JP5201806B2 - 耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材 - Google Patents

耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、大気腐食環境中で高い防食性を持つ皮膜、具体的には安定且つ緻密なさび層を表面に有する耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材及びその製造方法に関する。
周知の如く、大気腐食環境中で使用される鋼材は、腐食減肉あるいは腐食ピット形成による静的強度特性や疲労強度特性の低下、及びさび発生による外観の悪化を防止するため、材料組成を調整するか、表面処理等により防食性の高い反応生成物を表面に形成することで耐食性を向上させることが多い。
ところで、材料組成の調整として、CuやNi,Cr、P等を微量添加し、母材の腐食により緻密で防食性の高いα−FeOOHを含むさび層を母材表面に形成させ、その後の腐食進行を抑制する機能を持たせた耐候性鋼が、橋梁材や建材に便用されている。しかし、工業地帯や田園地域などの比較的腐食がマイルドな環境では、通常上記防食性さびが形成するまでに5〜10年を要するため、それまでの期間は発生したさびが、いわゆる流れさびとして外観を悪化させる問題が生じていた。一般に、α-FeOOHは腐食の初期に生成するγ−FeOOH(Clを含む環境中ではγ−FeOOH及びβ−FeOOH)等が長い年月を経て相変態することにより形成する。従って、γ-FeOOH、β-FeOOHのうち少なくとも一方が表面に形成している期間の母材は耐食性が劣り、α-FeOOHが形成するまでに腐食が進んでしまう。その結果、深く鋭い腐食ピットが形成されるので、静的および疲労強度が低下する問題があった。
さらに言えば、橋梁材や建材のように静置状態で使用される場合は、長い年月をかければα−FeOOHが形成しやすくなるし、逆にそのような使用環境であるために長時間かけてα-FeOOHを形成することでも腐食による破壊には至らずに済んでいた。つまり、α-FeOOH形成までのインターバルが許されていた。しかし、駆動系機構部品等のように常に繰返し応力変動が負荷される場合には、発生したさびがα-FeOOHに変態する前に応力変動によって脱落し、再び腐食進行性のあるβ-FeOOHやγ-FeOOHの形成を繰返し、母材の減肉により破壊を早めるという問題を生じていた。
また、従来の耐候性鋼などにおいては、α-FeOOHが形成したときのさび層の構成は、最表面側にβ-FeOOH及びγ−FeOOH、母材側にα-FeOOHを夫々主体とし、α-FeOOHを多く含むさび層は最表面から深さ方向で100μm以上に形成される(三沢俊平ら,「鉄と鋼」,Vol.79.No.1(1992)p.69)ことが知られている。このような母材側にα-FeOOHが形成される特徴を持つ耐候性鋼は、飛来塩分量の多い海浜や冬季に融雪剤を散布する寒冷地等の環境では、長い年月を経過してα-FeOOHが形成されるまでに腐食が著しく速く進行するか、α−FeOOHが形成する間もなく腐食が進行し、母材の減肉により荷重を支えられなくなる等、便用が困難であった。これまでに、上記添加元素を増量した鋼材も提案されてきたが、耐食性向上効果に比べ原料コストや製造コストが著しく高くなるという問題があった。つまり、α-FeOOHを含むさび層が長時間を要して形成される従来の鋼材(耐候性鋼)では、十分な耐食性及び耐腐食労性を得ることはできず、早期にα−FeOOHを形成できる方法や、すでにα−Fe00Hを保持した鋼材が望まれていた。
一方、防食表面処理としては、鋼材に対して腐食犠牲層を設けて母材の腐食を遅らせる、いわゆる犠牲防食を目的として亜鉛皮膜を付与する方法がある。しかし、例えば亜鉛皮膜を電気めっき法で形成する場合は、ピンホールやめっきむらを防止するための施工条件の管理や、陰極の被処理鋼材表面で発生する水素が鋼中に侵入することに起因する水素脆化を防止するための処理が別途必要になるなど、製造工程の複雑化やコスト高が問題となっていた。また、亜鉛を含有するりん酸系皮膜処理(りん酸亜鉛化成処理)では、比較的容易に施工が可能であるが、めっき膜に比べると皮膜の耐食性が不十分であった。さらに、Znの犠牲防食作用とAlの自己修復作用を合わせ持つとされる表面処理鋼材として、Zn−Al−Si系溶融合金めっき鋼(商品名:ガルバニウム鋼、日鉄鋼板(株)製)が知られている。しかし、めっき浴の温度が400℃以上であるため、浴浸漬時に鋼材が加熱されることによる機械的強度の低下が問題となる場合には用いることができなかった。また、製造コストが高くなる問題があった。
従来、本提案の鋼材に関連する公報としては、例えば以下に示す特許文献1〜3が知られている。
特許文献1では、硫酸クロム及び/又は硫酸銅を含む有機樹脂塗料で表面を被覆することにより、溶出した鉄イオンをα−FeOOHに変換させ、耐候性を向上させる表面処理鋼材が開示されている。しかし、特許文献1では、硫酸イオンがβ-FeOOHを安定化させることから、形成されたさびの保護性や安定性が不明確である他、処理内容が複雑であり、且つ処理コストが高い問題があった。
特許文献2には、鋼材を大気暴露し表面にさびを形成させた後、アルカリ性水溶液を塗布し、α-FeOOHに変換させるといったさび安定化処理鋼材及びさび安定化処理方法について開示されている。しかし、特許文献2では、α-FeOOHの生成量は少なく、本発明のようにα−FeOOH比率が10%以上である層を得ることはできなかった。従って、例えば飛来塩分量の多い海浜など腐食が促進されやすい環境では、必ずしも防食が得られない場合があった。また、大気暴露に30日以上を費やすため処理に時間がかかることや、暴露中に生じた腐食ピットにより静的強度特性や疲労強度特性が低下する問題があった。
特許文献3には、亜鉛系めっき鋼板に化成処理皮腹を形成し、その上にりん酸アルミニウムを含む有機皮膜を形成した耐食性に有機被覆鋼板について開示されている。しかし、特許文献3では、りん酸アルミ=ウムを含む有機皮膜を形成する以前に化成処理を施す必要がある等、処理の内容が複雑であり、且つ処理コストが高い間魍があった。
