JP2004253333A - 色素増感型太陽電池 - Google Patents

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亨 志賀
Kensuke Takechi
憲典 武市
Tomomi Motohiro
友美 元廣
Junji Nakajima
淳二 中島
Tomoyuki Toyama
智之 遠山
Tatsuo Toyoda
竜生 豊田
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Aisin Corp
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Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

【課題】高温の作動環境下であっても、十分な光電変換効率を長期にわたり維持することのできる高温耐久性に優れた色素増感型太陽電池を提供すること。
【解決手段】受光面を有する半導体電極と当該半導体電極の前記受光面上に隣接して配置された透明電極とを有する光電極と、対極とを有しており、前記半導体電極と前記対極とがゲル電解質を介して対向配置された色素増感型太陽電池であって、当該半導体電極の表面又は表面近傍に下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなる数平均分子量1,000〜50,000の重合体が担持されていることを特徴とする色素増感型太陽電池。式(1)中、Xは硫黄原子又はNR(Rは水素原子又はアルキル基を示す)を示し、R、Rは水素原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選択されるいずれかを示す。
Figure 2004253333

【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は色素増感型太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化やエネルギー問題に対する関心の高まりとともにシリコンpn接合型太陽電池や色素増感型太陽電池等の太陽電池の様々な開発が進められている。その太陽電池の中でも、色素増感型太陽電池はグレッツェルらにより提案(例えば、特許文献1及び2参照)されて以来、使用する材料が安価であること、比較的シンプルなプロセスで製造できること等の利点からその実用化が期待されている。
【0003】
このような色素増感型太陽電池においては、光電変換効率の向上を図る一方で、優れた光電変換効率を長期にわたり持続する耐久性を得ることが実用化に向けた課題となっている。
【0004】
耐久性が不十分な原因、すなわち、光電変換効率が低下する原因として、液状電解質を電池の内部に完全に密封しておくことが困難であることから、液状電解質中の溶媒や溶質が揮発して電池外部へ散逸することが考えられている。また、電解質中の溶質成分が色素分子を劣化させるため、光電変換効率が低下しているとも考えられている。
【0005】
そのため、耐久性の向上を目的として様々な改良がなされた色素増感型太陽電池が開発されている。例えば、ゲル電解質を用いた色素増感型太陽電池が提案されており(例えば、特許文献3及び4並びに非特許文献1及び2参照)、これらは、ゲル電解質を用いることにより電解質中の溶媒や溶質の電池外部への散逸を防止し、耐久性の向上を図ったものである。
【0006】
また、エステル化反応剤やシラン化合物で色素が担持された半導体電極を処理することにより、耐久性の向上を図った色素増感型太陽電池も提案されている(例えば、特許文献5及び6参照)。
【0007】
【特許文献1】
特許第2664194号公報
【0008】
【特許文献2】
米国特許第4927721号明細書
【0009】
【特許文献3】
特開平11−185836号公報
【0010】
【特許文献4】
特開2001−160427号公報
【0011】
【特許文献5】
特開2002−246626号公報
【0012】
【特許文献6】
特開2002−324589号公報
【0013】
【非特許文献1】
Fei Cao et al.,“A Solid State,Dye Sensitized Photoelectrochemical Cell”, Journal of Physical Chemistry,米国,1995年,第99巻,p.17071−17073
【0014】
【非特許文献2】
Wataru Kubo et al.,“Fabrication of Quasi−solid−state Dye−sensitized TiO Solar Cells Using Low MolecularWeight Gelators”,Chemistry Letters,米国,1998年,p.1241−1242
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、上記のゲル電解質を用いた色素増感型太陽電池やエステル化反応剤又はシラン化合物で半導体電極を処理した色素増感型太陽電池であっても高温耐久性が未だ十分なものではなく、60℃以上の高温環境下に長期保存した場合には光電変換効率が著しく低下する可能性が高いことを見出した。
【0016】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、真夏の炎天下では太陽電池の表面温度は80℃を超えることもあることから、高温の作動環境下であっても十分な光電変換効率を長期にわたり維持することのできる高温耐久性に優れた色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の導電性重合体を半導体電極に担持させることにより、高温耐久性に優れた色素増感型太陽電池ができることを見出し、本発明に到達した。
【0018】
