JP5192154B2 - 色素増感太陽電池の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた光電変換特性を有し、かつ、基板と酸化亜鉛多孔質層との密着性の高い色素増感太陽電池及び色素増感太陽電池の製造方法に関する。
色素増感太陽電池は、身近な材料である金属酸化物半導体多孔膜を利用した太陽電池であり、シリコン太陽電池に比べて、高価な材料やプロセスを必要とせず、安価な太陽電池を実現できるデバイスとして実用化が期待されている。
色素増感太陽電池は、通常、透明電極基板に金属酸化物半導体多孔質層を形成し色素を担持させた光電極と、基板に導電層を形成した正電極とを電解質層を介して挟み込んだ構成となっている。
このような色素増感太陽電池の基本原理は、特許文献1に開示されているように、以下の通りである。まず、色素増感太陽電池に光が照射されると、金属酸化物半導体多孔質層表面に吸着された増感色素が光を吸収し、色素分子内の電子が励起され、電子が半導体へ渡される。これにより、光電極側で電子が発生し、この電子が電気回路を通じて、正電極に移動する。そして、正電極に移動した電子は、電解質層を通じて光電極に戻る。このような過程が繰り返されることで、電気エネルギーが生じ、高い光電変換効率が実現されている。
このうち、色素増感太陽電池の光電極の一部である金属酸化物半導体多孔質層を形成する方法としては、液相法や気相法等、多くの方法があるが、従来は金属酸化物半導体微粒子を溶媒に分散させた半導体多孔膜用分散液を基板に塗布した後、乾燥焼成して成膜する方法が一般的であった。
一方、近年では、電析法を用いて金属酸化物半導体多孔質層を形成することにより、色素増感太陽電池を製造する方法が行われている。電析法は、湿式の成膜法であり、100℃以下の低温での成膜が可能となることから、特に基板としてプラスチックフィルムを使用する場合に有効に用いられる。しかしながら、電析法を用いた場合は、焼成が不要であるという利点を有するものの、得られる金属酸化物半導体多孔質層の表面積が小さくなるため、色素を充分に担持させることができず、色素増感太陽電池の光電変換率を高めるのが難しいという問題があった。
また、特許文献2には、電解液にテンプレート化合物を添加し、電析によって酸化亜鉛薄膜を形成した後、テンプレート化合物をアルカリで脱着することにより、多孔質酸化亜鉛層を形成する方法が開示されている。
しかしながら、このような方法を用いた場合であっても、色素を充分に担持することができず、得られる色素増感太陽電池の光電変換率が低くなったり、基板と多孔質酸化亜鉛層との密着性が低下して、多孔質酸化亜鉛層の剥離が生じたりすることがあった。
特許第2664194号公報 特開2004−6235号公報
本発明は、優れた光電変換特性を有し、かつ、基板と酸化亜鉛多孔質層との密着性の高い色素増感太陽電池及び色素増感太陽電池の製造方法を提供する。
本発明は、透明導電層が形成されたフィルム基板の前記透明導電層上に、亜鉛塩とテンプレート化合物とを含有する水溶液を用いて電析法により成膜することにより酸化亜鉛薄膜を形成する工程1、前記酸化亜鉛薄膜に含まれるテンプレート化合物を脱着することにより、酸化亜鉛多孔質層を形成する工程2、及び、前記酸化亜鉛多孔質層に色素を担持させる工程3を有する色素増感太陽電池の製造方法であって、工程1において、テンプレート化合物の水溶液中の濃度を150〜450μMとし、かつ、前記酸化亜鉛薄膜中の前記テンプレート化合物含有量を6.4〜7.4重量%とする色素増感太陽電池の製造方法である。
本発明者らは鋭意検討した結果、テンプレート化合物を用いた電析法によって酸化亜鉛多孔質層を形成する場合、得られる色素増感太陽電池における光電変換効率や、基板に対する酸化亜鉛多孔質層の密着性と、テンプレート化合物を脱着する前の酸化亜鉛薄膜におけるテンプレート化合物の含有量とが密接に関連していることを見出した。
