また、一対のアイドラブラケットの接合面に対する精度出し、及び軸受部の外形の精度出しは、一対のアイドラブラケットのうちの一方のアイドラブラケット、及びこの一方のアイドラブラケット側に配置される軸受部においてのみ考慮すれば済むので、容易に製作することができ、従来に比べて製作工数を低減でき、製作費を安くすることができる。
以下、本発明に係るクローラ式車両のアイドラ支持構造の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明に係るクローラ式車両のアイドラ支持構造の第1実施形態を示す正面図、図2は第1実施形態によって支持されるアイドラを示す斜視図で、(a)図は一方の側から見た図、(b)図は他方の側から見た図、図3は第1実施形態に備えられる一対のアイドラブラケットを示す斜視図である。なお、上述した従来技術で説明したものと同等のものは、同じ符号で示してあり、詳しい説明は省略する。
この第1実施形態に係るクローラ式車両のアイドラ支持構造も、例えば図19に示した履帯張力調整手段を有する走行体を備えた例えば図11に示した油圧ショベルに備えられるものである。後述する第2〜第5実施形態に係るアイドラ支持構造も、例えば図11に示した油圧ショベルに備えられるものである。
図1〜3に示すアイドラ支持構造に係る第1実施形態は、履帯13が巻回されるアイドラ12の支軸34を回転可能に支持する一対の軸受部35a,35a2と、これらの軸受部35a,35a2をサイドフレーム10の延設方向に案内するガイド部をそれぞれ有し、端板14に溶接によって接合される一対のアイドラブラケット33A1,33A2と、一対の軸受部35a,35a2に与えられるサイドフレーム10の延設方向と直交する当該油圧ショベルの横方向に沿う方向の横荷重をアイドラブラケットに伝達する荷重伝達部とを備えたものにあって、荷重伝達部を、一対のアイドラブラケット33A1,33A2のうちの一方のアイドラブラケット側のみに、例えばアイドラブラケット33A2側のみに設けてある。また、一対のアイドラブラケット33A1,33A2のうちの他方のアイドラブラケット、すなわちアイドラブラケット33A1のガイド部に案内される軸受部35aのサイドフレーム10の延設方向と直交する当該油圧ショベルの横方向に沿う方向の移動が、アイドラブラケット33A1によって阻止されないように、これらのアイドラブラケット33A1と軸受部35aとの配置関係を設定した構成にしてある。
横荷重が伝えられる側の一方のアイドラブラケット33A2は、他方のアイドラブラケット33A1よりも走行体1の内部側に位置させてある。
一方のアイドラブラケット33A2側のみに設けられる上述した荷重伝達部は、図1等に示すように、例えば一方のアイドラブラケット33A2の挟持板体33d2の下面と、挟持板体33e2の上面との間に形成されるガイド部に案内される軸受部35a2のアイドラ12に近い側の端部の上部及び下部に設けられ、サイドフレーム10の延設方向と直交する当該油圧ショベルの横方向に沿う方向のうちの一方向の横荷重を、例えば図1の右方向に作用する横荷重を受けた際に、一方のアイドラブラケット33A2の挟持板体33d2,33e2に係合する突起部51a2,51b2を含んでいる。また、軸受部35a2の上面及び下面のそれぞれに形成され、アイドラ12から離れるに従って軸受部35a2の厚さ寸法を大きくし、サイドフレーム10の延設方向と直交する当該油圧ショベルの横方向に沿う方向のうちの上述した一方向とは逆方向である他方向の横荷重、すなわち図1の左方向に作用する横荷重を受けた際に、一方のアイドラブラケット33A2の挟持板体33d2,33e2に係合するテーパ面を含んでいる。また、軸受部35a2の上下面に形成したテーパ面に対応する挟持板体33d2の下面、及び挟持板体33e2の上面のテーパ形状を含んでいる。
このように構成したアイドラ支持構造の第1実施形態は、アイドラ12に対して横荷重が一方向に、すなわち図1の右方向に作用したときには、一対のアイドラブラケット33A1,33A2のうちの一方のアイドラブラケット33A2側に設けた荷重伝達部、すなわち突起部51a2,51b2が挟持板体33d2,33e2に係合することによって、その横荷重がアイドラ12の支軸34、一方のアイドラブラケット33A2側に配置された軸受部35a2を介して一方のアイドラブラケット33A2を、右方向へ変位させるようにして伝えられ、この一方のアイドラブラケット33A2が横荷重を受ける。このとき、他方のアイドラブラケット33A1側に配置された軸受部35aは、何らの阻止力を受けることなく他方のアイドラブラケット35aのガイド部内を自由に移動する。
また、アイドラ12に対して横荷重が他方向すなわち左方向に作用したときには、一方のアイドラブラケット33A2側に設けた荷重伝達部、すなわち軸受部35a2の上面及び下面に設けたテーパ面を介して一方のアイドラブラケット33A2を、上述した変位を戻すように左方向に変位させるようにして伝えられ、上述と同様に一方のアイドラブラケット33A2が横荷重を受ける。このとき、他方のアイドラブラケット33A1側に配置された軸受部35aは、上述と同様に何らの阻止力を受けることなく他方のアイドラブラケット33A1のガイド部内を自由に移動する。これらにより、アイドラ12に横荷重が作用した際の他方のアイドラブラケット33A1の変形を防ぐことができる。