特許第2666673号公報 特許第2827669号公報 特許第3381647号公報
本発明は上述した課題を解決するためなされたもので、大気腐食環境中で安定且つ緻密なさび層を有し、水素脆化や材料強度の低下がなく、しかも低コストで製造が容易な耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材及びその製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するための本発明の特徴は、以下の通りである。
(1).鋼材の表面が主にFeOOHからなる皮膜で覆われており、最表面から深さ方向に100μmまでの領域において、赤外分光法でα-FeOOHに対応する920cm−1付近の吸収ピーク強度をA、β-FeOOHに対応する840cm−1付近の吸収ピーク強度をB、γ−FeOOHに対応する740cm−1付近の吸収ピーク強度をCとした場合、「{A/(A+B+C)}×100%」で定義するα-FeOOH比率が10%以上である層を有し、前記鋼材はCu,Ni,Cr,Moの1種以上を合計で1.7〜3.0wt%を含有することを特徴とする耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材。
(2).前記α-FeOOH比率が10%以上である層の厚さが、20〜100μmであることを特徴とする(1)に記載の耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材。
(3).Cu,Ni,Cr,Moの1種以上を合計で1.7〜3.0wt%を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材。
(4).A1,P,O及びHからなる厚さ1〜5μmのアモルファス構造を有する膜で表面を覆った鋼材に、塩水噴霧処理を雰囲気温度30〜40℃、塩水濃度3〜5wt%NaCl、噴霧量50〜200mL/min/mm、噴霧時間5〜30分の各範囲の条件で行った後、温度25〜85℃、相対湿度30〜95%の雰囲気に10〜24時間保持するサイクルを、1〜10回繰り返すことを特徴とする耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材の製造方法。
(5).鋼材をAlイオン及びPOイオンを含む40〜50℃の水溶液に30秒以上接触させることにより、鋼材の表面をA1,P,O及びHからなる厚さ1〜5μmの皮膜で覆うことを特徴とする(4)に記載の耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材の製造方法。
(6).鋼材をAlイオン及びPOイオンを含む30℃の水溶液に180秒以上接触させることにより、鋼材の表面をAl,P,O及びHからなる厚さ1〜5μmの皮膜で覆うことを特徴とする(4)に記載の耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材の製造方法。
(7). 鋼材をAlイオン及びPOイオンを含む室温の水溶液に接触させた後、300℃以下の大気中で加熱して、鋼材の表面をAl,P,O及びHからなる厚さ1〜5μmの皮膜で覆うことを特徴とする(4)に記載の耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材の製造方法。
本発明によれば、大気腐食環境中で安定且つ緻密なさび層を有し、水素脆化や材料強度の低下がなく、しかも低コストで製造が容易な耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材及びその製造方法が得られる。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明者らは、鋼材の腐食挙動や腐食疲労メカニズム、化成処理法について鋭意研究を重ねた結果、従来技術にはない耐食性と耐腐食疲労性に極れた鋼材およびその製造方法を発明するに至った。以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る鋼材は、鋼材の表面が主にFeOOHからなる皮膜で覆われており、最表面から深さ方向に100μmまでの領域において、顕微IR(赤外分光法)でα−FeOOHに対応する920cm−1付近の吸収ピーク強度をA、β−FeOOHに対応する840cm−1付近の吸収ピーク強度をB、γ−FeOOHに対応する740cm−1付近の吸収ピーク強度をCとした場合、「{A/(A+B+C)}×100%」で定義するα-FeOOH比率が10%以上である層を有し、前記鋼材はCu,Ni,Cr,Moの1種以上を合計で1.7〜3.0wt%を含有する構成のものである。
Cl成分や水分を含む大気腐食環下で形成するさび成分には、α−FeOOH,β-FeOOH,γ−FeOOH,FeなどのFeの酸化物および水酸化物があるが、α−FeOOHは微細粒から成り繊密であるため、腐食の原因となるC1,O,H等の元素が外部環境から侵入することを抑制する環境遮断機能を有する。即ち、α−FeOOHを含有するさびが表面に形成された鋼材は、その後の腐食が抑制され、耐食性が向上する。その代表例として、耐侯性鋼が挙げられる。しかし、耐候性鋼の場合、前述のようにα-FeOOHが形成するまでにかなりの時間を要し、その間に腐食が進行し、深く鈍い腐食ピットを生じるため、疲労強度が著しく低下する。
本発明に係る鋼材は、最表面から深さ方向に100μmまでの領域に、α-FeOOH比率が10%以上である層を有する構成を特徴とする。また、その形成過程の特徴は、β−FeOOH,γ−FeOOH等が早期にα−FeOOHに相変態することである。腐食は表面から進行し、初期の腐食で表面に形成されたβ-FeOOH、γ-FeOOHが早期にα-FeOOHへ相変態する過程をたどるため、最表面(環境)側はα-FeOOHを多く含有する層で覆われた形態を呈する。そして、α-FeOOH比率が10%以上になると、その後の腐食が実質的に抑制され耐食性が向上する。また、この層が最表面から深さ方向に100μmまでの領域に形成されることで、大きな腐食減肉を伴わない。従って、α-FeOOHが早期に最表面側を覆う形態で形成するため、その後の鋼材の腐食は抑えられ、腐食ピットの形状は比較的浅く且つ平滑となるため、静的および疲労強度の低下は非常に小さい。