そして、本発明者らは更に鋭意検討した結果、テンプレート化合物を用いた電析法によって酸化亜鉛多孔質層を形成する際に、酸化亜鉛薄膜のテンプレート化合物含有量を所定の範囲内とすることにより、優れた光電変換特性を有し、かつ、基板と酸化亜鉛多孔質層との密着性の高い色素増感太陽電池が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の色素増感太陽電池に用いられる基板としては、入射する光を妨げず、適度な強度を有するものであれば特に限定されず、例えば、ガラス、透明樹脂からなるシート、フィルム等が挙げられる。
上記透明樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、環状ポリオレフィン等の耐熱性を有する透明性樹脂からなるものが挙げられる。
上記基板の厚みの好ましい下限は100μm、好ましい上限は3mmである。厚みを上記範囲内とすることで、適当な剛性と柔軟性をもたせることが可能となる。
上記透明導電層としては、例えば、ITO、SnO、ZnO等からなるものが好ましく、なかでも、ITOからなるものが好ましい。
本発明の色素増感太陽電池は、上記透明導電層が形成された基板の透明導電層上に、亜鉛塩とテンプレート化合物とを含有する水溶液を用い電析法によって酸化亜鉛薄膜を形成し、前記テンプレート化合物を脱着して酸化亜鉛多孔質層を形成した後、前記酸化亜鉛多孔質層に色素を担持させてなる光電極を有する。
本発明の色素増感太陽電池では、電析法によって、酸化亜鉛薄膜を成膜する。上記電析法は、原料粒子分散液を塗布し、焼結させる方法等のように、高温の焼成工程を行う必要がなく、樹脂フィルムを基板として用いる場合にも好適に使用することができ、また、結晶性の高い酸化亜鉛多孔質層を得ることができる。
上記電析法によって酸化亜鉛薄膜を形成する方法としては、具体的には例えば、亜鉛塩及びテンプレート化合物を含有する水溶液中に透明電極を形成した基板を浸漬し、作用極に透明電極、対向極に亜鉛を配置し、酸素をバブリングしながら参照電極に対して負の定電圧を印加する3電極法等が挙げられる。
上記亜鉛塩としては、電析後に酸化亜鉛薄膜が得られるものであれば特に限定されず、例えば、ZnCl、ZnBr、ZnI等が挙げられる。
上記亜鉛塩の電析液中の濃度の好ましい下限は1mM好ましい上限は50mMある。1mM満であると、充分な酸化亜鉛薄膜を形成できないことがあり、50mM超えると、亜鉛に対する酸素の供給が不充分となり亜鉛金属の析出が発生することがある。
上記テンプレート化合物とは、亜鉛塩とともに電析液中に添加し、電析成膜することによって、酸化亜鉛薄膜の内部表面に吸着され、かつ、所定の脱着手段によって脱着可能な化合物のことをいう。上記テンプレート化合物は、上述の性質を有し、亜鉛塩の水溶液等の電析液に溶解しやすいものであれば特に限定されないが、電気化学的に還元性を有する芳香族化合物のようなπ電子を有する有機化合物が好適である。特に、有機色素であるキサンテン系色素が好適であり、具体的には例えば、エオシンY、エリスロシンY、フロキシンB、ローズベンガル、ローダミンB等が挙げられる。
上記テンプレート化合物の電析液中の濃度の好ましい下限は150μM好ましい上限は450μMある。150μM満であると、酸化亜鉛薄膜中のテンプレート化合物含有量が小さくなるため、形成される酸化亜鉛多孔質層の空孔率が低下し、色素の担持量が低下したり、電解液が浸透しにくくなったりすることから、得られる色素増感太陽電池の光電変換効率が低下することがある。450μM超えると、形成される酸化亜鉛多孔質層の空孔率が高くなるものの、透明電極と酸化亜鉛多孔質層との接触面積が非常に小さくなり、透明電極と酸化亜鉛多孔質層との密着性が低下することがある。より好ましい下限は180μMより好ましい上限は400μMある。
なお、後述のように空孔率の異なる複数の層からなる酸化亜鉛多孔質層を形成する場合は、透明電極と酸化亜鉛多孔質層との密着性が向上することから、上記テンプレート化合物の電析液中の濃度を500μM度としても、充分な密着性を有する色素増感太陽電池が得られる。
本発明では、上記電析法によって形成される酸化亜鉛薄膜におけるテンプレート化合物の含有量の下限が6.4重量%、上限が7.4重量%である。
