しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置では、ロックピンが連結孔に向けて前進するとき、ロックピンと連結孔の回転は互いに同期していないため、ロックピンに対向する位置に常に連結孔があるとは限らない。よって、ロックピンと連結孔とがスムーズに係合しない場合が生じるおそれがあり、第1カム部材と第2カム部材との円滑な切り替えを安定して実現することが困難であるという不都合がある。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、遠心力を利用しつつスムーズに第1カム部材と第2カム部材との間で切り替えを行うことができる可変動弁装置とこれを備えたエンジン装置および車両を提供することを目的とする。
上記問題を解決するために、発明者らは特願2006−347314号を出願している。この出願における可変動弁装置は、カム軸と同期して回転する第1のロックピンおよび第2のロックピンと、第2カム部材に一体に設けられ、周方向に長い円弧形状を呈する長孔と略円形状を呈する連結孔とが形成された係合部と、カム軸の回転数に応じて第1ロックピンをカム軸方向に進退させて長孔に係合離脱させるとともに第2ロックピンをカム軸方向に進退させて連結孔に係合離脱させる進退機構と、を備えている。
第2ロックピンが連結孔に対向する場合に比べて第1のロックピンは広い範囲で長孔と対向可能であるため、第1のロックピンは比較的スムーズに長孔と係合する。第1のロックピンが長孔に挿入された後、カム軸と同期して第1のロックピンが回転することで、第1のロックピンは長孔の周方向の一方端縁に片当たりするように当接する。当接した第1のロックピンによって第2カム部材は押し回され、第2カム部材はカム軸と同期して回転する。このとき、第2のロックピンと連結孔とは互いに対向した状態に保たれており、第2のロックピンはスムーズに連結孔に係合する。この一連の動作によって、第1カム部材から第2カム部材に切り替わる。
このように、上記出願における可変動弁装置によれば、遠心力を利用しつつ比較的にスムーズに第1カム部材と第2カム部材との間で切り替えを行うことができる。
しかしながら、本発明者らは、第1のロックピンを長孔に係合させる構成では、次のような新たな問題があることを知見した。すなわち、第1カム部材から第2カム部材に切り替わる際、第1のロックピンが長孔に係合してから第2のロックピンが連結孔に係合するまでは、第1のロックピンのみが長孔に挿入された状態となる。そして、この状態でロッカーアームを介してバルブを開閉する場合がある。
図19と図20を参照する。図19は、先の出願において開示した発明における第2カム部材とロッカーアームとの位置関係を模式的に示す図である。(a)は、第2カム部材によってロッカーアームが上昇するときであり、(b)は第2カム部材によってロッカーアームが下降するときである。なお、図19では、便宜上、係合部の図示を省略し、長孔のみを図示する。図20は、第2カム部材のカム角度とリフト量との関係を示す模式図である。
図19(a)に示すように、第2カム部材201がロッカーアーム203を上昇させているときは、第1のロックピン205は長孔207のカム軸回転方向F前側の端縁に当接している。この状態で第1のロックピン205は第2カム部材201をカム軸回転方向Fに押し回す。第2カム部材201はその周面に当接しているロッカーアーム203を押し上げる。
このとき、第2カム部材201は、ロッカーアーム203からカム軸回転方向Fとは反対の逆方向Bに回転力を受ける。この回転力に抗って、第1のロックピン205は第2カム部材201をカム軸回転方向Fに押し回す。第2カム部材201はロッカーアーム203を正常に上昇させる。この結果、第2カム部材201によってバルブを正常に(正規のバルブリフトで)開くことができる。図20ではカム角度θ1からθ2までが、第2カム部材201がロッカーアーム203を上昇させているタイミングに対応する。
図19(b)に示すように、第2カム部材201がロッカーアーム203を下降させているときは、第2カム部材201はロッカーアーム203からカム軸回転方向Fへの回転力を受ける。第2カム部材201がカム軸回転方向Fへの回転力を受けると、第1のロックピン205は長孔207の端縁から離れ、長孔207は第1のロックピン205に先行してカム軸回転方向Fに相対回転する。すなわち、第2カム部材201はカム軸に先行してカム軸回転方向Fに回転する。このように第2カム部材201は正常に回転せず、ロッカーアーム203は正常に下降しない。なお、この第2カム部材201のカム軸に対する相対回転は、第1のロックピン205が長孔207の他方の端縁に当接するまで許容される。
図20ではカム角度θ2からθ3までが、第2カム部材201がロッカーアーム203を下降させているタイミングに対応する。ここで、点線Lは、第2カム部材201がカム軸に対して先行回転している場合を模式的に示している。この結果、第2カム部材201によってバルブを正常に閉じることができない。第2カム部材201の正規のバルブリフトより早いタイミングでバルブを閉じてしまう。
このように、第1カム部材から第2カム部材201に切り替わる際に、第1のロックピン205のみが長孔207に係合した状態でバルブを開閉する場合があることを本発明者らは知見した。さらに、この場合には、正規のバルブリフトでバルブを開閉させることができない場合があるという不都合を本発明者らは知見した。
このような知見に基づいて、この発明は次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、バルブを開閉させるための可変動弁装置であって、カム軸回転方向に回転するカム軸と、カム軸と同期して回転する第1カム部材と、カム軸に対して相対回転可能な第2カム部材と、カム軸の回転数に応じた遠心力によって、カム軸回転方向とは反対の逆方向に前記第2カム部材がカム軸に対して相対回転することを阻止可能な逆回転阻止機構と、前記第2カム部材がカム軸に対してカム軸回転方向に相対回転することを阻止し、かつ、カム軸に対して逆方向に相対回転することを許容する一方向クラッチ部材と、を備えている。
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、カム軸の回転によって生じる遠心力の大きさに応じて、逆回転阻止機構は第2カム部材のカム軸に対する逆方向への相対回転を阻止する。一方向クラッチは、第2カム部材がカム軸に対してカム軸回転方向に相対回転することを阻止し、カム軸に対して逆方向に相対回転することを許容する。
ここで、逆回転阻止機構が相対回転を阻止していないとき(許容しているとき)は、第2カム部材はカム軸に対して逆方向に相対回転可能であり、カム軸によってカム軸回転方向に回転駆動されない。よって、カム軸と同期して回転する第1カム部材によってバルブを開閉させる。
他方、逆回転阻止機構が相対回転を阻止しているときは、第2カム部材はカム軸に対してカム軸回転方向および逆方向のいずれの方向にも相対回転が阻止されている。したがって、第2カム部材はカム軸の回転と完全に同期して回転する。このように回転する第2カム部材によってバルブを開閉させる。
ここで、第1カム部材から第2カム部材への切り替えは、第2カム部材の逆方向への相対回転を阻止する一動作によって完了する。この切り替えの際に、第2カム部材がカム軸に対してカム軸回転方向に相対回転し得ない。したがって、第1カム部材から第2カム部材への切り替えの際においても、確実にバルブを正常に開閉させることができる。
また、本発明において、前記逆回転阻止機構は、前記第2カム部材と同期して回転する当接部材と、カム軸と同期して回転し、かつ、前記当接部材のカム軸回転方向背面側に当接可能な阻止位置と前記当接部材と当接しない許容位置とに変位可能な可動部材と、を備えていることが好ましい(請求項2)。可動部材が阻止位置に変位している場合、可動部材はカム軸と同期して回転して当接部材と当接する。このとき、可動部材は当接部材のカム軸回転方向背面側に当接し、当接部材をカム軸回転方向に押し回す。これにより、当接部材はカム軸に対して逆方向に相対回転することが阻止される。当接部材は第2カム部材と同期して回転するので、第2カム部材もカム軸に対して逆方向に相対回転することが阻止される。
他方、可動部材が許容位置に変位している場合、可動部材は当接部材と当接しない。よって、当接部材は可動部材に対して逆方向に相対回転可能である。すなわち、第2カム部材はカム軸に対して逆方向に相対回転することが許容されている。このような可動部材と当接部材とを備えることで、逆回転阻止機構を好適に実現することができる。
また、本発明において、前記可動部材が前記当接部材と干渉することなく阻止位置に変位可能な領域は、カム軸と同期して前記可動部材が回転する方向に広範囲にわたって形成されていることが好ましい(請求項3)。可動部材が当接部材と干渉することなく阻止位置に変位可能な領域は、カム軸と同期して可動部材が回転する方向に広範囲にわたって形成されている。このため、可動部材が阻止位置に変位するときに当接部材(特に当接部材のカム軸回転方向背面側以外の部位)と接触せずに円滑に阻止位置に変位することができる。
また、本発明において、前記可動部材は、前記阻止位置と前記許容位置との間をカム軸の径方向に進退移動することが好ましい(請求項4)。可動部材はカム軸の径方向にカム軸に対して進退移動する。これにより、可動部材の動作範囲を小さくすることができ、逆回転阻止機構を小型化することができる。
また、本発明において、前記可動部材が前記許容位置にあるときは前記可動部材の全体がカム軸の内部に収容され、前記可動部材が前記阻止位置にあるときは前記可動部材の一部がカム軸の外周面から突出していることが好ましい(請求項5)。逆回転阻止機構をより小型化することができる。
また、本発明において、前記可動部材と前記当接部材とが面接触によって当接可能な接触面部が、前記可動部材および前記当接部材にそれぞれ形成されていることが好ましい(請求項6)。可動部材と当接部材とが互いに面接触することで、接触するときに双方が受ける衝撃を低減させることができる。よって、可動部材と当接部材の耐久性を向上させることができる。
また、本発明において、前記可動部材の前端部の回転方向後側には凸曲した湾曲面部が形成されていることが好ましい(請求項7)。仮に湾曲面部が当接部材と接触しても、可動部材は当接部材に対してカム軸回転方向に摺動するので、可動部材が当接部材をカム軸回転方向に押し回すことがない。この結果、湾曲面部が当接部材と接触した場合であっても、バルブを正常に開閉させることが妨げられるおそれがない。