すなわち、本発明の色素型太陽電池は、受光面を有する半導体電極と当該半導体電極の前記受光面上に隣接して配置された透明電極とを有する光電極と、対極とを有しており、前記半導体電極と前記対極とがゲル電解質を介して対向配置された色素増感型太陽電池であって、当該半導体電極の表面又は表面近傍に下記一般式(1):
【0019】
【化2】
Figure 2004253333
【0020】
[式(1)中、Xは硫黄原子又はNR(Rは水素原子又は炭素数が1〜12の置換されていてもよいアルキル基を示す)を示し、R、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数が1〜12の置換されていてもよいアルキル基、及び炭素数が1〜6の置換されていてもよいアルコキシ基からなる群から選択されるいずれかを示し、ただし、R、R、Rのすべてが水素原子及び炭素数が1〜3の置換されていてもよいアルキル基からなる群から選択されるいずれかである場合を除く。]
で表される繰り返し単位からなる数平均分子量1,000〜50,000の重合体が担持されていることを特徴とするものである。
【0021】
ここで、半導体電極の表面に重合体が担持されているとは、半導体電極のゲル電解質側の表面の全部又は一部を重合体が被覆していることをいう。また、半導体電極の表面近傍に重合体が担持されているとは、半導体電極の表面近傍を構成する半導体粒子の間隙の全部又は一部に重合体が含浸していることをいい、さらに、半導体粒子が多孔質である場合には多孔質内部に重合体が含浸していてもよい。なお、本発明に係る半導体電極において前記重合体が効率良く高温耐久性の向上に寄与するためには、その全量が電極の表面又は表面近傍(好ましくは半導体電極の表面から1μmの範囲内又は半導体粒子層の厚さの10%の範囲内)に存在することが好ましいが、電極の更に内部に重合体の一部が存在していてもよい。
【0022】
このような本発明に係る重合体を半導体電極の表面又は表面近傍に担持させることにより高温耐久性が向上する理由は定かではないが、本発明者らは以下のように考えている。すなわち、本発明に係る上記重合体は有機溶媒に可溶であり、フィルム形成能を有している。従って、本発明に係る重合体によれば、ナノメートルオーダーの厚さの重合体の皮膜が形成され、半導体電極の表面の全部又は一部を覆うことにより、ゲル電解質の溶質成分と半導体電極に吸着されている色素分子との相互作用が防止され、色素分子の劣化が十分に抑制されることにより高温耐久性が向上すると考えている。また、本発明に係る上述の重合体は共役高分子であるためp型半導体としての性質を有している。従って、電解質と色素分子の間の電子移動は阻害されず、重合体が存在しない場合に比べても同程度の高水準の光電変換性能を発揮できると考えている。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の色素増感型太陽電池の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
図1は、本発明の色素増感型太陽電池の実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
【0025】
図1に示す色素増感型太陽電池20は、主として光電極10と対極CEと、スペーサSにより光電極10と対極CEとの間に形成される間隙に充填されたゲル電解質Eとから構成されている。また、図1に示す光電極10は、主として受光面F2を有する半導体電極2と、半導体電極2の受光面F2上に隣接して配置された透明電極1とから構成されている。そして、半導体電極2は、受光面F2と反対側のゲル電解質側の表面F22においてゲル電解質Eと接触している。
【0026】
この色素増感型太陽電池20は、透明電極1を透過して半導体電極2に照射される光によって半導体電極2内に吸着されている増感色素が励起され、この増感色素から半導体電極2へ電子が注入される。そして、半導体電極2において注入された電子は、透明電極1に集められて外部に取り出される。
【0027】
透明電極1の構成は特に限定されるものではなく、通常の色素増感型太陽電池に搭載される導電性電極を使用できる。例えば、図1に示す透明電極1は、ガラス基板等の透明基板4の半導体電極2の側にいわゆる透明導電膜3をコートした構成を有する。この透明導電膜3としては、液晶パネル等に用いられる透明電極用の透明導電膜を用いればよい。
【0028】
このような透明電極1としては、例えば、フッ素ドープSnOコートガラス、ITOコートガラス、ZnO:Alコートガラス、アンチモンドープ酸化スズ(SnO−Sb)等が挙げられる。また、酸化スズや酸化インジウムに原子化の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものでもよい。
【0029】
また、透明基板4としては、液晶パネル等に用いられる透明基板を用いればよい。具体的には、透明なガラス基板、ガラス基板表面を適当に荒らすなどして光の反射を防止したもの、すりガラス状の半透明のガラス基板など光を透過するものが透明基板材料として挙げられる。なお、光を透過するものであれば材質はガラスでなくてもよく、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などでもよい。
【0030】
図1に示す半導体電極2は、酸化物半導体粒子を構成材料とする酸化物半導体層からなる。半導体電極2に含有される酸化物半導体粒子は特に限定されるものではなく、公知の酸化物半導体等を使用することができる。酸化物半導体としては、例えば、TiO、ZnO、SnO、Nb、In、WO、ZrO、La、Ta、SrTiO、BaTiO等を用いることができる。これらの酸化物半導体の中でもアナターゼ型TiOが好ましい。
【0031】
