JP3393058B2 - 耐食性に優れた鋼材錆の形成方法 - Google Patents

耐食性に優れた鋼材錆の形成方法

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JP3393058B2
JP3393058B2 JP04786998A JP4786998A JP3393058B2 JP 3393058 B2 JP3393058 B2 JP 3393058B2 JP 04786998 A JP04786998 A JP 04786998A JP 4786998 A JP4786998 A JP 4786998A JP 3393058 B2 JP3393058 B2 JP 3393058B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に橋梁など維持管理
の遂行が困難な構造物で、塗装されて乃至無塗装で使用
される構造材に適した耐食性に優れた鋼材の錆の形成方
法に関するものである。
【0002】
【従来技術】例えば山間部や海岸地帯など、塩水や融雪
塩が飛来するなどの塩分腐食環境下にある道路橋等の橋
梁構造物に使用する鋼材は、耐食性向上のため、従来か
ら塗装されて用いられている。しかし、この塗装塗膜は
必ず経時劣化するため、耐食性維持のために、一定周期
で塗装しなおす維持管理の必要性がある。
【0003】一方、近年では、これらの橋梁には、従来
の多数桁橋梁に代わり、2主桁橋梁に代表されるような
主桁の数が少ない少数主桁橋梁が多く用いられるように
なっている。この少数主桁橋梁は、多数桁橋梁に比し
て、使用鋼材量(鋼重)や橋材片数が削減可能で、施工
性も良く、環境保護や工期の短縮の点で利点を有する。
そして、このような少数主桁橋梁には、橋梁設置後の維
持管理の負荷やコストの最小化と、橋梁自体の高寿命化
が強く求められている。
【0004】したがって、このような少数主桁橋などを
含め、鉄塔や建築物などの構造材に用いられる鋼材に
は、前記塩分腐食環境下において、無塗装で使用(裸使
用)されても、また、塗装されて使用され、使用中に塗
装皮膜が劣化乃至破壊されても、いずれにしても橋梁設
置後の維持管理が不要であるような高い耐食性を維持す
る鋼材が強く求められている。
【0005】従来、この種鋼材の耐食性の向上のため
に、母材である鋼材側からの改善技術が種々提案されて
いる。例えば、この代表例として、P :0.15% 以下やC
u:0.2〜0.6 % 、Cr:0.3 〜1.25% 、Ni:0.65% 以下を
含む耐候性鋼がある。この耐候性鋼は、JIS G 3114 (溶
接構造用耐候性熱間圧延鋼材) あるいはJIS G 3125 (高
耐候性圧延鋼材) の2 種が規格化されている。この耐候
性鋼は、前記微量元素の作用によって、鋼材の使用中
に、鋼表面に生成する錆が、裸耐候性に代表される高い
耐食性を有する緻密な安定錆層 (耐候性錆) となる自己
防食機能を有している。そして、このような性質によ
り、耐候性鋼は、前記橋梁など、これまで様々な構造物
のメンテナンスフリーの構造材として、基本的に無塗装
で使用されてきた。
【0006】しかし、前記塩分腐食環境下では、塩分の
影響により、耐候性鋼の特徴である前記安定錆層が形成
されにくくなる。そして、この安定錆層が形成されなく
なると、前記耐候性鋼の耐食性は著しく低下してしま
う。これは、前記塩分の多い腐食環境下では、鋼の腐食
に伴って、錆皮膜中のpHが特に低下することに起因して
いる。即ち、通常、鋼の腐食がわずかでも始まると、ま
ず、Fe→Fe2++2e- と、これに続くFe2++2H2O→Fe(OH)
2 +2H+ なる反応により、鋼表面のpHは低下し、錆皮膜
中乃至錆皮膜と鋼との界面のpHも低下する。そして、こ
れらのpHが一旦低下すると、電気的中性を保つために錆
皮膜中の塩素イオンの輸率が増大し、塩素イオンの濃縮
が錆皮膜と鋼との界面で生じる。この結果、この界面部
分に塩酸雰囲気が形成され、鋼の腐食を促進するもので
ある。また、これと同時に、錆皮膜中のpHの低下によっ
て、鉄イオンの溶解度が大きくなり、耐候性鋼など耐食
低合金鋼の防食機構の要である前記安定錆層の形成を阻
害する現象も生じ、腐食加速状況が形成される。
【0007】このため、前記錆皮膜中のpHの低下を防止
するため、耐候性鋼の表面をアルカリ化し、前記腐食加
速状況の形成を阻止する技術が提案されている。より具