また、本発明において、前記当接部材は、カム軸に向かって突出し、そのカム軸回転方向背面側で前記可動部材と当接する突起部を有することが好ましい(請求項8)。当接部材はカム軸に向かって先細りした形状を呈する突起部を有するので、可動部材が阻止位置に変位するときに当接部材と干渉するおそれを効果的に抑制することができる。当接部材は突起部のカム軸回転方向背面側で前記可動部材と当接するので、可動部材の回転方向前面側と好適に当接することができる。
また、本発明において、前記突起部のカム軸回転方向前面側には、前記可動部材がカム軸回転方向に摺動可能な傾斜面部が形成されていることが好ましい(請求項9)。仮に傾斜面部が可動部材と接触しても当接部材は可動部材に対して逆方向に摺動するため、可動部材が当接部材をカム軸回転方向に押し回すことがない。この結果、傾斜面部が可動部材と接触した場合であっても、バルブを正常に開閉させることができる。
また、本発明において、カム軸の回転に応じた遠心力によって、前記阻止位置と前記許容位置とにわたって前記可動部材を変位させる駆動機構と、を備えていることが好ましい(請求項10)。駆動機構を備えているので、好適に可動部材を変位させることができる。
また、本発明において、前記駆動機構は、カム軸と平行に設けられ、カム軸と同期して回転する支軸と、前記支軸に回転可能に保持されているウエイト部材と、を備え、前記ウエイト部材の支軸回りの回転に連動して前記可動部材を変位させることが好ましい(請求項11)。ウエイト部材はカム軸回りおよび支軸回りにそれぞれ回転可能である。支軸はカム軸と平行であるので、ウエイト部材はカム軸に直交する一平面内で回転する。このため、ウエイト部材の可動域を小さくでき、駆動機構をコンパクトにすることができる。
また、本発明において、カム軸と同期して回転するカム軸スプロケットを備え、前記支軸は前記カム軸スプロケットに設けられており、前記ウエイト部材は、カム軸の軸心方向から見て前記カム軸スプロケットの周縁より内側で回動することが好ましい(請求項12)。駆動機構を小型化することができる。
また、本発明において、前記第2カム部材の逆方向の相対回転を阻止しているときの前記逆回転阻止機構の状態を阻止状態とし、前記第2カム部材の逆方向の相対回転を許容しているときの前記逆回転阻止機構の状態を許容状態として、前記逆回転阻止機構を前記阻止状態と前記許容状態とでそれぞれ保持して、前記阻止状態と前記許容状態の間で切り換わる逆回転阻止機構の動作に対して抵抗する状態保持機構と、を備えていることが好ましい(請求項13)。逆回転阻止機構は阻止状態と許容状態との間で速やかに切り替わり、可動部材を阻止位置と許容位置との間で速やかに変位させることができる。
また、請求項14に記載の発明は、請求項1から請求項13のいずれかに記載の可変動弁装置と、前記可変動弁装置によって開閉されるバルブを有するエンジン本体と、を備え、前記可変動弁装置が備えているカム軸は前記エンジン本体によって回転駆動されるエンジン装置である。
[作用・効果]請求項14に記載の発明によれば、エンジン本体の回転数に応じて第1カム部材と第2カム部材との間で切り替えることができる。また、第1カム部材と第2カム部材との間で切り替える際においても、正常なバルブの開閉を確実に行うことができる。よって、エンジン装置は効率よく動力を発生させることができる。
また、請求項15に記載の発明は、請求項14に記載のエンジン装置を備えている車輌である。
[作用・効果]請求項15に記載の発明によれば、効率よく走行することができる。
なお、本明細書は、次のような可変動弁装置に係る発明も開示している。
(1)請求項1に記載の可変動弁装置において、前記逆回転阻止機構は、カム軸の回転数に応じた遠心力によって、前記第2カム部材のカム軸に対する逆方向への相対回転を阻止するとき、前記第2カム部材のカム軸に対するカム軸回転方向への相対回転も阻止する可変動弁装置。
前記(1)に記載の発明によれば、前記逆回転阻止機構は第2カム部材をカム軸に対して相対回転不能にさせるので、より確実に第2カム部材の回転をカム軸と同期させることができる。
(2)前記(1)に記載の可変動弁装置において、前記逆回転阻止機構は、カム軸の回転と同期して回転するとともに、前記第2カム部材がカム軸に対して相対回転することを阻止する阻止位置と、前記第2カム部材がカム軸に対して相対回転することを許容する許容位置とに変位可能な可動部材と、前記第2カム部材と同期して回転するとともに前記阻止位置に変位した前記可動部材と係合する係合部材と、を備えている可変動弁装置。
前記(2)に記載の発明によれば、逆回転阻止機構は可動部材と係合する係合部材を備えているので、好適に第2カム部材をカム軸に対して相対回転不能にできる。
(3)請求項2から請求項13のいずれかに記載の可変動弁装置において、前記可動部材はそのカム軸回転方向前面側で当接部材と当接する可変動弁装置。
前記(3)に記載の各発明によれば、可動部材は当接部材をカム軸回転方向に好適に回転させることができる。
(4)請求項1から請求項13のいずれかに記載の可変動弁装置において、前記逆回転阻止機構は、前記第2カム部材のノーズ部が前記第1カム部材のノーズ部の向きと略一致するときに前記第2カム部材の逆方向への相対回転を阻止する可変動弁装置。
前記(4)に記載の発明によれば、第1カム部材および第2カム部材によってそれぞれバルブを好適に開閉することができる。
(5)請求項1から請求項13のいずれかに記載の可変動弁装置において、前記逆回転阻止機構は、カム軸の回転数が比較的低いときは第2カム部材の相対回転を許容し、カム軸の回転数が比較的高いときは前記第2カム部材の相対回転を阻止する可変動弁装置。
前記(5)に記載の発明によれば、カム軸の回転数が比較的に低いときは第1カム部材でバルブを開閉し、カム軸の回転数が比較的に高いときは第2カム部材でバルブを開閉することができる。
(6)請求項1から請求項13のいずれかに記載の可変動弁装置において、前記第2カム部材の逆方向への相対回転に対して許容する状態から阻止する状態に切り替わるときのカム軸の回転数と、前記第2カム部材の逆方向への相対回転に対して阻止する状態から許容する状態に切り替わるときのカム軸の回転数とは、異なる可変動弁装置。
前記(6)に記載の発明によれば、第1カム部材と第2カム部材との間で切り替えを必要以上に頻繁に繰り返すことを回避することができる。
(7)請求項2に記載の可変動弁装置において、前記当接部材は、カム軸の回転に応じて前記可動部材が阻止位置に変位するときに進入可能なカム軸の軸心を中心とした環状の領域の一部分に設けられている可変動弁装置。
前記(7)に記載の発明によれば、可動部材はカム軸と同期して回転している。このため、当接部材から見ると、阻止位置に変位する可動部材が進入して来る領域は、カム軸の軸心周りの環状の領域となる。当接部材はこの環状の領域の一部分に設けられている。すなわち、この一部分を除く環状の領域の大部分においては、可動部材が阻止位置に変位しても当接部材と干渉することがない。よって、可動部材は円滑に阻止位置に変位することができる。
(8)請求項2または請求項3に記載の可変動弁装置であって、前記可動部材は、カム軸の軸心から偏心して設けられ、前記阻止位置と前記許容位置との間をカム軸の軸心と平行な方向に進退移動する可変動弁装置。
前記(8)に記載の発明によれば、カム軸の回転によって可動部材自体に発生する遠心力は、可動部材が阻止位置と許容位置との間で変位する方向の成分を含まない。よって、カム軸の回転によらず、正確に可動部材をカム軸に対して進退移動させることができる。
(9)請求項6に記載の可変動弁装置において、前記可動部材の接触面部および前記当接部材の接触面部は、それぞれ平坦である可変動弁装置。
前記(9)に記載の発明によれば、好適に可動部材と当接部材とを当接させることができる。
(10)請求項6に記載の可変動弁装置において、前記可動部材の接触面部および前記当接部材の接触面部は、それぞれ湾曲している可変動弁装置。
前記(10)に記載の発明によれば、好適に可動部材と当接部材とを当接させることができる。
(11)請求項6に記載の可変動弁装置において、前記当接部材の接触面部に対して前記可動部材の接触面部が追従回転可能に、前記可動部材が若干自転可能に設けられている可変動弁装置。
前記(11)に記載の発明によれば、確実に可動部材と当接部材とを面接触させることができる。
(12)請求項2から請求項13のいずれかに記載の可変動弁装置において、前記可動部材は棒状物である可変動弁装置。
前記(12)に記載の発明によれば、好適に可動部材を構成することができる。
(13)請求項2から請求項13のいずれかに記載の可変動弁装置において、前記当接部材は前記第2カム部材と一体に設けられている可変動弁装置。
前記(13)に記載の発明によれば、当接部材を堅牢に設けることができる。
(14)請求項10から請求項12のいずれかに記載の可変動弁装置において、前記駆動機構は、前記可動部材を前記許容位置に変位させる方向に付勢する付勢機構を備えている可変動弁装置。
前記(14)に記載の発明によれば、カム軸の回転に応じた遠心力と付勢機構の付勢力との関係で、可動部材を許容位置と阻止位置とにわたって好適に変位させることができる。
(15)請求項11に記載の可変動弁装置において、前記ウエイト部材はカム軸と平行な方向に扁平な形状を呈する可変動弁装置。
前記(15)に記載の発明によれば、ウエイト部材の可動域をより低減させることができる。
(16)請求項11に記載の可変動弁装置において、前記駆動機構は、前記ウエイト部材の前記支軸回りの回転に連動してカム軸に対して相対回転する操作軸を備え、前記操作軸はその回転中心から偏心した位置に前記可動部材と係合する操作片を備え、前記操作軸のカム軸に対する相対回転によって、前記可動部材を前記阻止位置と前記許容位置とにわたって変位する可変動弁装置。
前記(16)に記載の発明によれば、ウエイト部材に発生する遠心力は、ウエイト部材を支軸回りに回転させるように働く。ウエイト部材が支軸回りに回転すると、操作軸はカム軸に対して相対回転する。操作軸がカム軸に対して相対回転すると、操作片は操作軸の回転中心から偏心した位置で回転する。この操作片の回転により、可動部材は阻止位置と許容位置とにわたって変位する。このように、ウエイト部材と操作軸と可動部材を連動連結することで、好適に逆回転阻止機構を構成することができる。
(17)前記(16)に記載の可変動弁装置において、前記可動部材は、カム軸と同期して回転可能に、かつ、カム軸の径方向に進退可能に設けられている可変動弁装置。
