台所に設置されるシステムキッチン50は、図10に示すように、流し台キャビネット51と、これに互いに隣接して設置されるコンロ用キャビネット52と、それらを被覆する1枚の天板53とを備えている。このシステムキッチン50においては、天板53のうち流し台キャビネット51を被覆する流し台領域Aにはシンク54が形成されており、このシンク54に対して水栓61から湯水が供給されることになる。コンロ用キャビネット52を被覆するコンロ領域Bの前面部寄りには長方形の開口部56が切り抜かれて、その開口部56から1台のコンロ55がコンロ用キャビネット52上に落とし込まれている。また、この流し台領域Aと、コンロ領域Bの中間には、調理台ユニット領域Cが形成され、ユーザは、かかる調理台ユニット領域Cの上面に貼り渡されている天板53上において食物を調理し、或いは調理に必要な器具や食器等を載置する。
ここで一般的にシステムキッチンとは、収納用の各種フロアキャビネットを併設し、該フロアキャビネット上にはワークトップを有し、必要によってシンクあるいは加熱調理機器を配した、モジュール化されコーディネートされた組み合わせ型キッチンであり、広義には、間仕切り収納キャビネットやダイニングカウンターを含む。これらワークトップ又はカウンターを総称して、以下天板という。
図11は、かかるコンロ領域B並びに調理台ユニット領域Cにおける使用例を示している。
この図11に示す例において、先ずコンロ領域Bでは、コンロ55本体を構成する本体ケース81が天板上から落とし込み状態に固定装着されている。このコンロ55本体には、複数のガスバーナ84が配設されており、上面に設けられたカバー83には、該各ガスバーナ84が臨むバーナ用開口部85が開設されている。さらに、前記バーナ用開口部85上方には五徳86が配設され、バーナの炎や、炎により生じた熱気が五徳86の爪部に載置された調理鍋74等の底面に沿って五徳86の外側に放出されるようになっている。即ち、ガスバーナ84を燃焼させることにより、前記五徳86に載置した調理鍋74内の食材等を加熱調理することが可能となる。
また、調理台ユニット領域Cでは、実際に食物を切り刻み、加工するためのまな板91や、洗浄した食器類を乾燥させるためのステンレス製の食器篭92等が載置される。さらには、トースター65,ジューサー69,炊飯器71等のような実際の調理に必要な調理用機器等が所狭しと配置されることになる。これら各調理用機器は、コンセント61やプラグ67を介して電源が供給される。
これらトースター65やジューサー69、炊飯器71等の各種調理用機器の代替として、例えば泡立て器や食器洗い機等の各種調理用機器をこの調理台ユニット領域Cに配置する場合もあり、同じくコンセント61からの電源を供給することになる。
ところで、数多くのレシピが研究されつつある中、和洋東西多彩を極めた多岐にわたる調理が家庭においても実現可能となった昨今において、多くの調理用機器を同時に動作させる必要性も高まっている。
しかしながら、上述の如き従来のシステムキッチンにおいて多くの調理用機器を同時に動作させるためには、面積が限定された調理台ユニット領域Cにおいて、多くの調理用機器を配置しなければならない。このため、食器籠92を含め他の食器を置くスペースや、まな板91を使用して食物を加工するためのスペースが必然的に小さくなる。また、調理台ユニット領域Cに隣接するコンロ領域Bにおいてもガスコンロを利用して調理鍋に入れた食物等を同時に煮たりする場合もあるが、かかるガスコンロからの熱が調理台ユニット領域C上に置いてある調理用機器に伝熱することもあるため、かかる調理用機器の配置箇所において更なる制約がかかる。
一方、多くのガスコンロを用いて一度に多くの食物等を同時に煮炊きする場合には、ガスコンロを増設する必要があるところ、上述のガスコンロ領域Bにおける天板上の占有率を高く設定するとともに調理台ユニット領域Cの占有率を低く設定したい場合もある。また、図11に示す既存のシステムキッチンにおいては、本体ケースが天板上から落とし込み状態に固定装着されるものであり、ガスコンロを増設し、ガスコンロ領域を大幅に移動させることはできなかった。
従って、調理台ユニット領域Cやコンロ領域Bの天板上における占有比率をユーザの意思に応じて可変とすることにより、かかる調理をより効率的に実現ことが望まれている。