また、本発明に係るα-FeOOH比率が10%以上である層の厚さは、20〜100μmが望ましい。ここで、厚さが20μm未満では、環境遮断機能が劣るため、十分な耐食性が得られない。また、厚さが100μmを超える場合、母材の厚さが減少する、つまり母材減肉が大きくなることにより、静的強度や疲労強度が低下するため好ましくない。
更に、本発明に係る鋼材は、Cu,Ni,Cr,Moの1種以上を合計で1.7〜3.0wt%を含有することが望ましい。例えば、鋼材中に均一に含まれるCuは、鋼材の主成分であるFeより電気化学的に貴であるため、安定したカソードとして鋼材の均一溶解を促進し、β-FeOOH,γ-FeOOHがα-FeOOHに相変態する速度を増加させる。Cuと同様な作用を有する添加元素として,Ni,Cr,Moがある。前記Cu,Ni,Cr,Moは1種以上であればよく、その合計は1.7〜3.0wt%が望ましい。ここで、1.7wt%未満では効果が小さく不十分であり、3.0wt%を超えても効果は増加せず、逆に材料コストが増加するため好ましくない。
次に、本発明に係るα-FeOOH比率が10%以上である層の形成方法について説明する。
本発明に係る皮膜は、Al,P,O及びHからなる厚さ1〜5μmのアモルファス構造を有する膜で裏面を覆った鋼材に、塩水噴霧処理を雰囲気温度30〜40℃、塩水濃度3〜5wt%NaCl、噴霧量50〜200mL/min/mm、噴霧時間5〜30分の各範囲の条件で行った後、温度25〜35℃、相対湿度30〜95%の雰囲気に10〜24時間保持するサイクルを、1〜10回繰り返すことにより得ることができる。
Al−P−O−H系膜に均一に分布しているPは、上記サイクルで鋼材の均一溶解と、O,Hの存在下でそれに続くβ-FeOOH,γ-FeOOHの均一生成をもたらし、更にα-FeOOHへの相変態を助長する作用を持つため、結果的に均一なα-FeOOH皮膜の形成を促進する。これらのPの作用は、PがO,Hを伴いHPO イオンを形成しやすい特徴を持つ。このHPO イオンはFe3+イオンとの錯形成能力が高く、Fe2+イオンの酸化速度を増大させる作用を持つ(三沢俊平ら,「防食技術」,Vol.23,17−27(1974))ことに起因すると考えられる。
Alは、Al−P−O−H系膜がアモルファス構造をとるために必要であると考えられる。この膜がアモルファス構造であることは、極微細粒の凝集体の形態を有しているα−FeOOHの核形成の土壌となり、α−FeOOHの形成を促進するものと考えられる。
次に、鋼材の表面に、アモルファス構造を有する厚さ1〜5μmのAl−P−O−H系膜を形成する方法を説明する。
Al−P−O−H系膜は、鋼材をAlイオン及びPOイオンを含む40〜50℃の水溶液に30秒以上、または30℃の同水溶液に180秒以上接触させるか、室温の同水溶液と接触させた後、300℃以下で加熱することにより作製することができる。
上記水溶液は、まず、りん酸アルミニウム(AlPO)を水に加えるが、AlPOは水に難溶であるため、更にりん酸(HPO)を加えてこれらを溶解して得られる。AlPOの重量濃度は1〜10%の範囲が良い。ここで、重量濃度が10%を超えた場合、溶解するために添加するHPOの濃度が増加し、鋼材に対する酸侵食を招く恐れがある。また、重量濃度が1%未満では、AlPOの補給が頻発するため施工性が低下する。また、溶媒に用いる水は、工業用水や水道水、蒸留水等を用いることができる。但し、水中に腐食を促進する恐れがあるClが含まれる場合は、極力これを除くことが好ましい。水溶液を鋼材に接触させるには、浸漬やエアスプレー、刷け塗り等のいずれの方法によっても良い。
皮膜の形成メカニズムは十分解明されていないが、次のように考えられる。
本処理液中では、アルミニウムの第一りん酸塩(Al(HPO)とHPO、AlPOは下記式(1)のような平衡状態にある。鋼材を処理液に接触させると、下記式(2)に示すようにHPOはFeに作用して、その表面付近の溶液((1)式)ではHPO濃度が減少する。このため、平衡式(1)は右へ反応が進み、難溶性のAlPOが鋼材表面に沈着し、Al−P−O系皮膜を形成すると考えられる。
A1(HP0(可溶)⇔2HPO(液体)+AlPO(難溶)…(1)
Fe+2HPO→Fe(HPO+H↑ …(2)
即ち、Al−P−O系皮膜の形成は、HPOの鋼材腐食作用が契機となり、Al(HPOの分解による難溶AlPOの生成沈着作用に基づくと考えられる。従って、このような皮膜形成の促進には、(2)式の反応速度を増加させるため、水溶液の温度を高くした方が良い。
水溶液の温度が各々30℃、40〜50℃の場合、鋼材への接触時間は夫々180秒以上、30秒以上必要であり、これ以下では反応速度が遅く、Al−P−O系皮膜を形成することが困難である。水溶液の上限温度は、温麗管理が高温ほど困難で且つ維持コストも高くなるため、300℃以下が望ましい。また、水溶液の温度が室温の場合は、接触のみでは皮膜形成が難しいため、接触後に300℃以下の大気中で加熱し、水分を蒸発することによっても上記皮膜を得ることができる。加熱温度が300℃を超える場合は、水分の蒸発速度が速すぎて、皮膜の緻密度が下がり、皮膜強度が低下するため、好ましくない。また、鋼材の静的強度および疲労強度が低下する懸念があるため好ましくない。
このように形成したAl−P−O−H系膜の厚さは、1〜5μmが望ましく、1μm未満では上記のPやアモルファス構造の作用が小さく、本発明に係るα−FeOOH率が10%以上の皮膜を得ることができない。また、厚さが5μmを超えても、これらの作用はほとんど増加せず、逆に同膜形成にコストがかかり望ましくない。
上記の水溶液は、安価なりん酸アルミニウムやりん酸、蒸留水を用いて容易に作製でき、且つ処理も簡単であるため、低コストでAl−P−O−H系皮膜の形成が可能である。また、本水溶液は弱酸であるため、鋼材から発生する水素量は極微量であり、水素脆化の心配がない。さらに、全ての処理を300℃以下で行うため、材料強度の低下もほとんどない。