前記(17)に記載の発明によれば、操作片の回転により、可動部材は径方向に進退移動する。これにより、好適に可動部材は阻止位置と許容位置とに変位することができる。
(18)請求項13に記載の可変動弁装置において、前記状態保持機構は、前記阻止状態で保持している場合と前記許容状態で保持している場合とで保持力が異なる可変動弁装置。
(19)請求項13または前記(18)に記載の可変動弁装置において、前記許容状態で保持する保持力は前記阻止状態で保持する保持力に比べて大きい可変動弁装置。
前記(18)および前記(19)に記載の発明によれば、逆回転阻止機構が許容状態から阻止状態に切り替わるときと、阻止状態から許容状態に切り替わるときとで、遠心力の大きさ、すなわち、カム軸の回転数は異なる。このため、逆回転阻止機構が阻止状態と許容状態との間で必要以上に頻繁に切り替わることを回避することができる。
(20)請求項13に記載の可変動弁装置において、前記逆回転阻止機構には第1凹部と第2凹部とが形成されており、前記状態保持機構は、前記逆回転阻止機構が許容状態であるときに前記第1凹部と凹凸結合可能で、かつ、前記逆回転阻止機構が阻止状態であるときに前記第2凹部と凹凸結合可能であり、前記第1凹部は第2凹部に比べて深く形成されている可変動弁装置。
前記(20)に記載の発明によれば、状態保持機構が逆回転阻止機構を阻止状態で保持する保持力に比べて、状態保持機構が逆回転阻止機構を許容状態で保持する保持力を大きくすることができる。これにより、逆回転阻止機構が許容状態から阻止状態に切り替わるときと、阻止状態から許容状態に切り替わるときとで、遠心力の大きさ、すなわち、カム軸の回転数を変えることができる。さらに、逆回転阻止機構が許容状態から阻止状態に切り替わる動作を迅速にさせることができる。
この発明に係る可変動弁装置によれば、逆回転阻止機構が第2カム部材の逆方向への相対回転を許容しているときは、第2カム部材はカム軸によってカム軸回転方向に回転駆動されない。このため、第1カム部材によってバルブを開閉させる。他方、逆回転阻止機構が第2カム部材の逆方向への相対回転を阻止しているときは、第2カム部材はカム軸の回転と完全に同期して回転する。このため、第2カム部材によってバルブを開閉させる。
ここで、第2カム部材がカム軸に対してカム軸回転方向に相対回転することは一方向クラッチによって常に阻止されているので、第1カム部材から第2カム部材への切り替えは第2カム部材の逆方向への相対回転を阻止する一動作で完了する。よって、第1カム部材から第2カム部材への切り替えの際においても、確実にバルブを正常に開閉させることができる。
また、この発明に係るエンジン装置によれば、エンジン本体の回転数に応じて、第1カム部材から第2カム部材に切り替わる際においても、正常なバルブの開閉を確実に行うことができる。よって、エンジン装置は効率よく動力を発生させることができる。さらに、この発明に係る車両によれば、このようなエンジン装置を備えているので、効率よく走行することができる。
以下、図面を参照して本発明の可変動弁装置とこれを備えたエンジン装置および車両について説明する。
1.車輌の構成
図1は本実施例に係る車両の概略構成を示す模式図である。図示するように、本実施例に係る車両は自動二輪車両1である。自動二輪車両1はメインフレーム11を備えている。メインフレーム11の前端上部にはヘッドパイプ12が設けられている。ヘッドパイプ12にはフロントフォーク13が左右方向に揺動可能に支持されている。フロントフォーク13の下端部には前輪14が回転可能に取り付けられている。フロントフォーク13にはハンドル15が連結されており、ハンドル15の操作がフロントフォーク13に伝達される。
メインフレーム11の上部には、燃料タンク16とシート17とが前後に並んで保持されている。燃料タンク16の下方にあたる位置には、エンジン装置20と変速機21とがメインフレーム11に保持されている。変速機21は、エンジン装置20で発生した動力を出力するドライブ軸21aを備えている。ドライブ軸21aにはドライブスプロケット23が連結されている。
メインフレーム11の下部後側にはスイングアーム24が揺動可能に支持されている。スイングアーム24の後端部には、後輪25およびドリブンスプロケット26が回転可能に支持されている。後輪25およびドリブンスプロケット26は同期して回転可能に連動連結されている。ドライブスプロケット23とドリブンスプロケット26との間には、チェーン27が懸架されている。エンジン装置20で発生した動力は、変速機21(ドライブ軸21a)、ドライブスプロケット23、チェーン27およびドリブンスプロケット26を介して後輪25に伝達される。
2.エンジン装置20(エンジン本体30)の構成
図2はエンジン装置の概略構成を示す模式図である。本明細書では、エンジン装置20をエンジン本体30と可変動弁装置50とに分ける。まず、エンジン本体30について詳しく説明する。
エンジン本体30は、クランクケース(図示省略)とシリンダブロック33とシリンダヘッド35とを備えている。クランクケースにはクランク軸37が回転可能に保持されている。シリンダブロック33はクランクケースの上面に連結されている。シリンダブロック33の内部にはシリンダボア33aが形成されている。シリンダボア33aにはピストン38が往復動可能に設けられる。ピストン38はコンロッド39を介してクランク軸37に連動連結されている。
シリンダブロック33の上面にシリンダヘッド35が連結されている。シリンダヘッド35はシリンダボア33aを閉塞し、ピストン38との間で燃焼室Cを形成している。シリンダヘッド35の燃焼室Cを形成する壁面には、混合気を吸入するための吸入口と、燃焼室Cから燃焼ガスを排気するための排気口とが形成されている。
シリンダヘッド35には吸入口を開閉するための吸気バルブ41と、排気口を開閉するための排気バルブ42とが設けられている。吸気バルブ41および排気バルブ42には、それぞれバルブステム43i、43eが連結されている。各バルブステム43i、43eは、筒形状を呈するバルブガイド44i、44eに摺動可能に挿通されている。各バルブステム43i、43eにはそれぞれ、バルブスプリング45i、45eが設けられている。各バルブスプリング45i、45eはそれぞれ、吸気バルブ41および排気バルブ42を閉じ方向(上方向)に付勢している。
吸気バルブ41および排気バルブ42のステムエンド47、48には、吸気バルブ41および排気バルブ42を開閉させるための可変動弁装置50が連動連結されている。可変動弁装置50は、吸気バルブ41のステムエンド47を下方に押し下げて、吸気バルブ41を開き方向(下方向)に移動させる。同様に、可変動弁装置50は、排気バルブ42のステムエンド48を下方に押し下げて、排気バルブ42を開き方向(下方向)に移動させる。
3.可変動弁装置50の構成
次に可変動弁装置50の構成について説明する。以下では、説明の便宜上、可変動弁装置50は、吸気バルブ41のみを開閉するものとして説明する。図3は可変動弁装置の要部の斜視図であり、図4は可変動弁装置の要部の断面図であり、図5は、可変動弁装置の要部の分解斜視図であり、図6は可変動弁装置の要部のカム軸に直交する方向から見た平面図である。
可変動弁装置50は、カム軸51と第1カム部材52と第2カム部材53と逆回転阻止機構54と状態保持機構55とロッカーアーム機構56を備えている。エンジン本体30の回転数が比較的に低い低回転領域では第1カム部材52によって吸気バルブ41を開閉させる。エンジン本体30の回転数が比較的に高い高回転領域では第2カム部材53によって吸気バルブ41を開閉させる。第1カム部材52はいわゆるローカムであり、第2カム部材53はいわゆるハイカムである。
3.1 カム軸51に関連する構成
カム軸51は、クランク軸37(図2参照)と略平行となるように配置されている。カム軸51は、図示省略のベアリングを介してシリンダヘッド35(図2参照)に支持されて、その軸心x回りに回転可能である。
図4に示すように、カム軸51の一端側にはフランジ部61が一体に連結されている。フランジ部61にはカム軸スプロケット62がボルトで連結されている。カム軸スプロケット62の中心はカム軸51の軸心xと一致している。カム軸スプロケット62にはカム用チェーン(図示省略)が掛け回されている。カム用チェーンはさらに、クランク軸37に設けられたカム用ドライブスプロケット(図示省略)に掛け回されている。そして、クランク軸37の回転に連動して、カム軸スプロケット62およびカム軸51が一体に軸心x回りに回転する。カム軸51の回転数はクランク軸37の回転数の2分の1である。
以下では、クランク軸37の回転に連動してカム軸51が回転する方向を「カム軸回転方向F」と記載し、カム軸回転方向Fとは反対の方向を「逆方向B」と記載する。
カム軸51の他端側には連結ボルト63が装着されている。連結ボルト63は第1カム部材52および第2カム部材53がカム軸51から抜け出すことを阻止する。連結ボルト63の内部には貫通孔63aが形成されている。また、カム軸51の内部には貫通孔63aと連通するとともに、カム軸51の外周面に形成された開口に通じるオイル通路51aが形成されている。これら貫通孔63aとオイル通路51aを通じて、潤滑油がカム軸51の外周面に供給される。なお、開口が形成されているカム軸51の外周面には、後述する一方向クラッチ65が設けられる。
3.2 第1カム部材52
第1カム部材52はカム軸51の回転と同期して回転する。第1カム部材52はカム軸51に設けられている。具体的には、第1カム部材52はキー64を介してカム軸51に連結固定され、カム軸51と一体に回転する。第1カム部材52は、カム軸51の軸心xを中心とするベース円から突出したノーズ部52aを有する。
3.3 第2カム部材53
第2カム部材53は、第1カム部材52と軸心x方向に並ぶように配置されている。第2カム部材53は、第1カム部材52よりカム軸スプロケット62に近い位置に配置されていることが好ましい。第2カム部材53はカム軸51に対して相対回転可能にカム軸51に設けられる。
具体的には、第2カム部材53は一方向クラッチ65を介してカム軸51に連動連結されている。一方向クラッチ65は円筒形状を呈し、カム軸51と第2カム部材53との間に装着されている。一方向クラッチ65は、第2カム部材53がカム軸51に対してカム軸回転方向Fに相対回転することを阻止し、かつ、第2カム部材53がカム軸51に対して逆方向Bに相対回転することを許容する。言い換えれば、一方向クラッチ65は、カム軸51のカム軸回転方向Fへの回転動力を第2カム部材53に伝達しない。この一方向クラッチ65によって、第2カム部材53はカム軸51に対して逆方向Bに相対回転可能である。一方向クラッチ65の内周面には、上述した貫通孔63aとオイル通路51aを通じて潤滑油が供給される。一方向クラッチ65はこの発明における一方向クラッチ部材に相当する。