特にこのような要請に応えるためには、ガスコンロの配置の自由度をいかにして向上させるかが最重要課題となる。かかる課題を解決すべく、電磁誘導を利用して加熱調理するコードレス機器を上記ガスコンロの代替として用いる手法が従来において提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に示されるコードレス機器100は、例えば図12に示すように、調理鍋等に代表される負荷部98とこの負荷部98を誘導加熱する磁気発生部99とを備え、この磁気発生部99は、上記負荷部98を載置するためのトッププレート103と、トッププレート103の下部に設けられ、上記誘導加熱を実行するための高周波磁界を発生する一次コイル104とこの一次コイル104を駆動するインバータ107とを備え、このインバータ107には電源コード109を介して電源が供給されることになる。
ユーザは、この磁気発生部99を天板上の任意の位置に配置することができるため、調理台ユニット領域Cとコンロ領域Bとを区別することなく、コードレス機器100と調理用機器との間で自由な配置のバリエーションを楽しむことが可能となる。
特開平5−184471号公報
以下、本発明を実施するための最良の形態として、飲食店や家庭等において食物を調理する際に適用されるシステムキッチンについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用したシステムキッチン1は、少なくともワークトップ又はカウンター(以下、これらを天板という)を有するシステムキッチンであって、図1に示すように、キャビネット11と、このキャビネット11における上面を被覆する天板13と、この天板13に隣接する流し台領域Aにおいて形成されたシンク14と、シンク14に対して湯水を供給するための水栓15とを備えている。以下では、システムキッチン1を、壁面12に取り付けられた作業台の形態がI字型のもの、いわゆるI型キッチンに適用する場合について述べたが、この他にも、いわゆるL型キッチン、または、キッチンの作業台を壁面から分離し、島(Island)型に設けたいわゆるアイランドキッチンとして適用することもでできる。
キャビネット11は、例えば前面側に片開き可能に軸着されている図示しない扉や収納用引出を設けてもよく、これら各扉や収納用引出内には、主として台所用具や食器等を収納可能な棚やケース等を設けるようにしてもよい。
シンク14には、水切り用の凹み部等が形成されており、底面には排水口16が設けられている。このシンク14において、凹み部並びに排水口16は、プレス成形や注型成形、インジェクション成形等の方法により互いに一体に成形されている。シンク14の材質は、特に限定されるものではないが、耐熱性のある樹脂やステンレス鋼板等の金属を用いることも可能である。
天板13は、例えば、表面が平滑なガラス板、耐熱性樹脂、ステンレス鋼板、人造大理石などで構成することができる。この天板13上には、食材等を加熱調理するための調理鍋やポット等に代表される調理用容器や、実際に食材を切り刻み、加工するためのまな板がユーザ任意の位置に載置可能な構成とされている。
この天板13上には、調理用容器が複数に亘り任意の位置に載置される場合もあるし、まな板以外に、図示しない食器篭や炊飯器、ジューサー等といった各種調理用機器20がそれぞれ任意の位置に載置される場合もある。即ち、この天板13は、調理用容器20が載置される可能性があることから、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、機械的強度に優れた材料で構成する必要があるところ、通常、耐熱ガラスやセラミックス等で構成される。
このシステムキッチンの背面の壁面12には、天板13から所定の高さに水平な固定部材、例えばレール部材が配設されている。このレール部材に収納式誘導加熱手段すなわちIHヒータ18が水平方向に移動可能に取り付けられている。レール部材17の取付け位置を天板13表面より高い位置とする理由は、調理時には天板13には水、調理液、油などが飛散しやすい状態にあり、後述するようにレール部材内に収容される電源レールなどをこれらの汚れから保護するためである。
図2は本発明のシステムキッチン1における、収納式IHヒータ18の加熱使用時の状態を示し、図3はこの収納式IHヒータ18を収納した状態を示す。収納式IHヒータ18は、図2に示すように、レール部材17に対して水平方向に移動可能に嵌合された支持部材181と、加熱調理時に天板上に載置される平板状のベースプレート183、および、支持部材とこのベースプレートとを連結するアーム部材182から構成される。