上記酸化亜鉛薄膜のテンプレート化合物含有量を上記範囲内とすることで、本発明の色素増感太陽電池は、優れた光電変換特性と、基板及び酸化亜鉛多孔質層の密着性とを両立したものとなる。なお、上記酸化亜鉛薄膜のテンプレート化合物含有量は、例えば、酸化亜鉛薄膜より採取した所定量の試料の400℃までの重量減少率を測定することにより求めることができる。
上記酸化亜鉛薄膜のテンプレート化合物含有量が6.4重量%未満であると、形成される酸化亜鉛多孔質層の空孔率が低下して、色素の担持量が低下したり、電解液が浸透しにくくなったりすることから、得られる色素増感太陽電池の光電変換特性が大幅に低下する。7.4重量%を超えると、透明導電層と形成される酸化亜鉛多孔質層との接触面積が非常に小さくなり、透明導電層と酸化亜鉛多孔質層との密着性が大幅に低下する。従って、得られる色素増感太陽電池において、酸化亜鉛多孔質層の剥離が発生しやすくなる。
図1は、本発明において、酸化亜鉛薄膜を形成した後、色素を担持するまでを示す模式図である。本発明では、まず、透明導電層2が形成された基板1の透明導電層2上に、亜鉛粒子3とテンプレート化合物4とからなる酸化亜鉛薄膜6を形成する(図1a)。次いで、アルカリ等を用いてテンプレート化合物4を脱着させることにより、酸化亜鉛多孔質層7を形成する(図1b)。更に、得られた酸化亜鉛多孔質層7に色素5を担持させることにより、色素増感太陽電池用の光電極とすることができる(図1c)。
図1に示すように、本発明では酸化亜鉛薄膜6に含まれるテンプレート化合物4の含有量を6.4〜7.4重量%とすることで、テンプレート化合物4を脱着した後の酸化亜鉛多孔質層7は充分な空孔率を有することから、得られる色素増感太陽電池は光電変換特性に優れ、更に、基板と酸化亜鉛多孔質膜との密着性が高くなることから、酸化亜鉛多孔質層7の剥離等を生じにくくすることができる。
一方、図2は、従来の方法を用いた場合、即ち、酸化亜鉛薄膜6に含まれるテンプレート化合物4の含有量が6.4重量%未満の場合であるが、図2aのように酸化亜鉛薄膜6に含まれるテンプレート化合物4の含有量が少なすぎると、図2bに示すように空孔率の非常に低い酸化亜鉛多孔質膜7が得られる。この場合、図2cに示すように、色素5の担持量が非常に小さくなり、得られる色素増感太陽電池の光電変換特性が大幅に低下する。
なお、図示はしていないが、本発明において規定するテンプレート化合物含有量を超える場合、即ち、酸化亜鉛薄膜6に含まれるテンプレート化合物4の含有量が7.4重量%を超える場合は、空孔率の非常に高い酸化亜鉛多孔質膜7が得られるものの、透明導電層2と酸化亜鉛多孔質層7との接触面積が非常に小さくなり、透明導電層2と酸化亜鉛多孔質層7との密着性が大幅に低下する。従って、得られる色素増感太陽電池において、酸化亜鉛多孔質層7の剥離が発生しやすくなる。
上記亜鉛塩とテンプレート化合物とを含有する水溶液には、上記亜鉛塩及びテンプレート化合物に加えて、凝集防止等を目的として、界面活性剤等の適当な添加剤を配合してもよい。
本発明では、上記酸化亜鉛薄膜を形成した後、上記テンプレート化合物を脱着させることにより酸化亜鉛多孔質層を形成する。
上記テンプレート化合物を脱着する方法としては特に限定されず、使用するテンプレート化合物によって種々の方法を用いることができる。具体的には例えば、テンプレート化合物がカルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基等のアンカー基を有する化合物である場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ溶液を用いて洗浄することによってテンプレート化合物の脱着を行うことができる。
上記アルカリ溶液を用いてテンプレート化合物の脱着を行う場合、上記アルカリ溶液のpHの好ましい下限は10、好ましい上限は13である。
上記酸化亜鉛多孔質層の膜厚の好ましい下限は1μm、好ましい上限は20μmである。1μm未満であると、色素担持量が少なくなるとともに、得られる色素増感太陽電池の光電変換特性も低下することがあり、20μmを超えても、酸化亜鉛多孔質層中の電子の拡散長が限られているために光電変換特性向上に寄与せず、逆に電解質液の酸化亜鉛多孔質層への浸入が困難になることから光電変換特性が低下することがある。
