JP4982067B2 - 色素増感太陽電池用光電極の製造方法 - Google Patents

色素増感太陽電池用光電極の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂フィルム基板を用いた色素増感太陽電池用光電極において、基板と金属酸化物半導体多孔質層との密着性を確保しつつ、光電変換特性の低下を防止することが可能な色素増感太陽電池用光電極、色素増感太陽電池及び色素増感太陽電池用光電極の製造方法に関する。
色素増感太陽電池は、身近な材料である金属酸化物半導体多孔膜を利用した太陽電池であり、シリコン太陽電池に比べて、高価な材料やプロセスを必要とせず、安価な太陽電池を実現できるデバイスとして実用化が期待されている。
色素増感太陽電池は、通常、透明電極基板に金属酸化物半導体多孔質層を形成し色素を担持させた光電極と、基板に導電層を形成した正電極とを電解質層を介して挟み込んだ構成となっている。
このような色素増感太陽電池の基本原理は、特許文献1に開示されているように、以下の通りである。まず、色素増感太陽電池に光が照射されると、金属酸化物半導体多孔質層表面に吸着された増感色素が光を吸収し、色素分子内の電子が励起され、電子が半導体へ渡される。これにより、光電極側で電子が発生し、この電子が電気回路を通じて、正電極に移動する。そして、正電極に移動した電子は、電解質層を通じて光電極に戻る。このような過程が繰り返されることで、電気エネルギーが生じ、高い光電変換効率が実現されている。
このうち、色素増感太陽電池の光電極の一部である金属酸化物半導体多孔質層を形成する方法としては、液相法や気相法等、多くの方法があるが、従来は金属酸化物半導体微粒子を溶媒に分散させた半導体多孔膜用分散液を基板に塗布した後、乾燥焼成して製膜する方法が一般的であった。
一方、近年では、ガラス基板ではなく、基板として樹脂フィルムを用いた色素増感太陽電池が開発されている。これにより、軽量で柔軟性のある太陽電池を実現することができ、固定型だけでなく移動型の太陽電池としてモバイル用途への応用が期待されている。
しかしながら、基板として樹脂フィルムを用いた色素増感太陽電池を製造する場合は、基板の耐熱性が低いことにより、光電極を形成する際に、焼成温度を高くできず、金属酸化物半導体微粒子同士の結合を強くできないという問題があった。
また、焼成温度が低い場合には、製膜後も金属酸化物半導体多孔膜中に有機成分が残存するため、色素の担持性や電子伝導性を阻害して色素増感太陽電池の光電変換特性低下の原因となっていた。
このような問題に対して、特許文献2には、マイクロ波を利用して樹脂フィルム基板上の金属酸化物半導体の塗膜のみを加熱して焼成する方法が開示されており、特許文献3には、金属酸化物半導体膜の塗膜をプラズマ処理して塗膜のバインダー成分を除去する方法が開示されている。しかしながら、いずれも高価な装置を必要とするため、一般的に広く利用できる方法ではなかった。
特許第2664194号公報 特開2004−342319号公報 特開2003−308893号公報
本発明は、樹脂フィルム基板を用いた色素増感太陽電池用光電極において、基板と金属酸化物半導体多孔質層との密着性を確保しつつ、光電変換特性の低下を防止することが可能な色素増感太陽電池用光電極、色素増感太陽電池及び色素増感太陽電池用光電極の製造方法を提供する。
本発明は、透明導電層が形成された樹脂フィルム基板の上記透明導電層上に金属酸化物半導体微粒子とバインダー樹脂とを含有する分散液を塗布、焼成した後、上記バインダー樹脂を脱脂して金属酸化物半導体多孔質層を形成し、更に、上記金属酸化物半導体多孔質層に色素を担持させてなる色素増感太陽電池用光電極であって、上記金属酸化物半導体多孔質層は、上記バインダー樹脂に由来する有機物残量が0.5〜1.0重量%である色素増感太陽電池用光電極である。