図4は収納式IHヒータ18の断面を示し、アーム部材182は両端に位置する2本のアーム部182a,182bとこの2本アーム部の略中央に位置する駆動伝達機構収納部182cとから構成され、各アーム部の一端は、支持部材に対して第1のヒンジ機構184を介して支持部材181に対して回動自在に取り付けられ、アーム部材182の他端は第2のヒンジ機構185を介してベースプレート183に対して回動自在に取り付けられている。
ベースプレート183にはIH加熱領域が形成され、誘導加熱コイル342とインバータ回路331からなるコイルユニット31が内蔵されている。ベースプレート183の表面には平滑なガラス板のような表面部材193が用いられ、加熱領域を図示のようにマーキングしてもよい。
レール部材17にはその長手方向に沿って電源レール171が配設され、駆動伝達機構収納部182cから延設される軸182dに固定された電源端子187がこの電源レール171に摺接した状態で移動可能となっている。この電源端子187から駆動伝達機構収納部182c内に配線された電源ケーブル(図示せず)、インバータ回路331を介して誘導加熱コイル342に通電が行われる。軸182dにはローラ182eが軸しされ、このローラ182eがレール部材17内を回転移動することにより、アーム部材182がレール部材17の長手方向に沿って移動することが可能となる。
次いで、収納式IHヒータ18のアーム部182a(182bも同様であるため説明は省略する)の両端に形成されるヒンジ機構について説明する。図4に示すように第1のヒンジ機構184は支持部材に固定された第1のギア184aを備え、第2のヒンジ機構185はベースプレート183側に固定された第2のギア185aを備える。第1のギア及び第2のギアの間にはチェーンベルト23が懸回されている。
ベースプレート183を天板13上に載置した状態において、アーム部182aは天板13に垂直な軸に対して、所定の角度、具体的には例えば140°をなし、ベースプレートはアーム部の延長線に対して、所定の角度、具体的には例えば50°をなすように設計されている。そして、ベースプレート183を天板13から垂直方向に起こして収納する場合に、アーム部183aが支持部材に対して140°回動する間に、ベースプレート183がアーム部材に対して50°回転するように第1のギアと第2のギアのギア比を決定する。なお、これらの角度に限定されるものではなく、天板13の面積、ベースプレートの大きさなどに応じて適宜決定することが好ましい。
このような構成において、収納式誘導加熱手段が使用状態にあるときは、図4に示すように、ベースプレート183が天板13上に水平に載置されることになり、上記のように、アーム部182aは垂直方向に対して140℃をなすように支持部材181から第1のヒンジ機構184により折曲される。
ベースプレート183を、図5に示すように天板13に対して略垂直に立てて収納する場合は、ベースプレート183の先端部分を手で上方に引き上げる。アーム部182aが第1のヒンジ機構184により支持部材に対して回動すると共に、この回動動作がチェーンベルト23を介して第2のヒンジ機構185に伝達され、それにより、ベースプレート183が第2のヒンジ機構185によりアーム部材182aに対して回動し、図5に示すようにベースプレート183が略垂直に立った状態で固定される。
ベースプレート183を収納状態から再び使用状態に戻すには、手でベースプレート183の先端部分を手前側下方に向けて引き、ベースプレート183が天板13上に水平に位置するまで移動させればよい。
このように、ベースプレート183の収納、引き出し作業は簡便であるため、ユーザが手動で行ってもよいが、アーム部182にモータなどの動力伝達機構を別途接続し、自動で行うことも可能である。その場合、ベースプレート183の先端部の操作パネルと、図3に示すようにアーム部材の背面とに開閉ボタン21,22を設置し、ユーザがこれらの開閉ボタンを操作することによってベースプレートの収納、引き出しを行ってもよい。
図6は、これらコイルユニット31のブロック構成図であり、図7は、かかるコイルユニット31の構成断面図である。これら、図6,7に示すように、コイルユニット31は、インバータブロック331と、制御ブロック332に大別されて構成されている。このインバータブロック331は、実際に誘導加熱する高周波磁界を制御するためのブロックであり、制御ブロック332は、コイルユニット3全体を制御するためのブロックである。