本発明の色素増感太陽電池では、空孔率の異なる複数の層からなる酸化亜鉛多孔質層を形成することが好ましい。例えば、基板と反対側に空孔率の高い上層を形成し、基板側に空孔率の低い下層を形成する場合、上層では高い空孔率によって、より多くの色素を担持させることができ、下層は色素の担持量は少なくなるものの、透明電極との接触面積が大きくなることから、優れた光電変換特性と、基板及び酸化亜鉛多孔質層の密着性との両立を更に好適に行うことができる。
上記空孔率の異なる複数の層からなる酸化亜鉛多孔質層を形成する方法としては特に限定されないが、例えば、まず、基板の透明導電層上に、テンプレート化合物の濃度の低い電析液を用いて電析を行うことにより、テンプレート化合物の含有量の少ない酸化亜鉛薄膜を形成した後、更にその上に、テンプレート化合物の濃度の高い電析液を用いて電析を行うことにより、テンプレート化合物の含有量の多い酸化亜鉛薄膜を形成し、その後テンプレート化合物を脱着する方法等が挙げられる。
図3は、空孔率の異なる複数の層からなる酸化亜鉛多孔質層を形成する場合における酸化亜鉛薄膜を形成した後、色素を担持するまでを示す模式図である。
上述した複数の層からなる酸化亜鉛多孔質層を形成する方法に従って、電析を行った場合、透明導電層2が形成された基板1の透明導電層2上に、酸化亜鉛粒子3とテンプレート化合物4とからなり、テンプレート化合物4の含有量が比較的少ない酸化亜鉛薄膜6a、及び、テンプレート化合物4の含有量が比較的多い酸化亜鉛薄膜6bの2層が形成される(図3a)。次いで、アルカリ等を用いてテンプレート化合物4を脱着させることにより、空孔率の低い酸化亜鉛多孔質層7aと空孔率の高い酸化亜鉛多孔質層7bが形成される(図3b)。更に、得られた酸化亜鉛多孔質層7a、7bに色素5を担持させることにより、色素増感太陽電池用の光電極とすることができる(図3c)。図3cに示すように、この方法では、酸化亜鉛多孔質層7bに多量の色素を担持できるとともに、透明導電層2と酸化亜鉛多孔質層7aとの密着性は充分に確保される。従って、空孔率の異なる複数の層からなる酸化亜鉛多孔質層を形成することで、優れた光電変換特性と、基板及び酸化亜鉛多孔質層の密着性との両立を更に確実に行うことができる。
このようにして得られた酸化亜鉛多孔質層に色素を担持させることにより、光照射によって起電力を発生させる色素増感太陽電池用の光電極として用いることができる。
本発明の色素増感太陽電池に用いる色素としては、光エネルギーにより生じた電子を酸化亜鉛多孔質層に送る機能を有するものであれば特に限定されないが、上記酸化亜鉛多孔質層と強固に吸着させるための官能基を有するものが好ましい。上記官能基としては例えば、カルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が挙げられる。
具体的には、ルテニウム金属錯体系色素や各種の有機色素を使用することができ、例えば、エオシンY、フルオレセイン、エリスロシンB、フロキシンB、ローズベンガル、ローダミンB、フルオレクソン、マーキュロクロム、ジブロモフルオレセイン、ピロガロールレッド等のキサンテン系色素;クマリン343等のクマリン系色素;ブロモフェノールブルー、ブロモチモールブルー、フェノールフタレイン等のトリフェニルメタン系色素;シアニン系色素、メロシアニン系色素、インジゴ系色素、オキソノール系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、スクアリリウム系色素、ペリレンテトラカルボン酸誘導体;Ru、Os等のポリピリジン錯体;アントシアニン、クチナシ色素、ウコン色素、ベニバナ色素、カロテノイド色素、コチニール色素、パプリカ色素等の天然色素等が挙げられる。
上記色素を担持させる方法としては、例えば、上記色素を含有する溶液に、上記酸化亜鉛多孔質層が形成された樹脂フィルム基板を浸漬した後、乾燥を行う方法等が挙げられる。