体的には、耐候性鋼の表面をアルカリ化するBe、Mg、C
a、Sr、Ba等の酸化物 (化学種) を、予め鋼中に分散し
ておき、前記鋼の腐食反応と同時に、これら化学種を作
用させ、鋼表面のpHの低下を抑制する方法が、例えば、
特開昭58−25458 号や特許第2572447 号公報などで提案
されている。
【0008】これら酸化物を添加して、腐食加速状況の
形成を阻止する技術は、確かに、外界からの塩分等の影
響を抑制する点では効果がある。しかしながら、やはり
前記安定錆層自体を形成するのは、前記耐候性鋼と同様
に困難乃至限界があり、十分な耐食性が得られていない
のが実情である。また、鋼中に添加する酸化物自体が、
溶接性や強度などの特性に悪影響を及ぼす懸念もある。
【0009】このため、鋼材の耐食性向上の課題に対
し、前記鋼材の成分組成の側からの改善ではなく、鋼材
の表面処理により、この安定錆層自体を形成する技術が
種々提案されている。例えば、特開平06−93467 号公報
には、鋼表面を0.3 wt% 以上のCr、Cu、P 、Niの一種ま
たは二種以上を含有するα−FeOOH からなる錆で被覆す
ること、およびこの錆を形成するためにCr、Cu、P 、Ni
イオンを含む水溶液を鋼材表面に塗布する技術が開示さ
れている。
【0010】また、特開平09−125224号公報には、鋼を
熱処理することにより、鋼表面を30nm〜200 μm のヘマ
タイト( αFe2O3)からなる錆で被覆する技術が開示され
ている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】これら、鋼材の表面処
理や熱処理により安定錆層自体を形成する従来技術は、
安定錆層の成分や組成自体に着目した点で注目すべき技
術である。即ち、前記耐候性鋼や酸化物分散鋼などで
は、添加元素を多く含み、鋼材施工時の溶接性や、溶
製、圧延などの鋼材製造時の効率が、通常の鋼に比し
て、必然的に低下する。また、製造効率の低下や添加元
素を多く含むことによる鋼材製造コストも高くつくとと
もに、溶接性が低下する分、鋼材施工コストも高くつ
く。したがって、これらの耐候性鋼を用いることなく、
通常の炭素鋼や低合金鋼を用いて、安定錆層の成分や組
成によって、鋼材の高い耐食性が実現可能であるなら
ば、前記製造効率やコスト、あるいは施工効率やコスト
の面で多くの利点がある。
【0012】しかしながら、前記特開平06−93467 号公
報のような0.3 wt% 以上のCr、Cu、P 、Niの一種または
二種以上を含有するα−FeOOH からなる錆や、前記特開
平09−125224号公報のようなヘマタイト (αFe2O3)から
なる錆は、前記塩分腐食環境下において、無塗装で使用
(裸使用)された場合、あるいは塗装して使用された際
に塗装皮膜が劣化乃至破壊された場合に、必ずしも高耐
食性が発揮されないことを、本発明者は知見した。そし
て、この一因として、前記各皮膜 (錆び) の生成方法が
容易ではなく、生成のための化学処理や熱処理を行った
としても、再現性良く、高い耐食性が発揮されないこと
も知見した。
【0013】したがって本発明は、これら従来の、鋼材
の表面処理や熱処理により安定錆層自体を形成する技術
の問題に鑑み、通常の炭素鋼や低合金鋼であっても、塗
装されて乃至無塗装で使用される構造材に適した、再現
性良く耐食性に優れた鋼材の錆の形成方法を提供するこ
とを目的とする。
【0014】
【問題を解決するための手段】このための本発明の要旨
は、鋼材表面乃至鋼材表面の錆層に対し、Ti、Nb、Ta、
Zr、V 、Hfのイオンおよび/ またはこれらの元素の酸イ
オンの一種または二種以上を含有する溶液を接触させ、
その後の鋼材表面乃至鋼材表面の錆層に、Ti、Nb、Ta、
Zr、V 、Hfの一種または二種以上を合計で0.05wt% 以上
含有する錆を生成させることである。
【0015】このような要旨とすることにより、構造物
としての使用中に鋼材表面に生成する錆を、緻密な安定
錆層にすることができ、塩分腐食環境下でも、再現性良
く高い耐食性を有することが可能となる。
【0016】本発明者らは、鋼材表面に生成する錆の成
分・組成と、塩分腐食環境下での耐食性との関係につい
て検討した。その結果、鋼材表面乃至鋼材錆層に、Ti、
Nb、Ta、Zr、V 、Hfの一種または二種以上を含有乃至存
在させることにより、塩分腐食環境下での高耐食性を再
現性良く発揮できることを知見した。
【0017】即ち、鋼材表面乃至鋼材錆層に、Ti、Nb、
