以下、本発明を実施するための最良の形態として、飲食店や家庭等において食物を調理する際に適用されるシステムキッチンについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用したシステムキッチン1は、少なくともワークトップ又はカウンター(以下、これらを天板という)を有するシステムキッチンであって、図1に示すように、キャビネット11と、このキャビネット11における上面を被覆する天板13と、この天板13に隣接する流し台領域Aにおいて形成されたシンク14と、シンク14に対して湯水を供給するための水栓15とを備えている。以下では、システムキッチン1を、キッチンの作業台を壁面から分離し、島(Island)型に設けたいわゆるアイランドキッチンとして適用する場合について説明をするが、かかる場合に限定されるものではなく、シンク、コンロのある作業台を1列に並べたいわゆる1列型キッチン、或いはシンク、コンロをL字型に並べたいわゆるL型キッチンとして適用するようにしてもよい。
キャビネット11は、例えば前面側に片開き可能に軸着されている図示しない扉や収納用引出を設けてもよく、これら各扉や収納用引出内には、主として台所用具や食器等を収納可能な棚やケース等を設けるようにしてもよい。
シンク14には、水切り用の凹み部等が形成されており、底面には排水口が設けられている。このシンク14において、凹み部並びに排水口は、プレス成形や注型成形、インジェクション成形等の方法により互いに一体に成形されている。シンク14の材質は、特に限定されるものではないが、耐熱性のある樹脂やステンレス鋼板等の金属を用いることも可能である。
天板13は、表面が平滑なガラス板で構成されている。この天板13上には、食材等を加熱調理するための調理鍋やポット等に代表される調理用容器や、実際に食材を切り刻み、加工するためのまな板がユーザ任意の位置に載置可能な構成とされている。この天板13は、全ての領域が同素材で構成される場合に限定されるものではなく、後述するコイルユニットを配置する範囲について上述の如きガラス板等で構成されていればよい。
この天板13上には、調理用容器が複数に亘り任意の位置に載置される場合もあるし、まな板以外に、図示しない食器篭や炊飯器、ジューサー等といった各種調理用容器20がそれぞれ任意の位置に載置される場合もある。即ち、この天板13は、調理用容器20が載置される可能性があることから、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、機械的強度に優れた材料で構成する必要があるところ、通常、耐熱ガラスやセラミックス等で構成される。
ちなみに、本発明を適用したシステムキッチン1では、天板13上に載置された調理用容器20につき、IHヒーターを利用して誘導加熱する。実際にこの誘導加熱は、天板13の下部に配設されたコイルユニット3を介して実行していくことになる。また、このシステムキッチン1では、ユーザがこれらコイルユニット3を操作するための操作板95が天板13側方に配設されてなるとともに、この操作板95を介してユーザの操作を受けてコイルユニット3に制御信号を送信するための中央制御ユニット94が内部に実装されている。
コイルユニット3は、少なくとも1箇所に亘り移動自在に配置されてなる平板状のベースプレート4に搭載されている。以下では、図1に示すように、天板13の長手方向Xに4列のベースプレート4a〜4dを配列させた場合を例にとり説明をする。このとき、ベースプレート4a〜4dをユーザによる指示に基づいて制御することとし、ベースプレート4dを、天板13上に載置された調理用容器20へ向けて自動的に移動制御するものとする。
また、これらベースプレート4a〜4dは、天板13の幅方向Yに移動自在とされているものとする。なお、天板13上には、これらベースプレート4a〜4dが配列されている箇所に応じたマーキングが描かれていてもよい。
ベースプレート4は、天板13下部における空間19中に配設される。この空間19は、天板13と底板の周囲を側壁で囲むことにより密閉状態とされたいわゆる閉空間として構成される。ちなみに、この空間19は、天板13上において調理用容器20が載置可能な位置に対応させて形成されている。
また、この各ベースプレート4a〜4dの移動方向Yに沿って、さらに残熱位置表示ユニット5a〜5dが設けられている。
図2は、このベースプレート4、残熱位置表示ユニット5の構成を拡大した斜視図である。また、図3は、このベースプレート4、残熱位置表示ユニット5の側断面図を示している。コイルユニット3が搭載されたベースプレート4は、レール130に係合されてなる。ちなみに、このレール130はY方向に延長されている。即ち、このレール130に係合されたベースプレート4は、このレール130に沿ってY方向へ移動自在とされている。また、このベースプレート4上には、更に第1の発光素子121が少なくとも1箇所以上において形成されている。
