JP5204555B2 - 鞍乗型車両 - Google Patents
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Description
特許文献1には、車体の前部に一対の車輪が設けられている自動三輪車両が開示されている。前部の一対の車輪を支持する機構は、メインフレームの前端に回転可能に支持された上下一対のクロスバーと、一対のクロスバーの両側に略上下方向に支持された左右一対のサイドチューブとによって関節四角形を呈するロール機構で構成されている。一対のサイドチューブは一対の車輪を回転可能に支持している。このように構成される支持機構は、一対の車輪を車体に対して上下動可能に支持する。よって、特許文献1に開示される車両は、メインフレームを傾斜させつつ一対の車輪を路面に接地させて旋回走行することができる。
すなわち、ロック機構を作動させるために手動でスイッチ操作を行うことは搭乗者にとって煩わしい。車速が低い停車や発進の際にロック機構を作動させることは特に煩わしく感じられ、実際の走行場面ではロック機構を使用しづらいという不都合がある。
すなわち、請求項1に記載の発明は車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、車体を挟んで設けられた少なくとも一対の車輪を、車体に対して上下動可能に支持する支持機構と、前記支持機構に接続されて前記一対の車輪の上下動を制限する傾斜制限機構と、車両状態を検出する状態検出部と、前記状態検出部の検出結果に基づいて前記傾斜制限機構を制御する制御部と、を備え、前記状態検出部は、車速を検出する車速検出部と、ブレーキ操作を検出するブレーキ検出部と、を備え、前記制御部は、車速が所定速度以上で、かつ、ブレーキ操作がされていない状態になったとき、前記傾斜制限機構による制限を解除させることを特徴とするものである。
また、制御部は、車速検出部とブレーキ検出部との各検出結果に基づいて、車速が所定速度以上で、かつ、ブレーキ操作がされていない状態になったか否かを判断する。実際、同じ走行でもスロットルバルブを開いている場合と、スロットルバルブを閉じている場合とがある。さらに、後者の場合であっても、ブレーキ操作が生じる程度の車速であるときと、ブレーキ操作が不要なほど車速が低いときがある。本発明に記載の制御部によれば、上述したいずれの場合でも検知することができる。上記所定の状態になったと判断すると、制御部は傾斜制限機構による制限を解除する。このため、搭乗者は傾斜制限機構の制限を解除させるための特別な手動操作をすることなく、快適に車両を走行するができる。
また、制御部は、(A)車速、スロットル開度およびブレーキ操作の有無によって規定される状態、あるいは、(B)ブレーキ操作の有無に関わらず、車速とスロットル開度によって規定される状態になったときは、いずれも傾斜制限機構による制限を行わせる。これにより、実際に車両を停車させる際の様々な場面で、傾斜制限機構を作動させることができる。なお、(A)、(B)の二つの状態は一部重複するように規定してもよいし、重複しないように規定してもよい。
また、制御部は、スロットル開度検出部の検出結果に基づいて、スロットル開度が所定開度以下の状態になったか否かを判断する。実際、車両を発進させる場合、車速が上昇するのに先立ってスロットル開度が大きくなる。これを考慮すると、制御部は、発進時を好適に検知することができる。別の観点からみれば、制御部は搭乗者の「発進する」という意思を車両状態から好適に汲み取ることができる。
上記所定の状態になったと判断すると、制御部は傾斜制限機構による制限を解除する。解除により、車体が傾斜可能になる。よって、車体を傾斜させて旋回するなど、搭乗者は二輪車と同様な感覚で乗車することができる。このように、搭乗者は傾斜制限機構による制限を解除させるための特別な手動操作をすることなく、快適に車両を発進させ、その後走行するができる。
図1は実施例に係る鞍乗型車両の外観を示す側面図であり、図2は実施例に係る鞍乗型車両の概略構成を示す側面図であり、図3は実施例に係る鞍乗型車両の概略構成を示す斜視図であり、図4はロック機構を示す要部正面図であり、図5はロック機構を示す要部斜視図である。以下の説明において用いる「右側」、「左側」は、鞍乗型車両に乗車した搭乗者から見た場合を基準とする。図1、図2においては図面の右側が鞍乗型車両1の前側であり、図3においては図面の左側が鞍乗型車両1の後側である。
1.支持機構〜右側、左側支持機構
メインフレーム11の前端下部に、車体の前部へ延びる右側下方スイングアーム13Rと左側下方スイングアーム13Lとが車幅方向に並んで設けられている。同様に、メインフレーム11の前端上部には、車体の前部へ延びる右側上方スイングアーム15Rと左側上方スイングアーム15Lとが車幅方向に並んで設けられている。右側、左側下方スイングアーム13R、13Lの一端は、下方ピボット軸14周りに回転可能にメインフレーム11に支持されている。同様に、右側、左側上方スイングアーム15R、15Lの一端は上方ピボット軸16周りに回転可能にメインフレーム11に支持されている。下方、上方ピボット軸14、16は、それぞれ車幅方向と略平行である。