Ta、Zr、V 、Hfの一種または二種以上を含有乃至存在さ
せれば、その後、この鋼材表面乃至鋼材錆層に大気環境
下で生成する錆が、これら元素を含むことによって、塩
分腐食環境下であっても、微細で緻密なα−FeOOH 錆や
非晶質の錆として生成するとともに、この過程で、β−
FeOOH の発生が極力抑制されることを知見した。
【0018】これらTiなどの、錆生成に対する作用は、
錆の組成 (組織) に関し、未だ解明の余地はある。しか
し、前記Tiなどを含む耐食性に優れた錆の組成を、X線
回折法により求めた結果では、鋼材表面乃至鋼材錆層
に微細で緻密なα−FeOOH 錆や非晶質の錆が生成すると
ともに、β−FeOOH の発生が極力抑制されていること、
および、この錆の中でも、α−FeOOH 成分および非晶
質成分の分率が、好ましくは35wt%以上で、β−FeOOH
成分の分率が好ましくは20wt%以下である錆が、塩分腐
食環境下での高耐食性を、特に再現性良く発揮できるこ
とを知見したものである。
【0019】確かに、前記特開平06−93467 号公報に開
示されているように、鋼材表面に生成する錆層の成分と
しては、緻密なα−FeOOH であることが好ましい。しか
し、高耐食性をより再現性良く発揮するためには、この
緻密な錆中に、β−FeOOH を存在させないこと、言い換
えるとβ−FeOOH の生成を極力抑制することが必要であ
ると考えられる。
【0020】したがって、前記特開平06−93467 号公報
でも、α−FeOOH 錆に着目しているものの、前記塩分腐
食環境下において鋼材が使用された場合、あるいは塗装
して使用された際に塗装皮膜が劣化乃至破壊された場合
に、必ずしも高耐食性が発揮されない理由は、同公報で
は着目していない、この錆中のβ−FeOOH の発生に起因
するものと考えられる。
【0021】即ち、錆中の非晶質やα−FeOOH の成分割
合がいくら高くても、特に腐食を促進しやすいβ−FeOO
H が存在すると、このβ−FeOOH が起点となって腐食が
進行する。そして、この現象は、特に塩分腐食環境下に
おいて顕著となる。したがって、このβ−FeOOH を如何
に抑制するかが、安定錆層が高耐食性を発揮するか否か
の要となる。
【0022】この点、Ti、Nb、Ta、Zr、V 、Hfの一種ま
たは二種以上、この中でも特にTiは、0.05wt% 以上、好
ましくは0.1wt%以上錆中に含有されて、鋼材の使用中に
生成する錆の非晶質やα−FeOOH の割合を高くして、微
細で緻密な錆を形成するとともに、β−FeOOH を抑制し
た安定錆層を形成する。そして、この結果、特に塩分腐
食環境下において高い耐食性を発揮する。
【0023】
【発明の実施の形態】まず、本発明における錆中に含有
させるTi、Nb、Ta、Zr、V 、Hfの意義について詳述す
る。Ti、Nb、Ta、Zr、V 、Hfの一種または二種以上を、
0.1wt%以上錆中に含有することにより、鋼材の使用中に
生成する錆の非晶質やα−FeOOH の割合を高くして、微
細で緻密な錆を形成するとともに、β−FeOOH を抑制し
た安定錆層を形成することができ、この結果、特に塩分
腐食環境下において高い耐食性を発揮する。鋼材の使用
中に生成する錆が緻密であるほど、塩化物イオンなどの
腐食因子の侵入を阻止する効果が高くなる。
【0024】前記Ti、Nb、Ta、Zr、V 、Hfの微細で緻密
な錆の形成効果やβ−FeOOH の抑制効果のメカニズム
は、未だ明らかではない。ただ、錆中に微細な炭化物
や窒化物の析出物を形成するか、および/ または錆の
発生時の鋼が溶解する際に微小なコロイド乃至水酸化物
を形成して、これらが生成する錆の非晶質化やα−FeOO
H 化の核となるものと考えられる。また、一方、前記
となどの核の存在自体が、逆にβ−FeOOH などの粗く
て脆く、剥離しやすい結晶質の錆の発生を阻害して抑制
するものと考えられる。
【0025】これらのTi、Nb、Ta、Zr、V 、Hfの効果
は、これらの元素の一種または二種以上を、合計 (総
量) で0.05wt% 以上、好ましくは0.1wt%以上錆中に含有
することにより発揮され、0.05wt% 未満の含有量では、
この効果は発揮されない。但し、50wt% を越えて含有し
ても、効果は同じであり、かつ錆と鋼材表面との密着性
を低下させるなど、却って耐食性を低下させる可能性が
生じる。したがって、上限量は、合計 (総量) で50wt%