残熱位置表示ユニット5は、枠体124と、この枠体124におけるレール130を挟んで両端に設けられた第2の発光素子122と、この枠体124の当該両端にそれぞれ設けられた係合部125、127と、枠体124の中心に向けて気体を送風可能な冷却ファン123とを備えている。係合部125、127に対してそれぞれ係合可能な鋼棒からなるレール126、128とを備えている。レール126、128は、レール130と平行となるようにY方向に向けて延長されている。この残熱位置表示ユニット5は、このレール126、128に沿ってY方向へ移動自在とされている。なお、第2の発光素子122は、枠体124の両端に設けられている場合に限定されるものではなく、枠体124における少なくとも1箇所以上において設けられていればよい。
このようにシステムキッチン1においては、コイルユニット3a〜3d(ベースプレート4a〜4d)を幅方向Yに移動させることができるため、天板13上の大半の領域で、鍋等の調理用容器を誘電加熱することができる。即ち、本実施形態のシステムキッチン1は、流し台領域A以外の領域が、従来のコンロ領域及び調理台ユニット領域の両方の機能を兼ね備えた加熱調理領域Dとして機能させることが可能となる。このため、ユーザは、天板13上の任意の位置で加熱調理を行うことができると共に、天板13上の任意の位置でまな板等を載置して調理を行うことができ、更には天板13上の任意の位置に各種調理用機器を載置することができる。
なお、ベースプレート4は、図示しない昇降ユニットを介して昇降可能とされている。この昇降ユニットの昇降動作は、後述するモータ131により制御されることになる。このモーター131の回転に応じてベースプレート4が下降限と上昇限との間を昇降することになる。また、このベースプレート4は、係合されたレール130に沿って後述するベースプレート駆動機構を介して移動可能とされている。このベースプレート駆動機構は、ベースプレート4を水平方向へ駆動するための例えばモータやシリンダ等、周知のいかなる手段により具体化されていてもよい。
同様に残熱位置表示ユニット5は、係合されたレール126、128に沿って後述する枠体駆動機構を介して移動可能とされている。この枠体駆動機構は、ベースプレート4を水平方向へ駆動するための例えばモーターやシリンダ等、周知のいかなる手段により具体化されていてもよい。
また、ベースプレート4と残熱位置表示ユニット5とは、図3に示すように、互いに非接触となるような形状で構成されている。即ち、この残熱位置表示ユニット5は、ベースプレート4の周囲を迂回するような断面形状で構成されている。これにより、ベースプレート4、残熱位置表示ユニット5を互いに独立してY方向へ動かしても互いに接触することなくぶつからずに移動を実現することが可能となる。
このベースプレート4の水平移動、昇降動作や、残熱位置表示ユニット5の水平移動は、中央制御ユニット94による制御に基づいて実行されていくことになる。この中央制御ユニット94は、操作板95に接続されており、この操作板95に対するユーザの操作状況が全てこの中央制御ユニット94に伝えられることになる。この結果、操作板95を操作することにより中央制御ユニット94を介してベースプレート4(コイルユニット3)を制御することが可能となる。
図4は、中央制御ユニット94やコイルユニット3a〜3dの駆動部を示すブロック図であり、図5はコイルユニット3a〜3dの構造を示す断面図である。
中央制御ユニット94は、CPU等で構成される制御部401と、液晶パネル等を介してユーザに対して所定の情報を表示する表示部363とを備え、この制御部401から、モーター131、ベースプレート駆動機構133、枠体駆動機構134に制御信号を送信可能としているとともに、操作板95を介したユーザからの入力信号を制御部401を介して受け付ける。
操作板95には、ユーザが実際にコイルユニット3a〜3dを操作するためのキー及びボタン等が設けられている。この操作板95においてユーザから入力された内容は、制御部401へ通知され、制御部401は、接続された制御回路347へこれを通知し、制御回路347はかかる入力された内容に基づいてコイルユニット3a〜3dの各構成要素を制御していくことになる。また、この制御部は、操作板95を介したユーザからの入力に基づいて制御信号を生成し、これをモーター131、ベースプレート駆動機構133、枠体駆動機構134に送信する。その結果、ユーザから入力された内容に基づいて、コイルユニット3による誘導加熱や、ベースプレート4、残熱位置表示ユニット5の移動動作を実現することが可能となる。