第2カム部材53はカム軸51の軸心xを中心とするベース円から突出したノーズ部53aを有する。第2カム部材53のベース円の径は第1カム部材52のベース円と同じである。第2カム部材53のノーズ部53aは第1カム部材52のノーズ部52aに比べて大きい。
3.4 逆回転阻止機構54
逆回転阻止機構54は、カム軸51の回転によって発生する遠心力の大きさに応じて、第2カム部材53がカム軸51に対して逆方向Bに相対回転することを阻止する。より詳しくは、逆回転阻止機構54は、比較的に大きい遠心力が発生したときは第2カム部材53の相対回転を阻止し、比較的に小さい遠心力が発生したときは第2カム部材53の相対回転を阻止しない(第2カム部材53の相対回転を許容する)。逆回転阻止機構54は可動部材71と当接部材73と駆動機構75とを備えている。以下では、可動部材71および当接部材73と、駆動機構75とに分けて説明する。
3.4.1 逆回転阻止機構54〜可動部材71および当接部材73
図7は、逆回転阻止機構54の要部を示す分解斜視図であり、図8は可動部材と当接部材との位置関係を示す図であって、(a)は可動部材が許容位置に変位している状態を示し、(b)は可動部材が阻止位置に変位している状態を示している。
可動部材71は当接部材73と当接することにより、第2カム部材53の相対回転を直接的に阻止する。可動部材71はカム軸51の内部に収容されている。図6に示すように、可動部材71の軸心x方向に対する配置位置は、カム軸スプロケット62と第2カム部材53との間であることが好ましい。
図7、図8に示すように、可動部材71はカム軸51の外径より若干短い棒形状を呈する。可動部材71は、可動部材71の長手方向がカム軸51の径方向に向いた姿勢で、カム軸51と同期して回転するように設けられている。また、可動部材71は、その長手方向(カム軸51の径方向)にカム軸51に対して進退移動可能に設けられている。以下では可動部材71の長手方向を「進退方向」という。可動部材71と対向するカム軸51の外周面には貫通孔51bが形成されている。貫通孔51bは可動部材71の外径より若干大きい径を有する。
可動部材71は進退移動することによって阻止位置と許容位置との間を変位する。阻止位置は、可動部材71が後述する当接部材73と当接可能な位置である(図8(b)参照)。可動部材71が阻止位置にあるとき、可動部材71の一部が貫通孔51bを通じてカム軸51の外周面から突出している。以下では、阻止位置においてカム軸51の外周面から突出する一部を「前端部71a」と呼ぶ。許容位置は、可動部材71が当接部材73と当接しない位置である(図8(a)参照)。可動部材71が許容位置にあるとき、可動部材71の全体がカム軸51の内部に収まる。
前端部71aには平坦な接触面部71bが形成されている。接触面部71bは可動部材71の回転方向(すなわちカム軸回転方向F)の前面側に形成されている。接触面部71bの上縁は可動部材71の前端にあたる。可動部材71の回転方向後側には凸曲した湾曲面部71cが形成されている。湾曲面部71cは接触面部71bの上縁に連続するように形成されている。
当接部材73は第2カム部材53に一体に連結されている。上述したように当接部材73は可動部材71と当接可能である。当接部材73が可動部材71と当接するときは第2カム部材53のノーズ部53aの向きが第1カム部材52のノーズ部52aの向きと略一致するように、当接部材73が配置されている。
当接部材73は、第2カム部材53から貫通孔51bを含む外周面に被るように張り出している突起部73aを有する。突起部73aは、カム軸51に向かって突出している。突起部73aのカム軸回転方向F背面側には接触面部73bが形成されている。接触面部73bは平坦であり、可動部材71の接触面部71bと面接触可能である。
突起部73aのカム軸回転方向F前面側には傾斜面部73cが形成されている。傾斜面部73cは平滑であり、カム軸回転方向Fに向かってカム軸51の外周面から離れるように傾斜している。接触面部73bと傾斜面部73cとは連続して形成されている。接触面部73bと傾斜面部73cの境界が、突起部73aの先端となる。突起部73aの先端はカム軸51の外周面に近接している。
可動部材71が阻止位置に変位しているときは、可動部材71は当接部材73と当接した状態でカム軸51と同期して回転する。ここで、「当接した状態」とは、前端部71aのカム軸回転方向F前面側が、突起部73aのカム軸回転方向F背面側に接している状態である。このとき、可動部材71の接触面部71bと当接部材73の接触面部73bとが互いに面接触している。
可動部材71はこのように当接した当接部材73をカム軸回転方向Fに押し回す。当接部材73は可動部材71に対して逆方向Bに相対回転することが阻止される。すなわち、第2カム部材53はカム軸51に対して逆方向Bに相対回転することが阻止されて、カム軸回転方向Fに押し回される。この際、第2カム部材53のノーズ部53aは第1カム部材52のノーズ部52aと略同じ向きを向いている。ここで、「略同じ向き」とは、ノーズ部53aがノーズ部52aの向きと一致している場合に限られない。軸心x方向から第1カム部材52および第2カム部材53を重ねて見たときに、第2カム部材53の外周内に第1カム部材52の全体が収まっていれば、ノーズ部53aの向きとノーズ部52aの向きとがずれていても、両者は「略同じ向き」である。
他方、可動部材71が許容位置に変位しているときは、可動部材71は当接部材73と当接しない。当接部材73は可動部材71に対して逆方向Bに相対回転することを許容されている。すなわち、第2カム部材53はカム軸51に対して逆方向Bに相対回転可能であり、カム軸51によって回転駆動されない。
また、前端部71aが突出する動作については、以下の通りである。可動部材71はカム軸51と同期して回転しつつ、任意のタイミングで阻止位置に変位する。このため、当接部材73から見ると前端部71aが突出する可能性がある領域は、カム軸51の外周面外側の環状の領域である。以下では、この領域を適宜に「進入領域A」という(図6、図8参照)。進入領域Aには、上述した当接部材73(突起部73a)のみが設けられており、それ以外は何も配備されていない。進入領域Aにおける当接部材73(突起部73a)の大きさは、この進入領域Aの一部分である。
本実施例では、図8に示されるように、軸心x回りに360度にわたる進入領域A全体のうち、当接部材73は軸心x回りに約60度の範囲にすぎない。すなわち、可動部材71が当接部材73と干渉することなく阻止位置に変位可能な範囲が、進入領域Aのうち軸心x回りに約300度の広範囲にわって形成されている。このため、可動部材71が阻止位置に円滑に変位することができる。
また、仮に図9に示すように、当接部材73の傾斜面部73cに向かって前端部71aが突出する場合であっても、傾斜面部73cに接触するのは前端部71aの湾曲面部71cである。傾斜面部73cと湾曲面部71cとは比較的小さい接触面積で接触し、互いに円滑に摺動する。さらに、傾斜面部73cはカム軸51の外周面から離れるように傾斜しているので、可動部材71は傾斜面部73cから速やかに離れる。よって、可動部材71は阻止位置に円滑に変位する。この結果、当接部材73は、可動部材71によって押し圧された状態でカム軸回転方向Fに回転駆動されるおそれがない。
3.4.2 逆回転阻止機構54〜駆動機構75
次に、上述した可動部材71を進退移動させる駆動機構75の構成について説明する。図10は、カム軸方向から見た可変動弁装置の平面図であり、(a)は逆回転阻止機構が許容状態であるときを示し、(b)は逆回転阻止機構が阻止状態であるときを示している。
駆動機構75は、カム軸51の回転に応じた遠心力によって、阻止位置と許容位置とにわたって可動部材71を移動させる。駆動機構75はウエイト部材76を備えている。ウエイト部材76は支軸77に支持されている。ウエイト部材76はカム軸51と平行な方向に扁平な形状を呈する(言い換えれば、ウエイト部材76はカム軸51の方向に対する長さが比較的短い板状物である)。支軸77はカム軸スプロケット62の一方面に固定的に設けられている。支軸77はカム軸51の軸心xから偏心した位置に配置されている。支軸77は、軸心xと平行な軸心y周りに回転可能にウエイト部材76を支持している。ウエイト部材76は、支軸77を支点としてカム軸スプロケット62の中央から周縁側にわたって回転可能である。
支軸77にはねじりコイルバネ78が取り付けられている。ねじりコイルバネ78の一端はウエイト部材76に係止されている。ねじりコイルバネ78は、ウエイト部材76を支軸77回りにカム軸スプロケット62の中央側に回転する方向に付勢している。
カム軸スプロケット62の一方面には支軸77より周縁側にリブ79が突出して形成されている。図10(b)に示すように、リブ79はその内壁面でウエイト部材76と当接する。これにより、ウエイト部材76が支軸77回りにカム軸スプロケット62の周縁側へ回転する範囲を制限する。
カム軸スプロケット62の中央部には開口が形成されている。この開口からカム軸スプロケット62の一方面側に操作軸81が突出して設けられている。操作軸81は略円柱形状を呈している。図10(a)に示すように、操作軸81はその外周面でウエイト部材76と当接する。これにより、ウエイト部材76が支軸77回りにカム軸スプロケット62の中央側へ回転する範囲を制限する。
図4、図5に示すように、操作軸81はカム軸51に対して相対回転可能に保持されている。操作軸81の回転中心はカム軸51の軸心xと略一致している。操作軸81の一端側には切欠き部81aが形成されている。切欠き部81aの内奥には扇形状の端面が形成されている。この端面は、カム軸スプロケット62の一方面と略同じ高さ位置に形成されている。端面には操作軸81の半径方向に沿った溝部81bが形成されている。
図10に示すように、ウエイト部材76は、操作軸81の切欠き部81aに入り込むように延びているアーム部76aを有する。図4、図5に示すように、アーム部76aの先端には操作突起76bが形成されている。操作突起76bは操作軸81の回転中心から偏心した位置に配置されている。操作突起76bは溝部81bに摺動可能に係合している。これにより、ウエイト部材76は操作軸81と連動連結している。