右側、左側下方スイングアーム13R、13Lの間であってやや下側には、車体前方に延びるフロントキャリアビーム23がメインフレーム11に一体に支持されている。フロントキャリアビーム23は、さらにメインフレーム11の前端中央部とフロントサスペンション25を介して連結されている。フロントキャリアビーム23は車体の略前後方向の一軸(以下では適宜に「回転軸」と記載する)周りに回転可能にフロントバランサビーム27を支持している。フロントバランサビーム27は車幅方向に延びており、その両端にはロッド29a、29bの下端が回動可能に連結されている。各ロッド29a、29bの上端は、右側、左側下方スイングアーム13R、13Lの略中央部に回動可能に連結されている。
右側フロントチューブ17Rと、右側下方、上方スイングアーム13R、15Rとの各結合部はそれぞれボールジョイントが用いられている。これにより、右側フロントチューブ17Rは上下の結合部を結ぶ軸まわりに回転可能に右側下方スイングアーム13Rおよび右側上方スイングアーム17Rに支持されている。
図3および図4を参照する。ロック機構50は、ディスク51とソレノイド53とを備えて構成される。ディスク51は、門型形状を呈する板状物であり、フロントバランサビーム27に一体に設けられている。ディスク51には、複数の小孔51aがフロントバランサビーム27の回転軸を中心とする円周方向に並ぶように形成されている。
ソレノイド53には可動部53aの位置を検出する位置検出センサ55が付設されている(図8参照)。この位置検出センサ55によって、可動部53aが小孔51aに係合しているか離脱しているかが判別される。位置検出センサ55としてはホールICやポテンショメータが例示される。位置検出センサ55はこの発明における作動検出部に相当する。
1.支持機構〜右側、左側支持機構
図2、図3を参照する。メインフレーム11の後端下部には、車体の後部へ延びる右側リアスイングアーム61Rと左側リアスイングアーム61Lとが車幅方向に並んで設けられている。右側、左側リアスイングアーム61R、61Lはそれぞれ、リアピボット軸62周りに回転可能にメインフレーム11に支持されている。右側リアスイングアーム61Rの各後端部には車幅方向に延びる駆動軸(図示省略)が回転可能に支持されている。駆動軸には右側車輪63Rが連結されている。
右側、左側リアスイングアーム61R、61Lの間には、車体後方に延びるリアキャリアビーム65がメインフレーム11に一体に支持されている。リアキャリアビーム65は、さらにメインフレーム11の後端上部とリアサスペンション67を介して連結されている。
図3を参照する。右側リアスイングアーム61Rに回転可能に支持されている駆動軸には、さらにドリブンスプロケット75Rが連結されている。ドリブンスプロケット75Rにはチェーン77Rが掛け回されている。チェーン77Rはさらにドライブスプロケット79Rに掛け回されている。ドライブスプロケット79Rにはエンジン5(図1参照)の駆動力が伝達される。
鞍乗型車両1は、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ81と、車速を検出する車速センサ83R、83Lと、ブレーキ操作を検出するブレーキセンサ85とを備えている(図8参照、スロットル開度センサ81については図1にも示す)。
図8は、鞍乗型車両1が備える制御系の概略構成を示すブロック図である。制御部91は、ロック状態決定部93とロック機構作動制御部95とドライブ回路97を備えている。制御部91は、各種処理を実行する中央演算処理装置(CPU)や記憶媒体、あるいは、マイクロコンピュータとによって実現されている。記憶媒体には、車両状態の検出結果と比較する閾値(後述する第1から第4の速度v1−v4、または第1、第2の開度oa1、oa2等)などが予め記憶されている。
車速センサ83R、83Lの検出結果は、例えば時速(km/h)で換算される値である。ブレーキセンサ85の検出結果は、例えば、左右輪63のブレーキ操作が行われているときを「ON」とし、ブレーキ操作がされていないときを「OFF」とする情報である。
ロック状態決定部93は、スロットル開度センサ81、車速センサ83R、83L及びブレーキセンサ85の各検出結果に基づいて、状態Aおよび状態Bの少なくともいずれかになったか否かを判断する。この判断は、予め制御部91に記憶されているマップを用いて行ってもよいし、一連の判断フローによって行ってもよい。その結果、車両が状態Aおよび状態Bの少なくとも一方である場合には、ロック状態決定部93はロック機構50によって左右輪19の上下動を制限すること、言い換えれば、車両の傾斜をロックさせることを決定する。また、状態A、Bのいずれでもない場合には、ロック機構50による制限を決定しない。