また、半導体電極2に担持される増感色素は、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を持つ色素であれば特に限定されるものではない。より好ましくは、少なくとも200nm〜10μmの波長の光により励起されて電子を放出するものであればよい。このような増感色素としては、金属錯体や有機色素等を用いることができる。金属錯体としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィル又はその誘導体、ヘミン、ルテニウム、オスミウム、鉄及び亜鉛の錯体(例えば、シス−ジシアネート−N,N’−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシレート)ルテニウム(II))等が挙げられる。有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素等を用いることができる。
【0032】
本発明の色素増感型太陽電池においては、半導体電極2に導電性重合体が担持される。このような導電性重合体は、下記一般式(1):
【0033】
【化3】
Figure 2004253333
【0034】
[式(1)中、Xは硫黄原子又はNR(Rは水素原子又は炭素数が1〜12の置換されていてもよいアルキル基を示す)を示し、R、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数が1〜12の置換されていてもよいアルキル基、及び炭素数が1〜6の置換されていてもよいアルコキシ基からなる群から選択されるいずれかを示し、ただし、R、R、Rのすべてが水素原子及び炭素数が1〜3の置換されていてもよいアルキル基からなる群から選択されるいずれかである場合を除く。]
で表される繰り返し単位からなる数平均分子量1,000〜50,000の重合体である。
【0035】
ここで、上記一般式(1)において、R、R、Rのうち少なくとも一つが炭素数13以上のアルキル基である場合、得られる導電性重合体は有機溶媒に溶けるものの室温下では粘ちょうであり、半導体電極に担持させることが困難となる。
【0036】
また、上記一般式(1)において、R、Rのうち少なくとも一つが炭素数7以上のアルコキシ基である場合、得られる導電性重合体は、分子量が小さくなり、半導体電極に担持させることが困難となる。
【0037】
さらに、上記一般式(1)において、R、R、Rのすべてが水素原子及び炭素数が1〜3の置換されていてもよいアルキル基からなる群から選択されるいずれかである場合、得られる導電性重合体は有機溶媒に溶解しにくく成型加工性に欠けるため、半導体電極に担持させることが困難となる。
【0038】
なお、置換されていてもよいとは、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子等により1又は複数の水素原子が置換されていてもよいことをいう。また、アルキル基及びアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐状であってもかまわない。
【0039】
上記一般式(1)において、Xは硫黄原子又はNRで表される基であり、硫黄原子であることが好ましい。Xが酸素原子の場合には、得られる重合体の成型加工性に問題があるため、また、Xがセレン原子の場合には、得られる重合体の毒性が高いため、本太陽電池への適用が困難となる。
【0040】
また導電性重合体の数平均分子量は1,000〜50,000である。数平均分子量が1,000未満では導電性重合体が粘ちょうとなり半導体電極に担持させることが困難であり、他方、50,000を超えると有機溶媒に溶けにくくなり半導体電極に担持させることが困難である。
【0041】
このような導電性重合体としては、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(1−オクチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−ヘプチルピロール)、ポリ(1−メチル−3−ブチルピロール)、ポリ[3−(2−クロロオクチル)チオフェン]などが挙げられる。
【0042】
導電性重合体の担持量は、特に限定されるものではない。一般に、増感色素の半導体電極への吸着量は、半導体粒子の比表面積あたり、1×10−7〜1×10−6mol/cmであるため、導電性重合体の担持量としては、色素吸着量の0.1倍〜100倍、すなわち1×10−8〜1×10−4mol/cmであることが望ましい。0.1倍未満では、導電性重合体の皮膜が不十分となって高温耐久性が十分改善されない傾向にあり、他方、100倍を超えると、皮膜が厚すぎて光電変換性能が低下してしまう傾向にある。
【0043】
対極CEは、電解質中の酸化還元対(例えば、I /I等)に高効率で電子を渡すことができる材料から構成されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコン太陽電池、液晶パネル等に通常用いられている対極と同じものを用いることが可能である。例えば、前述の透明電極1と同じ構成を有するものであってもよく、透明電極1と同様の透明導電膜上にPt等の金属薄膜電極を形成し、金属薄膜電極をゲル電解質Eの側に向けて配置させるものであってもよい。また、透明電極1と同様の透明導電膜に白金を少量付着させたものであってもよく、白金などの金属薄膜、炭素などの導電性膜などであってもよい。
【0044】
ゲル電解質Eは、液状電解質にゲル化剤を含み擬固体化(ゲル化)した電解質であり、かつ、光励起され半導体への電子注入を果たした後の色素を還元するための酸化還元種を含んでいれば特に限定されない。
【0045】