次に、Al−P−O−H系膜で表面を覆った鋼材から、α−FeOOHを早期に形成する方法について説明する。
塩水噴霧処理は、Al−P−O−H系膜で表面を覆った鋼材にCl,O,Hを付与し、鋼材の溶出を促すために行うものである.処理条件としては、温度30〜40℃、塩水濃度3〜5wt%NaC1、噴霧量50〜200mmL/min/mm、処理時間5〜30分の各範囲が望ましい。温度は、30℃未満では溶出速度が小さいため、40℃を超えても溶出速度は大きく変わらず、逆に温度管理や温度維持にコストが高いため、ともに好ましくない。塩水濃度は、3wt%未満ではCl,O,Hの供給量が少なく溶出速度が小さいため、また5wt%を超えた場合は溶出速度はほとんど増加しないため、ともに好ましくない。噴霧量は、50mL/min/mm未満ではCl,O,Hの供給量が少なく溶出速度が小さいため、また200mL/min/mmを超えた場合は溶出速度はほとんど増加せず逆に噴霧液のコストが増加するため、ともに好ましくない。処理時間は、5分未満ではCl,O,Hの供給量が少なく溶出速度が小さいため、また30分を越えた場合は溶出速度はほとんど増加せず、逆に噴霧液のコストが増加するため、ともに好ましくない。
しかし、塩水噴霧処理のみでは,Clの累積供給量が増え過ぎ、β−FeOOHが安定化するため、α−FeOOHの早期形成が困難である。そこで、塩水噴霧処理の後、Cl成分を含まず酸素と湿気が共存する安定した環境に暴露し、鋼材表面にO,Hを供給することで、α-FeOOHの早期形成が可能になる。
この塩水噴霧後の処理条件としては、温度25〜35℃、相対湿度30〜95%の雰囲気に10〜24時間保持することが望ましい。ここで、温度が25℃未満ではα−FeOOHの形成速度が小さいため、また35℃を超えた場合はα-FeOOHの形成速度は大きく変わらず、逆に温度管理や温度維持にコストが高いため、ともに好ましくない。相対湿度が30%未満ではO,Hの供給速度が小さく非効率であるため、また95%を越えた環境では、維持および管理が困難であり、高コストになるため好ましくない。処理時間が10時間未満では、α−FeOOHの形成量が少ないため、24時間を越えてもα−FeOOHの形成量が大きく増加しないため、ともに好ましくない。
また、上記の塩水噴霧等の処理を繰り返すことにより、α-FeOOHの形成をさらに加速することができる。繰り返す回数は、1〜10回の範囲が良く、10回を超えてもα−FeOOHの形成量が大きく増加しないため好ましくない。上記塩水噴霧処理および恒温恒湿処理は、ともに安価に入手できる市販の装置を用いることができ、低コストで本発明に係る皮膜が形成できる。
(実施例)
以下に実施例を示すが、本発明は特に本実施例に限定されるものではない。
直径φ4mm、長さ20〜80mmのばね用鋼材(鋼種1:0.4C−1.4Si−0.8Mn−0.7Cr−Fe、鋼種2:0.4C−1.8Si−0.2Mn−1.0Cr−0.5Ni−0.08Ti−0.18V−Fe、鋼種3:0.4C−2.5Si−0.7Mn−0.8Cr−1.8Ni−0.2V−0.4Mo−Fe(wt%))に対し、下記表1〜表6に示す条件でAl−P−O−H系皮膜を形成後、同表1〜6記載の条件で塩水噴霧等の処理を行なったものを供試材とし、耐食性評価および腐食疲労耐久性評価を行った。また、供試材については、Al−P−O−H系膜の厚さと、α−FeOOH比率及びα−FeOOH比率が10%以上である膜の厚さを評価した。ここでは、5wt%−AlPO水溶液を用いてAl−P−O−H系膜を形成した。また、形成されたAl−P−O−H系皮膜は、X線回折の結果、アモルファス構造であった。
Al−P−O系膜の厚さは、鋼材を樹脂に埋め込んだ後、鏡面になるまで研磨し、その断面を光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いて観察することで評価した。
Figure 0005201806
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α−FeOOH比率は、試料を樹脂に埋め込み、顕微FT−IR(フーリエ変換赤外分光法)を用い、得られた分光スペクトルから、α−FeOOHに対応する920cm−1付近の吸収ピーク強度をA、β−FeOOHに対応する840cm−1付近の吸収ピーク強度をB、γ−FeOOHに対応する740cm−1付近の吸収ピーク強度をCとした場合での「{A/(A+B+C)}×100%」として求めた。また、α-FeOOH比率が10%以上である層の厚さも同じ方法を用いて求めた。本顕微FT−IR分析では、これらα−FeOOH,β−FeOOHおよびγ−FeOOH以外に、Feの水酸化物や酸化物は検出されなかった。
耐食性評価試験は、供試材を恒温恒温槽(26℃,95%RH)内に500時間放置して行った。評価は、500時間放置後の供試材を樹脂に埋め込み、光学顕微鏡と画像処理等により横断面積を測定した。試験前の横断面積をD、試験後の横断面積をEとした場合、「{(D−E)/D}×100%」を断面減少率と定義し、基準とする鋼材の断面積減少率をXとし、断面積減少率がXの60%未満を「最良」(耐食性が非常に優れる水準)、60%以上90%未満を「良」(耐食性が優れる水準)、90%以上を「不良」(耐食性が劣る水準)とした。
耐腐食疲労性試験は、雰囲気温度35℃、塩水濃度5wt%NaC1、噴霧量180mL/min(分)/mmの塩水噴霧下に0.5時間放置した供試材を、大気中においてせん断応カτ=735±441MPaの条件で3000回加振し(0.5時間)、次いで恒温恒湿槽(26℃,95℃RH)に23時間放置する工程を、供試材が破断するまで繰り返した。評価は、基準とする鋼材の耐久回数Yとし、耐久回数がYの120%以上を「最良」(耐腐食疲労性が非常に優れる水準)、110%以上120%未満を「良」(耐腐食疲労性が優れる水準)、110%未満を「不良」(耐腐食疲労性が劣る水準)とした。