ロック状態決定部93は、スロットル開度センサ81、車速センサ83R、83L及びブレーキセンサ85の各検出結果を一定時間ごとに読み込む。ロック状態決定部93は、車速センサ83R、83Lの検出結果である車速のうち大きい方を選択する。以下の説明では、選択された車速を単に「車速」と記載する。
ロック状態決定部93は、車速が第1の速度v1以下であるか否かを判断する。その結果、車速が第1の速度v1以下である場合は、ステップS4に進む。それ以外の場合は、ステップS3に進む。
ロック状態決定部93は、車速が第2の速度v2以下であるか否かを判断する。その結果、車速が第2の速度v2以下である場合はステップS5に進む。それ以外の場合はステップS1に戻る。
ロック状態決定部93は、スロットル開度が第1の開度oa1以下であるか否かを判断する。その結果、スロットル開度が第1の開度oa1以下である場合はステップS7に進む。それ以外はステップS1に戻る。
ロック状態決定部93は、ステップS4と同様の判断をする。その結果、スロットル開度が第1の開度oa1以下である場合はステップS6に進む。それ以外はステップS1に戻る。
ロック状態決定部93は、ブレーキ操作がONであるか否かを判断する。その結果、ブレーキ操作がONである場合はステップS7に進む。それ以外はステップS1に戻る。
ロック状態決定部93はロック機構50によって左右輪19の上下動を制限することを決定する。
ロック状態決定部93は、スロットル開度センサ81、車速センサ83R、83L及びブレーキセンサ85の各検出結果に基づいて、状態a、状態bおよび状態cのいずれかになったか否かを判断する。この判断も、予め制御部91に記憶されているマップを用いて行ってもよいし、一連の判断フローによって行ってもよい。その結果、鞍乗型車輌1が状態a、状態bおよび状態cの少なくともいずれかである場合には、ロック状態決定部93はロック機構50による左右輪19の上下動の制限を解除すること、言い換えれば、車両の傾斜のロックを解除させることを決定する。また、状態a、状態bおよび状態cのいずれでもない場合には、ロック機構50による制限の解除を決定しない。
ロック状態決定部93は、スロットル開度センサ81、車速センサ83R、83L及びブレーキセンサ85の各検出結果を一定時間ごとに読み込む。ロック状態決定部93は、車速センサ83R、83Lの検出結果である車速のうち大きい方を選択する。以下の説明では、選択された車速を単に「車速」と記載する。
ロック状態決定部93は、車速が第4の速度v4以上であるか否かを判断する。その結果、車速が第4の速度v4以上である場合は、ステップS17に進む。それ以外の場合は、ステップS13に進む。
ロック状態決定部93は、車速が第3の速度v3以上であるか否かを判断する。その結果、車速が第3の速度v3以上である場合はステップS14に進む。それ以外の場合はステップS16に進む。
ロック状態決定部93は、スロットル開度が第2の開度oa2以上であるか否かを判断する。その結果、スロットル開度が第2の開度oa2以上である場合はステップS17に進む。それ以外はステップS15に進む。
ロック状態決定部93は、ブレーキ操作がOFFであるか否かを判断する。その結果、ブレーキ操作がOFFである場合はステップS17に進む。それ以外はステップS11に戻る。
ロック状態決定部93は、ステップS14と同様の判断をする。その結果、スロットル開度が第2の開度oa2以上である場合はステップS17に進む。それ以外はステップS11に戻る。
ロック状態決定部93はロック機構50によって左右輪19の上下の制限を解除することを決定する。
11 … メインフレーム
13R、13L … 右側、左側下方スイングアーム
15R、15L … 右側、左側上方スイングアーム
17R、17L … 右側、左側フロントチューブ
19 … 左右輪(右側車輪、左側車輪)
23 … フロントキャリアビーム
25 … フロントサスペンション
27 … フロントバランサビーム
29a、29b … ロッド
50 … ロック機構
51 … ディスク
51a … 小孔
53 … ソレノイド
53a … 可動部
55 … 位置検出センサ
61R、61L … 右側、左側リアスイングアーム
63 … 左右輪(右側車輪、左側車輪)
65 … リアキャリアビーム
67 … リアサスペンション
69 … リアバランサビーム
71a、71b … ロッド
81 … スロットル開度センサ
83R、83L … 車速センサ
85 … ブレーキセンサ
91 … 制御部
93 … ロック状態決定部
95 … ロック機構作動制御部
97 … ドライブ回路
A、B、a、b、c … 状態
v1、v2、v3、v4 … 第1、第2、第3、第4の速度
oa1、oa2 … 第1、第2の開度
Claims (9)
- 車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、