インバータブロック331は、家庭用のAC200V(50/60Hz)の電源を電源プラグ329から電源コード330を介して受給する整流回路333と、この電源コード330と整流回路333との間に配設された電流検知コイル344と、この整流回路333に接続されてなり、鉄心にコイルを巻回すことにより構成されるチョークコイル334と、このチョークコイル334との間で直列LC回路を構成するコンデンサ335と、整流回路333の出力端子間を直列に接続するようにして配設される第1のスイッチング素子336並びに第2のスイッチング素子337と、これらスイッチング素子336,337に対して並列に接続される2つの共振コンデンサ338,339と、これら共振コンデンサ338,339の接続点に短絡されるカーレントトランス340と、インバータブロック331の内部の何れかに実装される回路保護サーモ341とを備えている。このインバータブロック331におけるカーレントトランス340の一端側と、上記スイッチング素子336,337の接続点には、さらに誘導加熱コイル342が接続され、この誘導加熱コイル342の略中心付近には鍋温度検知サーミスタ350が設けられている。ちなみに、加熱調理時においては、この誘導加熱コイル342からの高周波磁界により天板13を介して調理用容器20を誘導加熱できる位置まで、コイルユニット31自体が移動させられることになる。
制御ブロック332は、上記インバータブロック331における電流検知コイル344に接続される一次電流検知回路345と、整流回路333へ供給される電流を検知するための電源電圧検知回路346と、少なくとも上記一次電流検知回路345並びに電源電圧検知回路346に接続されてなり、この制御ブロック332全体を制御するための中央演算ユニットとしての役割を担う制御回路347と、この制御回路347と上記スイッチング素子336,337とに接続されるインバータ駆動回路348と、接続された回路保護サーモ341からの検知情報を制御回路347へ送信するための温度検知回路349と、カーレントトランス340並びに制御回路347にそれぞれ接続されるコイル電流検知回路351と、温度検知サーミスタ350並びに制御回路347にそれぞれ接続される鍋温度検知回路352とを少なくとも備えている。また、この制御ブロック332は、上記制御回路347に対して更に冷却ファン354と、アラーム362と、表示部363と、操作部357とを接続して構成されている。
これら各構成要素は、図6に示すように筐体305内部に実装されてなり、特にインバータブロック331並びに制御ブロック332は載置台306上に載置されて取り付けられることになる。さらに、この筐体305は、冷却用ファン354の配設位置近傍の底面において吸気口358が形成されてなり、さらに一の側面には排気口359が形成されている。
先ず、インバータブロック331の詳細な構成につき説明をする。
整流回路333は、接続された電源プラグ329からの電源用電流を整流するために配設されたものであって、供給された交流としての電源用電流を直流に変換する。チョークコイル334とコンデンサ335とにより構成されるLC直列回路は、いわゆる平滑回路を構成する。スイッチング素子336,337は、例えばトランジスタ等で構成され、各スイッチング素子336,337のエミッタとコレクタには逆導通用のダイオード362,363がそれぞれ並列接続される。スイッチング素子336のベースにはインバータ駆動回路348からの駆動信号QAが供給され、スイッチング素子337のベースにはインバータ駆動回路348からの駆動信号QBが供給される。即ち、インバータ駆動回路348は、この駆動信号QAと駆動信号QBとを交互に供給することにより、共振コンデンサ338,339と誘導加熱コイル342に共振電流を流すことが可能となる。
誘導加熱コイル342は、図7に示すように、筐体305の上面305aに対向させて配設されてなる。この誘導加熱コイル342における巻き数は、上記調理用容器20を加熱する際における電力を支配するものであり、調理用容器20における底板の表皮抵抗や共振電流の大きさとの関係において最適に調整されている必要がある。この誘導加熱コイル342は、上記供給される共振電流に基づいて共振されることになり、その結果、高周波磁界を発生させることが可能となる。
回路保護サーモ341は、温度の変化に応じて抵抗値が変化するサーミスタ等で構成される。この回路保護サーモ341は、主としてインバータブロック331や制御ブロック332を構成する空間の温度を測定する。
温度検知サーミスタ350は、回路保護サーモ341と同様にサーミスタで構成される。この鍋温度検知サーミスタ350は、天板13を介して調理用容器20の温度を検知すべく、上述の如く誘導加熱コイル342の中心付近に配設されることになる。