操作軸81の他端側はカム軸51の内部に挿入されている。図7に示すように、操作軸81の他端には、操作軸81の軸心から偏心した位置に操作ピン81cが突出して形成されている。操作ピン81cは略円柱形状を呈する。
上述した可動部材71の外周面には、操作ピン81cと係合する溝部71dが形成されている。溝部71dは操作ピン81cの外径と略同じ幅を有し、可動部材71の進退方向と略直交する方向に形成されている。操作ピン81cの外周面は、この溝部71dの両側面に沿って摺動可能である。
また、操作ピン81cの先端と溝部71dの底面との間に僅かな間隙が形成されている。このため、可動部材71はその長手方向の軸心周りに若干自転可能である。
そして、カム軸スプロケット62が軸心x回りに回転するとき、支軸77はカム軸スプロケット62と一体に軸心x回りに回転する。これにより、ウエイト部材76は軸心x回りに回転する。このとき、ウエイト部材76にはカム軸スプロケット62の半径方向外向きに遠心力が発生する。なお、カム軸スプロケット62の回転により、さらにカム軸51、第1カム部材52が一体に回転する。また、可動部材71はカム軸51の径方向に進退移動可能な状態で、カム軸51の回転と同期して軸心x回りに回転する。
この遠心力はウエイト部材76を支軸77周りにカム軸スプロケット62の周縁側に回転させるように働く。ウエイト部材76の支軸77回りの回転は、この遠心力と、ねじりコイルバネ78の付勢力と、後述する状態保持機構55による保持力を含めた三者の関係で決まる。
ウエイト部材76が支軸77回りに回転すると、ウエイト部材76の操作突起76bが操作軸81の溝部81bを摺動しつつ操作軸81を軸心x回りに回転させる。この操作軸81の軸心x回りの回転は、カム軸スプロケット62等(カム軸51および可動部材71を含む)に対する相対回転である。これにより操作軸81が回転すると、操作軸81の操作ピン81cが可動部材71の溝部71dを摺動しつつ、可動部材71を進退方向に移動させる。これにより、可動部材71は阻止位置と許容位置とにわたって変位する。
ここで、ウエイト部材76が操作軸81に当接する位置に変位すると可動部材71は許容位置に変位し(図10(a)、図8(a)参照)、ウエイト部材76がリブ79に当接する位置に変位すると可動部材71は阻止位置に変位するように(図10(b)、図8(b)参照)、ウエイト部材76、操作軸81および可動部材71が連動連結されている。
このように、駆動機構75はウエイト部材76と支軸77とねじりコイルバネ78と操作軸81とを備えて構成されている。また、ねじりコイルバネ78は、この発明における付勢機構に相当する。
3.5 状態保持機構55
状態保持機構55は逆回転阻止機構54を所定の状態で保持する。所定の状態は、可動部材71を阻止位置に変位させている阻止状態と、可動部材71を許容位置に変位させている許容状態の二つである。実施例1の状態保持機構55は、操作軸81に直接的に保持力を与えるように構成されている。これにより、状態保持機構55は、阻止状態および許容状態で切り換わる逆回転阻止機構54の動作に対して抵抗する。以下に具体的な状態保持機構55の構成を説明する。
図4、図5を参照する。状態保持機構55はカム軸スプロケット62の一方面に固定されている角ボス部86を備えている。角ボス部86の前端は操作軸81の外周面に対向している。角ボス部86の内部には前端と後端との間で貫通する貫通孔が形成されている。角ボス部86の貫通孔には、係合ピン87と圧縮コイルバネ88と止めネジ89とが前端側からこの順番で配置されている。止めネジ89は角ボス部86の後端部に固定されている。圧縮コイルバネ88の一端は止めネジ89に当接されている。係合ピン87の後端は圧縮コイルバネ88の他端に当接されている。係合ピン87の前端は操作軸81の外周面に当接して圧縮コイルバネ88を圧縮変形させている。これにより、圧縮コイルバネ88は係合ピン87を操作軸81の外周面に向かう方向に付勢している。
図10(a)、(b)に示すように、操作軸81の外周面の周方向2箇所には、第1凹部81dと第2凹部81eが形成されている。第1凹部81dは、逆回転阻止機構54が許容状態にあるときに係合ピン87と対向するように配置されている。第2凹部81eは、逆回転阻止機構54が阻止状態にあるときに係合ピン87と対向するように配置されている。
そして、逆回転阻止機構54が許容状態にあるときは、係合ピン87は第1凹部81dと凹凸結合している。逆回転阻止機構54が阻止状態にあるときは、係合ピン87は第2凹部81eに凹凸結合している。このように状態保持機構55が逆回転阻止機構54を許容状態または阻止状態で保持している場合、操作軸81がカム軸スプロケット62に対して回転する動作は、係合ピン87を第1凹部81dまたは第2凹部81eから離脱させる力に応じた抵抗を受ける。なお、係合ピン87が第1凹部81dおよび第2凹部81eから一旦離脱すると係合ピン87は操作軸81の外周面を摺動し、操作軸81の回転に対する抵抗は比較的に小さくなる。
このように、状態保持機構55は逆回転阻止機構54を阻止状態および許容状態でそれぞれ弾性保持しており、逆回転阻止機構54が阻止状態と許容状態との間で切り替わる動作に対して抵抗している。
本実施例では、第1凹部81dは第2凹部81eに比べて深く形成されている。よって、状態保持機構55の保持力は、逆回転阻止機構54を許容状態で保持するときの方が、阻止状態で保持するときに比べて大きい。このように第2凹部81eに比べて第1凹部81dの深さを深くした理由は、駆動機構75(操作ピン81c)の動作、および、可動部材71の阻止位置への移動が確実に、かつ、瞬時に行われるようにするためである。
上述したウエイト部材76の形状、ねじりコイルバネ78の付勢力および状態保持機構55の保持力などは、逆回転阻止機構54が許容状態と阻止状態との間で切り替わるときの遠心力の大きさ、すなわち、カム軸51の回転数を規定する要素である。したがって、これらは、所定の回転数で第1カム部材52と第2カム部材53との間で切り替わるように、予め実験等によって設計、選択されている。本実施例では、逆回転阻止機構54が許容状態から阻止状態に切り替わるときのカム軸51の回転数に比べて、逆回転阻止機構54が阻止状態から許容状態に切り替わるときのカム軸51の回転数を低く設定している。
・ ロッカーアーム機構56
図11は、第2カム部材によってロッカーアーム機構を上下動させている状態を示す図である。ロッカーアーム機構56は、ロッカーアーム91とロッカーアームシャフト92とローラ93とを備えている。ロッカーアームシャフト92は、シリンダヘッド35にカム軸51と平行に設けられている。ロッカーアーム91はロッカーアームシャフト92に揺動可能に支持されている。ロッカーアーム91の一端側にはローラ93が回転可能に設けられている。ローラ93は、第1カム部材52または第2カム部材53の少なくとも一方と当接する。
具体的には、第2カム部材53がカム軸51に対して逆方向Bに相対回転可能であるときは、ローラ93は第1カム部材52と当接して略上下方向に昇降する。また、第2カム部材53がカム軸51に対して逆方向Bに相対回転不能であるときは、ローラ93は第2カム部材53と当接して略上下方向に昇降する。
図2に示すように、ロッカーアーム91の他端は吸気バルブ41のステムエンド47に連動連結している。ローラ93の昇降によりロッカーアーム91はロッカーアームシャフト92を支点として揺動し、吸気バルブ41のステムエンド47をバルブガイド44iに沿って往復移動させる。これにより、吸気バルブ41を押し下げて吸入口を開く。
4.動作
次に、実施例1の動作について可変動弁装置50を中心に4つの動作状態に分けて説明する。なお、以下の説明において、「エンジン本体30の回転数」および「クランク軸37の回転数」を同義として適宜記載する。
4.1 エンジン本体30が停止しているとき
エンジン本体30が停止しているときは、クランク軸37が回転していない。よって、カム軸スプロケット62とカム軸51は静止している。支軸77も静止しており、ウエイト部材76も軸心x回りに回転していないので、ウエイト部材76には遠心力が生じていない。
ウエイト部材76は、ねじりコイルバネ78による付勢力によって操作軸81の外周面に当接している(図10(a)参照)。可動部材71は、許容位置に変位しており(図8(a)参照)、その全体がカム軸51の内部に収まっている。すなわち、逆回転阻止機構54は許容状態であり、第2カム部材53はカム軸51に対して逆方向Bに相対回転可能である。状態保持機構55は逆回転阻止機構54を許容状態で弾性保持している(図10(a)参照)。
4.2 第1カム部材52によって吸気バルブ41を開閉しているとき
クランク軸37の回転に連動して、カム軸スプロケット62、支軸77、カム軸51および第1カム部材52など(以下、適宜に「カム軸51等」と略記する)が一体に回転する。支軸77の回転により、ウエイト部材76は軸心x回りに回転する。ウエイト部材76の軸心x回りの回転に連動して、操作軸81は軸心x周りに回転する。この操作軸81の回転はカム軸51と同期している。また、可動部材71はカム軸51と同期して回転する。
クランク軸37(エンジン本体30)の回転数が比較的に低い低回転領域では、カム軸51等の回転数も比較的に低い。ウエイト部材76に発生する遠心力は、ねじりコイルバネ78の付勢力と状態保持機構55による抵抗力の和に比べて小さい。この結果、ウエイト部材76は操作軸81の外周に当接する位置に維持される(図10(a)参照)。操作軸81はカム軸51に対して相対回転することなく、カム軸51と同期して回転する。
よって、操作軸81と可動部材71は相対的な位置関係を変えることなく、カム軸51等と同期して回転しており、可動部材71は許容位置に変位したままである(図8(a)参照)。 すなわち、逆回転阻止機構54は許容状態に保たれ、第2カム部材53がカム軸51に対して逆方向Bに相対回転することを許容している。
この場合、第2カム部材53はカム軸51によってカム軸回転方向Fに回転駆動されず、ロッカーアーム91を揺動駆動しない。仮に第2カム部材53がローラ93を押し上げようとしても、第2カム部材53のノーズ部52aがローラ93から逆方向Bへの回転力を受けて、第2カム部材53がカム軸51に対して逆方向Bに相対回転してしまうからである。
