JP5192824B2 - 改良された自己融着ループ面ファスナー - Google Patents
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Description
通常、布製面ファスナー、例えばループ面ファスナーは、編成または製織された基布の地組織とその上に形成されるループ糸からなり、地組織を形成する繊維とループ糸は地組織の裏面に付与されるバックコート層、代表的にはポリウレタン層により固定される。かかる構造により、ループ糸は地組織に対して確実に固定され、長期間の使用や洗濯にも耐えることができる。
図1は、従来のループ面ファスナーにおける地組織糸(地経糸および地緯糸)とループ糸の配置を示す平面斜視図である。
図1において地経糸1、2、3、4、5・・・と地緯糸11、12、13、14・・・は通常の織組織の面ファスナー基布を構成する。マルチフィラメントからなるループ糸L1、L2は、ループ(ループ係合素子)P1、P2、P3、P4を形成しつつ、隣接する地経糸と跨ぐように交差するように配置される。すなわち、図1に示すように、ループ糸L2は、地経糸5の左側から基布表面上に突出し、ループP4を形成した後、地経糸5の右側から、すなわち、地経糸5と交差した後、地緯糸の下へと延びる。その後ループ糸L2は、地緯糸との交差点で交互に浮沈しながら地経糸5の右側を地経糸5に沿って延びる。次いで、ループ糸L2は地経糸5の右側から再び基布表面上に突出してループP3を形成し、地経糸5の左側から(地経糸5と交差して)地緯糸13の下へと延びる。かかる交差構造を設けることで、地経糸とループ糸とが接触する部分でループ糸が拘束を受け、ループの位置が安定すると同時に、地緯糸をバインダー繊維とした場合には、溶融部分においてループ糸に溶融した樹脂がよく進入すると従来考えられていた。
しかし実際に図1の構造、すなわち、ループ糸が地経糸と跨ぐように交差する構造の自己融着ループ面ファスナーは、バインダー繊維によるループ糸の固定が不十分で、係合/脱着耐久性が劣っていた。
なお、実際のループ面ファスナーとしては、その両端部にはマルチフィラメントループ糸が存在していないような構造が好ましい。例えば織物の両端それぞれ2〜6mmはマルチフィラメントループ糸が存在せず、経糸はマルチフィラメントループ糸が存在しない地経糸のみから構成されているのが、強度等の点で好ましい。
図1のマルチフィラメントループ糸L2は、ループ部分P3、P4を除く地組織部分においては地経糸5(斜線にて示す)と引き揃えられた状態で存在している。従って、マルチフィラメントループ糸L2と地経糸5は、地緯糸との各交差点で密接して存在する。地緯糸であるバインダー繊維が溶融すると、溶融した樹脂は両繊維に移行するのでマルチフィラメントループ糸L2へ進入する量が少なくなる。更に、マルチフィラメントループ糸L2は、隣り合う2本の地経糸のいずれか一方と地緯糸に対する浮沈状態が同一であるため、バインダー繊維を溶融しても、浮沈状態が同一である地経糸と接する側のマルチフィラメントループ糸L2は殆ど固定されず、必然的にループの固定も劣ることとなる。
鞘成分は低融点(90〜220℃)または低軟化点(90〜220℃)ポリマーであるのが好ましく、非晶性ポリエステルであるのがより好ましい。非晶性ポリエステルとしては、繊維の物性、品質、繊維形成性、コストの点からテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールを主成分とする共重合ポリエステルが好ましく、イソフタル酸をジカルボン酸成分の15〜60モル%、好ましくは20〜50モル%共重合したポリエチレンテレフタレートが好適である。
芯成分は、高軟化点(160〜300℃)または高融点(160〜300℃)ポリマーであるのが好ましく、鞘成分ポリマーとの耐剥離性の点でポリエステルであるのがより好ましく、なかでもバインダー繊維間の接着性が良好であるので、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であるポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルであるのがさらに好ましい。そして、芯成分ポリマーの融点又は軟化点が鞘成分ポリマーの融点又は軟化点よりも30℃以上高いポリマーの組み合わせが好ましい。芯鞘比率は芯/鞘=75/25〜30/70(断面上の面積比)が好ましい。芯鞘比率が75/25を超えると融着量が少なく固定が不十分となる場合がある。一方、芯鞘比率が30/70未満の場合は、融着量が多く、柔軟性が低下し、さらに芯が細くて基布の引裂けが生じやすい場合がある。
また、地経糸は、製織性向上のため糸に撚りをかけたものがよく、さらに面ファスナー形態安定のため、S撚りとZ撚りの地経糸を交互に配置するのが好ましい。
(1)ループ引抜力
ニードル針にループ束を引掛け、基布からの引抜抵抗を定速伸長型引張試験機にて測定した。引張試験の引張速度は300mm/分で、チャック間距離を50mmにして、20℃の温度条件下で測定した。
(2)バインダー繊維を構成するポリマーの融点
結晶性ポリマーの場合、メトラー社示差走査熱量測定装置(DSC−20)を用い、試料を窒素雰囲気下20℃/minの速度で昇温した際の吸熱ピークを示す温度を測定した。
(3)バインダー繊維を構成するポリマーの軟化点