比較例1の鋼材は、化学成分が0.4C−1.4Si−0.8Mn−0.7Cr−Fe(鋼種1、Cu,Ni,Cr,Moの合計が0.7wt%)のばね用鋼材で、無処理のものであり、以下実施例1〜15,18〜37及び比較例2〜10,13〜20の耐食性および耐腐食疲労性評価の基準とした。なお、無処理材、処理材とも母材の力学特性は同等である。
実施例1〜5及び比較例2,3の鋼材は、水溶液の温度を50℃とし、接触時間を10〜360秒の範囲で変化させ(接触後の加熱無)、Al−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度35℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/min/mm、噴霧時間30minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の舞囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し作製したものである。接触時間が120〜360秒の範囲である実施例1〜3では、Al−P−O−H系膜の厚さが3〜5μm、最表面から深さ方法に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは60〜100μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「最良」(非常に優れる水準)である。また、接触時間が夫々60秒,30秒である実施例4,実施例5では、Al−P−O−H系膜の厚さが1〜2μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは20〜30μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「良」(優れる水準)である。しかし、接触時間が夫々20秒,10秒である比較例2,比較例3では、Al−P−O−H系膜の厚さが1μm未満、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「不良」(劣る水準)である。
実施例6〜9及び比較例4,5の鋼材は、水溶液の温度を40℃とし、接触時間を10〜180秒の範囲で変化させ(接触後の加熱無)、Al−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度35℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/min/mm、噴霧時間30minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し作製したものである。接触時間が夫々180秒、120秒である実施例6、実施例7では、Al−P−O−H系膜の厚さが3〜5μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは50〜70μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「最良」(非常に極れる水準)である。また、接触時間が夫々60秒,30秒である実施例8,実施例9では、Al−O−P−H系膜の厚さが1〜2μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは20〜30μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「良」(優れる水準)である。しかし、接触時間が夫々20秒,10秒である比較例4,比較例5では、Al−P−O−H系膜の厚さが1μm未満、最表面から深さ方法に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「不良」(劣る水準)である。
実施例10,11及び比較例6の鋼材は、水溶液の温度を30℃とし、接触時間を120〜360秒の範囲で変化させ(接触後の加熱無)、Al−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度35℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/min/mm、噴霧時間30minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し作製したものである。接触時間が夫々360秒,180秒である実施例10,実施例11では、Al−P−O−H系膜の厚さが1〜2μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは20μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「良」(優れる水準)である。しかし、接触時間が120秒である比較例6では、Al−P−O−H系膜の厚さが1μm未満、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「不良」(劣る水準)である。
比較例7〜9の鋼材は、水溶液の温度を室温とし、接触時間を5〜900秒の範囲で変化させ(接触後の加熱無)、Al−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度35℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/min/mm、噴霧時間30minの条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し作製したものである。接触時間が5〜900秒である比較例7〜9の全てにおいて、Al−P−O−H系膜の厚さが1μm未満、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「不良」(劣る水準)である。