この場合は、カム軸51と一体に回転する第1カム部材52がロッカーアーム91を揺動駆動する。ロッカーアーム91は吸気バルブ41を開閉させる。吸気バルブ41は、第1カム部材52の横断面形状に基づく正規のバルブリフト量およびバルブタイミングで開閉する。以下では、「バルブリフト量およびバルブタイミング」を適宜「バルブリフト」と略記し、例えば「正規のバルブリフト」のように記載する。
4.3 第1カム部材52から第2カム部材53に切り替わって吸気バルブ41を開閉しているとき
クランク軸37(エンジン本体30)の回転数が高い高回転領域になると、カム軸51等の回転数も比較的に高くなる。ねじりコイルバネ78の付勢力と状態保持機構55による保持力の合成に対して遠心力が上回ると、ウエイト部材76が支軸77回りにカム軸スプロケット62の周縁側に回転し始める。ウエイト部材76の支軸77回りの回転に連動して、操作軸81はカム軸51に対して相対回転し始め、可動部材71は阻止位置へ前進移動し始める。これら逆回転阻止機構54の一連の動作に先立って係合ピン87が第1凹部81dから離脱し、状態保持機構55の保持力は低下するので、その分、逆回転阻止機構54の一連の動作速度は高められている。
ウエイト部材76がリブ79に当接するとウエイト部材76の支軸77回りの回転が停止する(図10(b)参照)。操作軸81のカム軸51に対する相対回転は、係合ピン87が第2凹部81eに係合する位置で停止する。可動部材71のカム軸51に対する前進移動は阻止位置で停止する(図8(b)参照)。ウエイト部材76、操作軸81および可動部材71はそれぞれ停止した位置で、カム軸51と同期して回転する。
可動部材71の阻止位置への変位に伴い、可動部材71の前端部71aがカム軸51の外周面の外側に突出する。この際、上述したように、可動部材71が当接部材73と干渉するおそれは極力抑制されている。また、仮に図9に示すように前端部71aが傾斜面部73cに接触しても、前端部71aが傾斜面部73cを押さえつけた状態でつれ回りすることなく、円滑に阻止位置に変位する。このため、第2カム部材53が不十分な状態でカム軸回転方向Fに回転駆動されることがなく、正規のバルブリフトから外れた異常なバルブリフトで吸気バルブ41を開閉させることがない。
可動部材71が阻止位置に変位すると、可動部材71の前端部71aは当接部材73のカム軸回転方向F背面側に当接(衝突)する。このとき、可動部材71はその長手方向の軸心周りに若干自転可能に操作軸81と係合しているため、可動部材71の接触面部71bは当接部材73の接触面部73bに合わせて追従回転する。これにより、接触面部71bと接触面部73bとは確実に面接触する。
また、可動部材71が当接部材73と当接(衝突)するとき、当接部材73はカム軸回転方向Fに大きな力を受ける。この力は、第2カム部材53をカム軸51に対してカム軸回転方向Fに先行回転させるように働く。しかし、第2カム部材53がカム軸51に対してカム軸回転方向Fに相対回転することは、一方向クラッチ65によって阻止されている。したがって、当接(衝突)する際に当接部材73が受ける衝撃によって、第2カム部材53がカム軸51に対して先行回転することはない。
このように可動部材71が当接部材73と当接するとその瞬間に、第2カム部材53はカム軸51に対してカム軸回転方向Fおよび逆方向Bのいずれにも相対回転不能となる。そして、当接した直後から、第2カム部材53はカム軸51によってカム軸回転方向Fに回転駆動される。そして、第1カム部材52に替わって、第2カム部材53がロッカーアーム91を揺動駆動し始める。
ここで、ローラ93を第2カム部材53が押し上げる際には、第2カム部材53は逆方向Bの回転力を受ける。しかし、可動部材71が当接部材73をカム軸回転方向Fに押し回しているため、逆方向Bの回転力を受けても、第2カム部材53はカム軸51に対して逆方向Bに相対回転しない。また、押し上げたローラ93が下降する際には、第2カム部材53はカム軸回転方向Fの回転力を受ける(図11参照)。しかし、第2カム部材53がカム軸51に対してカム軸回転方向Fに相対回転することは、一方向クラッチ65によって阻止されている。このため、カム軸回転方向Fの回転力を受けても第2カム部材53はカム軸51に対して先行回転しない。
第2カム部材53によって揺動駆動されたロッカーアーム91は、吸気バルブ41を開閉させる。吸気バルブ41は、第2カム部材53の横断面形状に基づく正規のバルブリフトで開閉する。
4.4 第2カム部材53から第1カム部材52に切り替わって吸気バルブ41を開閉しているとき
クランク軸37(エンジン本体30)の回転数が高回転領域から低回転領域になると、遠心力が小さくなり、遠心力と状態保持機構55による抵抗力との合成を、ねじりコイルバネ78の付勢力が上回る。この付勢力によってウエイト部材76は支軸77回りにカム軸スプロケット62の中央に回転し始める。このウエイト部材76の支軸77回りの回転に連動して、操作軸81は軸心x回りにカム軸51に対して相対回転し、可動部材71は許容位置に後退移動する。これら一連の動作に先立って、係合ピン87が第2凹部81eから離脱し、その直後に状態保持機構55の抵抗力は低下しているため、一連の動作速度がその分高められている。
ウエイト部材76が操作軸81に当接するとウエイト部材76の支軸77回りの回転が停止する(図10(a)参照)。これに連動して、操作軸81のカム軸51に対する相対回転は、係合ピン87が第1凹部81dに係合する位置で停止する。また、可動部材71の後退移動は許容位置で停止する(図8(a)参照)。ウエイト部材76、操作軸81および可動部材71はそれぞれ停止した位置で、カム軸51と同期して回転する。
これにより、逆回転阻止機構54は阻止状態から許容状態に切り替わる。図12に示すように、阻止状態から許容状態に切り替わるときのカム軸51の回転数は、逆回転阻止機構54が許容状態から阻止状態に切り替わるときのカム軸51の回転数に比べて低い。
当接部材73は可動部材71に対して逆方向Bに相対回転可能になると同時に、第2カム部材53はカム軸51に対して逆方向Bに相対回転可能になる。よって、第2カム部材53に替わって第1カム部材52がロッカーアーム91を揺動駆動し始める。吸気バルブ41は、第1カム部材52の横断面形状に基づく正規のバルブリフトで開閉する。
このように、実施例1に係る可変動弁装置50によれば、第2カム部材53のカム軸51に対する相対回転を阻止可能な逆回転阻止機構54と、第2カム部材53がカム軸51に対してカム軸回転方向Fに相対回転することを阻止する一方向クラッチ65とを備えているので、逆回転阻止機構54が第2カム部材53の相対回転を阻止する一動作で、第2カム部材53はカム軸51に対して相対回転不能になる。言い換えれば、第1カム部材52から第2カム部材53に切り替わる際に、第2カム部材53がカム軸51に対して相対回転可能となり得ない。したがって、第1カム部材52から第2カム部材53に切り替わる際、安定、確実に正規のバルブリフトで吸気バルブ41を開閉させることができる。
これにより、実施例1に係るエンジン本体30は低回転領域から高回転領域にかけて動力を効率よく発生させ続けることができる。また、実施例1に係る車両によれば、低回転領域から高回転領域にかけて効率よく走行することができる。
また、一方向クラッチ65を備えていることで、逆回転阻止機構54は第2カム部材53をカム軸回転方向Fに押し回し可能な構成で足りる。言い換えれば、可動部材71が当接部材73と固定的に連結可能な構成(たとえば連結孔との係合)を採用せずとも、当接部材73の一側面に片当たり状態で当接可能に、あるいは、当接部材73を引っ掛けた状態で係止可能に可動部材71を構成すれば足りる。また、可動部材71は複数としてもよいが、単一でも足りる。これにより、逆回転阻止機構54の構造を簡易にすることができる。
さらに、たとえば可動部材71が連結孔と係合する場合に比べて、可動部材71の阻止位置への変位は格段に自由度が増す。このため、可動部材71は円滑に阻止位置に変位することができる。さらに、当接部材73の突起部73aはカム軸51に向かって先細りした形状を呈する。このため、可動部材71が阻止位置へ変位する際に当接部材73が干渉することを極力回避できる。
また、可動部材71をカム軸51の直径相当の長さを有する棒状物とし、カム軸51の内部に径方向に進退移動可能に設けているので、逆回転阻止機構54を効果的に小型化することができる。
また、当接部材73は第2カム部材53に一体に設けられているので、当接部材73を堅牢に構成することができる。また、可動部材71と当接部材73とはそれぞれ互いに面接触する接触面部71b、接触面部73bを有しているので、可動部材71と当接部材73が当接するときの衝撃を分散して受け止めることができる。これにより、可動部材71および当接部材73の耐久性を向上させることができる。
ウエイト部材76を支軸77回りに回転可能に設けることにより、ウエイト部材76をカム軸51と直交する一平面内で軸心x周りおよび軸心y回りにそれぞれ回転させることができる。さらに、リブ79および操作軸81によってウエイト部材76の可動域をカム軸スプロケット62の周縁より内側に制限している。これらにより、ウエイト部材76の可動域をより小さい範囲に制限でき、駆動機構75を小型化することができる。
また、状態保持機構55を備えることにより、逆回転阻止機構54は阻止状態と許容状態との間で迅速、かつ、一気に切り替わることができる。これにより、可動部材71の進退移動の速度を高めることができ、より円滑に可動部材71を阻止位置に変位させることができる。
また、逆回転阻止機構54と状態保持機構55とは、逆回転阻止機構54が許容状態から阻止状態に切り替わるときのカム軸51の回転数が、許容状態から阻止状態に切り替わるときのカム軸51の回転数に比べて低くなるように設計選択されている。これにより、第1カム部材52と第2カム部材53との間で切り替えを必要以上に頻繁に繰り返すことを回避することができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。なお、実施例2は自動二輪車両1およびエンジン本体30の構成は実施例1と同様であるので説明を省略し、実施例2の可変動弁装置50のみ説明する。なお、実施例1と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
図13は実施例2における可変動弁装置の要部の斜視図であり、図14は実施例2における可変動弁装置の要部の断面図であり、図15は実施例2における可変動弁装置の要部の分解斜視図である。図16はカム軸方向から見た可変動弁装置の一部断面を含む平面図であり、図17は可動部材と当接部材との位置関係を示す図であり、図18は可動部材と当接部材の分解斜視図である。以下では、説明の便宜上、可変動弁装置50は、吸気バルブ41のみを開閉するものとして説明する。