第2の発光素子122に対しては、制御部401から枠体駆動機構134を介して制御信号が送信されてくることになる。第2の発光素子122は、例えばLED(Light Emitting Diode)等で構成され、制御部401から送信されてきた信号に基づいて発光自在に構成されている。
冷却ファン123に対しては、制御部401から枠体駆動機構134を介して制御信号が送信されてくることになる。冷却ファン123は、図示しない羽部を回転させることにより、枠体122内部に対して送風することが可能となる。
なお、この操作板95は、液晶のタッチパネル等を想定しているが、これに限定されるものではなく、例えば、無線通信でユーザからの入力内容を送信するためのリモートコントローラで構成されていてもよい。
コイルユニット3a〜3dは、インバータブロック331と、制御ブロック332に大別されて構成されている。このインバータブロック331は、実際に誘導加熱する高周波磁界を制御するためのブロックであり、制御ブロック332は、コイルユニット3全体を制御するためのブロックである。
インバータブロック331は、家庭用のAC200V(50/60Hz)の電源を電源プラグ329から電源コード330を介して受給する整流回路333と、この電源コード330と整流回路333との間に配設された電流検知コイル344と、この整流回路333に接続されてなり、鉄心にコイルを巻回すことにより構成されるチョークコイル334と、このチョークコイル334との間で直列LC回路を構成するコンデンサ335と、整流回路333の出力端子間を直列に接続するようにして配設される第1のスイッチング素子336並びに第2のスイッチング素子337と、これらスイッチング素子336,337に対して並列に接続される2つの共振コンデンサ338,339と、これら共振コンデンサ338,339の接続点に短絡されるカーレントトランス340と、インバータブロック331の内部の何れかに実装される回路保護サーモ341とを備えている。このインバータブロック331におけるカーレントトランス340の一端側と、上記スイッチング素子336,337の接続点には、さらに誘導加熱コイル342が接続され、この誘導加熱コイル342の略中心付近には鍋温度検知サーミスタ350が設けられている。
制御ブロック332は、インバータブロック331における電流検知コイル344に接続される一次電流検知回路345と、整流回路333へ供給される電流を検知するための電源電圧検知回路346と、少なくとも一次電流検知回路345並びに電源電圧検知回路346に接続されてなり、この制御ブロック332全体を制御するための中央演算ユニットとしての役割を担う制御回路347と、この制御回路347と上記スイッチング素子336,337とに接続されるインバータ駆動回路348と、接続された回路保護サーモ341からの検知情報を制御回路347へ送信するための温度検知回路349と、カーレントトランス340並びに制御回路347に夫々接続されるコイル電流検知回路351と、温度検知サーミスタ350並びに制御回路347に夫々接続される鍋温度検知回路352とを少なくとも備えている。また、この制御ブロック332は、制御回路347に対して更に冷却ファン354と、アラーム362と、第1の発光素子121とを接続して構成されている。
図5に示すように、上述した各構成要素は、筐体305内部に実装されている。特に、インバータブロック331及び制御ブロック332は、載置台306上に載置されて取り付けられることになる。また、この筐体305には、冷却用ファン354の配設位置近傍の底面に吸気口358が形成されており、さらに一の側面には排気口359が形成されている。
次に、インバータブロック331の各構成要素について詳細に説明する。整流回路333は、接続された電源プラグ329からの電源用電流を整流するために配設されたものであって、供給された交流としての電源用電流を直流に変換する。チョークコイル334とコンデンサ335とにより構成されるLC直列回路は、いわゆる平滑回路を構成する。スイッチング素子336,337は、例えばトランジスタ等で構成され、各スイッチング素子336,337のエミッタとコレクタには逆導通用のダイオード362,363がそれぞれ並列接続される。スイッチング素子336のベースにはインバータ駆動回路348からの駆動信号QAが供給され、スイッチング素子337のベースにはインバータ駆動回路348からの駆動信号QBが供給される。即ち、インバータ駆動回路348は、この駆動信号QAと駆動信号QBとを交互に供給することにより、共振コンデンサ338,339と誘導加熱コイル342に共振電流を流すことが可能となる。