程度とするのが好ましい。そして、これらの元素の中で
も、後述する通り、Tiの耐食性向上効果が最も高い。し
たがって、単独乃至複合でこれら元素を錆に含有させる
場合には、Tiを必須とすることが好ましい。また、Tiを
含ませず、Nb、Ta、Zr、V 、Hfの一種または二種以上を
錆に含有させる際には、Tiを基準として設定した場合の
含有量よりも多く含有させることが、耐食性の効果を確
実に発揮する上で好ましい。
【0026】また、本発明の錆のTi、Nb、Ta、Zr、V 、
Hf以外の含有元素について、これら元素の効果乃至本発
明の意図する錆の生成を阻害しない範囲での、他の元素
の不純物としての含有は許容される。この内、その他の
元素として、前記特開平06−93467 号公報に開示され
た、Cr、Cu、P 、Niの一種または二種以上を含有しても
良い。前記した通り、これらの元素だけでは、錆の耐食
性を確実に向上させることはできないものの、本発明の
Ti、Nb、Ta、Zr、V 、Hfの元素と組み合わせて、錆中
に、0.3 wt% 以上含有させて用いることにより、錆の非
晶質化やα−FeOOH化に寄与する複合効果を有すること
が期待できる。
【0027】次に、本発明における錆の成分・組成につ
いて以下に説明する。本発明では、錆の主成分がα−Fe
OOH 乃至非晶質の錆からなるものにすることが好まし
い。通常、鋼材表面に生成する鉄錆の主要な成分は、α
−FeOOH 、β−FeOOH 、γ−FeOOH およびFe3O4 の結晶
性の錆と、非晶質の錆との5 種類からなる。この内、非
晶質の錆は、結晶性の錆よりも極めて微細で緻密な安定
錆層を形成する。しかも、例え、鋼材の使用中に結晶性
の錆により錆皮膜としての「欠陥部分」が形成されたと
しても、非晶質の錆部分がこの穴埋めを行い、「欠陥部
分」を減少させる「欠陥補修機能」も有する。この結
果、鋼材の長期の裸耐候性を保障する。したがって、鉄
錆中の非晶質の錆の割合 (非晶質度) が高いほど、ま
た、結晶性の錆成分の内でも微細で緻密なα−FeOOH の
割合が高いほど高い耐食性を有する。また、これら緻密
な錆は、更に鋼材が塗装して使用される場合に、塗装皮
膜との密着性を良好となり、鋼材の長期の耐食性を保障
する。このため、本発明では、好ましい条件として、鋼
材表面に生成する錆の、X線回折法により求めた非晶質
成分の分率を35wt%以上と規定する。
【0028】一方、これ以外の錆、特にβ−FeOOH など
の結晶性の錆は、錆中の前記非晶質やα−FeOOH の割合
が高くても、この錆が起点となって腐食を進行させるた
め、極力抑制する必要がある。このため、本発明では、
好ましい条件として、鋼材表面に生成する錆の、X線回
折法により求めたβ−FeOOH 成分の分率を20wt%以下に
規制する。錆の非晶質成分およびα−FeOOH の分率が35
wt%未満、およびβ−FeOOH 成分の分率が20wt%を越え
る場合には、前記β−FeOOH 、γ−FeOOH およびFe3O4
の結晶性の錆成分が多くなり、鋼材表面の錆が緻密な安
定錆層を形成していないので、鋼材の高耐食性を保証出
来なくなる可能性がある。
【0029】なお、本発明で、鋼材表面に生成した錆
の、高い耐食性とは、塩分腐食環境下での鋼材の耐食性
である。したがって、この高い耐食性を保証するために
は、鋼材の大気暴露、それも塩分腐食環境下を模擬した
塩水散布 (週 1回の5%塩水散布) を含む大気暴露後の鋼
材の耐食性で評価する必要がある。
【0030】また、前記、錆の非晶質度を測定する手段
としては、「腐食防食 95 C −306(341 〜344 頁) 」の
「粉末X 線回折法による鉄錆成分の定量化およびその応
用」に開示された粉末X 線回折法が有効である。この文
献では耐候性鋼材を対象に粉末X 線回折法により、鋼材
表面の前記鉄錆成分の定量化を試み、鉄錆中の非晶質の
錆の割合 (非晶質度) が高いほど、緻密な安定錆層とな
る耐食性改善モデルを裏付けている。そして、より具体
的な粉末X 線回折法として、同文献では、内部標準とし
て一定重量比のCaF2あるいはZnO などを鋼材から採取し
た錆試料に混合し粉末化したものを通常のX 線回折法に
より同定し、前記5 種類の錆の各々の固有の回折ピーク
の積分強度比と、予め求めた各々の錆成分の検量線か
ら、各々の結晶性の錆成分の定量化を行い、錆の合計量
からこれら各々の結晶性の錆成分量を差し引いて非晶質
成分の割合を算出している。これは、非晶質成分自体の