本発明者らは鋭意検討した結果、樹脂フィルム基板を有する色素増感太陽電池用光電極において、金属酸化物半導体多孔質層のバインダー樹脂に由来する有機物残量を所定の範囲内とすることにより、色素増感太陽電池用光電極の基板として樹脂フィルムを用いる場合であっても、基板と金属酸化物半導体多孔質層との密着性を確保しつつ、得られる色素増感太陽電池の光電変換特性の低下を防止することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の色素増感太陽電池用光電極は、透明導電層が形成された樹脂フィルム基板を有する。
上記樹脂フィルム基板としては、入射する光を妨げず、適度の強度を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、環状ポリオレフィン等の耐熱性を有する透明性樹脂からものが挙げられる。
上記樹脂フィルム基板の厚みの好ましい下限は100μm、好ましい上限は3mmである。厚みを上記範囲内とすることで、適当な剛性と柔軟性をもたせることが可能となる。
上記透明導電層としては、例えば、ITO、SnO、ZnO等からなるものが好ましく、なかでも、ITOからなるものが好ましい。
本発明の色素増感太陽電池用光電極は、上記透明導電層上に金属酸化物半導体微粒子とバインダー樹脂とを含有する分散液を塗布、焼成した後、上記バインダー樹脂を脱脂することにより形成される金属酸化物半導体多孔質層を有する。
上記金属酸化物半導体多孔質層は、上記バインダー樹脂に由来する有機物残量が0.5〜1重量%である。
金属酸化物半導体多孔質層のバインダー樹脂に由来する有機物残量を上記範囲内とすることで、本発明の色素増感太陽電池用光電極は、基板と金属酸化物半導体多孔質層との密着性と、得られる色素増感太陽電池の良好な光電変換特性とを両立したものとなる。
なお、上記バインダー樹脂に由来する有機物残量は、金属酸化物半導体多孔質層から採取した試料について、熱重量分析(TGA)を行うことにより測定することができる。具体的には、金属酸化物半導体多孔質層から採取した試料を熱分解温度まで加熱して、300℃以上の温度での重量変化を測定し、初期重量からの変化率を求めることにより算出することができる。なお、図に、TGAにより有機物残量の測定を行った際のチャートを示す。
上記金属酸化物半導体多孔質層のバインダー樹脂に由来する有機物残量の下限は0.5重量%、上限は1.0重量%である。0.5重量%未満であると、金属酸化物半導体微粒子同士や粒子と、樹脂フィルム基板との機械的な密着力が低下し、金属酸化物半導体多孔質層が剥離しやすくなる。また、1.0重量%を超えると、金属酸化物半導体微粒子の電気的な結合による電子伝導を阻害するために光電変換特性の低下が大きくなったり、色素の担持性が低下したりする。好ましい下限は0.6重量%、好ましい上限は0.9重量%である。
上記金属酸化物半導体微粒子としては、例えば、n型の半導体性を示すTiO、ZnO、SnO、WO等の金属酸化物半導体からなる粒子が挙げられる。これらのなかでは、TiO、ZnOからなる粒子が好ましい。
また、上記分散液には、金属酸化物半導体微粒子の凝集を防ぎ分散性を向上させることや、樹脂フィルム基板とのぬれ性を向上させ、塗布時のはじきを防止することを目的として、界面活性剤等の適当な添加剤を配合することが好ましい。また、金属酸化物半導体微粒子同士や金属酸化物半導体微粒子と樹脂フィルム基板との機械的な密着性を向上させるためにバインダー樹脂を添加してもよい。
上記金属酸化物半導体多孔質層の膜厚の好ましい下限は2μm、好ましい上限は15μmである。2μm未満であると、色素担持量が少なくなるとともに、得られる色素増感太陽電池の光電変換特性も低下することがあり、15μmを超えても、金属酸化物半導体多孔質層中の電子の拡散長が限られているために光電変換特性向上に寄与せず、逆に電解質液の金属酸化物半導体多孔質層への浸入が困難になることから光電変換特性が低下することがある。
上記分散液の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法等が挙げられる。