誘導加熱コイル342は、図5に示すように、筐体305の上面305aに対向させて配設されている。この誘導加熱コイル342における巻き数は、上記調理用容器20を加熱する際における電力を支配するものであり、調理用容器20における底板の表皮抵抗や共振電流の大きさとの関係において最適に調整されている必要がある。この誘導加熱コイル342は、上記供給される共振電流に基づいて共振されることになり、その結果、高周波磁界を発生させることが可能となる。
回路保護サーモ341は、温度の変化に応じて抵抗値が変化するサーミスタ等で構成されており、主としてインバータブロック331や制御ブロック332を構成する空間の温度を測定するものである。
温度検知サーミスタ350は、回路保護サーモ341と同様にサーミスタで構成されている。この鍋温度検知サーミスタ350は、天板13を介して調理用容器20の温度を検知するためのものであり、上述の如く誘導加熱コイル342の中心付近に配設される。更にまた、カーレントトランス340は、誘導加熱コイルに流れる共振電流の電流値を検知するためのコイル等である。
次に、制御ブロック332の各構成要素について詳細に説明する。一次電流検知回路345は、接続された電流検知コイル344を介して、電源プラグ329を介して供給される電源用電流の電流値を検知する。そして、一次電流検知回路345は、検知した電流値を制御回路347へと通知する。
電源電圧検知回路346は、電源プラグ329からの電源用電流に基づく電圧を検知し、この検知した電圧を制御回路347へ通知するものである。
制御回路347は、例えばCPU等で構成される。そして、制御回路347には、上述した一次検知回路345により検知された電流値が通知され、電源電圧検知回路346により検知された電圧が通知された場合には、これらを参照しつつ、設定された電力となるようにインバータ駆動回路348を制御する。また、制御回路347は、操作部357を介したユーザからの命令を解釈し、これに基づいてインバータ駆動回路348、冷却ファン354及びアラーム362を制御すると共に、表示部363を介して所定の情報を表示する。
インバータ駆動回路348は、正弦波信号を発振させるための発振回路であり、制御回路347による制御に基づいて、上記駆動信号QA又は駆動信号QBを生成するものである。
温度検知回路349は、回路保護サーモ341における抵抗値の変化を検出するものである。この温度検知回路349は、検出した回路保護サーモ341の抵抗値の変化に基づき、筐体305の内部の温度を検知する。この温度検知回路349は、検知した筐体305内部の温度を制御回路347へ通知する。制御回路347は、温度検知回路349からの通知を介して筐体305内部の温度を随時認識することが可能となる。これにより、例えば運転中において冷却ファン等が停止した場合、及び吸気口358又は排気口359が詰まった場合等のように冷却性能が低下し、筐体305の内部の温度が急激に上昇した場合には、制御回路347は、温度検知回路349を介してこれを認識し、コイルユニット3a〜3dの動作を停止させることも可能となる。
コイル電流検知回路351は、カーレントトランス340により検知された共振電流の電流値を読み取り、これを制御回路347へ通知するものである。この制御回路347は、コイル電流検知回路351を介して共振電流の電流値を随時認識することができる。これにより、制御回路347は、例えば、調理用容器20の材質や形状に応じて決定される誘導加熱に必要な電力に対して、必要以上の共振電流が流れるのを抑制することが可能となり、更には、誘導加熱中において調理用容器20が外された場合において、コイルユニット3a〜3dの動作を停止させるとともに、アラーム362を介してこれをユーザに通知することも可能となる。
鍋温度検知回路352は、鍋温度検知サーミスタ350における抵抗値の変化を検出し、この検出した鍋温度検知サーミスタ350の抵抗値の変化に基づき、調理用容器20の温度を検知するものである。そして、鍋温度検知回路352は、検知した調理用容器20の温度を制御回路347へ通知する。これにより、制御回路347は、温度検知回路349からの通知を介して調理用容器20の温度を随時認識することが可能となり、例えば調理用容器20の底部の温度が規定値以上に上昇した場合には、コイルユニット3a〜3dの動作を停止させることも可能となる。
冷却ファン354は、制御回路347による制御に基づいて回転し、この冷却ファン354の回転に応じて、吸気口358から冷却風が吸い込まれる。そして、この吸い込まれた冷却風は、インバータブロック331や制御ブロック332上を通過することによりこれらを冷却し、排出口359から外部へと排出される。
アラーム362は、制御回路347による制御に基づいて所定の音を発生させる音声発振器で構成される。