回折ピークの積分強度比が求めにくく、定量化しにくい
ためである。
【0031】因みに、同文献にも開示されている通り、
X 線回折法以外の、赤外分光分析法などの他の分析法で
は、錆成分の定性的な分析は可能であるものの定量的な
分析は困難であり、錆成分の確率された定量分析法が無
い。したがって、本発明で言う鋼材表面の錆の非晶質度
とは、このX 線回折法、特に前記文献に開示された粉末
X 線回折法により定量的に測定したものを言う。
【0032】次に、これら緻密な安定錆層を形成する本
発明方法について説明する。まず、構造材としての使用
前あるいは使用中の鋼材表面に、洗浄、清浄化や表面研
磨などの適当な処理を行う。これらの処理は、鋼材表面
を鏡面化する等のものから、鋼材表面の錆の除去、ある
いは、鋼材表面や鋼材錆層の単なる清浄化のものまで、
鋼材に要求される表面状況により、適宜選択的に行えば
良い。また、鋼材錆層を除去せずに、既存の錆に対し、
本発明形成方法を行っても良く、その場合は、鋼材錆層
の単なる清浄化だけでも良く、また、清浄化処理をしな
くても良い。
【0033】次いで、本発明においては、鋼材表面乃至
鋼材表面の錆層に対し、Ti、Nb、Ta、Zr、V 、Hfのイオ
ンおよび/ またはこれらの元素の酸イオンの一種または
二種以上を含有する水溶液や有機溶媒などの溶液を接触
させる。この際、他の元素に比した前記Tiの緻密な錆の
形成効果の優位性から、溶液がTiイオンまたはTi酸イオ
ンを必須に含有することが好ましい。そして、これらの
イオンまたはこれらの元素の酸イオンを含有させる場合
には、溶液の安定性や付き回り性の点から、これらの元
素の硫酸塩、塩化物を用いることが好ましい。
【0034】溶液を、鋼材表面乃至鋼材表面の錆層に接
触させる方法は、溶液を鋼材に対して塗布する方法が最
も簡便である。ただ、事情や都合に応じて、鋼材を溶液
中に浸漬するなどの通常の溶液処理の方法が適宜選択さ
れる。
【0035】更に、Cr、Cu、P 、Niの一種または二種以
上を錆中に0.3 wt% 以上含有させる場合には、前記Ti、
Nb、Ta、Zr、V 、Hfを含有する溶液に、更にCr、Ni、C
u、Pのイオンまたは酸イオンの一種または二種以上を含
有させる。これらCr、Cu、P、Niの導入は、Ti、Nb、T
a、Zr、V 、Hfを含有する溶液とは別の溶液、若しくは
別工程にて行うことも考えられるが、同一処理液の方が
簡便に行える。そして、これらの中でも、特に緻密錆形
成効果の高いCrを導入することが好ましい。そして、こ
れらのイオンまたはこれらの元素の酸イオンを含有させ
る場合には、溶液の安定性や付き回り性の点から、これ
らの元素の硫酸塩、塩化物を用いることが好ましい。
【0036】このようなTi、Nb、Ta、Zr、V 、Hfを鋼材
表面に存在させた鋼材は、特に積極的に処理せずとも、
また、塩水や融雪塩が飛来するなどの塩分腐食環境下で
あっても、橋梁などの構造材として使用中に、緻密な安
定錆層が比較的短時間で生成する点が大きな利点であ
る。しかし、確実な裸耐候性などの耐食性を保障する品
質保証の観点から、鋼材を製造後、必要により酸洗等の
前処理を施した後、酸化ポテンシャルを制御したガスな
どの雰囲気中で熱処理する、あるいは、燐酸塩やクロメ
ートや酸化剤などの薬剤により化学的に表面処理し、鋼
材の製造過程中で生成している錆を非晶質化するなどの
処理を行って、積極的に緻密な安定錆層を形成しても良
い。
【0037】また、本発明は、新規な構造物用の鋼材だ
けではなく、既存の構造物として使用中の塗装乃至非塗
装鋼材の耐食性を向上させるためにも使用できる。即
ち、既存の構造物として使用中の鋼材の表面の塗膜乃至
錆を、全部乃至部分的に( 例えば腐食部分のみ) 剥離乃
至剥離せずに清浄化し、本発明の溶液を、鋼材表面乃至
鋼材の錆層に塗布しても、その後の時間的な経過によっ
て緻密な錆を生成させることが可能である。したがっ
て、本発明は、既存の構造物の補修乃至保守管理として
も使用可能である。
【0038】本発明の化学的な処理方法以外の処理方法
について、スパッタリングや蒸着などにより、これら元
素を鋼材表面に濃縮乃至存在させる気相コーティング方
法、あるいはこれらの元素を含むとともに、これら元素
を表面に濃縮した鋼材を用いる方法により、本発明の緻
密な安定錆層を形成する素地となる、Ti、Nb、Ta、Zr、
V 、Hfを存在させた鋼材表面を形成する等の方法があ
る。