本発明では、上記分散液を焼成させる際の温度は、通常150℃以下である。
ガラス基板等を用いる場合は、450℃以上の温度まで加熱することにより、有機物を完全に分解して、金属酸化物半導体微粒子同士のネッキングにより強固な結合が形成することが可能となるのに対して、本発明のように樹脂フィルム基板を用いる場合には、基板の耐熱性が低いことから、150℃を超える温度で焼成することが困難である。従って、本発明では焼成後の金属酸化物半導体多孔質層中に有機物が残存し、金属酸化物半導体微粒子同士の結合を阻害するため、高温焼成の場合と比べて光電変換特性が低下するおそれがある。
しかしながら、本発明の色素増感太陽電池用光電極では、後工程において、金属酸化物半導体多孔質層中のバインダー樹脂を脱脂する工程を行うことから、低温で焼成した場合であっても、得られる色素増感太陽電池の光電変換特性が低下することがない。
本発明では、上記分散液を塗布、焼成した後、上記バインダー樹脂を脱脂して金属酸化物半導体多孔質層を形成する。これにより、低温で焼成した場合であっても、得られる色素増感太陽電池の光電変換特性が低下することがなく、樹脂フィルム基板を用いる場合の問題点を解消することができる。
上記バインダー樹脂を脱脂する方法としては、例えば、紫外線照射、煮沸処理、プラズマ処理等が挙げられるが、これらのなかでは、紫外線を照射する方法が好ましい。上記紫外線を照射する方法は、ドライプロセスであることから、金属酸化物半導体多孔質層の損傷を防止することができる。更に、紫外線を照射する方法では、色素が担持しやすく、電解液が浸透しやすい表面部分の有機物残量が、樹脂フィルム基板との接触部付近の有機物残量よりも少なくなることから、金属酸化物半導体多孔質層中の有機物の濃度分布を制御することができ、その結果、色素担持性と樹脂フィルム基板に対する密着性とを両立させることが可能となる。
に、紫外線照射を行う前後における金属酸化物半導体多孔質層の状態を示す。図(a)が紫外線照射前、図(b)が紫外線照射後である。図(a)に示すように、樹脂フィルム基板1上には、透明電極2及び金属酸化物半導体微粒子3が積層されており、紫外線照射前は、金属酸化物半導体微粒子3間の空隙部に、残留有機物4が多数残存している。
しかしながら、紫外線照射後は、紫外線照射を行った表面部に近い部分の残留有機物が除去されており、金属酸化物半導体微粒子3からなる金属酸化物半導体多孔質層全体の有機物残量も大幅に低下している。これにより、後の工程において色素担持性が向上させるだけでなく、得られる色素増感太陽電池の光電変換効率が大幅に向上する。
紫外線を照射する際の紫外線の波長としては、UV−Cといわれる253nm付近の波長が有機物の分解を促進するので好ましい。
また、紫外線の照射エネルギーの好ましい下限は1J/cm、好ましい上限は20J/cmである。1J/cm未満であると、有機物を充分に除去することができないことがあり、20J/cmを超えると、樹脂フィルム基板を劣化させることがある。
更に、紫外線照射条件は、紫外光照射強度:5〜10mW/cm、照射時間:300〜1000秒とすることが好ましく、上記紫外線の光源としては、その波長の発光効率の高い低圧水銀ランプを用いることができる。
このようにして得られた金属酸化物半導体多孔質層に色素を担持させることにより、光照射によって起電力を発生させる色素増感太陽電池用光電極として用いることができる。
本発明の色素増感太陽電池用光電極に用いる色素としては、光エネルギーにより生じた電子を金属酸化物半導体多孔質層に送る機能を有するものであれば特に限定されないが、上記金属酸化物半導体多孔質層と強固に吸着させるための官能基を有するものが好ましい。上記官能基としては例えば、カルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が挙げられる。