カーレントトランス340は、誘導加熱コイルに流れる共振電流の電流値を検知するためのコイル等である。
次に、制御ブロック332の詳細な構成につき説明をする。
一次電流検知回路345は、接続された電流検知コイル344を介して、電源プラグ329を介して供給される電源用電流の電流値を検知する。この一次電流検知回路345は、この検知した電流値を制御回路347へと通知する。
電源電圧検知回路346は、電源プラグ329からの電源用電流に基づく電圧を検知する。電源電圧検知回路346は、この検知した電圧を制御回路347へ通知する。
制御回路347は、CPU等で構成される。この制御回路347は、上述した一次検知回路345により検知された電流値が通知され、かつ電源電圧検知回路346により検知された電圧が通知された場合には、これらを参照しつつ、設定された電力となるようにインバータ駆動回路348を制御する。この制御回路347は、操作部357を介したユーザからの命令を解釈し、これに基づいてインバータ駆動回路348、冷却ファン354、アラーム362を制御するとともに、所定の情報を表示部363を介して表示する。
インバータ駆動回路348は、正弦波信号を発振させるための発振回路として構成され、制御回路347による制御に基づいて、上記駆動信号QA又は駆動信号QBを生成する。
温度検知回路349は、回路保護サーモ341における抵抗値の変化を検出する。この温度検知回路349は、この検出した回路保護サーモ341の抵抗値の変化に基づき、筐体305の内部の温度を検知する。この温度検知回路349は、検知した筐体305内部の温度を制御回路347へ通知する。制御回路347は、温度検知回路349からの通知を介して筐体305内部の温度を随時認識することが可能となる。これにより、例えば運転中において冷却ファン等が停止した場合や、吸気口358や排気口359が詰まった場合等のように冷却性能が低下し、筐体305の内部の温度が急激に上昇した場合には、制御回路347は、温度検知回路349を介してこれを認識し、コイルユニット31、32全体の動作を停止させることも可能となる。
コイル電流検知回路351は、カーレントトランス340により検知された共振電流の電流値を読み取り、これを制御回路347へ通知する。制御回路347は、コイル電流検知回路351を介して共振電流の電流値を随時認識することができる。これにより、制御回路347は、例えば、調理用容器20の材質や形状に応じて決定される誘導加熱に必要な電力に対して、必要以上の共振電流が流れるのを抑制することが可能となり、さらには、誘導加熱中において調理用容器20が外された場合において、コイルユニット3全体の動作を停止させるとともに、アラーム362を介してこれをユーザに通知することも可能となる。
鍋温度検知回路352は、鍋温度検知サーミスタ350における抵抗値の変化を検出する。この鍋温度検知回路352は、この検出した鍋温度検知サーミスタ350の抵抗値の変化に基づき、調理用容器20の温度を検知する。この鍋温度検知回路352は、検知した調理用容器20の温度を制御回路347へ通知する。制御回路347は、温度検知回路349からの通知を介して調理用容器20の温度を随時認識することが可能となる。これにより、例えば調理用容器20の底部の温度が規定値以上に上昇した場合には、コイルユニット31全体の動作を停止させることも可能となる。
冷却ファン354は、制御回路347による制御に基づいて回転させられる。この冷却ファン354の回転に応じて、吸気口358から冷却風が吸い込まれることになる。この吸い込まれた冷却風は、インバータブロック331や制御ブロック332上を通過することによりこれらを冷却し、排出口359から外部へと排出されることになる。
アラーム362は、制御回路347による制御に基づいて所定の音を発生させる音声発振器で構成される。
表示部363は、制御回路47による制御に基づいて所定の情報を表示する液晶表示面等で構成される。
操作部357は、ユーザが実際にコイルユニット31を操作するためのキーやボタン等で具体化される。この操作部357においてユーザから入力された内容は、制御回路347へ通知され、制御回路347はかかる入力された内容に基づいてコイルユニット31の各構成要素を制御していくことになる。ちなみにこの操作部357は、筐体305の表面に形成されたボタン等を想定しているが、かかる場合に限定されるものではなく、例えば、無線通信でユーザからの入力内容を送信するためのリモートコントローラで構成されていてもよい。また、操作部357に関する機能についても、操作板95に担わせるようにしてもよい。