上記色素を含有する溶液に用いる溶媒としては、色素を溶解することができ、基板を劣化させないものであれば特に限定されず、例えば、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル等が挙げられる。
上記方法で得られた光電極と、電解質層と、対向電極とをこの順で積層することにより、色素増感太陽電池を製造することができる。具体的には例えば、電解質を含有する溶液を光電極上に塗工し、電解質層を形成した後、対向電極を積層する方法や、光電極と電解質溶液注入口を有する対向電極とを積層した後、上記電解質溶液注入口から電解質溶液を注入する方法等により製造することができる。
上記電解質層は、電解質溶液からなるものであってもよく、電解質溶液をゲル化剤によって半固体化したものであってもよい。また、上記電解質層としては、電子、ホール、イオン等を輸送できる物質であれば特に限定されず、例えば、CuI、CuSCN、NiO、CuO、KI等のp型半導体固体ホール輸送材料、ヨウ素/ヨウ化物、臭素/臭化物等の酸化還元電解質を有機溶媒に溶解した溶液を用いることができる。
上記有機溶媒としては、例えば、ニトリル系のアセトニトリル、メトキシプロピオニトリルや炭化水素系のプロピレンカルボナート、ジエチルカルボナート、γ―ブチロラクタンやポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。
これらの中では、嵩高く、酸化亜鉛多孔質層に吸着させた色素が脱着しにくいことから、酸化還元電解質を有機溶媒に溶解した溶液が好ましい。
上記対向電極としては特に限定されず、例えば、光電極と同様の基板や透明導電層からなるものを用いることができる。
なお、上記対向電極の基板及び導電層には、光電極に使用する基板や透明導電層と異なり、必ずしも透明性は必要とされず、チタンやタングステン等の耐食性のある金属、カーボン、グラファイト等の炭素材料、PEDOT/PSS等の導電性高分子等を用いることができる。
本発明の色素増感太陽電池は、例えば、透明導電層が形成されたフィルム基板の前記透明導電層上に、亜鉛塩とテンプレート化合物とを含有する水溶液を用いて電析法により成膜することにより酸化亜鉛薄膜を形成する工程1、前記酸化亜鉛薄膜に含まれるテンプレート化合物を脱着することにより、酸化亜鉛多孔質層を形成する工程2、及び、前記酸化亜鉛多孔質層に色素を担持させる工程3を有する色素増感太陽電池の製造方法であって、工程1において、前記酸化亜鉛薄膜中の前記テンプレート化合物含有量を6.4〜7.4重量%とする方法によって製造することができる。このような色素増感太陽電池の製造方法もまた、本発明の1つである。
なお、上記電析法により酸化亜鉛薄膜を形成する方法、テンプレート化合物を脱着する方法、色素を担持する方法については、上述した本発明の色素増感太陽電池の場合と同様であるため、その詳しい説明を省略する。
本発明では、テンプレート化合物を用いた電析法によって酸化亜鉛多孔質層を形成する際に、酸化亜鉛薄膜のテンプレート化合物含有量を所定の範囲内とすることにより、適度な空孔率を有する酸化亜鉛多孔質層が得られることから、優れた光電変換特性を有し、かつ、基板と酸化亜鉛多孔質層との密着性の高い色素増感太陽電池を実現することが可能となる。
また、本発明の色素増感太陽電池の製造方法を用いることにより、基板と酸化亜鉛多孔質層との密着性に優れ、得られる色素増感太陽電池が充分な光電変換特性を有する色素増感太陽電池を好適に製造することができる。
(実施例1)
(酸化亜鉛薄膜の形成)
PETフィルムにITO膜を成膜した透明電極基板上に10×20mmの矩形パターンのマスキングを施し、回転電極装置による電析法により酸化亜鉛薄膜を成膜した。電析は、上記の透明電極基板を作用極とし、対極を白金線及びZn線として、参照電極(SCE)に飽和カロメル電極を用いる3電極法により行った。
