JP5192154B2 - 色素増感太陽電池の製造方法 - Google Patents
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Description
このような色素増感太陽電池の基本原理は、特許文献1に開示されているように、以下の通りである。まず、色素増感太陽電池に光が照射されると、金属酸化物半導体多孔質層表面に吸着された増感色素が光を吸収し、色素分子内の電子が励起され、電子が半導体へ渡される。これにより、光電極側で電子が発生し、この電子が電気回路を通じて、正電極に移動する。そして、正電極に移動した電子は、電解質層を通じて光電極に戻る。このような過程が繰り返されることで、電気エネルギーが生じ、高い光電変換効率が実現されている。
また、特許文献2には、電解液にテンプレート化合物を添加し、電析によって酸化亜鉛薄膜を形成した後、テンプレート化合物をアルカリで脱着することにより、多孔質酸化亜鉛層を形成する方法が開示されている。
しかしながら、このような方法を用いた場合であっても、色素を充分に担持することができず、得られる色素増感太陽電池の光電変換率が低くなったり、基板と多孔質酸化亜鉛層との密着性が低下して、多孔質酸化亜鉛層の剥離が生じたりすることがあった。
そして、本発明者らは更に鋭意検討した結果、テンプレート化合物を用いた電析法によって酸化亜鉛多孔質層を形成する際に、酸化亜鉛薄膜のテンプレート化合物含有量を所定の範囲内とすることにより、優れた光電変換特性を有し、かつ、基板と酸化亜鉛多孔質層との密着性の高い色素増感太陽電池が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記透明樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、環状ポリオレフィン等の耐熱性を有する透明性樹脂からなるものが挙げられる。
上記基板の厚みの好ましい下限は100μm、好ましい上限は3mmである。厚みを上記範囲内とすることで、適当な剛性と柔軟性をもたせることが可能となる。
上記亜鉛塩の電析液中の濃度の好ましい下限は1mM、好ましい上限は50mMである。1mM未満であると、充分な酸化亜鉛薄膜を形成できないことがあり、50mMを超えると、亜鉛に対する酸素の供給が不充分となり亜鉛金属の析出が発生することがある。
なお、後述のように空孔率の異なる複数の層からなる酸化亜鉛多孔質層を形成する場合は、透明電極と酸化亜鉛多孔質層との密着性が向上することから、上記テンプレート化合物の電析液中の濃度を500μM程度としても、充分な密着性を有する色素増感太陽電池が得られる。
上記酸化亜鉛薄膜のテンプレート化合物含有量を上記範囲内とすることで、本発明の色素増感太陽電池は、優れた光電変換特性と、基板及び酸化亜鉛多孔質層の密着性とを両立したものとなる。なお、上記酸化亜鉛薄膜のテンプレート化合物含有量は、例えば、酸化亜鉛薄膜より採取した所定量の試料の400℃までの重量減少率を測定することにより求めることができる。
図1に示すように、本発明では酸化亜鉛薄膜6に含まれるテンプレート化合物4の含有量を6.4〜7.4重量%とすることで、テンプレート化合物4を脱着した後の酸化亜鉛多孔質層7は充分な空孔率を有することから、得られる色素増感太陽電池は光電変換特性に優れ、更に、基板と酸化亜鉛多孔質膜との密着性が高くなることから、酸化亜鉛多孔質層7の剥離等を生じにくくすることができる。
なお、図示はしていないが、本発明において規定するテンプレート化合物含有量を超える場合、即ち、酸化亜鉛薄膜6に含まれるテンプレート化合物4の含有量が7.4重量%を超える場合は、空孔率の非常に高い酸化亜鉛多孔質膜7が得られるものの、透明導電層2と酸化亜鉛多孔質層7との接触面積が非常に小さくなり、透明導電層2と酸化亜鉛多孔質層7との密着性が大幅に低下する。従って、得られる色素増感太陽電池において、酸化亜鉛多孔質層7の剥離が発生しやすくなる。
上記アルカリ溶液を用いてテンプレート化合物の脱着を行う場合、上記アルカリ溶液のpHの好ましい下限は10、好ましい上限は13である。
上述した複数の層からなる酸化亜鉛多孔質層を形成する方法に従って、電析を行った場合、透明導電層2が形成された基板1の透明導電層2上に、酸化亜鉛粒子3とテンプレート化合物4とからなり、テンプレート化合物4の含有量が比較的少ない酸化亜鉛薄膜6a、及び、テンプレート化合物4の含有量が比較的多い酸化亜鉛薄膜6bの2層が形成される(図3a)。次いで、アルカリ等を用いてテンプレート化合物4を脱着させることにより、空孔率の低い酸化亜鉛多孔質層7aと空孔率の高い酸化亜鉛多孔質層7bが形成される(図3b)。更に、得られた酸化亜鉛多孔質層7a、7bに色素5を担持させることにより、色素増感太陽電池用の光電極とすることができる(図3c)。図3cに示すように、この方法では、酸化亜鉛多孔質層7bに多量の色素を担持できるとともに、透明導電層2と酸化亜鉛多孔質層7aとの密着性は充分に確保される。従って、空孔率の異なる複数の層からなる酸化亜鉛多孔質層を形成することで、優れた光電変換特性と、基板及び酸化亜鉛多孔質層の密着性との両立を更に確実に行うことができる。