【0039】しかし、鋼材に含有させた元素を拡散等に
より、錆中に移行させる方法では、鋼材のこれら元素量
や表面濃縮量を高くすることが難しく、また高くしたた
めに、溶接性や機械的性質などの他の特性を阻害する恐
れが生じる。更には、元素量や表面濃縮量を高くしたと
しても、所定量 (下限量以上) の元素を錆中に含有させ
ることが難しい。そして、また、通常の炭素鋼や低合金
鋼が使用できるという利点も失われる可能性がある。
【0040】また、気相コーティング方法は、設備や処
理コスト自体が高価となり、しかも大量で大型の厚鋼板
を処理する事自体が効率的ではなく、実現性に乏しい。
【0041】更に、本発明で使用する鋼自体について
は、錆を生じないステンレス鋼などの高合金鋼は含ま
ず、基本的に、通常の低炭素鋼や低合金鋼などが使用可
能である。この内、より厳しい耐食性の仕様や使用環境
下では、前記従来のP 、Cu、Cr、Ni、Tiなどを含む耐候
性鋼を用いても良い。
【0042】また、本発明の鋼材は、前記少数主桁橋梁
などの構造材用であるため、施工性や工期の短縮の点か
ら、炭酸ガスアーク溶接やエレクトロガスアーク溶接に
より、入熱量5KJ/mm以上、場合によっては入熱量100 乃
至300KJ/mm以上の大入熱溶接が施される。したがって、
この構造材に使用される鋼材としては、構造材としての
強度等の機械的な性質は勿論、予熱の必要が無く、これ
ら大入熱溶接等の高効率溶接が可能な、優れた溶接性を
耐食性とともに併せ持つ鋼材が好ましい。
【0043】なお、より厳しい耐食性の仕様や塩分腐食
使用環境下では、前記鋼の成分組成の内、安定な錆の生
成を阻害する元素に注意する必要がある。即ち、安定な
錆の生成を阻害する元素はS とCrが挙げられる。
【0044】この内、S が0.02% を越えて含有量される
と、Tiなどの錆中への含有による前記安定錆層の形成を
阻害して、耐食性劣化を招く可能性がある。したがっ
て、S含有量は0.02% 以下とすることが好ましい。
【0045】Crは、従来の耐候性鋼材では、P やCu、Ni
とともに、前記安定錆層を形成させるために必須の添加
元素と認識され、前記した通り、JIS 規格などでも0.30
〜1.25% 含有されている。また、前記特開昭58−25458
号や特許第2572447 号公報などでも、Crの添加は明示さ
れていないものの、鉄原料や製鋼過程などからの不純物
として、必然的に0.05% 以上含有されている。
【0046】しかし、Crを0.05% 以上含有する場合、鋼
のミクロな表面欠陥部において腐食がわずかでも始まる
と、化学平衡的に鉄原子に伴い微量溶解するCrイオン
が、Clイオンの作用も加わり、前記鋼のミクロな表面欠
陥部内におけるpHの低下の原因となり、欠陥内での凝縮
水分の酸化性を促進し、腐食を誘発する作用がある。し
たがって、Crは前記緻密な安定錆層が生成したとして
も、安定錆層の下部において、鋼の腐食を促進する作用
があり、錆層と鋼との密着性を阻害して、錆層の剥離を
助長したり、結果として、緻密な安定錆層の生成乃至維
持を阻害する可能性がある。それゆえ、Crの含有量を可
能な限り少なくすることが好ましく、Cr含有量低減の経
済性も考慮して、その上限を0.05% 未満とすることが好
ましい。
【0047】そして、一方、このCrに代わる安定錆層の
形成促進元素として、鋼中にTiを含有することが好まし
い。前記した通り、鋼材に含有させたTiのみで錆中のTi
を確保乃至保証することは難しいものの、錆中のTiは、
Crのような前記pHの低下の原因とならずに、前記安定錆
層の形成促進効果があり、錆層中のTiの安定錆層の形成
促進効果を相乗的に高めるという特異な性質を有する。
具体的には、鉄錆中の非晶質の割合やα−FeOOH の錆の
割合を高めるとともに、結晶性の錆成分の内でも特に腐
食を促進しやすいβ−FeOOH の生成を抑制して、微細で
緻密な安定錆層の形成を促進する。この結果、錆層への
塩化物イオンなどの腐食因子の進入を阻止し、緻密な安
定錆層を維持して、耐食性を向上させる。Ti含有量が0.
01% 未満ではこの効果がなく、また1.0 % を越えてもそ
の効果は飽和し経済的ではない。この点、Tiの効果をよ
り発揮させるためには、鋼中にTiを0.05%以上含有する
ことが好ましく、また鋼中のTiが0.5 % を越えると鋼の
脆化が問題となる場合もあり、経済的でもない。したが
って、鋼中にTiを含有する場合、好ましいTi含有量は0.