ゲル電解質Eに使用される液状電解質の溶質としては、半導体電極2に吸着された色素や対極CEと電子の受け渡しを行える酸化還元対(I /I系の電解質、Br /Br系の電解質、ハイドロキノン/キノン系の電解質などのレドックス電解質)や、この電子の受け渡しを助長する作用を有する化合物等が挙げられ、これらがそれぞれ単独あるいは複数組み合わせて含まれていてもよい。より具体的には、酸化還元対を構成する物質としては、例えば、ヨウ素、臭素、塩素などのハロゲン、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化リチウムのようなハロゲン化合物などが挙げられる。電子の受け渡しを効率よく行うための添加剤としては、4−t−ブチルピリジン、N−メチルベンズイミダゾールのようなヘテロ環状化合物などが挙げられる。
【0046】
ゲル電解質Eに使用される液状電解質の溶媒としては、溶質成分を溶解できる化合物であれば特に制限はないが、電気化学的に不活性で、比誘電率が高く、粘度が低い溶媒(およびこれらの混合溶媒)が好ましく、例えば、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオンニトリルやアセトニトリルのようなニトリル化合物、γ−ブチロラクトンやバレロラクトンのようなラクトン化合物、又は、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートのようなカーボネート化合物、炭酸プロピレン等が挙げられる。
【0047】
ゲル電解質Eに用いられるゲル化剤は、特に限定されるものではなく、公知のゲル化剤を用いることができる。例えば、天然高級脂肪酸、アミノ酸化合物などの多糖類の低分子ゲル化剤、ポリビニリデンフロオライド、ビニリデンフロオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子、及び、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどの高分子ゲル化剤を用いることが可能である。また、シリカ微粒子などの無機粉体によりゲル化させることも可能である。
【0048】
また、ポリ(4−ビニルピリジン)などの窒素原子含有複素環を有するポリマー(主剤)とジヨードヘキシルやジブロモペンタンなどのジハロゲン化合物(架橋剤)とを液状電解質に加えて加熱し、主剤と架橋剤との反応によりゲル化させたものをゲル電解質Eとして用いることも可能である。
【0049】
ゲル電解質Eを調製する際のゲル化剤の添加量は、液状電解質の全質量に対して0.5〜20質量%であることが好ましい。ゲル化剤の添加量が0.5質量%未満であると液状電解質を十分にゲル化できなくなる傾向が大きくなり、他方、ゲル化剤の添加量が20質量%を超えるとゲル電解質Eのイオン伝導性の低下、ゲルの収縮、ゲル化剤の析出などの問題が発生する傾向が大きくなる。
【0050】
スペーサSの構成材料は特に限定されるものではなく、例えば、シリカビーズ等を用いることができる。
【0051】
また、ゲル電解質Eを密封する目的で光電極10、対極CE及びスペーサSを一体化するために使用する封止剤としては、ゲル電解質Eの成分ができる限り外部に漏洩しないように封止できるものであればよく、特に制限されないが、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エチレン/メタクリル酸共重合体、表面処理ポリエチレンからなる熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0052】
次に、図1に示した色素増感型太陽電池20の製造方法の一例について説明する。
【0053】
透明電極1を製造する場合は、ガラス基板等の基板4上に先に述べたフッ素ドープ酸化スズ等の透明導電膜3をスプレーコートする等の公知の薄膜製造技術を用いて形成することができる。例えば、この他にも、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法及びゾルゲル法の公知の薄膜製造技術を用いて形成することができる。
【0054】
透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2を形成する方法としては、例えば、以下の方法がある。すなわち、先ず、所定の大きさ(例えば粒子径が10〜30nm程度)を有する酸化物半導体粒子を分散させた分散液を調製する。この分散液の溶媒は、水、有機溶媒、又は両者の混合溶媒など酸化物半導体粒子を分散できるものなら特に限定されない。また、分散液中には必要に応じて界面活性剤、粘度調節剤を加えてもよい。
【0055】
次に、分散液を透明電極1の透明導電膜3上に塗布し、次いで乾燥する。このときの塗布方法としてはバーコーター法、印刷法などを用いることができる。そして、乾燥した後、空気中、不活性ガス中或いは窒素中で加熱、焼成して半導体電極2(多孔質半導体膜)を形成する。
【0056】
また、透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2を形成する他の方法としては、以下の方法がある。すなわち、透明電極1の透明導電膜3上にTiO等の半導体を膜上に蒸着させる方法を用いてもよい。透明導電膜3上に半導体を膜状に蒸着させる方法としては、公知の薄膜製造技術を用いることができる。例えば、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法を用いてもよく、酸素等の反応性ガス中で金属等を蒸発させ、反応生成物を透明導電膜3上に堆積させる反応蒸着法を用いてもよい。更に、反応ガスの流れを制御する等してCVD法等の化学蒸着法を用いることもできる。
【0057】
次に、半導体電極2に浸着法等の公知の技術により増感色素を含有させる。増感色素は半導体電極2に付着(化学吸着、物理吸着又は堆積など)させることにより含有させる。この付着方法は、例えば色素を含む溶液中に半導体電極2を浸漬するなどの方法を用いることができる。なお、このとき、色素の他に必要に応じて、銀等の金属やアルミナ等の金属酸化物を半導体電極2中に含有させてもよい。
【0058】