電析の手順としては、まず、透明電極基板をKClの100mM溶液230mLに浸漬し、500rpmで回転させながら、白金対極を用いて予備電解を40分間行い、基板表面を清浄化した。その後、電析浴にZnClを5.0mM度になるように添加して、Zn対極を用いて5分間電析を行い、酸化亜鉛ボトム層を成膜した。その後、電析浴に、テンプレート化合物であるエオシンY色素を350μM度になるように添加してエオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した。浴温は70℃で、酸素を流量100sccmで浴中にバブリングし、透明電極基板を電析浴中で500rpmで回転させながら、電位−1.0V(vs.SCE)の定電位で20分間電析を行った。
(色素増感太陽電池セルの作製)
得られたエオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を0.1MのKOH水溶液に一晩浸漬後、水洗することにより、エオシンY色素を脱着して酸化亜鉛多孔質層を得た。この基板を120℃で60分間乾燥処理した後、有機色素D149(三菱製紙社製)0.5mMとデオキシコール酸1mMをt−ブタノールとアセトニトリルとの1:1混合溶媒に溶解した色素溶液に1時間浸漬して、色素を担持させた酸化亜鉛多孔膜層を有する光電極を作製した。
得られた光電極と、PETフィルムに透明導電膜であるITO膜と白金膜をスパッタ法で積層した対極基板とを重ねて、セル周辺部をアイオノマー樹脂フィルムで熱融着して空セルを作製した。
この空セルに電解質液(ヨウ素0.1Mテトラプロピルアンモニウムヨージド1.0M溶媒:プロピレンカルボナート)を注入し、UV硬化樹脂で注入口を封止して、色素増感太陽電池セルを作製した。
(実施例2)
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるエオシンY色素を180μM度になるように添加し、エオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
(実施例3)
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるエオシンY色素を400μM度になるように添加し、エオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
(実施例4)
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴に、テンプレート化合物であるエオシンY色素を35μM度になるように添加して1分間電析を行うことによりエオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成し、更にその上に、電析浴にエオシンY色素を350μM度になるように添加し、19分間電析を行うことによりエオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
(実施例5)
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるフロキシンB色素を250μM度になるように添加し、フロキシンB色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
(比較例1)
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるエオシンY色素を45μM度になるように添加し、エオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
(比較例2)
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるエオシンY色素を450μM度になるように添加し、エオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
(比較例3)
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるエオシンY色素を550μM度になるように添加し、エオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した。次いで、実施例1と同様にして(色素増感太陽電池セルの作製)の操作を行ったが、酸化亜鉛多孔質層に多数のピンホールが生じたため、色素増感太陽電池セルを作製することができなかった。