第1の発光素子121は、例えばLED(Light Emitting Diode)等で構成され、制御回路347から送信されてきた信号に基づいて発光自在に構成されている。
次に、コイルユニット3a〜3dの動作、即ち、上述の如く構成されたコイルユニット3a〜3dにより、調理用容器20を誘導加熱する方法について説明する。
先ず、天板13上の任意の位置に鍋等の調理用容器20を載置し、この調理用容器20の直下域にコイルユニットを移動させる。次に、調理用容器20の直下域に配置されたコイルユニットにより、調理用容器20を誘電加熱する。具体的には、先ず、電源プラグ329から電源コード330を介して電源用電流を受給する。この受給した電源用電流は、整流回路333において整流されることになる。このとき、インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御の下で、スイッチング素子336,337に供給する駆動信号QA、QBを調整する。
図6(a)は誘導加熱コイル342に流れる共振電流を示す図であり、図6(b)スイッチング素子336に対して供給される駆動信号QAを示す図であり、図6(c)は、スイッチング素子337に対して供給される駆動信号QBを示す図である。図6(a)〜(c)に示すように、インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御下で、時点t0から時点t1に至るまで駆動時間がT1である駆動信号QAをON出力する。この駆動時間T1の間では、スイッチング素子336及びダイオード362と、誘導加熱コイル342と、共振コンデンサ338とで形成される閉回路で共振することになる。そして、インバータ駆動回路348は、時点t1となったときに駆動信号QAをOFFにする。
次に、インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御下で、時点t2から駆動時間がT2である駆動信号QBをON出力する。この駆動時間T2の間では、スイッチング素子337及びダイオード363と、誘導加熱コイル342と、共振コンデンサ339とで形成される閉回路で共振することになる。なお、この駆動時間T2は、上記駆動時間T1と同一である。
このように閉回路を変えて誘導加熱コイル342を共振させることにより、誘導加熱コイル342において高周波磁界を発生させることができる。この発生させられた高周波磁界は、天板13を介して調理用容器20の底板を通過していくことになる。この調理用容器20の底板は、金属製であるため、この高周波磁界を金属製の底板に通すことにより、渦電流が発生することになる。この渦電流と調理用容器20の持つ電気抵抗によりジュール熱が生じ、調理用容器20自体が発熱することになる。その結果、調理用容器20内にある食物を加熱調理することが可能となる。
本実施形態のシステムキッチン1においては、加熱調理台領域Dの横方向Xに複数個のコイルユニットを配列し、これらのコイルユニットを加熱調理台領域Dの縦方向Yに移動可能としているため、コイルユニットを移動させることにより、ユーザは、天板13上の任意の位置に加熱調理容器20を配置することができ、調理内容によって、適宜都合のよい場所で加熱調理することができる。また、加熱調理を行っていない領域は、全て調理台として使用可能であるため、調理台スペースの位置が限定されず、従来のシステムキッチンに比べて、調理台スペースを広くとることができる。更に、このシステムキッチン1においては、加熱調理台領域Dにおける略全ての領域が、誘電加熱領域でありかつ調理台領域であるため、調理台スペース及び加熱スペースの広さを適宜、フレキシブルに変更させることが可能となり、限られた天板13上のスペースを効率的に利用することが可能となる。
なお、本実施形態のシステムキッチン1においては、加熱部となるコイルユニットを4台配設しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、横方向Xに複数個のコイルユニットが配列されていればよく、その数はキャビネット11の横方向Xにおける長さに応じて変えることができる。また、本実施形態のシステムキッチン1においては、Y方向に複数個のコイルユニットを配列させる構成としてもよい。
更に、本実施形態はアイランドタイプのシステムキッチンを例に説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の構成は、流し台領域Aが設けられた作業台と加熱調理部Dが設けられた作業台とを1列に並べたいわゆる1列型キッチン、及び流し台領域Aが設けられた作業台と加熱調理部Dが設けられた作業台とをL字型に並べたいわゆるL型キッチンにも適用することができる。更にまた、コイルユニット3の初期状態の位置も、縦方向Yにおける中央部に限定されるものではなく、用途に応じて適宜設定することができ、例えば、1列型キッチンに適用する場合は、コイルユニット3を壁面側に寄せた状態を初期状態をとすることもできる。