比較例10及び実施例12,13の鋼材は、水溶液の温度を室温、接触時間を5秒とし、接触後の加熱温度を200〜400℃の範囲で変化させ、Al−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度35℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/mim/mm、噴霧時間30minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し作製したものである。接触後の加熱温度が400℃である比較例10では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性は「良」(優れる水準)であるが、耐腐食疲労性は「不良」(劣る水準)である。接触後の加熱温度が夫々300℃,200℃である実施例12,実施例13では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは50〜80μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「良」(優れる水準)である。
実施例14,15の鋼材は、水溶液の温度を室温とし、接触時間を夫々3秒,1秒の範囲で変化させ(接触後の加熱温度200℃)、Al−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度85℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/min/min、噴霧時間30minの各条件で行い、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し作製したものである。接触時間が夫々3秒,1秒である実施例14,実施例15では、Al−P−O−H系膜の厚さが2〜3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは10〜30μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「良」(優れる水準)である。
比較例11の鋼材は、化学成分が0.4C−1.8Si−0.2Mn−1.0Cr−0.5Ni−0.08Ti−0.18V−Fe(鋼種2、Cu,Ni,Cr,Moの合計が1.7wt%)のばね用鋼材で、無処理のものであり、実施例16の耐食性および耐腐食疲労性評価の基準とした。
実施例16の鋼材は、鋼種2に水溶液の温度を50℃、接触時間30秒(接触後の加熱無)でAl−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度35℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/min/mm、噴霧時間3minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し作製したものである。鋼種2の実施例16では、Al−P−O−H系膜の厚さが1μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは50μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「最良」(非常に優れる水準)である。
比較例12の鋼材は、化学成分が.0.4C−2.5Si−0.7Mn−0.8Cr−1.8Ni−0.2V−0.4Mo−Fe(鋼種3、Cu,Ni,Cr,Moの合計が3.0wt%)のばね用鋼材で、無処理のものであり、実施例17の耐食性および耐腐食疲労性評価の基準とした。
実施例17の鋼材は、鋼種3に水溶液の温度を50℃、接触時間30秒(接触後の加熱無)でAl−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度35℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/min/mm、噴霧時間30minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し作製したものである。鋼種3の実施例17では、Al−P−O−H系膜の厚さが1μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは60μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「最良」(非常に優れる水準)である。
実施例18〜20及び比較例13の鋼材は、水溶液の温度を50℃、接触時間を180秒(接触後の加熱無)としてAl−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を25〜45℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/min/mm、噴霧時間30minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し作製したものである。塩水噴霧の温度が45℃である実施例18では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは120μmであり、耐食性が「最良」(非常に優れる水準)で、耐腐食疲労性は「良」(優れる水準〉である。
塩水噴霧の温度が40℃である実施例19では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは90μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「最良」(非常に優れる水準)である。また、塩水噴霧の温度が30℃である実施例20では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは40μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「良」(優れる水準)である。しかし、塩水噴霧の温度が25℃である比較例13では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方法に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「不良」(劣る水準)である。