05〜0.5 % の範囲である。
【0048】この安定な錆の生成を阻害する鋼中のS と
Crを規制するとともに、逆に安定錆層の形成促進効果を
有するTiを含有させた鋼として、本発明者らは、先に特
願平09−330173号として、 C:0.15% 以下、Si:0.10〜
1.0 % 、Mn:1.5 % 以下、S:0.02% 以下、P :0.05%
以下、Cr:0.05% 以下、Ti:0.01〜 1.0% 、Ca:0.0001
〜0.01% およびCu:0.05〜3.0 % とNi:0.05〜6.0 % の
1 種または2 種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物
からなる基本組成を有する鋼材を出願した。この鋼材
は、前記溶接性も良好であり、本発明の使用鋼材の好ま
しい態様として最適である。
【0049】なお、この基本組成に加えて、Ti以外の安
定錆層の形成促進効果を有する以下の元素を鋼中に含ま
せても良い。Mo:0.05〜3.0 % とW :0.05〜3.0 % の1
種または2 種。Al:0.05〜0.50% 、La:0.0001〜 0.05
% 、Ce:0.0001〜 0.05 % 、Mg0.0001〜0.05% の1 種又
は2 種以上。Zr、Ta、Nb、V 、Hfの内から1 種又は2種
以上を合計で0.50% 以下。
【0050】次に、本発明鋼材の製造方法を説明する。
本発明鋼材は、通常の厚みが50mm以上の厚鋼板の製造方
法により製造可能である。即ち、鋼の連続鋳造や造塊法
による溶製後、分塊圧延乃至熱間鍛造や、厚板圧延など
の熱間加工を行い、所定の製品板厚に製造される。な
お、これら熱間加工条件や熱間加工後の冷却や熱処理の
条件は、鋼材の、例えば橋梁の構造材としての、390 〜
630N/mm2級乃至それ以上の強度などの機械的性質の要求
や仕様に応じて、適宜決定される。したがって、通常の
熱間加工の他に、溶接性を保障する低合金化乃至低炭素
当量化を確保した上で、前記強度等の機械的性質を確保
し、本発明の鋼材組織を、前記した好ましくはフェライ
ト量が90%以上とするために、熱間加工後の加速冷却な
どの強制冷却や制御圧延が施されても良い。また、熱間
加工後の熱処理も、必要により、圧延オンラインでの直
接焼入れ(DQ)やオフラインでの焼入れ焼戻し(QT)などが
適宜施される。
【0051】
【実施例】次に、以上説明した本発明鋼材錆の形成方法
の各要件の意義について、実施例を挙げて説明する。表
1 に示す化学成分を有する鋼塊を各々溶製し、これら鋼
塊を熱間圧延後加速冷却により強制冷却して板厚が50mm
の厚鋼板を製造した。表1のNo.1は低炭素鋼、No.2はTi
入り低合金鋼、No.3はCrを低減するとともにTiを添加し
た耐候性鋼である。そして、これらの厚鋼板から試験片
を切り出し、試験片表面をエメリー紙研磨およびバフ研
磨により鏡面とし、この試験片表面に、Ti、Nb、Ta、Z
r、V 、Hfの硫酸塩を含む水溶液、および、これらに加
えてCr、Ni、Cu、P の硫酸塩を含む水溶液を鋼材表面に
塗布する処理を行った。
【0052】これらの処理を行った試験片を、表1 の発
明例No.2〜11は、無塗装使用を模擬した裸の試験片のま
ま、および、表1 の発明例No.13 〜16は、塗装使用を模
擬して橋梁などの塗装に通常使用されるフタル酸樹脂を
50μm 塗布した塗装試験片として耐食性試験を行った。
裸の試験片の耐食性試験は大気暴露試験にて行い、実際
の塩分腐食環境下を模擬して、週 1回の5%塩水散布を行
い、試験片は南向きに、かつ水平に対し30°の傾斜で設
置して、15カ月間の大気暴露試験を行い、長期耐久性を
平均板厚の減少量 (腐食減量) の測定により評価した。
平均板厚減少量は、大気暴露試験の前後での供試材の平
均板厚をマイクロメーターで測定し、密度を考慮して平
均板厚減少量(mm)を算出した。
【0053】なお、塩水噴霧試験等の比較的短期間の腐
食促進試験があるなかで、あえて1年間の大気暴露試験
を行ったのは、本発明鋼材の用途が、特に塩分腐食環境
下の橋梁等の構造材であるため、この実際の使用条件下
の腐食に適合した試験でないと、正確な評価ができない
ためである。
【0054】また、塗装試験片については、塗膜に予め
傷をつけて人工塗膜欠陥を設けるとともに、前記裸の試
験片と同じ条件で大気暴露試験を行い、試験後の人工塗
膜欠陥部のふくれ幅の測定により耐食性を評価した。そ
して、これらの結果から耐食性の総合評価( ◎○△×)
を行った。これらの結果を表2 に示す。なお、表2 にお
いて、平均板厚の減少量 (腐食減量) はmm単位で示し、
人工塗膜欠陥部のふくれ幅は、0.80mm以上をA 、0.5 〜
0.8mm をB 、0.5mm 以下をC として記載している。
【0055】また、大気暴露試験後の試験片表面に生成
した錆中の元素と元素量の分析・測定をX 線回折方(XR
D) および電子線プルーブX 線マイクロアナリシス(EPM
A)により行うとともに、錆の組成を前記X 線回折法によ
り分析した。より具体的には、前記「腐食防食 95 C −
306(341 〜344 頁) 」に開示された粉末X 線回折法によ
り行い、内部標準として一定重量比のZnO を鋼材から採
取した錆試料に混合し粉末化したものをX 線回折法によ
り同定し、前記α−FeOOH 、β−FeOOH 、γ−FeOOH お
よびFe3O4 の5 種類の結晶性錆の各々の固有の回折ピー
クの積分強度比と、予め求めた各々の錆成分の検量線か
ら、各々の結晶性の錆成分の定量化を行った。そして、