車体を挟んで設けられた少なくとも一対の車輪を、車体に対して上下動可能に支持する支持機構と、
前記支持機構に接続されて前記一対の車輪の上下動を制限する傾斜制限機構と、
車両状態を検出する状態検出部と、
前記状態検出部の検出結果に基づいて前記傾斜制限機構を制御する制御部と、
を備え、
前記状態検出部は、車速を検出する車速検出部と、ブレーキ操作を検出するブレーキ検出部と、を備え、
前記制御部は、車速が所定速度以上で、かつ、ブレーキ操作がされていない状態になったとき、前記傾斜制限機構による制限を解除させることを特徴とする鞍乗型車両。 - 請求項1に記載の鞍乗型車両において、
前記制御部は、車速が前記所定速度より大きい第4の速度以上である状態になったときにも、前記傾斜制限機構による制限を解除させることを特徴とする鞍乗型車両。 - 車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、
車体を挟んで設けられた少なくとも一対の車輪を、車体に対して上下動可能に支持する支持機構と、
前記支持機構に接続されて前記一対の車輪の上下動を制限する傾斜制限機構と、
車両状態を検出する状態検出部と、
前記状態検出部の検出結果に基づいて前記傾斜制限機構を制御する制御部と、
を備え、
前記状態検出部は、車速を検出する車速検出部と、スロットル開度を検出するスロットル開度検出部と、ブレーキ操作を検出するブレーキ検出部と、を備え、
前記制御部は、(A)車速が第1の速度以下で、かつ、スロットル開度が第1の開度以下の状態、および、(B)車速が第1の速度より大きい第2の速度以下で、スロットル開度が第1の開度以下で、かつ、ブレーキ操作が行われている状態の少なくともいずれかになったときに、前記傾斜制限機構による制限を行わせることを特徴とする鞍乗型車両。 - 請求項3に記載の鞍乗型車両において、
前記制御部は、(a)スロットル開度が第1の開度より大きい第2の開度以上である状態、(b)車速が第1の速度より大きく第2の速度より小さい第3の速度以上で、かつ、ブレーキ操作がされていない状態、および、(c)車速が第2の速度より大きい第4の速度以上である状態の少なくともいずれかになったとき、前記傾斜制限機構による制限を解除させることを特徴とする鞍乗型車両。 - 車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、
車体を挟んで設けられた少なくとも一対の車輪を、車体に対して上下動可能に支持する支持機構と、
前記支持機構に接続されて前記一対の車輪の上下動を制限する傾斜制限機構と、
車両状態を検出する状態検出部と、
前記状態検出部の検出結果に基づいて前記傾斜制限機構を制御する制御部と、
を備え、
前記状態検出部はスロットル開度を検出するスロットル開度検出部を備え、
前記制御部は、スロットル開度が所定開度以上の状態になったとき、前記傾斜制限機構による制限を解除させることを特徴とする鞍乗型車両。 - 請求項1から請求項5のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記傾斜制限機構による制限、および、その解除の少なくともいずれかの命令を搭乗者から受け付ける入力部を備え、
前記制御部は前記入力部からの命令に基づいて前記傾斜制限機構を制御することを特徴とする鞍乗型車両。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記傾斜制限機構の作動状態を検出する作動検出部を備え、
前記制御部は前記作動検出部の検出結果に基づいて、前記傾斜制限機構が正常に作動しているか否か判断することを特徴とする鞍乗型車両。 - 請求項1から請求項7のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記傾斜制限機構は、可動部を有するソレノイドと、前記可動部が係合可能な係止部とを備えて、前記可動部が前記係止部と係合離脱することで前記一対の車輪の上下動の制限およびその解除を行い、
前記制御部は、前記ソレノイドへの通電制御によって前記可動部を前記係止部に係合離脱させることを特徴とする鞍乗型車両。 - 請求項1から請求項8のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記支持機構は、
一対の車輪の右側車輪を上下動可能に支持する右側支持機構と、
一対の車輪の左側車輪を上下動可能に支持する左側支持機構と、
車体に回転可能に支持されるとともに前記右側、左側支持機構に連動連結して、前記右側車輪および左側車輪の各上下動を互いに反対向きで同等量とさせるバランサ機構と、
を備え、
前記傾斜制限機構は前記バランサ機構を回転不能にすることによって前記一対の車輪の上下動を制限することを特徴とする鞍乗型車両。
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