具体的には、ルテニウム金属錯体系色素や各種の有機色素を使用することができ、例えば、エオシンY、フルオレセイン、エリスロシンB、フロキシンB、ローズベンガル、フルオレクソン、マーキュロクロム、ジブロモフルオレセイン、ピロガロールレッド等のキサンテン系色素;クマリン343等のクマリン系色素;ブロモフェノールブルー、ブロモチモールブルー、フェノールフタレイン等のトリフェニルメタン系色素;シアニン系色素、メロシアニン系色素、インジゴ系色素、オキソノール系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、スクアリリウム系色素、ペリレンテトラカルボン酸誘導体;Ru、Os等のポリピリジン錯体;アントシアニン、クチナシ色素、ウコン色素、ベニバナ色素、カロテノイド色素、コチニール色素、パプリカ色素等の天然色素等が挙げられる。
上記色素を担持させる方法としては、例えば、上記色素を含有する溶液に、上記金属酸化物半導体多孔質層が形成された樹脂フィルム基板を浸漬した後、乾燥を行う方法等が挙げられる。
上記色素を含有する溶液に用いる溶媒としては、色素を溶解することができ、基板フィルムを劣化させないものであれば特に限定されず、例えば、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル等が挙げられる。
本発明の色素増感太陽電池用光電極は、例えば、透明導電層が形成された樹脂フィルム基板の上記透明導電層上に金属酸化物半導体微粒子とバインダー樹脂とを含有する分散液を塗布、焼成した後、上記バインダー樹脂を脱脂して金属酸化物半導体多孔質層を形成し、更に、上記金属酸化物半導体多孔質層に色素を担持させる色素増感太陽電池用光電極の製造方法であって、上記バインダー樹脂の脱脂を紫外線照射により行う方法を用いることにより製造することができる。このような色素増感太陽電池用光電極の製造方法もまた、本発明の1つである。
なお、上記分散液を塗布、焼成する方法、バインダー樹脂を脱脂する方法、色素を担持する方法については、上述した本発明の色素増感太陽電池用光電極の場合と同様であるため、その詳しい説明を省略する。
本発明の色素増感太陽電池用光電極と、電解質層と、正電極とをこの順で積層することにより、色素増感太陽電池を製造することができる。このような色素増感太陽電池もまた、本発明の1つである。具体的には例えば、電解質を含有する溶液を本発明の色素増感太陽電池用光電極上に塗工し、電解質層を形成した後、正電極を積層する方法や、色素増感太陽電池用光電極と電解質溶液注入口を有する正電極とを積層した後、上記電解質溶液注入口から電解質溶液を注入する方法等により製造することができる。
上記電解質層は、電解質溶液からなるものであってもよく、電解質溶液をゲル化剤によって半固体化したものであってもよい。また、上記電解質層としては、電子、ホール、イオン等を輸送できる物質であれば特に限定されず、例えば、CuI、CuSCN、NiO、CuO、KI等のp型半導体固体ホール輸送材料、ヨウ素/ヨウ化物、臭素/臭化物等の酸化還元電解質を有機溶媒に溶解した溶液を用いることができる。
上記有機溶媒としては、例えば、ニトリル系のアセトニトリル、メトキシプロピオニトリルや炭化水素系のプロピレンカルボナート、ジエチルカルボナート、γ―ブチロラクタンやポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。
これらの中では、嵩高く、金属酸化物半導体多孔質層に吸着させた色素が脱離しにくいことから、酸化還元電解質を有機溶媒に溶解した溶液が好ましい。
上記正電極としては特に限定されず、例えば、本発明の色素増感太陽電池用光電極と同様の樹脂フィルム基板や透明導電層からなるものを用いることができる。
なお、上記正電極の基板及び導電層には、本発明の色素増感太陽電池用光電極に使用する樹脂フィルム基板や透明導電層と異なり、必ずしも透明性は必要とされない。