なお、半導体電極2内に含まれる光電変換反応を阻害する不純物を除去する表面酸化処理を、各層それぞれの形成時毎、或いは、各層すべてを形成したときなどに公知の方法により適宜実施してもよい。
【0059】
次に、増感色素が含有された半導体電極2の表面又は表面近傍に前記の本発明に係る導電性重合体を担持させる。半導体電極2に導電性重合体を担持させる方法としては、例えば、導電性重合体をクロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン等の有機溶媒に溶解し、得られた導電性重合体溶液中に上記半導体電極2を浸漬し、その後、窒素ガス等で有機溶媒を揮発させる方法が挙げられる。
【0060】
半導体電極2を浸漬する導電性重合体溶液の濃度及び浸漬時間は、特に制限されるものではないが、例えば、十数秒〜数十秒の浸漬時間の場合、導電性重合体の濃度は、0.01〜5.0mol/Lが好ましい。0.01mol/L未満では導電性重合体の担持量が不十分となり高温耐久性が十分改善されない傾向にあり、他方、5.0mol/Lを超える場合は導電性重合体の担持量が多すぎ光電変換性能が低下してしまう傾向にある。
【0061】
なお、導電性重合体の合成方法は特に限定されるものではなく、例えば、一般的な合成方法である、対応する単量体を電解重合又は化学重合することにより得られる。
【0062】
また、半導体電極2に導電性重合体を担持させる他の方法としては、導電性重合体溶液を半導体電極2の上に滴下し、スピンコーターにより電極を高速回転させる、いわゆるスピンコート法を用いることも可能である。さらに、膜厚の制御など、重合条件を精密に制御した上で、対応する単量体を半導体電極2上で直接電解重合せしめることにより、半導体電極2に導電性重合体を担持させることも可能である。
【0063】
このようにして光電極10を作製した後は、例えば、光電極10の作製に用いた方法と同様の公知の薄膜製造技術により対極CEを作製し、図1に示すように、光電極10と対極CEとをスペーサSを介して対向させるように組み上げる。このとき、スペーサSにより光電極10と対極CEとの間に形成される空間に、高温下(例えば60〜100℃)でゲル化剤と液状電解質とを混合したものを注入し、その後、室温下で冷却することによりゲル電解質Eとし、色素増感型太陽電池20を完成させる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0065】
例えば、本発明の色素増感型太陽電池は、ゲル電解質Eがルチル型の酸化チタン粒子等の電子伝導性を有しない多孔体からなる多孔体層に担持された形態を有していてもよく、また、複数の電池を併設したモジュールの形態を有していてもよい。
【0066】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の色素増感型太陽電池について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
先ず、TiO粒子(日本エアロジル社製、商品名:「P25」)及びエチルセルロースを、それぞれ、20質量%及び10質量%の濃度になるようにタピネオールに懸濁させてペーストとした。次に、このペーストを、フッ素ドープ酸化スズ透明導電性ガラス基板(旭硝子社製)上に塗布し、大気中、450℃で30分間焼成することにより増感色素を含有していない光電極を得た。なお、半導体電極の酸化物半導体からなる層の厚さは約10μmであった。
【0067】
次に、この半導体電極をルテニウム系赤色色素(Solaronix社製、商品名:「Ruthenium535 bis TBA」)のt−ブタノールとアセトニトリルの1:1混合溶液(色素濃度0.25mg/ml)に、室温下で72時間浸漬することにより、赤色色素を吸着させた半導体電極を得た。
【0068】
次に、色素を吸着させた半導体電極を0.05mg/mlのポリ(3−オクチルチオフェン)のクロロホルム溶液に室温下にて15秒間浸漬させ、その後、半導体電極を取り出して、窒素ガスにてクロロホルムを揮発させ、ポリ(3−オクチルチオフェン)を担持させた半導体電極を得た。
【0069】
なお、ポリ(3−オクチルチオフェン)は以下の方法により合成した。先ず、3−オクチルチオフェン(東京化成工業社製)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、FeCl(和光純薬工業社製)の存在下、THFを還流しながら重合させた。その後、得られた反応生成物を2mol/Lの塩酸で繰り返し洗浄することにより残存するFeClを除去し、ポリ(3−オクチルチオフェン)を得た。得られたポリ(3−オクチルチオフェン)の数平均分子量は46,700(ゲルパーミエイションクロマトグラフ)であった。
【0070】
ここで、半導体電極に吸着された色素の量は1×10−7mol/cm(半導体粒子の比表面積あたり、以下同様)程度であり、また、半導体電極の表面又は表面近傍に担持されているポリ(3−オクチルチオフェン)の量は吸着色素量の10%程度であると推定された。
【0071】
次に、上記の光電極と同様の形状と大きさを有する対極を作製した。先ず、フッ素ドープ酸化スズ透明導電性ガラス(日本板硝子社製)の上に、塩化白金酸六水和物のイソプロパノール溶液を滴下し、大気中で乾燥した後に、400℃で10分間熱処理することにより、白金コート対極を得た。なお、この対極にはゲル電解質を注入するための孔(直径1mm)をあらかじめ設けておいた。
【0072】
次に、ゲル電解質の調製を行った。先ず、γ−ブチロラクトン(富山薬品工業製)に対して0.1mol/Lのヨウ素(Aldrich社製)、0.6mol/Lのヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム(Solaronix社製)、0.1mol/Lのヨウ化リチウム(Aldrich社製)、及び0.5mol/LのN−メチルイミダゾール(Aldrich社製)を溶解し、電解液の調製を行った。この電解液1mlに対してゲル化剤として0.1gの天然高級脂肪酸(Johnson社製)を添加して、加熱溶解させ、ゲル電解質を得た。