具体的には、ルテニウム金属錯体系色素や各種の有機色素を使用することができ、例えば、エオシンY、フルオレセイン、エリスロシンB、フロキシンB、ローズベンガル、ローダミンB、フルオレクソン、マーキュロクロム、ジブロモフルオレセイン、ピロガロールレッド等のキサンテン系色素;クマリン343等のクマリン系色素;ブロモフェノールブルー、ブロモチモールブルー、フェノールフタレイン等のトリフェニルメタン系色素;シアニン系色素、メロシアニン系色素、インジゴ系色素、オキソノール系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、スクアリリウム系色素、ペリレンテトラカルボン酸誘導体;Ru、Os等のポリピリジン錯体;アントシアニン、クチナシ色素、ウコン色素、ベニバナ色素、カロテノイド色素、コチニール色素、パプリカ色素等の天然色素等が挙げられる。
上記色素を含有する溶液に用いる溶媒としては、色素を溶解することができ、基板を劣化させないものであれば特に限定されず、例えば、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル等が挙げられる。
上記有機溶媒としては、例えば、ニトリル系のアセトニトリル、メトキシプロピオニトリルや炭化水素系のプロピレンカルボナート、ジエチルカルボナート、γ―ブチロラクタンやポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。
これらの中では、嵩高く、酸化亜鉛多孔質層に吸着させた色素が脱着しにくいことから、酸化還元電解質を有機溶媒に溶解した溶液が好ましい。
なお、上記対向電極の基板及び導電層には、光電極に使用する基板や透明導電層と異なり、必ずしも透明性は必要とされず、チタンやタングステン等の耐食性のある金属、カーボン、グラファイト等の炭素材料、PEDOT/PSS等の導電性高分子等を用いることができる。
また、本発明の色素増感太陽電池の製造方法を用いることにより、基板と酸化亜鉛多孔質層との密着性に優れ、得られる色素増感太陽電池が充分な光電変換特性を有する色素増感太陽電池を好適に製造することができる。
(酸化亜鉛薄膜の形成)
PETフィルムにITO膜を成膜した透明電極基板上に10×20mmの矩形パターンのマスキングを施し、回転電極装置による電析法により酸化亜鉛薄膜を成膜した。電析は、上記の透明電極基板を作用極とし、対極を白金線及びZn線として、参照電極(SCE)に飽和カロメル電極を用いる3電極法により行った。
電析の手順としては、まず、透明電極基板をKClの100mM水溶液230mLに浸漬し、500rpmで回転させながら、白金対極を用いて予備電解を40分間行い、基板表面を清浄化した。その後、電析浴にZnCl2を5.0mM濃度になるように添加して、Zn対極を用いて5分間電析を行い、酸化亜鉛ボトム層を成膜した。その後、電析浴に、テンプレート化合物であるエオシンY色素を350μM濃度になるように添加してエオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した。浴温は70℃で、酸素を流量100sccmで浴中にバブリングし、透明電極基板を電析浴中で500rpmで回転させながら、電位−1.0V(vs.SCE)の定電位で20分間電析を行った。
得られたエオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を0.1MのKOH水溶液に一晩浸漬後、水洗することにより、エオシンY色素を脱着して酸化亜鉛多孔質層を得た。この基板を120℃で60分間乾燥処理した後、有機色素D149(三菱製紙社製)0.5mMとデオキシコール酸1mMとをt−ブタノールとアセトニトリルとの1:1混合溶媒に溶解した色素溶液に1時間浸漬して、色素を担持させた酸化亜鉛多孔膜層を有する光電極を作製した。
この空セルに電解質液(ヨウ素0.1M、テトラプロピルアンモニウムヨージド1.0M、溶媒:プロピレンカルボナート)を注入し、UV硬化樹脂で注入口を封止して、色素増感太陽電池セルを作製した。