なお、本発明では、コイルユニット3による現時点の加熱位置や残熱位置をユーザに対して認識させることができる。以下、このユーザに対して加熱位置や残熱位置を認識させるプロセスについて説明をする。
先ず図7におけるa−1に示すように、コイルユニット3が搭載されたベースプレート4を介して調理用容器20を誘導加熱している状態の下では、第1の発光素子121を発光させる。第1の発光素子121が発光している状態の意味するところは、現時点においてコイルユニット3を介して誘導加熱が行われていることであり、天板13における当該発光箇所の周囲は温度が高くなっていることを警告するものである。天板13をガラス等で構成しておくことにより、仮にこれを装飾の観点から色付きガラスとした場合においても、LED等の発光を外側から視認し、確認することが可能となる。また、調理用容器20を他の箇所へ移し、天板13におけるベースプレート4の直上には、何ら他の調理用容器20等が載置されていない状態の下においても、コイルユニット3を介した誘導加熱を継続させる場合には、この第1の発光素子121を点灯させたままの状態で維持する。この発光素子121の点灯箇所を識別することにより、ユーザは、調理用容器20が置かれていない天板13上において現時点において誘導加熱が行われている箇所を認識することが可能となる。このため、天板13上のかかる発光素子121の点灯箇所である高温領域に手を触れないように注意することができるため、安全性を向上させることが可能となる。
次にベースプレート4を現時点における誘導加熱位置から、他の箇所へと移動させたい旨の要求が操作板95を介してユーザから入力された場合においては、先ずコイルユニット3による誘導加熱を停止させる。次に、中央制御ユニット94による制御の下、今まで誘導加熱を行っていた位置へ向けて残熱位置表示ユニット5を枠体駆動機構134により移動させる。その結果、a−2に示すように、ベースプレート4と残熱位置表示ユニット5とが同一位置において重なることになる。かかるa−2の状態においては、調理用容器20が載置されている場合もあれば、載置されていない場合もあるが、何れの場合においても、ベースプレート4上の第1の発光素子121及び/又は残熱位置表示ユニット5における第2の発光素子122を点灯させる。
次に、a−3に示すように、ベースプレート4を他の位置へと移動させる。ちなみに、このa−3の状態は、他の位置に載置された調理用容器20の直下へベースプレート4を移動させる場合を例に挙げている。なお、直前に調理用容器20を加熱していた箇所の天板13には、熱が残存している。以下、これを残熱領域というが、かかる残熱領域には既に残熱位置表示ユニット5が移動されてきて静止している状態にある。この段階において残熱位置表示ユニット5における第2の発光素子122を点灯させておく。これにより、ユーザは、残熱領域をこの第2の発光素子122を介して即座に把握することが可能となる。
次にa−4に示すように他の位置に載置された調理用容器20の直下へベースプレート4を移動させた後、コイルユニット3による誘導加熱を開始する。このコイルユニット3による誘導加熱の開始に応じて第1の発光素子121を点灯させる。また、このa−4の状態においても天板13における残熱領域の温度が下がることも想定されることから、残熱領域に位置する残熱位置表示ユニット5をそのままの状態で静止させ、第2の発光素子122を消灯させる。このとき、加熱終了後から早い時間においては、残熱領域の温度も高いため、第2の発光素子122を点灯させ続けるようにしてもよい。その結果、ユーザは、このa−4の状態において、コイルユニット3による調理用容器20の誘導加熱が行われている箇所以外において、この第2の発光素子122が点灯している箇所において熱が残っていることを認識することが可能となる。このため、天板13上のかかる発光素子121、122の点灯箇所である高温領域に手を触れないように注意することができるため、安全性を向上させることが可能となる。
なお本発明においては、残熱位置表示ユニット5が残熱領域に位置しているときに、冷却ファン123を回転させるように制御するようにしてもよい。これにより、ユーザに対して現時点における残熱領域を認識させるとともに、当該残熱領域に対して同時に送風することにより、これを冷却させることができる。その結果、残熱領域の温度を素早く下げることができ、より安全性の高いシステムを提供することが可能となる。