【0073】
次に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有するスペーサ(エチレン/メタクリル酸ランダム共重合体アイオノマーフィルム(デュポン社製、商品名「スーリン」、厚さ50μm))を準備し、光電極と対極とをスペーサを介して対向させ、熱溶着により張り合わせて電池の筐体(電解質未充填)を得た。
【0074】
次に加熱溶解したゲル電解質を対極の孔から光電極と対極との空隙に注入した後、対極の孔をスペーサと同素材で充填し、熱溶融により封止して、色素増感型太陽電池を完成させた。
【0075】
なお、ゲル電解質は加熱状態(80℃)では、液状であったが、電池の筐体に注入後、室温下で冷却することで、電池内部でゲル化した。
(実施例2)
半導体電極を浸漬するポリ(3−オクチルチオフェン)溶液の濃度を0.2mg/mlとしたこと以外は、実施例1と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
【0076】
ここで、半導体電極の表面又は表面近傍に担持されているポリ(3−オクチルチオフェン)の量は吸着色素量の30%程度であると推定された。
(実施例3)
半導体電極を浸漬するポリ(3−オクチルチオフェン)溶液の濃度を0.58mg/mlとしたこと以外は、実施例1と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
【0077】
ここで、半導体電極の表面又は表面近傍に担持されているポリ(3−オクチルチオフェン)の量は吸着色素量の60%程度であると推定された。
(実施例4)
半導体電極に吸着させる色素として、ルテニウム系赤色色素の代わりにルテニウム系黒色色素(Solaronix社製、商品名:「Ruthenium620」)を用い、半導体電極の色素溶液への浸漬時間を24時間としたこと、半導体電極を浸漬する導電性重合体溶液として、0.61mg/mlのポリ(3−オクチルチオフェン)(数平均分子量28,500)を用いたこと、及びゲル電解質のゲル化剤として、天然高級脂肪酸の代わりに“Microscopic Studies of 1,3:2,4−Di−O−benzyliden−D−Sorbitol”(Seiji Yamasaki et.al, Bulletin Chemical Society Japan,67巻,906ページ,1994年)に見られるソルビトール誘導体(新日本理化社製)0.2gを用いたこと以外は、実施例1と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
【0078】
ここで、半導体電極に吸着された色素の量は1×10−7mol/cm程度であり、また、半導体電極の表面又は表面近傍に担持されているポリ(3−オクチルチオフェン)の量は吸着色素量の70%程度であると推定された。
(実施例5)
Aldrich社のチタン(IV)イソプロポキシド25mlと0.1mol/Lの硝酸150mlとを室温下で加えた後、80℃で8時間攪拌して反応させた。次に、この反応溶液をチタン製耐圧容器に入れ、230℃で15時間加熱処理した。こうして得た溶液を固形分濃度が13%になるまで水分を蒸発させ、固形分濃度が13%となった溶液に対して0.1g/mlの割合で数平均分子量8,400のポリエチレンオキシドを混合し、酸化チタン微粒子ペーストを得た。
【0079】
次に、得られた酸化チタン微粒子ペーストをフッ素ドープ酸化スズ透明導電性ガラス基板(日本板硝子社製)上に塗布し、550℃で30分焼成することにより、増感色素を含有していない光電極を得た。なお、半導体電極の酸化物半導体粒子の層の厚さは約10μmであった。
【0080】
次に、この半導体電極をルテニウム系赤色色素(Solaronix社製、商品名:「Ruthenium535 bis TBA」)のアセトニトリル溶液(色素濃度0.25mg/ml)に72時間浸漬することにより、色素を吸着させた酸化物半導体電極を得た。
【0081】
半導体電極に担持させる導電性重合体には、3−ヘキシルチオフェンを電解重合して得た数平均分子量36,000のポリ(3−ヘキシルチオフェン)を用いた。このポリ(3−ヘキシルチオフェン)を1.05mg/mlの濃度でクロロホルムに溶解させ、この溶液を上記の色素を吸着させた酸化物半導体電極上に室温下でスピンコートして、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を担持させた半導体電極を得た。
【0082】
その後は、スペーサ及び封止剤としてポリエチレンフィルム(デュポン社製、商品名「バイネル」、厚さ50μm)を用いたこと、及びゲル電解質のゲル化剤として0.35gのソルビトール誘導体(新日本理化社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
【0083】
ここで、半導体電極に吸着された色素の量は1×10−7mol/cm程度であり、また、半導体電極の表面又は表面近傍に担持されているポリ(3−ヘキシルチオフェン)の量は吸着色素量の80%程度であると推定された。
(実施例6)
ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウムの濃度を0.6mol/Lの代わりに0.9mol/Lとした以外は、実施例5と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
(実施例7)
導電性重合体として、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)の代わりに数平均分子量14,000のポリ(3−ブチルチオフェン)を用いたこと以外は、実施例5と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