本発明では、樹脂フィルム基板を有する色素増感太陽電池用光電極において、金属酸化物半導体多孔質層のバインダー樹脂に由来する有機物残量を所定の範囲内とすることにより、色素増感太陽電池用光電極の基板として樹脂フィルムを用いる場合であっても、基板と金属酸化物半導体多孔質層との密着性を確保しつつ、得られる色素増感太陽電池の光電変換特性の低下を防止することが可能となる。また、本発明の色素増感太陽電池用光電極の製造方法を用いることにより、基板と金属酸化物半導体多孔質層との密着性に優れ、得られる色素増感太陽電池が充分な光電変換特性を有する色素増感太陽電池用光電極を好適に製造することができる。
(実施例1)
(チタニア多孔膜の形成)
PETフィルムにITO膜を製膜した透明電極基板にマスキングを施し、酸化チタンナノ粒子を水系溶媒に分散した塗料(昭和電工社製、SP210)をスピンコータ(回転数:1000rpm)で塗布し、120℃で60分間乾燥焼成させた後、マスキングを剥離し、10×20mmの矩形パターンからなるチタニア多孔膜を製膜した。
その後、基板上のチタニア多孔膜に、低圧水銀ランプを用いて紫外線を10分間照射した。なお、紫外光強度は7mW/cm、照射エネルギーは4.2J/cmであった。
(評価)
(1)有機物残存量の測定
紫外線照射後のチタニア多孔膜について、有機物残存量の測定及び透明電極基板との密着性の評価を行った。
有機物残存量の測定は、チタニア多孔膜から削り落としたチタニアからなる試料について、熱重量変化(TGA)測定を行い、300℃以上での重量減少から求めた。その結果、有機物残存量は0.9%であった。
(2)密着強度
チタニア多孔膜に碁盤目状のマス目を入れ、テープ剥離試験後に残ったチタニア多孔膜のマスの割合を計測する碁盤目試験により、チタニア多孔膜の密着強度を評価した。その結果、剥離試験後に残ったチタニア多孔膜のマスの割合は99%であり、充分な密着強度を有することがわかった。
(色素増感太陽電池セルの作製)
上述の方法により作製したチタニア多孔膜を形成した基板を、ルテニウム色素N719を3×10−4mol/L、溶媒としてアセトニトリルとt−ブタノールの容積比1:1を含有する色素溶液に一晩浸漬することにより、チタニア多孔膜の表面に増感色素を担持させ、光電極基板を作製した。
得られた光電極基板と、PETフィルムに透明導電膜であるITO膜と白金膜をスパッタ法で積層した正電極基板と重ねて、セル周辺をアイオノマー樹脂フィルムで熱溶着して空セルを作製した。この空セルに電解液(ヨウ素0.01mol/L、ヨウ化リチウム0.1mol/L、DMP0.1mol/L、溶媒:プロピレンカルボナート)を注入し、UV硬化樹脂で注入口を封止して、色素増感太陽電池セルを作製した。
(実施例2)
実施例1と同様にして、PETフィルムにITO膜を製膜した透明電極基板に10×20mmの矩形パターンでチタニア多孔膜を製膜した。次いで、実施例1と同様の条件で紫外線照射を40分間行った。
その後、実施例1と同様の方法でチタニア膜中の有機物残存量を測定したところ、0.5%であった。また、チタニア多孔膜と透明基板との密着強度を確認したところ、剥離試験後に残ったチタニア多孔膜のマスの割合は92%であり、密着強度は、やや低下したが使用可能なレベルであった。次いで、実施例1と同様の方法を行うことにより、色素増感太陽電池セルを得た。
(比較例1)
紫外線照射処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、PETフィルムにITO膜を製膜した透明電極基板に10×20mmの矩形パターンでチタニア多孔膜を製膜した。
その後、実施例1と同様の方法でチタニア膜中の有機物残存量を測定したところ、1.7%であった。また、チタニア多孔膜と透明基板との密着強度を確認したところ、剥離試験後に残ったチタニア多孔膜のマスの割合は100%であった。次いで、実施例1と同様の方法を行うことにより、色素増感太陽電池セルを得た。
(比較例2)
実施例1と同様にして、PETフィルムにITO膜を製膜した透明電極基板に10×20mmの矩形パターンでチタニア多孔膜を製膜し、紫外線照射処理は、実施例1と同条件で紫外線照射を2分間行った。