非晶質成分の割合(%) は錆の合計量からこれら各々の結
晶性の錆成分量を差し引いて算出した。これらの結果も
表2 に示す。
【0056】表2 において、大気暴露試験の後の試験片
表面の生成錆の組成は、α−FeOOHおよび非晶質の錆成
分の分率をA :0〜35wt% 、B:35〜40wt% 、C:40wt% 以
上、β-FeOOHの錆成分の分率をA :31wt%以上、B:20〜30
wt% 、C:20wt% 未満、として示している。
【0057】また、比較のために、表1 に示す供試鋼
を、本発明に係る処理をせずに、発明例と同様に裸試験
片で耐食性試験を行った比較例No.1、本発明に係る処理
をせずに、発明例と同様に塗装試験片で耐食性試験を行
った比較例No.12 も、本発明例と同様に分析・評価し、
その結果を表2 に示す。
【0058】表2 の結果から明らかな通り、本発明の条
件を満足する発明例No.2〜15は、無塗装および塗装の両
者の場合において耐食性に優れている。なお、発明例同
士の比較において、硫酸Tiを用いた発明例No.4は、塩化
物Tiを用いて処理した発明例No.5に比して、耐食性に優
れており、硫酸塩を用いたの方が耐食性に優れることが
裏付けられる。また、Tiなどの含有量が低い、発明例N
o.2、3 、13は、他の発明例より耐食性が劣っており、
錆中のこれら元素の含有量の重要性が裏付けられる。
【0059】これに対し、本発明に係る処理をせずに、
発明例と同様に裸試験片で耐食性試験を行った比較例N
o.1、本発明に係る処理をせずに、発明例と同様に塗装
試験片で耐食性試験を行った比較例No.12 は、いずれも
腐食減量が0.80mm以上、塗膜欠陥ふくれ幅が0.80mm以上
のA と大きく、耐食性が著しく劣っている。これらの比
較例では、錆の組成が、α−FeOOH や非晶質の錆成分が
主たる組織でありながら、Ti、Nb、Ta、Zr、V 、Hfの錆
中の含有が無いか含有量が少ないために、β−FeOOH の
結晶性の錆の割合 (分率) が多くなり、このβ−FeOOH
が起点となって腐食が進行するため、耐食性が劣ってい
るものである。したがって、この結果から、本発明のよ
り好ましい条件である鋼表面の錆の非晶質化と、β−Fe
OOH の結晶性の錆の抑制のために、Ti、Nb、Ta、Zr、V
、Hfの錆中への含有の必要性が分かる。
【0060】これら、試験片表面の錆層と地鉄の界面の
塩化物イオンの濃縮度合いをEPMA法により測定した結
果、発明例は、いずれも錆層と地鉄の界面の塩化物イオ
ンの濃縮が少なかったのに対し、比較例は、錆層と地鉄
の界面の塩化物イオンの濃縮が多く、前記耐食性試験の
結果が裏付けられた。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、特に塩分腐食環境下で
の耐食性が優れた鋼材を提供することができる。したが
って、特に、この種耐食性が優れた鋼の用途を新規に、
しかも大幅に拡大するものであり、工業的な価値は大き
い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−183364(JP,A) 特開 昭53−5039(JP,A) 特開 平6−136557(JP,A) 特開 平5−247663(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼材表面乃至鋼材表面の錆層に対し、T
    i、Nb、Ta、Zr、V 、Hfのイオンおよび/ またはこれら
    の元素の酸イオンの一種または二種以上を含有する溶液
    を接触させ、その後の鋼材表面乃至鋼材表面の錆層に、
    Ti、Nb、Ta、Zr、V 、Hfの一種または二種以上を合計で
    0.05wt% 以上含有する錆を生成させることを特徴とする
    耐食性に優れた鋼材錆の形成方法。
  2. 【請求項2】 前記溶液がTiイオンまたはTi酸イオンを
    必須に含有し、前記生成錆中にTiを必須に含有させる請
    求項1に記載の耐食性に優れた鋼材錆の形成方法。
  3. 【請求項3】 前記溶液が硫酸Tiを必須に含有する請求
    項2に記載の耐食性に優れた鋼材錆の形成方法。
  4. 【請求項4】 前記溶液が更にCr、Ni、Cu、P のイオン
    または酸イオンの一種または二種以上を含有し、前記生
    成錆中にCr、Ni、Cu、P の一種または二種以上を0.3wt%
    以上含有させる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の
    耐食性に優れた鋼材錆の形成方法。
  5. 【請求項5】 前記溶液が更に硫酸Crを必須に含有する
    請求項4に記載の耐食性に優れた鋼材錆の形成方法。
  6. 【請求項6】 前記生成錆の、X線回折法により求めた
    α−FeOOH 成分および非晶質成分の分率が35wt%以上
    で、β−FeOOH 成分の分率が20wt%以下である請求項1
    乃至5のいずれか1項に記載の耐食性に優れた鋼材錆の
    形成方法。
  7. 【請求項7】 前記鋼材錆の形成方法を、建造物に使用
    されている鋼材の補修用として用いる請求項1乃至6の
    いずれか1項に記載の耐食性に優れた鋼材錆の形成方
    法。
  8. 【請求項8】 前記溶液を接触させた鋼材表面に、更に
    塗装皮膜を形成する請求項1乃至7のいずれか1項に記
    載の耐食性に優れた鋼材錆の形成方法。
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