可変動弁装置50は、カム軸51と第1カム部材52と第2カム部材53と逆回転阻止機構54と状態保持機構55とロッカーアーム機構56を備えている。このうち、カム軸51、第1カム部材52、第2カム部材53およびロッカーアーム機構56の構成は、実施例1と同じであるので省略し、逆回転阻止機構54および状態保持機構55の構成を説明する。
5.1 逆回転阻止機構54
実施例2における逆回転阻止機構54は可動部材101と当接部材103と駆動機構105とを備えている。以下では逆回転阻止機構54を、可動部材101および当接部材103と、駆動機構105とに分けて説明する。
5.1.1 逆回転阻止機構54〜可動部材101および当接部材103
図14に示すように、可動部材101はカム軸51の軸心xから偏心した位置に設けられている。可動部材101は比較的に長い棒状物である。可動部材101は軸心xと平行に設けられている。可動部材101はカム軸スプロケット62、フランジ部61、およびカム軸51を貫通している。カム軸51のカム軸スプロケット62側の端部は外径が拡大した鍔部51cが形成されており、可動部材101はこの鍔部51cを貫通している。可動部材101はカム軸スプロケット62、フランジ部61およびカム軸51と同期して回転するように設けられている。さらに、可動部材101はカム軸51に対して、軸心xと平行な方向に進退移動可能に設けられている。
可動部材101は進退移動することによって、当接部材103と当接しない許容位置(図14において実線で示す可動部材101の位置)と、当接部材103と当接可能な阻止位置(図14において二点鎖線で示す可動部材101の位置)とにわたって変位する。
図15に示すように、可動部材101の前端部は円柱形状を呈する。可動部材101の前端部の外周面は、当接部材103と当接するための接触面部として機能する。
図14に示すように、当接部材103は、第2カム部材53のカム軸スプロケット62側に一体に連結されている。当接部材103は鍔部51cと略同じ外径を有する大径部103aを有する。大径部103aにはカム軸51が挿入される貫通孔が形成されている。さらに、大径部103aのカム軸スプロケット62側には凹部103bが形成されている。
図17、図18を参照する。凹部103bには、カム軸51に向かって突出する突起部103cが隆起して形成されている。突起部103cのカム軸回転方向F背面側には接触面部103dが形成されている。接触面部103dは、可動部材101の接触面部と面接触可能に湾曲している。接触面部103dは、突起部103cの先端にかけて形成されている。突起部103cの先端はカム軸51の外周面に近接している。
可動部材101が阻止位置に変位しているとき(図14の二点鎖線)、可動部材101は当接部材103と当接した状態でカム軸51と同期して回転する。ここで、「当接した状態」とは、可動部材101の前端部のカム軸回転方向F前面側が、突起部103cのカム軸回転方向F背面側に片当たりしている状態である。このとき、可動部材101の接触面部と当接部材103の接触面部103dとが互いに面接触している。
可動部材101は当接部材103をカム軸回転方向Fに押し回す。これにより、第2カム部材53はカム軸51に対して逆方向Bに相対回転することが阻止されて、カム軸回転方向Fに押し回される。
他方、可動部材101が許容位置に変位しているときは(図14の実線)、可動部材101は当接部材103と当接しない。このため、第2カム部材53はカム軸51に対して逆方向Bに相対回転可能であり、カム軸51によって回転駆動されない。
また、可動部材101が阻止位置に変位する際の動作については、以下の通りである。可動部材101はカム軸51と同期して回転しつつ、任意のタイミングで阻止位置に変位する。このため、当接部材103から見ると可動部材101が突出する可能性がある凹部103bの領域は、軸心x回りに360度にわたる環状の領域である。これに対して、図17、図18に示されるように、可動部材101が当接部材103と干渉することなく阻止位置に変位可能な範囲は軸心x回りに約270度の広範囲にわって形成されている。このため、可動部材101が阻止位置に円滑に変位することができる。
5.1.2 逆回転阻止機構54〜駆動機構105
次に、上述した可動部材101を進退移動させる駆動機構105の構成について説明する。図15を参照する。駆動機構105は、カム軸スプロケット62の一方面に連結されたブラケット111を備えている。ブラケット111の両側には一対の支持アーム部111aが突出して形成されている。一対の支持アーム部111aの間には、支軸113が回転可能に保持されている。支軸113には、ウエイト部材115が回転可能に支持されている。ウエイト部材115のカム軸スプロケット62側には、ブロック形状を呈するウエイト主部115aを有する。
ブラケット111には、バネ受け突起111bが突出して形成されている。バネ受け突起111bには引張りバネ117の一端が係止されている。引張りバネ117の他端はウエイト部材115に係止されている。引張りバネ117はウエイト主部115aが支軸113回りに軸心xに近づく方向にウエイト部材115を付勢している。ウエイト主部115aの上端には両側方に延びる一対のストッパ片115bが形成されている。各ストッパ片115bがそれぞれ支持アーム部111aに受け止められることで、ウエイト部材115が支軸113回りに正逆方向に回転することがそれぞれ制限される。
ウエイト主部115aのカム軸スプロケット62側とは反対側には2つのアーム部115cが連続して形成されている。各アーム部115cは、その間に可動部材101を挿入可能な間隔をあけて配置されている。各アーム部115cは軸心xに近づく方向に屈曲しており、その端部にはそれぞれ所定の深さを有するスリット溝115dが形成されている。各スリット115dには操作ピン119の両端が挿入されており、スリット115dの深さ方向に沿って操作ピン119が摺動可能に挿入されている。操作ピン119は可動部材101の外周面を貫通しており、可動部材101を回転可能に保持している。
そして、カム軸スプロケット62が軸心x回りに回転するとき、これと一体にブラケット111および支軸113が軸心x回りに回転する。これにより、ウエイト部材115は軸心x回りに回転する。このとき、ウエイト部材115にはカム軸スプロケット62の半径方向外向きに遠心力が発生する。
この遠心力はウエイト部材115を支軸113回りにウエイト主部115aが軸心xから遠ざかる方向に回転させるように働く。ウエイト部材115の支軸113回りの回転は、この遠心力と、引張りバネ117の付勢力と、後述する状態保持機構55による保持力の含めた三者の関係で決まる。
ここで、図14において二点鎖線で示されるウエイト部材115のように、ウエイト部材115が支軸113回りでウエイト主部115aが軸心xから遠ざかる方向に回転すると、操作ピン119がスリット115dを摺動しつつ、カム軸スプロケット62に近づく方向に前進移動する。操作ピン119の前進移動に連動して、可動部材101は当接部材103側へ前進し、阻止位置に変位する(図14において二点鎖線で示される可動部材101)。
他方、図14において実線で示されるウエイト部材115のように、ウエイト部材115が支軸113回りでウエイト主部115aが軸心xに近づく方向に回転すると、操作ピン119がスリット115dを摺動しつつ、カム軸スプロケット62側から離れる方向に後退移動する。操作ピン119の後退移動に連動して、可動部材101は当接部材103側から後退し、許容位置に変位する(図14において実線で示される可動部材101)。このようにして、可動部材101は阻止位置と許容位置とにわたって変位する。
上述したように駆動機構105は、ブラケット111、支軸113、ウエイト部材115、引張りバネ117、操作ピン119とを備えて構成されている。また、引張りバネ117はこの発明における付勢機構に相当する。
5.2 状態保持機構55
実施例2における状態保持機構55は、可動部材101に直接的に保持力を与えることで逆回転阻止機構54の状態を保持する。以下に具体的な状態保持機構55の構成を説明する。
状態保持機構55は、角ボス部86と、係合ピン87と、圧縮コイルバネ88と止めネジ89とを備えて構成されている。角ボス部86はその前端が可動部材101の外周面に近接して対向にするように配置されている。係合ピン87は圧縮コイルバネ88によって可動部材101の外周面に向かう方向に付勢されている。
可動部材101の外周面には、進退方向に並ぶ第1凹部101aと第2凹部101bが形成されている。第1凹部101aは、可動部材101が許容位置にあるときに係合ピン87と対向するように配置されている。第2凹部101bは、可動部材101が阻止位置にあるときに係合ピン87と対向するように配置されている。
そして、逆回転阻止機構54が許容状態にあるとき、係合ピン87は第1凹部101aに係合している。そして、逆回転阻止機構54が阻止状態にあるときは、係合ピン87は第2凹部101bに係合している。このように、状態保持機構55は逆回転阻止機構54を阻止状態および許容状態でそれぞれ弾性保持しており、逆回転阻止機構54が阻止状態と許容状態との間で切り替わる動作に対して抵抗している。逆回転阻止機構54はこの発明における状態保持機構に相当する。
6.動作
次に、実施例2の動作について、主に逆回転阻止機構54および状態保持機構55の中心に、4つの動作状態に分けて説明する。
6.1 エンジン本体30が停止しているとき
エンジン本体30が停止しているときは、クランク軸37が回転していない。よって、カム軸スプロケット62とカム軸51は静止している。ブラケット111および支軸113も静止しており、ウエイト部材115も軸心x回りに回転していないので、ウエイト部材115には遠心力が生じていない。ウエイト部材115は、引張りバネ117による付勢力によってウエイト主部115aが軸心xに近づく方向に支軸113回りに回転した位置にある(図14において実線で示されるウエイト部材115)。
可動部材101は許容位置に変位している(図14において実線で示される可動部材101)。すなわち、逆回転阻止機構54は許容状態であり、第2カム部材53はカム軸51に対して逆方向Bに相対回転可能である。状態保持機構55は逆回転阻止機構54を許容状態で弾性保持している。