【0084】
ここで、半導体電極の表面又は表面近傍に担持されているポリ(3−ブチルチオフェン)の量は吸着色素量の80%程度であると推定された。
(実施例8)
導電性重合体として、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)の代わりに数平均分子量11,800のポリ(3,4−ジブチルチオフェン)を用いたこと以外は、実施例5と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
【0085】
なお、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)は、3,4−ジブロモチオフェンと1−ブロモブタン(いずれも東京化成工業社製)をグリニャール反応させて得た3,4−ジブチルチオフェンを、電解重合させることにより得た。
【0086】
ここで、半導体電極の表面又は表面近傍に担持されているポリ(3,4−ジブチルチオフェン)の量は吸着色素量の80%程度であると推定された。
(実施例9)
導電性重合体として、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)の代わりに数平均分子量22,400のポリ(3−メトキシチオフェン)を用いたこと以外は、実施例5と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
【0087】
なお、ポリ(3−メトキシチオフェン)は、3−メトキシチオフェン(東京化成工業社製)を電解重合させることにより得た。
【0088】
ここで、半導体電極の表面又は表面近傍に担持されているポリ(3−メトキシチオフェン)の量は吸着色素量の80%程度であると推定された。
(実施例10)
ルテニウム系赤色色素の代わりにルテニウム系黒色色素(Solaronix社製、商品名「Ruthenium620」)を用いたこと、及びヨウ化リチウムの濃度を0.1mol/Lの代わりに0.3mol/Lにしたこと以外は、実施例5と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
【0089】
ここで、半導体電極に吸着された色素の量は1×10−7mol/cm程度であり、また、半導体電極の表面又は表面近傍に担持されているポリ(3−ヘキシルチオフェン)の量は吸着色素量の80%程度であると推定された。
(比較例1)
半導体電極に導電性重合体を担持させなかったこと以外は、実施例1と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
(比較例2)
半導体電極に導電性重合体を担持させなかったこと以外は、実施例4と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
(比較例3)
半導体電極に導電性重合体を担持させなかったこと以外は、実施例5と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
(比較例4)
半導体電極に導電性重合体を担持させる代わりに、半導体電極をジシクロヘキシルカルボジイミド(和光純薬工業社製)の0.2mol/Lブチロラクトン溶液に室温下で1時間浸漬した以外は、実施例5と同一の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
(比較例5)
半導体電極に導電性重合体を担持させなかったこと以外は、実施例5と同一の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
(比較例6)
半導体電極に導電性重合体を担持させなかったこと以外は、実施例6と同一の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
(比較例7)
半導体電極に導電性重合体を担持させなかったこと以外は、実施例7と同一の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
(比較例8)
半導体電極に導電性重合体を担持させなかったこと以外は、実施例10と同一の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
[高温耐久性試験]
以下の手順により電池特性試験を行い、実施例1〜10、比較例1〜8の色素増感型太陽電池の光電変換効率ηを測定し、色素増感型太陽電池の高温耐久性試験を行った。
【0090】
なお、電池特性試験は、ソーラーシミュレータ(ワコム社製、商品名;「WXS−85−H型」)を用い、AMフィルター(AM1.5)を通したキセノンランプ光源から100mW/cmの擬似太陽光を照射することにより以下の手順に従って行った。
【0091】
先ず、完成直後の各色素増感型太陽電池について、I−Vテスターを用いて、室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び曲線因子(F.F.)を求め、これらから初期の光電変換効率(η(%))を求めた。なお、色素増感型太陽電池の光電変換効率(η(%))は、下記式(A)に基づいて算出した。
η=100×(Voc×Jsc×F.F.)/P…(A)
ここで、Pは入射光強度[mWcm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、F.F.は曲線因子を示す。
【0092】
その後、60℃、70℃、80℃又は85℃の恒温槽に色素増感型太陽電池を入れ、遮光状態で、かつ、回路開放状態で保存し、所定期間が経過するごとに恒温槽から取り出して、室温にて上記と同様の電流−電圧特性を測定し、所定期間経過後の光電変換効率ηを求めた。
【0093】