非晶性ポリマーの場合、ポリマーチップ又は同ポリマーが表面に存在している繊維を所定温度の熱風乾燥機にいれ、0.1kg/cm2の圧力を10分間印加した際、チップ又は繊維間の境界が判定できない程度にチップ同志又は繊維同志が融着する最低の温度を測定した。
地経糸として下記ポリエチレンテレフタレート繊維、地緯糸として下記バインダー繊維、マルチフィラメントループ糸として下記ポリエチレンテレフタレート繊維を使用して、図2に示した地組織を有する巾1インチの面ファスナー中間体を作製した。経糸密度(経糸の一部として使用したマルチフィラメントループ糸を含む)は180本/インチであった。また、巾方向両端部には、マルチフィラメントループ糸を含まない15本の地経糸のみからなる耳部を設けた。緯糸密度は47本/インチであり、マルチフィラメントループ糸は地経糸(マルチフィラメントループ糸を含む)5本に1本の割合で均等に織物に挿入した。したがって、マルチフィラメントループ糸の密度は30本/インチである。ループは、マルチフィラメントループ糸が緯糸5本を浮沈するごとに、ループ糸が緯糸上に浮いた個所で形成した。
地経糸
ポリエチレンテレフタレート繊維
全繊度:167dtex
フィラメント数:48本
地緯糸
芯成分:ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)
鞘成分:イソフタル酸25モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(軟化点:190℃)
芯/鞘比率:70/30
全繊度:167dtex
フィラメント数:48本
マルチフィラメントループ糸
ポリエチレンテレフタレート繊維
全繊度:265dtex
フィラメント数:10本
該面ファスナー中間体を温度197℃で60秒間熱処理し、本発明の自己融着ループ面ファスナーを作製した。
得られたループ面ファスナーのループ引抜力は、1500g/ループであり、従来の面ファスナーの1.5倍と大きく、ループ糸が強固に固定されていた。
得られたループ面ファスナーとフック面ファスナー(クラレファスニング社製、A86900)との係合/剥離試験(JIS L3416準拠)を行ったところ、繰返し係合/剥離5000回後においてもループ抜け、毛羽立ちはみられず、強度に優れていた。
図1に示した地組織に変更した以外は実施例1と同様にして、ループ糸と地経糸が交差する面ファスナーを得た。
得られたループ面ファスナーのループ引抜力は、1000g/ループであり、実施例1のループ面ファスナーに比べ低いものであった。
得られたループ面ファスナーとフック面ファスナー(クラレファスニング社製、A86900)との係合/剥離試験(JIS L3416準拠)を行ったところ、繰返し係合/剥離5000回後で、マルチフィラメントループ糸のループ根元部分でのループ抜け、毛羽立ちがみられ、強度が不足していた。
Claims (8)
- 地経糸および地緯糸から形成される基布の片面に、経糸方向に延在するマルチフィラメントループ糸により形成された多数のループ係合素子を立設し、かつ該地緯糸として用いたバインダー繊維を溶融することにより該マルチフィラメントループ糸を基布に固定してなる自己融着ループ面ファスナーであって、該地緯糸との交差点において、前記マルチフィラメントループ糸の地緯糸に対する浮沈状態が、隣り合う両地経糸のそれとは逆であり、該地経糸および該マルチフィラメントループ糸は該バインダー繊維を溶融させる温度条件では溶融または軟化しない繊維であり、該地経糸と該マルチフィラメントループ糸が互いに交差しないように配置され、かつ該ループ係合素子が該地緯糸3〜7本を浮沈する毎に形成されていることを特徴とする自己融着ループ面ファスナー。
- 地緯糸が、高軟化点または高融点ポリマーを芯成分、低軟化点または低融点ポリマーを鞘成分とし、芯鞘比率が面積比で75/25〜30/70の範囲である芯鞘型複合繊維からなる全繊度が100〜500dtexのマルチフィラメント糸である請求項1に記載の自己融着ループ面ファスナー。
- 地経糸及びマルチフィラメントループ糸がポリエチレンテレフタレート系ポリマーからなる繊維から構成され、地緯糸が、芯成分がポリエチレンテレフタレート系ポリマーで鞘成分がイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート系ポリマーからなる芯鞘型複合繊維から構成されている請求項1または2に記載の自己融着ループ面ファスナー。
- S撚りのマルチフィラメント糸からなる地経糸とZ撚りのマルチフィラメント糸からなる地経糸が交互に配置されている請求項1〜3のいずれかに記載の自己融着ループ面ファスナー。
- マルチフィラメントループ糸が捲縮糸である請求項1〜4のいずれかに記載の自己融着ループ面ファスナー。
- 地経糸(マルチフィラメントループ糸を含む)の密度が80〜250本/インチであり、かつ地緯糸の密度が20〜70本/インチである請求項1〜5のいずれかに記載の自己融着ループ面ファスナー。
- 地経糸が、10〜100本のフィラメントからなる全繊度が100〜400dtexのマルチフィラメント糸である請求項1〜6のいずれかに記載の自己融着ループ面ファスナー。
- マルチフィラメントループ糸が、5〜20本のフィラメントからなる全繊度が150〜350dtexのマルチフィラメントである請求項1〜7のいずれかに記載の自己融着ループ面ファスナー。
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