6.2 第1カム部材52によって吸気バルブ41を開閉しているとき
クランク軸37の回転に連動して、カム軸スプロケット62、ブラケット111、支軸113、カム軸51および第1カム部材52など(以下、適宜に「カム軸51等」と略記する)が一体に回転する。これにより、ウエイト部材115、操作ピン119、可動部材101は、カム軸51等と同期して軸心x回りに回転する。
クランク軸37(エンジン本体30)の回転数が比較的に低い低回転領域では、ウエイト部材115に発生する遠心力による力は、引張りバネ117の付勢力と状態保持機構55による抵抗力の和に比べて小さい。この結果、ウエイト部材115は支軸113回りにウエイト主部115aが軸心xに近づく方向に回転した位置に維持される。この結果、可動部材101は許容位置に変位したままである。
すなわち、逆回転阻止機構54は許容状態に保たれ、第2カム部材53がカム軸51に対して逆方向Bに相対回転することを許容している。この場合は、第1カム部材52がロッカーアーム91を揺動駆動する。吸気バルブ41は、第1カム部材52の横断面形状に基づく正規のバルブリフトで開閉する。
6.3 第1カム部材52から第2カム部材53に切り替わって吸気バルブ41を開閉しているとき
クランク軸37(エンジン本体30)の回転数が高い高回転領域になると、引張りバネ117の付勢力と状態保持機構55による抵抗力の合成に比べ、遠心力の方が大きくなる。この遠心力によってウエイト部材115は支軸113回りに回転し始める。ウエイト部材115の支軸113回りの回転に連動して、操作ピン119はカム軸スプロケット62に近づく方向に前進移動し、この操作ピン119の前進移動に連動して可動部材101は阻止位置に前進移動する(図14において二点鎖線で示されるウエイト部材115および可動部材101)。
可動部材101の阻止位置への変位に伴い、可動部材101の前端部が当接部材103の凹部103bに突出する。この際、上述したように、可動部材101が当接部材103と干渉するおそれは極力抑制されている。
可動部材101と接触面部103dとが当接するとその瞬間に、第2カム部材53はカム軸51に対してカム軸回転方向Fおよび逆方向Bのいずれにも相対回転不能となり、当接した直後から、第2カム部材53はカム軸51によってカム軸回転方向Fに回転駆動される。そして、第1カム部材52に替わって、吸気バルブ41を開閉させる。
6.4 第2カム部材53から第1カム部材52に切り替わって吸気バルブ41を開閉しているとき
クランク軸37(エンジン本体30)の回転数が高回転領域から低回転領域になると、遠心力が小さくなり、遠心力と状態保持機構55による抵抗力との合成に比べ、引張りバネ117の付勢力の方が大きくなる。この付勢力によってウエイト部材115が支軸113回りに回転し始める。このウエイト部材115の支軸113回りの回転に連動して、可動部材101は許容位置に後退移動する(図14において実線で示されるウエイト部材115および可動部材101)。
これにより、逆回転阻止機構54は阻止状態から許容状態に切り替わる。当接部材103は可動部材101に対して逆方向Bに相対回転可能になると同時に、第2カム部材53はカム軸51に対して逆方向Bに相対回転可能になる。これにより、第2カム部材53に替わって第1カム部材52によって吸気バルブ41を開閉させる。
このように、実施例2に係る可変動弁装置50によれば、第2カム部材53のカム軸51に対する相対回転を阻止可能な逆回転阻止機構54と、第2カム部材53がカム軸51に対してカム軸回転方向Fに相対回転することを阻止する一方向クラッチ65とを備えている。このため、実施例1と同様に、第1カム部材52から第2カム部材53に切り替わる際、安定、確実に正規のバルブリフトで吸気バルブ41を開閉させることができる。
また、可動部材101はカム軸51の軸心xから偏心して設けられ、阻止位置と許容位置との間をカム軸51の軸心xと平行な方向に進退移動する。これにより、カム軸51の回転によって可動部材101自体に発生する遠心力はカム軸51の径方向であり、可動部材101が進退移動する方向(軸心xと平行な方向)の成分の成分を含まない。よって、カム軸51の回転によらず、正確に可動部材101をカム軸51に対して進退移動させることができる。
また、可動部材101の前端部を円柱形状とするとともに、当接部材103の接触面部103dを湾曲させているので、可動部材101と当接部材103とを好適に面接触により当接させることができる。
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した各実施例1、2では、説明の便宜上、可変動弁装置50は吸気バルブ41を開閉させる場合のみを説明したが、これに限られない。すなわち、可変動弁装置50が排気バルブ42を開閉させるように構成してもよい。この場合、単一のカム軸51に吸気バルブ41用のカム部材と排気バルブ42用のカム部材とを設けるように構成してもよい。
(2)上述した各実施例1、2では、当接部材73(103)は、ともに突起部73a(103c)を有していたが、これに限られない。
(2a)たとえば、当接部材を、軸心xの周方向に沿って長尺状に形成されている長孔を有するように変更してもよい。この場合、可動部材71(101)を、当接部材に形成された長孔に係合する阻止位置に変位可能に構成することが好ましい。このような構成では、可動部材71(101)は阻止位置に変位するとともに、長孔のカム軸回転方向F前面側の端縁で当接することで、第2カム部材53をカム軸51に対して逆方向Bに相対回転することを阻止することができる。したがって、上述した実施例1、2と同様の作用効果を奏する。また、当接部材に形成する長孔の周方向の長さを適宜に設計、選択することで、可動部材71(101)は円滑に阻止位置に変位させるように構成することができる。
(2b)あるいは、当接部材を、可動部材71(101)の外径より若干大きい径で形成された連結孔を有するように変更してもよい。この場合、可動部材71(101)は当接部材に形成された連結孔に係合する阻止位置に変位可能に構成される。このような構成では、可動部材71(101)は阻止位置に変位することによって連結孔と係合し、第2カム部材53をカム軸51に対して逆方向Bおよびカム軸回転方向Fの双方に相対回転することを阻止することができる。したがって、上述した実施例1、2と同様の作用効果を奏する。さらに、可動部材71(101)が連結孔に係合することで、第2カム部材53がカム軸51に対してカム軸回転方向Fに相対回転することも阻止するように働くので、一方向クラッチ65にかかる負荷を軽減することができる。
(2c)さらに、当接部材を、(2a)で説明した長孔と、(2b)で説明した連結孔とを有するように変更してもよい。この場合には、可変動弁装置50は、長孔に係合可能な可動部材71(101)と、連結孔に係合可能な可動部材71(101)とを別個に備えるように構成される。ここで、各可動部材71(101)が長孔および連結孔に係合する際には、先に一の可動部材71(101)を長孔に係合させ、その後に他の可動部材71(101)を連結孔に係合させるように構成することが好ましい。各可動部材71(101)をそれぞれ阻止位置に円滑に変位させることができるからである。
(3)上述した各実施例1、2では、状態保持機構55は逆回転阻止機構54を許容状態と阻止状態とで保持するように構成していたが、これに限られない。たとえば、逆回転阻止機構54を許容状態でのみ保持するように状態保持機構55を構成してもよい。この構成によれば、可動部材71(101)を許容位置から阻止位置へ変位する速度が比較的に高められる。このため、可動部材71(101)を円滑に許容位置から阻止位置に変位させることができる。また、逆に逆回転阻止機構54を阻止状態でのみ保持するように状態保持機構55を構成してもよい。なお、これらの変更は、実施例1で説明した第1凹部81d、第2凹部81eのいずれかのみを操作軸81に形成することで実現できる。あるいは、実施例2で説明した第1凹部101a、第2101bのいずれかのみを可動部材101に形成することで実現できる。
(4)上述した実施例1では、状態保持機構55は直接的に操作軸81に保持力を与える構成であり、上述した実施例2では、可動部材101に直接的に保持力を与える構成であったが、これに限られない。すなわち、実施例1では、ウエイト部材76または可動部材71に直接的に保持力を与えるように変更してもよい。また、実施例2では、ウエイト部材115または操作ピン119に直接的に保持力を与えるように変更してもよい。
(5)上述した各実施例1、2では、係合ピン87が操作軸81の第1凹部81d、第2凹部81e、または、可動部材101の第1凹部101a、第2凹部101bに係合するように説明したが、これら第1凹部81d、第2凹部81e、第1凹部101aおよび第2凹部101bの各形状は適宜に設計、選択することができる。たとえば、第1凹部81d等、第1凹部101a等の形状を、「V」の字型、「U」の字型、あるいは、球状の形状を呈するように構成してもよい。
(6)上述した各実施例1、2では、第1カム部材52および第2カム部材53に対してロッカーアーム91を共用するように構成したが、これに限られない。たとえば、第1カム部材52と第2カム部材53とに対してそれぞれ専用のロッカーアームを別個に備えるように変更してもよい。
(7)上述した各実施例1、2では、エンジン装置20の構造は特に説明しなかったが、可変動弁装置50を備えるエンジン装置20であればよい。たとえば、SOHC(シングルオーバーヘッドカムシャフト)構造、SV(サイドバルブ)構造、OHV(オーバーヘッドバルブ)構造、DOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)構造のエンジン装置であってもよい。
(8)上述した各実施例1、2では、ロッカーアーム機構56を備える可変動弁装置50を説明したが、これに限られない。ロッカーアーム機構56を省略して、第1カム部材52、第2カム部材53が直接、吸気バルブ41、排気バルブ42のステムエンド47、48に当接する構造の可変動弁装置50であってもよい。
(9)上述した各実施例1、2では、車両として自動二輪車について説明したが、これに限られない。たとえば、可変動弁装置50は自動三輪車両、自動四輪車両あるいは小型船舶のエンジン装置に適用することができる。
(10)上述した各実施例1、2および上記(1)から(10)で説明した各変形実施例については、さらに各構成を他の変形実施例の構成に置換または組み合わせるなどして適宜に変更してもよい。