なお本発明においては、a−1に示すように、コイルユニット3により調理用容器20を誘導加熱させる際には、ベースプレート4を図8(a)に示すように、天板13の底面へ近接させるようにしてもよい。これにより誘導加熱を効率的に行うことが可能となる。次にこのベースプレート4を移動させる際には、図8(b)に示すように、ベースプレート4を天板13の底面から離間させる。次にこの天板13底面とコイルユニット3との間に形成された隙間に、残熱位置表示ユニット5における枠体124を滑り込ませる。その後このベースプレート4をY方向へ移動させる。
即ち、ベースプレート4を天板13の底面から離間させることにより隙間を形成し、当該隙間に残熱位置表示ユニット5を介在させ、その後静止させる。これとともに、ベースプレート4を誘導加熱すべき他の位置へ移動させる。これにより、ベースプレート4は残熱位置表示ユニット5の存在が障壁になることなく、任意のY方向の位置へ移動させることが可能となる。
なお本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明を適用したシステムキッチン1においては、残熱位置表示ユニット5の構成を省略するようにしてもよい。かかる場合には第1の発光素子121を介して現時点における加熱位置のみをユーザに認識させるシステムとなる。通常、残熱位置よりも現時点における誘導加熱位置の方が温度が高いため、これをユーザに認識させるのみのシステムであっても十分な効果を得ることが可能となる。
また図9は、他の残熱位置表示ユニット6の形態を示している。各コイルユニット3a〜3d(ベースプレート4a〜4d)毎にそれぞれ残熱位置表示ユニット6a〜6dがそれぞれ割り当てられている。この残熱位置表示ユニット6a〜6dは天板13表面を介して視認可能なLED等の発光素子で構成されている。この残熱位置表示ユニット6a〜6dは、各コイルユニット3a〜3d(ベースプレート4a〜4d)単位で、残熱の有無を表示可能なデバイスとして構成される。即ち、残熱位置表示ユニット6aが点灯した場合には、このコイルユニット3aを構成する列の何れかに残熱領域が存在することを、また残熱位置表示ユニット6bが点灯した場合には、このコイルユニット3bを構成する列の何れかに残熱領域が存在することを、残熱位置表示ユニット6cが点灯した場合には、このコイルユニット3cを構成する列の何れかに残熱領域が存在することを、残熱位置表示ユニット6dが点灯した場合には、このコイルユニット3dを構成する列の何れかに残熱領域が存在することを示している。この残熱位置表示ユニット6への点灯並びに消灯を制御するのは、中央制御ユニット94であるが、当該中央制御ユニット94は、コイルユニット3a〜3dの何れかによる誘導加熱が行われているかを識別した上で、その誘導加熱が行われているコイルユニット3に対応する残熱位置表示ユニット6を点灯させることになる。
このように、列単位で残熱領域が存在することをユーザに認識させるのみでも、安全性を向上させることが可能となることは勿論である。
次に、本発明を適用したシステムキッチン1における他の実施の形態について説明をする。
図10は、残熱位置表示ユニット5の代替として、残熱位置表示部401を設けた例を示している。この残熱位置表示部401は、コイルユニット3の両脇において、コイルユニット3の移動方向としてのY方向に沿って設けられている。この残熱位置表示部401は、複数のLED402を配列させて構成している。この残熱位置表示部401に沿って図示しない温度検知部が設けられ、当該温度検知部により検出された温度情報に基づいてこのLED402の発光させる箇所をコントロールするものである。図示しない温度検知部は、熱電対等によって具体化させるものである。
この図示しない温度検知部により、天板13における残熱を検出し、これを中央制御ユニット94へと送信する。中央制御ユニット94は、残熱が検出された領域に位置するLED402のみを発光させるように制御する。その結果、ユーザは、この発光させられたLED402を視認することにより、残熱領域を認識することが可能となる。
図11は、他の残熱位置表示部404の構成例を示している。この残熱位置表示部404は、中央制御ユニット94による制御の下、全体が発光可能な導光管により構成されている。この形態においても同様に、残熱位置表示部404に沿って図示しない温度検知部が設けられている。この図示しない温度検知部により天板13の温度が一定以上になっていることを検出した場合には、その旨を中央制御ユニット94へと通知する。中央制御ユニット94は、かかる通知を受けて残熱位置表示部404を発光させる。その結果、ユーザは、この発光させられた残熱位置表示部404を視認することにより、当該算熱位置表示部404に囲まれた領域において残熱があることを認識することが可能となる。