したがって、一対のアイドラブラケット33A1,33A2が「ハ」の字状に下方が広がる拡開変形を抑制でき、耐久性を向上させることができる。また、軸受部35a,35a2のスラスト方向のガタツキの増加を抑え、走行時のアイドラ12の振動の増加や、このアイドラ12の振動の増加に伴って履帯13に生じる波打ち現象を抑えることができ、車両の良好な乗り心地を確保することができる。これによって、信頼性の高いアイドラ支持構造を実現させることができる。
また、一対のアイドラブラケット33A1,33A2の端板14の接合面に対する精度出し、及び軸受部35a,35a2の外形の精度出しは、一対のアイドラブラケット33A1,33A2のうちの一方のアイドラブラケット33A2、及びこの一方のアイドラブラケット33A2側に配置される軸受部35a2においてのみ考慮すれば済むので、容易に製作することができる。これによって、製作工数を低減でき、製作費を安くすることができる。
図4は本発明の第2実施形態を示す正面図、図5は第2実施形態によって支持されるアイドラを他方の側から見た斜視図、図6は第2実施形態に備えられる一対のアイドラブラケットを示す斜視図である。
これらの図4〜6に示す第2実施形態に係るアイドラ支持構造にあっては、一方のアイドラブラケット33A2側のみに設けられる荷重伝達部は、一方のアイドラブラケット33A2の挟持板体33b2の下面と挟持板体33c2の上面との間に形成されるガイド部に案内され、上面及び下面のそれぞれが水平面に含まれる平坦面に形成される軸受部35cの両端部にそれぞれ設けられ、サイドフレーム10の延設方向と直交する当該油圧ショベルの横方向に沿う方向のうちの一方向の横荷重、すなわち右方向に作用する横荷重を受けた際に、一方のアイドラブラケットの挟持板体33b2,33c2に係合する突起部52a1,52b1と、サイドフレーム10の延設方向と直交する当該油圧ショベルの横方向に沿う方向のうちの他方向である左方向に作用する横荷重を受けた際に、一方のアイドラブラケット33A2に係合する突起部52a2,52b2とを含んでいる。一方のアイドラブラケット33A2の側面には図6等に示すように切欠き53を形成してあり、突起部52a2,52b2が含まれる軸受部35cの端部は、この切欠き53から走行体1の内部側に突出するように位置している。その他の構成は、上述した第1実施形態と同等である。
このように構成したアイドラ支持構造の第2実施形態は、アイドラ12に対して横荷重が一方向、または他方向に、すなわち図4の右方向または左方向に作用したときには、一方のアイドラブラケット33A2側に配置された軸受部35cの両端部のそれぞれに設けた突起部52a1,52b1、及び突起部52a2,52b2のうちの該当する突起部を介して一方のアイドラブラケット33A2の挟持板体33b2,33c2に伝えられる。上述した突起部52a1,52b1、及び突起部52a2,52b2が両端部に設けられる軸受部35cは、上面及び下面のそれぞれが水平面に含まれる平坦面に形成されるものであり、一対のアイドラブラケット33A1,33A2の端板14の接合面に対する角度出しが不要となるとともに、軸受部35cの外形形状の単純化を実現でき、さらに容易に製作することができる。
図7は本発明の第3実施形態を示す正面図、図8は本発明の第4実施形態を示す正面図である。
図7に示す第3実施形態は、上述した第1実施形態に係るアイドラ支持構造において、一方のアイドラブラケット33A2の挟持板体33D,33E及び本体板33Fの板厚を、他方のアイドラブラケット33A1の挟持板体33b1,33c1及び本体板33a1の板厚に比べて厚く設定したものである。同様に、図8に示す第4実施形態は、上述した第2実施形態に係るアイドラ支持構造において、一方のアイドラブラケット33A2の挟持板体33D1,33E1及び本体板33F1の板厚を、他方のアイドラブラケット33A1の挟持板体33b1,33c1及び本体板33a1の板厚に比べて厚く設定したものである。
このように構成した第3,第4実施形態は、それぞれ第1,第2実施形態と同等の作用効果が得られるとともに、横荷重が作用しない他方のアイドラブラケット33A1を薄板で製作することができ、製作費の低減に貢献する。また、横荷重が伝えられる一方のアイドラブラケット33A2の剛性を高くすることができ、拡開変形の抑制に貢献する。
図9は本発明の第5実施形態を示す正面図、図10は第5実施形態において一部を破断して示した平面図である。
図9,10に示す第5の実施形態は、図8に示した第4実施形態に係るアイドラ支持構造において、切欠き53から突出する軸受部35cの端部を覆うように走行体1の内部側に配置され、一方のアイドラブラケット33A2の本体板33F1の外面に固定される補強材、すなわち補強板33gを設けた構成にしてある。
このように構成した第5実施形態は、一方のアイドラブラケット33A2の剛性をさらに高めることができるとともに、補強板33gが車両の外部に張り出されることがないので、この補強板33gに土砂や異物が堆積することを抑制できる。