実施例21,22及び比較例14の鋼材は、水溶液の温度を50℃、接触時間を180秒(接触後の加熱無)としてAl−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度85℃、塩水濃度を1〜7wt%、噴霧量200mL/min/mm、噴霧時間30minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し作製したものである。塩水噴霧の塩水濃度が7wt%である実施例21では、A1−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは90μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「最良」(非常に優れる水準)である。また、塩水噴霧の塩水濃度が3wt%である実施例22では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは30μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「良」(優れる水準)である。しかし、塩水噴霧の塩水濃度が1wt%である比較例14では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「不良」(劣る水準)である。
実施例23〜25及び比較例15の鋼材は、水溶液の温度を50℃、接触時間を180秒(接触後の加熱無)としてAl−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度35℃、塩水濃度5wt%、噴霧量を30〜250mL/min/mm、噴霧時間を30minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し作製したものである。塩水噴霧の噴霧量が100〜250mL/min/mmである実施例23および実施例24では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは70〜100μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「最良」(非常に優れる水準)である。また、塩水噴霧の噴霧量が50mL/min/mmである実施例25では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは30μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「良」(優れる水準)である。しかし、塩水噴霧の噴霧量が30mL/min/mmである比較例15では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方法に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「不良」(劣る水準)である。
実施例26,27及び比較例16の鋼材は、水溶液の温度を50℃、接触時間を180秒(接触後の加熱無)としてAl−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度35℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/min/mm、噴霧時間を1〜60minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間放置するサイクルを10回繰返し作製したものである。塩水噴霧の噴霧時間が60minである実施例26では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは90μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「最良」(非常に優れる水準)である。また、塩水噴霧の噴霧時間が5minである実施例27では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは30μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「良」(優れる水準)である。しかし、塩水噴霧の噴霧時間が1minである比較例16では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「不良」(劣る水準)である。
実施例28〜30及び比較例17の鋼材は、水溶液の温度を50℃、接触時間を180秒(接触後の加熱無)としてAl−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度35℃,塩水濃度5wt%,噴霧量200mL/min/mm、噴霧時間30minの各条件で行った後、温度を20℃〜40℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し製作したものである。塩水噴霧後の保持温度が40℃である実施例28では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは110μmであり、耐食性が「最良」(非常に優れる水準)で、耐腐食疲労性は「良」(優れる水準)である。塩水噴霧後の保持温度が35℃である実施例29では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは90μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「最良」(非常に優れる水準)である。
また、塩水噴霧後の保持温度が25℃である実施例30では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは50μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「良」(優れる水準)である。しかし、塩水噴霧後の保持温度が20℃である比較例17では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「不良」(劣る水準)である。