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるエオシンY色素を180μM濃度になるように添加し、エオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるエオシンY色素を400μM濃度になるように添加し、エオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴に、テンプレート化合物であるエオシンY色素を35μM濃度になるように添加して1分間電析を行うことによりエオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成し、更にその上に、電析浴にエオシンY色素を350μM濃度になるように添加し、19分間電析を行うことによりエオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるフロキシンB色素を250μM濃度になるように添加し、フロキシンB色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるエオシンY色素を45μM濃度になるように添加し、エオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるエオシンY色素を450μM濃度になるように添加し、エオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるエオシンY色素を550μM濃度になるように添加し、エオシンY色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した。次いで、実施例1と同様にして(色素増感太陽電池セルの作製)の操作を行ったが、酸化亜鉛多孔質層に多数のピンホールが生じたため、色素増感太陽電池セルを作製することができなかった。
実施例1の(酸化亜鉛薄膜の形成)において、酸化亜鉛ボトム層を成膜した後、電析浴にテンプレート化合物であるフロキシンB色素を150μM濃度になるように添加し、フロキシンB色素含有酸化亜鉛薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得た。
以下の手順で評価を行った。結果を表1に示した。
(1)酸化亜鉛薄膜中のテンプレート化合物含有量の測定
実施例及び比較例において得られる酸化亜鉛薄膜を乾燥した後、削り落とした試料について、熱天秤装置を用いて、150℃から400℃までの重量減少量を測定することにより、酸化亜鉛薄膜中に含まれるテンプレート化合物の含有量を測定した。
実施例及び比較例において得られる酸化亜鉛多孔質層を乾燥した後、削り落とした試料について、上述した(1)と同様の方法で酸化亜鉛多孔質層中に含まれる増感色素の含有量を測定した。
実施例及び比較例において得られる酸化亜鉛多孔質層に碁盤目状のマス目を入れ、テープ剥離試験後に残った酸化亜鉛多孔質層のマスの割合を計測する碁盤目試験により、酸化亜鉛多孔質層の密着性を評価した。
実施例及び比較例において得られる酸化亜鉛多孔質層を基板ごと乾燥した後、多孔質層の膜厚をレーザー顕微鏡で測定し、削り落とした膜について精密天秤で重量を測定した。これらの測定値を基に酸化亜鉛膜多孔層の空孔率は下記(1)式を用いて算出した。
空孔率(%)=(1−(多孔質層の重量/(多孔質層の体積×比重)))×100 (1)
なお、多孔質層の体積は、面積×膜厚で求めることができる。
実施例及び比較例で得られた色素増感太陽電池セルについて、光源強度が1SUN(100mW/cm2)であるソーラーシミュレータを用い、光電変換効率を測定した。
2 透明導電層
3 酸化亜鉛粒子
4 テンプレート化合物
5 色素
6 酸化亜鉛薄膜
7 酸化亜鉛多孔質層
Claims (2)
- 透明導電層が形成されたフィルム基板の前記透明導電層上に、亜鉛塩とテンプレート化合物とを含有する水溶液を用いて電析法により成膜することにより酸化亜鉛薄膜を形成する工程1、前記酸化亜鉛薄膜に含まれるテンプレート化合物を脱着することにより、酸化亜鉛多孔質層を形成する工程2、及び、前記酸化亜鉛多孔質層に色素を担持させる工程3を有する色素増感太陽電池の製造方法であって、
工程1において、テンプレート化合物の水溶液中の濃度を150〜450μMとし、かつ、前記酸化亜鉛薄膜中の前記テンプレート化合物含有量を6.4〜7.4重量%とすることを特徴とする色素増感太陽電池の製造方法。 - テンプレート化合物は、キサンテン系色素であることを特徴とする請求項1記載の色素増感太陽電池の製造方法。
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