次に、上述の構成からなるコイルユニット31により、実際に調理用容器20を誘導加熱する方法につき説明をする。
先ず、電源プラグ329から電源コード330を介して電源用電流を受給する。この受給した電源用電流は、整流回路333において整流されることになる。このとき、インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御の下、スイッチング素子336,337に供給する駆動信号QA、QBの調整する。
図8(a)は、誘導加熱コイル342に流れる共振電流を、図8(b)は、このスイッチング素子336に対して供給される駆動信号QAを、図8(c)は、このスイッチング素子337に対して供給される駆動信号QBを示している。
インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御の下、時点t0から時点t1に至るまで駆動時間がT1である駆動信号QAをON出力する。この駆動時間T1の間では、スイッチング素子336及びダイオード362と、誘導加熱コイル342と、共振コンデンサ338とで形成される閉回路で共振することになる。ちなみに、インバータ駆動回路348は、時点t1において駆動信号QAをOFFにする。
次にインバータ駆動回路348は、制御回路347による制御の下、時点t2から駆動時間がT2である駆動信号QBをON出力する。この駆動時間T2の間では、スイッチング素子337及びダイオード363と、誘導加熱コイル342と、共振コンデンサ339とで形成される閉回路で共振することになる。なお、この駆動時間T2は、上記駆動時間T1と同一である。
このように閉回路を変えて誘導加熱コイル342を共振させることにより、誘導加熱コイル342において高周波磁界を発生させることができる。この発生させられた高周波磁界は、天板13を介して調理用容器20の底板を通過していくことになる。この調理用容器20の底板は、金属製であるため、この高周波磁界を金属製の底板に通すことにより、渦電流が発生することになる。この渦電流と調理用容器20の持つ電気抵抗によりジュール熱が生じ、調理用容器20自体が発熱することになる。その結果、調理用容器20内にある食物を加熱調理することが可能となる。
このような収納式誘導加熱手段を備えるシステムキッチンにおいては、図1に示すように、加熱領域が形成されたベースプレートをレールに沿って水平方向に移動させることが可能であるため、例えば、調理容器に大量の水を入れたのち加熱する場合や、例えば野菜の茹でこぼしのように、調理容器内の熱湯をシンク内に流す場合などの場合は、ベースプレートをシンクの近傍まで移動させて使用することで、従来のようにユーザが重い調理容器をシンクから離れた加熱領域まで運搬する必要がなくなるため作業性が著しく向上する。
そして、誘導加熱手段を使用しないときは、ベースプレートを天板から略垂直に立てて収納することにより、天板のワークトップ面を非加熱調理に有効に利用することが可能となる。
また、この収納式誘導加熱手段は、2個以上の複数個配設することも可能である。さらには、前述したような従来の天板内の所定位置に内蔵された誘導加熱手段と併用することも可能であり、それによってより加熱調理の自由度を向上させることができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば図9に示すような他のシステムキッチン2を適用するようにしてもよい。
このシステムキッチン2は、ワンルームマンションなどに設置される、いわゆるミニキッチンと称されるものであり、上述したシステムキッチン1と同一の構成、部材に関しては、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
このシステムキッチン2は、キャビネット11と、このキャビネット11における上面を被覆する天板13と、この天板13に隣接する流し台領域Aにおいて形成されたシンク14と、シンク14に対して湯水を供給するための水栓15とを備え、さらに、収納式誘導加熱手段を備えている。
このシステムキッチンにおいては、天板のスペースがもとより限られているため、収納式誘導加熱手段の支持部材は、上記のようなレールではない固定部材に取り付けられることが好ましい。この場合も、誘導加熱手段を収納することにより、天板上で広い調理スペースを確保することができるため、作業性の向上に非常に有効である。