実施例31,32及び比較例18の鋼材は、水溶液の温度を50℃、接触時間を180秒(接触後の加熱無)としてAl−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度35℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/min/mmが、噴霧時間30minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度を10%〜60%の舞囲気に24時間保持するサイクルを10回繰返し作製したものである。塩水噴霧後の相対湿度が夫々60%,30%である実施例31,実施例32では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは20〜40μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「良」(優れる水準)である。しかし、塩水噴霧後の相対湿度が10%である比較例18では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「不良」(劣る水準)である。
実施例33,34及び比較例19の鋼材は、水溶液の温度を50℃、接触時間を180秒(接触後の加熱無)としてAl−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温虞35℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/min/mm、噴霧時間30minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に5〜48時間保持するサイクルレを10回繰返し作製したものである。保持時間が48hである実施例33では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは130μmであり、耐食性が「最良」(非常に優れる水準)で、耐腐食疲労性は「良」(優れる水準)である。また、保持時間が10hである実施例34では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方法に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは40μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「良」(優れる水準)である。しかし、保持時間が5hである比較例19では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「不良」(劣る水準)である。
実施例35〜37及び比較例20の鋼材は、水溶液の温度を50℃、接触時間を180秒(接触後の加熱無)としてAl−P−O−H系膜を形成した鋼材に対し、塩水噴霧を温度35℃、塩水濃度5wt%、噴霧量200mL/min/mm、噴霧時閲30minの各条件で行った後、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間保持するサイクルを0〜15回の範囲で変化させて作製したものである。サイクル数が15回である実施例35では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα−FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは150μmであり、耐食性が「最良」(非常に優れる水準)で、耐腐食疲労性は「良」(優れる水準)である。また、サイクル数が夫々5回,1回である実施例36,実施例37では、Al−P−O−H系膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの傾城にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在し、その層の厚さは20〜50μmであり、耐食性と耐腐食疲労性はともに「良」(優れる水準)である。
しかし、サイクル数が0回である比較例20では、Al−P−O−H糸膜の厚さが3μm、最表面から深さ方向に100μmまでの領域にα-FeOOH比率が10%以上の層が存在せず、耐食性と耐腐食疲労性はいずれも「不良」(劣る水準)である。
なお、この発明は、上記実施例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的には、上記実施例ではばね鋼について述べたが、これらの実施内容はボルトや各種鉄系構造物等にも使用できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施例に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。

Claims (2)

  1. 鋼材の表面が主にFeOOHからなる皮膜で覆われており、最表面から深さ方向に100μmまでの領域において、赤外分光法でα-FeOOHに対応する920cm−1付近の吸収ピーク強度をA、β-FeOOHに対応する840cm−1付近の吸収ピーク強度をB、γ−FeOOHに対応する740cm−1付近の吸収ピーク強度をCとした場合、「{A/(A+B+C)}×100%」で定義するα-FeOOH比率が10%以上である層を有し、前記鋼材はCu,Ni,Cr,Moの1種以上を合計で1.7〜3.0wt%を含有することを特徴とする耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材。
  2. 前記α-FeOOH比率が10%以上である層の厚さが、20〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の耐食性と耐腐食疲労性に優れた皮膜付き鋼材。
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