なお、実施例5〜10及び比較例3〜8においては、対極の裏面(ゲル電解質に接していない面)にアルミホイルを貼り、ゲル電解質を透過した光をアルミホイルに反射させて電池特性試験を行った。
【0094】
図2は、実施例1〜3及び比較例1の色素増感型太陽電池について、85℃での高温耐久試験を行った結果を示したものである。図に示した結果から明らかなように、本発明に係る半導体電極に導電性重合体が担持された実施例1〜3の色素増感型太陽電池は、85℃の環境下で長期に保存された後においても優れた光電変換効率を維持することが確認された。一方、半導体電極に導電性重合体が担持されていない比較例1の色素増感型太陽電池は、保存時間の経過とともに光電変換効率が大幅に低下していることが確認された。
【0095】
図3は、実施例4及び比較例2の色素増感型太陽電池について、60℃の高温耐久性試験を行った結果を示したものである。図に示した結果から明らかなように、本発明に係る半導体電極に導電性重合体が担持された実施例4の色素増感型太陽電池は、60℃の環境下で長期に保存された後においても優れた光電変換効率を維持することが確認された。一方、半導体電極に導電性重合体が担持されていない比較例2の色素増感型太陽電池は、保存時間の経過とともに光電変換効率が大幅に低下していることが確認された。
【0096】
図4は、実施例5及び比較例3の色素増感型太陽電池について、70℃の高温耐久性試験を行った結果を示したものである。図に示した結果から明らかなように、本発明に係る半導体電極に導電性重合体が担持された実施例5の色素増感型太陽電池は、70℃の環境下で長期に保存された後においても優れた光電変換効率を維持することが確認された。一方、半導体電極に導電性重合体が担持されていない比較例3の色素増感型太陽電池は、保存時間の経過とともに光電変換効率が大幅に低下していることが確認された。
【0097】
図5は、比較例4及び5の色素増感型太陽電池について、80℃の高温耐久性試験を行った結果を示したものである。図に示した結果から明らかなように、半導体電極に導電性重合体が担持されていない比較例5の色素増感型太陽電池は、80℃の環境下で長期に保存された場合、保存時間の経過とともに光電変換効率が大幅に低下していることが確認された。また、半導体電極をエステル化反応剤で処理した色素増感型太陽電池も同様に、保存期間の経過とともに光電変換効率が大幅に低下し、高温耐久性が不十分であることが確認された。
【0098】
また、実施例6〜10及び比較例6〜8の色素増感型太陽電池については、70℃の環境下で500時間保存した後の光電変換効率ηを算出し、下記式(B)で表される光電変換効率維持率を求めた。
光電変換効率維持率=100×η/η
本発明に係る半導体電極に導電性重合体が担持された実施例6〜10の色素増感型太陽電池の光電変換効率維持率は、それぞれ、91%、88%、84%、86%及び75%となり70℃の環境下で500時間保存した後も十分な光電変換効率を維持できたことを確認できた。一方、半導体電極に導電性重合体が担持されていない比較例6〜8の色素増感型太陽電池の光電変換効率は、それぞれ、68%、59%及び42%となり十分な光電変換効率を維持できなかったことが確認された。
【0099】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高温の作動環境下であっても、十分な光電変換効率を長期にわたり維持することのできる高温耐久性に優れた色素増感型太陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の色素増感型太陽電池の第1実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
【図2】実施例1〜3及び比較例1で得られた色素増感型太陽電池の光電変換効率η[%]の経時変化を表すグラフである。
【図3】実施例4及び比較例2で得られた色素増感型太陽電池の光電変換効率η[%]の経時変化を表すグラフである。
【図4】実施例5及び比較例3で得られた色素増感型太陽電池の光電変換効率η[%]の経時変化を表すグラフである。
【図5】実施例4及び比較例5で得られた色素増感型太陽電池の光電変換効率η[%]の経時変化を表すグラフである。
【符号の説明】
1…透明電極、2…半導体電極、3…透明導電膜、4…透明基板、10…光電極、20…色素増感型太陽電池、CE…対極、E…ゲル電解質、F1,F2,F3…受光面、F22…半導体電極2のゲル電解質側の表面、S…スペーサ。

Claims (1)

  1. 受光面を有する半導体電極と当該半導体電極の前記受光面上に隣接して配置された透明電極とを有する光電極と、対極とを有しており、
    前記半導体電極と前記対極とがゲル電解質を介して対向配置された色素増感型太陽電池であって、
    当該半導体電極の表面又は表面近傍に下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなる数平均分子量1,000〜50,000の重合体が担持されていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
    Figure 2004253333
    [式(1)中、Xは硫黄原子又はNR(Rは水素原子又は炭素数が1〜12の置換されていてもよいアルキル基を示す)を示し、
    、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数が1〜12の置換されていてもよいアルキル基、及び炭素数が1〜6の置換されていてもよいアルコキシ基からなる群から選択されるいずれかを示し、
    ただし、R、R、Rのすべてが水素原子及び炭素数が1〜3の置換されていてもよいアルキル基からなる群から選択されるいずれかである場合を除く。]
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