その後、実施例1と同様の方法でチタニア膜中の有機物残存量を測定したところ、1.5%であった。また、チタニア多孔膜と透明基板との密着強度を確認したところ、剥離試験後に残ったチタニア多孔膜のマスの割合は100%であった。次いで、実施例1と同様の方法を行うことにより、色素増感太陽電池セルを得た。
(比較例3)
実施例1と同様にして、PETフィルムにITO膜を製膜した透明電極基板に10×20mmの矩形パターンでチタニア多孔膜を製膜し、紫外線照射処理は、実施例1と同条件で紫外線照射を80分間行った。
その後、実施例1と同様の方法でチタニア膜中の有機物残存量を測定したところ、0.4%であった。また、チタニア多孔膜と透明基板との密着強度を確認したところ、剥離試験後に残ったチタニア多孔膜のマスの割合は78%であり、大きく低下していた。
次いで、実施例1と同様の方法を行うことにより、色素増感太陽電池セルを得た。
(比較例4)
実施例1と同様にして、PETフィルムにITO膜を製膜した透明電極基板に10×20mmの矩形パターンでチタニア多孔膜を製膜した。その後、この基板を沸騰水に浸漬し、膜を10分間煮沸処理した。なお、煮沸処理後のチタニア多孔膜には、その一部に剥離が見られた。
その後、実施例1と同様の方法でチタニア膜中の有機物残存量を測定したところ、0.2%であった。また、チタニア多孔膜と透明基板との密着強度を確認したところ、剥離試験後に残ったチタニア多孔膜のマスの割合は65%であり大きく低下した。
次いで、実施例1と同様の方法を行うことにより、色素増感太陽電池セルを得た。
(評価)
(3)光電変換特性
実施例1、2及び比較例1〜4で得られた色素増感太陽電池セルについて、光源強度が1SUN(100mW/cm)であるソーラーシミュレータを用い、光電変換効率を測定した。結果を表1に示した。
Figure 0004982067
表1に示すように、実施例1、2で得られた色素増感太陽電池セルは、光電変換効率が高く、比較例1のように紫外線を照射していないものと比較しても、光電変換効率が向上していた。これに対して、比較例2で得られた色素増感太陽電池セルは、比較例1に比べて良い結果が得られたが、充分と言えるものではなく、光電変換効率の向上も見られなかった。また、比較例3で得られた色素増感太陽電池セルは、紫外線を照射したにもかかわらず、チタニア多孔膜と基板との密着性低下に起因する光電変換特性の低下が見られた。更に、比較例4で得られた色素増感太陽電池セルは、チタニア多孔膜と基板との密着性低下に起因する光電変換特性の低下が見られた。
本発明によれば、樹脂フィルム基板を用いた色素増感太陽電池用光電極において、基板と金属酸化物半導体多孔質層との密着性を確保しつつ、光電変換特性の低下を防止することが可能な色素増感太陽電池用光電極、色素増感太陽電池及び色素増感太陽電池用光電極の製造方法を提供できる。
紫外線照射の前後における金属酸化物半導体多孔質層の状態を示す模式図である。 有機物残量の測定におけるTGA(熱重量分析)のグラフである。
符号の説明
1 樹脂フィルム基板
2 透明電極
3 金属酸化物半導体微粒子
4 残留有機物

Claims (2)

  1. 透明導電層が形成された樹脂フィルム基板の前記透明導電層上に金属酸化物半導体微粒子とバインダー樹脂とを含有する分散液を塗布、焼成した後、前記バインダー樹脂を脱脂して金属酸化物半導体多孔質層を形成し、更に、前記金属酸化物半導体多孔質層に色素を担持させる色素増感太陽電池用光電極の製造方法であって、
    前記焼成を150℃以下で行い、
    前記バインダー樹脂の脱脂を紫外線照射により行い、
    紫外線照射の照射時間を300〜2400秒とする
    ことを特徴とする色素増感太陽電池用光電極の製造方法。
  2. 紫外線の照射エネルギーは、1〜20J/cm であることを特徴とする請求項1記載の色素増感太陽電池用光電極の製造方法。
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