(比較例4)
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるフロキシンB色素を150μM度になるように添加し、フロキシンB色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
(評価)
以下の手順で評価を行った。結果を表1に示した。
(1)酸化亜鉛薄膜中のテンプレート化合物含有量の測定
実施例及び比較例において得られる酸化亜鉛薄膜を乾燥した後、削り落とした試料について、熱天秤装置を用いて、150℃から400℃までの重量減少量を測定することにより、酸化亜鉛薄膜中に含まれるテンプレート化合物の含有量を測定した。
(2)酸化亜鉛多孔質層中の増感色素含有量の測定
実施例及び比較例において得られる酸化亜鉛多孔質層を乾燥した後、削り落とした試料について、上述した(1)と同様の方法で酸化亜鉛多孔質層中に含まれる増感色素の含有量を測定した。
(3)密着性
実施例及び比較例において得られる酸化亜鉛多孔質層に碁盤目状のマス目を入れ、テープ剥離試験後に残った酸化亜鉛多孔質層のマスの割合を計測する碁盤目試験により、酸化亜鉛多孔質層の密着性を評価した。
(4)空孔率
実施例及び比較例において得られる酸化亜鉛多孔質層を基板ごと乾燥した後、多孔質層の膜厚をレーザー顕微鏡で測定し、削り落とした膜について精密天秤で重量を測定した。これらの測定値を基に酸化亜鉛膜多孔層の空孔率は下記(1)式を用いて算出した。
空孔率(%)=(1−(多孔質層の重量/(多孔質層の体積×比重)))×100 (1)
なお、多孔質層の体積は、面積×膜厚で求めることができる。
(5)光電変換特性
実施例及び比較例で得られた色素増感太陽電池セルについて、光源強度が1SUN(100mW/cm)であるソーラーシミュレータを用い、光電変換効率を測定した。
Figure 0005192154
表1に示すように、実施例1〜5で得られた色素増感太陽電池セルは、光電変換効率が高く、密着性に関しても充分なものとなっていた。これに対して、比較例1、4で得られた色素増感太陽電池セルは、光電変換効率が不充分なものとなっていた。また、比較例2で得られた色素増感太陽電池セルは、酸化亜鉛多孔質層と基板との密着性低下に起因する光電変換特性の低下が見られた。
本発明によれば、優れた光電変換特性を有し、かつ、基板と酸化亜鉛多孔質層との密着性の高い色素増感太陽電池及び色素増感太陽電池の製造方法を提供できる。
本発明の色素増感太陽電池において、酸化亜鉛薄膜を形成した後、色素を担持するまでを示す模式図である。 従来の色素増感太陽電池において、酸化亜鉛薄膜を形成した後、色素を担持するまでを示す模式図である。 本発明において、空孔率の異なる複数の層からなる酸化亜鉛多孔質層を形成する場合に酸化亜鉛薄膜を形成した後、色素を担持するまでを示す模式図である。
1 基板
2 透明導電層
3 酸化亜鉛粒子
4 テンプレート化合物
5 色素
6 酸化亜鉛薄膜
7 酸化亜鉛多孔質層

Claims (2)

  1. 透明導電層が形成されたフィルム基板の前記透明導電層上に、亜鉛塩とテンプレート化合物とを含有する水溶液を用いて電析法により成膜することにより酸化亜鉛薄膜を形成する工程1、前記酸化亜鉛薄膜に含まれるテンプレート化合物を脱着することにより、酸化亜鉛多孔質層を形成する工程2、及び、前記酸化亜鉛多孔質層に色素を担持させる工程3を有する色素増感太陽電池の製造方法であって、
    工程1において、テンプレート化合物の水溶液中の濃度を150〜450μMとし、かつ、前記酸化亜鉛薄膜中の前記テンプレート化合物含有量を6.4〜7.4重量%とすることを特徴とする色素増感太陽電池の製造方法。
  2. テンプレート化合物は、キサンテン系色素であることを特徴とする請求項1載の色素増感太陽電池の製造方法
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